遠藤守(公明党)
質問1
初めに、文化遺産の保存と活用について伺います。
まず、文化資源を生かした東京の魅力発信についてであります。
人類共通の宝である世界遺産制度の発足から、ことしで三十年となります。都内においては上野の国立西洋美術館本館の登録準備が進んでおり、認められれば東京初の世界遺産となります。ユネスコ事務局長である松浦晃一郎氏は、近著の中で、世界の文化を三つに分類し、その第一にこの世界遺産を挙げ、第二に伝統芸能などの無形遺産を、そして、第三に現代の文学や演劇、音楽などを挙げておられます。
東京には世界遺産こそ存在しないものの、国宝や重要文化財などの有形遺産のほか、歌舞伎や江戸しぐさといった無形遺産、さらには世界最先端のデザイン、メディア芸術という、非常に多彩なすそ野が広がっているわけであります。時を超え、有形無形の文化が融合する東京ならではの魅力をいま一度再構築し、世界における文化面でのプレゼンスを高めていくべきと考えます。石原知事の所見をお伺いいたします。
関連して、都の文化財保護行政について質問いたします。
答弁1
知事
文化資源を生かした東京の魅力発信についてでありますが、東京には、江戸開府以来の伝統文化や歴史的建造物などの文化遺産、また、ミシュランも認めた世界最高水準の食文化、アニメーションなど先端のメディア芸術といった多彩な文化資源が集積しております。
ただ、その活用についてはいささか問題がありまして、例えば、私、この間行って驚いたんですが、目黒区――何区ですかな、駒場にあります旧前田侯爵邸、これは立派なもので、たしか都が所有しているんでしょうけども、広大な庭は区有地になっているんでしょうか。この運営がまことにずさんで、庭は五時で締め切られる、建物はがらんどうで何にも中に入ってない。どんがらだけが残っているという、これは本当にもったいない話だと思うんですけど、もうちょっと知恵を使って何かに活用すれば、もっと人がたくさん集まって有用に使えると思っておりますけれども、こういった問題が随所にあると思います。
いずれにしろ、オリンピック・パラリンピック招致を見据え、東京が持つ都市の力を高めていくためには、世界の中で、文化面においても東京のプレゼンスを確立することが不可欠であると思っております。
このため、今年度から、東京が有するこれらの文化資源を生かしながら、東京の活力を国内外に発信する大規模な文化プロジェクトを展開してまいります。
今後とも、東京芸術文化評議会からの提案なども踏まえまして、東京ならではの魅力的な文化を創造し、世界に向けて戦略的に発信していきたいと思っております。
質問2
歴史的構造物は一度失ったら二度と回復できない、この認識のもと、私は、本年の予算特別委員会で、都が指定する文化財の保存、活用を進めるため、都独自のモデルを策定すべきと提案をいたしました。この提案を受け、これまでに、新たに国と都の八つの文化財建造物に対する実効性ある防災計画の策定が進んでおり、高く評価をいたします。
しかし、その一方で、文化財をめぐる都の対応にはいささか異論がございます。
都の文化財行政は、現在、教育委員会が保存役を担い、生活文化スポーツ局、都市整備局、産業労働局など知事部局の各局が文化、景観、観光などそれぞれの所管事業で文化財を利活用しております。保存と利活用の所管部局が異なるもとで、いわゆる縦割り行政の影響を受け、文化財が都民や都を訪れる観光客のために十分に活用されているとは決していえません。
京都市では、文化財保護行政と観光行政は不可分なものと位置づけ、何と半世紀も前から、文化市民局が一元的に文化財行政を担当し、保存を図りながらも、市民や観光客が利活用しやすいように取り組んでいるわけであります。今後、貴重な文化財を守りながら、観光や地域再生のために活用していくには、局と局との強力な連携が不可欠であると考えます。
「十年後の東京」に掲げた年間一千万人の外国人旅行者が訪れる世界有数の観光都市という目標実現に向けても、知事本局が総合調整機能を発揮し、責任を持って各局の連携を図っていくべきだと考えますが、知事本局長の見解を求めます。
答弁2
知事本局長
「十年後の東京」における観光施策の目標の実現に向けた局横断的な取り組みについてでありますが、東京は、神社、仏閣など歴史的建造物、六本木や赤坂等の現代的かつ洗練されたビル群、多摩・島しょ地域の豊かな自然環境など、外国の旅行者を引きつける多様な魅力を有しております。
「十年後の東京」では、こうした東京の魅力的な文化資源などを活用することで、年間一千万人の外国人旅行者が訪れる世界有数の観光都市を実現し、東京のプレゼンスを確立する姿を描いております。
今後、文化財を初めとして、東京の有する多様な魅力を観光資源としてさらに活用するため、知事本局が担う総合調整機能を十分発揮しながら、組織横断的な会議などにより、責任を持って各局の連携を一層進めてまいります。
質問3
一方、限られた官の力だけで都内全域に広がる文化財を保護、活用するのは、おのずと限界もあります。
官を補完する取り組みでは、兵庫県で行われているヘリテージマネジャー、歴史文化遺産活用推進員、この制度が一つの参考になります。阪神・淡路大震災を機に誕生したこの制度は、県教育委員会と県建築士会が共同で地域に眠る歴史文化遺産を発見、保存、活用し、まちづくりに生かす取り組みであります。このヘリテージマネジャーの登場により、登録文化財の件数が急増するなど、歴然たる効果が出ているようであります。
都においても、この兵庫県の事例を参考に、地域力を生かした文化財保護の取り組みを強化していくべきと考えます。教育長の見解を求めます。
答弁3
教育長
地域の力をかりた文化財保護の取り組みについて申し上げます。
ご指摘の兵庫県の例に見られますように、地域の人々が文化財の保護に携わることは大変大切でございます。
都教育委員会は、区市町村と連携を図りながら、都内の文化財の状況の把握に当たっておりますが、現在、二十の区と市では、文化財保護委員あるいは文化財保護推進員といった立場で、地域の人々が文化財を守っていく仕事を行ってくれております。
今後、こうした取り組みを他の区市町村にも紹介するなど、地域の力をかりた文化財保護体制の充実に対して、都教委として支援をしてまいります。
質問1
次に、がん対策について質問いたします。
先日、都議会公明党は、がん診療連携拠点病院である都立駒込病院、武蔵野赤十字病院の二つの病院を視察してまいりました。その中で、私たちの心に強く残り、その重要性について認識を新たにした点について、二点お尋ねをいたしたいと思います。
第一点目は、がん相談支援センターにおける情報提供機能の充実についてであります。
都立駒込病院では、病院独自の医療情報検索システムを持ち、患者や家族が院内の専用パソコンを使って、駒込病院と連携している一千五百以上の医療機関について、診療科目、往診の可否、対応可能な検査、処置、提携している訪問看護ステーションの有無などの詳細な情報を検索することができます。こうしたシステムは、患者や家族が納得いくまで医療情報を探すことができるという、大変大きなメリットがあると思います。
そこで、こうした取り組みを、都全体を視野に置いた取り組みへと拡大していくべきと考えます。都の見解を求めます。
答弁1
福祉保健局長
がん医療に関する情報提供機能の充実についてであります。
拠点病院が把握した地域の医療機関のさまざまな情報を検索して、患者みずからが転退院先等を選択し、また、相談支援センターの職員が患者や家族に助言を行う際に活用できることは重要でございます。
このため、拠点病院が、それぞれの地域の医療機関の情報を相互に共有し、より患者の希望に沿った情報を提供できるよう、その連携方法等について、東京都がん診療連携協議会において検討してまいります。
質問2
二点目は、医師の緩和ケア研修についてであります。
緩和ケアは、身体的な苦痛のみならず、心理的、社会的な苦痛の軽減を図るものであり、がん治療の早期から重要な位置づけを占めるものであります。都のがん対策推進計画においては、医師の緩和ケア研修の推進が掲げられておりますが、重点的に研修を行うべき対象や養成計画、実施体制など、研修を推進していく上での具体的な道筋は、何ら明らかになっておりません。
さらに、国が示した緩和ケア研修の開催指針では、少人数で密度濃く実施する形式がとられておりますが、都内には、がんの診療と関係の深い内科を標榜する医師だけでも約一万二千人おられます。こうした現状を踏まえて、都として、まず重点を絞り、必要度の高いところから重点的かつ計画的に研修を進めていくべきと考えます。見解を求めます。
答弁2
福祉保健局長
医師に対する緩和ケア研修についてであります。
緩和ケアは、患者の身体的、精神的な苦痛を軽減させるものであり、がんの治療の早期から取り組むべきものでございます。
このため、がん診療に携わるすべての医師がその知識や技術を身につけることが望ましいものであり、緩和ケア研修について、東京都がん対策推進計画に掲げます目標の達成に向け、計画的に実施をしてまいります。
具体的には、がん治療は、さまざまな診療分野の医師が携わっており、対象となる医師は広い範囲に及びますことから、まず初めに、拠点病院等において化学療法や放射線療法に携わる医師、在宅医療を行う診療所の医師等に対して重点的に実施をしてまいります。
質問3
次に、安全・安心な出産に向けての支援についてお尋ねいたします。
都議会公明党は、昨日の代表質問において、ハイリスク妊婦への迅速かつ的確な対応を目指した周産期医療の充実について質問をいたしました。一方で、安全・安心の出産のためには、妊婦さん自身が妊娠、出産には健康上の課題が伴うことを十分認識し、みずから健康管理に努めることも重要であります。こうした観点に立って、都議会公明党は、妊婦健診の公費負担充実に積極的に取り組んできたところであり、現在、都内区市町村では五回から十四回までの公費負担が実現しております。
区市町村では、現在、妊婦健診を受けている方に対し、必要な場合、訪問や指導を行っていると聞いておりますが、日ごろの健康管理をさらに強化するため、受診状況の把握や未受診者や受診頻度が低い妊婦に対する受診の勧奨など、新たな取り組みが必要と考えます。
こうした取り組みを行う区市町村に対して、都として積極的に支援すべきと考えます。見解を求めます。
来年一月から始まる産科医療補償制度についてお尋ねいたします。
この制度は、分娩による障害に対する補償制度であると同時に、原因分析と再発防止策の検討により、社会全体で周産期医療の向上を図ることを目的としています。妊婦さんにも広くその趣旨、目的を理解してもらうことが重要であり、都としても周知に積極的に取り組むべきであります。
本制度の評価と妊婦への制度周知に向けた取り組みについて見解を求めます。
答弁3
福祉保健局長
妊婦の健康管理に関する支援についてでありますが、妊婦健診などにより妊婦が健康管理に努めることは、安全な出産を迎えるために大変重要であるとともに、ハイリスク妊婦を早期に把握し、対応することにもつながるものでございます。
このため、妊婦健診の受診状況を把握し、未受診者等に対して受診を促進する上で、区市町村の独自の取り組みを都としても支援してまいります。
質問4
なお、この制度については、五年をめどとした見直し規定がありますが、スタート時点における補償対象が、正常分娩で出生した場合であり、かつ脳性麻痺による身体障害等一級、二級相当と限定されており、関係者からは不十分との声も聞かれます。打てる手はすべて打つとの観点から、都として本制度を補完する仕組みを検討すべきと、強く要請をいたします。
答弁4
福祉保健局長
産科医療補償制度についてであります。
本制度は、患者とその家族の救済や、産科医の訴訟リスクの軽減を図るものであります。都としては、国が第一歩を踏み出した意義は大きいと考えており、制度のさらなる充実について、国への提案要求をしております。また、現在、区市町村や関係機関を通じて、妊産婦への周知を行っております。
今後、都のホームページで普及啓発を行うとともに、東京都医療機関案内サービス「ひまわり」において、本制度に加入している医療機関等の情報を提供してまいります。
質問1
最後に、私の地元大田区の平和島、海老取両運河沿いにある貴船水門ほか、呑川、北前堀、南前堀の、いわゆる港南四水門とその周辺整備について質問をいたします。
この港南四水門は、伊勢湾台風時における東海地方の高潮被害を教訓に、こうしたクラスの台風が万一東京を直撃した場合、大田区東部に広がる低地帯を守るため、昭和四十年代初頭に建築されました。これら四水門の内側はかつて河川でありましたが、昭和五十四年に一部の水面を残して埋め立てが行われ、現在では大田区が管理する水路として小型船の係留等に利用されております。四水門は建築後四十年を経過し、老朽化が進み、地盤の液状化のおそれもあることから、早急に対策をとる必要があります。
また、四水門の背後の水路は、現在行きどまりとなっており、地元からは、水門を廃止し防潮堤を整備すべきとの声も聞かれます。
都民の生命、財産を守るため、都として、これらの水門を補強の上、存続をさせるのか、それとも廃止、撤去するのか、速やかに結論を出し、一刻も早く高潮対策を講じるべきであります。見解を求めます。
答弁1
港湾局長
大田区東部の大森東地区周辺におきます高潮対策についてでございますが、大田区内の平和島運河及び海老取運河沿いに位置するいわゆる港南四水門は、老朽化とともに、大地震時の液状化への対応が急がれるため、平成十九年三月に策定いたしました東京港海岸保全施設緊急整備計画に基づきまして、早期に耐震補強等の対策を行うこととしてございます。
お話の四水門の存続、廃止のあり方につきましては、この立地状況から、地元が進めるまちづくりとの整合、散策路としての機能の確保、周辺環境への配慮など、総合的な視点からの検討も必要と認識してございます。
このため、今後、地元大田区と精力的に検討を進め、その方向性について結論を得た上で、大森東地区周辺の具体的な高潮対策の充実を図ってまいります。
質問2
また、同地域一帯は、武蔵野の路、大井、羽田コースのルートとなっており、大森緑道公園や護岸を利用した遊歩道などが都によって整備をされております。また、その北側には、大田区が昨年、ふるさとの浜辺公園をオープンさせるなど、水辺の風景を眺めながら散策したり水と触れ合えるなど、大変に魅力的な地域であります。
ところが、残念ながら、現状では貴船、呑川両水門により、運河沿いの遊歩道は各所で分断をされております。遊歩道を連続化するには、先ほど言及いたしました、水門内に係留されている小型船の対応も必要であります。
これら諸課題の解決に向け、都は大田区と連携し、取り組みを本格化すべきであります。
都の見解を求め、質問を終わります。
答弁2
港湾局長
平和島運河沿いの遊歩道の連続化と小型船対策についてでございます。
都は、都民が水辺に親しめる空間を創造するため、地元区と協力し、高潮護岸の上部を利用した延長約十八キロメートルの遊歩道整備を進めてまいりましたが、水門等で分断され、回遊性が確保されていない箇所の解消が課題となってございます。
平和島運河沿いの遊歩道の連続化につきましても、港南四水門のあり方の検討の中で、遊歩道整備の目的に沿った検討を進めていくことが必要であると考えてございます。
このため、今後、区立ふるさとの浜辺公園への回遊性を視野に入れた遊歩道の連続化の具体化に向けまして、小型船対策を含め、水路の水面管理者でもある地元大田区と連携して取り組んでまいります。