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平成19年度公営企業会計決算特別委員会

野上純子
野上純子(公明党)

交通施策

野上委員
 初めに、交通局について伺います。
 平成十二年に都営大江戸線が全線開通してから八年が経過いたしました。都営地下鉄全体の乗客数は増加しており、十九年度決算では、高速電車事業としては経常損益で百九億円の黒字を計上しております。しかしながら、依然として四千六百三十六億円という多額の累積欠損金を抱え、厳しい状況が続いております。今後、少子高齢により乗客数の大幅な増加が期待できない中、地下鉄駅の広い空間という資産を最大限に活用することによって、少しでも収益の拡大を図り、経営基盤を強化するべきです。
 私は、平成十六年の第三回定例会で、収益拡大についての一般質問を行い、今後三年間で三十店舗の新規開店を図る予定であると答弁を得ました。
 そこでまず、平成十九年度における駅の構内での営業に関する主な取り組みと決算状況についてお伺いします。

交通局長
 平成十九年度は、新宿線市ヶ谷駅や馬喰横山駅におきまして複数の店舗を同時に設置するなど、新たに九店舗を新規出店し、現在、合計で四十五店舗が営業しております。
 平成十九年度決算におきます構内営業料は、店舗の新規設置や自動販売機の設置数の増加などによりまして約六億六千九百万円となり、前年度に比べ五千万円、八・一%の増収となっております。


野上委員
 店舗数が合計で四十五店舗、構内営業料が約六億六千九百万円とのことですが、いわゆる駅ナカビジネスも、現在では鉄道各社が競って展開しております。より収益性を高めるためには何が求められているのか、どんなことが利用者のニーズとして考えられるのか、どんな店舗が必要とされているのか、研究していただきたいと思います。
 交通局の施設を使った撮影をするときの場所代、広告物掲示料、地下鉄グッズの作成、イベント用のPASMO事業等、積極的に収益事業に取り組んでほしいと思います。
 また、駅構内店舗は、都営地下鉄を利用されるお客様への利便性の向上という大切な役目もあります。
 そこで、駅構内店舗の展開に関する交通局の基本的な考えについて伺います。

交通局長
 駅構内への店舗の設置は、資産の有効活用により経営基盤の強化に資するものであるとともに、お客様に対するさまざまなサービス提供による魅力ある駅空間の創出に寄与するものと考えております。店舗の設置に当たりましては、駅利用者や、周辺環境など立地特性も十分考慮し、お客様の利便性向上につながるような店舗展開に努めております。
 なお、交通局経営計画新チャレンジ二〇〇七におきましては、平成十九年度からの三年間に、先ほどご発言がありましたように、三十店舗を新規設置するという目標を掲げてございます。


野上委員
 駅構内への店舗等の設置は、都営交通を利用する人にとっては便利であると同時に、交通局にとっては収益拡大を図っていくという、駅空間という経営資源を最大限に活用した大変意義深い事業だと思います。
 一方で、駅空間という大変公共性の高い資産を保有する交通局は、営利を追求するだけではなく、公営企業として社会的要請にも積極的に対応していく必要があると考えます。
 我が党の吉倉議員から、平成十七年の第四回定例会で、都営地下鉄駅構内に設置されるパンの売店やコーヒーショップなどでも、一定の条件のもとで障害者団体の出店が可能となるよう検討すべきと提案いたしました。それを受けて、チャレンジ二〇〇七では、障害者の自立と雇用を支援する取り組みとして、障害者が働く駅構内店舗の設置を目標に掲げています。障害者の雇用や就労の場を確保することは重要な取り組みであります。
 昨年の三月にオープンした、地下鉄大門駅の第一号店のトロアは、障害者の方が働いているパン屋さんです。大門は乗りかえに利用しますので、私もパンを買いによくトロアに行きますけれども、障害者の方が喜々として働いて、その姿にいつも感動し、心地よい思いをしております。
 先日の公営企業委員会では、我が党の松葉議員の質問に対して、いよいよ第二号店を、今年度は大江戸線の若松河田駅に開店するとの答弁がありました。
 そこで、障害者が働く駅構内店舗の設置に関する基本的な考え方と今後の取り組みについて伺います。

交通局長
 障害者が自立した社会生活を営むに当たって、就労の場を確保することは重要なことであり、交通局では、障害者の自立と雇用を支援する観点から、都営地下鉄駅構内に障害者が働く店舗を設置することといたしました。その第一号店は、ただいまご発言がありましたように、本年三月に大江戸線大門駅に開店したところでございます。
 今年度は、大江戸線の若松河田駅に二店目を設置する予定でございますが、今後とも、関係区や障害者団体などと調整を図りながら、三年間で三店舗設置という目標を確実に実施してまいります。


野上委員
 ぜひ、第二号店の次は第三号店というふうに設置できるよう、鋭意努力をしていただきたいと思います。
 次に、利用者サービスの観点から、女性専用車両について伺います。
 女性専用車両は、平成二十年四月現在、全国七十六路線で導入されています。首都圏でも、JR東日本を初め東京地下鉄、大手民鉄で導入が進み、多くの都民にもその存在は浸透しております。
 警視庁によると、電車の中の痴漢発生は、検挙数だけでも、平成十七年に千八百五十三件、平成十八年は千八百十件、平成十九年は千五百九十三件であります。これは認知件数だけです。つかまらなかったけれども、現実にはこの何倍もの痴漢が発生し、被害届も出さずに泣き寝入りしているものと思われます。
 都営地下鉄では新宿線において、平成十七年五月にモデル実施、新宿から本八幡間で、平成十八年十二月には本八幡から新宿間で、いずれも朝のラッシュ時間帯に女性専用車両を導入いたしました。この新宿線の女性専用車両は女性には大変評判がよく、多くの賛同を得ております。女性専用車両は全国的にも要望が強く、都営地下鉄でも今後さらに路線を拡大すべきと考えます。
 新宿線において女性専用車両を本格的に導入してから約二年が経過し、女性専用車両の状況もわかってきたと思いますが、これまで女性専用車両を運営する上で問題となるようなことはなかったでしょうか。

交通局長
 新宿線における女性専用車両の運行に当たりましては、当初は、お客様がふなれなことから、ホームや車内での混乱を防止するため、案内整理員を新たに配置するなど、万全を期したところでございます。
 新宿線は、車両が八両または十両編成で運行を行っておりまして、混雑率も大江戸線ほどは高くなく、相互直通運転を行っている会社が一社であるという、女性専用車両を運営する上では有利な条件にございました。お客様のご協力などもありまして、運行開始当初から大きなトラブルは生じておりません。


野上委員
 新宿線における女性専用車両の運営では、特に問題がないということがわかりました。女性だけでなく、小学生、それから障害者の方も利用できますし、何よりも男性の冤罪を防ぐためにも女性専用車両は必要であり、最も有効な対策です。
 これから年末にかけて酔っぱらいが多くなりますが、十一時を過ぎた深夜の時間帯などでの導入、これは既に京王線で導入されております。新宿線と相互乗り入れをしている京王線ですので、検討はしやすいと思います。また、都営地下鉄新宿線以外の浅草線、大江戸線、三田線など他の路線への導入も検討すべきです。ぜひ女性専用車両の路線の拡大、深夜の時間帯への導入を強く要望いたします。

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水道事業

野上委員
 次に、水道局について伺います。
 平成十六年の六月から、水道局では、安全でおいしい水プロジェクトとして、都民に安全でおいしい水を届けるために、水源から蛇口に至るまでさまざまな施策を実施してきました。その一環として、昨年度から、公立小学校の水飲み栓直結給水化モデル事業を立ち上げています。私も小学校の教員として長年教壇に立ってきましたが、学校では夏場の水は生ぬるく、土日の休み明けの水はおいしくありません。貯水槽の水が滞留するからです。
 次世代を担う児童に水の本当のおいしさを伝えていくことは、私たち大人が当然のこととして受け継いできた日本のよき伝統を伝えていくことであり、極めて意義深いことと受けとめております。そうした面から、本事業を立ち上げた水道局の取り組みを評価したいと思います。
 そこで、事業開始から一年を経て、実際に直結化を行った学校の評価は、どんな声が聞かれるのか、伺います。

水道局長
 直結化を行った学校での評価についてでございますが、水道局では、平成十九年度に直結給水化工事を実施した三十一校のうち、夏休み期間中に工事が完了した二十二校において、事業効果を把握するため、四年生以上の児童と教職員合わせて五千名を対象に、工事の前後にアンケート調査を実施いたしました。
 その結果、教職員からの回答では、水道水に満足しているが三割から六割に増加するとともに、学校の水道水を飲む児童も八割を超えました。また、アンケートの中の自由意見では、児童から、水がおいしくなったのでたくさん飲むようになった、冷たい水がすぐ出るようになったなどの声が寄せられ、また教職員からも、水筒を持参する児童が減ったなど、本モデル事業に対して高い評価をいただいております。


野上委員
 児童等の評価も高く、本事業を今後も推進していただきたいと思います。
 この事業は、学校の耐震化、補強等の工事と兼ねて行ったりしているようですが、中国の四川大地震の後、学校の耐震事業も急ピッチで進んでおりまして、私の地元の葛飾区におきましては、小学校、中学校ともに一〇〇%耐震化が完了しました。そうした耐震化の工事とともに水飲み栓直結事業を推進していこうとの流れに乗れない学校も出てくるわけでございます。これからの課題となりますが、そうした学校も前向きに検討していただきたいと要望しておきます。
 水道局ではこれまでも、「水道ニュース」や水道キャラバンなどを通じて事業のPRを行ってきておりますが、今後さらに学校の直結給水化を進めていくためには、区市町への情報提供やサポートの充実が欠かせないと思います。区市町の置かれたそれぞれの事情をしんしゃくしながら、緊密に連絡をとって事業を進めていただくようお願いいたします。
 小学校の水飲み栓直結化を初め、水道局がさまざまな施策に取り組み、より安全でおいしい水の供給を推進していることは、我が党も高く評価しております。今後も積極的に進めていっていただきたいと考えております。
 そこで、安全でおいしい水の供給に向けた局長の決意を伺います。

水道局長
 水道局では、より多くのお客様に安心しておいしい水道水を飲んでいただくために、安全でおいしい水プロジェクトを実施しております。このプロジェクトの一環として、利根川水系の全浄水場への高度浄水処理の導入や、塩素濃度の低いおいしい水を供給するための残留塩素低減化対策、ビルやマンションの各階へ配水管から直接給水する直結給水方式の普及促進など、水源から蛇口に至るまでの総合的な施策を進めております。
 また、水道水の安全性やおいしさへの理解を深めていただくため、小学校四年生を対象とした水道キャラバンや親子水道施設見学会など、各種イベントなどを実施しております。
 こうした施策を積極的に実施していくことにより、蛇口から直接水を飲むという日本が誇る水道文化を守り、次の世代に継承してまいります。


野上委員
 こうしたおいしい水も、事故や渇水などのときにも確実に供給できなければ、都民の期待にこたえることはできません。給水の安定性を確保することは、水のおいしさと同様に重要なことといえます。先ほど局長が、八ッ場ダムなど必要な水源開発を着実に推進していくとの答弁がありましたが、我が党もまさにそのとおりだと考えております。
 二十世紀には石油争奪で戦争が勃発したが、二十一世紀には水が原因で戦争が起こるだろうと、「ニューズウイーク」等で報じられてきております。日本人は、世界各国で進行している水危機について、まだまだ他人事のようにとらえ過ぎているのではないでしょうか。私たちの子どもや孫の世代においても安全でおいしい水を供給し続けられるよう、八ッ場ダムなどの水源の確保についても積極的に推進していただきたいと申し述べておきます。

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下水道事業

野上委員
 次に、下水道局の環境対策について質問いたします。
 我が都議会公明党は、一貫して環境保全の重要性を訴えてきました。下水道局では以前から、水環境の保全のため、都民、事業者に、下水道に油を流さないよう呼びかける啓発運動を行っています。
 また最近では、使用する油の量を控えた料理を紹介するダイエットレシピを配布しています。ダイエットレシピはどのような観点から作成したのか、伺います。

下水道局長
 下水道に油を流しますと、下水道管の中で固まり、詰まりや悪臭の原因になります。また、大雨が降りますと、管内にこびりついた油がはがされ、大量の雨水とともに川や海に流れ出すこともあります。
 このため、当局では、都民や事業者の方々に対しまして、下水道に油を流さないよう呼びかける啓発活動を行っております。
 ダイエットレシピは、この啓発活動の取り組みの一つといたしまして、調理方法を工夫して、使用する油の量を控えた料理を紹介するもので、当局職員の発想によりまして、栄養専門学校と連携をいたしまして、平成十七年度に初めて作成したものでございます。
 当局といたしましては、下水道への油の流入を減らすとともに、使用する油の量が減ることで、食べる方々の健康にも配慮したこのダイエットレシピを普及させまして、食事という身近なことを通じて、都民の方々に下水道に油を流さないという意識を広め、下水道に対する関心や親しみを持っていただきたいとの趣旨で現在PRに努めているところでございます。


野上委員
 私は料理教室を地域の方々と行っていて、その中で、ダイエットレシピを使って幾つかの料理も取り上げてみました。特に、油の量を極力少なくして電子レンジを上手に活用した料理は定評があります。下水道に油を流さないということと健康とを結びつけるというダイエットレシピのコンセプトは、健康に関心が高まっている時代状況とマッチする、都民が取り組みやすい方法です。
 下水道局は、せっかくつくったこのダイエットレシピをより多くの人にPRして、使ってもらうことが大事ではないかと思います。その方法はどのようにしているのでしょうか。

下水道局長
 初めてダイエットレシピを作成いたしました平成十七年度は、約一万部を、当局の水再生センターでのイベントや区市町村が実施する各種のイベントで配布いたしました。翌年度以降は順次配布場所を拡大いたしまして、都民の方々が気軽に手にとっていただけるよう、区市町村や金融機関、交通機関に協力を依頼いたしまして、各窓口において配布をしたり、子どもたちを通して家庭にも広めてもらうために、都内のすべての小学校へ配布するなどいたしまして、これまでに約百二十万部を配布したところでございます。
 また、レシピの配布だけでなく、幾つかのイベントでは料理の実演と試食会も実施し、ダイエットレシピのよさを実感していただく取り組みも行っております。
 さらに昨年度からは、レシピへの関心をより高めることをねらいといたしまして、ダイエットレシピコンテストを開始し、レシピの公募を行っておりますが、今年度は募集対象を全国の栄養士、調理師養成学校などに拡大したところ、約三千件の応募がありまして、予想以上の反応の高さに驚いているところでございます。
 今後とも、下水道に対する関心や親しみを持っていただくよう、ダイエットレシピを使ったPRを積極的に進めてまいります。


野上委員
 ダイエットレシピは、健康と下水道を結びつけることにより、全国からも注目され、人々の関心や興味を引くものとなっています。今後とも、より多くのダイエットレシピを作成してホームページに掲載するなどして、都民一人一人の環境意識を高め、環境に配慮した行動に参加するよう促していく取り組みを積極的に進めていってほしいと思います。

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医療

野上委員
 次に、病院経営本部に入ります。
 先月四日、墨東病院に緊急搬送された妊婦さんがお亡くなりになったことについて、亡くなられた方及びご遺族の方に対し、改めて心から哀悼の意を表します。
 また、今月五日には、九月の下旬、多摩地域に居住されていた妊婦さんが、今回の墨東病院の件と同じ脳内出血を発症し、総合周産期母子医療センターを含む六病院に搬送を断られ、結果的には墨東病院に母体搬送され、無事お子様は出産されたものの、いまだに意識不明の状態であることが判明いたしました。改めて周産期医療と救急医療の連携のあり方が大きな問題として浮き彫りになってきたといえます。
 これは、東京都だけでなく、国レベルの問題としてしっかり受けとめ、その打開策に向けて対応していただくよう、私どもも総力を挙げて要請していきたいと考えております。この連携のあり方については福祉保健局ということで、別の機会に質疑をさせていただきます。
 いずれにしましても、根本的には産科医不足が大きな要因となっていることは間違いありません。現在、全国的な産科医不足が問題となっており、そうした中にあっても、女性医師の割合が高まっていることは承知しております。女性医師が結婚、出産等をしても、勤務と家庭との両立が可能となる働きやすい職場環境づくりを行うことができれば、離職防止につながり、また若手医師においても産科を希望するようになると考えます。
 そこで、改めて都立病院における女性医師の割合について伺います。

病院経営本部長
 平成十九年十月一日現在での都立病院における医師総数八百八名に対し、女性医師は百八十六名であり、その割合は二三%であります。
 なお、このうち産婦人科に関しては、とりわけ女性の割合が高く、同時点で、現員三十五名のうち女性医師十八名と、半数を超える状況になっております。


野上委員
 都立病院産婦人科においても、女性医師が実に半数を超えている現状があるわけです。我が党は、ふえ続ける女性医師の方々がワークライフバランスが可能となるよう、医療現場の実態に即した形での現実的かつ効果的な対策を講じていただくよう、一貫して主張してきました。
 私も、昨年の第三回定例都議会の代表質問において、子育て支援の重要性について言及し、特に、三交代勤務が行われている都立病院などで率先して二十四時間保育体制を実施するよう主張しました。そのことに対し病院経営本部からは、院内保育室の二十四時間化は、医療に従事する女性職員の確保と定着のために有効な方策の一つであり、実施に向け検討を進めるという前向きなご答弁をいただいております。
 そこで、都立病院における院内保育室の充実の進捗状況、並びに女性医師が出産しても安心して勤務を続けられるよう、どのような対策を講じてきたのか、またその成果についてもお伺いします。

病院経営本部長
 女性医師対策として、平成十九年度には、院内保育室の対象年齢を二歳未満から三歳までに拡大するとともに、一部の都立病院において午後十時までの延長保育を実施するなど、育児支援の充実を図ったところであります。
 その後も、さらなる対策の強化に向けて、利用頻度の高い一部病院の院内保育室の二十四時間化や、育児期間中においても柔軟な勤務が可能となる育児短時間勤務制度の導入について検討を行い、それぞれ本年四月と七月から実施に移しております。
 ちなみに、二十四時間保育については、府中、墨東病院で本年四月から、また大塚病院においても十月から実施しておりますが、子育て中の女性医師等から非常に好評を得ているところでございます。また、育児短時間勤務制度についても、既に六名の女性医師が利用しております。
 これらの対策は、都立病院医師不足の状況を少しでも解消する点で、確かな成果につながっていると考えております。


野上委員
 我が党の主張が実り、院内保育室の二十四時間化などの対策を講じていただいたことは大いに評価します。また、こうした対策により、本来ならば離職していたかもしれない女性医師が現場に踏みとどまっていただいたことは、都立病院にとっても一つの成果であったと思います。
 私にも女性医師の友人がおりますが、保育園の送り迎えをしてくれる人とベビーシッター、そして、病気のときの地方からわざわざ新幹線で駆けつけてくれる実家の母親の手助けがなければやっていけなかったということを聞いております。
 またもう一人、離職をしてしまった友人は、子どもさんが二人目になったときに、もうやっていけないと限界を感じ、職をやむなく離れました。こうした一度離職した女性医師が再度働くための環境づくりも大切な要素だと思います。研修会や講習会などを開くなど再教育を行って、職場復帰ができるよう、今後とも女性医師が働きやすい環境づくりに向けて尽力されるよう要望します。
 次に、都立病院の女性専用外来について伺います。
 女性特有の身体的症状や精神的不安などを総合的に診療できるのが女性専用外来です。ジェンダー・スペシフィック・メディシン、つまり性差に基づいた医療は--多くの生理学的研究が男性をモデルにしております。体重八十キロの男性と体重四十五キロの女性が同じ薬の量を調合されても、女性には薬が効き過ぎてしまうということもあります。さらに更年期障害とかがありまして、体の構造、体質、ホルモンの働きの違いなど、性差を見きわめた治療が大切といわれております。
 平成十五年当時、女性専用外来というのは、全国、民間、公立合わせて四病院しかございませんでしたが、ことしはもう既に百を超えております。女性の気持ちがよくわかり、安心して診療が受けられる、男性の医師に聞くのは恥ずかしいと思っていることが気軽に相談できると大好評でございます。
 思春期から更年期まで女性特有の病気について、性差を考慮しつつ、トータルな立場から看護師さんや女医の診察を受ける女性専用外来でございますが、ホルモンバランスの変化等による女性特有のストレス、心身の変調など、専門の医師が診断、治療を行う女性専用外来でございますけれども、これは我が党の主張により、平成十五年七月に、大塚病院に最初に女性専用外来が設置されたところです。続いて、平成十六年七月に墨東病院、平成十六年九月に府中病院と次々に設置され、現在、都立病院では三病院で開設をしております。
 受診患者さんからは、診療時間が長く、丁寧に話を聞いていただき、不安が解消されたとか、初めて確定した病名がつけられ、安心して治療に専念できるなどの意見があったと伺っております。都立病院での高水準で専門性の高い医療機能を生かして都民ニーズにこたえていく取り組みとして、高く評価するものです。
 都立病院での女性専用外来は、皮切りとなった大塚病院での開設から五年が経過し、一つの節目を迎えたといえます。
 そこで伺いますが、平成十九年度の各病院の診療実績はどのような状況でしょうか。

病院経営本部長
 平成十九年度の女性専用外来の診療実績でございますが、大塚病院は、延べ患者数一千八百二十三名、前年度に比べ二百十六名の減、墨東病院は、延べ患者数一千二百九十七名、前年度に比べ四百四十三名の増、府中病院は、延べ患者数二百三十名で、前年度に比べ四十一名の増となっております。
 女性専用外来全体では、延べ患者数三千三百五十名で、前年度に比べ二百六十八名の増となってございます。


野上委員
 数多くの患者さんが利用され、全体として患者さんの数も着実にふえていることがわかりました。
 ただ、やはり女性特有の病気となると、診察や相談もなかなかしづらいこともあると思います。患者さんにとって利用しやすい女性専用外来であってこそ、初めてその存在意義があるといえます。患者さんが利用しやすい外来とするためには、いろいろと工夫も必要かと思います。
 そこで、各病院の女性専用外来の具体的な診療の体制や工夫についてどのようになっているか、お伺いいたします。

病院経営本部長
 女性専用外来は、大塚病院では週四日、墨東、府中病院では週三日、それぞれ診療を行っております。
 診察は、初診の場合、看護師による問診を含め三十分程度の時間をとっており、完全予約制で行っております。
 診察室は個室にしておりまして、患者さんのプライバシーに十分配慮し、ゆったりと受診できる環境を整えております。
 また、必要に応じて、他の診療科と連携して各専門医への紹介を行っていく振り分け外来としての機能も果たしております。
 なお、予約については、現在のところ、大塚病院ではおおむね四日先、墨東病院ではおおむね二週間先、府中病院ではおおむね翌日の予約が可能となっております。


野上委員
 各病院での診療の体制を整えていることがわかりました。引き続き、利用しやすい女性専用外来の運営をお願いいたします。
 なお、これは十九年度の公営企業会計の決算特別委員会なので、要望としてとどめておきますが、我が党の強い働きかけで設置された公社大久保病院の女性専用外来が、残念ながらことしの六月から休止となっております。担当医師の退職によるものと聞いておりますが、医師を確保し、一日も早く再開することを強く希望いたします。
 次に、駒込病院について伺います。
 我が党は、がん医療の推進に精力的に取り組んできました。先週の十一月五日も、都議会公明党議員団で駒込病院を改めて視察し、患者さんへの情報提供や緩和ケアのあり方について意見交換をしてきたところであります。
 この駒込病院は、都内に数あるがん治療の病院の中から、本年二月に、財団法人癌研究会有明病院とともに、都道府県がん診療連携拠点病院に指定されたと聞いております。
 そこでまず、都道府県がん診療連携拠点病院とはいかなるものなのか、お伺いいたします。

病院経営本部長
 都道府県がん診療連携拠点病院については、平成二十年三月に通知された厚生労働省のがん診療連携拠点病院の整備に関する指針に、その指定要件が定められております。
 指針によれば、都道府県の中心的ながん診療機能を担うもので、地域がん診療連携拠点病院で専門的ながん診療を行う医師、薬剤師、看護師等を対象とした研修の実施や、地域がん診療連携拠点病院に対する情報提供や診療支援の実施、さらには都道府県がん診療連携協議会を設置して、院内がん登録データの分析、評価や、地域連携クリニカルパスの整備などを行うなどの役割を担うこととされております。


野上委員
 ただいまのお話によれば、人材育成から医療機関同士の連携、データの分析、評価に至るまで、まさにその名前のとおり、東京都のがん医療の拠点として中心的な役割を果たしていくということであります。
 そこで、駒込病院が都道府県がん診療連携拠点病院としてその役割を果たしていくための取り組みについてお伺いいたします。

病院経営本部長
 駒込病院は、都道府県がん診療連携協議会の設置や、院内がん登録データの集積、分析、評価、地域連携の推進など、都におけるがん医療ネットワークの中心としての役割を果たすこととなっており、人材育成を中心に担う癌研有明病院との役割分担のもと、都道府県がん診療連携拠点病院としての取り組みを始めております。
 六月三十日には、駒込病院や癌研有明病院のほかに、十二の地域がん診療連携拠点病院と十の東京都認定がん診療病院、東京都医師会、行政の代表者から構成される東京都がん診療連携協議会を初めて開催いたしました。こうした協議会を通じて、がん診療の連携協力体制や、相談、支援、提供体制の構築を図るとともに、がん医療に関する情報交換を積極的に行っていくこととしております。
 今後も、駒込病院では、再編整備事業によるがん医療機能の充実に努めながら、東京都のがん医療ネットワークの中心としての役割を果たすことで、東京都全体のがん医療対策の推進に貢献してまいります。


野上委員
 駒込病院が東京都のがん医療政策において非常に大切な役割を果たしていくということが改めて認識できました。
 都民の死因の第一位ががんであり、全死亡の約三割をがんが占めるという現状をかんがみた場合、都道府県がん診療連携拠点病院に指定された駒込病院への都民の期待は大きなものがあるといえます。現在、駒込病院は、PFIによる改修工事がいよいよ着工され、ハード面での整備が本格化していきます。都民のための病院である都立病院として、質の高いがん医療の提供を図り、都民のがん医療への期待に対してこたえるためにも、しっかりとした体制を整えて取り組んでもらうことを要望して、私からの質疑を終わります。

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