菅東一(自民党)
菅委員
それでは、先ほどの石森委員に引き続きまして総括質疑をさせていただきます。
最初に、臨海副都心についてお尋ねいたします。
水辺の美しい景観と環境を生かした臨海副都心のまちづくりは、開発着手から二十年を迎えて総仕上げの段階に入り、発展を続けております。
ところで、まちづくりを円滑に進めるに当たっては、まず、その前提として、着実な土地処分と安定した財政基盤が確保される必要があります。中長期的視野で未来を展望すれば、環状二号線など広域交通基盤の整備、羽田空港の国際化などによって臨海副都心の魅力が一層高まっていくのは疑いのないところであります。こうした状況を踏まえた上で、平成二十七年度の概成に向けたまちづくりを後押しする立場から、臨海副都心の開発状況と今後の見込みについて質問したいと思います。
平成十九年度決算におきまして、臨海副都心の土地処分はどのような状況なのか。また、総仕上げの十年という大詰めを迎えて、土地処分の見通しが立っていることが重要であります。そこで、あわせて、平成二十年度以降の土地処分がどの程度決まっているのか、まず伺います。
港湾局長
臨海副都心におけます平成十九年度の土地処分の実績は六件でございまして、面積は約五ヘクタール、金額にいたしまして約三百六十七億円でございます。
また、平成二十年度以降の土地処分につきましては、現時点で進出事業者が決定しているものは十二件、約二十五ヘクタールでございます。
現在、有償処分面積百三十九ヘクタールのうち、八〇%に当たります百十二ヘクタールの処分が確定してございます。
菅委員
まちづくりを円滑に推進する前提である土地処分が着実に進んでいるようであります。
一方、今後も開発を着実に進めていくためには、土地処分の促進はもちろん、開発に当たり都市基盤の整備のために起債した大量の都債を確実に償還し、財政基盤を確固たるものとしていくことも重要であります。
そこで伺いますが、平成二十一年、二十二年度の二年間に、利子をも含め約二千五百億円に及ぶ都債の大量償還のピークが目前に迫っておりますが、都としてはどのような見通しを持っているのか、詳細にお聞かせ願います。
港湾局長
臨海副都心開発にかかわります発行済みの都債につきましては、平成十七年度以降は、起債時に予定してございました借りかえを行わず、平成十七年度から十九年度に約八百二十億円を償還いたしまして、大幅な金利負担軽減を図ってきたところでございます。
この償還後の平成十九年度決算では、資金運用額も含めまして、実質的な内部留保金は約千八百億円となってございます。
また、本年度は既に、六件の土地処分に伴いまして、約九百億円を収入してございます。進出事業者が決定いたしまして、今後、平成二十二年度までに収入の見込まれるものは六件、約千七百億円でございます。
こうしたことから、平成二十一年度、二十二年度に都債を大量に償還した後も、臨海地域開発事業会計の健全性は確保できるものと考えてございます。
しかしながら、平成二十六年度にも都債償還の大きな山が控えていることもございまして、これからしっかりと気を引き締めまして、引き続き土地処分を着実に進め、開発を支える財政基盤を万全なものとするとともに、都債償還を確実に実施してまいります。
菅委員
平成二十二年度までに約二千六百億円もの土地処分による収入が見込まれているという報告、心強い答弁をいただきました。少し安心いたしました。
ただし、油断は禁物であります。現在好調でも、それに甘んじることなく、引き続き開発の総仕上げに向けて土地処分を促進するとともに、着実に都債の償還を進め、財政基盤の強化を図るなど、さらなる努力が必要だと、こういうふうに思います。
また、土地処分に当たり、ただ売ればいいというものでもありません。処分した土地にどのような施設ができ、それが臨海副都心開発にどういう意味を持つのかが大事だと思います。
そこで、平成十九年度から二十二年度までの土地処分が臨海副都心の発展にどのように貢献するのか、この点についてもお伺いします。
港湾局長
臨海副都心は、研究開発、産業創生のまちとなります青海地区南側、コンベンションを核に業務機能が集積いたします有明南地区、豊かな水と緑に囲まれました住宅中心の有明北地区と、こういったコンセプトに基づきまして開発を進めてまいりました。
平成十九年度からの土地処分によります施設開設で、各地区ごとの特性がより具体化された街並みが順次形成されてまいります。
また、昨年度から開発に着手いたしました青海地区北側には、羽田空港国際化を見据えたビジネス拠点や、大規模な商業、文化施設などの立地を誘導することで、臨海副都心の核といたしまして、既に開発が進んでございます地区の機能を有機的に結びつける役割を果たすことを目指してございます。
今後、臨海副都心は、概成に向けまして、業務・商業、住宅などさまざまな機能のバランスがとれた一体性あるまちとしての形を整えるとともに、世界に誇れます環境配慮や文化発信を行うまちの基礎ができ上がってまいります。
菅委員
今、答弁がございましたように、全体の開発ビジョンを持ちながらも、各地区の特色を踏まえ、コンセプトに合致した土地処分が進められており、安心するとともに、開業が待ち遠しいと、そんな気がいたします。今後も明確なビジョンを持ってまちづくりを進めていただきたいと思います。
ところで、昨今、百年に一度ともいわれる金融危機が全世界を揺るがしている中、我が国の経済も、株安や円高が進み、企業業績が悪化するなど混迷を深めております。このような厳しい社会経済状況の中で、臨海副都心の開発にかける意気込みをお尋ねしたい、こういうふうに思います。
港湾局長
臨海副都心は、開発から二十年、バブルの崩壊によります厳しい試練の時期もございましたが、今日では九百二十社を超える企業が活動してございまして、また年間四千五百万人を超える人々が訪れるまちに成長してございます。
また、税収の面から見ますと、開発着手から現在までに推計で約一兆三千億円、うち都税は三千億円を超えまして、これがさまざまな施策を通しまして都民全般に還元されていると考えてございます。
菅先生お話しのように、経済の先行きは不透明でございまして、また、かなり厳しいことが想定できますが、この地域の持つポテンシャルをフルに活用するとともに、柔軟に土地処分を進めまして、臨海副都心が東京の活力を牽引していく役割を今後も果たしていけるよう、全力で取り組んでまいります。
また、二〇一六年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据えまして、臨海副都心から環境と調和した先駆的な都市モデルを世界に発信してまいります。
菅委員
ただいまのご答弁にありましたとおり、羽田空港や東京港などの陸海空の結節点に位置する臨海副都心は、東京の活力を牽引していく地域として、ますますその重要性が高まってまいります。
さらに、先ほど話がありましたように、オリンピック・パラリンピックが招致されれば、オリンピック・パラリンピックの競技場や選手村の舞台として世界の注目を集める地域でもあります。さらに発展が期待できると思います。この臨海副都心を都民の貴重な財産として次代に引き継ぐためにも、今後とも全力で開発に取り組んでいただきたい、このことをお願い申し上げます。
菅委員
次に、中央卸売市場についてお尋ねします。
卸売市場を取り巻く環境は、今日、品質管理の高度化や物流の効率化等の流通環境の変化への対応が必要になるなど大きく変化してきており、さらに、今後、景気の減速に伴う個人消費の減少等を考えますと、市場業者の経営状況が悪化するなど、厳しい状況に置かれることは容易に推測ができます。
一方で、平成十六年の卸売市場法の改正により、卸売業者による市場外での販売や仲卸業者による産地からの直接買い付け等が可能となり、来年四月からは卸売手数料が弾力化されるなど、これまでの市場取引に課せられていたさまざまな規制が緩和され、ビジネスチャンスとなる反面、競争力の強化が求められるようになっております。このような変化への対応が必要なことは、何も卸売市場に限ったことではありません。
多くの企業が生き残りを問われているように、卸売市場にも変革が求められているわけであります。卸売市場は、川上と呼ばれる生産者、出荷団体と、川下と呼ばれている小売、消費者を結ぶ川中に位置しておりますが、生産、消費活動が大きく変容している中、時代の変化を敏感に感じ取り、ニーズに即した対応を進めていかなければ、衰退を余儀なくされることは疑う余地がありません。現に、そのような対応がおくれていることが、近年、市場離れを生じさせ、取扱数量の減少など卸売市場の地盤沈下を招いているのではないでしょうか。都では、市場を取り巻く環境の変化を正確に把握し、市場の活性化を図るため、必要な施策に取り組んでいかなければなりません。
そこでまず、中央卸売市場では、生産、消費動向等を取り巻く環境変化を踏まえ、市場機能を高めるためにどのような取り組みを進めているのか、まずお伺いいたします。
中央卸売市場長
市場は、生鮮食料品等の流通拠点として、これらを効率的かつ安定的に都民へ供給できるよう、環境の変化に対応しながら必要な機能を確保していく必要がございます。
そのため、現在、青果物の基幹市場となっている大田市場では、大型輸送トラックへの対応や雨天時の荷さばき等、市場関係業者が分荷、配送を行いやすい環境を整えるため、都が屋根つき積み込み場を建設しているところでございます。
この工事に引き続き、卸売業者と仲卸業者が事業主体となって、大口事業者等に対応するため、一階は開放型の荷さばき場、二階は温度管理機能を備えた閉鎖型荷さばき場、屋上階は駐車場とする一体荷さばき場の建設を予定してございます。これらの施設整備により、品質管理の高度化及び場内物流の効率化を図ってまいります。
築地市場につきましては、近年の生産、消費動向に対応するため、高度な品質管理や効率的な物流システムを取り入れた新市場建設計画を進めているところでございます。
また、食肉市場では、仲卸業者の店舗や冷蔵庫等がある市場棟の改修工事を行い、コールドチェーンの構築や衛生対策の向上など、食肉流通における安全・安心を確保してまいります。
今後とも、業界と協力し、流通環境の変化に対応した市場機能の強化に取り組んでまいります。
菅委員
流通環境の変化に対応するための積極的な取り組みとして、大田市場では大規模な施設整備を進めているということがわかりました。
また、もう一つの基幹市場である築地市場は豊洲への移転を計画しているわけでありますが、移転先の豊洲新市場では、温度管理ができる閉鎖型施設や大口荷さばき施設、加工・パッケージ施設など、流通環境の変化をきちんと見据え、施設が計画されているというふうに聞いております。
大規模市場では、このような取り組みがなされているわけですが、その他の市場の中には、わずか五年で二割ないし三割も取扱量が落ちているというところもあり、今後、その他の市場が取り残されていかないのかということが大変危惧されているところであります。
そこで、中央卸売市場としては、市場間の格差についてどのように認識しているのでしょうか。また、取り扱いの減少が著しいその他の市場については、どのように取り組みを行っていくのか、お尋ねいたします。
中央卸売市場長
基幹市場である大田市場や築地市場に比べ、他の市場においては取扱数量が減少傾向にあり、市場間において格差が生じていることは認識してございます。
しかし、大規模な市場以外においても、それぞれの市場は地域における生産、生鮮食料品等の流通拠点としての役割を担っており、その機能を確保していくため、市場の活性化に取り組む必要がございます。
例えば、葛西市場におきましては、昨年九月に卸売業者がみずから卸売り場の一部を低温化いたしまして、このことにより、取扱数量を前年比で約五〇%伸ばしてございます。
また、本年七月には、淀橋市場松原分場を世田谷市場に統合いたしました。これは、取扱数量が減少していた世田谷市場に卸売業者や仲卸業者、売買参加者を集約することで、市場の集荷力、販売力の強化を目指したものでございます。
今後とも、流通環境の変化を踏まえ、各市場の果たしている役割に応じた活性化に努めてまいります。
菅委員
その他の市場でもさまざまな取り組みを行っているようでありますが、また、私の地元の板橋市場でも、ICタグを用いた車両ゲート管理の実証実験を行うなど、物流の効率化に向けた新たな取り組みを始めたところであると、そういうふうに聞いております。ぜひ、こういった市場も含めて積極的な取り組みを進めていただきたい、こういうふうに思います。
次に、首都圏の新たな基幹市場として整備していく豊洲新市場について伺いますが、今後、新市場予定地へ万全な土壌汚染対策を講じるに当たり、いかに確実かつ経済的に実施していくかが移転を進める上で喫緊の課題となっております。このことについては、現在、専門家会議の提言を踏まえ、技術会議において具体的な対策が検討されており、世間の注目を集めているところであります。
特に経費に関しては、プロジェクトマネジメント分野の専門家が加わり、縮減を図っていくというふうに聞いております。経費縮減の検討はきちんとやっていただくにしても、市場会計はいうまでもなく、卸、仲卸など市場業者の皆さんの使用料により賄われているわけであります。今後、土壌汚染対策計画が取りまとめられることになりますが、この対策費は、使用料として市場業者の負担となるのでしょうか。
また、技術会議で検討されている地下水管理システムなどは、施設完成後も維持管理が必要となるというふうにしておりますが、これに要する費用負担も含めて説明をお願い申し上げます。
中央卸売市場長
市場使用料は、中央卸売市場が公営企業という性格から、市場を運営していくために必要な経費のすべてを対象として算出することが原則でございますが、その性質上、市場使用料を充てることが適当でない経費については除外することといたしております。
まず、用地費につきましては、地価水準の高い東京で広大な敷地面積を必要とするため、極めて多額なものとなり、市場業者の負担が過大になることや、市場用地は中央卸売市場の財産として将来にわたって活用できることから、使用料の対象外としてございます。
また、今ご質問のございました土壌汚染対策あるいは防潮護岸などの基盤整備は、市場用地としての利用を可能とするための基礎的な整備でございまして、その経費は用地取得と一体で考えるべき性格のものであることから、使用料の対象外とする必要がございます。
土壌汚染対策の一環となる地下水管理システムの設置やその維持管理につきましても、同様に使用料の対象外というふうに考えてございます。
菅委員
技術会議では、公募の結果、二百二十一件もの新技術、新工法の提案があり、この中からすぐれた対策が選定されることが期待されます。
しかし、その一方で、実績が少ないゆえに、リスクを抱えるという不安的な声も一部にはあります。現在の技術会議の選定状況はどうなっているのでしょうか。特に実績の少ない新技術、新工法をどのように評価、検証していくのか、お尋ねいたします。
中央卸売市場長
公募提案の中には、実績の少ない新技術、新工法が見られますが、技術会議では、これらの提案につきましても、公募条件として求めた科学的根拠や実証データ等を精査し、他の提案と同様に、実効性や経済性、工期などを評価、検証してございます。
現在、汚染物質処理や液状化対策など各分野ごとに応募のあった提案の中から、各専門分野の委員が推奨した個々の技術、工法を組み合わせ、地下水の流出入を防ぐ遮水壁の設置から汚染物質処理、液状化対策、市場施設完成後の地下水管理まで、土壌汚染対策全体を網羅する案を複数策定したところでございます。
今後、これらの複数案について、必要に応じ具体的な施工方法等のヒアリングを行い、施工性、経済性、工期などの面から多角的に評価、検証していく予定でございます。
なお、当新市場予定地の土壌特性などから選定に至らなかった技術、工法のうち、有用と考えられるものは、他の土壌汚染対策において今後広く活用されるよう、提案者の了解等、事業者の技術資産の保護に配慮しつつ、公表する内容やその方法などを具体的に検討してまいります。
菅委員
最後に、今後のスケジュールについてお尋ねします。
この技術会議は八月に立ち上げられ、知事からは、おおむね三カ月間の期間をかけて結論を出していくという話でありましたが、既に十一月に入っております。技術会議の検討期間を適切に確保することは必要でありますけれども、会議の検討結果が出なければ、都としての土壌汚染対策計画も取りまとめられないわけであり、開場のスケジュールがどうなるかということが大変心配されます。技術会議の検討結果がまとまる時期及び今後のスケジュールについてお尋ねしておきます。
中央卸売市場長
技術会議の検討結果の取りまとめ時期は、当初、十月下旬ないし十一月上旬と予定しておりましたけれども、予想を大幅に上回る提案があり、また内容も多岐にわたりますことから、評価基準に関する課題の議論や、各委員による提案内容の検証、評価など、すぐれた提案を絞り込むための審査に時間を要している状況にございます。
技術会議では、現在、土壌汚染対策全体を網羅する案を複数策定したところでございまして、今後、評価、検証がより具体的に進んだ段階で検討期間の目途を定めることとしてございます。
また、豊洲新市場整備の全体スケジュールにつきましては、技術会議の結論に基づき都として土壌汚染対策計画を策定し、土壌汚染対策の内容とともに、必要な経費、開場までのスケジュールを明らかにしてまいります。
菅委員
技術会議において、実効性が高く経済性にもすぐれた対策を選定し、時代の変化に対応できる豊洲新市場の建設を着実に進めていっていただきたい、こういうふうに思っております。
菅委員
次に、交通局について伺います。
交通局の事業概要を見ますと、都営交通の歴史は、明治四十四年、西暦ですと一九一一年に東京市が電気局を開局し、路面電車事業を開始したときにさかのぼるということになっております。そうしますと、三年後の二〇一一年には創立百周年を迎えるわけで、改めてその歴史の長さに驚かされます。
創業の事業であった路面電車事業は、現在、都電荒川線のみとなってしまいましたが、関東大震災により、その路面電車が壊滅的な被害を受けた際の代替交通機関としてスタートしたバス事業は、営業キロ約七百八十キロと、我が国でも屈指の事業規模を誇っております。
一方、首都東京の公共交通網の整備を促進する目的のもと、昭和三十五年に開業した都営浅草線に始まる地下鉄事業も、その後、三田線、新宿線、そして平成十二年十二月には大江戸線全線が開業し、四線合わせた営業キロが百九キロまでに拡充されました。
今や都営交通は首都東京に欠かせない公共交通機関であるといっても過言ではありません。
平成十九年度の乗車人員を見ましても、地下鉄が前年度に比べ六・四%増の一日約二百三十万人となっており、鉄道網の整備により毎年減少してきたバスも約五十七万人と、わずかながらとはいえ、増加に転じております。
このような好調な事業状況もあって、平成十九年度決算は、平成十八年度に引き続き、交通事業会計、高速電車事業会計、電気事業会計とも、経常損益で黒字を計上しております。乗車人員も増加しており、財務状況も改善されてきているわけでありますが、そこで、このような局の現状についてどのような認識を持っているのか、局長の所見を伺います。
交通局長
交通局では、平成十八年度、十九年度と、二年続けてすべての会計で経常黒字を達成することができました。これは、地下鉄やバスの乗車人員が好調に推移したことに加えまして、これまでの長年にわたる経営効率化の成果が相まった結果であると考えております。
しかしながら、乗車人員につきましては、景気の不透明感が増していることや、東京の人口が中長期的には緩やかに減少していくと予測されているなど、将来的には大きな伸びを期待することができない状況にあります。
また、地下鉄事業は四千六百億円を超える累積欠損金を抱えておりまして、バス事業も営業損益では赤字が続いております。この三月に開業いたしました日暮里・舎人ライナーも、多額の建設費をこれから長期間かけて乗車料収入で回収していくことから、当分の間、厳しい経営状況が続いてまいります。
今後、安全対策の推進やサービスの向上、福祉、環境対策などをより充実させていくためには多額の投資が必要でございまして、決して楽観できる経営状況にはないと認識しております。
菅委員
確かに、ここ二年間、単年度ベースでは黒字を計上できたとはいえ、今、答弁にありましたように、地下鉄事業でいまだ膨大な累積欠損金を抱えるとともに、日暮里・舎人ライナーもこれから建設費を回収していかなければならないなどと、もろ手を挙げて喜べるような経営状況にはないといえると思います。
しかし、その一方で、都営交通には一日約三百万人という多くの利用者がおります。利用目的や利用経路はさまざまでしょうが、利用者が望んでいるのは、安全で正確な運行ではないかと思います。平成十七年四月のJR福知山線の事故を受け、平成十八年十月から、いわゆる運輸安全一括法が施行され、全国の交通事業者と同様、交通局はこれまで以上に厳しい安全管理体制が求められるようになりました。毎年、安全管理体制全般について国の立入検査を受ける、こういうふうに聞いております。
このように安全への対応がより厳しく求められるようになってきた中で、交通局はどのような安全対策を行っているのか、その主な取り組みについてお尋ねします。
交通局長
お客様に安心して都営交通をご利用いただくためには、さまざまな角度から安全対策を講じていく必要がございます。
主な取り組みといたしましては、ハード面では、駅の火災対策の強化を目指した排煙設備の整備や車両の不燃化を促進するとともに、転落事故防止を目的とした保護さくにつきましては、平成二十五年度までに大江戸線のすべての駅に設置できるよう準備を進めております。
また、バス事業におきましても、避難誘導の指示などを迅速に行うことができる音声通話専用無線を全車両に導入し、緊急時の対応の強化を図っております。
さらに、ソフト面では、より実践的な訓練や、過去の事故事例をもとにした研修を充実、強化するとともに、都営交通安全の日を定めまして、すべての職場で仕事の見直し、安全の再点検に取り組むなど、職員の安全意識の向上を図っております。
今後とも、ハード、ソフト両面から各種の安全対策を進め、一丸となって安全確保に努めてまいります。
菅委員
ハード、ソフト両面での安全の向上に努めておられるということがよくわかりました。
都営交通にもやっと光が差し込んできた中にあって、ここで大きな事故でも起こせば、今までの苦労が水の泡と消えかねません。ぜひ、いま一度気を引き締め、安全の確保に全力を注いでいただきたいというふうに思います。
あわせて、サービスの向上も極めて重要であります。私がいうまでもなく、交通事業はサービス業であり、利用者のニーズや期待に的確にこたえていくことが求められます。しかし、エレベーター、エスカレーターの設置や車両の増備など多額な費用がかかる施策については、収支状況も見ながら、ある程度の時間をかけて対応せざるを得ない場合もあると思います。より多くの人々に都営交通を利用してもらうためには、利便性や快適性を高めるための投資を必要以上に惜しんではならない、こういうふうに思います。
また、サービスという点では、駅の職員やバスの乗務員の接客態度も大きなポイントとなるのではないかと思います。施設や設備の改良も進み、職員のサービスも、以前に比べれば大分よくなっている感じはいたしますが、今も交通局には、利用者からさまざまな苦情や意見が寄せられていることと思います。
そこで、交通局では、サービスを向上させるためにどのような取り組みをしているのか、お尋ねいたします。
交通局長
ご指摘のとおり、交通事業はサービス業でございまして、常にお客様本位のサービスの提供に努めていかなければならないと考えております。
そのため、地下鉄事業では、例えば駅の利便性、快適性の向上を目指して、エレベーター、エスカレーターの設置や、よりわかりやすい案内サインへの改良、冷房化の推進などに取り組んでおります。
バス事業においては、バス停の上屋やベンチ、運行状況を表示するバス接近表示装置を増設するとともに、更新する車両は、すべて最新の排出ガス規制をクリアしたノンステップバスとしております。
また、お客様から寄せられた声をサービス改善に迅速に生かすとともに、都営交通のサービスレベルを定期的に評価していただきます巡回モニター制度も導入しております。また、各職場におけるサービス向上運動の推進などにも取り組んでおります。
こうした取り組みによりまして、平成十九年度は、前年度に比べてお客様からの苦情を二割以上減少させることができました。
都営交通は、民間同業者との厳しいサービス競争の中で事業を行っておりまして、今後とも、ハード、ソフト両面から、常に質の高いサービスを提供できるよう努力を重ねてまいります。
菅委員
さて、安全とサービスについてお話をお聞きいたしました。交通局は公営企業であります。民間同業者との厳しい競争の中、早朝から深夜まで地下鉄、バスなどを絶え間なく運行することは大変な努力が必要かと思いますが、安全で快適なサービスを提供することに加え、公営企業として、環境や福祉の面で、他の交通事業者を先導する役割をぜひ果たしていただきたいというふうに思います。
そこで、最後に、これからの交通局の事業運営に向けた局長の決意を伺います。
交通局長
都営交通は、現在、地下鉄、バスなどを合わせまして、一日約三百万人ものお客様にご利用いただいておりまして、この多くのお客様の安全・安心の確保をまず最優先事項として力を注いでまいりたいと思います。
また、お客様に満足していただけるよう、より質の高いサービスをきめ細かく提供することに努めてまいります。
さらに、今お話がありましたように、環境や福祉、観光振興などの面で行政施策とより一層連携し、都の公営企業としての役割を果たしていかなければならないと考えております。そのためにも、経営計画新チャレンジ二〇〇七に掲げた各種の事業や経営効率化の取り組みを着実に実施してまいります。
今後とも、局事業を支える第一線の現場を初めとする局職員一丸となって、これまで以上にお客様から信頼され、支持される都営交通となるよう、全力で取り組んでまいります。