石森たかゆき(自民党)
石森委員
それでは、都議会自民党を代表して、最初の総括質疑をさせていただきます。
まず初めに、先月、墨東病院に救急搬送された妊婦が亡くなられたことについて、ご本人及びご遺族の方々に衷心から哀悼の意を表します。
我が子の誕生、そして成長を心待ちにしていた母親が願いをかなえられなかったことは、耐えがたい悲しみであり、周産期医療の厳しさと重大性を強く認識したところであります。
さきの第二分科会でも、事故の起きた直後であったことから質疑がなされておりますが、周産期医療は都立病院の重要な役割の一つであり、改めて何点か確認をさせていただきたいと思います。
墨東病院では、産科医師が年々減少する中、今回のような母体搬送の受け入れ件数は、十七年度百四十二件、十八年度百六十六件、十九年度百九十九件と、むしろふえておりまして、都内九カ所の総合周産期母子医療センターの中で最大の受け入れ実績であると伺っております。
また、この数年、低出生体重児の割合はふえ続けていると聞いておりまして、今後ますます都立病院における周産期医療の充実が求められるところであります。一方で、今回の事案の根本的な原因でもある産科医不足は、東京においても例外ではありません。
そういった中にあって、病院経営本部が産科医確保に向けどのような取り組みを行ってきたのか、まずお伺いいたします。
病院経営本部長
まず、今回の墨東病院で生じた事態について、この場をおかりして、亡くなられた方及びご遺族の方に対し、改めて心から哀悼の意を表させていただきます。
病院経営本部では、これまでも大学医局や地域医師会に何度も足を運び、医師の派遣を要請するとともに、医師の勤務環境改善に関する意見などを伺ってまいりました。これらの意見や都立病院産科医師の状況等を踏まえ、議会からのご支援もいただき、平成十九年度は宿日直手当を改善するとともに、さらなる改善策を検討してきました。
その結果、今年度は、初任給調整手当の見直し、各種手当の新設などにより、産科医の年収を約三百万円増額する大幅な改善を行うとともに、育児短時間勤務制度の導入、院内保育室の二十四時間の運営など勤務環境の改善策も講じております。
さらに、今年度開講した東京医師アカデミーにおいても産婦人科コースを設置して、若手医師の確保、育成に積極的に取り組んでおります。
なお、こうした事態の根本的要因は産科医の絶対的な不足にあることから、緊急かつ効果的な対策を講じるよう、国に対し強く要請してまいります。
石森委員
ただいまご答弁のとおり、病院経営本部が処遇改善などの施策を講じているにもかかわらず、産科医はいまだ不足している状況にあります。その原因は国の施策によるところが大きいわけですが、都民にとって重大かつ深刻な問題であるとの認識から、我が党におきましては、十月二十三日、周産期医療体制の強化を求める緊急要望、同三十日には、都民、中小企業を取り巻く厳しい経済環境への緊急要望により、産科医師確保や周産期医療体制の早期構築を緊急要望したところであります。
このような中、都は、先月末に発表した東京緊急対策Ⅱの中で、周産期医療緊急対策として、国に対し、産科、小児科医師の確保などについて緊急提案するとともに、都立病院における医療体制の充実及び産科医師確保対策の充実を実施することといたしました。これら施策は、これまで実施してきた周産期医療の充実に向けた取り組みの一環あるいは延長線上にあるものだと思います。
そこで、周産期医療の充実に向けた基本的な考え方についてお尋ねいたします。
病院経営本部長
出産年齢の上昇等によりハイリスク妊娠は増加する傾向にあり、東京都における周産期医療に対するニーズは近年ますます高まっております。
こうした状況を踏まえ、病院経営本部では、都立病院の周産期医療体制の一層の充実をハード、ソフトの両面から行っていくこととしております。
具体的には、区部においては、墨東病院に加え、新たに大塚病院にM-FICU六床を整備し、平成二十一年度中に総合周産期母子医療センターとして機能充実を図ってまいります。また、多摩地域では、M-FICU九床、NICU二十四床を整備し、平成二十二年三月開設予定の多摩総合医療センターと小児総合医療センターが一体的に総合周産期母子医療センターを運営してまいります。
さらに、産科医師確保と地域医療連携を推進するため、地域医療機関の産科医師と協力して分娩業務等を行う産科診療協力医師登録制度の創設や、ハイリスク患者の受け入れ、紹介機能の充実に向けた助産師等コーディネーターの配置について、東京緊急対策Ⅱに盛り込んだところでございます。
このようにさまざまな角度から必要な施策を積極的に実施し、都内周産期医療の充実に努めてまいります。
石森委員
産科医師確保を進める一方で、都立病院が地域医療機関と連携し、助産師を活用する等、さまざまな取り組みを積み重ねていくという考えであることを確認させていただきました。
周産期医療の充実は決して容易な課題ではありません。しかし、こういった行政的医療を安定的に提供することこそ都立病院の使命でありますから、引き続きご努力いただくよう切に要望しておきます。
次に、平成十九年度の病院事業についてお伺いいたします。
医師確保など山積する課題を克服し、都立病院の役割を果たしていく上でも、経営基盤の確立が何より重要だと思います。近年、公立病院は、経営状況の悪化や医師不足に伴い診療体制の縮小を余儀なくされる状況にありまして、大変危惧しているところであります。
先ほどの質疑で取り上げた周産期医療など行政的医療は、多くの人員や経費を要するなど、現在の診療報酬制度においては不採算性の高い医療分野であります。こういった行政的医療の提供という都立病院の役割そのものが、経営を圧迫する要因になっていると推察されます。とはいえ、病院事業は独立採算の公営企業として運営しており、厳しい経営状況の中にあっても、たゆまぬ経営努力が必要です。
そこで、平成十九年度、都立病院ではどのような経営努力を行っていたのかをお伺いいたします。
病院経営本部長
病院経営本部では、各都立病院の経営努力を徹底して進めるため、活動目的を明確にして継続的、組織的に経営革新を行うためのマネジメント手法であるバランススコアカードを活用した経営管理を行っています。
これは、年度当初に本部のバランススコアカードを病院に示し、この内容を受けて各病院がそれぞれのバランススコアカードを策定し、病院と本部が一体となって四半期ごとに目標値の達成度を評価し、業務の見直し、改善を繰り返して実施していくというものでございます。
このような経営管理手法を活用した結果、平成十九年度の患者一人当たりの診療単価は増加し、入院、外来収益が約三億円増加いたしました。
一方、費用面では、都立病院で扱う薬品、診療材料等を一括で共同購入し、コスト削減を図ったことにより、実施前と比較して約三億三千七百万円の削減効果が生まれました。
また、コスト縮減と環境対策を両立させるESCO事業の実施により、実施前と比較して約一億六千六百万円の削減を実現いたしました。
今後も、収入、支出の両面にわたる経営努力を組織を挙げて行ってまいります。
石森委員
千葉県の市立病院のように経営悪化により診療休止に追い込まれる病院がある中で、都立病院としては大変努力をされているようであります。特に、医薬品、診療材料等、共同購入により三億三千七百万円もの費用を縮減したことは高く評価いたします。
そういった中で、改めて医業費用の状況について平成十九年度の決算説明資料で確認すると、十八年度に比べ、給与費、経費及び研究研修費が増加しております。中でも給与費が約二十一億円と著しく増加しておりますが、これはどのような原因によるものなのか、お伺いいたします。
病院経営本部長
給与費の増加が収支に大きな影響があったことはご指摘のとおりでございます。これは、退職手当の増、全庁的な制度改正による法定福利費の増のほか、宿日直手当の増額や非常勤職員の報酬改定といった医師の処遇改善によるものであります。
医師の処遇改善は、平成十八年度の初任給調整手当の引き上げに続き実施したものでありますが、こういった医師の処遇改善による費用は、優秀な医師の確保、育成による患者数の増加、さらには医療サービスの向上のための必要経費であり、都立病院が安定的な医療の提供を実現するために必要不可欠なものであると考えております。
石森委員
費用の増は、単なる支出増ではなくて、勤務条件の改善や福利厚生の充実など、総合的かつ重層的な医師確保対策に必要不可欠な経費であるとの答弁でありました。
確かに、労働集約的産業である病院事業において、優秀な人材を育てることこそ事業の根幹であり、その推進には、指導者、研修体制の充実や環境整備などに多くの経費が必要です。一般会計からの繰入金などの財源を確保して、安定的な医療を提供していただきたいと思います。
先ほど産科医不足についてお伺いいたしましたが、医療人材の不足は、診療休止や縮小など患者サービスを低下するのみならず、収入源を断たれた病院を財政危機に追い込んでおります。看護師も全国的に不足しており、人材不足が病院経営に大きな影響を及ぼすことはいうまでもありません。
このような中、第二次都立病院改革実行プログラムでは、病院の再編整備などハード面の整備を進めるとともに、ソフト面、すなわち人に重点を置いた都立病院改革を推進するとしております。
そこで、病院経営本部における医療人材の確保、育成のための基本方針についてお尋ねいたします。
病院経営本部長
先生ご指摘のとおり、医療人材の不足は病院経営に重大な影響を与えるものであり、都立病院においてもその対策は喫緊のものとなっております。
こうした認識のもと、本年一月に策定した第二次都立病院改革実行プログラムにおいても、再編整備などハード面の施策を進めるとともに、ソフト面の核となる、人に重点を置いた都立病院改革を推進することとしたところでございます。
具体的には、東京医師アカデミーを新たに設け、総合診療能力と高い専門性を兼ね備えた若手医師の育成体制を確立し、医師の確保に努めることとしており、本年四月に開講いたしました。
また、看護師については、新卒者の臨床研修や、その後のキャリアアップのための研修体系を充実するとともに、認定看護師等の資格取得支援を実施してまいります。
さらに、臨床検査技師、診療放射線技師、薬剤師及び栄養士の各職種についても、感染管理その他専門資格等の取得支援を実施してまいります。
こうした取り組みを病院経営本部と各病院が一体になって進めることにより、都立病院に優秀な医療人材を確保、育成していくこととしております。
石森委員
確かに病院事業は、人、即事業であり、職員の資質の向上が直接医療の質の向上に結びついています。ぜひとも精力的に人材育成を進めていただきたいと思います。
中でも東京医師アカデミーは、総合診療能力と高い専門性を兼ね備えた若手医師を育成する、極めて重要な事業であると受けとめております。
そこで、東京医師アカデミーの開講に向け、平成十九年度はどのような取り組みを実施したのか、お伺いいたします。
病院経営本部長
東京医師アカデミーは、次代を担う若手医師の確保、育成に向けた重要な事業でございます。
本アカデミーは、都立病院、公社病院の七千二百床のスケールメリットを生かし、学会専門医の受験資格取得や総合診療能力の醸成等を目的とする、都立病院独自の後期臨床研修制度であります。
平成十九年度は、本アカデミー開講に向け、各病院の院長、副院長等で構成する都立病院医師アカデミー構想検討委員会で育成システムの検討を重ねるとともに、診療科別ワーキンググループを設置し、具体的な研修内容を検討いたしました。
また、本アカデミー専用ホームページを病院経営本部ホームページに設けるなど、事業の内容とアカデミー生の募集について積極的に広報をしてまいりました。
この結果、都立病院では百九十四名の応募者があり、そのうち百二名を採用し、質、量ともに当初の期待に十分かなうものが得られたと考えております。
石森委員
我が党はこれまで、医師の処遇改善や東京医師アカデミーの開講を応援、推進してまいりました。その成果を大いに期待したいと思います。
今後とも、ぜひ医療人材の確保、育成を着実に推進し、医療サービスの質の向上に取り組んでいただきたいと思います。
これまでの質疑を通じ、周産期医療など不採算な行政的医療を担うという都立病院の役割を背景に、医師の確保、育成など困難な課題の克服に向け、病院経営本部が先手を打つといった形で鋭意取り組んでいることは理解できました。幾ら不採算であっても、行政的医療を都立病院が担っていくことこそ大きな意義があり、都民の願いでもあります。
今後とも、経営改善を進めるとともに、必要な一般会計繰入金を確保するなど経常収支を改善し、安定した経営基盤を確立する必要があると思います。
最後に、今後の病院経営に当たって、病院経営本部長の決意をお伺いいたします。
病院経営本部長
深刻な医師不足やたび重なる診療報酬のマイナス改定など、都立病院を取り巻く環境は非常に厳しい状況がございます。こうした医療環境にあっても、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を都民に提供することが都立病院の重要な役割であり、将来にわたりこの役割を安定的に果たしていくことが私どもの使命であると考えております。
この使命を十全に果たすためには、厳しい医療環境の中においても不断の経営努力を行い、経営基盤の一層の強化を図っていかなければならないことはいうまでもございません。経営本部と各病院が一丸となって、今後も経営努力を休むことなく続けてまいります。
また、昨今、その状況が深刻化している医療人材の不足については、都立病院における喫緊の課題であるという強い認識のもと、東京医師アカデミーなどの人材育成システムのさらなる充実や採用活動の一層の強化などを図り、その解決に努めてまいります。
こういったさまざまな取り組みにより、今後とも都民が安心できる医療体制を確保し、都民の信頼と期待に全力でこたえてまいります。
石森委員
本部長の力強い決意をお伺いいたしました。大変困難な状況下でありますが、ぜひ都民の不安を解消していただくよう、一層のご努力をお願いいたします。
石森委員
次に、水道事業についてお伺いいたします。
水道局では、平成十六年六月に安全でおいしい水プロジェクトをスタートし、これまでに四年余りが経過しております。私は、安全でおいしい水を安心して蛇口から飲めるということが、都民の日々の暮らしを支える最も重要な要素の一つであると考えております。
この問題につきましては、私もかねてから高い関心を持っておりまして、平成十七年の当委員会の場でも質問させていただきましたが、重要な課題でありますので、改めて、安全でおいしい水プロジェクトとして水道局が展開しているさまざまな事業の進捗状況を中心に何点かお伺いしたいと思います。
そもそもこのプロジェクトをスタートさせたのは、水道局がさまざまな施策を積み上げて水道水の質の向上に努めてきたにもかかわらず、そのことが都民に十分浸透していなかったことが背景にあると、当時伺いました。
平成十五年のお客様満足度調査では、飲み水としての水道水の水質について、不満と回答した都民が五割を超えるという驚くべき結果でありました。ところが、平成十八年の調査では三四%まで改善し、わずか三年で一六ポイント以上向上しております。確かに、私の身近でも、水道の水がおいしくなったという話をよく耳や目にするようになりました。これは、安全でおいしい水の供給に向けて、我が党が水道局とともにつくり上げてきたさまざまな施策が着実に実を結んできた成果であると思います。
同時に、金町浄水場や朝霞浄水場の高度浄水処理水をボトルに詰めたペットボトル「東京水」の果たした役割も少なくないと思います。
そこで、このペットボトル「東京水」の製造目的、活用方法などを含め、具体的な効果についてお伺いいたします。
水道局長
ペットボトル「東京水」は、高度浄水処理を行った水道水をお客様に飲んでいただき、そのおいしさを実感していただくことで、水道水に対する理解をより深めてもらうことを目的としたものであります。
「東京水」は、平成十九年度までに六十五万本以上製造し、水道週間行事や施設見学会などにおいて試飲していただいたり、配布を行うなど、積極的に活用をしております。
また、これ以外にも、「東京水」を手に入れたいというお客様の声にこたえて、都庁舎内の売店や一部都関連施設などにおいて販売も行っております。
近年、さまざまな種類のペットボトル水が製造されておりますが、その多くが地下水や源流水を詰めているのに対しまして、「東京水」は水道水をボトルに詰めたものであり、東京水道の高い技術力を広くPRするのに役立っております。
最近は、新聞やテレビでもたびたび取り上げられており、当局といたしましても、「東京水」を通じて東京の水道水の評価が着実に高まってきているのではないかと考えているところでございます。
石森委員
都民などから高い評価を得ている、そういったご答弁でございました。
ことし六月には、オリンピック立候補都市が決定された際、石原知事は「東京水」にも触れて、東京が見えないところで努力してきた点が総体的に評価されたという趣旨の発言をされたと聞いております。また、先ごろ東京で開催されたC40気候変動東京会議でも会議出席者に配布され、海外からの出席者にも大変好評であったと聞いております。
ぜひ、東京の水は世界に誇れるおいしい水なんだということを、引き続き積極的にPRしていただきたいと思います。
次に、水道水の水質管理のあり方についてお伺いいたします。
昨今、都民の食の安全を脅かす事件が相次いでおりますが、東京の水道水においては、このような安全・安心にかかわる問題は断じてあってはならないと思うものであります。このため、水道局では、他の事業体に先駆けて高度な水質管理体制を確立しているとのことですが、その具体的な内容をお伺いいたします。
水道局長
水道局では、平成十九年度に東京都版水安全計画となるTOKYO高度品質プログラムを策定し、今年度から運用を開始いたしました。このプログラムは、WHO、世界保健機関が提唱する水安全計画に加え、品質管理の国際規格や水質検査の信頼性を保証するISOの国際規格も一体で運用するものであります。
このプログラムでは、水源から蛇口に至るまでのあらゆる危害を想定し、危害が発生した場合の措置をマニュアルとして整備して、迅速で的確な対応を行うこととしております。
例えば、浄水場で取水する河川において油などが検出された場合には、その濃度に応じて活性炭の注入強化や、場合によっては浄水場の取水停止などの具体的な対応措置を定めるなど、きめ細かい水質管理体制を確立しております。
石森委員
東京の水の安全を守るために、あらゆる危害を想定し、対応策を考えておられることは心強い限りであります。さらに水道局では、そうした安全な水をおいしさの面でも高度化すべく、におい、味、外観に関して、国の定める基準よりも高いレベルの都独自のおいしさに関する水質目標を設定し、その達成に向けた取り組みを実施しております。
そこで、このおいしさに関する水質目標を設定した背景をお伺いいたします。
水道局長
水道局がお客様に提供する水道水は、国が定めた五十一項目の水質基準を高いレベルでクリアするなど、安全性の確保は万全であります。その上で、より一層のおいしさを求めるお客様のニーズにこたえるために、都では独自のおいしさに関する水質目標を設定いたしました。
具体的には、におい、味などに関する八項目につきまして、国の基準にない項目や、国よりも高いレベルの目標を設定しております。例えば、味にかかわる有機物については、国の基準は五ミリグラム・パー・リッター以下でございますが、都ではこれを大幅に下回る一以下を目標としております。また、水道水に残留する消毒用の塩素濃度につきましては、国の目標値は一ミリグラム・パー・リッター以下でございますが、塩素濃度が高いとカルキ臭を感じることから、都では、ほとんどの人がカルキ臭を感じない値の〇・四以下を目標としております。
石森委員
残留塩素は、その濃度が高くなると、水道水を使ったときにいわゆるカルキ臭を感じるようになるそうです。しかしながら、水道水に添加される塩素は消毒作用を有しており、これがあるからこそ水の安全性が保たれているわけであります。
水道局では、消毒効果は確実に確保しつつ、残留塩素をさらに低減させ、一層おいしい水の供給に向けた取り組みを行っていると聞いております。
そこで、現在どのような取り組みを行っているのか、お伺いいたします。
水道局長
残留塩素については、給水区域の末端でも必要な濃度を確保できるように、浄水場において塩素濃度の調整を行っております。末端で不足する塩素を途中で追加注入することで浄水場での塩素濃度を低くすることができれば、全体の残留塩素をさらに低減することができます。これを実現するための第一歩として、板橋区の給水所において遠隔制御のできる追加塩素注入設備を整備し、本年七月から運用を開始いたしました。これにより、給水所に送水している三園浄水場における塩素注入率を大幅に低減させることができました。
今後、平成二十一年度末までにさらに七カ所の給水所に同様の追加塩素注入設備を導入し、その他の浄水場においても残留塩素の低減化を図ってまいります。
石森委員
今ご答弁あったように、給水所で塩素を追加注入する設備が整えば、浄水場での塩素濃度を低く抑えられるわけでありますから、斬新で効果的な対応策なのだと思います。ぜひ今後とも積極的に取り組んでいっていただきたいと思います。
ところで、将来にわたり安全でおいしい水を安定的に供給していくためには、質の向上とともに、渇水に強い水道を築くことも非常に重要な要素であります。日本の首都である東京が一たび厳しい渇水となれば、都民の生活はもとより、首都機能に与える影響ははかり知れません。したがって、東京の持続的発展のためには、長期的な視点に立って大切な水の確保に努めるべきであると考えます。
そこで、最後に、八ッ場ダムなど、首都東京に必要不可欠な水源の確保に対する局長の決意をお聞かせいただきたいと思います。
水道局長
東京の水道は、一千二百万人の都民生活と首都機能を支える上で欠くことのできないライフラインであり、平常時はもとより、渇水時にも可能な限り安定給水を行えるよう水源を確保することは、水道事業者の重要な責務であると認識しております。
水源開発は計画策定から完成まで長期間を要する事業であり、例えば平成十年度に完成した浦山ダムは、昭和四十七年の計画から完成までに二十七年の歳月を要しております。このように水源の確保は一朝一夕でなし得るものではないことから、首都東京の将来を見据え、長期的な視点で行っていく必要があります。
今後とも、八ッ場ダムなど必要な水源開発を着実に推進することに全力を挙げて取り組んでまいります。
石森委員
世界に誇るべき安全でおいしい東京の水を将来的にも安定的に供給することに力を入れていくという、局長の力強い決意をお伺いいたしました。
一方、熊本県知事が反対を表明した川辺川ダムを例にとり、八ッ場ダムでも事業を中止すべきとする意見がありますが、日本の人口の一割を占め、政治経済の中心としての機能を持つ首都東京において治水、利水の両面から大きな役割を果たす八ッ場ダムを同列に扱うことは適切ではないと思います。
また、各地で渇水が頻発する一方、集中豪雨で甚大な被害が発生するなど、これまでの経験でははかり知れない気候変動の影響があらわれているのではないかと危惧しているところであります。こうした将来の不安に対する備えとしても、八ッ場ダムは必要不可欠と考えます。
水道局においては、引き続き、将来を見据えながら、安全でおいしい水の供給に向けてたゆまぬ努力を重ねていただくよう切に要望して、次に移りたいと思います。
石森委員
続いて、下水道事業についてお伺いいたします。
昨年末、我が国近代下水道の発祥の地である三河島水再生センターにある、れんがづくりのポンプ場施設が、下水道施設としては初めて国の重要文化財に指定されました。先週には、教育委員会の呼びかけで実施している東京文化財ウイーク二〇〇八の一環として、二日間にわたり特別公開され、多くの人でにぎわったとも聞いております。
このポンプ場施設が運転を開始したのは八十年以上も前の大正十一年三月、コレラの防疫対策として建設された神田下水は、さらに四十年さかのぼる明治十七年に着工されており、下水道施設は、明治、大正、昭和、平成と何世代にもわたって都民生活を支えてきました。
この間、東京は、人口集中などによる市街化の進展、急速な高度経済成長に伴う河川の水質悪化などの公害、また都市型水害の発生など、さまざまな課題を抱えてきましたが、下水道は、生活環境の改善、河川の水質保全、浸水の防除など、時代の要請に応じてその役割を果たしてきました。
このように長きにわたり都民の暮らしを支え続けてきた下水道も、老朽化が進みつつあり、計画的に更新するとともに、災害に強い都市づくりや地球温暖化防止など新たな課題に対応したレベルアップが望まれます。
さきの第三回定例会において、我が党の宇田川議員が下水道管渠の老朽化対策について質問しておりますが、老朽化による下水道施設の機能低下が懸念されるとともに、震災時には都民生活及び都市活動に大きな影響を与える可能性があり、その再構築を着実に行う必要があります。
そこでまず、区部下水道幹線の老朽化の現状と対策の進捗状況についてお尋ねいたします。
下水道局長
下水道幹線の再構築に当たりましては、老朽化への対応とともに、耐震性能の向上や雨水排除能力の増強など、機能の高度化を図ることとしております。
区部下水道幹線のうち、四十七幹線、約百二十キロメートルが法定耐用年数の五十年を経過しておりますが、このうち、平成十九年度末までに十五幹線の再構築に着手し、約十四キロメートルが完了しております。
石森委員
この老朽化対策にあわせて、雨水排除能力の向上など機能の高度化もあわせた再構築に取り組んでいるということでありますが、百二十キロメートルのうち十四キロメートルの完了と、実態は一割にとどまっております。思うように進んでいない理由についてお尋ねいたします。
下水道局長
再構築を進めるに際しましては、既設の下水道幹線の老朽化調査を行い、その結果に基づきまして優先度を決める必要がございます。また、幹線の老朽度や雨水排除能力などを評価し、新たな幹線を敷設するか既設の幹線を活用するかを判断し、工事を実施しております。
調査の対象となっております幹線は、法定耐用年数を経過した四十七幹線を含めまして三百八十六幹線、約一千百キロメートルに上り、中の下水の水位が高い、流速が速いなどの理由によりまして老朽化調査が困難な場所が多くございます。
また、工事は、交通量の多い幹線道路上で行われる場合も多く、施工方法や施工時間に制約がございます。さらに、既設の幹線を活用する場合には、下水道幹線の水位を低下させなければならず、現在使用しております幹線の下水を切りかえるためのバイパス管などを先行して整備する必要があり、その整備に多くの費用と期間を要します。
こうした理由によりまして、これまでは下水道幹線の再構築は部分的な対応にとどまっていたのが実情でございます。
石森委員
下水道幹線の再構築にはさまざまな課題があるというご答弁でございましたけれども、それら課題に対してどう対応しているのか、また、幹線再構築の今後の見通しについてあわせてお伺いいたします。
下水道局長
幹線の老朽化調査を進めるため、口径が大きく流量も多い幹線を無人で調査する新たな機械を開発するなどいたしまして、平成十八年度から本格的な調査を開始し、耐用年数五十年を経過した四十七幹線につきましては調査が完了しております。
こうした機械の活用などによりまして、調査の対象となっております三百八十六幹線の調査を早期に完了させるよう努めてまいります。
一方、下水の水位が高く流速が速い既設の幹線を活用して再構築を行う場合には、下水を切りかえるバイパス管等を整備するだけでなく、ポンプ運転の工夫などを図ることで、幹線の水位や流速を低下させた上で工事を実施しております。
また、道路を掘削せずに施工できる更生工法を積極的に活用することで、コスト縮減や工期短縮を図りながら再構築を進めております。
こうした対応を図りながら、耐用年数を経過した四十七幹線につきましては、調査結果に基づき今後十年以内に、優先度の高い十六幹線につきましてはすべての区間の再構築を完了させ、残り三十一幹線につきましても、老朽化の著しい区間につきましては再構築を実施する予定でございます。
将来にわたり安定した下水道サービスを提供していくため、耐震性などの機能向上も含めた幹線の再構築を着実に実施してまいります。
石森委員
今後もさまざまな取り組みを行い、下水道機能に支障が生じることのないよう、管渠の再構築を着実に進めていただきたいと思います。
下水道の老朽化といえば、幹線などの管渠だけでなく、水再生センターも老朽化が進んでいると思います。特に電気、機械設備は、耐用年数が短い上に技術革新が著しいということで、区部の水再生センターなどの設備についても順次更新を進めてきていると聞いております。
一方、高度経済成長の時代に整備に着手した多摩地域の下水道は、区部に比べて比較的新しいと思われがちですが、事業開始から既に約四十年が経過しており、老朽化による処理機能の低下が始まりつつあるのではないかと危惧されております。
そこで、流域下水道の水再生センターの設備の老朽化の現状と対応についてお尋ねいたします。
下水道局長
流域下水道の七カ所の水再生センターは、多摩ニュータウンの入居開始に合わせて昭和四十六年に稼働した南多摩水再生センターを初め、いずれも設備の老朽化が進んでおり、現在、約一五%の設備が耐用年数を超えております。こうした設備につきましては、老朽度、故障の頻度などを考慮し、優先度の高いものから順次更新を行っております。
しかし、現在のペースで設備を更新しても、今後十年で現在の倍の約三二%の設備が耐用年数を超える見込みでございます。このため、計画的な補修などによる予防保全に努めまして延命化を図り、更新に要する事業費を平準化するなど、計画的かつ効率的に設備の更新を進めてまいります。
石森委員
多摩地域の下水道も区部同様に老朽化が進みつつあり、それらの対応についてご答弁をいただきました。しかし、更新事業の実施に当たっては、単なる電気、機械設備の更新にとどまらず、地球温暖化防止対策を初めとした時代が要請するさまざまな課題に適切に対応しつつ、施設全体の更新事業を一層効率的かつ経済的に進めていく必要があると思います。
その更新事業を進める上での今後の取り組みについてお伺いいたします。
下水道局長
放流先の水質基準が強化されたことや、最新の耐震基準への適合、地球温暖化防止対策など、新たな課題への対応を求められております。このため、更新に合わせまして、高度処理の導入や施設の耐震補強、汚泥ガス化炉の導入による温室効果ガスの削減など、機能の高度化を着実に進め、レベルアップに努めてまいります。
また、水処理施設など大規模な施設の更新に当たりましては、長期間にわたり施設を停止させて実施しなければならないため、本来であればバックアップのための施設を新たに整備する必要がございます。そこで、多摩川を挟んで対面する二つの水再生センターを連絡管で結ぶことで、対岸の水再生センターの施設を有効利用し、バックアップ施設を不要とするなど、財政的な負担を軽減しつつ効率的な更新を行ってまいります。
こうしたことによりまして、多摩川を初めとした東京の良好な水環境の保全に貢献してまいります。
石森委員
引き続き計画的に老朽化対策を進め、安定的な下水道サービスを提供するとともに、時代の要請や技術革新に柔軟に対応してレベルアップし、東京を安全・安心、快適なまちとしていくことを要望しておきます。
石森委員
次に、大橋地区の再開発事業について伺います。
大橋地区の再開発事業は、首都圏三環状道路の一つである中央環状線の大橋ジャンクションと一体的なまちづくりとして取り組んでいる重要な事業であります。しかし、計画されている二棟の再開発ビルのうち、現在建築中の一棟については順調に工事が進んでいるものの、残る棟については、現在の不動産市況の急激な悪化の影響を受け、これまで実施した二回の特定建築者公募に対して応募がないという事態となっております。
このような事態は、本事業を契機として進められている大橋地区周辺のまちづくりのおくれにつながるばかりか、何よりも、新たな生活を一日でも早く始めたいと待ちわびている権利者の不安を増大させるものとなります。
このような状況の中で、都は、十月三十一日から三回目の特定建築者公募を開始いたしましたが、その内容によりますと、敷地処分予定価格や権利床等整備費などの条件が見直されております。
そこで、今回で三回目となる公募では、確実に特定建築者が決定されることが絶対条件でなければならないと考えますが、都の見解をお伺いいたします。
都市整備局長
大橋地区の一-一棟の特定建築者につきましては、これまで二回の公募に対して応募がなかったことを踏まえまして、今回の公募におきましては、民間事業者としての事業計画に基づく自主的な応募を可能にするとともに、競争性を発揮させるため、敷地処分予定価格を設定しないことといたしました。
また、権利床等整備費につきましては、急激な建設コストの高騰を踏まえ、実勢工事費で再度算定した額に見直し、あわせて公募開始から応募締め切りまでの検討期間を約一カ月延長いたしました。
このように民間事業者が応募しやすい環境を整えることによりまして、今回は確実に応募が期待できるものと考えております。