山口文江(ネット)
山口委員
障害児のための特別支援学校に付設されている寄宿舎について、都教育委員会は二〇〇六年十二月に、家庭の養育状況の改善、福祉サービス等の整備など、社会情勢の変化を理由に、入所基準を通学困難に限定する見直しを行っています。入所対象者は、通学困難の場合として、島しょに在住する児童生徒、九十分以上の通学時間を要する児童生徒、視覚障害の児童生徒の安全確保及び付き添い困難な家庭の事情と定めています。
その後、さらに年間利用率の低下から見て、入所対象者が減少してきたこと、またスクールバスによる通学時間の短縮を図り、自宅通学を可能にしていくなどにより、東京都特別支援教育推進計画第二次の実施計画では、二〇一五年までに十カ所あった寄宿舎を五カ所、つまり半減する寄宿舎の再編整備が掲げられています。
しかし、請願陳情、予算要望など、家族や関係者などからの寄宿舎存続の要望は後を絶ちません。まずは、通学時間の短縮について、現在スクールバスの乗車時間を九十分まで短縮していると聞いていますが、二〇〇七年度のスクールバスの乗車時間の状況について伺います。
教育長
最長乗車時間九十分以上のバス路線は、平成十八年度にすべて解消し、その結果、平成十九年度のスクールバスの平均乗車時間は約六十五分となっております。
今後、都立特別支援学校の規模と配置の適正化を進めていく中で、引き続き、スクールバスの乗車時間の短縮を図ってまいります。
山口委員
平均六十五分ということですが、往復でいえば約二時間ということですし、平均というわけですから、それ以上の乗車時間の児童生徒もいるということなので、通学の負担はできる限り短縮できるよう今後も努めていただきたいというふうに思っています。
一方、寄宿舎は、生活の体験の場として、障害児の自立支援にもつながり、意義のあるものだと訴えられています。基本的生活習慣の確立、また異年齢の子どもたちとの集団生活により、人とのコミュニケーションやルールなど、社会性をはぐくんでいく場として、親御さんは必要性を訴えておられるのだと思います。
そうした要望に対して、東京都は、基本的生活習慣の確立を目指した生活訓練の場については、特別支援学校としての重要な指導内容であるので、今後、生活指導や宿泊行事等の中で行っていくと答えられています。
では、二〇〇七年度、寄宿舎を活用した生活訓練の機能確保について、どのように取り組まれたのか、伺います。
教育長
特別支援学校の生徒に基本的な生活習慣や集団生活におけるマナーを習得させるためには、自立活動の指導や日常生活の指導を充実させますとともに、寄宿舎や生活訓練室を活用した校内宿泊や移動教室などの校外宿泊のあり方を工夫する必要がございます。
お尋ねの寄宿舎を活用した生活訓練につきましては、平成十九年度は、夏季休業中に八王子特別支援学校及び光明特別支援学校の寄宿舎施設を活用し、一泊二日の日程で四校六十六人の生徒が参加して、一日目は食事、入浴、健康管理や掃除、買い物などの基本的生活習慣を身につけることの大切さを学習いたしました。
また、二日目には、寄宿舎から交通機関を利用いたしまして企業に出社し、就業体験を行うことにより、社会生活や職業生活に必要なルールやマナーを知るとともに、働く意識や意欲を培いました。
このようにして、特別支援学校生徒の生活訓練、生徒間交流及び就業体験等の場として、寄宿舎施設を有効活用しているところでございます。
山口委員
今後も、寄宿舎が半減したことによって生活の訓練の場が失われたということがないように取り組んでいただきたいというふうに思います。
自立に向けての支援として大きな課題が就労問題で、特に福祉的就労から一般就労への可能性を見出す努力が不可欠です。もちろん、障害があるからといって、すべての人が働くべきだということではありませんが、ごく当たり前の社会生活を営みたいというのが障害児や障害者の切なる望みではないかというふうに受けとめています。
働くことへの意欲にこたえるために、あるいはその可能性を最大限に引き出すために、さまざまな取り組みが行われていると思いますが、昨年度、教育庁で行った特別支援学校生徒の現場実習の取り組みについて改めて伺います。
教育長
都立特別支援学校では、企業等への就労を促進するために、民間企業の協力のもと、現場実習を実施してきたところでございます。
平成十八年度からは、新たに、教育庁においても知的障害特別支援学校職業学科の生徒六名を受け入れまして、十九年度は、対象を知的障害特別支援学校全校に拡大いたしますとともに、実習先に本庁各部のほか東京都教職員研修センターを加えまして、三十九名の生徒を受け入れました。
今後とも、生徒の自立と社会参加を支援していくために、特別支援学校の生徒の現場実習を積極的に受け入れてまいります。
山口委員
今回の質問では取り上げませんでしたけれども、一言申し上げたいと思います。
地域の生活者ネットワークで、特別支援教育に関するフォーラムに向けて、保護者の方に対するアンケート調査を実施しましたところ、特別支援教育に当たる教員に対して、障害に対する理解がまだまだ足りないとの意見が大変多く上がってきました。
都は、各自治体の特別支援教育コーディネーターの研修を年一回、連続講座で実施し、その人が自治体での研修を進めていくというのですが、十分とはいえないのではないかというふうに思っています。自治体の責任とはいえ、研修の状況について都は検証し、自治体との連携によって、教員の質の向上に取り組んでいただきたいということを要望させていただきます。
さて、障害者の就労については、産業労働局や福祉保健局でも、福祉的就労から一般就労の促進に向けてさまざまな取り組みがなされていますが、二〇〇六年度から、福祉保健局では知的障害や精神障害の人の一般雇用を進めるために都庁内職場実習に取り組んでいるということです。二〇〇七年度はどのように取り組まれたのか。
また、今年度、チャレンジ雇用につながったと聞いていますが、取り組み状況について伺います。
福祉保健局長
平成十九年度の福祉保健局における都庁内職場体験実習では、知的障害者と精神障害者十一名を一週間ないし二週間受け入れたところであります。
今年度のチャレンジ雇用では、障害者の企業等への就職を推進するため、産業労働局とともに、新たに十二名の知的障害者と精神障害者を四カ月間、臨時職員として雇用しております。
山口委員
チャレンジ雇用制度は、国が障害のある人を府省などで非常勤職員として雇用し、その経験を踏まえ、ハローワーク等を通して一般企業へ就労を実現する制度ですが、都においても庁内でできる仕事を掘り起こし、職場体験から東京都版チャレンジ雇用制度への導入へと展開されたことは、障害者の職域開拓に向けての足がかりとして期待したいと思います。
行政機関における知的障害者や精神障害者の雇用が進まない中で、都が事業者として、こうした人たちの雇用促進をどのように進めていくのか問われていると思います。福祉保健局や産業労働局におけるこれまでの取り組みを含め、都として知的障害者等の就労支援について、全庁を束ねる立場にある総務局としてどのように取り組んできたのか。また、今後どのように取り組んでいくのか、伺います。
総務局長
知的障害者等の方々の就労拡大に向けました取り組みを進めていくためには、障害者の就労支援を所管する関係局との連携が必要不可欠でございます。都は、「十年後の東京」の中で障害者の雇用増を目標に掲げ、さまざまな事業を展開しております。
また、各局との調整を行い、先ほど福祉保健局長が述べましたように、今年度から東京都版チャレンジ雇用として、都みずからの取り組みも始めたところでございます。
今後とも、東京都版チャレンジ雇用の結果も検証しながら、引き続き、庁内の連携を一層綿密に図り、知的障害者等の就労支援について検討してまいります。
山口委員
お隣の千葉県などでも積極的な取り組みが進められていますので、ぜひ東京都にも頑張っていただきたいというふうに思います。
山口委員
次に、自転車対策について伺います。
自転車は、子どもから高齢者まで幅広く利用できる地域の便利な交通手段であり、健康増進のためにも、環境にも優しい乗り物として、その需要は今後も伸びるのではないでしょうか。
都内の交通事故は減っているものの、自転車の事故は横ばいで推移し、全体の事故に占める割合は三割以上となっています。自転車の事故は安全運転義務違反が六割以上を占めており、交通ルールやマナーを守っていれば防げた事故も少なくないと思われます。
しかし、自転車利用者でも、自動車運転免許を持たず、交通ルールをきちんと学んだことがない人も少なくないのではないでしょうか。このような人への自転車安全利用に対する普及啓発はどのように行われているのか、伺います。
青少年・治安対策本部長
都は従来から、春と秋の全国交通安全運動を通じて、自転車の安全利用を推進し、また、区市町村や警察署も随時、地域で自転車教室を開催するなど、幅広い世代を対象に自転車の安全利用の普及啓発を実施しております。
さらに、都は、平成十八年度から自転車の安全利用促進キャンペーンを開始し、今年度は、改正道路交通法の施行の機会をとらえて、二カ月にわたり実施いたしました。
今年度のキャンペーンでは、自転車安全利用に関するパンフレットを作成し、学校等を通じて児童生徒のいる全世帯に配布するとともに、交通安全フェアや銀座柳まつり等の各種イベントの機会に、広く都民に対し、自転車の交通ルール、マナーの周知に努めております。
今後とも、警視庁、区市町村、関係機関・団体等と連携して、自転車利用者に対する普及啓発に取り組んでまいります。
山口委員
マナーの向上を図ることは大切ですが、自転車と歩行者、自動車が共存できる道路整備も重要だと思います。
建設局の自転車道路網の整備は、十九年度、浅草通りや国際通りなどの既存道路で五・二キロ、新設道路で一・七キロの整備ということですが、これは都全体からすればわずかな延長であり、さらなる自転車走行空間の整備が求められます。
しかし、歩道内に自転車走行空間を整備するには、歩道の幅が四メートル以上の有効幅員が必要であり、また、車道に設置するにも、バス停や荷さばき車との関係で調整が必要など、課題も大変多いと聞いています。
ただ、今の道路事情でいえば、町中で自転車を利用している者は、車道を走るには危険を感じながら、また、自動車などにも何となく気を使いながら走っています。自転車道が整備された歩道でも、歩行者の人たちもそこが自転車道とわからずに歩行している場合もありますから、そういう意味では、歩行者にも本当に遠慮ぎみに走っているのが現状ではないかと思うのです。
自転車利用は、今、歩道を走るべきなのか、そしてまた車道を走るべきなのか、利用者にとっては大変戸惑いがあり、既存道路の改善が求められていると思うのですが、既存道路においては、歩行者と自転車、自動車の共存に向けた課題も大変多いとは考えています。
そこで、既存道路における自転車走行空間整備の取り組み状況について伺います。
建設局長
自転車は、近距離の移動にすぐれるとともに、環境への負荷の少ない都市内の有効な交通手段の一つであり、歩行者と自転車、自動車がともに安全で快適に通行できる空間の整備が重要であると考えております。
このため、多摩湖自転車道など自転車道の整備や、広い歩道における歩行空間と自転車走行空間のカラー舗装などによる分離、車道における自転車専用レーンの設置など、さまざまな手法で自転車走行空間の整備を進めております。
現在、広い歩道を活用する手法としては、浅草通りや国際通りなどで整備を行っております。
また、車道における自転車専用レーンとしては、本年三月に渋谷区内の旧玉川水道道路で整備し、現在、効果の検証を行っているところであります。
今後とも、多様な手法を用いて既存の道路における自転車走行空間の整備を推進していくとともに、環状六号線や調布保谷線などで、道路の新設や拡幅にあわせ、安全で快適な自転車走行空間の整備に努めてまいります。