谷村孝彦(公明党)
谷村委員
それでは、通告に従いまして、順次質問をさせていただきたいと思います。
我が党の提案と石原都知事との連携及びその決断で、東京都が新たな公会計制度を全国に先駆けて導入しました。それまで官庁会計に複式簿記・発生主義会計を加えた制度はどこにもなく、都は独自に検討を重ね、画期的な仕組みを構築するに至ったと思います。これは、石原都政における大きな功績であるといっても過言ではないと思います。我が党も、公認会計士の東村議員が石原知事と歩調を合わせ、再三にわたり議会で取り上げ続けてきただけに、この新しい公会計制度を生かした財政運営に強く期待したいと思っております。
去る昨年、新公会計制度による初めての財務諸表が作成、公表され、ことしは二度目の決算として初めて財務諸表の経年比較が可能となりました。そこで、平成十八年度と十九年度の財務諸表の経年変化を見た上で、都財政の状況をどのように認識、評価しておられるのか、まずお伺いをいたします。
財務局長
十九年度決算の財務諸表を経年変化という観点から見たときの特徴点といたしましては、まず第一に、資産に対する負債の割合が十八年度の三〇・八%から二八・九%へと一・九ポイント改善をしているという点がございます。
これは、まず資産の方につきましては、基金積み立てを増額いたしまして将来の財政需要に備えたということとともに、社会資本の整備を着実に進めたということによりまして、前年度に比べまして資産が約九千四百億円増加をいたしております。一方、負債の方につきましては、都債の償還を着実に進めるとともに、新規発行を抑制いたしまして、約三千億円減少をさせておりまして、この両方の要素により生じた改善でございます。
第二の特徴は、減価償却累計額が約千五百億円増加をして約二兆五千億円になっているということでございます。これは、今後相当長期にわたりまして、都財政が東京都の建物や、あるいはインフラ資産につきまして、この更新需要が存在して、これに向き合っていかなければならないということを意味しております。
これら二つの特徴は、堅実な財政運営により財政対応能力につきましては高めてきてはいるものの、他方、今後対応すべき膨大な需要が存在していることも物語っております。
一方、十九年度決算におきます行政サービス活動及び社会資本整備等投資活動の収支差額の合計でございますフリー・キャッシュ・フローについて見ますと、約四千億円確保してございますけれども、今後の税収動向、あるいは需要への対応の中では縮小し、場合によってはマイナスに転じるおそれもあるという点がございます。
私どもといたしましては、こういう両面ある財政状況にあるというふうに認識をいたしております。
谷村委員
これまでの官庁会計決算では把握し切れなかった状況、特にストックの状況が新公会計制度の導入により明確に見えてきたことが、今のご答弁でもわかると思います。
また、十九年度は十八年度に比べ資産に対する負債の割合が減少しておりますが、このことは、将来世代の負担が減少し、将来を見据えた財政運営が行われたことを意味するものであり、評価するものであります。
しかしながら、最近の景気動向などを踏まえますと、予断の許さない状況となっております。財務諸表から見てとれる都財政の状況から、今後の財政運営上の課題をどのようにとらえておられるのか、お伺いします。
財務局長
東京都の財政には、現下の都民が直面する課題に的確に対応するということが一つ。それからもう一つは、「十年後の東京」を初めとする将来の東京を見据えた取り組みをしっかりと財政面から支えていくという、二つの役割があるというふうに認識をいたしております。
今後、これまで培いました財政の対応能力を活用いたしまして、都民が必要とするこうした施策を実施していくわけでございますけれども、現在の都財政を取り巻く状況というのは非常に厳しいものであり、かつ、より厳しくなりつつある状況にございまして、私どもとしては、まず改めて手綱を引き締めるというスタンスでかからなければならないというふうに思っております。
こうした取り組みを進めてまいります上で、財務諸表から得られる情報は大変有益なものでございまして、現時点における、あるいは中長期に対応すべき需要の規模、あるいはそれにこたえるための財政的余力の状況などについて、先ほどもお示しをさせていただきましたようなさまざまな情報を与えてくれるものでございまして、私どもとしてはそれらデータを注意深く分析して、財政運営に生かしていかなければならないと考えております。
また、個別の事業の検証におきましても、財務諸表にあらわれた情報を活用することによりまして、一つ一つの施策の有効性をチェックいたしまして、都政の効率性をより一層高めていくことが可能となります。
こうした財務諸表の優位性を最大限活用することによりまして、今後想定される厳しい財政環境のもとにございましても、必要な施策を着実に進めていけるよう、より強い財政体質の確立に向け全力を尽くしてまいります。
谷村委員
ただいまのご答弁でもわかりましたように、今後の財政状況を見通しますと、都税収入というのは平成十九年度がピークになりそうであります。これまで財政再建で取り組んできた成果や、今後の財務諸表を活用した取り組みなどにより、引き続き安定した財政運営が行われていくことがわかりました。
新しい公会計制度により、都財政の課題をより長期的にとらえることができるようになったわけでありますが、まだまだ課題もあろうかと思います。新公会計制度の会計手法的な側面についての今後の課題は何でしょうか、お伺いをいたします。
会計管理局長
新公会計制度による二度目の決算により、財務諸表の経年比較が可能となったわけでございますが、財務諸表を自治体間や類似事業間など、いわば横で比較しようとした場合、現在国が示している公会計モデルは、全国標準としての位置づけもなく、さらに今後の方向性も明確に示されていない、こういったことのために比較が不可能な状況となっております。
地方行政における公会計制度改革を進め、経営状況をより高度に分析するには、全国標準的な会計基準が必要不可欠でございます。
都は、これまでも、国への提案要求や、全国知事会公会計制度ワーキンググループの場などを通じて、国に対する働きかけに取り組んできたところであります。先月には、日本公認会計士協会が東京都の考え方と多くの点で一致する提言を発表したところでございまして、今後、この提言の内容も踏まえながら、全国標準足り得る会計基準の整備について国や他団体への働きかけを強めてまいります。
谷村委員
財務諸表の分析に当たっては、民間企業におきましても、経年比較や同業他社との比較を行うのが一般的で、わかりやすいわけであります。公会計の分野にありましても、経年比較だけではなく、自治体間での比較ができるよう会計基準の標準化に引き続き積極的に取り組んでいただくのと同時に、新公会計制度による財務諸表をさらに分析活用し、都の財政運営に役立てていただきたいと思います。
平成十九年度の年次財務報告書、これは民間企業でいう会社の経営状況を株主や投資家に報告するアニュアルレポートに相当するものでありますが、この年次財務報告書で結論的に、今後の財政運営として、将来の東京の継続的発展のためにとして簡単にまとめられております。
ちょっと引用いたしますけれども、「事務事業評価における、きめ細かい事後検証により、施策の充実・見直し・再構築を行うことが必要となっています。予算編成の一環として、過年度の決算分析を十分に行うとともに、事業実施に伴う成果や課題などを整理し、その結果を予算に的確に反映させ、より実効性の高い施策を構築することが重要です。」また、「このように、東京発の新たな公会計制度の活用や事後検証の徹底により、施策をより実効性の高いものへ磨き上げ、着実に執行していくことによって、財政環境が大きく変化する中にあっても、将来の東京の継続的発展につながると考えています。」
この過年度の決算分析を十分に行う、事業実施に伴う成果や課題などを整理して、また、東京発の新たな公会計制度の活用や事後検証の徹底により云々と書いてあるわけでありますが、ここには申し上げるまでもなく決算審議の重要性が改めてうたわれているわけであります。
しかし、現在議会に提出されている決算資料としては、各会計歳入歳出決算書を初め歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書、財産に関する調書、決算審査意見書、主要施策の成果などがありますが、これらの資料だけでは、予算のときに各局から説明を受けた事業の決算状況というものをすべて把握することはできないんですね、これだけの資料をいただいても。
我が党の提案を踏まえ、複式簿記・発生主義会計を導入したこの新しい公会計制度を実施し、決算審議に際しては十八年度決算から新たに決算参考書、財務諸表も提出されるようになったほか、「主要施策の成果」という冊子にもこの財務諸表から得られる情報が掲載されるようになるなど、改善は進められております。しかし、いわゆる官庁会計の決算資料についても、法的な制約がある中で、これまでも様式の見直し等いろいろ工夫がされておりますけれども、私はもう一歩踏み込んでいただく必要があるのではないかと思っております。
わかりやすく申し上げれば、例えば予算案の説明を受けたときの資料に載っている事業が、この実際の決算でどうなったのかというのを確認してみようと思っても、この決算の説明資料に当該事業がほとんど見当たらないということがあります。つまり、予算の資料と決算の資料とで事業のくくり方に大きなずれがあることが原因と思われます。いずれにしても、個別に説明を聞かないと、資料を見ただけでは個別の事業に関して予算額と決算額、これがわからないわけであります。
これからは、都民の皆様への説明責任を果たすという視点からも、また、都議会における決算審議をより一層深めていくためにも、いわゆる官庁会計の決算に関する事業についての予算との関係がわかりやすくなるように工夫していただく必要があると思います。
新しい公会計制度それ自体は、東京都の財政運営にこれから大きく役立っていくものと思いますが、それに符合して、都政の両輪となるこの議会の審議、特に決算審議におけるこの決算資料のあり方についても、次のステップとして今後検討を加えていただきたいと思いますが、見解を伺います。
会計管理局長
予算と決算、これはもとより表裏一体のものでございますけれども、我が国の地方行政におきましては、ややもすると、予算に比して決算が余り重視されない、こういった傾向が続いてきていたように思われます。それは、民間企業が投資家に対する説明として決算を最重要視するといったことに対しまして、行政におきましては、予算の内容が住民の最大の関心事である、そうしたことが背景にあったからであろうというふうに私は考えております。
しかしながら、時代の変化とともに、行政における決算のウエートが高まりつつあるのは、紛れもない事実でございます。都議会におかれては、決算審査の方法を大幅に改善して、決算の審査結果を翌年度予算に反映すべく取り組んでこられたところでございます。また、我々執行機関側も、複式簿記・発生主義の考え方を加えた新公会計制度を構築し、財務諸表や年次財務報告書を作成するようになったところでございます。
こうした取り組みは、行政運営に経営の視点を取り入れて、事業の効率性を高めるといったことだけではなく、都民に対する説明責任を果たす上でも不可欠なものとなってきております。このような状況にあって、お話のとおり決算資料のあり方につきましても、さらなる改善が必要であろうと認識をしております。今後は、各局が予算や決算に関する資料を作成するに当たりまして、これらの資料が相互にわかりやすいものとなるよう、庁内の関係各局と横断的に連携をしながら検討を進めてまいります。
谷村委員
ありがとうございます。
ただいまの局長答弁は、認識を共有していただいたものと高く評価をいたしておりますので、ただ、簡単なことではないということもよく存じ上げておりますので、ぜひ今後ご検討をお願いしたいと思います。
谷村委員
次に、会計検査院が今月七日に発表しました二〇〇七年度決算検査報告、これは不適切と指摘された額が過去最高の約千二百五十三億円に上ったと報道されております。これに関連してお伺いをいたしたいと思いますが、このうち、岩手県、愛知県で見つかった裏金問題などは、最も重い、不当に認定されたケースは約三百七十七億円に上り、公金に対する公務員の意識に対して疑問が呈されております。会計検査院が今回の報告の目玉と位置づけた十二道府県での不正経理は、報道によりますと、総額十一億三千七百十三万円、愛知県が約三億一千万円、このうち国庫補助金は約一億三千万円、次いで、岩手県が約二億三百万円、国庫補助金はこのうち約一億七百万円となっているようであります。
かつて東京都でも、不正経理問題として、いわゆる官官接待などの会議費が、これは東京都だけではありません、全国の自治体で問題になったことがあります。
そこで、総務局長、大変に恐縮ですが、そのときの簡単な概要と対応、そしてそのときに行われた再発防止策について、簡単で結構ですので、ご説明をお願いします。
総務局長
平成七年当時、今理事のお話がありましたように、全国の多くの自治体におきまして、いわゆる官官接待を初めとしました会議費の不適正な支出が大きな問題となりました。
東京都におきましても、平成八年に、平成七年度における本庁分の会議費につきまして、監査委員による監査が行われ、会計処理等に重大な不適正の事例が多数あると指摘されました。
これを受けまして、都は改善検討委員会を設置し、平成五年度及び六年度における全庁分の会議費と、平成七年度における事業所分の会議費につきましても自己調査を行いました。その結果、私的な流用は認められなかったものの、会議の開催目的や参加者が起案文書と異なっていたり、いわゆるツケ払いによる支払いを行っているなど、会計上の重大な不適正処理を行っている事例が、三カ年合計で七億円余存在することが明らかになりました。
このため、都庁の現役幹部及び幹部OB、合計約二千六百名が、役職に応じて一人当たり五万円から五百万円程度を負担し、不適正処理の全額であります七億円余に利息分を付しました約八億円を都に返還して、都民におわびをするとともに、都民への信頼回復の第一歩としたところでございます。
あわせまして、二度とこのような不祥事が起きることのないよう、事務処理手続の改善やチェック機能の強化、情報公開の徹底による透明性の向上などの多面的な再発防止策を講じたところでございます。
谷村委員
ありがとうございました。東京都もこうした経験を経て、再発防止策を講じて今日に至っているわけであります。
しかし、今回の会計検査院の調査対象に東京都はなってはおりませんけれども、報道によりますと、今回の対象の十二道府県すべてで問題が発覚しており、今後、他の三十五都府県で調査しても、同様に間違いなく問題が指摘されるのではないかとも報道されております。架空発注などで支払った公金を業者の口座にプールする預け、虚偽の書類をつくり、契約とは別の物品を納入させる差しかえ、前年度に発注した物品を翌年度に納入する翌年度処理等々、五つの手法があるようですけれども、都では、他の道府県で見られたような不正経理はないのかどうか、都民の皆さんも大変に心配しておられます。
そこで、このたび、補助金について総点検を東京都でも実施するということですが、その趣旨について、あわせて確認させていただきたいと思います。
会計管理局長
東京都におきましては、私ども会計管理局による定例、随時の検査や、各事業局における自己検査、さらには監査委員による監査などで、経理事務が適正に執行されているかどうかを確認しているところでございます。
また、先ほどご質問のあった過去の会議費問題で職員が八億円近くの返金を行った、こうした経緯とその反省が教訓として生きており、裏金づくりなどの悪質な不正はあり得ないものと認識をしているところであります。
しかしながら、一方で、補助金をめぐる不正が社会問題化していることから、会計検査院の検査が入る前に、念のため、全庁的に自主点検を実施することとし、昨日、各局に依頼をしたところでございます。
谷村委員
そこで、監査委員も随時監査を始められたと伺っております。現在、監査委員の決算審査を受けて、都議会でまさに決算審議中であります。この決算審議中に随時監査をされるというのは異例なことではないかと思いますけれども、現在行われている随時監査と、そして都議会で決算審議の前提になります決算審査の関係というのはどういうものなのか、ご説明をいただきたいと思います。
監査事務局長
監査委員が行います決算審査は、地方自治法第二百三十三条に基づきまして、決算計数が正確であるか、また、財産の取得、管理、処分は適正に処理されているかなどに主眼を置きまして実施するものでございまして、平成十九年度の、ただいま決算審議していただいています決算計数につきましては、証拠書類の計数と符合していることが認められております。
これに対しまして、今回行います随時監査は、会計検査院の検査の結果、他の道府県で不正経理が多数発覚したとの報道を受けまして、公共事業に係る国庫補助金の事務処理、すなわち財務に関する事務の執行を再確認するために、地方自治法第百九十九条第一項及び第五項に基づきまして監査を実施するものでございます。
谷村委員
ご答弁をお伺いしますと、先ほど三枝局長も、過去の教訓を生かして、裏金づくりなどあり得ない、はっきりとお答えをいただきました。また、今の監査事務局長のお話も、一応念のために、再確認のために、現在の会計管理局の総点検あるいは監査委員の随時監査も対応されていることだというふうに理解をさせていただきたいと思います。
そこで、もし万が一ですが、総点検や随時監査の結果、補助金を返還せざるを得ない、あるいは不正経理が発覚した、このような事態になった場合に、ないことを祈っておりますけれども、平成十九年の決算額に影響が出るようであれば、現在行っております議会の決算審議にも影響が出るのではないかとの声もあります。こうした事態に陥った場合に、不正経理が発覚したり、裏金づくりがあったりというふうに、そういう事態になった場合に、今審議をしております平成十九年度の決算の計数に影響が出るのかどうか、これをお伺いしたいと思います。
会計管理局長
都議会に提出してございます決算につきましては、地方自治法第二百三十三条の規定により、監査委員の審査を経て、その意見を付しているものであり、決算計数に関しては、証拠書類の計数と符合していることが認められているところでございます。このことは、ただいま監査事務局長から答弁があったとおりでございます。
また、仮定の話でございますけれども、今後、万々が一、点検等を踏まえて補助金を返還せざるを得ないような事態が発生したといった場合におきましては、二十年度以降においてこれを処理すべきものでございまして、十九年度決算の計数に影響を及ぼすものではございません。
谷村委員
明快にお答えいただきまして、ありがとうございます。
官官接待の際の教訓から、そのときの再発防止が今も生きていて、東京都では他道府県に見られるような不正経理はないということを祈っておりますし、信じておりますが、念のために行われております総点検、随時監査は、今後厳格に進めていただきたいと思います。
谷村委員
次に、人事委員会にお伺いをいたします。
先月十六日に、平成二十年の給与勧告が行われましたけれども、まず確認ですが、現在都の職員に適用されている給料表は、平成十九年の勧告に基づくものということで理解してよろしいでしょうか。
人事委員会事務局長
現在都職員に適用されております給料表は、お話のとおり平成十九年の人事委員会勧告に基づくものでございます。昨年の第四回定例会で給与条例が改正され、平成二十年一月から適用してございます。
谷村委員
それでは、その勧告に基づいた教員の給与制度についてお尋ねをいたします。
現在、学校教育をめぐってはさまざまな課題があり、各学校における積極的な対応が求められております。そのかなめとなるのが、いうまでもなく教育管理職であります。しかし、その教育管理職の方々は大変に忙しく、とりわけ副校長先生は毎日激務に追われております。校務はもとより、父母や地域との対応など、多くの仕事が副校長先生に集中しており、ご苦労が絶えないようであります。
また、東京発の教育改革の柱の一つでもあります自律的な学校経営を初め、管理職の役割というのはますます大きくなっている割には、一般の教諭と比べて、給与面でそれほど手厚いわけではなく、このままでは校長先生や副校長先生のなり手がいなくなるのではないかと心配もされております。事実、副校長先生は来年度にも定数割れの危機にあるとも伺っております。もちろん給与がすべてというわけではありませんけれども、やはり職務の困難度や責任の重さにふさわしいものであるべきであります。
そこでお伺いしますが、校長先生や副校長先生といった教育管理職の方々の給与ですけれども、一般教諭の方々と比べてどれくらいになっているのか、お伺いをいたします。
人事委員会事務局長
教員の給与でございますが、現在、勤務学校の種別に応じまして、小学校・中学校教育職員給料表と高等学校等教育職員給料表のいずれかが適用されております。
この二本立ての給料表に基づきまして、今お話がございました教育管理職と教諭の給料月額を比較いたしますと、校長につきましては、小中学校では、教諭を一〇〇といたしますと一一三、高校では一一五でございます。また、副校長につきましては、小中学校では、教諭を一〇〇といたしますと一〇五、高校では一〇九でございます。
谷村委員
ありがとうございます。管理職手当等の諸手当もある中で複雑になっているものをシンプルに、無理やり給料月額でお示しをいただきました。ありがとうございます。
一般教諭を一〇〇として、校長先生の水準というのは一一三から一一五、副校長先生は一〇五から一〇九と。昨日も校長先生方の集まり等でも懇談しましたけれども、そんなに低いんですかと大変驚いておられました。
それでは、教員の管理職の方々の給与が行政系の職員の方と比べてどうなっているのかということを比較するのも重要だと思いますので、単純な比較は難しいというのはよく認識しておりますけれども、行政系の方で一般職員と管理職というのは、給与水準差としてどの程度になっているのか、お伺いをいたします。
人事委員会事務局長
今お話しのように、単純に比較することは難しいというふうに理解してございますが、行政系の一般職では、係長が教諭とほぼ同程度の給与水準になっておりますので、お尋ねの給与水準差につきましても、教諭と校長との比較に相当するものといたしまして、係長級と部長級との比較で申し上げたいと思っております。
現行の行政職給料表では、係長の給料月額を一〇〇とした場合には、部長は一三〇となっておりまして、教諭と校長の水準差より大きなものとなっております。
谷村委員
ありがとうございます。大変にわかりやすい数値を提示していただきました。
一般教諭を一〇〇とした場合に、校長先生の水準というのは一一三から一一五であるのに対し、それを行政系の方で比較していただくと、係長を一〇〇とすると、部長の水準は一三〇と。現状では、行政系職員と比べて教員は、管理職と一般教諭との間にそれほど差がないわけであります。これは早急に改善をしていただかなければならないと思います。
教育現場を預かる校長先生、副校長先生に優秀な人材を確保することは、教育の質の向上の観点からも大変に重要であると思います。教員においても、行政系と遜色のないくらいに管理職の方々に差をつけてもいいのではないかと思います。
ちなみに、教育委員会の方に東京都の公立校長会や副校長会等々からどのような要望が出ておりますでしょうか、お伺いをいたします。
教育長
東京都公立小学校長会、同副校長会、東京都中学校長会、東京都公立高等学校長協会、東京都立特別支援学校長会などから要望を受けております。
ご指摘のとおり、一般の教員も含め給与水準についてさまざまな要望が出ておりますけれども、とりわけ管理職につきましては、職責に応じた、めり張りのある給与体系を実現し、処遇改善を強く求めるという要望が出ております。
谷村委員
ありがとうございます。
校長会や副校長会でも、職責に見合った処遇改善を求めておられるわけであります。学校が抱えるさまざまな教育課題を解決するためには、学校現場で日夜頑張っておられる校長先生、副校長先生、そして主幹の先生も含めた教育管理職の処遇というものが職責に見合ったものに改善されることが必要であると思います。
それで、もう一度人事委員会事務局長にお伺いいたしますが、平成二十年の人事委員会勧告では、教育管理職の給与に改善が図られたと伺っておりますけれども、その内容についてご説明をお願いします。
人事委員会事務局長
本委員会は、去る十月十六日に、平成二十年の給与勧告を行いました。小学校・中学校教育職員給料表と高等学校等教育職員給料表の二本立てでございました給料表につきましては、この経緯が、これまで国に準じて二本立てとなってございましたが、これを一本化することといたしまして、新たに来年四月から教育職給料表を適用するよう勧告したところでございます。
新給料表は、これまで以上に職責を反映した給料表となっておりまして、従来と比較し、一般の教諭と校長、副校長との水準差を拡大させております。
具体的に申し上げますと、給料月額で教諭を一〇〇とした場合の水準でございますが、校長は一二六となりまして、行政系の係長と部長との給与水準差と同程度に改善をしております。また、副校長につきましても一一九となりまして、現行給料表に比べ一〇ポイント程度、水準差を拡大している状況でございます。
谷村委員
大変にわかりやすいご説明、ありがとうございました。
まだまだ課題は残るものの、平成二十年の勧告で教育管理職の処遇改善が図られていることがよく理解できました。このことは、これまで都が進めておられます東京発の教育改革の流れに沿うものと理解をしております。
そこで、都の教育委員会として、引き続き東京発の教育改革を推し進めるためにも、教員の給与制度について、今後どのようにすべきとお考えになっているのか、大原局長のご決意をお伺いしたいと思います。
教育長
都教育委員会は、教育改革を一層推進するために、全国に先駆けまして主幹制度を導入し、校長のリーダーシップのもと、学校の組織的課題解決能力の向上を図るなど、教員の人事制度改革に取り組んできたところでございますが、現在の教諭の給与は年功的、一律的なものとなっておりまして、同じ教諭であっても、職務の困難度や責任の度合いに違いが生じておりますことから、教諭の職を二つに分化して、職責に見合った給与にすべきであるというふうにまず考えております。
さらに、近年、地域の多様な人材の活用や特色ある学校づくりなど、学校の課題は複雑化、多様化しておりまして、校長、副校長の職務の困難度、重要性がますます増大をしておりますことから、管理職の職責等に応じた適切な処遇が大変重要であると認識をしております。
都教育委員会といたしましては、今後とも関係機関と精力的に協議をいたしまして、校長、副校長を初めとする教員の職責、能力、業績をより一層重視する、めり張りのある給与制度の構築に取り組んでまいる所存でございます。
谷村委員
ありがとうございます。ぜひめり張りある給与制度の構築に取り組んでいただきたいと思います。
谷村委員
次に、「十年後の東京」についてお伺いをしたいと思います。
東京都は一昨年、「十年後の東京」を策定し、二〇一六年のオリンピック招致を目指す東京がさらなる成熟を遂げる姿と、それに向けた施策展開の方向性を明らかにしました。昨年は、この長期ビジョンの着実な実現に向け、三カ年のアクションプランである実行プログラム二〇〇八を策定し、また間もなくこれを改定し、実行プログラム二〇〇九が策定されるというふうに伺っております。こうした取り組み自体、大変意欲的なことでありますが、さまざまな状況の変化などにより、何の問題もなく当初の構想どおりに必ずしも進んでいくものではない面もあると思います。
第三回定例会では、知事は所信表明で、旧都立秋川高校跡地を活用したトップアスリート養成校の創設について見直す旨の発言がありました。トップアスリート養成校の創設は、「十年後の東京」で目標に掲げる、スポーツを通じて次代を担う子どもたちに夢を与える政策の一つとして掲げられたものであります。
そこで、トップアスリート養成校の創設がなぜ見送りになったのか、その経緯についてお伺いをいたします。
知事本局長
旧都立秋川高校跡地を活用いたしましたトップアスリート養成校の創設につきましては、スポーツ関係の有識者から成る懇談会を設置し、半年余りの議論のもと、昨年八月に報告書を提出していただきました。
報告書では、養成校の設置に当たっては、指導者の派遣や資金の提供など、スポーツ団体、企業と連携していくことや、養成校を卒業した後も一貫した指導が受けられるよう、大学等と連携していくなど、さまざまな主体が一体となってジュニアを育成していく仕組みづくりが提案されました。
東京都といたしましては、この報告書を受けまして、競技能力の向上に資する教育カリキュラムの編成や、すぐれた専任指導者の配置、全寮制の学校として必要な生活面のサポートなど、養成校の特色といたしまして示されました姿の具体化を図るとともに、既存の学校法人や企業などに対しましても、人材面、資金面からの支援、協力を得るべく折衝、調整を進めるなど、さまざまな努力を重ねてまいりましたが、円滑な運営体制を実現するめどが立たなかったところでございます。
そのため、トップアスリート養成校の設置を見送るとともに、旧都立秋川高校跡地につきましては、地元市の意向も受けとめながら、新たな有効活用等を検討していくことといたしたものでございます。
谷村委員
ありがとうございます。
トップアスリート養成校の創設を見送ることとなっても、ジュニアのアスリートを養成していく政策課題、ジュニア期からのアスリート育成システムが確立し、東京で育ったアスリートがオリンピックや国際的な競技大会などで活躍しているという「十年後の東京」の姿は実現していかなければならないと思います。
そこで、ジュニアのアスリート養成に向けて、今後どのように取り組んでいかれるのか、お伺いをいたします。
生活文化スポーツ局長
ジュニアアスリートの育成強化に当たりましては、才能あるジュニア選手を、小学生など早い段階から、競技団体、地域、学校と連携して、計画的、継続的に育成していくことが重要でございます。
このため、競技団体によるジュニア特別強化事業の対象を二十競技から国体対象の全四十競技に拡大するとともに、小学校四年生から中学校三年生までの将来有望な選手を東京都ジュニア強化選手として都が認定し、競技団体等と連携して、強化練習や強化合宿などを実施するなど、ジュニア選手の育成強化を図っております。
また、区市町村の体育協会等と連携いたしまして、ジュニア育成地域推進事業を実施しておりますが、この競技種目の数や参加人数を拡大し、地域におけるジュニア選手の競技力向上に取り組んでいるところでございます。
ただいま答弁がありましたとおり、トップアスリート養成校の設置は見送られましたが、今後、区市町村の体育協会を通じて実施する事業を拡大するなど、ジュニア選手の育成強化に向けた施策に積極的に取り組み、世界を目指す東京アスリートの育成を図ってまいります。
谷村委員
最後に、石原都知事が陣頭指揮をとって進めておられます横田基地の軍民共用化についてでありますけれども、これは東京のみならず、我が国全体にとっても、その早期実現が希求される最重要政策課題であります。同時に、多摩地域の発展にとっても大きな起爆剤であり、大変重要な施策であり、地元としても大いに期待をしております。
しかし、日米政府間協議で定められたロードマップで、十二カ月の期限を昨年の十月に迎えても日米合意は得られず、引き続き協議は継続されておりますが、交渉は思うように進んでないようであります。
一方、軍民共用化とともにロードマップに位置づけられている横田空域の返還については、ことしの九月、空域の一部削減が実現し、一歩前進をしました。知事も第三回定例会の所信表明において、今回の一部返還は重要な一里塚と述べられたように、一つ一つ着実にステップアップしていくことが大切であり、軍民共用化についても、日米協議を前進させ、可能な限り早期に実現させる必要があります。
昨年の参議院選挙の結果を受けた、いわゆるねじれ国会の中で、野党の国会対策に振り回され、日米間の信頼性を揺るがせたさまざまなことがあったことも、横田基地の軍民共用化をあと一歩のところで停滞させてしまう要因となったことは、否めない事実であります。
先週、米国では新大統領が決まり、年明けには新政権が発足する運びとなり、新政権の動向次第では対日外交方針が大きく変わる可能性も考えられますが、この米国の政権交代により、軍民共用化がうやむやにされることがあってはならないと思うわけであります。外交交渉自体、相手のあることであり、非常に難しいものではありますが、これらの課題とともに、なお一層強力に軍民共用化の早期実現に向けた働きかけを行っていくことが非常に重要であると思います。
そこで、米国の政権交代を踏まえた今後の取り組みについて、吉川局長のご決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
知事本局長
横田基地の軍民共用化につきましては、首都圏の航空事情を改善するだけでなくて、我が国の国際競争力を強化し、国力を維持するために不可欠なものでございます。
アメリカは政権交代期に入りまして、現政権による新たな意思決定を期待しにくい状況にございますが、軍民共用化という我が国にとって重要な課題が、政権交代に紛れて放置されるようなことがあってはなりません。
このため、先般の関東地方知事会議におきましても、米新政権に対して改めて強く働きかけ、軍民共用化の早期実現を図ること、これを国に対し要望することを石原知事が提案されました。これに対し、他県の知事からも積極的な支持がございまして、これを関東地方知事会として国に要望していくことが合意されました。また、本日開催されております八都県市首脳会議でも同様の提案を予定してございます。
引き続き、都といたしましては、さまざまな機会をとらえて軍民共用化の必要性を米側に訴えるとともに、国の関係省庁との連絡会の場などを通じまして緊密な連携を保ちながら、米新政権に対し、粘り強く働きかけまして、軍民共用化の早期実現を目指してまいります。