鈴木章浩(自民党)
鈴木委員
決算説明書に記載のあります国民保護計画事業に関連して、何点かお伺いいたします。
本年八月に開催されました北京オリンピックでは、テロ防止に向け北京市内の随所で厳戒体制がしかれていたことは、記憶に新しいところであります。世界の各地ではいまだにテロが頻発し、国際社会ではテロ対策が大きな課題となっております。
米国の同時多発テロを契機に、日本政府もテロ対策を進め、入国管理等の法令の改定や国際協力に取り組んでいるところであります。
こうした中にあって、東京の安全性に対する評価は高く、このことは国内外に誇るべきことでありますが、来年にオリンピック開催都市の決定を控え、東京の安全性をさらに確かなものとするために、世界に強くアピールしていくべきだと考えております。
そこで、テロ防止策について何点かお伺いいたします。
まず、平成十九年度にテロ対策としてどのような事業を実施したのか、お伺いいたします。
総務局長
都民の生命や財産をテロから守るためには、テロへの対応力の強化が重要であります。このため、平成十九年度には、十一月に、警察、消防、自衛隊等関係機関と連携いたしまして、大規模テロ災害対処に向けました図上訓練を行うとともに、神経を麻痺させますVXガスを用いたテロを想定した実動訓練を行ったところでございます。
さらに、テロの対象となりやすい大規模集客施設を運営する事業者や区市町村を対象としました危機管理に関する事業者セミナー等を開催し、危機意識の醸成と情報の共有化を図ったところでございます。
鈴木委員
関係機関や事業者等との連携を図りながらテロ対策を推進することは、本当に重要なことであると思っております。
テロは一たび起きれば甚大な被害が生じます。例えば、二〇〇五年、平成十七年にイギリスのグレンイーグルズで開催されたサミットでは、会場から遠く離れた首都ロンドンで、地下鉄三カ所、路線バス一カ所、合わせて四カ所で同時多発テロが発生し、死者五十七人、負傷者七百人以上の多くの犠牲者が発生しました。犯人は国際テロ組織イスラム過激派とされており、アルカイダから犯行声明もあったと伺っております。
日本もイスラム過激派からはテロの標的として名指しされ、昨年三月には、米軍に拘束されているアルカイダ幹部の供述により、在日米国大使館を破壊する計画があったことが明らかになっております。
こうした中、本年七月に洞爺湖サミットが開催されました。サミットに際しては、開催地である北海道だけでなく、政治、経済の中枢機能が集中する首都東京でのテロ発生の危険性が指摘されておりました。このため、今回のサミットでは、北海道のテロ警戒のために全国からの応援を得て約二万一千人、また、東京の警備にも北海道と同程度の二万一千人の警察官を動員したと聞いております。
幸い今回のサミットでは、テロの発生を防止することができたわけでありますが、平成十九年度のテロへの対応を、今回のサミットに備え、都はどのように発展拡充させ、未然防止を図ったのかをお伺いいたします。
総務局長
テロを未然に防ぐためには、テロの危険性を早期に発見し対処する必要があるため、洞爺湖サミットに備えまして、官民を挙げた取り組みを推進いたしました。具体的に申し上げますと、従来のテロ発生後の対処訓練とは異なりまして、不審物発見時の対応や避難誘導など、テロの未然防止を重視した訓練を民間事業者等と連携して四月に実施いたしました。
さらに、行政や警察、消防、自衛隊を初め民間事業者や町内会、商店街などの地域団体から成ります東京都テロ警戒推進本部を五月に設置し、地域での巡回や大規模集客施設等におけます自主警戒の強化等を図るなど、テロの未然防止に努めたところでございます。
鈴木委員
こうした地域を巻き込んだ官民を挙げた取り組みは、非常に重要なことであります。この取り組みを一過性のものとすることなく、さらに発展させるべきであると考えております。
諸外国を見渡したところ、官民を挙げた取り組みを進める先進的な事例として、イギリスの取り組みが参考となると考えております。イギリスでは、犯罪防止と秩序の維持を図るため、地域を単位として、警察、行政、事業者、地域住民等が連携した組織が一九九八年に法制化されております。現在、ロンドンでは、各行政区を含め、合わせて約四百の組織がつくられていると聞いております。こうした取り組みでは、地域において行政や警察などの各機関と事業者や地域住民が連携し、犯罪を減らすためのさまざまな取り組みを進め、実際にテロを未然に防止するなど大きな成果を上げていると聞いております。
イギリスでは法律により関係者及び各機関の協力関係が規定されているが、日本においても、法制度化しないまでも、首都東京にふさわしい、関係機関、事業者、地域団体と連携し、より広範かつ横断的な取り組みを進め、テロ防止に役立てるべきと考えております。
そうした中で、今後のオリンピック招致に向け、官民を挙げた取り組みを一層強化していくべきと考えておりますけれども、ご所見をお伺いいたします。
総務局長
オリンピック開催都市にふさわしい安全・安心を確保するには、官民を挙げた取り組みを一層推進することが重要でございます。このため、今月七日には、東京ビッグサイトにおきまして、警察、消防、自衛隊に加えまして、鉄道や大規模集客施設の事業者など十三機関の協力、参加を得まして、大規模テロ対処訓練を実施いたしました。
また、警視庁と連携いたしまして、ライフラインや集客施設の事業者など四十二団体から成るテロ対策東京パートナーシップ推進会議を今月六日に発足させ、官民挙げたテロ防止策を継続的に推進する体制を構築いたしました。
今後、この推進会議のもと、区市町村や地域団体なども含め、都全域にわたるテロ防止対策を強化し、東京の安全確保に全力を尽くしていきます。
鈴木委員
平和の祭典であるオリンピック、パラリンピック招致のために最も重点を置かなくてはならないことが、安全のアピールであり、テロ防止であることは、本当に悲しい現実であると思っておりますけれども、主催する国としての責任において万全の対応が重要であると考えております。今後ともテロへの継続した取り組みが必要であり、関係機関、事業者、地域団体と一体となり、テロ対策を強化していくことを要望して、次に移らせていただきます。
鈴木委員
平成十九年度各会計決算特別委員会の全局質疑に当たり、新公会計制度及び危機管理について何点かお伺いいたします。
まず、新公会計制度についてですが、これまで各分科会において局別の審査が行われてまいりましたが、昨年度から官庁会計に複式簿記・発生主義会計の考え方を加えた新公会計制度による財務諸表についても各局から資料が提出され、質疑の対象となっております。今年度は二回目となり、初めて財務諸表の経年比較ができるようになりました。
振り返れば、石原知事就任以来、足かけ八年という歳月を経て東京都会計基準を策定するとともに、財務会計システムを再構築し、平成十八年四月に新公会計制度導入に至ったものであります。これは、国及び全国の自治体を通じて、我が国の行政として初めての取り組みでありました。
折しも、その六月に、北海道夕張市の財政破綻が明るみに出ました。いわゆる夕張ショックにより、資産や負債の全体像が見えにくいというこれまでの官庁会計の限界が露呈し、自治体の財務状況の透明性が一層求められるようになりました。まさに全国に先駆け、複式簿記・発生主義会計を導入した都の先見性が明らかになったものと評価しております。
そこで、二度にわたる本格的な財務諸表を作成した今、都が導入した新公会計制度の意義について、改めて所見を伺います。
会計管理局長
従来の官庁会計が現金の収入や支出を記録するのみでございますのに対して、複式簿記・発生主義会計では、土地、建物などの資産や、都債などの負債といったストック情報が明らかになるとともに、資産の老朽化に伴う減価償却費など正確なコスト情報も把握できるものでございます。
都におきましては、これまで作成した財務諸表により、減価償却費と固定資産との関係を分析いたしました結果、社会資本ストックの将来的な更新需要が明らかになった、このことから、基金の積み立てを図り、安定的な財源の確保に努めることといたしました。
また、多額の収入未済が計上されたことから、債権管理のより一層の適正化を図るため、東京都債権管理条例を制定し、全庁的な債権管理の体制強化を進めるなど、新公会計制度は効率的、効果的な行財政運営の展開に資するものとなっております。
こうした例に見られますように、地方行財政全般にわたる改革を進めていく上で、新公会計制度を導入することはもはや避けて通れないものとなっている、かように認識をしております。
鈴木委員
私は、東京都のこの取り組みというのは、税収を純資産変動計算書に収入として計上したり、また、取得原価を基準に計上したりという点においては、制度の趣旨に重点を置いて取り組んでいるものと本当に評価しております。
本来はこうしたことを国が率先垂範すべきと私は考えておりますけれども、今まで国はこうしたことになかなか取り組んでまいりませんでした。そして、ようやく十八年四月に総務省が研究会を設置して、自治体の公会計制度改革についての検討を始めて、総務省方式改定モデルと基準モデルという二つの公会計モデルが提案されたわけでありますけれども、先ほど述べましたように、東京都の今までの取り組みというのはその先をいっているものと私は思っております。
その上で、全国の自治体に対して財務諸表を作成するよう要請を行っておりますが、総務省は地方自治体に対し具体的にどのような要請を行い、東京の各自治体においてどのような状況にあるのかをお伺いいたします。
会計管理局長
総務省は、昨年十月、資産・負債改革や地方財政健全化法の施行を踏まえ、町村も含めたすべての自治体に対し、平成二十一年度、すなわち来年度から財務諸表を作成し公表することを、通知により要請しております。
また、これまで東京の多くの自治体が何らかの方式により財務諸表を作成してきておりますが、島しょの町村についてはこれまで財務諸表を全く作成していない状況にございます。
鈴木委員
来年度には財務諸表を整備しなければならない状況において、二〇〇八年三月までの固定資産残高などを評価する必要がある中では、残された時間が本当に少ないという状況の中、対応が必要であると私は思っております。
これまでも都は、大規模説明会の開催や個別の依頼に基づく説明などにより、多くの自治体に対し都の新公会計制度について説明してまいりました。昨年度からは、我が党の提案により、都の新公会計制度の導入を積極的に検討している自治体に対し、団体の要望に応じて実務的、技術的助言等を行うコンサルティング活動も実施しており、さまざまな普及、支援活動に取り組んでおります。
すべての自治体が来年度から財務諸表を作成、公表すべきとされている状況の中で、各自治体に対し、都はどのような支援策を考えているのかをお伺いいたします。
会計管理局長
これまで都は、東京の各自治体を初めとした他の自治体に対しまして、都の新公会計制度の導入を推奨してきたところでございますけれども、お話しのような状況を踏まえまして、取り組みの進んでいない団体に対して、新たに東京都方式簡易版を提案することといたしました。
これは、決算組み替え方式によりつつも、都の財務諸表とほぼ同様の勘定科目体系を有する財務諸表を短時間で作成できる方法でありまして、都の新公会計制度を本格的に導入するまでの過渡的な取り組みとして、島しょの町村を初めとした東京の各自治体に対し紹介、推奨してまいりたいと考えております。
今後とも、相手自治体の状況や要望に応じまして、都の知見とノウハウを積極的に提供してまいります。
鈴木委員
東京の各自治体にとって過渡的な取り組みとはいえ、都の新公会計制度の導入に向けての選択肢がふえるということは、普及活動の一環として評価できるものと考えております。
私ども都議会におきましても、地方公会計制度改革を推進させるべく意見書を採択しました。都など先行して取り組んでいる自治体の事例を参考にして、地方自治体の広範な参画のもとに、全国標準となり得る公会計基準の作成を国に要請したところであります。今後も地方自治体のリーダーとして、我が国の公会計制度改革の推進に寄与していただきたいと思っております。
次に、新公会計制度による連結財務諸表についてお伺いいたします。
都には複数の公営企業会計が存在するほか、多くの監理団体があります。平成十九年度の財務報告書では、それぞれの経営主体別の財務諸表を作成するとともに、その経営状況の分析を行っており、それぞれの経営主体が現在どのような財務状況になっているかがわかります。
また、これらの団体等を合算した連結財務諸表も作成しております。
監理団体等は、都からの補助事業や委託事業を実施し、都の行政施策を補完する役割を担うなど、都のみならず監理団体等が役割分担に応じて複合的に関連しながら都民サービスを提供しております。このことは、監理団体等を含めた都全体が、いわば巨大な企業集団となっているともいえ、都と監理団体等との財務上の関連性はますます重要になっていると思っております。
こうした中、これらの団体等を含めた連結財務諸表を作成し、東京都全体の資産や借入金などの負債を把握することは、個別の団体等ごとではつかみ切れない都全体の実態をとらえることができ、都民に対する説明責任を果たす上で大変意義深いことと考えております。
また、民間企業においても連結が基本となっております。
平成十九年度の東京都全体の貸借対照表を見ますと、普通会計の貸借対照表と比較したところ、資産が約一・五倍の四十五兆六千億円、負債は約二倍の十六兆八千億円と非常に規模が大きくなっております。しかしながら、この全体の貸借対照表のつくりは、民間企業における連結財務諸表と異なり、各会計や監理団体等との取引について、公営企業会計や株式会社に対する出資金以外相殺消去を行っておりません。また、財務諸表については、貸借対照表は資本金以外をすべて合算したものと各会計や監理団体等のものを並べて表記し、行政コスト計算書等は各会計や監理団体などのもののみを並べて表記しております。
そこで、都がこのような財務諸表を作成している理由や背景について、また、課題などがありましたら、そのことについてもお伺いいたします。
財務局長
連結財務諸表につきましては、都は石原知事就任以来、平成十年度決算時から既に機能するバランスシートとして連結した財務諸表を作成しておりまして、この点でも国に先駆けてきております。
これは、都の財務状況を正確に把握するには、普通会計だけでなく、出資や補助、貸し付けなどを通じて分かちがたい関係にあります公営企業、あるいは監理団体を含めた全体像を把握することが不可欠であるという認識に基づくものでございます。
その際、ご指摘のように、各会計、団体の財務諸表を併記する方式を採用しておりますが、これは、対象範囲の債権債務を完全に相殺消去してしまいますと、都から監理団体への貸付金の状況、あるいは都と各団体との間の財務上の関係性が逆に見えにくくなるということによるものでございます。
また、都の全体財務諸表におきましては、貸借対照表のみを合算いたしまして、行政コスト計算書については合算をいたしておりませんが、都の場合、普通会計と公営企業会計、監理団体である株式会社あるいは財団法人など、それぞれ適用される会計基準が大幅に異なっておりますので、それぞれのコストを合算いたしましても、財務状況を必ずしも的確にあらわす指標とはならないなど、技術的な問題について配慮したものでございます。
鈴木委員
私も、民間企業と同様の連結財務諸表を作成するには、地方自治体と監理団体などの会計基準の大きな違いなどから、実現にはかなりハードルの高い課題が存在するというふうに思っております。
一方では、現在都が採用している併記方式により、スピーディーに議会や都民に対し説明責任を果たせることや、個別の監理団体などの財務諸表が合算した財務諸表にどのように影響を与えるかを見ることができるなどメリットもあることから、民間企業と異なる手法だからといって一概に否定するものではないと思っております。
さらに、総務省は、貸借対照表以外の財務諸表についても連結するようにと聞いておりますが、ストックならともかく、会計基準の異なる団体を連結させ、コスト分析は意味がなく、まさにためにする作業になってしまいます。都は、引き続き、実質的な財政運営に資する方式を追求していってもらいたいと考えております。
そこで、この併記方式により作成された全体財務諸表を活用して、今後の財政運営においてどのような取り組みを行っていくのか、お伺いいたします。
財務局長
都の財政状況を的確に把握していく上では、普通会計のみならず公営企業や監理団体との関係がこれまで以上に大きな位置を占めることとなります。そのことを示す例として、例えば平成十九年度決算から、いわゆる財政健全化法に基づきまして、幾つかの指標の公表が新たに義務づけられております。これらの指標のうち、連結実質赤字比率には、公営企業会計の資金不足額が合算をされます。また、実質公債費比率には、起債償還財源としての公営企業会計に対する繰出金が、普通会計の元利償還金に準ずるものとしてカウントをされます。さらに、将来負担比率には、都が監理団体等との間で設定しております損失補償契約に基づく都の負担見込み額が将来負担として算入されることとなっております。このように、公営企業や監理団体との関係が、東京都の財政の健全性を示す指標に大きな影響を及ぼしてきております。
したがいまして、現在及び将来の財政状況を見通していくに当たりましては、公営企業や監理団体を含む東京都全体の財務体質をどうするかということが重要な課題となってきておりまして、全体財務諸表は、東京都全体の財務体質を強化していくためのツールとして、今後その役割が一層高まっていくと考えております。
したがいまして、今後ともこのような取り組みを強化することによりまして、都政全体において都民が必要とする施策を安定的、継続的に展開していけますよう、適切な財政運営を行うべく一層努力してまいります。
鈴木委員
冒頭にも触れましたけれども、財政破綻した夕張市の例からも、現在地方自治体に向けられた行財政運営に対する目は非常に厳しいものがあります。もちろん東京都といえども例外ではありません。また、監理団体等についても、同様に厳しい目が向けられております。
平成十九年度決算からは、いわゆる財政健全化法において、地方公社や第三セクターなども含めた地方自治体トータルで、財政の健全性の確保が求められております。
こうしたことからも、東京都全体財務諸表を活用し、そこから得られた情報をさまざまな角度から分析することにより、財務体質の健全性を図っていくことがますます重要になってきております。今後ともこの取り組みを強化し、将来にわたって都民に対し安定的で質の高い行政サービスを提供していくことが重要であり、そしてまた、公会計制度の改革の目的は、制度業務とシステムの変更ではなく、マネジメント能力向上やアカウンタビリティー、いわゆる説明責任の遂行など行政改革の推進でありますので、導入後の成果が得られるような取り組みとなるよう、今後とも一層の努力を要望いたしまして、私の質問を終わります。