1. トップ
  2. 都議会ネットリポート
  3. 平成20年
  4. 第3回定例会 一般質問
  5. 松下玲子(民主党)

安心して出産できる施設の確保
外環ノ2は廃止を含めて検討を

松下玲子
松下玲子(民主党)

少子化対策と子育て支援

質問1
 まず冒頭に、私ごとではありますが、昨年の秋に待望の妊娠が判明し、ことし六月に子どもを出産いたしました。初めての妊娠、出産を経て、我が子の誕生、そして子育てと、少子化対策と子育て支援に関して、まさに当事者としてさまざまな体験をしています。
 また、新しい命の誕生という、とうとい経験を通し、ハードからハートへ、道路やダムという箱物建設から命を守りはぐくむ施策へ、限られた都の財源の使い道を大きく転換すべきであると改めて強く思いました。道路もダムも、使うのは人のはずです。人にこそ、少子化対策や子育て支援にこそ、もっと思い切って財源も知恵も注ぐべきとの思いで一般質問に挑みます。
 初めに、安心して出産ができる環境の整備について伺います。
 妊娠、出産を経て新しい命が誕生します。妊産婦死亡率は、医療の進歩により大幅に減少しているとはいえ、産科医が他の医師より訴訟リスクが高い現実があるように、今も昔も出産に危険が伴っているということは事実であり、出産はまさに命がけです。命をかけて命をつなぐ、とても崇高な行為です。
 しかし、現実は、都内でその出産のための施設が減少しています。都内で分娩を扱う医療機関は、平成二年には三百九十四施設あったものが、十五年後の平成十七年には半分以下、百九十二施設に急速に減少しており、三年ごとの調査の本年の結果はまだ出ていないようですが、さらなる減少を招いているのではないかと危惧をいたします。
 安心して出産できる施設の確保は少子化対策の基本中の基本であり、妊婦は、妊娠中の体の変化や感情の変化にさまざまな不安を抱えながらも、大切に命をはぐくんでいるのです。新しい命の誕生の場である分娩施設がない、または途中で分娩を中止してしまうことがあれば、不安はさらに増してしまいます。
 都は、こうした出産できる施設が減少している現状、産科医療の確保のため、どのような取り組みを行っているのか、所見を伺います。

答弁1
福祉保健局長
 産科医療の確保についてでありますが、分娩取扱施設の減少など、産科医療を取り巻く厳しい状況の中、限られた医療資源を最大限に活用することにより、お産のニーズに対応していくことが必要と考えております。
 このため、都においては、周産期医療を担う病院、診療所等によるネットワークグループを立ち上げまして、それぞれの医療機関が持てる機能を発揮しながら、協力して地域の産科医療を支える体制づくりを進めております。
 また、産科医師等の負担軽減と定着を図るため、周産期母子医療センターなどが行う医師の交代制勤務や短時間勤務の導入、女性医師の復職支援研修等の取り組みを支援しております。


質問2
 また、分娩は取り扱っていても、早期に分娩予約を実施し、分娩数を制限している医療機関があることも事実です。私自身、妊娠判定を婦人科で行った後、出産予定日が確定し、その段階で予約を入れることができたと病院でいわれ、初めて分娩予約という制度があることを知りました。医療機関の減少や分娩制限により、分娩の場がなかなか決まらないことは、妊婦にとってはとても不安なことです。
 都は、妊婦が安心して分娩の場を確保するために、都民に対してどのように働きかけを行っているのか、所見を伺います。

答弁2
福祉保健局長
 分娩の場を確保するための都民への働きかけについてでありますが、安心して出産に臨むためには、妊婦が妊娠に気づいた段階で早期に医療機関を受診し、定期的な健診を受け、出産リスクに応じた適切な医療機関を決定していくことが重要であります。
 このため、都は、区市町村と連携し、保健所等における相談、指導や、医療機関の早期受診を勧奨する普及啓発を行っているところであります。


質問3
 次に、子育て環境の整備について伺います。
 私自身、九月から子どもを認証保育所に預けて仕事に復帰しましたが、妊娠中から自分で保育所探しを行い、改めて本当に大変だということを痛感しました。
 七月に公表された東京都の待機児童数は五千四百七十九人に上り、保育サービスの供給不足が明らかになっています。私のように年度途中から保育所を利用したいと思っても、認可保育所に入ることはほとんどできません。ようやくの思いで、運よくあきが出た認証保育所に入ることができ、安堵したのは入所三日前でした。保育を本当に必要としているが利用できない人は、待機児童数であらわれている以外にもたくさんいると思われます。
 しかし、その一方で、認証保育所を利用している人の中には、幼稚園の授業料より安い、給食が出るなどの理由で、本来保育を必要としていないのではないかと思われる子どもが入所している事例も、残念ながら見受けられました。
 そもそも認証保育所はどのような利用者のためのものなのか、制度の基本的な理念について見解を伺います。

答弁3
福祉保健局長
 認証保育所の理念についてでありますが、認証保育所は、女性の社会進出が進み、就労形態が多様化する中で、大都市特有の保育ニーズに柔軟かつ的確にこたえるために、都が独自の基準を定めて創設をいたしました。
 保育に欠ける要件に基づき、区市町村が入所決定を行う認可保育所と異なり、保育を必要とする利用者が施設を自由に選択し、利用できる制度となっておるところであります。


質問4
 保育を本当に必要とするすべての人に保育サービスを提供できることは理想ですが、サービスの供給量が絶対的に不足している中では、認証保育所も、待機児童解消の受け入れ先として重要な役割を担っているのが現状です。
 認証保育所の事業者がよりよいサービスを競い合い、利用者が各家庭の保育方針と照らし合わせて事業者を選ぶことができる現状に残念ながらなっていないことを踏まえれば、現在の需給バランスを大きく変えていくため、認可保育所より短時間で設置が可能な認証保育所の一層の設置促進を早急に行っていく必要があると考えます。
 しかし、今まさに困っている人たちがいる現状、それが直ちにできないのであれば、整備が進むまでは、保育を必要とする緊急度を定め、本当に困っている人については、たとえ年度途中であっても優先的に利用できるような仕組みに変えることも検討すべきであると思います。
 都は、認証保育所の利用者の実態、状況について調査を行った上で、保育を必要とする緊急度を定め、保育を必要としている緊急の度合いに応じて優先的に利用できるような仕組みに変えることを検討すべきと思いますが、見解を伺います。

答弁4
福祉保健局長
 認証保育所の利用の仕組みについてでありますが、認証保育所は、多様な事業者の参入により保育サービスの供給を拡大するとともに、利用者と事業者との直接契約制度を一つの特徴としております。
 この制度により、利用者の選択の幅を広げ、競い合いによる質の向上を図るなど、利用者本位のサービス提供の実現を目指しておりまして、今後とも、こうした仕組みのもとに認証保育所の設置促進に取り組んでまいります。


質問5
 私は、間もなく十年を迎える認証保育制度のメリットやデメリットを調査して、よりよい制度にしていただきたいという思いで質問をしています。待機児童が多い現状においては、利用者が施設を選ぶというよりも、施設に選ばれなければサービスを享受できないのが現状なのです。
 都は、こうした待機児童が多い現状をどのようにとらえ、待機児童解消に向けてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 本来は保育を必要としないと思われる人でも、月決め最低百六十時間の契約を結べば認証保育所を利用できる現状において、認証保育制度の仕組みを変え、本来は保育を必要としない人は、一時保育や他の子育て支援サービスに誘導しなければ、幾ら認証保育所を新たに設置しても、待機児童の解消にはつながらない可能性があることを指摘しておきます。
 今、本当に困っている人たちにしっかりとこたえることができるように努力していただきたいと要望いたします。

答弁5
福祉保健局長
 待機児童解消に向けての取り組みについてでありますが、大都市東京に合った保育サービスを拡充し、待機児童を解消することは喫緊の課題であると認識をしてございます。
 このため、都は今年度から、認証保育所だけでなく、認可保育所や認定こども園など、多様な保育サービスを組み合わせ、今後三年間で一万五千人分の整備を行う保育サービス拡充緊急三カ年事業に全力で取り組んでいるところでございます。

ページの先頭へ

八ッ場ダム

質問1
 次に、八ッ場ダムについて伺います。
 都は、平成二十年の第一回定例会において、八ッ場ダム建設事業の工期延長にかかわる基本計画変更協議に伴い、意見内容について議決を得ました。私は、一定の都市整備委員会において、基本計画変更に関して質問を行いましたが、その中で、今後の水利権の減電補償費や事業費増額のリスク、さらなる工期延長のリスクに対して、リスクを払拭すべき明確なデータが示されず、今後の事業費増額と工期の再延長の可能性を指摘し、基本計画変更の議案に反対しました。
 最新の八ッ場ダム事業の進捗状況についてお伺いします。

答弁1
都市整備局長
 八ッ場ダムの進捗状況でございますが、本年三月末現在、用地の取得については七三%が買収済み、つけかえ工事につきましては、鉄道が八一%、道路が五七%の進捗となってございます。また、代替地の整備も進みまして、既に家屋の移転も始まっております。ダムの本体工事につきましては、本年六月、河川を迂回させるための仮排水トンネルの工事に着手いたしました。事業全体としての進捗率でございますが、事業費ベース、金額ベースで六三%となっております。


質問2
 熊本県知事が川辺川ダム計画を中止すべきであると英断をされました。昨日の民主党の代表質問に知事は、川辺川ダムと八ッ場ダムとでは、流域住民のダム建設に対する賛否が異なるとの答弁をされましたが、私が八ッ場ダム現地を視察し、ダム建設予定地の住民から話を聞いたときには、決して八ッ場ダムに手放しで賛成しているわけではなく、ダム建設が、たとえ自分たちの穏やかな暮らしを犠牲にしても、必要な国策ダムであり、川下の住民にとって必要不可欠なダムだという大義名分があるからこそ応じるのだという、非常に苦しい心境を持たれている状況でした。
 果たして、必要不可欠なダムだという大義名分は、ダム計画から半世紀以上も経過した現在、本当に存在するのでしょうか。我が会派は、治水や利水に関して、これまでの質疑でも、最新のデータをもとに再度計算し直すべきであると継続して主張しています。都が繰り返す必要不可欠なダムであるという前提の人口動態予測、水需要予測など、前提となる数値が古いものでは、本当に必要不可欠かどうか検証ができないはずです。
 たとえ事業主体は国であっても、都民の税金を使って都が取り組んでいる事業であるという姿勢で、都民に対してしっかりと説明責任を果たす必要があります。都として、都民に説明責任を果たす上でも、八ッ場ダムに関して独自の調査を行い、最新のデータで改めて独自に事業の検証を行う必要があると思いますが、見解を伺います。
 一定の本会議で猪瀬副知事は、公共事業に関して、最新のデータに基づいて調査をし直す必要があるという、公共事業全般ではございますが、答弁をされています。半世紀以上に及んだ八ッ場ダム計画の歴史を振り返り、一度立ちどまって、最新のデータに基づいて都独自の調査を行った上で事業を精査し、工期や事業費に関しても、より詳細な再調査を行う必要があると思います。そして、詳細な再調査の結果、必要性がなくなっているならば、この事業から撤退し、ダム計画に翻弄されたダム建設予定地の人々の生活再建を第一に考え、一刻も早く安心して暮らせる、落ちついた生活を取り戻してあげることが大切なのではないでしょうか。
 未来にむだなダムという多額な負債を残すのか、風光明媚な自然、歴史ある温泉街などの資産を引き継ぎ、残していくのか、ここで立ちどまって英断を下すことを強く要望します。

答弁2
都市整備局長
 八ッ場ダム計画の検証についてのご質問がございましたけれども、お話にもありましたように、昨日も代表質問で知事からお答えしたとおりでございます。
 繰り返しになりますが、八ッ場ダムは、首都圏における治水、利水の安全度を向上させる上で必要不可欠な施設でございまして、一都五県の連携と合意のもと、国により建設が進められております。
 また、地元で建設の賛否が分かれる川辺川ダムとは異なりまして、八ッ場ダムは、建設地にある地元の二つの町がそろってダムの早期完成を要望しております。都として計画の見直しは考えておりません。

ページの先頭へ

外環ノ2

質問1
 最後に、外環ノ2について伺います。
 外環ノ2は、東京外かく環状道路、いわゆる外環と同時に、昭和四十一年に、外環本線と一体となって、三鷹市内の東八道路から練馬区内の目白通りまでの九キロメートルが、外環ルート上の地上部分に幅員四十メートルの道路として計画決定されているものです。
 現在、東京都は、国や沿線の区市とともに、外環沿線の地域ごとに地元との話し合い、いわゆる地域PIを実施しています。先ごろ、地域PIの実施状況が公表されましたが、これを見ますと、各地の住民からは、環境対策や交通対策等について多くの意見が出されているようです。私の地元武蔵野市においても、近く地域PIが開催されると聞いていますが、これまでに地下水に対する不安などの意見が出されるとともに、地上部に残っている都市計画道路である外環ノ2が今後どのように扱われていくのか、関心が高まっています。
 これまで外環ノ2は、地域住民の意見を聞く場が設けられていませんでした。地域住民にとって、外環ノ2は外環本線と切り離しては考えられないので、地域PIで取り上げていただきたいという思いを強く持っております。
 今後、人口の減少や高齢化などにより自動車の台数も少なくなっていくと予想される中、また、外環本線が長い歴史的な経緯を経て大深度地下方式となったことも踏まえて、地上部の都市計画道路が本当に必要なのか、大いに疑問もあるところですので、このようなさまざまな意見を、東京都は地域の話し合いの中でしっかりと聞いていくべきです。
 そこでまず、現在進められている外環の地域PIについて、武蔵野市域における取り組み及び外環ノ2の取り扱いについて伺います。

答弁1
都市整備局長
 外環に関する話し合いでございますが、都は、外環の事業着手に向けて、国や沿線区市とともに地域ごとの話し合いを実施し、地元の理解と協力が得られるよう努めてきております。武蔵野市域におきましても、来月上旬に、公募に応じた参加者約百名によるワークショップを開催する予定でございます。
 なお、このワークショップにつきましては、主に外環本線の事業を対象とすることで準備を進めております。


質問2
 次に、外環ノ2については、地元の区市長からも、外環の都市計画変更の際に意見が出されています。私の地元、武蔵野市長からは、外環ノ2について、廃止することも含め、計画の方向性、検討のプロセスを早急に明らかにされたい、また、その検討過程においては、地元との協議、対話を重視するとともに、安全面、環境面に最大限配慮することを求めるなどの意見を東京都に提出しております。
 外環ノ2については、武蔵野市長の都市計画案に対する意見等を踏まえ、今後、詳細なデータを示しながら、廃止することも含めて検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 外環ノ2の沿線住民は、昭和四十一年の計画決定から四十年以上にわたり、都市計画法による制限を受けた生活を強いられています。また、本線が大深度地下方式に計画変更した経緯やその重み、さらに、外環ノ2と連続性のある東八道路以南の附属街路は廃止されているという事実があります。
 東京都は、このような経緯と事実を重く受けとめ、外環ノ2については、地域住民の声を聞く場を設け、最新で詳細なデータを示しながら、不必要か必要か、しっかりと検証し、廃止も含め、慎重に検討を進めていくよう強く要望いたします。

答弁2
都市整備局長
 外環の地上部街路でございます外環ノ2についてでございますが、関係区市等から出された要望を踏まえ、この道路の必要性やあり方などについて、広く都民の意見を聞きながら検討を進めてまいります。

ページの先頭へ