村上英子(自民党)
質問1
最初に、都有地の利活用についてお伺いいたします。
私の地元である渋谷のまちは、都市再生緊急整備地域への指定や、本年六月の地下鉄副都心線の開業を契機として、再開発の機運が高まっています。このうち、渋谷駅の東側の渋谷、原宿、青山をつなぐ地域については、商業、業務、住居などを中心に、近年では都内でも有数のクリエーティブ関連機関の集積ゾーンとなっております。
その一方で、この地域には、国連大学、青山病院跡地、東京都児童会館、美竹公園、都営宮下町アパートなど、多くの公共施設が存在し、貴重な緑が都民の心をいやしています。
しかし最近は、青山病院の解体工事が既に始まっているほか、児童会館も平成二十四年度以降の機能移転が決定し、都営宮下町アパートも居住者の移転が進められるなど、状況の変化が見られます。
これらの公共施設の跡地については、地元の関心も非常に高く、この九月には、渋谷・東地区まちづくり協議会とNPO法人渋谷・青山景観整備機構から、渋谷、原宿、青山をつなぐトライアングルゾーンの将来像と題した報告書も出されています。
このような大規模な公共施設の跡地利用については、地域に与える影響が極めて大きいため、地域の住民の声を反映させ、跡地利用とまちづくりを関連づけながら活用を図っていく必要があると考えます。
そこで、大規模な公共施設の跡地などで未利用となっている都有地について、都は今後、どのような考え方でまちづくりへの活用を図っていくのか、お伺いいたします。
答弁1
財務局長
都有地の利活用についてのご質問にお答えいたします。
都有地は、都民から負託された貴重な財産でありますので、都の行政目的の達成のために効果的に利用することがまず必要でございます。
また、直接の行政目的に供さない場合でございましても、財産価値を最大限発揮させるとともに、環境負荷の低減など、都の施策への貢献を図っていくことが重要でございます。
お話の渋谷駅東側の地域は、都心でありながら、旧青山病院や区立美竹公園などに緑が残され、大規模な都有地も点在している貴重な地域でございます。
こうした地域にある都有地の利活用に当たりましては、その立地や特性、あるいは行政目的との関連などを考慮しつつ、地域のまちづくりに役立てる視点に立って有効活用を進めることが、当該都有地の財産価値の向上にもつながるものと考えております。
今後の都有地の利活用に当たりましては、こうした点を踏まえ、地域住民の声に配慮しながら、庁内横断的に検討を行ってまいります。
質問2
次に、渋谷駅周辺の都市基盤整備について伺います。
渋谷駅は八つの鉄道路線が乗り入れ、都内最大級のバスターミナルを持っており、全国有数のターミナル駅といえます。今後は、平成二十四年度に東急東横線との相互直通運転も予定され、神奈川方面からの利便性の向上も期待されます。さらに駅周辺では、東急文化会館跡地を初め、各所で再開発の動きが加速しており、渋谷のポテンシャルはますます高まってくると思われます。
しかしながら、現状の渋谷駅を見ると、駅施設の老朽化や、交通混雑などの課題を抱えており、ターミナル機能の強化や、乗りかえ利便性の向上を図ることが急務と考えます。
このような状況の中で、本年六月、駅や周辺の都市基盤に関する再編整備の考え方を示した渋谷駅街区基盤整備方針が策定されました。この整備方針は、現在の地下鉄の乗りかえ動線やバスターミナルを抜本的に見直し、これまでの課題を一挙に解決する、まさに渋谷駅の大改造計画というべき内容であり、その一日も早い実現が待たれるところです。
そこで、都は今後、この整備方針をどのように具体化していくのか、お伺いいたします。
答弁2
都市整備局長
渋谷駅街区基盤整備方針の具体化についてでございますが、本年六月、都、国、地元渋谷区などで構成する検討委員会が策定した整備方針では、JR埼京線のホームの移設、バスターミナルの再編、歩行者広場の拡充などにより、駅施設、公共施設、駅ビルを一体的に再編整備することとしております。
現在、この方針の実現に向けまして、関係機関との協議、事業手法に関する事業者間の調整などを進めております。
今後とも、渋谷駅周辺の都市基盤の充実に向けて、これらの協議や調整を早急に進め、来年度の都市計画決定を目指してまいります。
質問3
この整備方針については、地元の方々も高い関心を持っており、公表以降、多くの意見が寄せられていると聞いています。特に西口広場の整備については、渋谷駅の象徴でもあるハチ公広場が拡充されること、歩行者とバスや自動車との錯綜が解消されることは評価されておりますが、一般車の通り抜けを規制する内容となっていることから、迂回する車両による周辺道路への影響を心配する声も多くなっております。また、ヒートアイランド対策として、風の道を確保することも強く求められていると聞いております。
今後、この整備方針を具体化するに当たっては、このような地元の意見にも十分配慮して進めていただきたいと考えますが、都のご所見を伺います。
答弁3
都市整備局長
地元の意見への配慮についてでございますが、都と地元区は、整備方針の策定後、ホームページ等で本方針に関する意見の募集を一カ月行うとともに、周辺地域の説明会を実施いたしました。
地元からは、渋谷駅の機能の向上に期待が集まる一方、ご指摘のように、西口の交通規制による影響、風の道に配慮した駅ビル計画のほか、タクシー乗り場の増設、緑化の推進など、多くの意見が寄せられております。
今後は、都市計画や地元区の条例に基づく手続など、さまざまな機会を通じてさらに意見を伺い、これらを踏まえて本整備方針の具体化を図ってまいります。
質問4
また、この整備方針では、渋谷駅街区の再編に合わせた渋谷川の整備を挙げております。渋谷川は「春の小川」のモデルにもなった川であり、渋谷の多くの人々がその復活を望んでおります。渋谷駅周辺の再編整備をよい機会ととらえ、渋谷川を、渋谷に住み働く人々のみならず、渋谷を訪れる多くの人々が親しめるような川に再生すべきと考えます。
そこで、都は、整備方針に示されている渋谷川の整備についてどのように考えているのか、お伺いいたします。
答弁4
都市整備局長
整備方針に示されている渋谷川についてでございますが、この整備方針では、水害に強く、安全・安心なまちの実現を掲げておりまして、駅前広場などの再編にあわせ、渋谷川の暗渠となっている部分を、雨水貯留施設とともに下水道施設として再整備することといたしました。
一方、東急東横線の渋谷駅から代官山駅間では地下化の工事を進めておりまして、これにより生み出される線路跡地を活用した水辺空間の整備について、関係機関と検討を開始いたしました。
今後、ご指摘のように、「春の小川」の復活をイメージさせる親水空間の創出を目指しまして、渋谷川の再整備につきまして幅広く検討を進めてまいります。
質問5
また、都心を流れる渋谷川は、渋谷駅周辺だけではなく、全川にわたり都市化の影響を受けております。川沿いには建物が連なり、川に背を向けているなど、まさに川とまちが分断されています。さらに、護岸には緑が少なく、コンクリートがむき出しになっているなど、川に潤いが感じられず、住民として親しみを持てる川とはいえません。
都は、オリンピック招致の実現に向け、東京の魅力を高めていくためにも、河川の治水機能を確保しつつ、都市の貴重なオープンスペースである河川の環境整備を進めることが極めて重要であると考えています。
このため、渋谷川を潤いや安らぎが感じられる川としてどのように再生していくのか、伺います。
答弁5
建設局長
渋谷川の再生についてのご質問にお答えいたします。
渋谷川においては、川沿いの空間確保が困難であることから、河川に隣接する公共用地を活用するなど、さまざまな工夫により河川環境の向上を図ることが重要であります。
このため、学識経験者や地域の方々の意見を聞きながら、環境整備を盛り込んだ渋谷川・古川河川整備計画を作成しており、年内に公表の予定であります。
この整備計画では、潤いと安らぎのある渋谷川を実現するため、川沿いの区立恵比寿東公園を、潤いのある空間を形成する拠点の一つに位置づけております。
現在、地元区と連携し、公園の再整備事業にあわせた緩傾斜護岸の整備を検討しており、事業化に向け、取り組んでまいります。
今後とも、渋谷川の再生を目指し、良好な河川環境の創出に努めてまいります。
質問6
次に、まちづくりの観点から、浸水対策について伺います。
先月は全国的に局地的な豪雨が頻繁に発生しており、浸水被害などが連日のように起こり、大きな社会問題となっています。渋谷駅周辺は、くぼ地状の地形の関係から、浸水に対して脆弱な地域の一つといえます。
また、渋谷駅周辺には、地下空間を持つ商業施設や集合住宅が多く存在しています。このような施設での浸水被害は、地上の浸水は浅くとも、地下空間への浸水により、生命の危険さえも生じることが考えられます。特に最近では、商業施設や集合住宅などではなく、個人住宅においても地下室や半地下などがつくられ、その数も増加傾向にあると聞いております。
今月、都では、浸水被害の防止策や軽減対策などを例示した東京都地下空間浸水対策ガイドラインを発表しました。浸水被害を解消するためには、区や地下室の所有者がこのガイドラインを有効に活用していくことが必要だと思われます。
そこで、今後、都は、このガイドラインを活用して、浸水に強いまちづくりにどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
答弁6
都市整備局長
地下空間浸水対策ガイドラインについてでございますが、近年、都内では、局地的な豪雨による地下室や地下街などの浸水被害が発生しており、こうした施設における被害を防止し、軽減することを目的としてガイドラインを策定いたしました。
このガイドラインは、浸水に強い建物づくりや安全な避難路の確保策などを取りまとめておりまして、浸水に脆弱な地下空間において対策を行う際の指針となるものでございます。
今後、都は、区市や庁内関係局で構成する総合治水対策協議会などを活用して、ガイドラインの内容につきまして、広く都民に普及啓発を図ってまいります。
質問7
さらに、渋谷駅には、「しぶちか」と呼ばれる渋谷地下街、半蔵門線や副都心線など地下鉄の駅があり、過去に浸水被害が発生し、深刻な影響を与えたことを記憶しております。このような地下空間は、一たん浸水すると、社会的に大きな影響が出ることが想定でき、早急な対応が必要であると考えます。
「しぶちか」を初め、このような大規模な地下街については、特別な対策が必要と考えますが、都の具体的な取り組みについてお伺いいたします。
答弁7
都市整備局長
大規模地下街などに対する具体的な取り組みについてでございます。
ご指摘のように、大規模地下街では、不特定多数の利用者によるパニックや、高齢者、外国人や旅行者などの災害時要援護者への対応のおくれから、浸水被害が拡大する可能性がございます。
このため、大規模地下街ごとに、区や施設管理者等とともに協議会を設置いたしまして、ガイドラインで示した浸水対策を施設の特性に応じて具体化した施設別地下浸水対策計画を策定してまいります。
今後とも、こうした取り組みを通じまして地下空間の浸水対策を進め、都民生活の安全確保に努めてまいります。
質問1
最後に、オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いいたします。
先般、オリンピック・パラリンピック招致特別委員会、野村委員長を団長のもと、北京パラリンピックを視察してまいりました。北京パラリンピックは、オリンピックにも負けない盛り上がりの中で、連日、熱戦が繰り広げられました。私も、実際に車いすバスケットボールとボッチャという競技を観戦する機会がありました。
ボッチャとは、パラリンピック固有の競技で、脳性麻痺等の重度障害者がボールを投げ合い、ターゲットのボールにどれだけ近づけられるかを競う競技ですが、いずれの競技も大入り満員であり、観客も心から楽しんでいる様子からも、パラリンピック競技が見ても楽しい魅力的なスポーツであることを改めて実感いたしました。
一方、北京スタジアム、通称鳥の巣競技場は、見た目にも立派で、まさに今回のオリンピック・パラリンピックを象徴していましたが、観客席へのアクセスなど、高齢者や障害者への配慮という点で課題があると感じられました。
また、セキュリティーが大変厳し過ぎて、会場の入り口では同じような検査を何度も受けるなど、観客が適切にさばき切れていないことも感じました。
そこでまず、二〇一六年東京パラリンピックの会場計画策定に当たっての基本的考え方についてお伺いいたします。
答弁1
東京オリンピック・パラリンピック招致本部長
パラリンピックの会場計画についてでございます。
選手が最高のパフォーマンスを発揮でき、また、すべての観客がスムーズに移動、観戦できる計画を作成してまいります。
具体的には、まず、競技会場はオリンピックの会場を使用し、コンパクトな大会を目指します。特にパラリンピック特有の競技、例えば、お話のボッチャなど重度障害者の参加の多い競技では、できる限り選手村から近い会場を使用するなど、競技の特性に応じた配置といたします。
また、選手、観客等の移動では、道路や駅などのバリアフリー化を徹底するほか、バスのノンステップ化など、車いすが利用可能な車両を十分に用意いたします。
さらに、施設の整備に当たっては、障害者が安全かつスムーズに試合会場や観客席に到達できる動線を確保するとともに、障害者対応の座席やトイレを増設するなど、きめ細かい対応をしてまいります。
なお、会場のセキュリティー確保は、オリンピック・パラリンピック共通の課題として万全を期しますとともに、最新の技術を駆使して、大会関係者や観客にストレスのない円滑な会場への入場を確保してまいります。
質問2
一九六四年のパラリンピックは、障害者スポーツを都民、国民に広く認知していただきましたが、今回の北京の例にも見られるように、今やパラリンピックは、オリンピック並みの規模と内容を有し、社会に対する影響も非常に大きいものとなっております。
しかし、選手に対する支援体制や選手を取り巻く環境整備が、まだまだオリンピック選手と比べて大きな差があることも否めません。
先日、厚生労働大臣みずから、街頭での募金活動を行っておりました。
オリンピック・パラリンピックは一つであるとの知事の考えは、大いに評価するものです。
そこで、都は、二〇一六年オリンピック・パラリンピック招致を目指す都市として、どのようなパラリンピック競技大会を目指していくのか、知事のご見解をお伺いし、私の質問を終わります。
答弁2
知事
パラリンピックについてでありますが、かつて一九六四年、東京でオリンピックとともに開催されたパラリンピックは、 我が国における障害者スポーツの歴史を切り開き、その後における障害者に配慮したまちづくりや障害者の社会参加を大きく前進させました。
それから半世紀を経て、二〇一六年に再び東京で開催しようとしているパラリンピックでは、「十年後の東京」が目指す、高齢者や障害者を含めただれもが安心して暮らせる都市東京において、障害のあるアスリートが最大の力を発揮できるよう、最適な競技環境を整えていくつもりでございます。
また、メディアの協力によりまして、選手が競技に打ち込む姿と競技スポーツの魅力を世界に向けて発信していきたいと思います。
こうしたパラリンピックを開催することによりまして、障害者スポーツへの理解、関心がますます高まり、すべての人に優しいまちづくり、人格と個性を尊重し合う共生社会の実現が大きく加速することを確信しております。