早坂義弘(自民党)
質問1
二十九億円。我が党の緊急要望を受け、東京都が提出した小中学校耐震化事業の補正予算です。
阪神・淡路大震災では、死者の九五%が即死でありました。このことは、大震災によって命を失うのは、地震に襲われた瞬間だということを意味しています。すなわち、地震の第一撃からいかに身を守るかこそが震災対策の本丸であり、建物の耐震化なくして、大震災から命は守れません。食糧の備蓄や仮設住宅は、あくまで生き残った後の話です。
都内の公立の小中学校全体では、七千五百棟の校舎があります。このうち四分の一、千七百棟が耐震性に欠けています。小中学校の校舎の耐震化は、子どもたちの命を守るために極めて重要な施策です。ましてや、学校は災害時の避難所になるところです。学校に避難しようと行ってみたら、地震で崩れていたではお話になりません。中国四川大地震による学校倒壊の悲惨な状況は記憶に新しいところです。
では、写真をごらんください。(パネルを示す)中越沖地震で被災した学校で、和歌山県の臼井防災士が撮影したものです。ごらんのとおり、窓の外には、耐震化工事をした証左の筋交いが見えます。一方、教室の中に目を移すと、ロッカーが倒れています。
では、次の写真をごらんください。こちらは職員室の状況です。ロッカーが倒れ、テレビが落下しています。教室にもロッカーやテレビがあるでしょう。授業中だったらどうなっていたか。理科室や保健室の状況はどうか。化学薬品が飛び散っている可能性があります。
では、もう一枚ごらんください。こちらは、岩手・宮城内陸地震のものです。ピアノがひっくり返っています。大地震の際、ピアノが走ってくるというのは、防災の専門家の間ではよく知られた話ですが、このようにひっくり返るケースすらあるのです。周囲にお子さんや先生がいたら致命的な被害を受けていたかもしれません。
建物の耐震化を進めることが、大震災から命を守る大前提です。それと同時に、室内対策、すなわち家具やピアノの固定、ガラスの飛散防止がとても重要であることがおわかりいただけるかと思います。
交通事故に例えるならば、車の躯体を強くするのがまず第一。その上で、シートベルトをしなければ、大けがあるいは死に至るということです。写真は用意しませんでしたが、地震により家具の転倒防止器具が外れてしまった例も数多くあります。素人の簡単な取りつけでは、我々が想定するような大震災には耐えられないものも出てくるのです。家具の転倒防止に気をつけましょうというスローガンだけでは限界があります。真に効果をもたらすためには、一定水準の技術が求められます。
これらに対する方策も含め、学校における震災対策に関してご見解を伺います。
答弁1
教育長
学校における震災対策についてお答えを申し上げます。
都教育委員会はこのたび、公立小中学校等施設の耐震化を平成二十四年度までに完了することを目標とし、区市町村に対して財政支援及び人的支援を行うことといたしました。
次代を担う児童生徒の身体、生命の安全を確保するためには、建物の耐震化に加え、校内の家具類の転倒、落下防止策を講ずることが極めて重要でございます。
転倒、落下防止につきましては、これまでも学校設置者である区市町村が取り組んできたところでありますが、その取り組みは自治体ごとに異なっておりまして、必ずしも十分とはいえない状況であるというふうに考えております。
そのために、都教育委員会は、東京消防庁と連携いたしまして、専門家を講師とする講習会を開催するなど、区市町村教育委員会に対しまして、転倒、落下防止策の重要性を周知しますとともに、技術的な支援を行ってまいります。
質問2
ところで、地域危険度の結果などを踏まえ、東京都は、平成十五年度に策定された防災都市づくり推進計画の見直しを行うとしています。先ほどの交通事故の例えでいえば、道路の見通しをよくしたり、道幅を広げたりという大きなまちづくりからの対策がこれに当たります。
震災対策は、規模の大きい方から順に、木造密集地域の解消や狭隘道路の拡幅、次に個別の建物の耐震化や不燃化、三つ目に室内の家具固定やガラス飛散防止、これらいわゆるハード対策こそが、地震の第一撃から命を守る何よりの手だてです。
東京をマグニチュード七クラスの大地震が襲う可能性は、今後三十年以内に七〇%。ここで気をつけなければならないのは、大地震は三十年後に発生するということではなく、きょう起きる可能性も含めて、七〇%だということです。
こうした警告を耳にしても、私だけは大丈夫という正常化の偏見ゆえか、震災対策は、現実にはなかなか進んでいません。先ほど警視総監が切々とお話しされた振り込め詐欺も、まさか私がという同じ心理メカニズムによるものだと私は思います。
震災対策にもいろいろあります。それが、地震の第一撃から命を守るためのものなのか、それとも生き残った後の対応策なのか、この両者をはっきり区別しないまま、震災対策という大きなくくりの中で議論されていると私は考えます。
震災対策の本丸は、命を守ることにあります。木造密集地域解消などの防災まちづくりを進めるとともに、学校だけでなく、さまざまな建物の耐震化促進などのハード対策を今こそ重点的に進めるべきです。知事のご見解を伺います。
答弁2
知事
建物の耐震化についてでありますが、南関東における大地震発生の切迫性が指摘されておりまして、東京では、直下型地震は、あす、いや、今夜起きてもおかしくないということであります。
多数の被害者を出した阪神・淡路大震災では、死者の八割は建物等の倒壊による圧死であったようであります。
建物の耐震化は喫緊の課題でありまして、都は全力で取り組んでおります。とりわけ、緊急輸送道路を最優先に確保するため、全路線を対象に沿道建物の耐震化助成を実施しております。
建物の耐震化は、所有者の意識啓発が不可欠でありまして、八月に、約五十の関係団体から成る耐震化推進都民会議を立ち上げました。この会議を中心に、民と官がスクラムを組んで、まず耐震化の機運を高めていかなければならぬと思います。
ある哲学者がいっておりましたが、人間というのは実にいいかげんなもので、だれも人間は必ず死ぬということは知っていても、自分が死ぬということを信じている人間はほとんどいないということでありまして、この耐震化についても、まちに行って話をしますと、いや、石原さん、必ず地震は来る、東京は危ないよと。あなたのところ、木造で危ないんじゃないの、いや、うちは大丈夫、ここは絶対来ないと。妙な確信があって耐震化が進んでおりませんが、やっぱりそういう気風というものを根本で変えていきませんと、この問題は解決していかないと思います。
耐震化普及のための啓発DVDもつくらせましたので、こういった手段も活用して耐震化の促進を図り、地震が怖くない東京の実現を目指していくつもりでございます。
質問1
次に、新型インフルエンザ対策について伺います。
昨日の我が党代表質問に対し、新型インフルエンザ緊急対策の三つの柱として、社会機能の維持、保健医療体制の整備、都民、事業者への意識啓発の推進とのご答弁がありました。
国は、新型インフルエンザが発生した最悪の場合には、我が国全人口の二五%が感染し、六十四万人が死亡すると推定しています。これは、過去に我が国で発生した弱毒性のスペイン風邪をモデルにしたものです。しかしながら、今日議論されている新型インフルエンザは強毒性の可能性も指摘されており、ここから既に国の認識の甘さがうかがえます。
新型インフルエンザの脅威から国民を守るのは、国家安全保障上の国の責務です。しかしながら、罹患した患者と直接向き合うのも、そして、恐怖におびえる市民と対峙するのも、結局は現場の自治体、つまり我々です。一千二百万都民の安全を守ることは、東京都政を担う石原知事、そして、我々議会の最大の責務です。直面する危機に鈍感な国に先んじて、想像し得るさまざまな手だてを講じておかなければなりません。
今回の八十八億円の補正予算では、タミフル、リレンザなどの医薬品の備蓄を、東京都独自に大幅に強化することなどが提案されています。このことは、我が党の提案を受けた迅速な取り組みであり、都民にとって大きなニュースです。
医薬品の備蓄を前提とすれば、患者をどう診察するかという医療体制の確保が大変重要な課題になります。東京都は、封じ込め対策として、既に発熱センターや感染症指定医療機関などの整備を進めていますし、本定例会では、医療関係者用の個人防護服五十万着の購入についての議案が提出されています。
しかしながら、新型インフルエンザは感染力が非常に強いと考えられますから、パンデミック、感染爆発期の医療機関には、患者に加えて、不安に駆られた人々が殺到することが想定されます。
また、病院内での感染防止のためには、患者の動線や患者同士の間隔にも十分な配慮が必要です。ベッドがあいていても、ほかの患者に簡単に感染しかねませんから、すぐ入院というわけにはいきません。トイレは同じところを使うのか、二日に一回透析が必要な腎臓病患者への対策はどうするのか、防護服はどこで着用してどこで脱ぐのか。パンデミック期に起こるであろうさまざまな状況を想定しながら、すべての医療機関が新型インフルエンザ対策に取り組んでいく必要があります。
東京都としても、すべての医療機関がこうした準備を進められるよう、積極的に支援すべきと考えます。ご見解を伺います。
答弁1
福祉保健局長
新型インフルエンザ対策についてお答えいたします。
新型インフルエンザの発生時に医療体制を確保するためには、すべての医療機関が適切な診療を行えるよう、十分な事前の準備を進めておくことが重要でございます。
このため、都は、本年七月から九月にかけて、都内全域の医療機関を対象に講習会を開催いたしまして、事前の体制整備について周知を図ったところであります。
また、現在、都内十のブロックにおいて、保健所、区市町村、医療機関等とともに、発生段階に応じて担う具体的な役割と連携策等を協議しております。
今後、こうした協議の内容も踏まえながら、大規模流行期の医療体制の確保に向けまして、医療機関における個人防護具や医療資機材の備蓄、診療に必要な施設整備などに対します新たな支援策について検討してまいります。
質問2
新型インフルエンザがパンデミック期に入った場合には、電力、ガスなどのライフライン企業や食品販売の事業者などにも感染が広がり、毎日の生活に最低限必要な事業の継続すら困難になることが予想されます。他方、感染防止のために、学校閉鎖や交通機関をとめる、空港や港の閉鎖、外出禁止令などの思い切った対策が必要な場面も想定されます。
つまり、社会活動の維持と規制という相反するものが同時に要求されますが、それはもとより、可能な限り感染拡大を防止し、健康被害を最小限にとどめ、しかも社会機能を破綻に至らせないためであります。
しかしながら、こういった事態に対しての国の対策は、法整備を初めマニュアルの整備や関係者の訓練など、著しくおくれています。
新型インフルエンザ発生という危機が目前に迫っています。東京都は何ができるか、何をすべきか、今後の対策に関して伺います。
答弁2
総務局長
新型インフルエンザ発生時におけます社会活動についてお答えさせていただきます。
大規模流行期には、外出や事業活動の制限と、都民生活に必要な事業の継続を同時に行う必要がございます。感染拡大を防止するためには、社会活動の規制が不可欠でございます。
このため、国に法整備等を早急に講じるよう強く求めることに加えまして、都独自の対応策について検討してまいります。
また、事業継続計画でございますBCPを都みずから策定するとともに、区市町村や事業者に対して、感染予防策の徹底やBCPの策定を支援するなど、都民生活を守り、社会経済機能の確保に努めてまいります。
質問1
次に、救急車の適正利用に関して伺います。
救急出場件数の増加が続いていますが、そこに占める軽症者の比率も増加の一途をたどっています。タクシーがわりの安易な利用など、さまざまな問題点が指摘されていますが、これを考える上で確認しておかなければならないのは、患者自身では自分の病状は判断できないということであります。
そこで、東京消防庁は、昨年六月より、救急車を呼ぶべきかどうかを都民が電話で相談できるシャープ七一一九、救急相談センターと、救急隊が現場到着後、緊急性がないと判断した場合に、患者の同意のもとで搬送しない救急搬送トリアージを実施しています。
こうした施策により、どのような成果が上がっているか、また、今後の展開について伺います。
答弁1
消防総監
救急車の適正利用についてでございますが、東京消防庁では、都民の皆様に救急車を適正に利用していただくため、昨年六月一日から、東京消防庁救急相談センターの運用と救急搬送トリアージの試行を開始いたしました。
救急相談センターでは、運用開始から一年間の総受け付け件数が約二十六万八千件と、多くの都民の皆様にご利用いただいており、救急搬送トリアージにつきましても、同意を得られた場合には活動時間の短縮が図られるなど、その必要性についてご理解をいただいているところでございます。
その結果、一年間における救急搬送人員のうち、初診時に軽症と診断された方は三十五万八千七十人で、前年同期と比べ、約二万二千人減少していることから、両事業が一定の効果を上げているものと考えております。
このような成果を踏まえまして、今後さらに救急車の適正利用を推進するため、救急相談センターにつきましては、一層の利用促進を図りますとともに、救急搬送トリアージの試行につきましても、都民の理解を深め、本格運用に向けた検討を行ってまいります。