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  4. 第3回定例会 一般質問
  5. 高木けい(自民党)

通勤寮の法的な位置づけを
十条地区の防災性の向上を

高木けい
高木けい(自民党)

東京の経済の活性化

質問1
 最初に、東京の経済、産業の活性化に関する諸施策を伺います。
 経済のグローバル化がますます進んでいく中、我が国経済は、米国のサブプライムローン問題をきっかけに、金融市場の不安定化、原油価格の高どまり、輸出の伸び悩みなど、極めて厳しい局面を迎えています。このような状況は、都の上半期における法人二税の減収が示すように、我が国経済の根幹を揺るがす大きなインパクトを持っており、常に基軸通貨、為替、原油価格などの外的なリスクを抱えている我が国経済の弱点を露呈しているといえるでしょう。
 ここに至って、国は、去る九月九日、平成十八年に策定した新経済成長戦略を改定することを公表しました。もともと新経済成長戦略のポイントは二つあり、一つは、人口減少社会にあっても、実質二%以上の経済成長が視野に入る人口減少社会の成長モデルをつくることであり、もう一つが、世界とアジアとの連携を図りながら、ダイナミックに成長するアジアの中の日本経済を明確に位置づけることでした。
 このたびの改定では、さらにその考えを補強するために、資源価格の高騰など、策定当時に想定していなかった大きな環境変化を踏まえ、新たな成長への道筋を示しました。私は、このような認識は的確であると思いますが、何よりも重要なことは、国の方針も踏まえて、我が国経済の牽引役である東京が国際競争力をより一層高め、東京がリーダーとなってこの閉塞感を打破していく方策を立てることであると考えます。
 そこで、今後の東京の経済をどうしていくのか、その展望と戦略について知事の見解を伺います。

答弁1
知事
 今後の東京の経済の展望と戦略についてでありますが、我が国は、景気後退とインフレの危機にさらされている中で、国家財政も破綻に瀕した状態でありまして、まさに経済も国政も閉塞状況にあります。
 首都東京は、我が国の頭脳部であり、心臓部でもありまして、こうした我が国の閉塞状況を打破して、これからも日本経済を牽引していかなくてはなりません。
 東京には、他の追随を許さないすぐれた技術を持つ中小企業や優秀な人材の集積、及びものづくり産業を含め、多様な産業が存在するという強みがあります。世界に類を見ないこうした強みを最大限に生かして、健康や環境といった成長産業分野の育成や企業の技術革新の促進などにより、東京の産業力を強化し、新たな経済成長の道を切り開いていきたいと思っております。
 おっしゃるように、戦略の展開のためには、それに伴うさまざまな戦術の展開も必要でありまして、その一つが、やはり戦略展開のための具体的な条件整備だと思います。
 例えば、大してスペースもとらない、しかも集約された、高度技術をもって情報を行き交いさせる金融や為替の取引市場というものを、何で日本が整備できずに近隣のアジアの都市に奪われつつあるのか、あるいは、重要な兵たんの、運輸の、ロジスティックのアクセスであります港を、この東京湾に、東京、川崎、横浜と三つそろえていながら、この合理化が今日までおくれて、東京で入った船がまた川崎で入港料を払うというばかなことを国は放置してきましたが、今度、三市によって合意が得られたので、合理化しました。
 あるいはまた、今日のこの世界が狭小になった時代に、ビッグビジネスを構えるこの日本に、外国の大企業が、途中、会議を兼ねながら飛行機でやってくる、そのプライベートジェットの運航が、飛行場が不整備なために非常に、できないということをいろいろクレームされておりましたけれども、こういったものも、横田のような使われていない外国の、いや、外国に占領されている飛行場を開放することで、キャパシティーをあけて、日本、東京でのビジネストークのチャンスをつくるということ、そういった具体的な条件整備をしませんと、私は、幾ら抽象的な戦略展開を唱えても、これは成就しないと思います。こういったものも具体的に心がけていきたいと思っております。


質問2
 私は、今後、東京の経済を活性化させていく上で、一つの大きなかぎは、土地の有効利用を促進することだと考えます。経済対策、景気対策というと、どうしても予算を伴うものを考えがちですが、土地利用の法的規制緩和は、財政負担を伴わずにできる有力な景気対策の一つと考えます。
 あるエコノミストは、日本経済の、中でもサービス産業の高コスト体質は土地利用の稚拙さにあると指摘していますが、平成十八年時点での二十三区内建築物の平均階層数が二・五階である事実を目の当たりにすれば、その指摘は極めて的を得たものといわざるを得ません。ましてや、経済のグローバル化が著しく進展する中、世界の大都市と比較して東京の競争力や優位性を高めるには、土地の有効利用は早急に検討されるべき政策の一つです。
 都は、景気対策、経済活性化、産業の高コスト体質の改善、国際競争力強化などの観点から、国へ働きかける法令改正も含めて、土地のさらなる有効活用による産業活性化の可能性を追求すべきと考えますが、所見を伺います。

答弁2
産業労働局長
 土地の有効活用による産業活性化についてのご質問にお答えいたします。
 東京は、高度に発達した都市機能、巨大かつ高感度な消費市場の存在、また優秀な人材の集積など、さまざまなポテンシャルを有しております。これらのポテンシャルを開花させ、東京の特性に応じた産業集積が発展するよう、企業立地の支援等を行うとともに、東京のすぐれたビジネス環境を世界に発信し、海外企業の進出、定着を促進してまいりました。
 ご指摘のとおり、土地は産業活動を支える礎であり、高コスト体質を是正し、これまで以上に国際競争力を向上させるためには、限られた資源である土地のさらなる有効活用が極めて重要であると認識しております。
 今後とも、関係各局と連携しながら、土地の有効活用を含め、産業活性化策について検討してまいります。

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障害者自立支援法の抜本的見直し

質問1
 次に、障害者自立支援法について伺います。
 現在、施行後三年を目途とした見直しの時期に差しかかっている同法は、措置制度からの広範かつ抜本的な改革であり、準備期間も短かったため、多方面からさまざまな意見が出されてきました。法の理念と障害福祉サービスを利用者本位の仕組みに改革していくためには、制度を安定的に運用することが不可欠です。
 そこで、都議会自民党は、法の理念を尊重しながら、直すべきは直していくという姿勢で、これまで三度にわたり、利用者負担の軽減や、サービスを提供する事業者の安定的経営環境の構築、日割り制の導入による激変緩和と報酬単価の見直し等について提言し、それを受けて、都も国へ積極的な働きかけを行ってきました。
 その結果、平成十九年度の特別対策、二十年度の緊急措置として、国費計一千二百億円の財政出動に結実させ、特別対策と緊急措置によって、利用者負担は十分の一程度に大幅に軽減されるとともに、事業者の経営安定化のためのさまざまな対策も講じられてきました。しかし、事業体系や障害者区分など、見直すべき点はいまだに多く、国においては、与党PTの報告書を受け、見直しへの検討が始まったと聞いています。
 そこで、同法の抜本的見直しに向け、都ならではの提案を行っていくべきと考えますが、見解を伺います。

答弁1
福祉保健局長
 障害者自立支援法の見直しについてでありますが、これまでに都は、利用者負担の軽減や事業者経営基盤の強化等を国に強く求め、特別対策、緊急措置など、法の運用上の改善につなげてまいりました。
 現在、都は、これらの対策の効果も含めて、使いやすいサービスや適切な報酬体系等、さまざまな観点から実態の把握に努めております。
 一方、国においては、来年度に予定されている法の見直しに向け、社会保障審議会障害者部会において検討を行い、年末にも結論を得ていくと聞いております。
 今後、国の動きを踏まえながら、適切な見直しとなるよう、国に対し必要な提案を行ってまいります。


質問2
 その際、ぜひ国に対して強くアピールしていただきたいものの一つが、通勤寮の問題であります。昭和四十六年十二月、知的障害者の円滑な社会復帰を図ることを目的として通勤寮制度が誕生し、以来、都内では六カ所の施設が運営されています。
 通勤寮の特徴は、知的障害を持つ利用者自身の努力によって自立への道筋を模索することにあります。入所者は、最長三年の入所期間中に、スタッフによる福祉的な支援を受けながら、自身が働き所得を得て、所得税はもちろん、生活費や利用料を支払い、貯金もし、日々、退所後の自立に向けた努力をしています。
 通常の福祉政策が行政の負担を回収することなく終わるのに対して、通勤寮は、行政の負担が税収として返ってくるところに最大の特徴があり、税を納め、社会的義務を履行しているという入所者にとっての自信と誇りこそ、実は自立に向けた大きな精神的支柱になっていると考えられます。
 そこで、現在までの通勤寮の成果と実績に対して、都はどのような評価をしているのか、伺います。

答弁2
福祉保健局長
 通勤寮の成果と実績についてでありますが、通勤寮は、就労している中軽度の知的障害者に対し、社会性を高める生活訓練などの生活支援や、職場訪問などによるきめ細かな就労継続のための支援を提供しております。
 現在、都内に六寮あり、約百八十名が利用しておりますが、本年一月一日現在の状況を見ますと、離職中の方はわずかで、引き続き就労を継続している方は九五%となっております。
 こうした実績から、通勤寮は、障害者がみずから働き、自立した生活を継続していくために大きな役割を果たしていると考えております。


質問3
 ところで、障害者自立支援法では、身体、知的、精神のすべての障害者に対する行政サービスは、自立支援給付と地域生活支援事業に分かれます。現在の通勤寮は、残念なことに、制度としてどちらのカテゴリーにも該当していませんので、法施行後五年の経過措置期間が終わる平成二十三年度末までに、新たな事業体系への移行を余儀なくされます。
 その場合、グループホームや福祉ホーム、あるいは自立訓練宿泊型が移行先に想定されているようですが、今後、通勤寮の法的位置づけはどのようになるのか、伺います。

答弁3
福祉保健局長
 通勤寮の位置づけについてでありますが、国は、障害者自立支援法における通勤寮の移行先としまして、宿泊型自立訓練を想定しております。この宿泊型自立訓練は、夜間の居住の場を提供し、生活訓練を行うものでありますが、その利用期間は原則一年であり、現在の通勤寮の三年に比べて短いことに加えまして、職員配置や運営費の面でも基準が低く設定されております。
 また、自立支援法に位置づけられているグループホームや福祉ホームは、居住の場であり、就労継続を支援する機能がございません。
 このように、自立支援法では、現在の通勤寮が担っている機能に相当するサービス類型は位置づけられていない状況にございます。


質問4
 また、通勤寮は、誕生以来、公設民営で運営されており、現在では指定管理制度になっています。現在の指定管理期間は平成二十二年度までですが、法の経過措置期間を考えると、その先の運営が心配です。利用者の平均利用期間が二年六カ月と聞いていますので、これから利用される方は、この間、現在の通勤寮の支援を引き続き受けられるのでしょうか。
 経過措置期間についての都の考え方をお答えください。

答弁4
福祉保健局長
 経過措置期間中における都の対応についてであります。
 障害者自立支援法においては、新たな体系に移行するまでの期間は、旧知的障害者福祉法の施設としての支援を継続することとされており、この経過措置期間は平成二十三年度末までとなっております。
 これまでも、通勤寮は、就労しながら自立を目指す知的障害者にとって大きな役割を果たしており、経過措置期間中における通勤寮の機能は引き続き確保してまいります。


質問5
 経過措置期間後の通勤寮の位置づけがどのような制度になっても、私は、大きな実績を上げてきた通勤寮の機能を発展させることはもちろん、現状維持すらできないと考えます。
 そこで、都は、今こそ全国に先駆けて通勤寮という制度を守る決意を示し、最低限、現状を維持、継続できる仕組みを構築すべきと考えます。通勤寮の機能に対する都の認識を伺います。

答弁5
福祉保健局長
 通勤寮の機能に対する認識であります。
 都の通勤寮は、主に、特別支援学校を卒業または児童養護施設を退所した比較的年齢の若い中軽度の知的障害者が利用しており、就労しての自立を目指し、入所期間中に就労継続のための支援や金銭管理などの生活支援を行っております。
 また、退寮時には、アパートやグループホームを確保するとともに、退寮後もアフターケアを行うなど、一貫した支援を実施しております。
 こうした機能は、若年層の知的障害者に対する就労支援のかなめとして重要と考えております。


質問6
 あわせて、改めて国に対して通勤寮の必要性を訴え、法的に明確な位置づけをするよう働きかけるべきと考えますが、見解を伺います。

答弁6
福祉保健局長
 法的な位置づけに関する国への働きかけについてであります。
 通勤寮で行っている生活支援や就労継続のための支援は、障害者の就労を拡大していく上で、引き続き重要な役割を担っていくものと考えます。
 そのため、障害者が就労し、自立生活を継続するための通勤寮の機能の必要性について、国に対し強く主張してまいりました。
 今後もその機能を維持できるよう、障害者自立支援法に明確に位置づけることについて、さまざまな機会を活用し、国へ働きかけてまいります。

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十条まちづくりの諸課題

質問1
 次に、十条まちづくりの諸課題について伺います。
 北区の主要拠点である十条地区は、典型的な木造住宅密集地域で、災害時の危険性が高い上、埼京線のボトルネック踏切による慢性的な交通渋滞、鉄道による地域分断等、防災面やまちの機能面から、新たなまちづくりの必要性が極めて高い地域であります。
 北区では、こうした十条地区の課題を解決し、当地区でのまちづくりを推進するため、平成十七年に、行政と住民が一体となった十条地区まちづくり協議会を発足させ、当地区のまちづくりの基本方針となる十条地区まちづくり基本構想を策定しました。
 その後、約三年が経過し、都による補助八三号線沿道一体整備事業の事業化準備や、木密事業のエリア拡大、十条駅西口再開発準備組合の設立など、新たなまちづくりが今まさに動き出しました。
 そこでまず、十条地区の今後のまちづくりについて、都はどのような認識を持って取り組んでいるのか、お伺いいたします。

答弁1
都市整備局長
 十条地区のまちづくりについてでございますが、この地区は、老朽木造住宅が密集し、狭隘な道路が多いなどの課題を抱えておりまして、都市基盤の整備や建物の不燃化などを促進することにより、防災性の高いまちづくりを進める必要があると考えております。
 このため、補助第八三号線の沿道一体整備事業などによる木密地域の解消や、道路と鉄道の立体化を視野に入れたまちづくりなどを、地元区とも連携して一体的に行うことが重要でございます。
 都はこれまでも、都区連絡会を設置するなど、地元区とともに、事業に対する住民の合意形成に努めてきており、今後とも、当地区の防災性の早期向上に向けて積極的に取り組んでまいります。


質問2
 十条地区のまちづくりを進めていく上で、防災性の向上は喫緊の課題であり、まちづくり全体に通じる根幹的なテーマであります。
 中でも、地震や火災に強いまちを形成していく上で大きな契機となるのが、補助八三号線沿道一体整備事業です。昨年度から、新規地区として都の重点事業に位置づけられ、早速、地元説明会が開催されるなど、事業化に向けた準備が着々と進められていることで、地域住民も高い関心を寄せています。
 そこで、八三号線沿道一体整備事業の取り組みと今後の事業化の見通しを伺います。

答弁2
都市整備局長
 補助第八三号線の沿道一体整備事業についてでございますが、この路線は、当地区を南北に貫く避難路ともなる地域の幹線道路でございまして、道路整備と一体的に沿道まちづくりを進めることにより、地域の防災性を向上させる重要な役割を担っております。
 都は、昨年策定した「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八において、本路線の事業化を位置づけ、現況測量や住民の意向調査などを行ってまいりました。
 現在、用地測量や沿道まちづくりに向けた合意形成を進めておりまして、来年度には、準備が整ったところから事業化を図ってまいります。


質問3
 最後に、JR埼京線十条駅付近鉄道立体化について伺います。
 埼京線十条駅付近の踏切の中でも、とりわけ駅直近の十条道踏切は、ピーク時の遮断時間が四十分以上のいわゆるあかずの踏切であり、慢性的な交通渋滞を引き起こすと同時に、踏切による分断がまちの一体感を損ねています。
 十条地区まちづくり基本構想で掲げる十条駅周辺エリアをにぎわいの拠点として再生するには、私は、埼京線立体化の実現が不可欠であると考えます。北区でも、鉄道立体化を中心とする周辺整備の本格的な着手に備え、今年度から基金を創設し、初年度十億円の積み立てを行いました。
 こうした中、去る八月末、十条地区まちづくり全体協議会が、JR埼京線十条駅付近鉄道立体化促進に関する要望書を都に提出いたしました。一方、都は、さきの都議会第二回定例会で、踏切対策基本方針の鉄道立体化検討対象である二十区間のうち、JR埼京線十条駅付近を含む七区間を事業候補区間と位置づけたことを答弁しました。私は、この機会をとらえ、埼京線立体化をぜひ早期に実現してもらいたいと熱望しています。
 そこで、JR埼京線十条駅付近立体化に対する都の取り組みについて見解を伺います。

答弁3
建設局長
 JR十条駅付近の鉄道立体化についてのご質問にお答えいたします。
 連続立体交差事業は、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化にも資する極めて重要な事業であります。
 十条駅付近については、埼京線と交差する補助第八五号線が第三次事業化計画の優先整備路線であることや、再開発準備組合の設立など、まちづくりへの取り組みの熟度が高いことから、連続立体交差事業の新規着工準備採択に向けて、七つの事業候補区間の一つとして位置づけました。
 今後、事業範囲や構造形式など、事業化の課題についての調査を早期に実施するため、関係機関であるJR東日本や北区と調整してまいります。

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