東野秀平(公明党)
質問1
初めに、財政運営に関連して質問します。
平成十年度決算で一千億円を超える赤字を計上するなど、危機に瀕していた都財政は財政再建を達成し、ようやく十年後の東京を見据えた施策が展開され始めました。一方で、昨今の社会経済環境は、景気の減速が鮮明になり、都財政が再び厳しい局面に陥ることが懸念されるとともに、生活必需品の値上がりが生活費を圧迫するなど、都民生活にも悪影響が及んでいます。
このような中にあって、都財政には、財政再建の成果を積極的に活用して、将来に目を向けた施策を戦略的に展開することとあわせ、都民生活を守るために喫緊の課題に的確にこたえていくことが重要であります。さらには、過去の経験を教訓として、今後予想される困難な局面への適切な備えを行うという、一見相反し、複合する課題に同時に対応していくことが求められています。
私は、こうした課題を解決するには、限られた財源で実施する事業が、むだなく、都民生活のために最大限の効果を発揮できるよう、施策の実効性を高めていくことが重要なかぎであると考えますが、所見を伺います。
答弁1
財務局長
実効性の高い施策の構築についてでございますが、財政再建を達成した現在、都財政には、将来の東京を見据えた施策を積極的に推進するとともに、都民生活が直面する課題にしっかりと対応していくことが従来にも増して求められております。
これを財政面から裏打ちする上では、財源の確保はもとよりでございますが、予算の編成や執行の過程を通じて、事業目標の達成度や費用対効果をつぶさに分析し、事業の実効性を一層高めていくことが重要となります。
今後の財政運営に当たりましては、お話のように厳しい局面も想定されるわけでございますが、そうした財政環境の変化のもとにあっても、必要な都民サービスの水準を確保し、都政が果たすべき役割を着実に担っていけますよう、お話のございました事務事業評価などを活用いたしまして、財源を最大限有効に生かせるよう、施策を継続的に磨き上げていく取り組みをより一層強化してまいります。
質問2
また、備えという点では、これまでの厳しい財政再建の取り組みにおいては、巨額の財源不足の解消に主眼が置かれていました。今後は、質に重点を置いた改革に軸足を移し、生活者であり、サービスを受ける都民の視点から日常業務を検証し、改善していく不断の取り組みが必要であります。
我が党が主張してきた新たな公会計制度や事務事業評価などは、これら質に重点を置いた改革を行うために大変に有効なツールであります。
こうしたツールを活用した成果として、債権管理条例が本年第一回定例会で制定されました。債権管理条例が施行されれば、貸付金等のうち、的確に回収が進むものや、放棄せざるを得ないものの状況が正確にわかります。一例として、十八年度決算で初めて明らかになった百八十九億円の不納欠損引当金など、いわゆる焦げつきの金額を含めた都の資産の状況を、都民の前により明確に示していくことも可能となるはずであります。
債権管理の一層の適正化に向けては、庁内が一丸となって、債権の発生から回収までの取り組みを強化するとともに、やむを得ず債権を放棄する場合であっても、その透明性を確保していくため、議会への報告が必要であると考えますが、今後の債権管理の取り組みについて見解を伺います。
答弁2
財務局長
条例制定に伴う債権管理の取り組みの強化についてでございますが、現在、七月の条例施行に合わせまして、各局に債権管理者を置くとともに、副知事をトップとした局横断的な会議組織を設置し、庁内の連携や情報の共有化を図るなど、全庁的な債権管理の体制強化に向けて準備を進めております。
こうした体制のもと、今後、従来にも増して徴収努力を行っていくわけでございますが、最大限の努力を尽くしてもなお回収不能となった債権につきましては、条例に基づき放棄の手続を行い、適切に欠損処理を行うことといたします。
また、債権放棄の内容につきましては、放棄を行った年度の決算の提出とあわせ、第三回定例会において議会への報告を行い、行政としての説明責任を果たしてまいります。
今後とも、債権管理条例に基づきまして、債権管理の一層の適正化に全庁を挙げて取り組んでまいります。
質問1
次に、周産期医療について伺います。
都内の分娩取扱医療機関は、平成二年九月の三百九十四施設から、平成十七年九月には百九十二施設へと半分以下に激減しています。さらに、分娩機能を取りやめたり、産科の入院医療を休止する病院が出ています。こうした現状を打開するための具体策について、三点お尋ねいたします。
出産にかかわるさまざまな医療機関等は、適切に役割分担し、妊娠から出産、新生児への対応などを地域全体で支えていくという体制が大変に重要であります。
都のモデル事業として、港区にある愛育病院においては、通常の妊婦健診等は地域の産科医院などが行い、急変時の対応等の医療提供は病院が行うという連携がとられています。これにより、妊娠、出産の安全を確保しながら双方の負担を減らすことができたと聞いております。
こうした取り組みを都内全域に拡大していくべきと考えますが、都の見解を伺います。
答弁1
福祉保健局長
周産期医療における連携についてであります。
お話の都のモデル事業を通じて、地域の診療所と、比較的リスクの高い分娩を扱う病院とが機能に応じた役割分担と連携を進めることは、出産の安全性の確保や、医療機関の負担軽減などの観点から有効であるというふうに認められたところでございまして、このため、都におきましては、こうした医療連携を進めるためのツールとして、本年三月に連携ガイドラインを作成いたしました。
今後、都内各地域で、この連携ガイドラインを基本に、周産期母子医療センター、病院、診療所、助産所等によるネットワークグループを立ち上げまして、地域の医療施設等が協力して安全・安心な周産期医療を提供する体制を構築してまいります。
質問2
次に、安心・安全のお産には、産科医、新生児科医の存在が欠かせません。しかし、過酷な労働環境や訴訟リスクの増加などが医師不足に拍車をかけ、解決に向けた即効薬は見出せません。
こうした中で、即効性の高い取り組みとして期待されるのが女性医師への支援です。都立病院や公社病院では、本年七月より、子育て中の女性医師や看護師を対象とした、当直免除や短時間勤務の導入などが始まります。
また、大阪の厚生年金病院では、院長の強力なリーダーシップのもと、休暇制度の充実や短時間勤務の導入を積極的に推進し、女性医師や看護師が働きやすい病院ということで全国的に有名になっています。
こうした事例などを踏まえ、都としても、安心・安全のお産の場を確保していくためにも、女性医師の定着や再就業のための施策を一層充実させ、女性が働きやすい環境、職場をつくり、後押ししていくことによって医師の確保を図るべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
福祉保健局長
女性医師が働きやすい環境づくりについてであります。
女性医師が働き続け、また、離職しても容易に復職できることは、医師確保対策においても重要なことと考えております。
都においては、今年度から、医師勤務環境改善事業として、短時間勤務の導入や当直体制の見直しなどの勤務環境の改善、離職中の医師一人一人のキャリアや状況に応じた研修の実施など、女性医師確保のための医療機関の取り組みを支援してまいります。
また、こうした医療機関の主体的な取り組みを進めていくためには、管理者の理解が不可欠なことから、秋には管理者に対する講習会を開催いたします。
質問3
一方、産科における医師不足に対応していくためには、助産師に対する期待が日ごとに高まっています。院内助産所は、緊急時の対応ができる医療機関において助産師が分娩を扱うもので、妊婦にとって安心してお産ができるというメリットがあります。また、専門職として助産師の活躍の場が広がり、従来よりも多くの妊産婦に対応できるなど、医師不足を補える効果も期待できます。
実際、昨年十月、我が党の提案で、公社荏原病院にこの院内助産所が開設しました。これまで既に五件の分娩があり、利用した妊婦さんから、同じ女性の目線で細かい相談ができたとか、ふだん、なかなか聞けないことが安心して聞けたなどの声が寄せられています。
このように、院内助産所の活用など助産師の活躍の場を広げていくことは非常に大切であると考えますが、都の見解を伺います。
答弁3
福祉保健局長
院内助産所の活用についてであります。
緊急時対応が可能な医療機関で行う院内助産は、医師の業務軽減に資するほか、助産師という専門職種が妊産婦にきめ細かくサービスを提供できるという面で重要な役割を担っていると考えております。
このため、都は、今年度から院内助産所の施設整備補助を行うなどの支援を行ってまいります。
なお、助産師を含めた医療人材の活躍の場の拡大について、国に対して提案要求をしてまいります。
質問1
次に、視覚と聴覚の重複した障害のある盲ろう者について何点か伺います。
およそ十五年前、盲ろう者の福祉向上に取り組まれていた、東京盲ろう者友の会の活動の草分け的存在であった福島智さんから初めて連絡をいただき、その苦労に満ちたお話を通訳者を介して伺いました。
視覚と聴覚の重複障害といえば、ヘレン・ケラーのことが思い浮かびます。サリバン女史というかけがえのない理解者、通訳介助者を得て、生涯にわたり、世界じゅうの人々に大きな感動を与える活動を展開しました。このことは、知事もよくご存じと思います。
コミュニケーション手段が著しく限られる重複障害の方々。光もなく、音もない海の底に生きるような存在であると自身を表現される彼らに対する知事の思いをまず伺います。
答弁1
知事
視覚と聴覚の重複した障害者についてでありますが、我々は日常、視覚と聴覚を駆使しながら他者とコミュニケートしているわけであります。その両方を欠く、いわば二重、三重苦を負うたヘレン・ケラー女史が世界の人々に大きな感動を与えたことは、人間の可能性の奥深さを物語るものであると思います。
私も子どものころ、戦後間もなくでしたけれども、ニュース映画で来日したヘレン・ケラーさんの映像を見て、非常にショックを受けたのを今でも覚えております。
こうした障害のある方々に、一人一人が我が身になぞらえて思いを至らせ、支援の手を差し伸べていくことが大切であると思います。
都としても、コミュニケーションの確保を支援して、これらの方々の社会参加を一層促進していきたいと思っております。
質問2
十五年前には、盲ろう者の存在そのものが社会によく認知されておらず、まして、ボランティアの通訳介助者による指点字、指文字と呼ばれるコミュニケーション手段だけで、辛うじて意思疎通の道が保たれている実態もほとんど知られていませんでした。
都議会公明党は、この問題の重要性と支援の必要性を強く意識し、いち早く平成六年及び平成七年、都議会本会議の質問において強く支援を求め、平成八年度より、全国で初めて、盲ろう重複障害者への通訳介助者の派遣、養成補助事業が開始されました。
その後、平成十三年度に補助事業から委託事業に切りかえられる等の見直しが行われました。見直しの目的と内容、さらに、派遣や養成実績の推移を明示していただきたいと思います。
答弁2
福祉保健局長
盲ろう者通訳介助者の派遣、養成事業の実績についてでありますが、この事業は、平成八年度に、実施団体への補助事業として開始をしたものであります。
その後、利用者の増加に対して適切に対応するため、平成十三年度に、通訳介助者の派遣について、その規模を拡大し、都からの委託事業とするとともに、養成につきましては、事業を安定的に継続する上で必要な通訳介助者が確保されたことから、団体の自主事業といたしました。
事業の実績を平成八年度と平成十八年度で比較いたしますと、利用登録者数は三十人から七十四人へ、通訳介助者の登録数は百六十四人から三百九十人へ、延べ派遣時間数は約千八百時間から約二万三千七百時間へと着実に増加をしております。
質問3
さて、この事業の開始から十年余りが経過し、この間、医療制度などの大幅な改革が行われ、また、交通機関や消費生活など、社会生活環境の変化も目覚ましいものがあります。今日のこうした状況を勘案し、派遣団体の自主事業とされてきた通訳介助者の養成を都が支援するよう我が党から求めたところ、早速、先ごろ実現の運びとなりました。
そこで、今回、本年度予算に上乗せする形で養成事業を支援することに至った理由、経緯を明らかにしていただきたいと思います。
答弁3
福祉保健局長
通訳介助者養成事業への支援についてであります。
これまで、通訳介助者の派遣時間数を拡大し、一定の成果が上がってまいりましたが、お話のように、近年、社会の諸制度や生活環境に大きな変化が生じてまいりました。視覚障害と聴覚障害が重複するために、コミュニケーション手段が特に限られる盲ろう者にとっては、これらの社会変化を正しく理解し、的確にこたえられる通訳介助者による支援の必要性が高まってきております。
このため、高い資質を持った通訳介助者の養成が急務と判断し、改めて事業への支援をすることといたしました。
質問4
さらに、都の養成事業において重要なことは、通訳介助者が盲ろう者のよりよき理解者となることであり、また養成講習においては、通訳介助者の資質の向上が着実に達成されなくてはなりません。所見を伺います。
答弁4
福祉保健局長
通訳介助者の養成講習についてでありますが、養成に当たりましては、盲ろう者の困難な日常生活について十分理解することが重要でございます。その上で、通訳介助者の資質の向上を図るためには、高度な通訳技術に加えて、障害者自立支援法によるサービスの利用方法や利用者負担などについて正しい知識を習得すること、さらに、医療保険、年金などの社会保障制度や消費生活に関する知識なども必要となってまいります。
このため、都は、盲ろう者に必要な情報を事業実施団体に提供するなどして、幅広い知識を持った通訳介助者を養成することができるように支援をしてまいります。
コメント
今後とも、通訳介助者の継続的な養成確保に向けた、都の安定的かつ持続的な支援を強く要望しておきます。
質問1
次に、チャレンジ支援貸付事業について質問します。
都議会公明党は、ことし三月の予算特別委員会において、都が平成二十年度からの三カ年で約三百億円を投じて実施する低所得者生活安定化プログラムについて、その重要性を指摘し、充実と継続を求めました。都はこれにこたえ、利用者の心理に配慮し、名称を生活安定化総合対策事業に改めるとともに、低所得世帯の子どもたちの塾代等の貸し付けを内容とするチャレンジ支援貸付事業の実施に向け、窓口となる区市町村との協議を進めていると仄聞しています。
貧困から貧困への負のスパイラルを断ち切るためには、子どもたちが親の所得に左右されることなく、将来自立した生活を営めるよう、意欲や能力に応じて必要な支援と機会が提供されることが重要です。
現状からの脱却を目指して、額に汗して働く人々の未来に希望の光をともす意味でも、都は早急にチャレンジ支援貸付事業の内容を明らかにすべきです。都の説明を求めます。
答弁1
福祉保健局長
チャレンジ支援貸付事業についてであります。
この事業は、将来の自立に向け、意欲的に取り組む子どもたちに、文字どおりチャレンジする機会を与え、支援することを目的としてございます。具体的な内容といたしましては、高校三年生、中学三年生がいる低所得世帯を対象に、子どもたちの学習塾や通信講座などの受講料、また大学受験料を無利子で貸し付けるものであります。
事業の実施に当たりましては、東京都社会福祉協議会が区市町村の相談窓口を通じて申請を受け付け、貸し付けを行うこととしており、現在、区市町村等と緊密に連携しながら、早期の実施に向けた準備を進めております。
質問2
また、貸し付けである以上は、返済が伴うことは当然であります。しかし、低所得状態にある家庭の子どもたちへの支援であることを考慮すると、例えば、意欲を持って取り組んだ姿勢が認められた場合、返済免除の条件が緩和されれば、大いに励みになると考えます。都の見解を求め、質問を終わります。
答弁2
福祉保健局長
ただいまの貸付金の返済についてでありますが、ただいま申し上げた本事業の趣旨を踏まえ、お話のように、本人が高校や大学等に入学するなど、一定の要件を満たす場合には返済を免除することについて検討してまいります。