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市場移転問題どう決断するのか
在宅医療の基盤整備が必要

山口文江
山口文江(ネット)

安心・安全対策

質問1
 中国四川省の大地震に続いて、我が国でも岩手・宮城内陸地震が発生しました。多大な被害の模様を目の当たりにし、被災地の皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、震災はいつ、どこで起きても不思議ではないことを痛感しました。改めてさまざまな角度から震災対策を点検することを要望します。
 初めに、安心・安全対策について伺います。
 築地市場移転問題は、一九六二年に、市場の取扱量と車両の増加等に伴い狭隘となったため、周辺の用地買収や移転等の検討が始まったことに端を発しています。八六年には現在地での再整備を決定し、三百九十億円を投入して工事に着手したものの、営業を行いながらの工事は困難をきわめ、現在地での再整備は断念されました。既に議論開始から四十六年もの歳月がかかっています。
 食の安全に取り組んできた生活者ネットワークは、市場の衛生管理だけではなく、環境改善を求める上でも築地では限界があり、移転はやむなしという立場できましたが、豊洲の深刻な汚染状況が明らかになった今、再考せざるを得ません。
 専門家会議では、費用のことを考えなければ、徹底的な安全対策は可能としています。しかし、土壌対策費は一千億円を超えるともいわれており、費用対効果から、改良工事の現実性について、多くの疑問が残ります。
 現段階で多額の税金を投入して豊洲への移転を強行するのか、他の移転先を提示するのか、築地での再整備を行うのか、三つの選択肢が考えられますが、知事はどのようなプロセスを経てどう決断するのか、伺います。

答弁1
知事
 築地市場の移転問題についてでありますが、豊洲新市場予定地において約四千百カ所の詳細調査の結果、一カ所ではありますが、基準値の四万三千倍というベンゼンが検出されました。
 そうした高濃度の汚染の範囲は極めて限られておりまして、あたかも敷地全体に及んでいるかのような風評が広まることがあってはならないと思います。事実を正確に把握し、冷静に対処していくことが必要であると思います。
 現在の築地市場は、老朽化、狭隘化が限界に来ているだけではなく、衛生面での課題やアスベストの問題もありまして、一刻も早い対応が必要であります。これも都民の健康のためであります。
 豊洲地区の土壌汚染については、専門家会議の提言が七月に予定されておりまして、都としては、各分野の方々からの提言を幅広く受けとめまして、既存の枠にとらわれず、汚染除去のための工法、新技術やそういったものの可能性を探りながら、早期に具体的な計画を取りまとめていくつもりでございます。


質問2
 次に、消費者行政についてです。
 政府の消費者行政推進会議は、六月十三日、消費者庁の創設を柱とする報告書を首相に提出しました。我が国の行政モデルを消費者重視に転換することを期待しています。
 消費者庁が消費者行政の司令塔として各省庁の取り組みを強力に推進するにしても、現場である都道府県や区市町村における適切な取り組みなくして消費者トラブルの迅速な解決は不可能です。新組織の創設とあわせて、地方分権を基本としつつ、地方の消費者行政を強化する必要があります。
 そこで、都としても、こうした国の動きを視野に入れて、新しい時代の要請によりよくこたえるためには、計画的かつ総合的に消費者行政を進めていく必要があります。
 このたび、都は十年ぶりに消費生活基本計画を改定するということですが、どのような基本的考え方に立って、いつまでに改定を行う予定なのか、伺います。

答弁2
生活文化スポーツ局長
 東京都消費生活基本計画の改定についてですが、十年間の計画期間が終了し、この間、消費者を取り巻く状況が大きく変わってきたことを踏まえ、これらの変化に適切に対応した計画に改めることといたしました。
 現在、東京都消費生活対策審議会において、消費者被害の防止、救済、悪質事業者の取り締まり強化、商品、サービスの安全性の確保などを重要な課題とし、安全で安心できる都民の消費生活を実現するという基本的な考えに立って審議が行われております。
 今後、七月末には審議会から答申が出される見込みであり、その後、速やかに計画を改定する予定でございます。

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環境問題

質問1
 次に、環境問題について伺います。
 今議会に提案された環境確保条例は、温室効果ガスの中でもCO2の削減を大きく打ち出したことが特徴といえます。特に原油換算でいうと千五百キロカロリー以上消費する大規模事業者へは削減量を義務づけた上で、削減できなかった分を多く削減した事業所から買い取る排出量取引制度が創設されます。国に先駆けて導入した排出量取引制度は、その対象にオフィスビルをも含め、あくまでも削減計画を補完するものとして計画された点で、世界でも初の試みとして注目されています。
 この制度の導入については事業者からの強い反発があり、昨年末には経団連外十四団体から導入反対の要望が出ていますが、その後、大規模事業者の理解が得られているのでしょうか。多くの事業者の協力を得て、世界の先進モデルをつくり上げてほしいと考えますが、実現に向けての見通しについて伺います。

答弁1
環境局長
 削減義務制度導入に対する事業者の協力についてでございますが、都は、今回の条例提案に至るまで、幅広い事業者等の参加を得たステークホルダー会議の開催を初め、さまざまな形での意見交換を行い、東京商工会議所からは、先月、条例改正への取り組みについて評価する旨の意見書をいただきました。
 今後とも、多くの事業者のご協力を得て、CO2の総量削減に向けた取り組みを進めてまいります。


質問2
 一方、中小企業においては、省エネ対策の効果は認識しても、設備投資への資金に手が回らない現状もあり、東京都の積極的な支援策が求められていると考えます。具体的な支援策について、伺います。

答弁2
環境局長
 中小企業の省エネ対策の支援についてでございますが、省エネ対策はエネルギーコストの削減に寄与するものであり、適切に取り組まれれば、本来、企業にとって、経営上のメリットになるものでございます。
 このため、都は現在、東京都地球温暖化防止活動推進センターとともに、地域の経済団体等に働きかけ、省エネ診断の普及を進めております。
 今後はこうした施策を含め、中小規模事業所のさまざまな省エネ支援策の検討を進めてまいります。


質問3
 さらに、家庭部門のCO2がなかなか削減できない中で、家庭用電気機器等にかかわる温室効果ガスの排出削減という項目を立て、省エネ家電製品の購入促進をうたっています。
 基本的に買いかえるときに省エネ製品への転換をと考えているようですが、より手軽な方法として、新しい商品を売り出すだけでなく、例えば部品の交換で、より省エネ機能が付加される技術開発を業界に求めるべきと考えますが、見解を伺います。

答弁3
環境局長
 家庭製品の部品交換による省エネ向上についてでございますが、エアコン、テレビ等の家電製品においては、外装も含め、組み込まれた設備機器や電子回路などが一体となって設計されており、修理を目的とした同一部品の交換以外は現在のところ実施されておりません。
 部品交換による動作保証や安全性及びコスト面など、課題が多いものと考えられ、その必要性については今後情報収集に努めてまいります。


質問4
 次に、圏央道建設について伺います。
 高尾山国定公園は、一九六七年、明治百年を記念して国定公園に指定された、標高五百九十九メートル、公園面積七百七十ヘクタールの日本一小さな国定公園です。この公園は暖帯林と温帯林が混在し、植物千三百種、昆虫五千種、野鳥百五十種と多種多様な動植物が生息している自然の宝庫といえます。
 昨年、ミシュランの観光ガイドブックで最高の三つ星を得たこともあって、観光客、特に外国人観光客でにぎわっています。
 そこで、この高尾山の貴重な自然を都民としても再認識し、守っていくことが必要です。特に知事は環境に関心がおありで、現場主義ということで、みずからガラパゴスやツバルを視察しておられます。都会に近い貴重な山、高尾山を守るために、ぜひ視察をしていただきたいと思いますが、見解を伺います。

答弁4
知事
 高尾山の視察についてでありますが、行政を預かる者として、現場に赴き、つぶさにこれを見聞きすることは大変重要であり、実際に私もそうしてまいりました。高尾山については既に視察も行っております。今後も、必要に応じ現場を視察することは当然であり、私の判断で適切に対応してまいります。


質問5
 昭和六十三年、国が首都圏中央連絡道路を建設するに当たり、当時、環境アセス法がない中、東京都の条例に基づき環境評価書が作成されました。この評価書を発表するに当たり、当時の鈴木知事は、環境保全のための措置について、可能な限り対策を講じ、万全を期すように努めるべきであるという意見をつけています。
 圏央道工事差しとめ要求への昨年六月の判決は、原告にとっては敗訴になりましたが、御主殿の滝がれについては、八王子城址トンネル工事の影響を認め、北坑口付近でのオオタカや景観の影響については好ましくないという見解を言明しています。
 今後、高尾山のトンネル工事が進んでいきますが、より慎重な進行管理が求められます。特に平成十六年度、石原知事が国土交通省、日本道路公団あてに出した十項目の留意点に関して、都としての対応を伺います。

答弁5
環境局長
 高尾山トンネルについてでございますが、国等が国定公園の特別地域などにおいて工事を施工する場合、都道府県知事に協議することとなっており、その際、本件についても他の案件と同様に、工事に係る環境保全対策についての留意事項を付しております。
 都としては、引き続き高尾山の自然に配慮した工事を行うよう、国等に求めてまいります。

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福祉保健

質問1
 次に、福祉保健に関連して何点か伺います。
 昨年十二月発表された東京都地域ケア体制整備構想の基本方針では、地域ケア体制の整備に当たっては、介護保険による施設サービス・在宅サービスのほか、高齢者向けの住まいと見守りサービス、多様な住まいでの療養生活を支える在宅医療を基本的施策として位置づける必要があると示されています。
 平成二十三年度末で介護型の療養病床が廃止される状況の中で、高齢者が地域において安心して療養生活を送るためには、切れ目のない診療・看護を地域で確保することなど、在宅医療の基盤整備を行う必要があります。
 在宅医療に関して、地域の実情に応じたさまざまな取り組みが進められていると聞いていますが、都はどのような支援を行っているのか、平成十九年度の状況について伺います。

答弁1
福祉保健局長
 在宅医療に関する都の支援状況についてであります。
 都は、区市町村が在宅医療の基盤整備を一層促進できるように、平成十九年度から包括補助事業を活用した支援を開始いたしました。
 取り組みの具体的なものといたしましては、在宅療養の支援や関係機関の連携のあり方などを検討する協議会の設置や、在宅療養者が急変時に緊急入院できる病床の確保、さらには在宅療養に関する相談窓口の開設など、地域の医療資源や住民ニーズを踏まえた体制整備が進められております。


質問2
 在宅医療の中心を担うと期待されている在宅療養支援診療所は、都内で千百カ所以上届け出されていますが、二十四時間三百六十五日在宅医療を支えるためには、かかりつけ医と他の医師との連携や訪問看護ステーションとの連携など、体制整備が求められています。
 また、訪問看護ステーションについても、多様な在宅療養者のニーズに質、量とも的確にこたえることのできる看護技術の向上や人材が不足するため、十分にこたえることができないなどの課題も多く残されています。
 全体的に看護師が不足している中で、看護師確保の課題解決も含め、今後、在宅医療の推進に向けて都はどのように取り組んでいくのか、伺います。

答弁2
福祉保健局長
 今後の在宅医療の推進についてであります。
 在宅医療の提供におきましては、医師、看護師やケアマネジャーなどの関係者が患者の状況や医療ニーズ等の情報を共有するなどの連携が必要であります。
 このため、都は今年度から、二十四時間の連携体制の構築を目指します在宅医療ネットワーク推進事業をモデル実施をし、この中で、都の地域特性を踏まえた在宅医療のあり方について検討してまいります。
 また、看護職員地域確保支援事業におきます復職支援研修において、訪問看護ステーション等での研修を導入し、在宅医療の担い手である看護師の確保に努めてまいります。


質問3
 次に、周産期医療体制についてですが、出産はリスクが伴うものとして、大きな病院への集中化が進んできた結果、地域の開業医や助産所などが減少し、妊娠、出産に関する医療体制全体が危機的な状況を迎えています。こうした中で、都議会でも、助産師を出産の担い手としてもっと活用するようにとの質疑も行われてきました。
 本年三月、東京都周産期医療協議会は、周産期母子医療センター、病院、診療所等を中心にした顔の見える連携を図るために、周産期医療機関連携ガイドラインを策定しました。
 周産期医療を行う機関の一つとして助産所が位置づけられた意味は大きく、診療所や助産所が二次、三次の医療機関と緊密な連携を図り、オープンな関係を築きながら、地域において妊婦健診や出産後のケアなどを行い、地域のお産を担っていくことが重要と考えますが、都の見解を伺います。

答弁3
福祉保健局長
 地域における診療所や助産所の役割についてであります。
 地域の診療所や助産所がみずからの機能と役割を踏まえ、リスクの高い分娩に対応可能な病院と緊密に連携することは、地域のお産を支えていく上で重要であります。
 このため、都におきましては、こうした医療連携を進めるためのツールとして、本年三月に連携ガイドラインを作成をいたしました。
 今後、都内各地域でこの連携ガイドラインを基本に、周産期母子医療センター、病院、診療所、助産所等によるネットワークグループを立ち上げ、地域の医療施設等が相互の信頼関係のもと、協力して周産期医療を提供する体制を構築してまいります。


質問4
 産科を担う医療機関の減少は、一人一人の医師の激務を生み、社会問題になっています。院内の助産師の自立や出産もできる助産所がふえることで、医師の負担を軽減し、出産の選択肢が広がることにつながります。
 助産所の開業支援など、今後検討していくことが必要ですが、まずは病院内の助産師が助産師本来の役割を十二分に発揮できるよう、病院における助産師主導のバースセンター、院内助産所の設置の取り組みを都としても積極的に後押ししていくべきと考えますが、見解を伺います。

答弁4
福祉保健局長
 院内助産所についてであります。緊急時の対応が可能な医療機関で行う院内助産は、医師の業務軽減に資するほか、助産師という専門職種が妊産婦にきめ細かくサービスを提供できるという面で重要な役割を担っていると考えております。
 このため、都は今年度から医師勤務環境改善事業におきまして、院内助産所の施設整備費補助を行うなどの支援を行ってまいります。

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教育行政

質問1
 最後に、教育行政について伺います。
 先月、第二次教育ビジョンが発表されました。経済格差の拡大、固定が子どもたちの教育にまで及んでいます。
 一方、日本の学校教育は、社会に都合のよい人材をつくることをもとに、効率と競争という市場原理による学校運営が進められてきました。子どもたちは、一人一人の違いが尊重されることなく、競争にさらされ、自信を喪失し、未来に希望が持てなくなっています。
 このような青少年をめぐる社会状況を東京都としてはどのようにとらえ、第二次東京都教育ビジョンを策定したのか、伺います。

答弁1
教育長
 青少年をめぐる状況をどのようにとらえ、教育ビジョンを策定したかについてであります。
 子どもたちの現状には、規範意識の低下や他者との人間関係をつくることが不得手であるなどの課題が見られます。
 東京都教育ビジョンの第二次では、施策展開の視点の一つに、子ども・若者の未来を応援するを掲げ、次代を担う子どもたちに自分への自信を深め、進んで社会に貢献し、他者とともによりよく生きようとする自覚や態度、さらにはさまざまな人たちと豊かな人間関係を築いていく力を身につけさせる取り組みが重要であることを示しました。
 具体的な推進計画として、子どもの自尊感情や自己肯定感を高めるための教育の充実などを示し、学校教育において、子どもたちが未来をたくましく切り開いていく力を身につけるよう努めてまいります。


質問2
 都が目指すこれからの教育の柱の一つに、生きる力をはぐくむ教育を推進することが挙げられており、生活者ネットワークは子どもの自立を支援する取り組みを最優先にしていくべきと考えます。そのためには、子どもの教育に直接携わる教員に負うところが極めて大きい学校現場で、教師自身が意欲を持って取り組むことができる職場環境が求められています。
 しかるに、国旗・国歌の強制、職員会議における挙手による決定を禁じるなど、都教委の姿勢は強権的と評されています。いじめ、不登校などの問題、さらにモンスターペアレントへの対応などと、教員の責任は重くなるばかりであり、病気休職者など心身の健康面で不安を持つ教員も増加していると聞きます。
 そこで、教員へのエンパワーメントについて都はどのように考えているのか伺い、質問を終わります。

答弁2
教育長
 教員へのエンパワーメントについてでありますが、国旗・国歌の指導については、学習指導要領に基づき、教員が児童生徒に国旗・国歌の意義を理解させ、尊重する態度を育成することは当然のことであります。
 また、職員会議は、学校教育法施行規則においても任意設置と定められておりまして、議決機関でないため、挙手等の方法を用いる採決を行うことは不適切であります。
 次に、教員の健康面での支援策についてでありますが、都教育委員会は、疾病の早期発見、予防に努めるとともに、心の健康につきましては、学校訪問相談、精神保健講習会、啓発資料の配布など、体系的な対策を実施しております。

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