田中良(民主党)
質問1
まず初めに、新銀行東京、いわゆる石原銀行について伺います。
石原知事が平成十五年の都知事選挙において公約に掲げ、その年六月の所信表明で、負の遺産のない全く新しいタイプの銀行と、胸を張っていたこの石原銀行は、既に都民の税金一千億円のほとんどを失い、負の資産しかない銀行となってしまいました。
知事がこの銀行の救済のために四百億円の追加出資を提案してきたことで、今、都議会は、まさに銀行議会と化しています。
この銀行は石原知事のトップダウンでつくられた銀行です。したがって、失敗の責任について知事みずからの言及がなければ、追加出資の提案は政策論議をする以前の問題で、到底都民の理解を得られるものではありません。
知事は、なぜ施政方針表明でも自身の責任について言及されなかったのか。これまで、知事、あなたは旧経営陣をさんざんにこきおろし、経営難は人為的な問題が原因だと責任を転嫁していますが、そもそも発案当時のビジネスモデルが破綻したことは、皮肉にも今般示された再建案が発足時のそれと全く異質なビジネスモデルであることで、だれが見ても明らかであり、知事の構想そのものに無理があったことの証明ではないでしょうか。
また、金融情勢全般の判断を見誤ったことの知事自身の責任は、決して免れるものではありません。
さらに、経営の悪化に対して迅速に対策を講じてきたのか。加えて、もし仮に追加出資をした後、さらに同じ結果となっても、その責任を経営者に転嫁するのか。
銀行の失敗に対し、先ほどの答弁ではもろもろの責任といわれましたが、そのもろもろの責任とは具体的にどのようなものなのか、知事の責任について、まず伺います。
答弁1
知事
まず、新銀行東京の発案者としての私の責任についてでありますが、経済産業の担い手として懸命な努力を続けている中小企業に円滑な資金供給をなさなければならないという使命感から、この銀行を提案、設立いたしました。
これまで中小企業を支える銀行としての独自の役割を果たしてきましたが、旧経営陣の常識では考えられない経営の結果、計画を上回るデフォルトが発生し、不良債権処理費用が増加したことなどから、厳しい経営状況に陥っております。
こうした結果について、私は発案者として、当然もろもろの責任を感じております。もろもろとは、まさにもろもろでありまして、私が今とるべき最大の責任は、弱い立場にある中小企業を支援し続け、新銀行東京について最悪の事態を招来しないことであると考えております。
質問2
石原知事は、平成十五年の十二月議会において、都議会民主党の質問に対して、税を再び投入することは考えておりませんし、また、その可能性がないものと思っていると答弁しています。私たちも、再出資すべきでないことを改めて討論などで申し上げた上で、新銀行への出資に賛成してきました。
そして、さきの十二月都議会でも、都議会民主党の質問に対して、追加出資は考えておりませんと明確に答弁したのではないでしょうか。その舌の根も乾かぬうちの突然の提案は、知事の都議会における答弁の軽さを改めて認識いたしました。
知事が追加出資をしないと明言した後のわずか二カ月の間に、どのような状況の変化が生じたのか。なぜ、突然、追加出資を提案することになったのか、見解を伺います。
答弁2
知事
追加出資は苦渋の選択でありますが、他の選択肢である新銀行東京の事業清算や預金保険法に基づく破綻処理は、日々必死に努力している中小企業に甚大な影響を与えますし、また、中小企業で働くのも都民であり、新銀行東京の預金者もまた都民であります。こうした事実を複合的に考え、今回の提案にぜひご理解いただきたいと思います。
産業労働局長
新銀行東京に対する追加出資の提案に至る状況の変化についてでありますが、新銀行東京は、新経営陣のもとでデフォルト圧縮を最優先とする経営改善に取り組む一方で、都からの出資を前提としない民間金融機関等との提携による再生等を目指し、さまざまな交渉を進めてきましたが、現段階では調うまでに至っておりません。
このため、本年一月から新たに抜本的なリストラと事業の重点化に向けた検討を開始し、二月に再建計画を取りまとめ、これを実現するための重要な柱として、都に対し資本の増強を要請してまいりました。
都といたしましては、既存融資先を初め多くの関係者への影響を考えたとき、新銀行東京が新たなビジネスモデルを一刻も早く軌道に乗せ、財務体質の強化を図ることが必要であると判断をいたしまして、銀行からの追加出資の要請に応じ、今定例会に補正予算を提案したものでございます。
質問3
知事は、施政方針で、業績を回復させた事業者が九千社に及ぶと、新銀行の果たしてきた役割を強調していますが、累積損失が九百三十六億円ですから、単純計算でいうと、一社の業績を回復させるのに都民の税金一千万円がかかっているという効率の悪さです。このような銀行に新たに四百億円の税金を投入するのであれば、ほかの中小企業対策に充てた方がよっぽど効果的だと思われますし、追加出資が単なる新銀行の延命策にしかすぎないのであれば、まさにそれは盗人に追い銭であります。
知事は追加出資の意義についてどのように考えているのか、見解を伺います。
また、追加出資四百億円の算出根拠は何なのか、伺います。
答弁3
知事
新銀行東京に関する追加出資の意義についてでありますが、新銀行東京はこれまで、既存の金融機関では支援が難しい、赤字や債務超過に陥っている中小企業に対してでも、できる限りの支援を行ってまいりました。こうした企業の中で、新銀行東京の融資が契機となって業績を回復させた企業は九千社にも上ります。
今後、新銀行東京の経営が行き詰まった場合には、その支援を頼りに懸命に努力をしている既存融資先一万三千社を初め、その取引先、従業員、家族などの関係者に重大な影響を及ぼしかねません。
今回、新銀行東京自体の経営改善努力とあわせ、追加出資を実施することで経営安定化が図られ、新銀行設立の趣旨である、高い事業意欲がありながら資金繰りに窮している中小企業への支援を継続していくことが可能となるはずであります。
今日、アメリカのサブプライムローン問題を発端として、世界の金融市場が混乱しております。日本もまたその兆しにあります。我が国の銀行にも巨大な損失が発生しておりまして、景気の先行きには不透明感が広がってきております。中小企業の資金繰りの悪化が懸念されていることを考えますと、銀行を立て直した上で、その設立理念を実現してまいりたいと思っております。
産業労働局長
四百億円の根拠についてでございますが、銀行におきましては、健全性確保のため、銀行の自己資本比率に関する新しい国際合意であります新BIS規制により、事業を展開する上で避けられないリスクに対応する資本を確保することが求められております。
新銀行東京への追加出資四百億円は、この考え方にのっとって算出された結果でございます。
質問4
都議会民主党では、新銀行の融資停滞や経営悪化などを受けて、早くから、民間への売却も含めてそのあり方を早急に検討すべきだと、こう主張してまいりました。また、中間決算の発表を受けた昨年十二月の都議会では、もはや新銀行を買ってくれるところがあるのかも定かでないとした上で、都民に一番負担の少ない形で東京都が新銀行から撤退する方法を早急に検討すべきだと主張してまいりました。
そこで今回の追加出資に際して、私たちが主張していた新銀行の売却あるいは撤退、つまり破綻処理などの検討がなされたのか。検討がなされた場合、いつごろから具体的にどのように取り組み、結果としてどのようにだめだったのか、伺います。
また、再建策が通らなかった場合、金融不安、信用不安が起こるといった不安をあおるかのような意見がありますが、金融不安、信用不安については、どのように考えているのか、見解を伺います。
売却先などが見つからなかったのは、東京都が最大の株主として株主責任を十分に果たしてこなかったからではないでしょうか。
例えば、都議会民主党が、新銀行の経営悪化を受けて、最初に売却などの検討を求めたのは二年も前の平成十八年の三月であります。石原知事は当時の議会で、とにかく七月に本格開業したばかりと述べるにとどまり、さらに半年後の平成十八年の九月議会でも、開業してから丸一年たっていないので、もう少し長い目で見ていきたいと答弁しています。このような石原知事の悠長な姿勢こそが新銀行の傷口を広げ、売却の可能性をも閉ざしてしまったのではないでしょうか。
知事は、新銀行東京の最大の株主としていつごろから危機感を募らせ、具体的にどのような提案をし、株主責任を果たしてきたのか、見解を伺います。
答弁4
産業労働局長
追加出資提案に至った経緯についてでありますが、先ほどご答弁したとおり、新銀行東京は他の金融機関との提携による再生や出資先の確保など、さまざまな交渉を進めてまいりましたが、現段階では調うまでに至っておりません。
その結果、選択肢としては、今回提案をしております追加出資を含めまして、事業清算、また預金保険法に基づく破綻処理の三つに絞られております。
しかしながら、追加出資以外の手法は、中小企業を救うという本来の目的に反して、融資先中小企業の経営に重大な影響を及ぼすのみならず、都民、預金者により多くのコスト負担をお願いすることになります。また、金融不安を起こすおそれがあるなど、多くの関係者に迷惑をかけることともなります。
このような都民への影響の大きさにかんがみまして、今回の選択に至っております。ぜひともご理解をいただきたいと思います。
次に、信用不安についてでありますが、銀行が債務超過になりますと、預金保険法に基づきまして、金融整理管財人のもとで破綻処理が行われます。この場合、一千万円以下の預金の元本、利息は保護されるものの、これを超える部分については、銀行の財務状況に応じてカットされる、いわゆるペイオフが発動されます。
また、破綻処理の過程で銀行の貸付資産が不良債権として整理回収機構に移管される場合には、その貸付先である中小企業の事業継続が困難となるおそれもございます。このように信用不安を招来しかねない破綻処理は、多くの預金者や都民に負担や不安を与えることになります。都としてとり得る選択肢にはなり得ないものと考えております。
次に、株主責任についてでありますが、株主としての新銀行東京に対する経営監視は、銀行法によりまして通常の事業会社との関係とは異なり、会計帳簿や資料の閲覧が制限をされております。
都は、新銀行東京が中小企業支援など、この銀行が担う役割を適切に果たしているかという観点から、事業の進捗状況や決算内容等の報告を受けまして、中小企業支援の一層の充実などにつきまして、株主としての意見表明や申し入れを行うなど、経営の大枠を監視してまいりました。
平成十八年度中間決算時には、今後における経営計画の見直しを要請いたしました。
また、平成十九年三月期決算時に表面化をいたしました深刻な経営悪化に対しましては、早急な計画の見直しや経営陣の交代が必要であると判断をいたしまして、役員の刷新や都職員の派遣を実施いたしまして、経営改善に当たらせたところでございます。
質問5
知事は、二月十五日の定例会見で、半年もつような会社なら構わないから貸せという経営トップの命令があったとか、運営そのものに粉飾があり、役員会の決議にも不思議なのがあったと述べるなど、旧経営陣の失敗をあげつらっています。この発言の根拠は、昨年来、新銀行の内部で行われてきた調査委員会の報告であると思われますが、この調査が新銀行の設立に携わっていた東京都の元幹部のもとで作成されているのであれば、その内容をうのみにすることはできません。少なくとも、旧経営陣に弁明の機会を与えるべきであります。
石原知事がいうように旧経営陣に問題があったのであれば、まずはその報告書を公開することが必要であると考えますが、調査内容の概略も含め、見解を伺います。
答弁5
産業労働局長
調査委員会による調査についてでありますが、新銀行東京の経営がどうしてここまで悪化したか、速やかにその原因が究明されなければならないと思います。
新銀行東京では、これまで新経営陣によりまして内部調査が進められてきております。新銀行東京からデフォルトを容認するかのような業務執行や対応のおくれ、隠ぺい体質など、旧経営陣の非常識な経営実態があったと聞いております。
このような経営実態からすれば、設立当初想定されたリスク管理体制が機能したとは考えられません。新銀行東京における今後の調査の進展を注視し、その結果は発表してまいります。
質問6
また、知事は施政方針の中で、旧経営陣の経営責任が厳しく問われなければならないのはもちろんだと述べていますが、本当に旧経営陣による粉飾や背任があるのであれば、追加出資を提案する以前に旧経営陣を刑事告発するなど、その責任を徹底して追求していくのが筋ではないでしょうか、見解を伺います。
さらに、知事は、定例会見で旧経営陣の任命責任を問われ、経団連のある重鎮から推挽を受けた、信用して引き受けざるを得ないんじゃないかと述べ、経団連の前会長で現トヨタ自動車相談役の奥田碩氏に責任があるかのごとく開き直っていました。
しかし、当の本人は、ある週刊誌の取材に答え、石原知事の発言を否定しています。その後、知事は、何人かの推挽を受けて取締役会で決めたと発言を修正していますが、会社設立以前、取締役会が招集される前に役員として内定していたのではないでしょうか。この発言もまた事実と異なりませんか。
知事は、新銀行の終戦処理が終われば、今の代表執行役である津島さんを差しかえる旨、発言をしていますが、何でもかんでも他人に責任転嫁する姿勢では、次期経営者の見通しも立たないのではないでしょうか。
旧経営陣の任命に関する経緯とその任命責任について、石原知事の見解を伺います。
答弁6
産業労働局長
旧経営陣の責任追及についてでありますが、現在、新銀行東京におきまして、経営不振を招いた原因究明のための調査を継続しているところでございます。
都といたしましては、本調査の結果や新銀行東京の今後の対応を踏まえ、必要な措置を講じてまいります。
知事
旧経営陣の任命責任についてでありますが、新銀行東京の開業時の代表執行役については、経団連の重鎮からの推挽があった人材を新銀行東京の取締役会が正規の手続を踏んで決定したものであります。推挽を信頼して経営のかじ取りを任せた結果、こうした経営状態に立ち至ったことはまことに遺憾であります。
質問7
新銀行東京は、二月二十日、再建計画を発表しましたが、たかだか六ページの再建計画を示され、四百億円を追加出資するというのは、都も新銀行顔負けの審査の甘さです。このような計画で出資を決めれば、民間であれば背任との批判を浴びるはずであります。
また、再建計画の内容も、実行の見込みが疑わしい。美辞麗句が並び、新銀行の設立当初の意義である無担保・無保証融資でさえ、その転換が見込まれているのであります。
今後、新銀行が行う取り組みで、民間の金融機関ではなく、新銀行にしかできないものは果たしてあるのか。石原知事が追加出資を提案するに当たり、この再建計画の一体どこを評価しているのか、見解を伺います。
また、再建計画では、平成二十三年度の黒字化を予定していますが、その実効性については極めて疑問であります。
知事が、私たちに税の再投入はしないと答弁した根拠として、統合リスク管理委員会を中心とする万全なリスク管理体制を整備して、さまざまなリスクを適切にコントロールしていくと述べていましたが、結果は絵にかいたもちでありました。まさにかいたもちの原料表示が偽装であったといわれても反論のしようがないのではありませんか。
さらに、東京都は、昨年六月に策定された新中期経営計画の実効性についても、十分な貸し倒れ引き当てを行ったことや減損会計を適用したことなどで、平成二十一年度の単年度黒字化を目指すと答弁していましたが、今回の再建計画は、それがわずか半年でほごにされてしまったのであります。
仕組みや計画をつくっても、それが全く履行されてこなかったことについて、知事はどう総括し、今後に生かしていくのか、伺います。
答弁7
産業労働局長
再建計画の評価についてでありますが、新銀行東京の再建計画は、これまでの三年間で蓄積をしてきました営業ノウハウや反省点を踏まえ策定されたものでございます。
具体的には、今までの事業実績の中で、着実に利益が見込める事業に重点化をしたこと、また従来の都や金融機関との連携を強化したこと、店舗の集約や人員体制の大幅見直しなど、徹底した執行体制の見直しを行うこと、これらを経営目標として掲げております。
都といたしましては、この再建計画によりまして、中小企業支援の継続という都の施策に沿った取り組みが確実に実施されるものと考えております。
知事
再建計画の実効性についてでありますが、新銀行東京がこれまで策定した計画等は、結果として、いずれも目標どおりに達成できてはおりません。これは旧経営陣の非常識な事業運営などにより達成が困難となったものであります。また、この間、非常に風通しが悪く、株主である都にも、こうした経営の実態に関する情報が入ってきておりませんでした。
新銀行東京では、過去三カ年の反省を踏まえ、後がないとの決意のもとに、みずからの厳しい経営状況を見直し、抜本的なリストラを進めるとともに、確実な収益を見込める事業へ重点化を図り、二十三年度の黒字化を目指すことを内容とした再建計画を策定いたしました。
都として、この計画は十分実現可能性があるものと考えており、都との連携や計画の実行状況を正確に把握するための経営監視の強化など、とり得るすべての手段を講じてまいります。
私は、不退転の決意で、この銀行を必ず再建させるつもりでございます。
質問8
新銀行設立時の付帯決議では、経営全般にわたり適切な監視に努めることが条件として課されていましたが、東京都が本当に適切な監視に努めてきたかは疑問であります。
例えば、情報公開一つとってみても、東京都は新銀行から必要な情報提供を受けていなかったり、情報提供を受けていたとしても、その情報を公開することを拒み、都民の目にさらそうとしてこなかった姿勢は極めて問題があります。出資や追加出資を求めてくるときだけ情報を提供するというのであっては、信用ができません。
今後の新銀行の情報公開についてどのように考えているのか、見解を伺います。
答弁8
産業労働局長
新銀行東京の情報公開についてでありますが、これまで都は銀行法等の制約がある中で、新銀行東京の経営に関して大枠の監視を行ってまいりました。今後の新銀行東京に対する経営監視につきましては、金融庁とも十分連携を図りつつ、これまで以上に必要な情報を銀行から入手するとともに、都民に対し可能な限り情報開示に努めてまいります。
一方、新銀行東京におきましても、今回の追加出資の重みを十分に踏まえまして、都民にわかりやすい形で経営実態を明らかにしていく必要があり、都として積極的に働きかけてまいります。
質問1
次に、中小企業の資金調達に対する支援について伺います。
新銀行の設立趣旨を踏まえれば、中小企業への金融支援が円滑に進むよう、東京都がまさに従来の発想を転換して、既存の金融機関に対して、その地域や中小企業への貢献を促していくような施策に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
国において我が党が提案してきた金融アセスメント法案は、金融機関がその地域や中小企業などにどれだけ貢献をしているか、その融資の状況を含めて情報を公開することで、中小企業に資金を円滑に供給していくことなどを目指したものであります。
中小企業団体などからも、金融アセスメント法案の制定に大きな期待が寄せられておりますが、政府・与党が消極的であるため、残念ながらいまだ成立には至っておりません。
しかしながら、東京発の金融改革を進めていこうというのであれば、東京都として、金融機関に対して、地域や中小企業への貢献度などの情報公開を積極的に働きかけ、それに対する評価などを通じ、中小企業への資金供給を促していくべきだと考えますが、見解を伺います。
答弁1
産業労働局長
金融機関への情報公開の働きかけなどについてでありますが、地域金融機関は、平成十七年に国からの要請を受けまして、事業再生や中小企業金融の円滑化、地域の利用者の利便性向上などに向けまして、地域密着型金融推進計画を策定し、その具体的な取り組みと進捗状況をホームページ等で公表しております。また、金融機関の評価につきましては、調査権のない地方自治体が画一的に行うことは困難でございます。
なお、中小企業に対する資金供給の促進は、制度融資等を通じて引き続き適切に行ってまいります。
質問2
すぐれた人材やノウハウを持ちながらも、債務超過などによって存続の危機に直面した中小企業の再生を図るため、東京都は、平成十六年に地域金融機関との共同出資により中小企業の再生ファンドを創設しています。
東京都の出資は二十五億円、民間と合わせて七十五億円のファンドであり、こちらの方は今のところ投資した資金が戻ってこないという状況にはないようでありますが、これまでの実績は十三件にとどまっています。
債務超過などに陥った中小企業を再生させるには、今まで以上に中小企業にかかわる多くの再生専門家を集め、金融機関を初めとした債権者間の調整を強力に進めていくことが必要です。
私は、このような中小企業に対する再生体制の強化を図りながら、再生ファンドを活用した金融支援をさらに進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
産業労働局長
再生ファンドを利用した金融支援についてでありますが、都は、平成十六年十月に東京チャレンジファンドを創設いたしまして、再生の見込みがありながらも債務超過など経営上の課題からその存続が危ぶまれる中小企業の再生を図ってまいりました。
このファンドは、中小企業再生支援協議会を初め、再生計画の作成支援及び債権者間の調整などを行う再生支援機関や地域金融機関とも連携をいたしまして、厳しい経営状況にある中小企業に対して、優先出資や社債の引き受けなど、多彩な金融手法を活用して約三十億円の金融支援を行ってまいりました。
今後は、都、さらに再生支援機関との連携を深めながら、ファンドの有効活用を図り、中小企業の金融支援を一層進めてまいります。
質問3
中小企業の資金調達に対する支援は、他の自治体でも多様な方法で進められています。群馬県など、幾つかの自治体では、一般の社債発行よりも容易な手続で発行できる少人数私募債を発行する中小企業に対して支援することで、中小企業の資金調達の多様化を図っています。
また、神戸市などでは、地域において互いに信頼関係のある企業等が連携して、それぞれの信用に基づきファイナンスを行うコミュニティ・クレジットを行っています。
東京都においても、例えば、ソフトなものづくり企業が多く立地していることにかんがみれば、不動産などの担保を持たない中小企業への金融支援に積極的に取り組んでいく必要があります。
東京都は、知的財産や技術力、経営ノウハウを評価した融資制度など、不動産担保や個人保証に過度に依存しない資金調達方法の確保に向けてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
答弁3
産業労働局長
不動産担保等に依存しない資金調達方法の確保についてでございますが、都はこれまで制度融資やCLO、CBOの発行など、中小企業が担保や個人保証に過度に依存しない資金調達方法の確保に取り組んでまいりました。昨年八月には、流動資産担保融資を創設いたしまして、売り掛け債権や棚卸資産といった流動資産を担保とした制度融資の普及促進を図っております。
しかしながら、金融機関の融資判断におきましては、依然として不動産担保や個人保証の有無などが重視される傾向にございます。
今後も引き続き金融機関を初めとする関係機関との連携を図りながら、多様な金融手法を活用し、中小企業の資金調達の円滑化に取り組んでまいります。
質問1
次に、食の安全についてです。
食品事故を起こさない、安全な食品を消費者に届ける責任は事業者が負っています。どんなに安いものでも、安全でなければならないのは当然のルールです。
この前提のもとで、行政の果たすべき役割は、事業者に安全対策を徹底させる、その上でも起きてしまった事故・事件に際し、被害を拡大させず、どう最小化するか、この二点です。
今般、中国産冷凍ギョーザによる薬物中毒事件が千葉県、兵庫県で発生したことを契機に、政府は、検査体制強化やJAS法改正、新しい消費者行政の組織立ち上げを前倒しすることなどを発表していますが、これだけでよしとしては、現実的な対策の重要性から国民の目をそらす結果になりかねません。
この間、厚労省や農水省からさまざまな指示や指針が出されました。国は通知を出し、規則をつくれば仕事が終わるかもしれませんが、都民生活の安全を守るには、個々の分野で途切れなく安全対策が実施されるよう徹底していかなければ、意味がありません。
事件の真相解明は警察の手にゆだねられました。現段階でこの事件から浮き彫りになっているのは、医療関係者からの迅速な情報提供、健康被害情報を適切に判断し、迅速なリコールに結びつけ、被害を最小化する手順の徹底、被害が都道府県域を越えて拡散して発生した場合の広域的な情報集約といった課題ではないでしょうか。
都は、こうした食品安全対策の課題についてどのように認識し、今後どのように取り組むのか、伺ってまいります。
答弁1
福祉保健局長
食品の安全対策についてであります。健康被害の拡大防止のためには、行政機関における情報の共有化、食中毒の届け出の徹底などが重要であると考えております。
こうしたことから、都は、首都圏の自治体との間で、これまでの食中毒情報に加えて、今回のような特異な健康被害事例についても、迅速かつ確実に情報を相互に提供することを提案するなど、連携強化を図ったところであります。
また、医療機関に対しましても、疑い事例を含めた食中毒の届け出の徹底について、改めて周知をいたしました。今後とも、関係機関との連携をさらに推進し、初動体制の強化などに努めてまいります。
質問2
これが悪意による毒物混入だとすれば、ほかのどの国でも、日本国内でも発生し得る事態です。この事件を通して、これまで我が国の食品安全行政では前提としてこなかった食品による健康被害が、悪意・故意に基づいても起こり得ることを認識させられました。
都民の健康被害をできる限り起こさないために、都単独でもすぐにでき、かつ、実効性のある施策を早急に実施すべきです。
例えば、米国FDAの「FoodDefenseandTerrorism」というページを見ると、二〇〇二年ごろから、バイオテロ並びに公衆の健康危機に対する防御能力の向上、対処能力拡張などの一環としてさまざまな対策を行っていることがわかります。
具体的には、食品の生産・流通の各過程における事業者向けブックレットの発行、生産過程の管理や事件発生時の対応準備、従業員対策などについてそれぞれが知っておくべきこと、すべきことを広報しているのであります。
また、消費者向けには、包装・容器を注意深く調べて、おかしなものは食べるなと注意を喚起しています。こうした取り組みは、地味かもしれませんが、現実的な対応策を積み重ねていくことでこそ、食の安全が守られていくわけであります。
我が国においても、今回経験したこれまでになかった新しいタイプの事件を踏まえ、危機管理意識の向上にできることからでも早急に着手していくべきと考えますが、所見を伺います。
答弁2
福祉保健局長
危機管理意識の向上についてであります。
都は、行政や都民に対してO157やノロウイルスの流行などに際し、家庭における衛生管理についての啓発や迅速に警報を発するなど、的確な注意喚起を行っております。
事業者に対しましては、健康被害事例発生の際に、みずからが収集している情報を速やかに関係機関に通報するなど、危機管理の視点を持った対応ができるよう指導してまいります。
なお、今般の事例におきまして、都は直ちに都民への警告を発するとともに、問題となった輸入冷凍食品の自主回収を指導し、その撤去状況の確認を行うなど、健康被害の発生を予防してまいりました。
引き続き行政や都民、事業者の危機管理意識の向上を図ってまいります。
質問3
ところで、知事は、先日の記者会見で、食品表示について都独自の条例提案を示唆し、施政方針表明においては、原料、原産地名の表示の充実について検討を開始したと述べました。
表示は消費者に必要な商品情報を伝えるためのものであって、毒物の混入のような事態には何の安全対策にもなり得ません。また、表示制度の見直しについては、にわかに国民生活審議会のワーキンググループで食品衛生法とJAS法にまたがる表示制度の統一議論が行われていますが、これは従来から必要性が叫ばれていたものであります。
民主党は、昨年、一昨年と法案を国会に提出しましたが、与党に反対され、成立を見ることはできませんでした。こうした生活に密着した課題を放置してきた政府の責任は重いと申し上げておきます。
原料の調達から消費までの経路が国境をも越えて広範囲となり、複雑化している今、一つの工場で生産された一つの食品をとってみても、世界や日本の各地から集めたさまざまな原料や半加工品からできているのであります。これらすべての原料の原産国を商品本体に表示することは不可能な場合もあり、また、アレルギー表示や加熱条件、消費期限など、まず第一に目に入るべき重要な情報が逆に見えにくくなってしまっては元も子もありません。
例えば、牛肉のトレーサビリティーのように、インターネットや店頭で原産地を閲覧できるようにするといった工夫をし、消費者の立場に立ったわかりやすい情報提供を第一の目的として検討すべきと考えますが、見解を伺います。
答弁3
福祉保健局長
食品に関する情報提供についてでありますが、こうした情報は都民にとってわかりやすいことが重要でございます。都では現在、原料原産地表示のあり方について、関係各局による食品安全対策推進調整会議において検討を進めているところであり、この中で都民にとってわかりやすい情報提供となるよう検討してまいります。
質問1
次に、暫定税率と道路特定財源について伺います。
今国会は、小泉政権下において閣議決定された道路特定財源の一般財源化が、福田政権のもとで大きく後退することとなるのかが大きな争点となっています。
政府・与党は、暫定税率の廃止、道路特定財源の一般財源化をおそれ、租税特別措置法からガソリン税関連税制の部分を分割せずに、一括してこの法案の賛否を問う戦略をとっています。そして、租税特別措置法に中小企業減税などが含まれていることから、民主党の賛否の仕分けにかかわりなく、民主党があたかもこれらすべてに反対しているかのごとく喧伝しているのであります。
一方で、法人事業税の一部国税化の際は意外なほどに静かであった東京都も、道路特定財源がないと、あたかも都内の道路工事がストップするかのようなPRをしています。
民主党の考えは、自動車関係諸税を消費税、保有税、地球温暖化対策税に再編成する第一歩として、道路特定財源を一般財源化した上で暫定税率を廃止するというものであります。そのための財源の手当ては示されており、何も心配することはありません。
しかも、民主党は、石原知事が妥協した法人事業税の一部国税化にも反対しており、これが否決されることは、地方分権改革にとっても、また、東京都の財政にとっても好ましいことではないでしょうか。
暫定税率と法人事業税の一部国税化の廃止による都財政への影響について、石原知事の見解を伺います。
答弁1
知事
道路特定財源などについてでありますが、暫定税率については、立ちおくれた東京の道路整備を着実に推進する上で必要なものでありまして、これを維持するように国会にも強く求めてまいりたいと思っています。法人事業税の一部国税化については、日本の地方税制は国が一方的に決めることができまして、自治体にはそれを阻止するすべがない中で、あの結果を招来しましたが、福田総理と直接会談を行い、都の重要施策に最大限の協力をするとの約束を取りつけるとともに、今回の措置を暫定措置にとどめ、都財政への影響を最小限に食いとめた上で、首都東京の知事として決断をしたものであります。
質問2
道路特定財源は、昭和二十九年に、後に総理となった田中角栄議員らが中心となった道路整備費の財源等に関する臨時措置法という議員立法によって導入をされました。
当初は、経済復興に不可欠な道路整備を急いで進めるために有効な制度でありましたが、制度ができてから半世紀以上がたった今日、もはや、その意義は薄れています。医療や福祉など、国民生活に直結するさまざまな課題が財源不足のためなかなか前に進まない中にあって、道路事業費だけを聖域化することは明らかに間違いであります。
道路特定財源は、既に道路の下を走る地下鉄や電線類の地中化など、自動車ユーザーの利便性と関係のないものにも使われる一方で、旧建設省の所管外である臨港道路などの道路には、この財源は充てられておりません。
これらに共通するのは、旧建設省道路局が予算を差配する権限を手放さないということにほかならず、まさにこうした構造が日本の改革を大きくおくらせているのであります。
知事は、さきの施政方針表明で、政治家は目先の利害にとらわれ、官僚は省益に拘泥して、国家のあり方や国民の税負担にかかわる根本的な議論を避け続けていると批判されていましたが、そうであるならば、石原知事は道路特定財源の一般財源化を積極的に働きかけるべきと考えますが、いかがでしょうか。見解を伺います。
答弁2
知事
道路特定財源の一般財源化についてでありますが、道路は、国民生活や社会経済活動を支える最も基礎的なインフラでありまして、その整備には道路特定財源を充当しております。
道路特定財源諸税は、使途を道路関係に限定し、自動車利用者が負担する目的税でありまして、受益者負担にのっとった理にかなったものであると思っております。
首都圏三環状道路を初め、東京の道路ネットワークの整備はいまだ不十分でありまして、今後も引き続き道路整備を着実に進めていくためには、安定した財源の確保が不可欠であります。
したがって、道路特定財源の意義は現在も全く薄れておらず、その一般財源化は絶対にやるべきではないと思っております。今後とも、道路特定財源を真に必要な道路整備や関係施策に投入するよう、引き続き強く訴えてまいります。
質問3
また、暫定税率についても、既に暫定の名のもとで三十四年間も徴収され続けていること、そのものが全く異常なことなのであります。小渕総理のもとで導入された恒久的減税がわずか八年で廃止されたわけですから、暫定税率は、それこそ暫定の名に恥じぬよう廃止されるべきなのであります。
また、民主党は、暫定税率廃止に伴う財源については、地方六団体が要望している国直轄事業負担金の廃止などを打ち出しており、建設局が指摘するように、暫定税率の廃止によって連続立体事業がストップするようなことは断じてありません。
私たちは、毎年、トラック協会からも予算のヒアリングを行っていますけれども、軽油引取税の暫定税率を廃止してほしいという要望が寄せられていることは、石原知事もご承知のことだと思います。また、地方においても、暫定税率の廃止は、日々の暮らしでガソリン代や灯油代が高いと感じている人たちの多くの声ではないでしょうか。
知事が暫定措置にとめさせたとする法人事業税の一部国税化が、仮に三十四年間も続くこととなったら、どうお考えになるでしょうか。暫定税率は、暫定であるがゆえに廃止されてしかるべきだと考えますが、見解を伺います。
答弁3
建設局長
道路特定財源諸税の暫定税率についてでありますが、暫定税率は、おくれている道路整備の促進を図るため、国会審議を経てこれまで延長されてまいりました。
現在、首都圏三環状道路の整備率は約四○%、都市計画道路の整備率は約五六%と、首都東京の道路整備はいまだ道半ばであります。
このため、東京の最大の弱点である交通渋滞を解消し、都市機能の向上や都市環境の改善を図るため、首都圏三環状道路を初め、幹線道路ネットワークや連続立体交差など、早期整備が不可欠であります。
したがいまして、東京の道路整備を停滞させることなく着実に進めるための財源確保の観点から、暫定税率を引き続き維持していく必要がございます。
質問4
それほどまでに必要だ、必要だといわれてつくられた道路には、本当に当初想定したとおりの利用者がいるのでしょうか。本四架橋しかり、アクアラインしかりです。かつて、平成十四年、石原知事も原子力発電所のある新潟県知事に対して、夜はクマしか通らない道路がだれの税金でできているか考えてほしいと反論していたように、道路特定財源が非効率に使われていると感じていたのではないでしょうか。
私は、四年前、「破綻寸前東京の道路公団」という本を著しましたが、その中で指摘していた稲城大橋有料道路やひよどり山有料道路などは、道路特定財源を投入して整備されたものですが、利用者は交通量予測を大きく下回っています。今回の予算案では、稲城大橋有料道路の資金ショートを避けるため、十五億円が計上されていますが、その見通しの甘さは総括されておりません。
このように、必要だ、必要だといわれながらも、必ずしもその必要性が十分に精査されずに建設された道路は、地方に限らず、都内においても少なからずあったのではないでしょうか、東京都の認識を伺います。
もちろん、道路のすべてが不要といっているのではありません。問題は、真に必要な道路を見分けて、優先順位をつけながら着実に整備をしていくということではないでしょうか。
例えば、東京都が平成十六年三月に策定した区部における都市計画道路の整備方針では、平成十六年度から二十七年度の十二年間で優先的に整備すべき道路を示していますが、十二年間で優先的に整備すべきと示されたのは二百八区間、百三十三キロメートルです。これにさらに細かな優先順位をつけ、戦略的、効率的に道路を整備していくことは可能なのではないでしょうか。そのため、交通混雑の緩和など、定量的に評価をし、優先順位をつけ、さらに客観的に優先順位を比較考量できるようにし、そのデータを公表することも必要なのではないでしょうか。
答弁4
建設局長
都の道路整備の必要性についてでありますが、道路は都市活動や都民生活を支えるとともに、交通渋滞の解消、防災性の向上や良好な都市空間の形成を図る上で重要な社会基盤であります。
これまで都は、事業化計画等の策定に際し、路線の必要性について道路ネットワーク形成などの観点から検証するとともに、事業実施に当たっては街路事業に加え、早期整備を図るための有料道路事業等、さまざまな手法を活用し、幹線道路などの整備を進めてまいりました。
あわせて、既設道路の交通の円滑化や安全性、快適性の向上を図るため、交差点改良、歩道設置や無電柱化などの事業にも計画的に取り組んでまいりました。
引き続き整備効果を踏まえ、財政状況等を勘案しながら、真に必要な道路整備を着実に進めてまいります。
質問5
今後策定する都市計画道路の事業化計画においては、より優先度の高い道路の整備が進むよう取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
答弁5
都市整備局長
都市計画道路の事業化計画についてでございますが、都はこれまでも区部及び多摩地域における都市計画道路につきまして、交通混雑の緩和、防災性の向上、まちづくりへの貢献などの視点から、必要性の検証を行い、その上で区市町と連携し、優先的に整備する路線を定めた事業化計画を策定しております。
この優先整備路線の事業化につきましては、整備の緊急性や地元の状況などを勘案しながら、各事業主体において決定しております。
今後とも必要な財源の確保を図りつつ、事業化計画に基づき、積極的に道路整備の促進に取り組んでまいります。
質問6
また、東京都においては、道路整備一辺倒でなく、自動車に過度に依存しない社会への脱却、IT技術の活用などによる既存の道路の有効利用など、新たな道路・交通政策を展開していくことも必要であります。
地下鉄などの公共交通機関が発達した東京の特性を踏まえるならば、LRTなどの整備をさらに進めるとともに、TDM施策の推進や自転車への利用転換、さらに、近年急速に普及が進んでいるカーナビなどIT技術の活用やロードプライシングなどにより、今ある道路を効率的に利用していくことも可能であります。これらの施策は、新たに道路を整備することに比べてもそれほど多くの予算を要しないと思いますが、その効果は決して小さくありません。
私は、自動車に過度に依存しない社会への脱却、IT技術の活用などによる既存の道路の有効利用などに向けて総合的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
答弁6
環境局長
自動車交通対策についてでございますが、都はこれまで渋滞解消や大気環境などの改善を図るため、三環状道路等の整備に努めるとともに、TDM東京行動プランに基づき、公共交通への利用転換など、交通量の抑制や自動車交通の円滑化に取り組んでまいりました。
今後は、CO2削減を強化する観点からも、環境負荷が低く、効率の高い自動車交通を実現することが、より一層重要でございます。
このため、「十年後の東京」への実行プログラム二○○八に基づき、自動車に過度に依存しない交通行動への定着を目指し、パーク・アンド・ライドや配送の合理化など、地域における人や物の流れに着目した環境交通モデル事業等を実施してまいります。
また、交通の円滑化を一層進めるため、道路情報の提供や信号制御などに最新のITを活用した取り組み等を進めてまいります。
質問1
次に、オリンピックについてであります。
東京オリンピック招致委員会は、IOCに申請ファイルを提出しました。七都市で競われる二〇一六年招致は、ことし六月には五都市程度に絞られます。
都は、人事面でのてこ入れを図るとともに、招致経費を最初の約三倍増の百五十億円に急増させる等、人、物、金の資本をオリンピック招致へ本格的に投下し始めました。
しかし、各都市における支持を見ると、東京の招致賛成は六〇%と、他都市と比較して低い結果となりました。二〇一二年招致の際のロンドン、パリ、モスクワ、ニューヨークといった大都市も、今回の東京よりは高支持率でありました。
なぜこうも東京招致が盛り上がらないのでありましょうか。それは、都民の主な支持理由が、経済効果が見込めるということにあり、スポーツと平和の祭典であるオリンピックを招致するという運動の根本的な意義が伝わっていないからなんです。
民主党は、オリンピックの理念は、悲惨な戦争を忘れないという先人の思いを現代につなぎ、今、戦火に苦しむ世界の人々に平和構築の連帯意思を示すことであると主張してまいりましたが、ここで改めて、南米のスポーツレガシーのために、中東で最高のスポーツ競技を共有する、再びアメリカでオリンピックの情熱をともす等にまさる、人を育て、緑を守り、都市を躍動させるとした東京の開催理念について、知事の見解を伺います。
答弁1
知事
オリンピックの開催理念についてでありますが、地球環境の危機、平和への脅威など、人類は大変深刻な問題に直面しておりますが、スポーツで地球を一つにするオリンピックの開催は、国や地域を超えて、解決策を全世界に示していく絶好の機会でもあります。
東京が二〇一六年に目指すオリンピックは、人を育て、緑を守り、都市を躍動させるという理念のもとに、一地域のためでなく、人と人の連帯を高め、地球の可能性を最大限追求して、平和でよりよい地球社会を築くために開催するものであります。
今日の日本が持つ技術水準の高さと治安のよさは世界に誇れるものでありまして、また、東京は十年後を見据え、都市の新しいあり方を提案する具体的な将来ビジョンを描き、先進的な取り組みを加速させております。
以上のような理念と具体的な取り組みに裏打ちされた日本・東京におけるオリンピックの開催は、IOC並びに世界の人々から高い評価が得られるものと確信しております。
質問2
くしくも、東京がIOCに申請ファイルを手渡した日、中国・北京市から石原知事に北京オリンピック開会式の招待状が届きました。
そもそも東京と北京は姉妹友好都市として交流してきましたが、知事の就任後、江沢民はヒトラーと同じ、民度が低い、北京オリンピックはヒトラーのやった政治的なベルリン・オリンピックに似ている気がするなどの批判発言や、アジア大都市ネットワークからの北京脱退によって、その関係はすっかり冷え込んでしまいました。
ところが、東京がオリンピック招致を推進する中で、知事が中国のオリンピック委員会幹部と接触してから変化が見られるようになりました。十月には、日中国交正常化三十五周年で来日していた中国卓球協会会長が知事を表敬訪問し、知事は、招かれれば行きたいと答え、十二月議会でも北京オリンピックにエールを送っています。
そこで中国は知事に招待状を届けたわけですが、北京オリンピック開会式への出席についてはどのようにお考えか伺います。
答弁2
知事
北京オリンピックの開会式への出席についてでありますが、現地に行ってみなきゃわからないこともたくさんございますから、行けば東京オリンピックの招致の参考にもなると思います。招待もありましたので、日程の調整がつけば訪問するつもりでございます。
質問3
ことしは、北京五輪が開催されるオリンピックイヤーです。それに合わせて、トップアスリートの強化施設、ナショナルトレーニングセンターが完成しました。この施設で選手がより効果的な練習を積み、北京で活躍してほしいと考えています。
そこで、各国では国がすべて負担して無料となっているナショナルトレーニングセンターの使用料の減免や施設間のアクセス改善など、さらなる国の努力が必要と考えます。都は、選手の育成と競技力強化の観点からナショナルトレーニングセンターと連携すべきと考えますが、都の見解を伺います。
答弁3
生活文化スポーツ局長
競技力の強化についてでありますが、ナショナルトレーニングセンターは、トップアスリートが集中的、継続的にトレーニングや強化活動を行うための拠点として国が設置した施設であり、柔道や体操など、専用練習場や宿泊施設等が整備されております。
また、本年四月から、オリンピックを初めとした国際大会で活躍できるトップアスリートを育成するためのJOCエリートアカデミー事業が開始される予定であり、地元自治体として、都もこの事業を後援することとしております。
今後、東京国体やオリンピックに向けた強化練習の場としての活用やトップアスリートとの交流など、東京都選手の競技力向上に向け、ナショナルトレーニングセンターとの連携の方策を検討してまいります。
質問4
一方、ロゲIOC会長が最も懸念することは、青少年のスポーツ離れです。国内では、運動不足が原因で肥満傾向児がふえ、都内のスポーツ行動率も低下傾向にあります。そこで、都はスポーツ振興計画を改定し、二〇一三年東京国体までには、全自治体に総合型地域スポーツクラブを開設する方針です。
総合型クラブの設立には、指導者や活動拠点の確保、マネジメントにおけるアイデアの活用が重要です。例えば目黒区のスポルテ目黒は、運動していない層をターゲットに、一切の補助金なしで、既存施設を使いオープンしました。現在、会員は幅広い世代にわたり、運動・スポーツ行動率が上昇し、その効果があらわれているとのことです。
都民のスポーツ振興、そして新たなコミュニティの形成に可能性を持つ総合型クラブの設立に当たっては、地域の実情に合わせた取り組みが重要です。都の見解を伺います。
答弁4
生活文化スポーツ局長
地域スポーツクラブ設立の取り組みについてでありますが、地域スポーツクラブは、地域住民の日常的なスポーツ活動や交流の場として、健康づくりや体力向上に貢献するものでございます。
そこで、都は、五つの区市において地域の実情に合った設立モデル事業を展開し、地元への説明会や普及活動などを行うほか、地域のスポーツ活動を支える体育指導委員を対象に設立支援研修会を実施し、クラブ設立に向けた支援を行っております。
今後は、地域スポーツクラブ設立支援協議会において、支援策についてさらに検討を進めるとともに、広報活動の充実を図るなど、地域スポーツクラブの設立、育成に取り組んでまいります。
質問1
次に、警察行政、金大中(キム・デジュン)事件について伺います。
これは、昭和四十八年八月八日、後に韓国大統領となった金大中氏が、九段にあるホテルグランドパレスから拉致され、五日後にソウルの自宅付近で解放されたという事件で、当時、元大統領候補の金大中氏が、日本とアメリカを中心に、朴正煕(パク・チョンヒ)政権批判の運動を行っていたことから、韓国中央情報部、KCIAの犯行が疑われ、我が国でも、主権侵害、人権侵害との世論の批判が高まりました。
捜査の過程で、金大中氏が拉致された際に連れ込まれたホテルの部屋から、韓国大使館一等書記官であった金東雲(キム・ドンウン)氏の指紋が検出されたこと、ホテルのエレベーター内で、強制連行されつつあった金大中氏が、たまたま乗り合わせた人に助けを求めて叫んだとき、金東雲氏がその犯人グループの中にいるのが目撃をされたこと、犯人グループがホテルの部屋に放置したリュックサックを買い求めた神田の登山用具店の店員が金東雲氏と応対したことを確認できたこと、さらには、ホテルから金大中氏を移送した拉致車両の所有者が韓国横浜総領事館の副領事であったことなどが明らかになり、KCIAという韓国の公権力による我が国に対する主権侵害は疑う余地のないものと、一般には受けとめられたものでありました。
ところが、その後、日韓の外交交渉の中では、韓国の国家機関の関与はなかったものとして、二度にわたり、いわゆる政治決着が図られ、我が国においては今日まで真相はうやむやのままに至っているのであります。
一方、被害者金大中氏は、軍事クーデターにより樹立された全斗煥(チョン・ドゥホアン)政権により、昭和五十五年の光州事件に関与した疑いで身柄拘束され、死刑判決を受けるという弾圧に見舞われたのであります。しかも、日韓政治決着で不問に付すはずだった日本滞在中の政治活動をも罪に問われるというひどいものでありました。
昨年十月、事件発生から三十四年目にして、韓国国家情報院のいわゆる真相究明委員会の報告書が公表されました。そこには何と、この事件がKCIAの国家犯罪であったことを断定した内容が示されていたのであります。
私は、昨年十一月二十八日の都議会警察・消防委員会でこの事件を取り上げました。
第一に、この事件は、憲法第十八条「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」、憲法第三十一条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」、この規定に反した人権侵害であり、主権侵害であることは明らかであること。
第二に、政治決着は誤りでなかったのか。政府としてやるべきことは、人権、主権の侵害について韓国政府に厳重抗議し、謝罪をさせる。そして、真相究明と犯人の検挙、再発防止の取り組み、被害者金大中氏の原状回復であったのではないか。
第三に、真相究明の中で、二度にわたる政治決着が捜査にふたをする役割を果たしたのではないかということについての検証。もしそうであったならば、それが国民、国家に対する一体何の利益のためであったのかを明らかにすること。
第四に、その政治決着は外務省が主導したのか、政治が主導したものなのか。
これらの点は、真相究明を通じてこそ初めて歴史の法廷で裁かれるべき事柄であると申し上げました。
さらに、金大中事件発生の翌昭和四十九年から北朝鮮による拉致が本格化していることを見ると、この事件の政府のあいまいな対応が、北朝鮮拉致計画者に、日本の対応はその程度のものかという気を持たせ、北による拉致を誘発した一つの要因にもなっているのではないかとも考えられるのであります。
以上を踏まえ、以下十二点についてお答え願います。
第一点、昨年十月公表された、いわゆる真相究明委員会報告を警視庁はどう受けとめていらっしゃるのか。
第二点、報告書ではKCIAによる犯行と断定しているが、警視庁としてこの点についてどのように判断をしているのか。
第三点、私の委員会質問以降きょうまで、捜査はどのように進展しているのか。日韓刑事共助条約に基づく共助方法、共助要請の内容と韓国側のどの機関が共助相手先になるのか。
第四点、共助要請に対するこれまで得られている韓国側の回答はどのようなものか。
第五点、警察・消防委員会での私の質問に対して、植松公安部長は、少なくとも被疑者一名と答弁していますが、真相究明委員会報告書では、KCIA職員二十七名、その他龍金号船員などと、相当数が事件に関与しているとしており、検挙、起訴すべき範囲を警視庁は一体どこまで考えているのであるかということ。
第六点、金東雲氏について、昭和五十八年八月十一日の参議院法務委員会における当時の吉野警察庁外事課長答弁によれば、条件さえ整えばいつでも金東雲氏の逮捕状は要請できる状態だと認めています。それから二十五年経過し、真相究明委員会報告書や第一次政治決着時の田中首相と金首相の首脳会談の記録などの韓国側外交文書の公開が進み、事件の真相が相当明らかになってきた今日に至って、一体逮捕状要請に必要な整備すべき条件とは何なのか。
第七点、この人物は、事件発生以前に、実は報道機関の人間として入国歴があり、本名は金炳賛(キム・ピョンチャン)という名で、金東雲は偽名であることが既に明らかになっているわけですが、警視庁として金東雲が偽名であるという事実はいつの段階で把握をしていたのか。
第八点、金東雲氏、金大中氏に対して、これまで事情聴取を行ったことがあるのか。また、近々その予定はあるのかどうか。
第九点、既に公開されている韓国政府の外交文書に、田中角栄・金鍾泌(キム・ジョンピル)首脳会談録があります。これは、事件発生から約三カ月後の昭和四十八年十一月二日、第一次政治決着として行われた田中角栄首相と金鍾泌首相の首脳会談の会議録ですが、それには、田中首相や大平外相はどのような発言をしたか、実にリアルに記録されています。日本の総理大臣の発言を中心に、要点を簡略に拾ってみます。
田中首相はまず会談の冒頭で、金首相が来たことで事件を一段落させようと、当時の田中伊三次法務大臣の異論も抑えて、その日の朝の閣議で了解を取りつけたことを話しています。
次に、主権侵害の問題については、捜査の進展に従って、もし韓国の公権力介在が判明した場合には新たな問題提起をするほかないと、持ってきたペーパーをそのまま読むようにいいながら、それについて金首相から、それは本気か建前かと、こう聞かれ、あくまで建前だと応じているのであります。
さらに、金大中氏の原状回復については、彼が日本に来なければいい、そんな者は日本にとっても非常に困る、そんなのをそのまま置いておくわけにはいかないと、こういい放ち、具体的な事件捜査に関しては、金首相から、金東雲の捜査はすべて韓国に一任してもらい、韓国側最終捜査結果の通告だけを日本に行う旨の確認を求められました。そのとき、何と田中総理は、当時の警視庁公安部長を栄転させ、捜査本部は徐々に抑えてなくすつもりだ、こう返答しているのであります。
そして最後には、金首相から、今後は金大中事件を完全に忘れていただくようお願いされ、済んだ話を何度繰り返してみても意味がないので、もうこの問題はパーにしよう、私も開き直ったからと、首脳会談を契機に問題終結を約束しているのであります。
読み上げるのもはばかるようなこのやりとりを、このように、我が国の主権を守るべき日本国総理がしていたのであります。
首都の治安を守る警視総監として、これを読んでどうお考えになるのか。当時の我が国総理や外務大臣の発言について一体どうお考えになるのか、お伺いをいたします。
第十点、これまで警視庁が、この事件の捜査に関して外務省や政府または政府筋から何らかの干渉を受けた事実はあるのか、あるとすればどのようなことか。
第十一点、真相究明委員会報告では、日本政府が真相隠ぺいに関与した過ちがある、こういい切っているわけですが、警視庁としてその事実を認めるのか否か。
第十二点、事件当時、外務省アジア局次長の要職にあり、政治決着を含め日韓外交交渉の中心的交渉当事者であった中江要介氏は、昨年六月、テレビ朝日で放映された報道番組の中で、主権侵害をあいまいにして決着したことを問われ、次のように述べています。
結果として日本の捜査当局は十分な捜査をしなかったから真相が究明されなかった、真相が究明されなかったから主権侵害がぼやけてしまった、捜査当局の汚点であった、ここまでいわれてしまいました。
第一線の捜査官がこの発言を聞いて一体どう思うでしょうか。私には真実は違うように思えます。どうか国家の威信にかけて、警視庁の真剣に事件解明に取り組んできた方々の名誉にかけて、このような発言が真実であると認められてはならないと私は考えます。私には、捜査現場で汗をかいた警察官の声なき声が聞こえるのであります。真相究明に向けての警視総監の決意をぜひともお聞かせいただきたいと思います。
答弁1
警視総監
金大中氏拉致事件についての十二点のご質問にお答えいたします。
初めに、ご質問の第一点、第三点、第八点の一部、第十二点について申し上げます。
本事件につきましては、昭和四十八年八月、東京都内のホテルで来日中の金大中氏が拉致されたものであり、当庁では、事案の発生以降、特別捜査本部を設置するなどして、警察庁等関係機関とも緊密に連携しながら、鋭意捜査を継続してきたところであります。
こうした中、昨年十月二十四日に、韓国の国家情報院過去事件真実究明を通じた発展委員会が本事件に関する報告書を発表したところであり、当庁では、本報告書の内容を精査した結果をも踏まえ、さらなる捜査を行うことが必要不可欠であると判断し、刑事に関する共助に関する日本国と大韓民国との間の条約に基づき、十一月二十九日、警察庁を通じて大韓民国法務部に対する捜査共助要請が行われたところであります。
その内容は、金大中氏、金東雲その他関係者への事情聴取、捜査当局において既に作成された本件に関する供述録取書等、国家情報院過去事件真実究明を通じた発展委員会による面談の記録、韓国における金東雲を被疑者とする不起訴処分となった事件記録、事件当時に中央情報部と駐日韓国大使館との間で受発信された電報、関係者等の出入国記録、人定資料、駐日大使館への在籍事実、龍金号の登録原簿等、韓国における謀議、上陸、監禁、解放等の場所の見分、特定、龍金号の保全等を求めるものであります。
なお、金大中氏に対する事情聴取については、平成五年に実施したところであります。
このように、本事案については、これまで可能な限りの捜査を尽くし、少なくとも関係被疑者一名を特定して捜査を継続してきたところであり、今後とも事案の全容解明に向け、鋭意捜査を推進していく所存であります。
次に、ご質問の第二点、報告書がKCIAの犯行と断定していること、第九点、韓国政府の外交文書、田中角栄・金鍾泌首脳会談録、第十点、政治決着に伴い当庁が干渉を受けた事実及び第十一点、報告書が日本政府が真相隠ぺいに関与と断定していることについては、当庁は、我が国の政治上あるいは外交上の配慮により行われた、あるいは行われなかった事柄について言及すべき立場にありませんし、韓国政府が発表、公開した資料について見解を申し述べる立場にありませんので、答弁を差し控えさせていただきます。
また、第四点、共助要請に対する韓国側の回答、第五点、検挙、起訴すべき範囲、第六点、逮捕状要請に必要な整備すべき条件、第七点、金東雲が偽名であるという事実を把握した段階及び第八点の一部、金東雲、金大中に対する事情聴取の予定につきましては、本事案は現在捜査中であり、捜査の個別の内容、手法にわたりますので、答弁を差し控えさせていただきます。ご理解をいただきたいと思います。
質問1
次に、温暖化対策について伺います。
本年は、京都議定書による温室効果ガス削減義務の目標期間の開始年であり、日本が果たして削減目標六%を達成できるのか、温暖化対策への姿勢と取り組みに強い関心が寄せられています。
しかし、国における温暖化対策の姿勢は、国際的にも消極的だと批判されています。注目されたダボス会議での福田首相の演説で、国別総量目標の設定を提唱したことは一定の評価がなされているものの、肝心の中身となると、部門別の積み上げ方式で目標を決めるという、危機感の感じられないものとなっています。
部門別の積み上げ方式とは、産業や業務、家庭、運輸といったそれぞれの部門で、将来の省エネ技術の進展などを考慮した削減可能性を積み上げる方式です。しかし、そのような目標設定では、世界的に必要だとされる、今世紀半ばまでに半減というCO2排出量削減を達成できない可能性があります。私は、削減可能な量を積み上げるのではなく、将来を見据えた高い目標設定と具体的な対策が必要だと考えています。
都は、二〇二〇年までにCO2排出量を二〇〇〇年比で二五%削減するという目標を掲げておりますが、どのような考え方で設定しているのか、また、どのように実現していくのか、見解を伺います。
答弁1
環境局長
温暖化対策についてでございますが、地球温暖化のもたらす気候変動の危機を回避するためには、二○五○年には世界全体の温室効果ガス排出量を半分以下へと大幅に削減していく必要があります。
このため、危機回避が可能となる将来の持続可能な社会の姿を想定し、今から何をすべきかを考えるバックキャスティングの考え方に基づき、「十年後の東京」において、二○二○年までにCO2排出量を二○○○年比で二五%削減するとの中期的な目標を掲げ、低CO2型の新たな都市モデルの早期の実現を目指すことといたしました。
目標の実現に当たりましては、産業、業務、家庭、運輸の各部門において、大企業、中小企業、家庭、官公庁など、都内のあらゆる主体が役割と責任に応じて削減に取り組むことが必要でございます。
このため、大規模なCO2排出事業者への削減義務化や日本の誇る太陽光発電など、環境技術の成果を最大限発揮する仕組みを構築し、温暖化対策について実効ある取り組みを着実に推進してまいります。
質問2
次に、中小規模事業所の温暖化対策の推進です。
私たち都議会民主党はこれまで、地球温暖化対策計画書制度の対象にならない大規模事業所以外の事業所に対する取り組みの強化を主張してきました。中でも、例えば平成十六年六月議会での代表質問では、コンビニやファミレスといったチェーン店のように、一店舗だけを見れば制度の対象とならないものの、これらの店舗の設備や実際の運用が一括で管理されている形態であったり、企業としては一つであるものもあるとした上で、対策の強化を主張してまいりました。
私たちの主張により、都は連携プロジェクトにおいて、これら事業者への対策を模索してきましたが、都内の業務・産業部門のCO2排出量の約六割を占める中小規模事業所への対策強化は欠かせません。私は、店舗はばらばらでも同一法人が管理するなどしているチェーン店などの事業所に対して、新たな制度を設けるなど取り組みを強化すべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
環境局長
中小規模事業所の温暖化対策についてでありますが、都内の中小規模事業所は、産業、業務部門からのCO2排出量の約六割を占めており、かつ大規模事業所や運輸部門など、あらゆる分野における温暖化対策の展開を図る上でも、中小規模事業所のCO2排出量の削減を一層促進することが重要でございます。
現在、東京都環境審議会におきまして、温暖化対策の強化が検討されており、昨年十二月に環境確保条例の改正に関する中間のまとめが取りまとめられました。
この中で、同一法人等の管理する複数の中小規模事業所が合計して大量のエネルギーを使用する場合、その法人等に排出削減の取り組み等の報告を義務づけるとともに、本社等が各事業所における効果的な対策の実施を指示し、進捗状況を確認する新たな仕組みが提案されております。
今後は、本年度末に予定されている審議会最終答申を踏まえて、制度化に向けて検討を進めてまいります。
質問3
昨年二月の代表質問で、私は、建築物環境計画書制度での取り組みを、建築物だけでなく、まちづくりそのものに拡大していくべきだと主張してきました。
予算案では、開発エリア全体でのエネルギー有効利用に関する計画を制度化することが掲げられ、エネルギー利用の共同化による省エネや下水排熱などの未利用エネルギー、再生可能エネルギーの活用などの検討を義務づけ、計画を作成することで、エネルギー利用の効率化を誘導することとしています。
昨年も述べたように、ロンドン市では、住宅、オフィス、商業施設などを含む複合開発においてCO2排出量ゼロを目指すゼロカーボン開発が提案されており、東京都の計画においても、開発エリア全体でCO2排出量ゼロを目指せるような、より高い誘導水準が求められます。計画の制度化に向けた取り組みについて見解を伺います。
答弁3
環境局長
まちづくりにおけるエネルギーの有効利用についてでございますが、都はこれまでも全国に先駆けて創設した建築物環境計画書制度に基づき、大規模な新築建築物に対し環境配慮を求めるとともに、地域冷暖房計画制度により、開発エリア全体への効率的な熱供給を推進してまいりました。
先ほど申し上げました東京都環境審議会の中間まとめにおきまして、地域冷暖房計画制度を発展させ、開発計画策定の早い段階から、開発エリア全体における建築物の省エネ性能の向上とともに、エネルギー供給の一層の効率化を推進する新たな仕組みが提案されております。
この提案につきましても、審議会最終答申を得た後、都のこれまでの取り組み実績を踏まえながら、制度化に向けて検討を進めてまいります。
質問1
次に、高齢者福祉施策についてお尋ねします。
昨年は、コムスンの事件を含め、介護保険事業者による不祥事、事件が相次ぎ、処分を受けた事業所は十七件に上りました。次々と起きてきた問題を受け、平成二十年度予算においてどう取り組むのか。また、中期的にはどのように未曾有の高齢社会における生活の安心・安定につなげるかは、喫緊の課題であります。
都の高齢者人口当たりの介護保険施設は全国最下位です。これに千葉、埼玉など首都圏が続き、最下位グループをなしています。
「十年後の東京」実行プログラム、地域ケア体制整備構想、二十年度予算案、いずれも既存施策のバージョンアップの発想で、十分な対策が見えません。
都はこれまで、特別養護老人ホーム、いわゆる特養やグループホームなどの整備に対し特別助成を行い、低迷する整備率のアップに取り組んでまいりました。厳しい財政状況のときにも必要な分野に対し投資を惜しまなかった姿勢は評価します。しかし、都が調べた特養の状況でも、二百三十七施設中七十六施設が赤字施設で、建設後の運営が赤字構造であることがわかります。整備費に上乗せをしても、建てた後の運営の見通しが立たなければ新規参入者もふえず、既存法人も新たな展開ができません。地価などの物件費とともに人件費が高い東京都の課題であると考えます。
高齢化率の増加、高齢者数の増加に対応して、必要とされる介護基盤の整備促進の課題についてどう認識し、どう取り組んでいくのか、お尋ねをいたします。
答弁1
福祉保健局長
介護基盤の整備促進についてであります。都は、介護保険の保険者であります区市町村が地域の介護ニーズを踏まえて算定いたしましたサービス見込み料に基づき、計画的な基盤整備に努めてきておりまして、介護保険施設については、おおむね計画どおりに施設整備が進んでおります。
引き続き高齢化の進展により増大する介護ニーズに対応するため、区市町村と連携し、多様な手法を活用しながら、介護基盤の整備に努めてまいります。
質問2
大手事業者が各地に進出し、経営体力のある事業体でなければできないサービスを展開し、介護サービスが充実したようにも見えていた分野でありましたが、地域密着の地元事業者や社会福祉法人は、さきの介護保険法改正により、新たな事業に手を挙げる体力がありませんでした。
介護保険制度は、民間セクターの参入をオープンにしています。これは、NPO法人や株式会社、社会福祉法人といった各種法人の特性を制度に取り込み、多様なサービスを展開することが目的のはずです。
東京の高齢化率は着実に上昇し、平成二十七年には二四・二%、平成四十七年には三〇%を超えることが予想されています。十年、二十年後に、NPO法人や中小事業者、社会福祉法人など地元密着の法人が、安定した財務内容、確かな人材確保ができる規模に成長できるかどうかが、地域においてきめ細かなサービスが提供され、安心な高齢社会を築けるかぎになるといっても過言ではありません。事業者育成も重要課題であると考えますが、この点に関する都の見解を伺います。
答弁2
福祉保健局長
介護分野における事業者育成についてであります。現在の介護保険制度におきましては、多様な事業主体の経営者みずからが経営理念を確立し、サービスの内容に応じた職員の採用、育成に努めるなど、事業の発展に向けて取り組むことが基本であります。
そのため、都はこれまでも関係団体と連携し、福祉経営に関する研修の実施や福祉サービス第三者評価制度の推進など、経営者自身が課題を把握し、効果的、効率的な事業運営を行うことができるよう支援をしてまいりました。
今後とも、関係団体と協力し、事業者育成に努めてまいります。
質問3
こうした問題の根本は、全国画一的な介護保険制度と、その事業に従事する働き手の余りに低い報酬に原因があるのです。福祉に志を持つ若い人がふえ、資格者はふえましたが、報われなければ勤めは続かず、ほかの分野に行ってしまいます。介護従事者の給与水準は、全国の平均的な労働者を一〇〇とした場合九〇、東京の平均的な労働者の給与水準は一二〇、この差を埋めない限り、人手不足の解消、いい人材の確保ができないのは当たり前の話です。
東京都として望ましい介護報酬改定の実現、また、その実現に至らなかった場合、都独自の上乗せ、横出しをしない限りは、もはや職業として成り立たせることはできないものと思いますが、所見を伺います。
答弁3
福祉保健局長
介護報酬改定についてであります。都は、既に国に対し、東京における介護保険事業が将来にわたって安定的に運営できるための望ましい介護報酬のあり方について、具体的な見直しの方向性を示した提言を行っております。
引き続き大都市の実情や経営実態に見合う報酬水準となるよう、国に対して提案要求を行ってまいります。
質問4
次に、後期高齢者医療制度について申し上げます。
後期高齢者医療制度は、平成十八年六月に、国会において与党による賛成多数で可決・成立をいたしました。七十五歳以上の高齢者は健康診断をしても効果が薄いとして、国は財政補助しないなど、医療費削減ありきの強硬姿勢で、民主党の反対を押し切り法案を成立させました。
しかし、参議院選挙で与党が大敗した途端、制度の円滑な導入のためとして、補正予算に七十五歳以上の保険料負担延期に四百四十八億円、七十四歳までの自己負担増延期には千二百七十億円を計上し、負担凍結を打ち出しました。制度の根幹を凍結しなければ持たないような、この後期高齢者医療制度自体に重大な欠陥があることはもはや明白ではないでしょうか。その場しのぎで高齢者を欺くのではなく、抜本的に見直しをするべきであります。
また、保険料の高騰を防ぐため、都、区市町村からの財政出動が百億円を超え、このいいかげんな制度のツケを自治体財政、すなわち都民が負担をしています。都は、都民生活への悪影響を最小限にするとともに、国に対し、高齢者を支えるに足る医療保険制度改革を実現するよう強く求めていくべきと思いますが、所見を伺います。
答弁4
福祉保健局長
後期高齢者医療制度についてでありますが、この制度は、疾病リスクの高い高齢者を社会全体で支える仕組みであると認識しており、国に対し制度の抜本的見直しを求める考えはございません。
なお、都は、制度の安定的運営を図るため、高額医療費の一部負担や保険料の法定権限分の負担など、国や区市町村とともに、応分の役割と負担を担ってまいります。
質問1
次に、島しょ振興について伺います。
国じゅうを挙げて祝った小笠原諸島の復帰から、ことしは四十周年になります。硫黄島は沖縄と並び地上戦化し、父島、母島は本土決戦の要塞となった歴史があります。終戦後は米軍の占領下に置かれ、本土がサンフランシスコ講和条約発効によって主権を回復してからも、島の返還はさらに十六年間待たねばなりませんでした。
小笠原諸島は、国と都にとって、排他的経済水域や国防、海洋資源の調査、開発、災害救助の拠点、世界自然遺産の候補地など、その存在はますます大きくなっています。その島への高速アクセスの設立は村民の悲願ですが、国や都の計画は三度とんざし、そのたびごとに村民は大きく落胆させられました。
このたび、村民アンケートで七〇%の賛成を得て、航空路協議会が発足しました。自然環境、景観と振興の調和を図った航空路の早期開設に向けた検討を推進するとともに、改めて小笠原諸島振興開発特別措置法の延長を知事が国に直接働きかけるなど、返還四十周年に向けて情熱を示すべきだと考えますが、所見を伺います。
答弁1
知事
小笠原振興についてでありますが、小笠原諸島は人類にとっての貴重な自然の宝庫であり、沖ノ鳥島を含め、我が国の排他的経済水域の確保などの観点から、国益を維持する上で枢要な地域であります。また、本土から隔絶した離島であることから、交通アクセスの改善や情報通信体系の整備など、解決すべき大きな問題が残っております。
今後とも、同諸島においては、自然環境の保全と産業振興の両立による自立的発展を目指すことが大切であると思います。都としても、村民の意向を踏まえつつ、自然環境に十分配慮した航空路開設について検討を進めるとともに、国に特別措置法の延長を強く働きかけてまいります。
質問2
原油価格の高騰は、全国の離島、都では伊豆諸島と小笠原諸島の住民生活を直撃するとともに、十分な価格転嫁が困難な中小企業や農林漁業等の各業種に深刻な影響を与えています。そこで国は、原油高騰・下請中小企業に関する緊急閣僚会議を開催し、きめ細かで配慮の行き届いた離島対策として、島の生活を支え重要な交通手段である航路、航空路維持等に都と補助金を交付しています。
しかし、現在、島しょ地域、とりわけ小笠原村では、ガソリンが一リットル二百三十九円から二百六十四円という高価格を受け入れざるを得ない状況にあります。そこで、島しょ地域住民の生活安定と産業振興のため、実効性ある支援として、貨物運賃補助制度においてガソリン等燃料の輸送費を補助対象品目に加えていくべきだと考えますが、都の見解を伺います。
答弁2
港湾局長
島しょの貨物運賃補助制度におけますガソリン等への補助対象品目拡大についてのご質問にお答え申し上げます。
貨物運賃補助制度の対象品目や補助率につきましては、幅広く島民の生活や島の産業に還元されますよう、地元町村など関係者で調整し、取りまとめることとなってございます。
現在、地元町村など関係者との調整の上、プロパンガスや食用油、野菜や果物などの島民の日常生活を支える基本的な品目や島しょの産業を支えます魚介類、テングサなどの特産品を対象に補助を行っておりまして、対象品目に新たにガソリン等を加えることは難しいものと考えてございます。
質問1
次に、地方分権改革について伺います。
地方分権改革推進委員会の中間報告が昨年十一月、福田総理に提出されました。知事もみずから委員会で改革の必要性を訴えるとともに、都民向けに「地方の自立に向けて」を発表しました。
一方、国は、地方財政の悪化よりもみずからの財政再建を優先させ、地方財源による格差是正の動きを進めてきました。対して都は、大阪府や愛知県、神奈川県と緊急アピールを発表、都市間の連携を強め、分権に逆行する国の動きにノーを突きつけました。
しかし一転、知事は、三府県に断りなく、東京問題と法人事業税を交換する抜け駆けを行いました。本来、都は、地方や大都市を代表する立場から、より大きな視点での交渉が求められていたのではないでしょうか。これで都は、地方と、そして大都市との連携も分断してしまいました。知事は直後の知事会を欠席、みずから釈明する機会も放棄をしました。
今後、推進委員会は中間報告をもとに勧告を行い、二十一年秋には国が新分権一括法案を提出する等、動きを加速させます。地方税財政改革に逆行した汚名を返上するためにも、分権推進に向けてどう取り組んでいくか、知事の所見を伺います。
答弁1
知事
地方分権改革についてでありますが、まず、今回の法人事業税の見直しは税の原則にもとっておりまして、地方分権改革に逆行するものであり、到底納得できるものではありません。本来、分権改革を推進すべき立場である国こそが、この汚点を残しております。
しかし、今日の地方税制は国が一方的に決めることができる仕組みになっておりまして、過去二回、平成元年、また平成十七年にも改悪が行われ、そのたびに、これは地方に阻止するすべがない中で行われました。
最終的には、今回、福田総理との直接会談により、税制改正を、改正じゃありませんな、改悪を暫定措置にとどめさせるとともに、首都東京の重要施策について協議の場を設置し、最大限協力するという約束を取りつけてこれを推進しております。これが現実の政治であると考えております。
地方分権改革は、地方が真に自立するために、権限とそれに見合った財源を国から獲得し、みずから地域を主宰できるようにするものであります。分権改革を着実に推進していくためにも、国の地方分権改革推進委員会に対して、首都東京のかじ取りに必要な権限を拡大すべきであること、国の関与は一たん白紙にして最小限のものにとどめるべきであることなど六項目にわたる提言を行ってきました。また、委員会にも出席しまして、現場を知らない国の関与がいかに不合理であるかを指摘し、改革の必然性を明らかにしてきたつもりでございます。
しかるに、省益墨守に走る霞が関は、分権改革の意義をいまだに理解しようとしておりません。今後、国の委員会などの動きを見据えながら、地方の自立を実現する地方分権のあるべき姿を具体的に示し、都議会とも力を合わせて、国にその実現を強く求めてまいります。
質問2
また、道州制の議論も進んでいます。地方制度調査会の道州制のあり方に関する答申は、知事が説明したにもかかわらず、その区割りは、国の出先機関の管轄区域か都単独の区域が設定されており、知事は、全く実態の検証がないとばっさり切り捨てました。
都では自治制度懇談会が、道州制導入の意義や首都圏の広域的課題を検証して、区割りを一都三県の範囲でなければならないとまとめています。知事会は、真の分権に向けた道州制制度の導入を図るには、区域を国と地方双方の検討を踏まえて議論されるべきだとしています。
現在、地方格差の諸悪の根源は中央集権体制が持論の江口克彦座長が主宰する道州制ビジョン懇談会では、十年後をめどに道州制に移行する座長私案が提示されています。
我々は、制度を導入する上で、都や地方も自立的で持続可能な国のあり方や道州制ビジョンなどを構想するとともに、首都圏など地域の実態を踏まえた枠組みを実現するプロセスを検討していくことが重要と思いますが、都の見解を伺います。
答弁2
知事本局長
道州制の検討についてのご質問にお答えを申し上げます。
地方が真の自立を確立するためには、地方みずからの判断と責任で行財政運営を行うことが基本であり、まず地方分権改革を着実に推進する必要があると思います。
また、交通、通信手段の発達などによりまして、生活圏や経済活動圏が拡大し、単独の自治体のみでは解決が難しい広域的な課題も生じてきております。
都は、これまでもディーゼル車排出ガス規制などの広域的課題に対しまして、八都県市で連携して取り組み、成果を上げてまいりました。
地域の実態を踏まえた取り組みを積み重ねまして、単なる区割り論などではなく、具体的に広域的課題をどう解決するかという観点で検討することによりまして、地に足のついた道州制の議論につながっていくというふうに考えております。
質問3
次に、都区制度改革について伺います。
昨年一月、都と特別区は、都区のあり方検討委員会を立ち上げ、これからの都区のあり方について検討を開始しました。十二年改革では、区が基礎的な地方公共団体と位置づけられるとともに、清掃など三十三事業と約八千人の都職員が区に移され、可燃ごみの中間処理については一定期間、一部事務組合が共同処理を行うこととなりました。
地方分権の議論が進む中で、都と区は、さらに主体的に事務配分や特別区の区域のあり方、税財政制度を検討する必要に迫られています。東京富裕論や地方格差の見方が広がり、東京を取り巻く環境がますます厳しくなっているからです。こうした状況の中、都区はみずからのあり方を構築し、首都東京の未来を切り開く必要があります。
しかし、委員会は、具体的な上下水道事業移管の検討に入ったところで、事実上仕切り直しになりました。そこで、この状況を打開して議論を前進させるためには、十二年改革を総括し、議論の座標軸を確認した上で協議を進めていくことが必要と思います。残り期限が一年となった都区協議ですが、基本的方向性の合意に向けて都の決意を伺います。
答弁3
総務局長
都区のあり方の検討についてお答えを申し上げます。
平成十二年の都区制度改革は、特別区を基礎的な地方公共団体に位置づけるとともに、現行の区域を前提として、都区の役割を見直し、できる限りの事務移管を行ったものでございます。
これに対して、今回は、区域の再編を含めて事務配分の見直しを行うなど、都区のあり方を根本的に検討するものであり、東京の発展と都民、区民の生活向上を議論の共通の目的とすることが極めて重要でございます。
今後、地方分権の進展や都と特別区の置かれた現在の厳しい状況を十分踏まえまして、特別区と粘り強く議論を重ね、基本的方向の取りまとめに向けて力を尽くしてまいります。
質問1
次に、「十年後の東京」への実行プログラムと二十年度予算について伺います。
私たちは長年、都に長期計画の作成を求めてきました。平成十七年第三回定例会においては、都政の基本的指針として長期計画を示し、その中に実施計画、単年度予算を位置づけるという当たり前のことを行うことが、都政の未来に向かって職員のモチベーションを高めることにもつながると主張しました。
アメリカ・クリントン政権の経済再生コンサルタントであったデビット・オズボーン氏は、著書「行政革命」において、戦略計画の重要な要素は立案過程にあるとし、未来のビジョンに関する合意をつくり出すことで、組織または地域社会のメンバー全員が今後進んでいく方向に関する感覚が培われていく。これでリーダーだけでなく全員が自分が進んでいく方向を理解し、思ってもみなかったチャンスや危機に、トップからの命令を待たずに対処していくことができると記しています。
今回の予算編成において、合意のプロセス、内容の評価は別にして、「十年後の東京」という目標を置き、三カ年の実行プログラムにより、単年度予算の欠陥を補正する手法をとられました。こうした手法をとられたことについてどのようにお考えか伺います。
答弁1
財務局長
複数年度にわたる施策を進める財政面での取り組みについてのご質問にお答えをいたします。
都は従来から、現行予算制度における単年度主義の制約をいかに脱却していくかという課題に取り組んできております。
歳入面では、この間、基金の充実や都債残高の圧縮による起債余力の拡大などを行ってまいりましたが、これらは年度間財源調整機能を強化することにより、単年度主義の制約を乗り越えようとする取り組みでございます。
歳出面でも、従来から重点事業について三カ年のアクションプランを策定し、これを予算に反映するなど、複数年度にわたる事業の実施に計画的に取り組んでまいりました。
二十年度予算でも、「十年後の東京」への実行プログラムに掲げられた施策を積極的に予算化するとともに、中長期的な視点に立って基金の一層の充実を図っております。
これらは複数年度にわたる事業の計画的実施のための従来から行ってきた歳入、歳出両面での取り組みの積み重ねを一層発展させたものでございます。
今後とも、こうした成果を踏まえ、単年度主義の制約を乗り越える取り組みを引き続き各局と手を携えながら進めてまいります。
質問2
石原知事三選の公約でつくられた「十年後の東京」は、懇談会での議論や都民、区市町村から意見を聞く機会がなく、その政策決定過程は甚だ不透明です。
その後、実行プログラムの作成段階で初めて区市町村にその意向を聞き、企業などに説明を行ったため、かえって「十年後の東京」への疑問が噴出しました。こうした現状では、都民の理解を深め、協働を結び、広範囲なムーブメントを起こしていくことは、はるかに道遠しといわざるを得ません。それは、部活が盛んな中学校の実情と校庭芝生化、耐震補強などの低迷、CO2削減推進会議での紛糾、緑の東京募金をめぐる都の混乱などにあらわれています。
イギリス・ロンドン市のロンドンプランでは、策定に至る過程で、市は、住民や企業等との合意形成に相当な時間をかけて作成したといわれています。緑のムーブメントや耐震化、子育て推進プロジェクトなど、「十年後の東京」の中心事業の達成には、都民や区市町村等との連携、協働が不可欠であり、その仕組みをどうつくっていくかが重要ですが、知事にその見通しを伺います。
答弁2
知事
「十年後の東京」の実現に向けた仕組みづくりについてでありますが、「十年後の東京」で描いた近未来図を実現するためには、都みずからの取り組みはもとより、都民、企業、区市町村、地域などとの協働による東京の総力を挙げた取り組みが不可欠であります。
このため、実行プログラム策定に当たっては、すべての区市町村に意向調査を実施し、連携に万全を期すとともに、都政モニターを初め多くの都民の方々から貴重なご意見をいただいてまいりました。
また、緑の創出やCO2の削減、建物の耐震化、子育て支援など、社会全体で機運を醸成する仕組みが求められる課題については、組織横断型の戦略会議で検討を進め、その成果を積極的に反映させましたし、またこれからも反映させてまいります。
東京を支える多様な主体の英知と力を集結しまして、広範囲なムーブメントを展開しながら、環境との調和のとれた、美しく安全で住みやすい東京を実現していきたいと思っております。
質問3
次に、景気動向の変化への認識について伺います。
日本経済に大きな影響を与えるアメリカ経済は、サブプライムローン問題や中小金融機関などの破綻リスクのため、先行き不透明感が高まり、連邦公開市場委員会や政府による緊急金融、財政対策が行われています。
一方、国内においては、原油高や素材高、規制などが響き、都内中小企業の景況動向は悪化し、消費者心理も、株安や物価の上昇基調によって冷え込み始めました。日銀総裁による経済見通しは、先行きは当面減速、その後は拡大に変化しました。
都においても、法人二税が、十九年度最終補正との比較では一・六%の減、七年ぶりの減収になりました。都税全体では百六十九億円、〇・三%の横ばい、また環境CBOの発行も延期されています。
二十年度予算案を審議するに当たり、今後の景気動向と税収の見込みについて改めて伺います。
答弁3
主税局長
今後の景気動向と税収見込みについてでございますが、我が国経済は、ご指摘のとおり、米国経済の減速や原油など資源価格の高騰などの影響によりまして、今まで好調に推移してきた企業業績の減速が見込まれるなど、下振れのリスクが高まっております。
平成二十年度の都税収入は、こうした経済状況を踏まえ、十九年度最終補正後予算に対して○・三%の伸びにとどまる五兆五千九十七億円と見込んだところでございます。
都税収入は、これまでも景気変動の影響を受け、大きく増減を繰り返しているため、今後の景気の動きを注視しつつ、都税収入の動向を慎重に見きわめてまいります。
質問4
二十年度予算案は、都政史上最高の五兆五千九十七億円という堅調な都税収入を受け、一般会計は前年度比三・八%増、六兆八千五百六十億円の規模となりましたが、一般歳出は一・八%増の四兆四千百三十七億円にとどまりました。財政規模が同額の平成八年度当初予算と比較しても、抑制がきいた予算案となっています。十九年度の一般歳出の伸びと比べても、二十年度は鈍化しています。中期財政フレームからも、歳出では、基金や大規模施設の改修、負の遺産の処理といった備えと補てんの部分が目立ちます。
一方、これは十九年度最終補正、二十年度追加補正との一体化予算案であり、地方財政を当てにしたやりくり算段と禁じ手による国の一体化予算案に比べれば、新銀行への追い貸しを除いて、財政再建の結果が反映された予算案と認識しています。
しかし、二十年度予算において、都民が夢と希望を持てる東京とするため、民主党が要望した耐震や保育、小児医療、雇用、低所得者対策等にしっかりと取り組むことが重要と考えますが、知事の見解を伺い、都議会民主党を代表しての質問を終わります。
答弁4
知事
二十年度予算についてでありますが、今回の予算は、「十年後の東京」の実現に向けた取り組みを積極的に進めるとともに、これらの取り組みを継続的に実行できるよう、将来の備えを固めることにも力を注いでおります。
個別施策についても、お話の分野を含め、各分野においても多くの新規事業を計上するなど、積極的な施策展開を図っております。
今後とも、東京の直面する諸課題の解決に向け、全力を挙げて取り組んでまいります。