吉野利明(自民党)
平成二十年第一回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問いたします。
都財政は、息の長い景気拡大を反映した税収増や二次にわたる財政再建推進プランの取り組みにより、長く続いた財政再建の時代に区切りをつけることができました。
平成二十年度は、「十年後の東京」の実現に向け、本格的なスタートを切る重要な年となります。
二十年度予算の編成に当たって、我が党は、これまでの財政再建の成果を都民に十分還元するとともに、「十年後の東京」の実現に向けた施策を中心に効果的な財源配分を行い、将来の東京を展望する施策の充実を要望し、予算案に反映させることができました。
しかし、二月の月例経済報告では、生産の伸びに鈍化が見られるなど、国内景気の先行きに下振れリスクが強まっていることが指摘され、景気の基調判断は一年三カ月ぶりに下方修正されました。
都財政は、景気動向など外部環境の影響をとりわけ受けやすいため、景気変調の兆しに対し、十分な注意を払っていく必要があります。
加えて、昨年末には、法人事業税の一部を国税化し、三千億円を地方へ移譲するという国の動きがありました。
我が党は、都連選出国会議員と都議会議員でプロジェクトチームを立ち上げ、首都東京の役割や首都特有の財政需要について理解を訴えたところです。その結果、他の自治体や国にも理解が浸透し、当初一兆五千億円ともいわれた都への影響を大きく縮小させることができました。
さらに、我が党の取り組みや都の動きにより、今回の法人事業税の見直しについては、国の税制の抜本的改革までの暫定措置とされました。
また、東京が進める重要施策の実現に国が理解を示し、国と都の実務者による協議の場を設置することとなりました。この点は特筆すべきことであります。
我が党は、知事との緊密な連携のもとに、東京をねらい撃ちする国の動きに対しては、今後とも反対の姿勢を貫いていくことを申し上げ、質問に入ります。
質問1
初めに、新銀行東京について伺います。
かつて我が国は、経済有事ともいうべき事態に陥り、メガバンクのご都合主義によって中小企業への貸し渋り、貸しはがしが横行いたしました。これに対して、東京と日本の屋台骨を支える中小企業を救うために新銀行東京が設立されました。その志を是として、我が会派も設立に賛成したのであります。
しかし、開業からわずかの間に急激に経営が悪化し、今や危機的な状況になっております。
まず、新銀行東京の現状を知事はどのように受けとめているか、伺います。
答弁1
知事
新銀行東京の現況についてでありますが、東京と日本の経済を支え、まさにこの国の宝である中小企業が、ほんの数年前まで既存金融機関のご都合主義のきわみともいうべき貸し渋りや貸しはがしのために苦境に陥っておりました。これらの中小企業を救うために、新銀行東京を設立したものであります。設立の志に反して、予想をはるかに超える多額な不良債権が発生し、経営は不振をきわめ、資本金の約八割を失うまでになりました。追加出資が必要な事態に立ち至ったわけでございます。
こうした状況について、私の期待に反して、こうした展開が全く期待に異なったものでありまして、まことに残念無念、歯ぎしりする思いであります。また、都政を預かる知事として、ざんきにたえません。私も、新銀行東京を発案した者として、この結果について、当然もろもろの責任を痛感しております。
しかし、再建に向け、さまざまな手を尽くしてきましたが、事ここに至り追加出資金をお願いいたすことになりました。これがかなわずに、仮に新銀行東京を清算するような事態や、預金保険法に基づく破綻処理となりましたら、現在新銀行東京の融資により事業の行く先に光明を見出して懸命に頑張っている一万三千の中小企業に甚大な影響を与えることになります。都民にも、さらに膨大な負担をお願いすることにもなりかねません。困難な道ではありますが、今ここで、これを投げ出すわけにはまいりません。是が非でも立て直し、都民のお役に立つ銀行とするのが、私の最大の責任と思っております。
質問2
開業に当たって議会に対する説明では、こうした状況になることはよもやあるまいと思っておりました。こうした事態を招いた原因は何なのか、来る予算特別委員会でこれを明らかにしてまいります。
新銀行東京の経営不振は、ひとえに銀行の問題にとどまらず、多くの中小企業にとっても死活問題となりかねません。知事が施政方針でも触れられたように、多くの企業が新銀行東京により再生を果たしました。現在も一万三千社に上る企業が新銀行と取引をしており、これらに対して影響を与えることがあっては絶対になりません。
ただでさえ米国経済の減速懸念や景気の先行き不透明感、昨今の原油高により、経営環境は極めて厳しいものがあります。中小企業を取り巻く現状について知事はどのように認識しているか、伺います。
答弁2
知事
中小企業を取り巻く現況についてでありますが、原油価格や原材料の高騰、住宅着工の減少などを背景に、日本経済は減速感を強めつつありまして、中小企業は今まで以上に厳しい環境にさらされることが懸念されます。
我が国が経済的にここまで発展したのも、東京の中小企業が進取の精神で、果敢に技術革新に挑戦したからにほかなりません。中小企業が希望を持ってその事業に専念できないようでは、この国にあしたはないと思います。
繰り返して申し上げますが、現在一万三千社が新銀行東京の融資を受け懸命に頑張っております。また、今まで約九千社が新銀行東京の融資を契機に業績を回復させたことも事実であります。
サブプライムローン問題を背景に金融市場の低迷が予測されておりますが、そういう時代であるからこそ、中小企業の厳しい資金繰りに光を当てて、支援の手を差し伸べなければならないと思っております。
中小企業を支えていくために、より多くの施策、手段を用意することは、東京と日本の発展のために絶対に必要であると思っております。それゆえに、新銀行東京が今後も存続し続ける意義が十分にあると確信しております。
質問3
今般、新銀行東京の再建計画が示されました。これは、新銀行を再建させるためのものでありますが、中小企業を救うことに直結するものでもあります。極めて重要な計画であり、単なる絵にかいたもちに終わらせることがあっては絶対になりません。
その詳細については、今後の予算審議の中で精査をしたいと思っていますが、まず、この計画について知事はどのように評価するのか、また、実現に向けていかほどの決意を持っているのか、示していただきたいと思います。
答弁3
知事
再建計画への評価とその実現についてでありますが、新銀行東京は、デフォルトの圧縮を最優先とする経営改善に取り組む一方、他の金融機関との提携による再生や出資先の確保などさまざまな交渉を進めてまいりましたが、現段階では、いずれも調うまでには至っておりません。このことからも、今般、再建計画を策定し、追加出資を求めてきたものでございます。
今回、新銀行東京から提出された再建計画は、あくまでも資金繰りに窮する中小企業者への支援を存続していくことが目的であります。新銀行東京の再生が、中小企業の救済に結びつくことをぜひとも念頭に置いて、再建計画を受けとめていただきたいと思います。
都側においても、再建計画をさまざまな角度から検証いたしました。徹底したリストラと、着実に利益が見込める事業の重点化を行うなど、十分に実現可能性のあるものと評価しております。限られた選択肢の中では、もうこれしかないと思っております。
都との連携を初め、とり得るすべての手段を講じることによりまして、資金面で不遇な中小企業を救済し守り立てるために、不退転の決意で、この銀行を必ず再建させます。
質問1
知事の基本姿勢について何点か伺います。
都は、昨年末、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八を発表いたしました。一昨年十二月、石原知事は、これまで行ってきた先駆的な取り組みの実績を踏まえて、都にとって久しぶりとなる長期ビジョン「十年後の東京」を策定し、さらなる成熟を遂げる東京の将来像を明らかにしました。そして、さきの施政方針では、東京に先鋭的にあらわれる都市の課題を確実に解決し、東京から日本へ、さらに世界へと変革を広げる気概を持って世界の範となる都市を実現していく旨、明言されました。
我が党はかねてから、夢のある東京の将来展望を都民にわかりやすく示すとともに、その実現に向けた具体的な道筋を示すべきと主張してきました。今回、実行プログラムを三カ年のアクションプランとして策定し、「十年後の東京」の実現に向け、第一歩を踏み出したわけであります。
いよいよ構想から実行の段階へとステージを移すわけですが、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八策定に当たっての基本的考え方と、実現に向けてどのように取り組んでいくか、知事の所見を伺います。
答弁1
知事
「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八についてでありますが、日本の頭脳部、心臓部として発展してきた東京をより高い次元へ成長させ、次代に継承するため「十年後の東京」を策定し、目指すべき東京の姿を描き出してまいりました。
三期目の就任に当たって、私の最大の仕事はこの実現可能な近未来図の基礎固めだといっておりました。今回、その具体的な道筋をはっきり示せたと思います。
この実行プログラムは、「十年後の東京」を具体化するための実施計画として、三年後の到達目標を明示した上で、新規性、先進性を持つ取り組みや、従来より加速して進める取り組みなど、今後三カ年の事業展開を明らかにしております。
例えば、新たに三百六十ヘクタール、サッカーグラウンドにして五百面分でありますが、こういった緑を生み出すとともに、街路樹を現在の一・五倍の七十万本にも増加すること、あるいは羽田に関しましては、国際線発着枠の拡大や就航距離制限の見直しを国に強く求め、羽田空港の真の国際化を実現すること、あるいは、三環状道路の整備率を現在の四〇%から六〇%にまで高めること、大規模事業所に対するCO2総量削減の義務化や住宅用太陽光発電の四万世帯への導入など、本格的な地球温暖化対策に取り組むこと、待機児童の解消に向けて認証保育所などの整備をこれまでの一・五倍のペースに加速し、定員を一万五千人分増加することなどを盛り込んでおります。
今後、これらの意欲的な施策を迅速かつ着実に実行していくため、都みずからが総力を挙げて取り組んでいくことはもちろん、区市町村と手を携え、都民、企業、地域などを巻き込んだ広範囲なムーブメントを起こし、東京の持つ豊かな潜在力を引き出していきたいと思っております。
質問2
実行プログラムの策定は、二〇一六年東京オリンピック・パラリンピック招致を実現する上でも大きな意味を持つと思います。二十一世紀の都市モデル実現に向けた先進的な取り組みを展開し、アジアを初め世界に発信していくことは、極めて有意義であると考えますが、知事の所見を伺います。
答弁2
知事
実行プログラムの先進的な取り組みを世界に発信する意義についてでありますが、東京がさらなる成熟を遂げ、より機能的で魅力的な都市に生まれ変わるためには、「十年後の東京」を確実に実現していく必要がありますが、ここで提起した地球環境問題を初め、高齢化や高度な都市化に伴って生じるさまざまな問題は、二十一世紀の世界の大都市に共通するテーマでもあります。
都市のあり方そのものが地球の未来を決定する都市の世紀を今や迎えました。新たな文明秩序の創造が期待される今日、オリンピックもまた、二十一世紀にふさわしい姿が強く求められていると思います。
文明社会の光も影も知る東京ならではの複合的な政策を展開し、環境との調和はもとより、美しく安全で住み心地のよい都市の実現に向け具体的な行動を起こすことは、オリンピック開催にふさわしい都市として東京を世界へアピールすることになると思います。
今回の実行プログラムで示した先進的な取り組みを、二十一世紀の都市モデルへと飛躍する第一歩としてアジアや世界に発信し、都市の持つはかり知れない可能性を示していきたいと思っております。
質問3
次に、首都東京の重要な施策に関する国との協議について伺います。
さきの法人事業税の一部国税化に際し、石原知事は福田首相と直接会談し、今回の措置を暫定措置にとどめさせるとともに、十三項目に上る具体的なリストを示して、日本の発展につながる首都東京の重要施策に国が最大限協力するという約束を取りつけられました。
これを受けて、昨年末には早速、国の関係省庁の幹部と都の副知事、関係局長から成る実務者協議会の第一回目の会合が開催されました。リストで示した十三項目の内容は、羽田空港の国際化、三環状道路の整備、耐震対策、認証保育所の承認、治安対策、オリンピック招致など、いずれも国との強い連携がなくては進めることができないものであり、こうした重要施策を実現するため、国と都が一対一で協議する枠組みができたことは、画期的なことと考えます。
しかし、この協議には、国の厳しい財政状況などの理由から困難も予想されます。都は、具体的な成果を得るために今後どのように協議を進めていくのか、伺います。
答弁3
知事本局長
首都東京の重要施策に関する国との協議についてお答えを申し上げます。
第一回の国と都の実務者協議会が、昨年十二月二十七日に開催をされました。これを受けまして、今月十八日には、首都圏の広域的課題でもございます羽田空港の国際化について、千葉県などの参加も得まして、分科会が立ち上げられております。
道路整備や規制緩和などの項目につきましては、一つ一つの施策ごとに関係省庁と個別の協議を開始しております。
都は、今後の協議において、それぞれの施策が、東京が首都としての役割を果たしていく上で不可欠であることを国に十分理解をさせまして、確実な実現に向けて粘り強い交渉を進めていく考えでございます。
国の予算に関する事項につきましては、まず、本年夏の二十一年度概算要求に盛り込むことを目標にしております。
ご指摘のように、協議におきましては困難な状況も予想されますが、首都東京の重要施策の速やかな実現に向けまして、都議会の一層のご支援もいただきながら、知事のもと、全庁一丸となって取り組んでいく所存でございます。
質問4
次に、低所得者対策について伺います。
知事は、さきの施政方針の中で、懸命に努力しているにもかかわらず低所得の状態から抜け出せない方々への支援として、三カ年で三百億円を超える規模の緊急対策を実施することを表明しました。みずからの生活を向上させる意欲のある方が将来にわたって希望を抱ける社会を築いていくことは、東京の活力を維持していくためにも大変重要であります。
今後、事業をより実効性あるものにするためには、対象者へのきめ細かな対応と生活全般にわたる支援を行う必要があり、住民に身近な区市町村の協力が不可欠であります。低所得者対策を実施するに当たり、区市町村にどのような役割を期待し、具体的にどう取り組んでいくのか、伺います。
答弁4
福祉保健局長
低所得者対策についてでございます。
今回の緊急対策におきましては、住民に身近な地域で、対象者一人一人の実情を踏まえた効果的な対応を行っていく必要があることから、区市町村に相談窓口を新たに設けることといたしました。
この相談窓口では、低所得の方々に対して、その生活状況や所得、資産等を把握し、生活安定への意欲を確認するとともに、一定の要件を満たす方を職業訓練や生活資金等の無利子貸付制度へつなげるなど、きめ細かな支援を行ってまいります。
現在、区市町村を初め関係機関と緊密に連携しながら、円滑な実施に向けた準備を進めております。
質問5
生活安定に向けた支援策の中でとりわけ重要なのが雇用施策であります。キャリア形成が十分でないフリーターやパートの方などに対しては、職業訓練が有効であります。低所得者本人への支援として、実践的能力の付与のために職業訓練を実施すると聞いていますが、まず、訓練希望者の個々の状況を見据えて的確なアドバイスができる体制を整えることが必要です。
また、訓練終了者を採用する企業にインセンティブを付与するなど、企業の採用意欲を喚起することも必要です。
都はこれまで、しごとセンターなどにおいてさまざまな就業支援を実施してきましたが、低所得の方々の安定的な就業に向けて、さらに踏み込んだ対策を講じるべきと考えます。所見を伺います。
答弁5
産業労働局長
低所得の方々の就業対策についてでございますが、実施に当たりましては、本人への支援と企業への働きかけを総合的に行うことが重要であると考えております。
このため、職業訓練を希望する方に対しまして、新たに都内四カ所に専用の就業支援窓口を設置いたしまして、本人の職歴や企業の求人状況を踏まえて、職業訓練のあっせんや訓練後の職業紹介を実施してまいります。
また、現在、職業能力開発センターの人材アドバイザーを活用いたしまして、企業訪問によるニーズ調査を実施しております。この結果を用いまして、企業の採用につながる実践的な職業訓練や就業支援を行ってまいります。
さらに、訓練修了生を正社員として六カ月以上継続雇用した企業に対しましては、採用の負担軽減のため、助成金を支給いたします。
こうした施策を通じまして、低所得の方々の安定した就業の実現に努めてまいります。
質問6
サミットに備えた危機管理について伺います。
世界各地でテロが頻発しており、日本でもその危険性が指摘されています。そうした中、本年七月には洞爺湖サミットが開催されますが、平成十七年のグレンイーグルス・サミットでは、首都ロンドンで同時多発テロが発生し、市民に多数の犠牲者が出ました。サミットは北海道で開催されますが、ロンドン同様、政治経済の中心である首都東京も標的とされる可能性があります。
サミットの開催を控え、都民の生命や財産を守るためには、民間事業者を含めた警戒体制の強化を早急に図る必要があると考えますが、今後の取り組みについて知事に伺います。
答弁6
知事
危機管理についてでありますが、テロは、相手を選ばず攻撃を加える許しがたい暴力行為であります。
サミットの開催に合わせて、万一東京でテロが発生すれば、我が国の治安に対する信頼が揺るぎかねず、国を挙げて、断じて封じ込めなければなりません。このため、都としても、都の施設を総点検し、警戒の強化を図るとともに、国や関係機関、大規模集客施設を有する民間事業者と連携して、ターミナル駅周辺での警戒体制訓練を四月に実施いたします。
さらに、サミット直前には、警戒強化期間を設け、行政や民間事業者等で構成する警戒推進本部を設置し、官民を挙げたテロ防止対策を実施するなど、東京の危機管理に万全を期していきたいと思っております。
質問7
今般、中国産の冷凍ギョーザによる薬物中毒事件が兵庫県、千葉県で発生しました。薬物が混入した原因についてはいまだに解明されてはおらず、食品衛生上の問題というだけではなく、さまざまな方面から根本的な原因究明がなされるべきであります。
一方、食糧自給率が四〇%を下回る我が国では、輸入食品は、製品として輸入したもののみならず、原材料としての使用も含めて国民生活に深く浸透しており、そのような日常的な製品に危機が潜んでいるということに対して、都民の間には不安が広がっております。
また、輸入食品、食材に対する都民の不安は、その生産流通過程が複雑化し、不透明なものとなっていることにも一因があります。
国もようやく重い腰を上げ、輸入加工食品の安全確保策として、検疫所の食品衛生監視員の増員、加工食品への残留農薬の抜き取り検査の実施や食品輸入業者自身による輸出国段階の管理を強化するためのガイドラインの策定などの方策を打ち出したところであります。
都としても、国との役割分担を踏まえ、輸入食品に対する都民の安全・安心を確保するための対策を強力に推進するべきであります。
知事が施政方針で述べられた原料原産地表示の充実についても、食品表示の適正化、透明化をさらに推進し、東京の食の安全・安心を確保していくことが重要と考えますが、所見を伺います。
答弁7
福祉保健局長
食の安全・安心の確保についてであります。
輸入食品の安全確保は、国における水際での検疫が基本であり、都は、流通段階での監視、検査を強化してまいりました。
今回の事件発生に際しましても、都民の不安を解消するため、速やかに回収対象となった輸入冷凍食品の撤去状況を確認し、これらの製品に対する農薬検査を実施いたしました。
また、回収対象外の製品についても農薬検査を実施しているところであり、引き続き監視を強めてまいります。
さらに、現在、食品の原料原産地表示のあり方について、関係各局による食品安全対策推進調整会議におきまして検討を進めております。
今後とも、輸入食品を初めとした食品の安全・安心の確保に全力を尽くしてまいります。
質問1
平成二十年度予算案と十九年度補正予算案について伺います。
二十年度予算案は、「十年後の東京」など将来の東京を見据えた先進的な取り組みが数多く盛り込まれ、政策的経費である一般歳出の額が三年連続の増となるなど、施策展開に向けた積極的な姿勢があらわれた予算となっています。
我が党は、従来から、財政再建の果実を効果的な施策の展開によって都民にきちんと還元すべきであると強く主張してまいりました。今回の予算は、こうした主張を受けとめ、都市基盤整備や安全・安心など、都民生活にかかわりの深い多くの分野で施策の充実が図られているほか、地球温暖化対策や緑化の推進など、中長期的視点からの取り組みについても幅広く盛り込まれています。このような積極的な取り組みが東京をより高いレベルの成熟へと導く原動力となるものと考えます。
一方で、今回の予算は、都市と地方のいわゆる格差是正策として税制改正案が取りざたされるという、まさにそのようなタイミングで編成された予算であります。先行きの減収を見据え、将来の財政状況を勘案しながら現在の都民の期待にもきっちりとこたえていかなければならない中で、限られた財源をいかに配分するか、その困難さは想像するにかたくありません。知事ご自身、記者会見で、非常に際どい予算編成をしたと述べています。
そこで、二十年度予算に対する知事の基本的な考え方を伺います。
答弁1
知事
二十年度予算についてでありますが、二十一世紀の都市モデルを世界に発信することを目指す都政にとって、これから数年間の取り組みは、東京の未来の姿を決定づけるものとなります。その意味で、平成二十年度は、「十年後の東京」の実現に向けてアクセルを踏み込む最初の年となります。
したがって、今回の予算編成に当たっては、実行プログラムに掲げた施策を積極的に予算措置するとともに、十年後に向けた集中的な取り組みを今後継続的に実施していく道筋を、裏づけをもって明らかにすることが課題でありました。
一方、都財政をめぐる環境は、法人事業税の暫定措置によりまして、平成二十一年度、二十二年度の両年で六千億円もの大幅な減収が見込まれる上、国内景気の下振れリスクが高まり、都税収入の行く先も不透明感が増しているなど、急速に変化をしております。
厳しさを増す環境のもとにあって、施策の積極的展開と強靭な財政基盤の構築という二つの課題を同時に達成しなければなりません。この点で、なかなか厳しい、きわどい予算編成でありましたが、所期の目的は達成できたと思っております。
また、二〇一六年オリンピック招致を目指す東京が、さらなる成熟を遂げる都市の姿を築こうという意欲的な姿勢を内外に示す予算になったとも思っております。
質問2
二十年度予算において、都税収入は、法人二税の増などにより、前年度当初予算対比で二千億円の増を見込むことができました。しかし、日本経済を見据えると、原材料価格の高騰や米国のサブプライムローン問題に端を発した企業業績の不透明感の高まりなど、懸念材料には事欠きません。都税収入の先行きについても楽観一辺倒というわけにはいかない状況にあります。
そこで、二十年度における税収をどのように見込んだのか、また、今後の都税収入の先行きをどのように見込んでいるのか、伺います。
答弁2
主税局長
平成二十年度の都税収入についてお答え申し上げます。
我が国経済は、景気の回復がこのところ緩やかになっており、ご指摘の懸念材料などにより、上場企業の二十年三月期決算では一転して減速が見込まれるなど、企業業績に不透明感が増しております。
二十年度の都税収入は、こうした経済状況を踏まえ、十九年度最終補正後予算に対して〇・三%の伸びにとどまる五兆五千九十七億円を見込んでおります。
都税収入の先行きにつきましては、先般のG7声明で世界経済の下方リスクが指摘されるなど、日本の経済環境の変化が懸念され、予断を許さない状況にございます。
さらに、二十年度税制改正が実施されますと、法人事業税の暫定措置により、二十一年度以降、三千億円程度の大幅な減収が見込まれるところでございます。このため、今後の景気の動きを十分注視し、都税収入の動向を慎重に見きわめてまいります。
質問3
同時に編成された十九年度補正予算では、今回の税制改正を踏まえ、法人事業税の国税化による減収に備えるためとして、新たに基金を設置しています。そこにはあえて基金を新設した都としての意図があると考えられますが、法人事業税の国税化対策として新たに設置する基金の設置に当たっての考え方と設置の意義について伺います。
答弁3
財務局長
法人事業税国税化対策特別基金についてのご質問にお答えをいたします。
今回、新たな基金を設置することとした理由でございますが、まず、法人事業税に関する暫定措置によりまして、今後、都財政には多額の減収が見込まれるわけでございますが、その中にあっても、必要な行政サービスの水準については、これをきちんと確保するという都としての意志と姿勢を、基金を新設することで都民に明確に示すという点がございます。
これに加えて、十九年度最終補正予算で歳入歳出両面の洗い直しにより一定の積立額を確保したとはいえ、暫定措置による減収見込み額には遠く及ばないという事実を、特別の基金を設けることで率直に明らかにし、今回の暫定措置による影響の厳しさを、基金を今後一層充実させていくという決意を込めて広く訴えたいという面もございます。
新しい特別基金の設置を一つのばねといたしまして、早期に税制の抜本改革を実現すべく、今後とも都議会の皆様のお力添えをいただきながら、全力で取り組んでまいります。
質問4
次に、小笠原諸島の振興について伺います。
小笠原諸島は、昭和四十三年六月に我が国に返還されてから、本年で四十周年を迎えます。返還以来、小笠原振興のための特別措置法のもと、生活、交通及び産業施設といった社会基盤の整備が重点的に進められてきております。
しかしながら、本土との交通アクセスの改善、情報通信体系の整備など、残された課題も少なくありません。特に小笠原村民の悲願である航空路の開設については、自然環境との調和など多くの課題を解決していかなければなりません。
こうした状況の中で、小笠原諸島の振興の根幹となる小笠原諸島振興開発特別措置法は、平成二十年度末で失効しようとしています。今後、航空路開設の推進やさらなる振興策を展開し、自立的発展を目指していくためには、国の役割がより一層重要となります。
そこで、小笠原諸島振興開発特別措置法の延長を含め、今後の小笠原振興について知事の所見を伺います。
答弁4
知事
小笠原諸島の振興についてでありますが、小笠原諸島は、昭和四十三年の返還以来、特別措置法に基づき島民の生活に必要な社会基盤整備を重点的に進め、成果を上げてまいりました。
しかしながら、本土から隔絶した離島であるということから、交通アクセスの改善や情報通信体系の整備など解決すべき大きな課題が残っております。
加えて、人類にとっての貴重な自然の宝庫であり、沖ノ鳥島を含め、我が国の排他的経済水域の確保等の観点から、国益を維持する上で枢要な地域でもあります。
小笠原諸島は、今後も、自然環境の保全と産業振興の両立による自立的発展を目指すことが大切であります。このため、国に特別措置法の延長を強く働きかけるとともに、同諸島の振興を積極的に展開していきたいと思っております。
質問1
オリンピック・パラリンピックと東京国体について何点か質問いたします。
さきに行われた世論調査では、二〇一六年東京オリンピック招致に賛成の人は六割を超えましたが、知事が目標とする七割には届いていません。今後さらに賛同の輪を広げ、招致機運を盛り上げていくために、都内から全国へすそ野を拡大するなど、広範な招致活動が必要です。
こうした考えから我々都議会も、今月の上旬から、行政やふるさと特使とともに全国の道府県を訪問し、オリンピックの開催意義やもたらすものなどを伝えるとともに、招致への支援や協力を呼びかけました。行く先々では多くの賛同意見をいただき、国を挙げた招致活動を展開する端緒となったと考えています。
この間、開催基本計画や申請ファイルを公表し、平成二十年度の予算、定数ともに充実するなど、オリンピック・パラリンピック招致への基盤も整いつつあります。
さらに、六月にはIOCの理事会において立候補都市の承認が行われ、国際招致活動が解禁になります。熾烈な国際競争における勝機を含め、オリンピック・パラリンピック招致に対する知事の決意を伺います。
答弁1
知事
オリンピック・パラリンピックの招致についてでありますが、先日の東京マラソンは、まさに東京が一つになった大会でありました。経済効果も、わずか一日でありましたが、約二百二十億円と昨年を大きく上回り、人々に夢と希望を与えるすばらしいスポーツイベントとなりました。
マラソンに参加した、ソウル・オリンピック金メダリストのロザ・モタさんは、大会運営はまことに申し分なかった、東京はオリンピックの開催に値する都市であると評価して、東京の持てる力を世界にアピールしてくださいました。
いうまでもなく、招致のポイントは、IOCの委員の評価をいかに獲得するかでありまして、日本での開催意義、東京のすばらしさを訴えるために、国や経済界と連携し、国際的に活躍する人物、企業、在外公館などが持つさまざまなチャンネルを活用して、戦略、戦術的にこれを遂行していきたいと思います。
先般、都議会の皆様にご協力をいただきました道府県訪問でも、全国から心強い支援をいただきました。本当にありがとうございました。全国各地で招致機運を盛り上げ、日本が一つになって、オリンピック・パラリンピックの日本招致を実現したいと決意しております。
質問2
さて、ことしはオリンピックイヤーです。八月八日には北京オリンピックが開幕します。一月九日に北京市長から知事あてに開会式への招待状が届いたと聞いております。北京オリンピックは東京オリンピック招致のために重要な機会だと思いますが、知事は開会式への出席についてどのように考えているのか、伺います。
答弁2
知事
北京オリンピックの開会式への出席でありますが、北京オリンピックは、IOC委員や国際競技連盟の役員などオリンピック関係者も多数集まりまして、オリンピック招致に極めて有効な場であると思います。
また、現地に行ってみなければわからないこともたくさんありますので、行けば、東京オリンピック招致の参考になると考えております。日程の調整がつけば、ぜひ出席したいと思っております。
質問3
また、招致活動を行うに当たって、オリンピック招致本部と招致委員会が先頭に立ち、戦略的に取り組むとともに、都庁職員一人一人の意識を向上させ、職員が一丸となって都民、国民に熱い思いを伝えていくことが不可欠ではないかと考えますが、オリンピック招致本部長の決意を伺います。
答弁3
オリンピック招致本部長
オリンピック・パラリンピックの招致機運の盛り上げについてお答えいたします。
先日、都議会の皆様とともに全国の道府県を訪問し、日本招致に対する支援、協力を要請いたしました。都議会のご協力に心から御礼申し上げます。
訪問先のいずれの府県からも、オリンピックは明るい話題である、日本経済に好影響である、地元の観光振興の目標になるなど、日本招致に対する大きな期待が寄せられ、具体的な協力の申し出がございました。今回の訪問を踏まえ、今後、各地のイベントとの連携を強化し、全国挙げてPR活動に取り組んでまいります。
また、招致機運のさらなる醸成のために、まずはオリンピック招致本部と招致委員会が先頭に立つとともに、あわせて都庁の各局が連携して事業に取り組み、職員の意識を高めていくことが不可欠でございます。美しいまち東京の復活、環境負荷の少ない都市の実現、超高齢社会の都市モデルの創造、産業振興と人材の育成、文化・スポーツの振興など、各局事業を着実に実施することが、オリンピック・パラリンピックの招致につながるということを職員一人一人が改めて認識するとともに、昨年十月に設置いたしました庁内連絡会議をフルに活用いたしまして、全庁一丸となって招致活動に全力を展開していきます。
質問4
オリンピックの三年前には東京国体が開催されます。今定例会では、東京国体に向け、全会一致で力強く開催決議を行う気構えで臨んでおりますが、開催準備についてもいよいよ本格化する時期であり、各競技会の会場となる区市町村も準備に本腰を入れてきております。
そこで、東京国体の開催準備として、今後どのように具体的な取り組みを行っていくのか、伺います。
答弁4
総務局長
東京国体に向けての具体的な取り組みについてお答えを申し上げます。
昨年七月に、都議会を初め区市町村、経済産業界、スポーツ団体など、各界各層の方々にご参加をいただきまして、東京都準備委員会を設立いたしました。現在、競技会場の決定を行うなど、着実に開催準備を進めておりまして、二十年度からは区市町村の競技施設整備への財政支援を開始することとしております。
また、本年六月には、文部科学省及び財団法人日本体育協会に対し、都議会の開催決議を添えて、開催申請を行うこととしております。今後も都議会の皆様のお力添えをいただきながら、東京国体の開催準備に万全を期してまいります。
質問5
東京国体や東京オリンピック招致の成功に向けては、スポーツ選手の競技力の向上とともに、東京全体のスポーツムーブメントを高めていく必要があります。そのためには、スポーツ振興の拠点となる施設を計画的に整備し、重点的な取り組みを推進していくべきであります。
東京のスポーツ施設の現状は、区部では駒沢オリンピック公園や東京体育館など拠点となる施設が数多くあり、国際大会の開催を初め、小中高校生の大会や都民のスポーツ活動など幅広く活用されています。しかしながら、多摩地域にはそうした施設がほとんど存在していません。
東京国体のメーン会場となる味の素スタジアムの周辺には、以前から総合スポーツ施設を整備する計画がありましたが、現在は凍結状態にあります。
東京国体の開催に向けて陸上競技の補助競技場を整備する予定と聞いておりますが、東京全体のスポーツムーブメントを高める観点から、この際、これと一体となった新たな総合スポーツ施設をぜひ整備すべきと考えます。知事の所見を伺います。
答弁5
知事
総合スポーツ施設の整備についてでありますがスポーツは、肉体や精神を鍛え、豊かな人間形成を促進するとともに、世代や言語等の違いを超えた人々の交流を可能にする魅力を持っております。こうしたスポーツにだれもが親しめる社会を実現するために、スポーツ施設の果たす役割は大きいです。
また、スポーツ施設は、東京国体や東京オリンピックに向けてスポーツのすそ野を拡大し、計画的に競技力の向上を図る上でも重要であります。
このような観点から、これまでの計画を見直し、味の素スタジアムに隣接する都有地に、都のスポーツ振興に役立つとともに、多摩地域の拠点となるスポーツ施設を整備していきたいと思っております。
質問6
都は、さきに開催された秋田国体において、男女総合で第二位の成績を上げ、前回の兵庫国体の雪辱を果たしました。しかし、三位との得点差はわずかであり、少しも気を抜くことはできません。東京国体での総合優勝や東京オリンピックでの東京都選手のメダル獲得に向けて、今こそ都と関係団体が一丸となって競技力向上に取り組むべきであります。
三月末には、東京都競技力向上推進本部が競技力向上のための基本方針を取りまとめると聞いています。そこで、これまでの検討内容と今後の都の取り組みについて、所見を伺います。
答弁6
生活文化スポーツ局長
オリンピック招致や東京国体に向けた競技力向上についてでありますが、昨年七月に設置した東京都競技力向上推進本部では、選手強化体制の整備、指導者の確保・育成、医科学サポートによる支援の三つの観点から、東京都選手の競技力向上方策を検討してきました。
具体的には、東京育ちのアスリートを養成するためのジュニア選手の育成、強化方策を中心に、指導者やトレーナー等の派遣、大学等と連携した医科学サポート体制の整備等について議論を重ねてきたところであります。
都としても、今後、東京都競技力向上推進本部が取りまとめる基本方針を受けて、東京都体育協会や競技団体、区市町村と連携しながら、東京国体総合優勝を目指して、計画的に施策を推進してまいります。
質問1
地球温暖化問題について伺います。
いよいよ京都議定書による約束期間がスタートする年となりました。日本は、これからの五年間を通し、一九九〇年比で六%の温暖化ガス削減という国際公約を達成しなければなりません。
また、ことし七月の洞爺湖サミットでは、温暖化対策が最大のテーマとなり、さらに大幅な削減への新たな国際的枠組みづくりに世界の注目が集まります。
一方、オリンピック招致においても環境をキーワードとしており、東京の環境問題への取り組みがますます重要なものとなっています。
そうした中で、東京の環境先進性を世界に向けてアピールするためにも、都が国に先んじて示した温暖化ガス削減の数値目標達成に向け、取り組みを進めていく必要があります。
また、先般、都は、アジアの諸都市に日本の環境技術を紹介する初めての実務者会議を開催しましたが、今後ともアジアに対し、積極的に環境貢献を果たしていく必要があると考えます。あわせて知事の所見を伺います。
答弁1
知事
地球温暖化対策についてでありますが、世界の科学者が温暖化による地球環境の深刻な異変に警告を発しているように、地球にかかる負荷の蓄積は、もはや臨界点目前にまで達しておりまして、温暖化がもたらす破局的な事態を回避するためには、CO2を劇的に削減する必要があります。
二〇一六年のオリンピック招致実現においても、都市の環境先進性が大きな柱でありまして、東京を世界で最も環境負荷の少ない都市にしていくために、都は、動きの鈍い国の対応を待たず、思い切ったCO2排出削減対策を進めていきたいと思っています。
そのため、都市レベルでは世界初となる大規模事業所へのCO2排出総量の削減義務化など、先駆的な施策や環境学習の取り組み強化による省エネムーブメントの展開を着実に実施し、CO2の大幅な削減を可能とする二十一世紀の新しい都市モデルを提示していきたいと思っております。
また、アジアに対する環境貢献については、先般開催したアジア・エネルギー環境技術ワークショップで、東京の有するすぐれた環境技術を参加都市たちと共有しましたが、今後は、国際協力銀行との提携によりましてアジアの諸都市の環境改善に協力するなど、積極的に貢献していくつもりでございます。
質問2
温暖化防止に向けた取り組みには、都民、企業など、あらゆる主体が積極的な努力をすべきであります。そのためにも、都はそれぞれの主体が行うべき対策をわかりやすく示していく必要があります。大規模事業所に対しては、都は、我が国初の削減義務化導入の方針を示していますが、制度化に当たっては、対象となる事業者と十分な議論を行い、東京の実情にかなった実効性のある制度となるよう、最大限の努力を行うことを要望いたします。
また、温暖化ガスの総量削減のためには、中小企業対策も重要であります。約七十万の都内の中小事業所から排出されるCO2は、産業・業務部門の約六割を占めており、その対策を進めることで、CO2の排出削減ばかりでなく、事業者の光熱水費負担を減らすことにもなります。しかしながら、中小企業では、対策のための資金や技術面でのノウハウが不足している実態があります。
都は、来年度、省エネ診断や金融面での支援を強化していくこととしていますが、今後さらに中小企業の自主的取り組みへの支援策を充実していくべきと考えます。所見を伺います。
答弁2
環境局長
中小企業の温暖化対策への支援についてでございますが、都内の中小規模事業所は、産業・業務部門からのCO2排出量の約六割を占めており、かつ大規模事業所や運輸部門など、あらゆる分野における温暖化対策の展開を図る上でも、中小企業のCO2総量削減を一層促進することが重要でございます。
そのため、都は、新たに中小企業がみずから削減に取り組むことができる任意の報告書制度を構築するとともに、中小企業制度融資の充実、省エネ型ボイラーの普及など、具体的で実効性ある施策に取り組んでまいります。
また、東京都環境整備公社を地球温暖化防止活動推進センターに指定したことを契機に、公社を中小企業、家庭部門の温暖化対策の拠点として位置づけ、省エネ診断や設備の運用改善指導などをさらに充実するとともに、地域ごとの省エネ対策研修会の開催など、区市町村とも連携した施策を推進してまいります。
今後、こうした取り組みを着実に推進し、地域に根差して活動している事業者の意見を聞きながら、中小企業の温暖化対策を支援する施策の充実に努めてまいります。
質問3
また、家庭対策も中小企業対策に劣らず重要であります。その柱となるのが普及啓発や環境学習の強化によるライフスタイルの転換や、太陽エネルギー利用機器の普及拡大などの各家庭における具体的取り組みであります。
環境学習に関しては、次代を担う子ども一人一人が環境について深く理解し、みずから解決していくことを促すだけでなく、家庭や地域における行動へとつながるという面でも、極めて重要です。
二十年度から江東区では、全区の小学五年生を対象に、家庭で環境家計簿をつける取り組みを展開すると聞いています。このほかにも各区市町村では、それぞれの実情に応じてさまざまな環境学習が始まっています。
こうした状況を踏まえ、都においても環境について考え、行動する機会を積極的に提供するなど、東京が環境学習においてもトップランナーと評価されるよう取り組みを強化すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁3
環境局長
環境学習の取り組みの強化についてでありますが、地球温暖化を克服していくためには、都民一人一人の意識の醸成が不可欠であり、そのためには、環境学習の取り組みを一層強化していくことが必要でございます。
都は、これまでも毎年約七千人の児童に対するキッズISO一四〇〇〇プログラムの実施を支援し、また、企業、NPO等による出前授業などに取り組んでまいりましたが、こうした取り組みに加え、お話しの各区市町村が独自に実施しているプログラムも参考に、各学校がより積極的に環境学習に取り組むことができるよう関係各局が連携し、具体的な取り組みを呼びかけてまいります。
さらに、現在、中央防波堤の埋立処分場で行っている見学会を、環境学習について実感が得られるような学習の場として拡充してまいります。
質問4
また、太陽エネルギー利用機器の普及拡大については、都は、今後三年間で、住宅用太陽光発電など太陽エネルギー利用機器を四万世帯に導入することを明らかにしました。各家庭からの協力を得るために、このモデルプロジェクトで都が太陽光発電の環境価値を買い取る考えを明確に示したことは、ドイツなどの太陽エネルギー先進例を見ても、極めて意義深いものであります。
しかし、二〇二〇年に二五%のCO2削減を達成するという見地から見れば、四万世帯への普及というだけでは不十分なことも明らかです。百万キロワットの太陽エネルギーを創出するという大目標の達成には、三十万世帯を超える普及が必要となります。都は、このプロジェクトをモデルだけに終わらせず、大目標の達成に向けて大いに取り組んでもらいたいと考えます。
そのために、都は太陽光発電メーカー、住宅事業者など関連企業との連携をさらに深めるとともに、国を動かし、太陽エネルギー導入への取り組みを再開させることも必要であります。都の太陽エネルギー導入へ向けたイニシアチブで本格的な利用を実現していただきたいと思います。所見を伺います。
答弁4
環境局長
太陽エネルギー利用機器の普及拡大についてでございますが、太陽光発電につきましては、費用負担の軽減が大きな課題であることから、都は、太陽光発電の環境価値を買い取るとともに、発電機メーカー、住宅メーカーなどと連携して、現在の約二百万円かかる機器導入負担額を百二十万円程度まで低減させるなど、初期費用の負担を十年程度で回収可能にすることを目指してまいります。
こうした太陽光発電普及促進策に加え、太陽熱利用機器につきましても、新たに性能認証制度を立ち上げるなど、普及拡大に向けた準備を進め、二十二年度までに四万世帯に太陽エネルギー利用機器の普及を確実に実施してまいります。
これらの取り組みを通じまして、関連する多数の企業やNPOがそれぞれの役割と責任を果たすことで、日本じゅうの家庭が安心して機器導入できる状況を都のイニシアチブで実現し、二十三年度以降につながる日本の太陽エネルギー市場の本格的な再生を図ってまいります。
質問5
さらに、都庁みずからの対策も重要です。都は「十年後の東京」への実行プログラムにおいて、先進的な省エネ技術による低CO2型都市づくりを目指し、都庁としても大胆な率先行動をとるとしています。
都庁全体の事業活動で年間二百二十万トンのCO2を排出しており、四割以上が下水道事業によるものとのことです。
そのような中、下水道局では他に先駆けて、下水道事業における地球温暖化防止計画アースプラン二〇〇四を策定し、対策に取り組んできていますが、今後どのようにCO2の一層の削減に取り組んでいくのか、所見を伺います。
答弁5
下水道局長
CO2の一層の削減に向けた取り組みについてでございますが、下水道局は、これまでも汚泥の高温焼却や省エネルギー機器を導入するなど、積極的に温暖化対策に取り組んできており、平成十八年度にはCO2換算にして約十万五千トンの温暖化ガスを削減いたしました。
昨年末に、温暖化ガスの削減と同時に、資源化した汚泥を火力発電の燃料として活用する汚泥炭化炉を稼働させたところでございます。また、平成二十年度には、民間と連携して技術開発した成果を踏まえ、国内初の汚泥ガス化炉の建設に着手いたします。このガス化炉は、汚泥をガス化して発電に有効活用するもので、従来の焼却炉に比べて約八割の温暖化ガスを削減できるものでございます。
今後ともこうした新技術の開発、導入を進め、実行プログラムの目標年度でございます二〇一〇年度までに、二〇〇〇年度比で一〇%以上の温暖化ガスの削減に積極的に取り組んでまいります。
質問1
災害に強い都市づくりの推進のために、建物の耐震化について伺います。
南関東における大地震発生の切迫性が高まる中、震災によって首都東京が機能不全に陥らないよう万全の備えを行うことが必要であります。十三年前に発生した阪神・淡路大震災では、建物の倒壊が多くの人命を奪い、また、避難や消火、救急活動の大きな支障となりました。
東京の建物の実に四分の一が震災時に倒壊するおそれがあるとされており、耐震化の推進が急務となっていますが、どのように取り組むのか、知事の所見を伺います。
答弁1
知事
建物の耐震化についてでありますが、地震が怖くない東京の実現を目指して、昨年暮れに策定した「十年後の東京」への実行プログラムに基づきまして、喫緊の課題である建物の耐震化に全力で取り組んでまいります。
とりわけ、緊急輸送道路を最優先に確保するため、来年度から、全路線を対象に沿道建物の耐震化助成を行うなど、取り組みの強化を図ることといたしました。
建物の耐震化の実現には、まず所有者の意識啓発が不可欠でありまして、多様な手段を用いて広報事業を積極的に展開するなど、区市町村や民間事業者とも連携を図りながら、施策を強力に推進していきたいと思っています。
質問2
建物の耐震化を進めるに当たっては、所有者へのきめ細かな情報提供や地域の特性に応じた助成事業の実施など、区市町村の果たすべき役割が極めて重要です。都として区市町村の取り組みをどのように促していくのか、所見を伺います。
答弁2
都市整備局長
耐震化の取り組みの促進についてでございますが、建物の耐震化を進めるためには、自分たちのまちは自分たちで守るという観点からも、地域に身近な区市町村の果たす役割が重要でございます。しかしながら、区市町村によりましては、その取り組みに温度差が見られるため、今月初めに連絡協議会を開催し、取り組みの強化を促すとともに、必要に応じ、区長などに直接要請を行ったところでございます。
都は、これまでも技術、財政両面から区市町村の取り組みを後押ししてまいりましたが、来年度からは建物所有者への戸別訪問などの普及啓発事業に対する補助など、さらなる支援を行ってまいります。今後とも区市町村と十分な連携を図りながら、先日公表した地域危険度なども踏まえ、建物の耐震化を推進してまいります。
質問3
都内には、都心部などを中心に、昭和五十六年以前の古い耐震基準でつくられた分譲マンションが集積しております。また、多数の区分所有者の合意形成が必要な分譲マンションの耐震化を進めるには、戸建て住宅以上に困難が予想されます。
我が党は都に対し、分譲マンションの耐震化を促進するため、都内全域を対象とする新たな制度の創設を強く求めてきたところです。都としてどのように取り組みを行っていくのか、所見を伺います。
答弁3
都市整備局長
分譲マンションの耐震化への取り組みについてでございます。マンションは、建物規模が大きく、居住者も多いなど、被災時の影響が広く及ぶことから、耐震化の促進が重要でございます。このため、都は、来年度新たに耐震改修助成制度を創設し、旧耐震基準で建築された分譲マンションのうち、耐震診断の結果、改修が必要なものについて補助を行うことといたしました。
今後、区市町村に対しまして、本制度を活用した取り組みを促していくとともに、耐震改修には区分所有者間の合意形成が必要であることから、管理組合に対して働きかけを行うなど、マンションの耐震化に積極的に取り組んでまいります。
質問1
まちづくりについて何点か伺います。
まず、今後の都市基盤の整備について伺います。
東京の抱える慢性的な交通渋滞や都市型水害、緑やオープンスペースの不足などの大都市ならではの課題を解消し、後世に誇れる美しく安全な東京を築くことは、現代を生きる我々の重大な使命であります。そのためには道路、河川、公園などの都市基盤の整備を強力に推進していくことが不可欠であります。
しかしながら、ローマは一日にして成らずといわれているように、都市づくり、とりわけ都市基盤の整備は、一朝一夕にできるものではありません。「十年後の東京」で描かれている近未来図を実現するために、また、東京オリンピックの成功を確実なものとするためにも、これからの三年間は大変重要な時期であります。
そこで、今後三年間における主要な都市基盤施設である道路、河川、公園の整備目標と、その実現に向けた取り組みについて伺います。
答弁1
建設局長
今後三年間における道路、河川、公園の整備についてでありますが、「十年後の東京」が目指す成熟した都市の実現のためには、各施策の展開について明確な目標を設定し、着実に事業を実施していくことが重要であります。このため、平成二十二年度末における整備目標として、幹線道路の整備率を区部環状道路で九〇%、多摩南北道路で八〇%と設定いたしました。
また、豪雨対策促進エリア内の河川の治水安全度達成率を八四%、都立公園を七十ヘクタール開園、街路樹を七十万本に増加するなど、それぞれ具体的に目標を設定しております。
その達成を目指し、道路では環状第二号線、環状第六号線、調布保谷線、府中清瀬線等の整備を進めてまいります。河川では、妙正寺川、善福寺川の激甚災害対策特別緊急事業を完成させるとともに、古川地下調節池等を整備してまいります。
また、緑あふれる東京の実現に向け、武蔵野の森公園、舎人公園などの整備拡充や河川の水辺緑化を推進するとともに、街路樹の倍増に向けた施策を強力に展開してまいります。
今後とも広く都民の理解を得ながら、財源の確保や国及び区市町村との連携を進め、東京の基盤整備に総力を結集し、取り組んでまいります。
質問2
次に、道路整備のための財源確保について伺います。
人、物、情報が高度に集積している首都圏、特に大消費地である我が東京には、全国各地から多くの産物が集まるなど、東京と全国各地とは物流において強く結びついております。そのため、東京での物流におけるロスが全国での経済的なロスにつながってしまうのです。すなわち、東京の交通渋滞により生ずる経済損失や環境悪化は、東京のみならず首都圏、ひいては日本の発展のボトルネックとなるのです。
このため、首都東京の渋滞の解消はまさに日本の喫緊の課題であり、これまで以上に首都圏三環状道路を初め、幹線道路ネットワークや連続立体交差の整備を加速しなければなりません。
また、高速道路を利用しやすい料金体系の構築なども、国に求めていかなければなりません。
これらの施策の実現には、安定した財源である道路特定財源が不可欠です。しかし、国会では、道路特定財源諸税に課せられている暫定税率の撤廃や一般財源化など、道路整備の財源を減らそうとする動きが一部にあります。
確かに、暫定税率を撤廃すればガソリンの価格が一リットル当たり二十五円安くなり、消費者にとって聞こえのよいことかもしれません。しかし、その代償として道路整備のための財源が減少し、その整備が大幅におくれ、渋滞が解消されないばかりか環境も改善されず、我々国民の安全で快適な生活が実現できなくなるのです。
このように、歳入関連法案の不成立は国家の大計を見誤る無責任きわまりない話であり、そのツケは国民に返ってくることとなります。今こそ冷静になり、目先の利益に惑わされずに、我が国の将来を見据えて、国民生活の基礎的、社会的基盤である道路の整備に必要な財源を確保し、道路整備を着実に進めていくことが我々に課された使命であると考えております。
そこで、日本にとって不可欠な首都東京の道路整備のための道路特定財源確保に関する知事の決意について、改めて伺います。
答弁2
知事
道路整備の財源確保についてでありますが、東京都が持てる力を十全に発揮するには、三環状道路を初め、幹線道路ネットワークや連続立体交差などの早期整備が必要であります。
また、高速道路について、利用しやすい料金体系の構築や、既存のバス停などを活用したスマートインターチェンジの整備なども不可欠であります。
これらを実現し、我が国の国土形成の根幹をなす道路整備や関係施策を着実に進めていくためには、安定した財源の確保が必須であります。
このため、道路特定財源諸税の暫定税率を維持し、道路特定財源を本来の目的である道路整備や関係施策に集中的に投入するため、関係法案の年度内可決を強く訴えてまいりたいと思っています。
質問3
次に、外かく環状道路について伺います。
昨年十二月に中央環状新宿線の新宿─池袋間が開通した結果、毎日のように続いていた首都高速道路の渋滞が緩和されるなどの効果が早くも生まれており、改めて環状道路の必要性を実感しました。
外環については、知事や我が東京都議会外かく環状道路建設促進議員連盟など、都を挙げての国への積極的な働きかけが功を奏し、昨年暮れに国土開発幹線自動車道建設会議が開催され、外環の基本計画が決定を見たところであります。
基本計画の決定によって、外環は事業着手に向けて大きく踏み出したわけでありますが、着工には整備計画を国幹会議に諮り、これを定めることが必要であります。
外環は、東京のためだけではなく首都圏全体に便益をもたらす極めて重要な社会資本であります。外環の整備により渋滞、温暖化といった都市問題の解決が図られるとともに、我が国経済の活性化につながるものと考えます。
こうした観点から、今後、外環整備に向けて都が果たす役割はこれまで以上に大きなものとなると考えますが、外環の早期着工に向けた知事の決意を改めて伺います。
答弁3
知事
外環道についてでありますが、外環道は、首都東京の最大の弱点である交通渋滞を解消するのみならず、環境改善や国際競争力の向上など、広く国全体に便益が及ぶ重要な社会資本であります。
外環道の早期着工は、昨年十二月に福田総理に求めた十三項目の重要施策の一つでありまして、一日も早く整備計画を策定し、平成二十一年度に事業着手することを強く国に要求いたします。
都としても、その工程の短縮に向け、事業予定者である国とともに知恵を絞っていきたいと思っております。
質問4
次に、多摩都市モノレールへの経営支援について伺います。
都は、多摩都市モノレールに対する支援策として、会社に対する出資に加え、都の債権の一部を株式に切りかえる方策を示しました。多摩都市モノレールは、多摩の大切な足として地域の発展に不可欠な公共交通機関であり、我が党はこれまでも、会社の早期の経営安定化のために抜本的な経営支援の必要性を訴えてきました。
また、本定例会初日の監査報告でも、会社は経営状況、資金状況ともに課題が多いとの指摘がありました。今回の都の取り組みは、こうした主張や指摘に対応したものであり、将来に向けた会社の経営改善やモノレールの安定的な運行に寄与するものと考えます。
今回の思い切った措置により、都政の長年の課題の一つが解決されますが、このたびの経営支援について、知事の所見を伺います。
答弁4
知事
多摩都市モノレールへの経営支援についてでありますが、多摩都市モノレールは、多摩地域を支える重要な広域的公共交通機関でありまして、その安定的な運行を確保するためには、経営基盤の確立が不可欠であります。
このため、都が中心となって、沿線市や金融機関と協力し、債務超過の解消や資金収支の改善を行い、長期的な経営の安定化を図ることといたしました。
今回の措置により、一日十一万人を超える利用者の足が引き続き確保されることは、まちづくりや交流の促進など、多摩全体の発展に貢献すると確信しております。
質問5
今回の支援策においては、都が最大の出資者として支援の中心となるのは当然としても、周辺地域の人口増加や開発促進など、モノレールが沿線市の発展に寄与していることから、関係者が一致協力していくことが必要です。
また、都や市が貴重な財源を投じてモノレールを支援することを会社は重く受けとめ、より一層の経営努力が求められます。
そこで、都の出資のほかに、沿線市などの出資者や債権者がどのような取り組みを行うのか、また、会社に対してはどのような取り組みを求めていくのか、経営改善の具体的な内容と今後のスケジュールを伺います。
答弁5
都市整備局長
多摩都市モノレールへの支援についてでございます。
今回の支援は、都の金銭出資と債権の現物出資により債務超過を解消することに加え、市による固定資産税等の減免継続、金融機関による債務の償還期間の延長などによりまして、資金収支の改善を図ろうとするものでございます。
これらの支援を行うに当たりましては、会社の経営努力が前提でございまして、関連事業収入のさらなる増加策や経費削減策、さらには会社の将来像を盛り込んだ経営安定化計画を策定し、速やかに公表するよう求めてまいります。
今後は、予算の成立後、できるだけ早い時期に都の出資を行うとともに、市や金融機関においても速やかに償還条件を変更するなど、関係者と連携を図りながら、経営改善に取り組んでまいります。
質問6
次に、日暮里・舎人ライナーについて伺います。
地元都民にとって三十年来の悲願である日暮里・舎人ライナーが三月三十日、いよいよ開業します。これにより区部北東部の交通利便性が飛躍的に向上し、沿線地域の発展が促進されるものと期待しています。
この期待にこたえるためにも、この日暮里・舎人ライナーの運営をしっかり行うとともに、だれもが安心して気軽に利用でき、地域に親しまれ、愛される路線に育てていっていただきたいと思います。そこで、日暮里・舎人ライナーの運営に向けた決意について伺います。
答弁6
交通局長
日暮里・舎人ライナーの運営に向けた決意でございます。
本ライナーは、区部北東部の交通利便性の向上、公共施設などの整備を含めたまちづくりの推進や地域の活性化に大いに資するものであり、地元の期待も大きいものと認識しております。現在、国等による検査を受検するなど、本年三月三十日の開業に向けまして、必要な手続を着実に進めているところであります。
開業後の運営に当たりましては、安全を最優先にしつつ、便利で快適なサービスの提供に努めるとともに、経営の早期安定化を図ってまいります。
今後、より多くのお客様に利用され、地域とともに発展する日暮里・舎人ライナーを目指しまして、職員一丸となって取り組んでいく所存でございます。
質問7
開園五十周年を迎える多摩動物公園について伺います。
都市化が進み、カエルや昆虫、野生の生き物など、自然と触れ合う機会が少なくなった現在、子どもだけでなく大人にとっても、動物園や水族園の役割は大きくなっています。
都の施設では、開園から百二十年以上の伝統を持つ恩賜上野動物園、多摩丘陵の自然が残る多摩動物公園、身近な動物に会える井の頭自然文化園、マグロが回遊する葛西臨海水族園があり、それぞれ特性を生かした施設として評価されています。
現代は映像を通して世界じゅうのあらゆる自然や野生動物の生態を見ることができますが、実物を目の前で見、においをかぎ、命のぬくもりを感じることは、動物園ならではのものです。
私自身、子どもたちが象やライオン、小さな昆虫を見て大きな声を上げ、目を輝かせている姿を見て、環境の時代といわれている今日、生きている動物の姿を通して野生動物のすごさに感動し、地球環境を考える機会がいかに大切かを強く感じました。
こうした中で、都は平成十八年に多摩動物公園に野生生物保全センターを開設し、絶滅が危惧される動物の保護、繁殖の取り組みを強化したと聞いています。
ことし、多摩動物公園は開園五十周年を迎えるとのことですが、今後どのような動物園を目指していくのか、所見を伺います。
答弁7
建設局長
多摩動物公園についてでございます。
多摩動物公園では、広大な敷地を生かし、ライオンなどを群れで飼育展示する工夫を通して、生き物との出会いや楽しさを提供するほか、実際の授業に生かせるよう教員を対象としたセミナーを開催するなど、教育普及活動に力を入れております。また、昨年、国内で唯一、トキの分散飼育の受け入れ先として選ばれるなど、種の保全にも積極的に取り組んでおります。
本年五月には、開園五十周年を記念し、水浴びする水牛やインドサイ、飛び交う野鳥を間近に見ることができる、アジアの沼地をオープンいたします。
今後は、国内外の動物園などと連携し、オランウータンが生息する熱帯雨林の保全について啓発するなど、環境教育の充実を図るとともに、野生生物保全センターでは、絶滅が危惧される生物の生息地での種の保全にも貢献してまいります。こうした取り組みとともに、多摩の丘陵地の自然を生かした動物園として、生き生きとした動物の姿を見せる生態展示をさらに充実させてまいります。
コメント
また、私の地元にある井の頭自然文化園には、動物だけでなく、北村西望氏の作品を展示する彫刻園や小さな子どもが楽しめる遊園地もあります。
今後、都がこうした多様な資源をさらに生かし、井の頭自然文化園がより多くの都民に愛される施設となるよう要望し、次の質問に移ります。
質問1
産業対策について何点か伺います。
東京の産業は、多様な中小企業の集積と高度な技術力を強みとして、これまで日本経済をリードしてきました。しかし、アジア諸都市の台頭を初めとする国際競争の激化や少子高齢化の進展による人材の質と量の確保への懸念など、新たな局面を迎えています。
我が党はかねてより、時代の潮流を的確にとらえ、中長期的な戦略に基づいた産業施策を進めるべきと主張してきました。
これに対し都は、昨年三月、産業振興基本戦略において、十年先を見据えた産業振興の方向性を掲げるとともに、これを着実に具体化するため、産業振興指針を昨年十二月に策定しました。
指針には、東京の産業を牽引する中小企業の育成とともに、産業界全体の底上げなど、多岐にわたる内容が盛り込まれており、この指針の実現により東京の産業力の強化を多くの事業者が実感できるよう、全力で取り組んでいただきたいと思います。今後、指針の具体化についてどのように取り組んでいくのか、伺います。
答弁1
産業労働局長
東京都産業振興指針の具体化についてでありますが、指針では、多摩シリコンバレーの形成や産業人材の確保、育成など、今後三年間で実施する六十一項目に及ぶ重点的な取り組みを示しました。
これらの取り組みは、多様な企業の集積や高度な技術力など東京の強みを生かしたもので、着実に実施して指針を具体化するためには、関係者との連携が欠かせないものであります。
そこで、産業力強化会議の活用など全庁的取り組みを推進すると同時に、関係団体、区市町村に加えまして、八都県市首脳会議等を通じた近隣自治体との連携、協力を図り、施策の実効性を高めてまいります。
指針の具体化に全力を注ぎ、中小企業の技術・経営革新を促進してまいりますとともに、産業の基盤を強固なものとし、東京の産業を新たなステージに飛躍させてまいります。
質問2
多摩地域には、大学や研究機関とともに先端技術を有する企業が集積しており、これらが一体となって産産・産学連携など多様なネットワークを構築し、新事業の創出に絶えず取り組むことが「十年後の東京」で示された多摩シリコンバレーを形成する大きな原動力になると考えます。
都では、中小企業の技術力、経営力の向上に向け、平成二十一年度、昭島市に多摩産業支援拠点を整備するとしています。多摩シリコンバレーの形成を促進するためには、こうした個々の企業への支援強化に加えて、我が党がかねてから指摘してきたとおり、企業間の交流を活発化させていくハード、ソフト両面からの取り組みが必要と考えますが、所見を伺います。
答弁2
産業労働局長
多摩シリコンバレーについてでありますが、異業種、異分野間を含みます広域的な産業交流を促進いたしまして新事業を創出していくことは、多摩シリコンバレーの形成におきまして極めて重要であると認識しております。
このため、先端科学技術の集積地であるつくばとの産学連携の推進や、八都県市合同による新たな産産連携策を実施し、都域を超えた共同研究、共同開発を後押ししてまいります。
加えまして、広域かつ多様な企業間連携の中心となります交流拠点を八王子に整備をいたしまして、産業交流の一層の活性化を図ってまいります。
質問3
東京のものづくり産業は、高度で特色ある技術を持つ中小零細企業が支えています。しかし、大企業の多くが過去最高の業績を上げる一方で、都内中小企業は、業況判断指数、いわゆるDI値が二年十一カ月ぶりの低水準となるなど、厳しい状況にあります。大企業と中小企業が互いの信頼関係のもと苦楽を分かち合ってきた時代から、取引構造の変化や国際競争の激化に伴い、中小企業が経済成長の恩恵を受けることができない厳しい時代となりました。
さらに、下請企業の多くは、価格交渉力、決定力が弱いために、原材料価格高騰などによるコスト増の転嫁を不当に妨げる買いたたきなどの問題も生じています。
こうした状況を克服するには、中小企業がその持てる能力を最大限に発揮できるよう多面的な支援を行い、ものづくり産業全体の底上げを図っていくことが必要と考えますが、所見を伺います。
答弁3
産業労働局長
ものづくり産業全体の底上げについてでありますが、多様な基盤技術を有する中小企業の集積は、イノベーションの創出を支え、将来にわたり東京の産業力を向上させていく上で不可欠な存在であります。
しかしながら、都内中小企業におきましては、海外製品との価格競争の激化や大手企業との取引関係の不安定化など、依然として厳しい経営環境に置かれております。
こうした状況を踏まえ、来年度から、共同受注体制の構築や技術力強化に取り組む中小企業グループを支援するために、基盤技術産業グループ支援事業を展開してまいります。
さらに、下請取引の適正化に向けまして、取引における紛争を早期に解決するセンターを設置しますとともに、巡回相談体制を充実するなど、ものづくり産業の基盤を担う中小企業への支援を強化してまいります。
質問4
産業全体の底上げには、都内の各地域でより多くの新事業を創出することが必要です。東京には農林水産物、観光資源、伝統工芸品など、地域の活性化に活用可能なさまざまな資源が存在しています。例えば、三鷹特産のキウイフルーツを限定ワインとして販売するといった魅力ある地域の資源を生かしたビジネスが注目を集めるなど、創意工夫による事業がさまざまな地域で生み出され、新しいビジネスモデルとして芽生えようとしています。
都においては、こうした状況を的確にとらえ、地域資源を活用し、新たに地域密着型のビジネスに取り組む中小企業を総合的に支援すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁4
産業労働局長
地域密着型のビジネスへの支援についてでありますが、人々を引きつける観光資源や特色ある農産物などの地域資源を活用いたしまして、新製品の開発や新サービスを創出することは、地域経済の活性化を図る観点から重要であると考えております。
このため、都では二百億円の基金として、東京都地域中小企業応援ファンドを創設いたしまして、その運用益の活用により、地域に根差したビジネスを新たに展開しようとする中小企業やNPOの活動をきめ細かく支援してまいります。
質問5
次に、中小企業に対する金融支援について伺います。
昨年六月に施行された改正建築基準法のもとでの建築確認の遅延は、都内関連中小企業を初め社会全般に深刻な影響を及ぼしています。
我が党は、この点に大きな関心を払いつつ、国や都に円滑な資金供給のための働きかけを行うなど、さまざまな取り組みを行ってまいりました。
この結果、国においては、建築関連の三十五業種が不況業種として追加指定され、また、都においては、影響を受けているさまざまな業種を最優遇金利が適用される制度融資の対象に加えました。しかし、これらの対策は、あくまでも三月末までの時限の措置であります。
最近の住宅着工数の動向は、全国では持ち直しの気配が見えている一方で、都内においては低い水準での横ばい状態が続いており、特にマンションなどの大型物件では、減少幅がむしろ拡大する動きもあります。
こうした東京の特殊な事情を考慮し、都内中小企業の不安を払拭するためにも、現在、都が特別対策として実施している金融支援措置を継続して行う必要があると考えますが、所見を伺います。
答弁5
産業労働局長
建築関連中小企業への金融支援についてでありますが、ご指摘のとおり、平成十九年十二月の都内の住宅着工戸数の減少率は、前年同月比で四三・三%減と、全国平均の減少率であります一九・二%を大きく上回っており、都内の住宅着工の回復のおくれが際立っております。
また、住宅設備関連の業種につきましては、着工から設備工事着手まで数カ月程度の時間差があるために、建築確認のおくれに伴う影響が今後本格化するおそれがございます。このため、都内建築関連中小企業の資金繰りがさらに悪化する懸念もありますことから、現在実施しております制度融資の最優遇金利を適用いたしました特別措置を数カ月程度延長しつつ、引き続きその推移を見守っていきたいと考えております。
質問6
厳しい経営環境にさらされているのは、建築関連の中小企業にとどまりません。ガソリン価格を初め鋼材や石化製品、飲食料品の値上げが相次ぐ中、中小卸売や小売業者などの中小零細企業の多くは、仕入れコストの上昇を販売価格に転嫁できない厳しい経営を強いられています。
このため我が党は、金融支援強化についての申し入れを昨年十月に行い、都は、年末年始特別対策の一環として、原油高等の影響を受けている都内中小企業者に対し、制度融資の適用要件の緩和を図るなどの支援措置を講じました。しかし、これも三月末までの時限措置となっています。
深刻化、長期化する原油高等の影響に苦しむ都内中小企業者に対し、引き続き金融支援措置を講ずべきと考えますが、所見を伺います。
答弁6
産業労働局長
原油高などの影響を受けている中小企業への金融支援についてでありますが、中小企業庁が昨年十一月に実施をいたしました原油価格上昇による中小企業への影響調査におきましては、原油価格の上昇によりまして収益を圧迫されている企業が九割を超え、また、価格上昇を販売価格へ全く転嫁できないとする企業が六割に達しております。
このように厳しい経営を迫られております中小企業の経営の安定化を図り、東京の産業の底上げを実現するには、中小企業の資金調達の円滑化を支援する必要がございます。このため、年末年始特別対策が終了いたします四月以降におきましても、金融機関を初めとする関係機関と密接に連携を図り、中小企業に円滑に資金が供給されるよう、原油高などに対応した特別対策の実施を検討してまいります。
質問7
東京港と東京湾内の各港との連携について伺います。
港湾はまさに国際物流の玄関口であり、必要な貨物がスムーズに世界と行き来することが、生活関連物資の安価で安定的な供給や産業力の強化に資することになります。しかしながら、中国を初めとする東アジア諸港の躍進に伴い、日本発着の貨物は相対的に少なくなり、日本港湾の国際的地位は低下傾向が続いています。
これまで都は、コンテナ船の大型化への対応や港湾コストの削減、港湾物流の効率化など、官民一体となって、ハード、ソフトの両面にわたり東京港の機能強化に努めていますが、港湾を取り巻く厳しい状況を考えると、さらなる取り組みが必要であります。
東京湾には横浜、川崎など有数の港がありますが、全体としてとらえると、持てる力を出し切れていないのではないでしょうか。例えば東京港では、バンプールなどの施設容量の不足や背後道路の交通渋滞などが発生している一方で、他港では遊休施設が存在している現実もあります。
東京港と隣接している横浜港、川崎港などと港湾の経営について広域化を図り、東京湾全体の港湾機能を強化することが重要と考えます。
日本港湾の国際的地位を高め、世界の港と戦うためには、東京湾全体として国際競争力を高め、その上で東京港が世界屈指の国際貿易港となる意気込みで、各港と連携して広域的な港湾経営を図るべきと考えますが、知事の所見を伺います。
答弁7
知事
東京湾の広域的港湾経営についてでありますが、世界の港湾は、コスト削減や大規模な新規ふ頭整備を急ピッチで進めておりまして、熾烈な港湾間の競争のただ中にあります。この競争を勝ち抜くため、東京湾の各港は、それぞれの強みを生かしながら湾全体として総合力を高め、世界の港湾と立ち向かう時代に入ったと思います。
また、三環状道路の整備によって、首都圏を越えた広大な物流圏が誕生いたします。今後、この新たな物流体系を視野に入れ、巨大な需要を東京湾に取り込むための港湾経営の連携が必要となります。
このため、都は、都県境を越えたポートオーソリティーの設置も念頭に置き、東京湾が日本の物流の最重要拠点としての機能を今後も発揮できるよう、横浜港などと広域的な港湾経営について、一層連携を深めていくつもりでございます。
質問8
また、従来、欧米から直接届いていた貨物が、近年ではアジア諸港を経由する傾向が強まっています。この傾向が今後も続くならば、東京港は世界の主要港と直接つながらず、生活関連物資などの輸入貨物への輸送コストの増加により、国民生活に大きな影響を与えることになります。国際空港が主要都市との直行便の確保に力を注ぐのと同様、東京港に寄港する基幹航路の維持拡大を図っていくことが重要です。
世界の船会社がアジアにおける基幹航路の寄港地を選択する際に、東京港を初めとする東京湾が確実に選ばれるためにも、東京湾内の港が力を合わせることにより大きな力を発揮することができると思いますが、所見を伺います。
答弁8
港湾局長
東京港の国際基幹航路の確保についてのご質問にお答え申し上げます。
都はこれまで、港湾施設の充実や港湾コストの低減など、東京港の国際競争力の強化に努めてまいりましたが、近年、コンテナ船の大型化が急速に進み、貨物量の多い港に寄港地を絞り込む傾向が顕著になりつつあります。今後も東京港が首都圏四千万人の生活と産業を支えるメーンポートであり続けるためには、基幹航路の維持、拡大が喫緊の課題でございます。
一方、共通の背後圏を持ちます東京港、横浜港、川崎港、千葉港のコンテナ貨物量合計は、七百二十八万個でございまして、北米最大の港湾でございますロサンゼルス港に迫る規模を有しております。このため、各港が広域的に連携して東京湾の総合力を高め、その存在感を世界に示すことで、東京港を初めとする東京湾に基幹航路を呼び込む大きな力を形成できるものと考えてございます。
質問1
福祉・医療について伺います。
生涯のうちがんにかかる可能性は、男性で二人に一人、女性で三人に一人といわれ、がんは都民にとって身近な脅威となっています。がんにかかりにくい健康的な生活習慣を身につけ、がんを予防することが重要なことはもちろんですが、がんにかかっても、早期に発見し、完治したいというのは、都民の共通の願いであります。
都では、がん対策基本法に基づき、がん対策推進計画を本年度中に策定するため、現在、鋭意検討を進めていますが、この計画の基本的な方向性と具体的な施策について伺います。
答弁1
福祉保健局長
東京都がん対策推進計画についてでありますが、本計画は、平成二十年度を初年度とする五カ年計画として、本年度末までに策定を予定しております。
その基本的な方向といたしまして、予防の重視、高度医療の総合的な展開、患者や家族の方の不安軽減、がん登録や研究の推進の四つを柱に位置づけまして、現在、東京都がん対策推進協議会において検討を進めております。
具体的な施策といたしまして、健康的な生活習慣の普及や検診受診率の向上、がん診療連携拠点病院及び東京都認定がん診療病院の整備、相談支援センターの拡充や早期からの緩和ケアの実施、さらには、がん登録の拡大や負担の少ない検査法の開発などを盛り込みまして、がんに負けることのない社会の実現を目指してまいります。
質問2
また、今日、胃がん、乳がん、大腸がんなどは、定期的に検診を受診し、早期に発見、治療をすれば、完治も十分に可能といわれております。しかしながら、我が国におけるがん検診受診率は二割程度と、欧米諸国に比べて極めて低く、東京も例外ではありません。
検診の受診促進は、がんの脅威による都民の不安を抑え、がんを克服するための最優先課題として取り組むべきと考えます。都は、がん検診受診率の目標を五〇%としておりますが、これを達成するための方策について伺います。
答弁2
福祉保健局長
がん検診受診率の向上についてであります。
がん対策を進める上で、検診の受診を促進し、がんの早期発見につなげることは極めて重要でございます。
このため、これまでの乳がん予防に関するピンクリボン運動に加えまして、今後は、死亡率が高い大腸がんについても意欲的にキャンペーンを展開している民間団体と協働するなど、受診行動に結びつく効果的な普及啓発を行ってまいります。
また、区市町村に対しましても、五年後の受診率の目標などを盛り込んだがん予防計画の策定を求めてまいります。
さらに、職域への働きかけを新たに進めることとし、企業等におけるがん検診の実態調査を行い、効果的な取り組み事例を紹介するとともに、とりわけ乳がんについては、職場での受診を促進するため、マンモグラフィー検診車の整備を支援してまいります。
質問3
検診の結果、万が一がんが見つかった場合、都民の生命を守るのは、最後には医療であります。都では、我が党の提案を受けて、来年度から高度な診療機能を有する病院を認定する制度を新たに創設するとしておりますが、この東京都認定がん診療病院と国が指定するがん診療連携拠点病院とを有効に活用してこそ、都全体のがん医療水準の向上につながると考えます。所見を伺います。
答弁3
福祉保健局長
都全体のがん医療水準の向上についてであります。
医療機関が集積をする東京の特性を最大限に活用し、国の拠点病院制度に加え、これと同等の高度な診療機能を有する病院を東京都認定がん診療病院として、来年度、都独自に十カ所認定をいたします。
すべての認定病院は、放射線療法や外来化学療法の実施、セカンドオピニオンの提供、相談支援センターの設置や院内がん登録を実施するほか、拠点病院とともに、地域の医療機関に対する研修や地域連携に取り組んでまいります。
今後、これらの認定病院と十四カ所の拠点病院を中核といたしまして、地域医療機関を含めた専門的ながん医療の提供体制を整備し、都全体のがん医療水準の向上を図ってまいります。
質問4
次に、保健医療計画の改定に関して伺います。
今後、医療連携体制の構築を進める上で、急性期医療後の患者が引き続き安心して入院し医療を受けることができる環境を整備することが重要な課題であります。
国は、介護療養病床の廃止など療養病床の削減を進めておりますが、都においては、必要な療養病床数として二万八千床を示したことは大いに評価できます。今後、都としても医療機関における療養病床の確保に対して積極的に支援していくべきと考えますが、所見を伺います。
答弁4
福祉保健局長
療養病床の確保についてであります。
さまざまな疾病を抱える高齢者などが急性期の治療を終えた後でも、引き続き適切な医学的管理を受けながら療養できる体制の整備が重要でございます。
都においては、今後、急速な高齢化の進展が見込まれている中、全国的に見ても、高齢者人口に比べて療養病床数が少ないことから、現在改定を進めている保健医療計画では、必要な療養病床について、現状を上回る二万八千床としております。
今後、療養病床を確保していくため、一般病床から療養病床への移行等に要する経費に対しまして、都独自の整備費補助制度を創設し、医療機関の支援に努めてまいります。
質問5
次に、救急医療体制について伺います。
救急医療は、医療の原点であります。都においては、医療機関の協力を得て、全国に誇る救急医療体制が確保されており、特に、入院治療に対応する二次救急医療は、都内の約四割、二百六十四の病院で、休日やすべての夜間の診療体制を確保しています。そして、都民からの搬送要請の約八五%が救急隊の一度ないしは二度の依頼で受け入れ病院が確保できている状況からも明らかです。
しかしながら、報道では、救急患者のたらい回しが大きく取り上げられ、都内においても、複数の病院に受け入れを断られ、搬送先の病院でお亡くなりになったという事例が報道されました。
この問題は、救急搬送要請の増加、軽症患者が救急病院に集中する傾向、さらには医師不足などによる医療機関側の疲弊など構造的な問題が背景にあり、都内においても、救急隊の病院選定にかかる時間が増加傾向にあるとのことであります。しかし、さまざまな事情、要素があったとしても、救急医療の救急たるゆえんは、急に臨んで救うことにあると考えます。
そこで、迅速かつ適切な救急医療の確保について、知事の所見を伺います。
答弁5
知事
救急医療についてでありますが、都は、これまでも救命救急センターを二十二カ所整備するなど、充実した救急医療体制を確保してまいりました。
しかしながら、先般、救急病院の選定に困難を来し、不幸な結果となった事案が都内でも生じたことは、大変残念であります。
救急医療の現場は、都民の生命を守るため日夜奮闘しておりますけれども、昨今の救急患者の増加や複雑困難なケースへの対応、さらには医師不足の影響などによりまして、厳しい現況となってきております。
このため、都内の救急医療体制の総点検を指示したところであります。先日も、東京消防庁に、一一九番に連絡すべきかすべからざるかで迷っていらっしゃる、比較的良心的な患者や家族のためのトリアージ的な相談に当たるセンターを、これはお医者さんが付き添っておりますけれども、視察してまいりました。こういったものをさらに充実することで、救急担当医療者の労働も少し軽減し、かつまた需要に的確に応じる、そういった体制を整えていきたいと思っております。
迅速、適切な救急医療の確保は、都民のまさに生命に直結するものでありまして、都政の最重要課題の一つであり、安心できる医療の実現に今後も努めてまいります。
質問6
また、都では、救急医療対策協議会を開催し、既に検討を開始していると聞いていますが、どのような方向性での検討を行うのか伺います。
答弁6
福祉保健局長
救急医療対策協議会での検討についてでありますが、都民の救急医療に対する安心と信頼を確保するために、この協議会におきまして、救急医療を提供する医療機関、患者搬送を担う消防機関、医療を受ける立場の都民など、救急医療にかかわるさまざまな関係者が一堂に会して検討を開始いたしました。
協議会では、救急医療の現場の実態を精査の上、病院選定の迅速化に向けました救急医療情報システムの強化や、患者の円滑な受け入れを行うための地域の医療機関の連携などについて早急に検討するとともに、都として対応可能なものについては、緊急に取り組んでまいります。
質問7
次に、介護保険制度について伺います。
近年、企業の求人が活発化する中で、介護の現場では人材の確保が困難な状況にあります。また、将来の介護人材を養成する専門学校においては、定員割れという事態も生じているとのことであります。介護人材の不足は、利用者へのサービスの低下につながるだけでなく、人員の配置基準を維持できず、入所者数を減らさなければならない事態も生じかねないなど、施設関係者は現在の状況に強い危機感を持っております。
国は、昨年八月、人材確保に関する基本的な指針を示しましたが、来年度予算には、具体的、効果的な施策については、何ら盛り込まれておりません。
一方、都は、大都市の特性を踏まえた望ましい介護報酬のあり方について、国に対して提言を行うとともに、社会福祉審議会からも人材の育成等について意見具申が出されております。今後、介護保険施設などの実態を踏まえ、都として介護人材の育成、確保にどのように取り組んでいくか伺います。
答弁7
福祉保健局長
介護人材の育成、確保についてでありますが、介護の現場における人材の確保は厳しい状況にあり、都では平成二十年度から、就労定着をも視野に入れた総合的な育成、確保策を講じることといたしました。
具体的には、介護福祉士等修学資金の償還免除に必要な就労期間を七年から五年に短縮するほか、民間会社を活用したキャリアカウンセリング等による再就職の促進や、区市町村における有資格者の資質向上に向けた研修への支援を行ってまいります。
また、現在、東京都社会福祉協議会が実施をしております福祉施設のネットワークを活用した合同採用など、先駆的な取り組みについても積極的に推進をしてまいります。
あわせて、大都市にふさわしい介護報酬のあり方について、引き続き国に提案要求を行うとともに、今後とも、関係機関と連携した人材の育成、確保策を展開してまいります。
質問8
また、介護サービス事業者にとって、安定した経営基盤の確保も重要な課題でありますが、たび重なる介護報酬の減額により、事業所の運営は厳しい状況にあります。こうした中、利用者のサービス選択に資する目的で導入された介護サービス情報の公表制度は、サービス内容を統一の基準により公表できるという利点はあるものの、事業者にとって、事務的にも経済的にも過重な負担の一つとなっているという意見もあります。
都としては、良好なサービスを確保しつつ、事業者の負担を軽減するような方策を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
答弁8
福祉保健局長
介護サービス情報の公表制度についてであります。
本制度は、介護保険サービスの利用者がより適切に事業者を選択できるよう、平成十八年四月の介護保険法の改正により導入されたものであります。
ご指摘の事業者負担の軽減につきましては、都は、これまでも国に対して、毎年行うこととされております事業者への実地調査について、調査周期や確認方法のあり方などを改善するよう提案をしております。
さらに、事業者が負担する公表や調査に要する手数料につきましては、制度導入後二年を経過することから、その運用実態を踏まえ、適切に見直しをしてまいります。
質問9
都立病院改革について伺います。
都立病院は、救急医療や周産期医療などのいわゆる行政的医療の提供を基本的な役割に位置づけて、これまでも東京ERやPFI手法による再編整備など、全国に先駆けた取り組みを進めてきました。
一方で、全国的に勤務医が不足する中で、都立病院でも産科など特定の診療科の医師不足は深刻であり、このまま放置すれば行政的医療の提供に大きな影響を与えかねません。
加えて、来年度の診療報酬改定においては、本体部分はプラスとなるものの、薬価等を含む全体では四回連続のマイナス改定が予定されており、病院経営は依然として厳しい状況に置かれています。このように、医療を取り巻く環境が厳しい中にあっても、都民が安心して生活を送るためには、都立病院がその使命をしっかりと果たしていくことが不可欠であります。
こうした中、去る一月末に、第二次都立病院改革実行プログラムが公表されました。この実行プログラムは、都立病院が今後五年間の取り組みを進めていく上での重要な指針となるものですが、その基本的な考え方について伺います。
答弁9
病院経営本部長
第二次都立病院改革実行プログラムの基本的な考え方についてでございますが、都立病院では、限られた医療資源を最大限有効に活用するため、総務省が昨年末に策定いたしました公立病院改革ガイドラインに先駆けまして、PFI手法による再編整備など、病院の改革に努めてまいりました。
しかしながら、この間、医療を取り巻く環境は大きく変化し、産科などの勤務医の不足が医療の根幹を揺るがす深刻な問題とされる一方で、医療サービスを受ける患者側の意識も変化し、みずからの病気や治療方法を理解し、納得のできる医療を受けようとする意識が高まっている状況にございます。
こうしたことから、本プログラムでは、ハード面の整備を着実に推進するとともに、ソフト面にも重点を置いた都立病院改革を推進することとしておりまして、優秀な医療人材の確保、育成、活用と、患者さんに対する医療サービスや患者満足度の向上など、医療サービスの提供側、利用側の双方の、人を重視した取り組みを柱としているところでございます。
このプログラムで計画化した事業を着実に推進することによりまして、急激に変貌する医療環境の中にありましても、都立病院の使命である行政的医療を都民の皆様に対して将来にわたり安定的に提供してまいります。
質問10
今回の実行プログラムで掲げた取り組みを着実に実施していくためには、直面する医師不足の問題に迅速に取り組み、優秀な医療人材を確保、育成することが必要なことはいうまでもありません。
我が党は、昨年の第四回定例会における代表質問で、都立病院での医師不足への早急な対応を求め、それに対し知事は総合的な医師確保対策を講じることを確約されました。この実行プログラムでは、そうした内容も反映した戦略を打ち出していますが、都立病院の医師の確保、育成に向け、具体的にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
答弁10
病院経営本部長
都立病院における医師の確保、定着に向けた取り組みについてでございますが、ご指摘の、昨年の第四回定例会でのご議論を踏まえまして、第二次都立病院改革実行プログラムでは、全国自治体で低いレベルにありました都立病院医師の給与につきまして、特に不足する産科医師や医療の中核を担う部医長を中心に大幅な改善を図りますとともに、増加する女性医師等への継続的就労支援策といたしまして、育児短時間勤務制度の活用や二十四時間院内保育の実施など、総合的で具体的な対策を盛り込むことができたというふうに考えております。
また、医師の過重労働の軽減を図るための医療クラークにつきましても、国に先駆けまして、昨年から東京ERでの試行を開始いたしました。こうした具体的な計画や取り組みによりまして、既に医師の採用環境には一定の手ごたえを感じているところでございます。
さらに、来年度からは東京医師アカデミーを開校することによりまして、若手医師の育成にも直接取り組むなど、今後とも質の高い医師の安定的な確保、定着に向けて全力を尽くしてまいります。
コメント
また、実行プログラムでは、都立病院の経営形態に関して、詳細な検討を行うとともに、他の自治体病院における導入事例について十分な検証を行うこととされています。経営形態の検討については、都議会での議論を十分踏まえた上で、慎重に進めることを改めて強く要望して、次の質問に移ります。
質問1
教育関係について伺います。
昨年十二月、都教育委員会は、全国学力・学習状況調査の結果について公表しました。都の児童生徒の学力の評価や課題、生活環境や学習環境への指導上の改善の視点が明らかにされています。
今、都教育委員会では、どのように児童生徒の学力向上を進めていくかという問題や、教員の大量退職時代を迎え、質の高い教員をいかに養成、確保していくかという問題、さらには、地域の協力を得た教育のあり方など、さまざまな課題を抱えています。
国においては、中央教育審議会で、教育振興基本計画の策定や学習指導要領の改訂など教育改革の取り組みについて検討が行われています。
こうした中、都教育委員会は先月、東京都教育ビジョン(第二次)中間まとめを公表しました。「十年後の東京」の考え方を踏まえた取り組みの方向性や重点施策が示されていますが、今後、さらに都民の幅広い意見を聞き、実効性のある施策を構築することにより、東京の教育改革をさらに進め、日本の教育をリードしていくことを期待するものであります。
教育は、いつの時代も国家、社会の発展の礎となるものです。次代の社会の発展を担う力を持った人材を育成することは、資源に恵まれない我が国にとって、何よりも重要なことと考えます。東京都が目指すこれからの子どもたちに身につけさせたい力と、それに向けて施策をどう進めていくのか伺います。
答弁1
教育長
子どもたちに身につけさせたい力と施策の進め方についてでございます。
変化の激しいこれからの社会の中で、子どもたちが自分の未来を切り開いていくためには、生きる力をはぐくむことがますます重要でございます。
とりわけ、みずからに自信を持ち、さまざまなことに挑戦する意欲や、他者との人間関係を築く力などの次代を切り開く力と、いかなる状況においても、みずから考え、判断し、困難な局面を切り開いていくことのできる確かな学力を身につけさせることが必要であります。
そのため、子どもの教育の第一義的責任を有する家庭や、子どもの生活、活動の場である地域社会の教育力を向上させていく取り組みを推進していくとともに、学校において、より一層質の高い教育を提供できるよう、教員の資質能力の向上や教育環境の整備に取り組んでまいります。
これら施策の着実な実現を図るための推進計画を作成し、本年五月には東京都教育ビジョン(第二次)として策定し、国、区市町村、民間も含めた関係機関の協力を得ながら、東京の教育を推進してまいります。
質問2
とりわけ、家庭は子どもの教育の第一義的責任者であります。しかし、家庭でのしつけが十分でないことや、家庭を取り巻く地域の人間関係の希薄化などが指摘されています。子どもの教育は、学校だけに任せるのではなく、家庭、学校、地域、社会が、それぞれに期待される役割を再確認しつつ、連携協力して取り組んでいく必要があります。
これからは、都は、家庭、学校、地域、社会が連携して子どもの教育に取り組むことができるよう、総合的に施策を推進していくべきと考えますが、所見を伺います。
答弁2
教育長
家庭、学校、地域、社会の連携についてであります。
都教育委員会は、これまで地域教育推進ネットワーク東京都協議会を通じて、地域の教育力を学校教育に活用するなど、家庭、学校、地域、社会が協働する仕組みづくりを支援してまいりました。
また、子どもの生活習慣確立プロジェクトでは、生活習慣の確立が求められている就学前の子どもを持つ親に対する家庭教育を支援するため、医師会、保健所、幼稚園などとともに連携を図り、その必要性を広く社会にアピールするとともに、教育に関心の薄い親にも支援が届くよう、入学説明会等の機会をとらえて啓発に努めてきたところであります。
今後は、さらに対象を拡大し、子どもの成長、発達の基盤をつくる重要な時期であります乳幼児期からの教育支援を進めていくため、子どもの発達に関する科学的知見を踏まえ、保護者向けテキスト等の開発や人材養成研修などを行ってまいります。
また、区市町村、関係各局と連携して、地域における保護者と子育てサークル等とのネットワークの形成を図るなど、社会全体で子どもの教育を支える取り組みを総合的に推進してまいります。
質問3
また、子どもに生活体験や職業体験などを経験させることは極めて有効だといわれています。学校と地域、社会が子どもたちの教育のために接点を持ち、協力し合うことは重要なことです。また、昨今、学校においては教員の多忙感や理不尽な親の要求など困難な課題が指摘されており、学校だけですべて解決することは限界です。保護者や地域の人材が積極的に学校に集い、協力支援体制を築き、学校を守り立てていくことが今求められていると考えます。
外部人材の教育活動への積極的な活用について、所見を伺います。
答弁3
教育長
外部人材の教育活動への活用についてであります。
学校で生じているさまざまな課題の解決のためには、これまで、ともすればすべて教員だけで担おうとしてきた意識を改め、積極的に外部人材を活用することが有効であります。
都教育委員会では、これまで、退職教員の活用を初め、教科「奉仕」等のための都立高校の教育支援コーディネーター、部活動の指導員など外部人材の活用を図ってまいりましたが、今後は、外部人材活用の場を広げて検討し、例えば、年度当初の小学校一年生の集団生活への適応や給食指導の補助など、必ずしも教員でなくても対応可能な分野や、介助や医療的支援などの専門家を導入することがより効果的な分野へも外部人材の活用を図り、東京都の教育の質を高めてまいります。
コメント
さて、去る十七日、東京マラソン二〇〇八が開催されました。青空のもと、三万二千人のランナー、一万二千人のボランティア、そして二百万人を超える観客がスポーツの楽しさと喜びを共感しました。走る喜び、応援する楽しみ、運営を支える達成感など、それぞれの中に大人から子どもまで、これほど多くの人々の夢が結集されるイベントを、我が東京で開催できることを誇りに思います。
このマラソンにとどまることなく、今、招致を進めている東京オリンピック・パラリンピックや平成二十五年度開催予定の東京国体など、スポーツの祭典に未来を担う子どもたちが間近に触れられる機会を私たち大人がつくり、残していきたいという思いを改めて申し上げ、代表質問を終わります。