▼岡崎委員
連日長時間、ご苦労さんでございます。
私は、都議会民主党、すなわち田中良幹事長、馬場裕子政調会長、土屋たかゆき総務会長を先頭に活動している会派の一員として質問をさせていただきます。
まず、子育て支援についてお伺いをしたいと思います。
在宅子育て家庭への支援について。
在宅で子育てに奮闘されている方々への支援の充実という観点から質問いたしますけれども、私の地元の大田区は、閑静な住宅街がある一方で、石原知事もよくご存じでありますね、中小企業の密集地帯も存在しております。中小企業の従業員の方々から子育てについてのお話を伺う機会が数多くあるわけでありますけれども、これは私が実際に聞いた従業員の奥様の声でありますけれども、子どもが小さいうちはできるだけ一緒におりたいが、経済的には決して楽ではないし、保育園にも預けず家庭で育てている、しかし、子育ての知識も乏しく、教えてくれる家族も近くにいない、日中子どもと一緒にいても子育ての不安感は増すばかり、このままであればパニックになりそうというものであります。
食事をつくっていても、足にまとわりつくわ、すぐに泣き出すわ、今こうした話は決して少なくありません。大都市東京における子育ての難しさがあらわれていると思うわけであります。想像以上に今子育てをしている家庭というのは孤立をしているわけであります。
そこでまず、お尋ねいたしますけれども、東京都の子育て支援施策にかかわる平成十九年度予算額と重点的な取り組みについてご紹介いただきたいと思います。
▼福祉保健局長
平成十九年度福祉保健局当初予算案における子育て支援施策関連予算は、約一千百二十九億円でございます。
主な取り組みとしては、大都市の保育ニーズに的確に対応した都独自の認証保育所の推進や、就学前の教育・保育を一体的に提供する認定こども園への新たな補助、区市町村における子どもと子育て家庭の相談拠点である子ども家庭支援センターの一層の機能強化、子育て支援基盤整備包括補助や子育て推進交付金を活用した子育てひろば、学童クラブなど、区市町村が主体的に取り組む子育て環境整備への支援などでございます。
▼岡崎委員
都としてさまざまな子育て支援事業を展開して努力をしていることはうかがえるわけでありますが、私は、こうした子育て支援施策の中で、特にゼロ歳児あるいは一歳の乳幼児を抱える家庭への支援のあり方について、現在、大きな課題があると考えております。それは経費のかけ方の問題であります。
子育て支援の施策を大まかに区分すれば、保育所や学童クラブなどの施設型サービスと、子育てひろばや育児支援ホームヘルパーなどの在宅サービスとに分けられると思います。
これらを運営コスト面で見てみますと、施設型サービスに比重がかかり過ぎている感じを強く受けるわけであります。施設型サービスの代表例は認可保育所でありますが、先ほどお聞きした都の予算額だけでは、認可保育所に係る実際の運営コストがどのくらいかはっきりしませんので、標準的な例を挙げて、ゼロ歳児、一歳児の児童一人当たりに係る経費を具体的にお示しをいただきたいと思います。
▼福祉保健局長
認可保育所に係る児童一人当たりの経費は、施設規模や児童の受け入れ人数などによって異なりますが、標準的な規模である定員百人の私立認可保育所で、ゼロ歳児と一歳児の受け入れ人数がそれぞれ都内の平均レベルと仮定した場合でございますが、児童一人につき一カ月に要する経費は、国、都、区市町村合わせて、ゼロ歳児約三十万円、一歳児約十四万円となります。
また、そのうち利用者負担額、いわゆる保育料は、ゼロ歳児、一歳児とも約四万円でございます。
▼岡崎委員
標準的な例としてご説明がありましたけれども、ゼロ歳児には、一人当たり月額で約三十万円の経費がかかっております。そこから利用者の負担額、保育料金約四万円を除いても、月額二十六万円が行政から支出されているということになります。年間で三百十二万円の公的助成がなされている、こういうことになるわけです。一歳児では、一人当たり月額約十四万円の運営コストです。同じように計算しますと、年間で百二十万円の公的助成額であります。
認可保育所には行政から手厚い補助がなされていることがよくわかりますが、お伺いしますけれども、都内のゼロ歳と一歳の児童数と、そのうち認可保育所利用者数の実態を教えていただきたいと思います。
▼福祉保健局長
平成十八年一月一日現在でございますが、ゼロ歳児の人口は九万三千二百六十二人でありまして、うち認可保育所の利用児童数は約一三%の一万一千九百八十二人、一歳児の人口は九万八千九百六十八人であり、うち認可保育所の利用児童数は、約二三%の二万三千百七十五人となっております。
▼岡崎委員
今のご答弁をもとに推計いたしますと、都内の認可保育所利用世帯へは、ゼロ歳児で年間約三百七十四億円、一歳児で年間約二百七十八億円、合計で約六百五十億円が国や都、区市町村からの行政コストとして毎年かかっていることになります。
一方で、在宅の子育て家庭への支援策では、先ほどご説明いただきましたけれども、子ども家庭支援センターのほか、一時・特定保育事業や子育てひろば事業などが挙げられます。しかしながら、これらは必要なときに利用するものであり、利用者に還元されるコストという点では、ほとんどないといってもいいものであります。保育所入所児童にかけるコストと比べて、余りにも格差が大きいのではないでしょうか。
私自身も、子どもが小さいころには、約十年かけて保育園の送り迎えをやらせていただいたわけですが、この施設型サービスと在宅型サービスのコストバランスを適正なものとしていく施策が今後必要となると思います。
最近の調査では、共働きの家庭の母親に比べて、在宅で子育てをしている方々の方が子育ての負担感が大きいという結果が出ております。家の中という閉じられた空間だけで子育てを行った結果として、子育ての孤立感、無力感から児童虐待につながってしまったケースも多いと聞いております。親の負担感や不安感を少しでも軽減する取り組みが必要であります。
現在、区市町村においては、それぞれ地域の実情に応じた子育て支援のための施策が充実されつつあります。虐待などに積極的に対応する先駆型子ども家庭支援センターの設置も進んでいます。都においても、子育て支援基盤整備包括補助制度や子育て推進交付金制度を創設して、区市町村の意欲的な取り組みを支援しております。
今や、子どもと子育て家庭に対する個別具体的な支援メニューは区市町村の主体に任せて十分かとは思いますが、私は提案をいたします。
都の新たな制度として、在宅の子育て家庭に対して、母親の妊娠判明時、いわゆる母子健康手帳交付時に、例えば安心出産・子育て手当として一律五十万円を給付するという思い切った施策を講ずるというものであります。
都内で毎年生まれる子どもの数は、約十万人となっています。これらの家庭すべてにこの手当を支給するとすれば、所要額は約五百億円となります。また、仮に現在の児童手当に準じた所得制限を設けるとすれば、約三百五十億円と推計されます。この三百五十億円という額は、認可保育所に入所している十数%のゼロ歳児童にかけている行政コストと比べても、決して驚くようなものではないと考えます。しかも、認可保育所に係る経費は、入所していれば翌年も続くものであるのに対し、この手当は妊娠判明時点での一回だけということになります。
子育ての負担感を取り除くのは、行政の責務といえましょう。中でも、これから子育てを始めようとする若い子育て世帯へは、少しでも妊娠から出産に至る経済的負担の軽減を図るべきと考えます。本当に大変な時期に集中的に支援をするというのが施策のあるべき姿です。決してばらまきではありません。
こうした出産前から子育て家庭を支援する安心出産・子育て手当といったふうな制度の創設を検討すべきと考えますけれども、ご所見をお伺いいたします。
▼福祉保健局長
これまで都では、子育て中の親と子が気軽に集える子育てひろばや一時保育など、在宅サービスの充実に取り組む区市町村を積極的に支援してまいりました。
これらの取り組みに加えて、平成十九年度からは、出産や子育てに支援を必要とする家庭を早期に把握しまして、出産直後の母親と子どもを手厚くケアする子育てスタート支援事業を新たに実施いたします。
お話の経済的負担の軽減については、税制のあり方も含めて社会保障制度全体を視野に入れ、国民的なコンセンサスを得て、基本的に国の制度として行うべきものと考えております。
▼岡崎委員
国の制度として基本的には行うべきだということをおっしゃっておりますけれども、そんな例はいっぱいあるわけでしてね、石原知事自身も東京から国を変えるということをおっしゃっております。国に先駆けてやっている事業もあるではないですか。ぜひともこういうことも検討していただきたいと思うし、残念ながら「十年後の東京」には、こういった家庭での子育てをしている方々に対する支援というのはほとんど触れられておりません。主には施設型サービスであります。ぜひともご検討いただきたい、こういうふうに思います。
児童虐待について、次にお伺いいたしますけれども、悲惨な児童虐待の報道を見聞きするたびに心が痛むわけであります。児童虐待防止対策も子育て支援の大きな課題であります。
まず、都の児童相談所に寄せられた虐待通告、虐待相談の件数とその通告ルートについてお伺いをしたいと思います。
▼福祉保健局長
児童相談所では、児童虐待に関して、近隣、警察、医療機関などから受ける通告や、家族や親戚などから受ける相談に対応しておりますが、平成十七年度は、通告、相談合わせて三千百四十六件でございました。
その経路の内訳として最も割合が多いのが近隣、知人の二六・二%、次に、区市町村の子ども家庭支援センターの一八・二%、その他、家族、学校、警察、医療機関、保健所、民生・児童委員などの多岐にわたっております。
▼岡崎委員
都内に十一カ所ある児童相談所の現場では、深刻化する児童虐待に精いっぱい取り組んでいると聞いております。しかしながら、年間三千件を超える虐待の通告や相談があり、しかも、その経路は家族、近隣、知人、学校、警察、医療機関など、さまざまなルートで寄せられています。現場で関係者との調整に追われ、対応する職員の負担も限界に近くなっているとの声も聞かれます。今後とも、児童相談所の機能強化、体制強化を図っていくべきであります。
親の虐待が明らかな場合、児童相談所の対応としては、親と子を分離し、子どもを一時保護した上で、その後の状況に応じて児童養護施設への入所などの措置を行っています。しかし、こうしたケースにあっても、最終的な目標は、再び家族が一緒に生活できる道筋をつけることにあります。いわゆる家族再統合の取り組みであります。
都では、この家族再統合に向けてどのような取り組みを行っているのか、お伺いをいたしたいと思います。
▼福祉保健局長
家族再統合の取り組みでございますが、分離した家族それぞれが抱える課題も多様であることから、児童相談所と保護者との信頼関係を構築しながら、子どもの最善の利益を第一とし、家庭復帰後の生活も見据えて、慎重かつ丁寧に対応する必要がございます。
このため、都では、全児童相談所に家庭復帰支援員を配置いたしまして、家庭環境の改善や復帰に向けた相談などを行い、家庭復帰を支援しております。また、精神科医による親へのカウンセリングや子どもへの接し方のトレーニングなどもあわせて実施しております。
▼岡崎委員
児童虐待を未然に防ぐ取り組みの重要性はさきに述べたとおりでありますが、実際の児童虐待ケースに迅速に対応する体制の整備が重要であります。
先日の本会議で我が党の酒井議員も質問をいたしましたけれども、現在、児童虐待防止法の改正に向けた検討が、与野党の国会議員間で行われております。その主な検討内容は、虐待の疑いのある家庭に対して、児童相談所が強制力をもって立ち入りができる仕組みなどを制度化しようとするものであります。
今国会での成立を目指していますが、都としても、法改正後、速やかに対応できる体制を整備することを要望して、次の質問に移りたいと思います。
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