平成19年2月16日(金) |
都立高校でIT教育を推進せよ
地域がん登録実施の足掛かりを |
 遠藤 守(公明党) |
■IT教育 |
質問1 初めに、都立高校でのIT教育について伺います。
ITを活用した教育推進は、平成十四年六月の石原都知事の所信表明の中で、これからの時代、ITは欠かすことのできない道具であり、遠隔教育や外国との交流、さらには美術や音楽まで、広範囲にわたりITを使用する学校があってしかるべきとの大号令からスタートいたしました。
その実践の一部を見るため、私は、先月二十四日、都立高校では唯一、都教委がITを活用した教育推進校に指定している砂川高校にお邪魔し、実際の授業風景やIT機器の整備、活用状況などを視察してまいりました。
中でも、生徒が校内や自宅での学習に活用する電子教材、コンテンツは、トータル四十五科目、約三千単元にも上り、これらをすべて同校の教員が手作業でつくっており、その情熱に大変敬服いたしました。
このITを活用した教育推進校には、砂川高校以前に、北園、府中西両校が指定され、生徒の学習支援や新たな学習指導方法の研究、開発などを活発に行ってきたようであります。
そこでまず、先行指定を受けた両校での具体的な成果をお伺いいたします。
答弁1 ▼教育長 ITを活用した教育推進校の成果についてでございますが、都教育委員会は、わかりやすい授業や生徒の主体的な学習の実現などを目的といたしまして、ご指摘のように、平成十五年度から、都立北園高校、府中西高校をITを活用した教育推進校と指定いたしました。
両校では、指導方法の工夫改善や学習効果を高めるコンテンツの開発、ネットワーク上にあります教材を用いて生徒がいつでも学習できる環境の整備などを行い、学習への興味、関心の高まりや学力の向上が見られるなど、成果を上げてきたところでございます。
都教育委員会は、こうした成果を踏まえまして、今後とも、授業公開やIT活用推進のためのフォーラムを実施し、開発された学習用コンテンツや指導方法等を全都立高校に普及してまいります。
質問2 砂川高校への視察の後、現役の情報科教員にも具体的に面会してまいりましたが、これらを通じて明らかとなった現場の課題の第一は、IT機器の整備不足であります。これを端的に示す直近のデータがあります。
文部科学省による学校の情報化に関する都道府県別調査によれば、東京都の公立学校は、コンピューターの設置状況では全国ワースト二位、普通教室のLAN整備状況は全国最低、コンピューターで指導できる教員状況は、これまた全国最低、よって、総合ランキングは、不名誉にも、四十七都道府県中、最下位の四十七位であります。都立高校に限定すれば、多少整備が進んでいるようでありますが、それでも現場へのしわ寄せは大変なものがあります。
私がお会いした青年教員は、かつて、深夜まで学校に残り、校内じゅうに何と六百メートルものネットワークケーブルをたった一人で張ったそうであります。彼によれば、こうしたことは他校でもいわば恒常化しており、特に若手の情報科教員に作業が集中する傾向が強いようであります。
本来、こうした業務は専門業者が行うべきですが、多くの都立高校では、必要な機器の導入を初め、基本的なメンテナンス等に要する予算さえ確保されていないのであります。
教師が生徒の情報活用能力の育成という本来の職務に専念できるよう、長期的な視点に立って環境整備に努めるべきであります。
今後のIT機器の導入計画について、明快な答弁を求めます。
答弁2 ▼教育長 IT機器の導入計画についてでありますが、都立高校において情報教育を進めていくために、IT関連の機器等を充実させていくことは重要なことでございます。
現在、すべての都立高校にコンピューター教室を設置するとともに、高速インターネットへの接続も行っております。さらに、商業高校などの専門高校やITを活用した教育推進校におきましては、重点的にIT環境の整備を図っているところであります。また、校内LANについては、現在約四十校に整備されておりますが、平成十九年度も引き続きその整備に努めてまいります。
ご指摘のIT機器の今後の導入計画につきましては、庁内の検討委員会において総合的に検討し、早急に考え方を取りまとめてまいります。
質問3
教育の情報化をめぐる第二の課題は、教員のIT技能の向上であります。
都立高校改革推進計画・新たな実施計画には、平成十七年度中に、ITを活用して学習指導できる教員をおおむね一〇〇%とするとの目標が明記されております。しかし、現状では五九・二%にとどまっております。
目標の早期達成を目指し、IT教育推進校で積み上げた貴重なノウハウを生かした新たな研修制度を設けるなど、教員のIT技能のさらなる向上に努めるべきであります。所見をお伺いいたします。
答弁3
▼教育長
ITを活用して教科指導できる教員の育成についてでありますが、都教育委員会は、平成十五年度から、ITを活用して教科指導ができる教員の育成に努める先導的な都立高校をIT教育普及支援校として指定してまいりました。支援校では、情報教育を担当する教員が、自校を会場とした研修講座や他の都立高校の校内研修の講師を務めるなどして、教員のIT活用能力の育成を図っております。
都教育委員会は、今後、教員がインターネットを利用して授業改善の方法を学ぶ研修システムを導入するなど、都立高校の教員がITを活用して教科指導ができるよう努めてまいります。
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■医療施策 |
質問1 次に、がん対策について伺います。
我が党が主導して成立したがん対策基本法が、間もなく四月一日施行されます。同法では、国にがん対策推進のための基本計画の策定を義務づけるとともに、都道府県に対しては、地域の特性を踏まえた対策推進計画を策定しなければならないとしております。
そこでまず、策定前提の、いわば前提条件ともなる、東京におけるがんの現状、特性について伺います。
答弁1 ▼福祉保健局長
東京のがんの現状、特性についてでございますが、平成十七年の人口動態調査によりますと、がんによる死亡者は全体の約三割に当たる約三万人で、都民の死亡原因の第一位を占めております。
がんの部位別に全国と東京を比較いたしますと、東京は、男性の肺がんや肝がんの死亡率では全国値を下回っている一方で、女性の乳がん、子宮がん、肺がん、また大腸がんについては男女とも全国値を上回っているという特徴がございます。
質問2 都の推進計画には、がん予防の推進、情報収集、提供体制の整備など、基本法に定められた主な施策が盛り込まれると思いますが、これらに加え、我が党がかねてから主張している、一つ、発見早期の段階からの緩和ケアの推進、二つ、立ちおくれている放射線治療の普及と専門家の育成、三つ、セカンドオピニオンの充実などを明記すべきと考えます。計画策定の基本方針とあわせ、見解を伺います。
答弁2 ▼福祉保健局長 がん対策推進計画についてでございますが、都においては、平成十九年度早期に、医療関係者や学識経験者、患者団体の代表などから成る東京都がん対策推進協議会を設置することとしております。
この協議会での検討を踏まえまして、東京都がん対策推進計画を来年度内に策定いたします。この計画には、予防、早期発見対策の充実、専門的治療水準の向上、相談支援体制の強化など、今後の都における総合的ながん対策を盛り込む予定でございます。
ご指摘の緩和ケア、放射線治療など、専門医療の普及や人材育成、セカンドオピニオンなどは、がん対策における重要な検討課題でありまして、協議会における議論を踏まえ、推進計画に位置づけてまいります。
質問3
厚生労働省は、昨年二月一日、健康局長名で、各都道府県知事に対し、がん診療連携拠点病院の整備に関する新たな指針を示しました。この中で、従来の二次医療圏ごとの地域拠点病院に加え、その上に、新たに都道府県ごとにおおむね一カ所、広域的な拠点病院を整備することとしております。
本年一月末現在、三十一府県でこの広域的な拠点病院が整備されておりますが、東京都ではいまだ整備されておりません。都内全域で質の高いがん医療を提供するためにも、早期に東京都の拠点病院を整備すべきであります。所見をお伺いいたします。
答弁3
▼福祉保健局長
がん診療連携拠点病院についてでございますが、先般、国は、新たな整備指針におきまして、従来の地域がん診療連携拠点病院に加えまして、都道府県がん診療連携拠点病院を設置することといたしました。 この都道府県拠点病院は、都道府県の中心的ながん診療機能を担うとともに、研修実施や症例相談により地域の拠点病院を支援する役割を有しております。
都内にはこの重要な機能を担い得る医療機関が多数あり、都としては、今後、東京都がん対策推進協議会の意見を聞きながら、指針に照らしまして最もふさわしい拠点病院を審査、選考し、本年十月には国に対し推薦を行う予定でございます。
質問4
がん対策基本法の審議過程で大いに議論されたのが、がん登録であります。がん登録とは、がん患者について、診断、治療及びその後の転帰に関する情報を収集、保管、整理、解析する仕組みのことをいい、将来のがん医療の向上等に役立てるのが主な目的であります。
種類別にいえば、ある病院におけるがん患者を対象とした院内がん登録と、例えば、東京都におけるがん患者を対象にする地域がん登録の二つに大別されます。後者の地域がん登録は、二〇〇六年九月現在、大阪府、愛知県、広島、長崎両市など、三十四道府県市で実施されておりますが、残念ながら東京では行われておりません。
個人情報の保護、欧米に比べて低い告知率など課題はありますが、これらのデータが世界規模のがん研究に役立てられていることを思い合わせれば、患者数が全国トップクラスの東京こそ、この地域がん登録に踏み出すべきであります。
まずは、都内の十カ所ある地域がん診療連携拠点病院が持つすべての情報を一カ所に集約し、地域がん登録実施に向けた足がかりにすべきであると提案をいたします。見解を伺います。
答弁4
▼福祉保健局長
がん登録についてでございますが、個々のがん患者の診断、治療、その後の症状に関する情報をデータとして登録し、分析、評価を行うことは、早期発見対策の充実や専門治療水準の向上のためには非常に有用でございます。
現在、都内に十カ所ある地域がん診療連携拠点病院では、国が定めた標準方式に基づきまして、院内がん登録に取り組み、データの蓄積を行っているところであります。
これらのデータについては、新たに整備する東京都がん診療連携拠点病院において一元的に分析、評価が行えるよう体制整備を図り、都におけるがん治療の一層の向上に役立ててまいります。
質問5 次に、終末期医療について伺います。
回復の見込みのない末期患者に対する医療内容の決定手続や、患者、家族の意思の確認方法など、終末期医療に関する議論が今クローズアップされております。
読売新聞は、昨年夏、大型連載を組んで、明確なルールがない中、延命治療をめぐって揺れる医療現場と患者、家族の苦悩を報じ、多くの反響が寄せられたようであります。
一方、国においては、医師や法学者らで構成される終末期医療の決定プロセスのあり方に関する検討会が発足し、厚生労働省が公表したたたき台をもとに、今春をめどに一定の結論を出す予定と聞いております。
こうした状況を踏まえ、私は、昨年の決算特別委員会第二分科会において、国の議論と並行して、都としても関係機関との協議を行い、必要な意見を反映させるよう提案いたしたところであります。
そこでまず、終末期医療に関する知事ご自身のお言葉での見解を伺います。
答弁5 ▼知事 終末期医療についてでありますが、これは、私にじかに問われても、極めて難しい問題だと思います。
ソルボンヌ大学の哲学の主任教授のジャンケレヴィッチという人が書きました「死」という非常におもしろい分析的な本がありますけれども、一人の人間の死に関しても、これだけ見る角度が違うのかと思うような非常に詳細な分析でありました。
医学が目覚ましく進歩した現代にあっても、人間は必ず老いますし、そして、やがては死んでいく存在でありますが、人生の最期をいかに迎えるか、受け入れるかについては、個々人の人生観によるものであると思いますけれども、患者当人だけではなくて、それをみとる家族によってもまた立場が違うでしょう。それからまた、担当のお医者さんの見解、あるいは医者としての意思、こういった問題が絡み合っているわけで、尊厳死をめぐる医師の法的責任の問題や延命治療の選択、中止の統一的なルールをつくることが必要だと思いますけれども、とにかく、いずれにしろ、終末期医療のあり方については、多くの知見を集め、国民的な議論を経て、あくまでもこれは国が収れんすべきテーマだと思っております。また、軽々に私の意見を申すべき問題でもないと思います。
いずれにしろ、こういう時代でありますから、情報も豊富にあると思いますが、まだ獲得され切れない情報もあると思いますけれども、段階的に判断が変わってくるのはやむを得ないと思いますが、いずれにしろ、これは、国が国の責任で一つのスタンダードというものを構えるべき問題ではないかと思っております。
質問6 都立病院においては、平成十三年二月に東京都立病院倫理委員会がまとめた報告書である都立病院における末期医療のあり方に基づいて、終末期医療に取り組んでいるようであります。
この報告書は、告知や臨死状態における治療等について基本的な考えは提起されているものの、延命治療の具体的なあり方まで提起されておらず、最終的には各病院現場での判断にゆだねられているのが実態であります。
終末期医療をめぐっては、さまざまな立場や考えがあることは十分承知しておりますが、都民が信頼し期待を寄せる都立病院においては、この報告書を改定するなど、より具体的な対応策を策定すべきと考えます。見解をお伺いいたします。
答弁6 ▼病院経営本部長 都立病院における終末期医療についてでございますが、平成十三年二月の都立病院倫理委員会報告書は、患者の意思をどのように治療方針に反映させていくかということや、どのような医療を提供すべきかの判断を、医師個人ではなく医療チームとして考えていくことなどについて、都立病院としての考え方を取りまとめたものでございます。
一方、お話しの、国の終末期医療に関するガイドライン、たたき台では、こうした点に加えまして、患者の意思の確認ができない場合の治療方針の決定手続や、検討、助言を行う複数の専門職種から成る委員会の設置などについて提示しております。
終末期医療をめぐっては、患者や家族の人生観、死生観が多様でございますため、延命治療の是非など、社会的コンセンサスが得にくいという課題がございます。今後、国の議論の動向を見据えながら、都立病院における終末期医療のあり方につきまして、必要な検討を適宜行ってまいります。
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■公社病院
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質問1
最後に、東京都保健医療公社荏原病院の産科医師不足問題について伺います。
私の地元の荏原病院は、昨年四月、都から保健医療公社に経営が移管されました。移管前には、共産党が、都立病院でなくなれば、経営優先で患者負担がふえるなどと、利用者の不安をあおる宣伝をしていましたが、今日までの利用者の順調な推移や、がんの放射線治療の開始、脳卒中センターの充実、そして私が提案した無料送迎バスの運行など、移管後に始めた新しいサービスを見れば、それが共産党のお家芸であるデマゴーグであったことは明らかであります。
そこで、荏原病院では、最近、産婦人科医師の欠員から、分娩が制限されているそうであります。ハイリスクの周産期医療を行っている都立豊島病院や墨東病院でも、同様に産科の休止や縮小が行われております。産科医不足は全国的な問題となっておりますが、大田区を含む都の区南部医療圏で分娩数が最も多い荏原病院における産科医不足は、極めて深刻であります。万が一にもまた、公社に移管されたからだなどと宣伝されても困ります。
そこで第一に、欠員となった正確な理由や背景、そして、公社当局の今日までの対応についてお尋ねいたします。
答弁1
▼病院経営本部長 東京都保健医療公社が運営する荏原病院における産婦人科医師の欠員についてでございますが、全国的な産婦人科医の不足を背景にいたしまして、荏原病院へ医師を派遣している大学の医局におきましても人材が不足し、医師の引き揚げを行ったことが直接の原因でございます。
また、医師を確保するための公社の対応でございますが、公社を挙げて、当該の大学に対し、再三、医師引き揚げの見直しを働きかけることはもとよりといたしまして、他の大学にも産婦人科医師の派遣を要請してまいりましたが、現在のところ、大変厳しい状況であると聞いております。
引き続き、病院経営本部と公社で連携いたしまして、産婦人科医の確保に向けて努力してまいります。
質問2 我が党は、昨年の第三回定例会の代表質問で、産科医が不足する中、助産師を積極的に活用すべきであると提案をいたしました。
その質問に先立ち、私は、先輩議員とともに、日本一の分娩数を誇る葛飾赤十字産院を訪ね、全国的にも珍しい助産師外来を視察してきました。助産師外来は、単に医師の肩がわりをするだけでなく、外来での定期健診から助産師とコミュニケーションを持つことで、医師にはなかなか相談できない体の悩み、家族の悩み、お産への不安などを時間をかけて丁寧に相談することにより、妊婦が安心して子どもを産めるという医療サービスの向上に大変効果があるそうであります。
私は、荏原病院にもこの助産師外来や院内助産所を積極的に導入すべきであると考えます。見解を伺い、質問を終わります。
ありがとうございました。
答弁2 ▼病院経営本部長 荏原病院での助産師外来等の導入についてでございますが、荏原病院は、これまで年間約一千件の分娩実績があり、地域の産科に対するニーズは高いと認識しております。
助産師外来は、医師の欠員に対応するだけでなく、妊婦の満足度が向上するなどのメリットがあり、正常分娩をされる方にとりましては有効な方策であると考えております。
このため、現在、荏原病院では、助産師外来等の平成十九年度中の設置に向けまして、人材の確保、育成策や具体的な施設整備の方法などにつきまして、鋭意検討を進めているところでございます。
設置に当たりましては、お話しの葛飾赤十字産院などの取り組みを参考にいたしまして、よりよい医療サービスの提供が可能となるよう、公社を支援してまいります。
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