消費者行政の機能強化を プレーパークの活動支援を |
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 山口文江(生活者ネット) |
■貧困対策 |
質問1
石原知事は、都知事選の公約として掲げた低所得者の都民税軽減策を取り下げ、進化したものとして、低所得者生活安定化プログラム、緊急総合対策三カ年事業を発表しました。改選直後の公約取り下げは、公約違反という批判は免れないにしても、低所得者に対するセーフティーネットの機能の必要性を認識しての政策と歓迎するものです。
そこで、この三カ年プランを提示するに至った基本的な知事の見解を伺います。
答弁1
▼知事
低所得者生活安定化プログラムについてでありますが、現在、我が国では、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せない方々や、就職氷河期を経験した世代を中心として、職にも恵まれず、住居の確保もままならない人々も存在しております。
今回のプログラムでは、収入の数字づらではなくて、真に困っている都民の一人一人に手を差し伸べ、将来に向かって明るい展望が開けるよう、多様な施策を重層的に講じるものであります。
この取り組みによりまして、こうした方々がみずからの生活安定への道を切り開き、社会を支える力となることにより、豊かで活力のある東京を実現していきたいと思っております。
質問2
このプランでは、若年層、母子家庭、中高年、住居不安定就労者などを対象としています。現在の貧困の構造は、所得の格差が教育の格差を生み出し、差別化が促進されているといわれています。高校への進学率は大変高い水準を示してはいますが、進学を希望しても入学できなかったり、希望する学校に入れなかったために中退してしまう子どももいます。
教育庁では、教育相談センターでリスタートプレイスを設置し、相談業務やチャレンジスクールへの説明会も開催しているということです。しかし、このチャレンジスクールへの希望者も多く、受検生の半数は入学できない状況です。この再チャレンジへの意欲を持つ子どもへの救済を何らかの形で行うべきと考えます。こうした生徒や中途退学者に対する将来の進路相談の受け皿の充実が求められていると思いますが、見解を伺います。
答弁2
▼教育長
高校を不合格になった生徒や中途退学者からの相談についてのご質問にお答え申し上げます。
生徒一人一人の将来の希望の実現を図るために、相談事業を充実することは極めて重要であり、現在、教育庁内に都立高校入試相談コーナーを開設し、常時、相談を受け付けております。
また、都教育相談センターでは、電話や来所等によります高校進級・進路・入学相談や、中途退学者への支援を図る青少年リスタートプレイス、進路相談会において相談を受けております。
今後とも、都教育委員会は、これらの相談窓口をパンフレットやホームページ等によりまして周知するとともに、生徒がみずからの生き方について考え、主体的に進路選択ができるよう、相談事業の充実を図ってまいります。
質問3
東京都は、二〇〇〇年から、ホームレスの自立支援システムを立ち上げ、支援事業を展開しています。テント生活から脱却し地域生活への移行を目標に、公園での面接相談からスタートし、民間宿泊所、借り上げ住居への入居、一般生活へと段階的な支援を示し、二十三区の協力を得て展開しているところです。
今後、その経緯を踏まえ、新システムへの移行を示していますが、この特徴は、アパート借り上げで自立に向けての準備にリアリティーを持たせている点、また、自立後も巡回しながら相談に応じるバックアップ部門の強化という点では評価したいと思います。
しかし、現在、路上生活者は減少しているということですが、長期化、高齢化に伴い、就労意欲の減少が見られ、その支援の内容が問われています。この現状をとらえ、今後の対策について伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
路上生活者に対する今後の対策についてであります。
都は、これまでも特別区と共同で自立支援システムや、地域生活移行支援事業におきまして、就業や住宅に関する相談などを行い、地域での自立した生活への支援を推進してまいりました。その結果、本年八月の二十三区内の路上生活者数は、調査開始以来最も少ない約三千二百人まで減少いたしました。
今後とも、これまでの事業の評価、検証を踏まえ、利用者の状況に応じた支援に努めてまいります。
質問4
現在進行している貧困は、さまざまな事件に象徴されるように、深刻な段階に来ています。この対策で、共通でかつ重要な対策は住宅政策と考えます。住まいの保障こそ基本的人権の保障につながるのです。都市整備局は住宅政策におけるセーフティーネットの展開をどのように考えているのか、伺います。
答弁4
▼都市整備局長
住宅政策におけるセーフティーネットについてでございますが、都は、これまでも都営住宅におきまして、高齢者や子育て世帯等に対する優先入居などを実施するとともに、入居制限を行わない民間賃貸住宅の供給促進などに取り組んでまいりました。
今後とも、都営住宅などの公共住宅に加え、民間住宅も含めました重層的な住宅セーフティーネット機能の確保に向けて取り組んでまいります。
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■消費者行政 |
質問1
今、食品表示の偽装や耐震偽装、高齢者をねらった詐欺商法、子どもの安全を脅かす商品など、生活への安心・安全を脅かす問題が次々と起きています。しかし、国においては、二〇〇三年に独立行政法人となった国民生活センターについて、その機能を縮小する案が提案されており、大きな問題となっています。
最近の報道によれば、直接相談窓口の廃止は、消費者団体等の強い反対を受け、ようやく撤回したものの、商品テストの一部外部委託化の方針は依然として変えていません。福田首相は所信表明において、消費者保護のための行政機能の強化に取り組むと明言しており、本来なら、直接相談窓口ももっと拡充してしかるべきです。
自治体の中には消費者行政に十分手が回らないところもあることから、国が消費者に直接かかわる組織を縮小することになれば、消費者の権利が侵されかねない状況を招きます。
こうした中で、これまでも日本の消費生活行政をリードしてきた東京都は、まかり間違っても消費者保護のための行政機能を低下させてはならないと思います。このようなときこそ、消費者被害の未然防止、拡大防止を一層図るため、東京都消費生活総合センターの機能強化を図るべきと考えますが、見解を伺います。
答弁1
▼生活文化スポーツ局長
東京都消費生活総合センターの機能強化についてでありますが、都は、これまでも急増する架空・不当請求や深刻化する高齢者の消費者被害に対応するため、架空請求一一〇番や高齢者被害一一〇番を開設し、専門相談員を配置して、相談体制を整備してまいりました。
また、悪質、巧妙な手口による消費者被害に適切に対応するためには、住民に身近な区市町村の相談部門との連携強化が極めて重要であることから、被害の傾向や相談処理に関する幅広い情報を積極的に提供するとともに、区市町村の相談員の資質の向上に役立つよう、各種研修を実施しております。
今後とも、消費者被害を未然に防ぎ、拡大を抑えるとともに、消費者被害の救済のため消費生活総合センターの機能強化に努めてまいります。
質問2
東京都消費生活条例は、消費者の権利をうたった画期的なものであり、それに伴って、一九九七年二月、東京都消費生活基本計画を策定しました。しかし、その後、消費者を取り巻く状況は大きく変化しており、策定後十年を経過した消費生活基本計画の改定を行うべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
▼生活文化スポーツ局長
東京都消費生活基本計画の改定についてでありますが、近年、詐欺的商法が横行し、表示の偽装が相次ぐなど、消費生活を取り巻く環境はご指摘のように大きく変化してきており、都の消費生活基本計画もこうした変化に的確に対応できるよう、改定する必要があると考えております。
このため、本年七月の消費生活対策審議会において、消費生活基本計画改定に向けての考え方をお示しし、平成二十年度を初年度とする五カ年の計画期間など、計画改定の基本的事項について了解をいただきました。
現在、都の消費生活関連施策について関係各局のヒアリングを行っており、今後、審議会に対し、来年度の早い時期に基本計画改定の諮問ができるよう、準備を進めてまいります。
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■食の安全と都市農業 |
質問1
ことしは、不二家からスタートし、しにせメーカーや有名メーカーによる食品偽装問題が次々と発覚し、消費者の食への不安、不信が後を絶たない状況が続いています。
食の安全には、食料自給率を高めることが不可欠です。しかし、日本の食料自給率は、今やカロリーベースで三九%と、自給率向上は夢のまた夢となってしまいました。経済のグローバル化によって日本の農業はどうなっていくのか、私たちの食料はどうなっていくのか、農業従事者は当然のこととして、多くの人が不安に感じています。
食糧自給ができない国は常に国際的圧力と危険にさらされている国であるとは、アメリカのブッシュ大統領の発言ですが、石原知事も、都内において有害物質が検出された輸入食品が多く流通している事態に対して憂慮し、食の安全確保は都政の重要な役割であると明言されています。大消費地東京の知事として食料問題をどうとらえているのか、知事の見解を伺います。
答弁1 ▼知事
我が国の食料問題の認識についてでありますが、今、世界的に食料危機が叫ばれている中、我が国の食料の自給率は、主要先進国の中でも最低のレベルにありまして、国家としての基本的な不安要因となっております。
地球の温暖化が進んでまいりますと、当然、大飢饉が頻発いたします。現にオーストラリアでは干ばつが続いて農業が衰退し、荒廃し、多くの農民の自殺者も出ております。ゆえにも、食料の確保とそれを支える農業の再生は、我が国にとって極めて重要であります。
しかし、東京の農業を見ますと、その基盤である都市農地は、相続などの問題で年々減少し続けております。東京の農業は、全国に誇れる農産物が数多く、また、大消費地に近接した有利性も持っております。
さらに、農業、農地は、食料の生産だけではなく、食文化の伝承や緑の保全、災害時の避難場所の確保、憩いの場の提供などの面からも極めて大切であります。
このため、都は、農業を重要な産業と位置づけ、今後とも農地、都市農業の保全と農業の振興に努めていきたいと思っています。
質問2
東京には、コマツナやウド、キャベツ、アシタバなどの特産野菜、島しょで生産されるレザーファンなどの花き、観葉植物のように、産地化され市場出荷されている品目が多くあります。一方、市街化区域では、果実や鉢花、多品目の野菜の直売などが大きな比率を占めるなど、大都市としての機能を持ちながらも、都市農業として健闘しているのです。
都は、二〇〇一年、東京農業振興プランを策定しました。現在、都市農業検討委員会を設置し、東京農業振興プランの改定を目指していますが、東京における都市農業の課題と展望について伺います。
答弁2
▼産業労働局長
都市農業の課題と展望についてでありますが、東京の都市農業は、都民に新鮮で安全な農産物を供給するだけではなく、生産活動を通じて貴重な緑地空間やレクリエーションの場などを提供しております。
しかし、都市農地は毎年減少が続いており、これらを保全することが大きな課題となっております。このため、都は、都市農地の保全に必要な相続税等の制度改善を国に継続して要望するとともに、高齢や労働力不足などにより耕作が困難な農家を支援する農作業受委託推進事業など、独自の取り組みを進めております。
今後とも、大消費地を抱える東京農業の特性や優位性を生かした多様な取り組みにより、都民や農業者にとって魅力と活力あふれる都市農業の実現に取り組んでまいります。
質問3
都内の農地の約六割が市街化区域にあり、貴重な緑地空間として、ヒートアイランド現象の緩和や災害時の避難場所、子どもたちの食育の場となるなど、都市農地ならではの役割を担っています。
二〇〇五年度に行った都政モニターアンケートでも、東京に農業、農地を残したいと思う人は八一%、農作業の体験をしたいと思う人が六一%に上っており、都民の都市農業に対する関心と農地保全に対する期待は大きいものです。
幸いにも、人口減少時代の到来などにより、農地の宅地化を前提とするまちづくりは終えんとすべき社会状況になっています。都市農業の継続を危うくしている要因として相続税等の問題があり、国の対応が待たれるところですが、国の農業政策が農村を基調としているのは当然としても、大消費地東京においては、生産面からとらえた農業のあり方だけでは十分とはいえません。東京における農地は、都市の生活者にとってある意味で公共性を持つものと考えられ、独自の都市農業推進条例を検討すべき時期に来ているのではないかと思いますが、条例制定までには時間がかかります。
そこで伺います。大都市東京では、都市農業をきちんと位置づけた上での施策が必要と考えますが、都では現在どのように施策展開を図っているのか伺います。
答弁3
▼産業労働局長
都市農業の施策展開についてでありますが、都では、東京の農業振興の方向性を明らかにするとともに、計画的に施策を推進するため、平成十三年に東京農業振興プランを策定いたしました。
また、十八年度には、社会情勢の変化を受けまして、このプランの個別施策の検証を行い、重点的に取り組むべき課題や地域の特性を踏まえたきめ細かい施策に取り組んでおります。
今後とも、時代の変化に対応しながら、東京農業振興プランに基づきました都市農業の振興策を着実に進めてまいります。
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■プレーパーク |
質問1
子どもの育ちが社会問題として取り上げられるようになって久しくなります。子どもが思いっきり遊ぶ時間と空間、そして仲間が失われて、子ども自身が生き生きできる環境が奪われています。こうした現状に気づいた大人が、大人の規制により管理されて遊ぶのではなく、子どもたちが想像力で工夫して遊びをつくり出し、自分の責任で自由に遊ぶことができる冒険あそび場・プレーパークを始めました。一九七九年、東京都世田谷区の羽根木プレーパークを皮切りに、この運動が日本でも広がりを見せています。
このプレーパークを都立公園において実施したいという市民の声にこたえて、戸山公園を初め、石神井公園、光が丘公園、東村山中央公園など六公園で行われていますが、現在の活動状況について伺います。
答弁1 ▼建設局長
都立公園におけるプレーパークの活動状況についてでありますが、プレーパークは、たき火や穴掘りなど、公園では通常できない遊びを、子どもたちが自分の責任で生き生きと行える場であり、子どもたちの健全な育成に寄与するとともに、公園利用の活性化の面からも意義があると考えております。
こうしたことから、都立公園では、平成十六年度から活動の場を提供しており、ボランティア団体が地元自治体の支援を受けながら、さまざまな活動を行っております。
現在、プレーパークを開設している戸山公園や光が丘公園など六公園では、焼き芋づくり、泥遊びや樹木を利用したロープ遊びなど、工夫を凝らした遊びが盛んに行われており、この六公園における利用された延べ日数は、十七年度に二百十三日、十八年度には三百七十九日となっております。
質問2
プレーパークの活動は、遊びを通して発見や創造する喜びが味わえ、子どもが自分の人生を切り開いていく力、すなわち生きる力をつけていく場でもありますが、親が主体的に活動にかかわることによって、親たちの育ちの場にもなっているという声が届いています。今後、こうした活動の回数をふやしていくことが求められています。
しかしながら、この活動は親やボランティアの負担が大変大きく、少しでも軽減できるように、子育て支援を担当する地元区市はもとより、都も公園管理者として、親やボランティアの声に積極的に耳を傾け、活動しやすいように支援をしていく必要があると思いますが、見解を伺います。
今や、国を挙げて子どもの居場所づくりが進められていますが、子どもたちが生活している、それぞれの地域に合った子どもの目線の施策が大切であり、都としても、プレーパーク活動の啓発にも努めていただくよう要望し、質問を終わります。
答弁2
▼建設局長
プレーパーク活動に対する支援についてでありますが、都立公園におけるプレーパーク活動への支援は、基本的には地元自治体が子育て支援や社会教育活動の一環として行うものであると考えております。都としては、公園管理者として積極的に場の提供を行うとともに、用具の貸し出しなどの支援に努めてまいりました。
今後とも、ボランティアが地元自治体と行う意見交換の場などに参画し、親やボランティアの声の把握に努めるとともに、地元自治体と連携して、公園管理者として可能な支援を行ってまいります。
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