未来を託す子どもたちに夢を 踏切対策は首都圏自治体連携で |
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 鈴木隆道(自民党) |
■東京ビッグトーク |
質問1
初めに、東京ビッグトークについてお伺いをいたします。
ことしも、親が子どもを、あるいは子どもが親を殺すという事件が相次ぎ、多くの都民の皆様が暗たんたる気持ちで年の瀬を迎えていることと思います。これらを見るにつけ、目先の金銭や快楽を優先する社会の風潮、一時の衝動を抑えられない大人たちの姿が子どもたちをスポイルしつつあるのではないかと強く感じます。
先ごろ私は、こうした崩れつつある社会を再生する手がかりに出会いました。十一月二十一日、かつて日本じゅうに熱い感動を与えた有森裕子さんらオリンピック選手を迎えて東京ビッグトークが開催されました。会場は六百人を超える都民で埋まり、多くの十代の若者が参加をいたしまして、そして、それぞれの競技をきわめたアスリートがみずからの実体験に基づき熱く語り、会場は大いに盛り上がったとのことであります。
そして、それに参加した高校生たちの感想文を拝見したところ、会場の熱気がそのまま乗り移ったようでありまして、オリンピック選手の話を聞き、大きな夢をかなえるために日々精進しようと思う、オリンピックは日本じゅうの人が日本のことについて考えるよい機会だなどと、若者らしい純粋で率直な感動や興奮がつづられておりました。こういった感動や興奮を一人でも多くの子どもたちに体験させることこそが社会を再生することにつながっていくと思います。
また、「十年後の東京」でも、子どもたちが健全に成長し、夢を持って生き生きと生活できる都市へと東京が変わっていく道筋が描かれており、これを着実に実現していく必要があります。
いつの時代のどんな社会であっても、子どもは宝物であります。子どもを健やかに育てることができなければ、その社会は滅びるしかありません。
そこで、東京の、そして日本の未来を託す子どもたちに、今こそどんな夢と希望を与えていくべきか、知事の率直なお気持ちをお伺いしたいと思います。
答弁1
▼知事
子どもたちにどんな夢と希望を与えていくべきかについてでありますが、ご指摘のとおり、子どもたちを取り巻く現況には我々としても危機感を抱かざるを得ません。
戦後、我々は平和で豊かな時代を享受してきましたが、その代償として、子どもたちは物や情報におぼれて、みずからがみずからの意思でどう行動していくかがわからなくなり、大人たちもしっかりと子どもをしかることができなくなりました。それゆえにも、子どもそのものが耐性、つまりこらえ性を失って、本質的に非常にひ弱になったと思います。
本来、子どもたちは、中でも十代の青春にある子どもたちは、個性の表象であります感性や情念において、大人に比べてもはるかに鋭く、すぐれたひらめきを持っております。彼らはまた、まさに日本の将来を担う原石でありまして、本物に出会った感動に触発され、みずからを鍛え、磨いていく機会を積極的につくることで人生を豊かにし、一生の糧となるような夢と希望を彼らに与えるべきだと思っております。それがまさに子どもあっての親としての我々の責任ではないかと思います。
東京オリンピック招致は、その大きなよすがになると思っております。すぐれた競技者たちが国を背負ってみずからの肉体を限界的に駆使して、極限のドラマをつくり上げていくオリンピックは、実体験を伴わないバーチャルなテレビ等による情報からはとても得ることのできない、人生を左右する大きな重みやすばらしさを持っていると思います。そこから子どもたちに夢と希望を、さらにかけがえのない宝物となる心の財産を与えていきたいものだと思っております。
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■首都東京が果たすべき都市外交 |
質問1
次に、東京が果たすべき都市外交について伺います。
私は先般、都議会海外調査団の一員として、エジプト、スペイン、フランスを訪問してまいりました。私が強く印象づけられたのは、我々日本人が思っている以上に、世界からの日本への関心や評価が高いということでありました。
例えばスペインのマドリード市は、二〇〇三年以降、国際化に力を入れています。空港の拡張、環状道路、鉄道の整備など国際都市にふさわしい都市インフラの整備を推進し、二〇〇七年には国際活動戦略本部、マドリードグローバルを設立し、成長したマドリードの姿を世界に発信をしようとしています。
そして、マドリードの国際化の最大のターゲットは、実は東京であります。担当官によれば、東京の文化、技術、食、環境との共存などは非常に魅力的ととらえられており、東京はマドリードにとって巨大なライバルであり、模すべきモデルであり、また協力すべきパートナーと考えているそうであります。マドリード市は、在スペインの日本大使館やジェトロ、日本からの進出企業、日系の旅行者団体と意見交換を重ね、日本からの投資また観光誘致計画であるプラン・ハポンを策定し、日本、特に東京に熱烈なラブコールを送っています。
また、在スペイン大使館でも、最近の日本ブームについてお伺いをいたしました。スペインでは、社会が急速に成熟する中で、観光、食文化、アニメなどを通じて日本への評価、関心は非常に高く、さらに高まっていくと予想されるものの、日本に関する情報はまだまだ不足をしているようであります。このような日本、東京の文化や観光などに対する関心は、世界の他の地域でも同様なのではないかと思います。
また、観光、文化だけではなく、東京都の先進的な政策は世界に誇れるものだと思います。知事も出席したニューヨークの大都市気候変動サミットで、東京の環境対策や水道技術が世界に驚嘆されたことは、いまだに記憶に新しいところであります。
アジアでは、石原知事の提唱で設立されたアジア大都市ネットワーク21を通して、東京のリーダーシップのもと、危機管理対策、観光振興、文化交流、感染症対策、地球温暖化対策などさまざまな分野で連携が進み、共通の都市問題の解決に役立っています。
都のすぐれた取り組みを紹介したり、観光、文化などの交流を進めていくことは、アジアに限らず、先ほどのマドリードの例のように世界じゅうから歓迎されるものと思います。そして、このような活動が世界における東京の評価を高め、オリンピック招致の実現にも大いに役立つのではないかと思います。
東京や東京都政に対する国際的な関心をどのようにとらえているか、そして、どのように対応していくのか、都市外交全般の観点から見解を伺います。
答弁1
▼知事本局長
東京に対する国際的関心と対応についてでございます。
東京には伝統的な文化から、先端技術、現代美術までさまざまな魅力が集積をしており、海外からも多くの観光客が訪れております。同時に、都が進めてまいりました治安、危機管理、環境対策などの先進的な施策は、共通の問題を抱える多くの大都市の関心を集めております。
こうした東京の魅力を世界に発信し、交流の礎にいたしますとともに、先進的な施策を広く国際社会に向けてアピールをし、世界に共通する都市問題の解決に貢献していくことが東京の都市外交の大きな役割であり、この積み重ねがオリンピックの招致にもつながっていくものと考えます。今後とも、都庁一丸となって都市外交に積極的に取り組んでまいります。
質問2
このように、世界から寄せられる、東京のことを知りたい、東京と交流したい、東京から学びたいという要望にこたえていくためには、世界とのネットワークづくりが必要だと考えます。現在のネット社会においては、ホームページの充実による海外への情報発信も大きな柱ですが、さらに重要なのは、人と人とのネットワークだと思います。
世界に向けて、ニーズに合った貢献を行い、東京を効果的にアピールしていくためには、現地の状況をよく把握している人々と都庁との間でネットワークを形成し、必要な情報を迅速適切に収集伝達することが必要であります。
オリンピック招致のためには、情報だけでなく、環境対策やスポーツ振興などで世界に貢献したいという東京の情熱を世界に知ってもらわねばなりません。熱意を伝えるには、直接的なコミュニケーションにまさるものはありません。オリンピック招致をも視野に入れて、世界と東京との間でどのように人のネットワークづくりに取り組んでいくのかをお伺いいたします。
答弁2
▼知事本局長
都庁と世界をつなぐ人的ネットワークづくりについてのお尋ねでございます。
現代のようなIT社会におきましても、人と人との直接的なコミュニケーションは依然として大きな役割を担っており、人的なネットワークの構築が必要であることはご指摘のとおりであろうと思います。
都はこれまでも、アジア大都市ネットワークの取り組みなどを通じまして、海外都市との間に緊密な人間関係を構築してまいりました。さらにこれからは、東京マラソンや環境技術に関する実務者会議など大きな国際イベントや国際会議を開催いたしますとともに、海外からの研修生や留学生を積極的に東京に受け入れまして、そこで培った人間関係を将来にわたり維持していくことが重要であると思います。
これまで築き上げてきた人的ネットワークを継続、深化させますとともに、ネットワークのすそ野を広げることで、オリンピック招致の実現にもつなげてまいりたいと考えております。
質問3
東京の魅力、東京の先進的な政策は世界に誇れるものであり、世界から求められています。しかし、だからといってオリンピック招致をかち取るのは容易ではありません。厳しい競争を勝ち抜くためには、世界と交流し、世界に貢献していこうという東京の強力なメッセージを今まで以上に積極的に発信していくことが必要です。
もちろん、世界への貢献は、オリンピック招致のためだけに行うものでないことはいうまでもありません。むしろ東京が果たすべき責務ではないかと思います。石原知事には、環境、観光、先端技術などさまざまな分野において、アジアだけでなく、世界でもリーダーシップをとって世界に貢献し、東京そして日本の国際的評価をさらに高めていただきたいと考えています。
石原知事は、これまで先進的な政策でアジア大都市ネットワークにおいて新たな国際ネットワークの姿を示してまいりました。また、この九月には、地球温暖化によって深刻な影響を受けているツバルにみずから足を運び、地球環境の危機をアピールいたしました。
今、世界が直面しているさまざまな課題に立ち向かうためには、国の外交だけに頼るのではなく、従来の枠組みにとらわれずに世界の都市を連携させ、都市から世界を変えていかねばなりません。今後、東京の都市外交をどのように進め、世界でどのような役割を果たしていこうとしているのか、知事の考えを伺います。
答弁3
▼知事
今後の東京の都市外交についてでありますが、東京には都市問題の解決には必要な技術、人材、ノウハウなどが集積しております。こうした資源を生かして、大都市が共通して抱える具体的な課題に連携して取り組むことを通じまして、世界に貢献していきたいと思っております。それが私の考える都市外交であります。
これまでも、アジア大都市ネットワークやロンドンとの政策提携など単なる儀礼的な友好親善にとどまらない実質的な都市外交を展開し、成果をそれなりに上げてきました。今後とも、東京の持てる力を最大限に活用しまして、世界の都市と知恵や経験を分かち合いながら都市問題の解決に当たることによりまして、東京の国際的評価をさらに高めていきたいと思っております。
こうした取り組みの積み重ねがオリンピックの招致にもつながると思っておりますし、また、首都東京の都市外交のためにも、例えば羽田空港の一層の国際化が不可欠だと思っております。昨日も福田総理にそのことを念を押してまいりました。
その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
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■教職員の人事権移譲 |
質問1
次に、教職員の人事権移譲について伺います。
現行制度においては、区市町村立小中学校の教職員の給与負担と人事権については、より財政力が安定し、広域的な人事配置が可能な都道府県が持つことにより、義務教育の質の維持向上を図ることとされています。
しかし、このことは、教員の区市町村への帰属意識を失わせるとともに、区市町村が地域の特性を生かした独自の展開をしていくことを難しくしている現実があります。近年、一層複雑多様化する学校教育における課題に迅速的確に対応し、教育改革を積極的に進めていくためには、区市町村の掲げる教育理念の実現に向けて、学校と地域が連携してともに子どもを育てていくことが重要であります。
子どもたちは、勉強はもちろん、音楽、スポーツなどさまざまな分野において無限の可能性を持っています。子どもたちの興味、関心を引き出し、その才能を開花させ、個性豊かな子どもたちを育てていくためには、何よりも教員が創意工夫による特色ある授業を展開できるような教育環境が欠かせません。情熱を持って地域の教育に積極的に取り組む優秀な人材の確保や教員の意識改革を進めるために、地域に根差す意識の高い教員を区市町村ごとに採用、配置できるようにすることが有効であります。
しかし、本年三月に出された中央教育審議会答申「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」においては、人事権の移譲については、依然として関係者間での意見の隔たりが大きく、すべての市町村において一定水準の人材確保を図る上で支障が生ずるという懸念が大きい、そのために、広域での人事調整の仕組みや給与負担のあり方などとともに引き続き検討すると、先送りにされてしまいました。
個性豊かな教育を展開するために、人事権移譲はぜひとも実現すべき課題であり、全国的な人事権移譲の実現が早急には望めない現状にある今こそ、東京都が先陣を切って進めていくべきであると思います。
区市町村が地域に根差した優秀な人材を確保、育成し、特色ある学校教育を展開していくためには、区市町村が教職員の人事権を持つことが必要不可欠であると考えますが、区市町村立小中学校教職員の人事権の移譲について、都教育委員会の見解を改めて伺います。
答弁1 ▼教育長
区市町村立学校教職員の人事権移譲についてのご質問にお答え申し上げます。
都教育委員会は、昨年度、人事権移譲に関する見解を取りまとめ、文部科学省に示したところでございます。区市町村立学校教職員の人事権につきましては、必要な法改正を行った上で、すべての区市町村に対して給与の負担とあわせて移譲すべきでありまして、その際、採用や異動、昇任等につきまして区市町村間の不均衡を生じさせないための広域的な調整を図る仕組みを整備する必要があるとともに、区市町村が給与の負担を行うため、適切な財源の確保が不可欠であると考えております。
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■踏切対策 |
質問1
次に、踏切対策について伺います。
東京は、都市機能の集中、集積を競争力の源泉とし、世界を代表する成熟を遂げた都市としてその地位を確立してまいりました。しかしながら、都市の骨格を形成する基盤施設はいまだ整備の途上であり、交通渋滞などの都市問題が発生しています。
この原因の一つが踏切であります。さまざまな問題が都民生活に多大な影響を与えています。
まず、人や物の流れの面からは、あかずの踏切によりバス等の定時性確保が困難となるほか、物流効率化の妨げとなっています。また、安全・安心なまちづくりの面からは、無理な横断が死傷事故を引き起こしています。さらに、環境の面からは、踏切を待つ自動車からの排気ガスが都市環境、ひいては地球環境を悪化させる原因ともなっています。
まさに踏切問題は二十世紀の負の遺産であり、早期に解消すべきであります。東京を真に世界の範となるようなさらに高いレベルの成熟都市とするためには、踏切対策のさらなる加速が不可欠と考えます。そこで、踏切対策の推進に向けた今後の都の取り組みについて伺います。
答弁1 ▼都市整備局長
踏切対策の推進についてでございますが、交通渋滞や地域分断を解消し、快適で利便性の高い都市を実現するためには、踏切対策の推進が必要でございます。
抜本的な対策でございます連続立体交差事業につきましては、踏切対策基本方針に掲げました検討対象二十区間のうち、新たな取り組みである区施行を含めた三区間で計画の具体化を図ってまいります。その他の区間につきましても、地元区市とともに、沿線のまちづくりを含め検討を深めてまいります。
また、早期に実施可能な対策として、踏切道の拡幅、踏切システムの改善などをあわせて促進いたします。
今後とも、区市町、鉄道事業者など関係者間の連携を一層強化し、効果的な踏切対策に積極的に取り組んでまいります。
質問2
こうした踏切対策の実施に当たっては、多額の事業費を要することから、安定的な財源の確保が何より不可欠であります。しかし、現在、政府・与党内では道路特定財源をめぐりさまざまな議論があり、予断を許さない状況が続いております。道路特定財源は、受益者負担の原則に基づく合理的かつ安定的な財源として暫定税率を延長し、緊急の課題である踏切対策等道路関係施策に重点的に投入すべきと考えます。
また、国の調査によれば、あかずの踏切などの緊急に対策の検討が必要な踏切は全国に千九百六十カ所、このうち約半数の九百六十七カ所が実に関東ブロックにあります。神奈川県、千葉県、埼玉県など首都圏の自治体でも踏切問題が深刻な事態となっています。
昨日、石原知事が福田総理と会談された際、知事から首都の交通網を分断しているあかずの踏切の早期解消を含め、首都東京の重要施策に対し国も力を尽くすよう求めたところ、総理は前向きの返答をされたとのことであります。
そこで、日本の社会問題である踏切問題の解消に向けて、東京から、また首都圏から先駆的な取り組みを推進していくべきと考えます。そこで、都は、踏切対策の加速に向けて、首都圏の自治体と連携をして国に働きかけていくべきと考えますが、都の見解を伺い、質問を終わります。
答弁2
▼都市整備局長
踏切対策に関します首都圏の自治体との連携についてでございます。
ご指摘もございましたけれども、首都圏には遮断時間が長く自動車交通量が多い踏切が集中しておりまして、踏切対策による効果が非常に大きいことから、重点的な推進が必要であるというふうに考えております。そのためには、暫定税率の延長による道路整備特定財源の確保や国庫補助制度の充実などを国に求めていくことが重要でございます。
都は、これまでも、一都七県で構成する首都圏整備促進協議会として提案要望を行ってまいりましたが、引き続きこうした場を通じて、首都圏の自治体とも連携しながら踏切対策の推進に向け、国に強く働きかけてまいります。
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