▼山口委員
それでは続きまして、都立病院について幾つかお伺いしてまいりたいと思います。
まず、都立病院における個人未収金についてお伺いしたいと思います。
最近、マスコミ報道でもよく取り上げられておりますが、医療機関、とりわけ公立病院の患者の個人未収金は、ここ数年増加傾向にあるといいます。都立病院についても、十七年度末には十三億円を超える個人未収金があったとの報道があり、経営への影響はどうなるのか心配しているところでありますが、そこでまず、本来、患者本人が負担すべき個人分の未収金について、十八年度末の現在高を伺います。あわせて、未収金となった主な理由についてもお伺いいたしたいと思います。
▼病院経営本部長
病院経営本部では、個人が負担すべき診療費のうち、年度末時点において発生日から一年以上経過したにもかかわらず未収となっているものを個人未収金というふうにしておりまして、この個人未収金の十八年度末の総額は約九億二千七百万円となっております。
その主な理由でございますけれども、生活保護を受給するには至らないまでも経済的に困窮されている方、転居して居場所が不明な方、本国に帰国してしまい音信不通となった外国人、患者本人が死亡後、遺族が相続放棄し、支払いを拒否するケース、それから、支払い能力があるにもかかわらず支払いを拒否しているケースなどでございます。
▼山口委員
今いただいた答弁により、依然として九億円を超える金額が個人未収金となっていること、また、さまざまな理由で未収金が発生していることがわかりました。ところで、病院の中にはさまざまな診療科があります。通常の診療科であれば、大抵の場合、予約をとり、受診をするのが基本的なルールでありますが、救急部門では事故や病状の急変など不測の事態で病院を受診するため、保険証や現金の用意ができないなどの理由で未収金になりやすいのではないかと考えます。
そこで、個人未収金に占める救急部門の割合はどのくらいなのか、また、ほかに救急部門について特徴的なことがあればお答えをいただきたいと思います。
▼病院経営本部長
都立病院のうち、東京ERを有する広尾、墨東、府中、この三病院につきまして詳細に調査をいたしました十七年度分を見てみますと、診療収入に占める救急部門の割合は約七%にすぎませんが、未収金では救急部門が全体の約三〇%を占めておりまして、未収金の発生割合が極めて高くなっております。
また、救急部門の未収金は、約五〇%が自費診療、自費受診をされた方でございまして、そのうちの約九〇%は保険証の確認ができない方、または無保険の方となっております。
▼山口委員
今の答弁で、救急部門の未収金は三〇%を超すと、極めて高いということがわかりました。また、救急部門では自費の患者の割合が高いとの答弁でしたが、急な受診で保険証を持参できなかった方以外にも、そもそも健康保険に加入をしていない、あるいはできない無保険状態の方がこれほどいるということもわかり、非常に驚いたわけでもあります。
無保険状態の方は、病気になっても医療機関への受診をためらって、相当重症になってから受診をして、結果的に高額な診療費が未払いの状態になっているのではないでしょうか。いわばこういった悪循環が考えられるわけでありますが、民間病院であれば公的補助が適用される場合もあるそうですが、都立病院の場合はないということであります。生活保護を受けていないけれども、ぎりぎりの生活を送っている経済的困窮者や、無保険の外国人を病院から締め出すということは、人道上、または医師法上、許されないことであります。
しかし、どうしても払えない方や、先ほど答弁にありました帰国してしまった外国人の分、住所がわからない方の分は未収金となり、三年経過すると不納欠損として処理をされ、損金となってしまうわけであります。これは医療費だけの問題ではありませんし、もはや公立という立場でこういった患者を拒否できないのは当たり前のことであって、都だけで抱え込むのではなく、何らかの救済制度が国レベルで必要な部分だと私も思います。
今後、ぜひ国とも協議をしていただきたいと要望しておきたいと思いますが、それにしても、これまで都立病院の個人未収金の額、発生理由、ERを含む救急部門の傾向等についてお聞きをいたしましたが、発生した未収金をしっかりと回収していくことも重要ですが、何よりもまずは発生を未然に防止する取り組みを進めることが重要です。どんな方でも受け入れなければいけない都立病院であるからこそ、都立病院では未収金に関しどのような発生防止策をとっているのか、お伺いいたしたいと思います。
▼病院経営本部長
都立病院におきましては、医療相談員が中心となりまして、日常的に患者さんと接している看護スタッフなどの医療スタッフと連携を図りながら、医療費の支払いが困難な方の早期把握にまず努めるとともに、個別に相談に応じているところでございます。
具体的には、ご本人の申請によりまして、医療費が保険者から直接医療機関に給付される制度等の情報提供、それから各種の医療費助成制度、生活保護制度などに該当する場合には申請窓口を案内するなどの対応を行っているところでございます。
また、これらの制度に該当しないなどやむを得ない場合の措置といたしましては、一時的に支払いが困難な方には支払い期限の延期の措置を、一括での支払いが困難な方には分割納付方法をご案内しているところでございます。
▼山口委員
発生防止に関する取り組みはしているということはわかりました。しかし、こういった発生防止策の対策をとってもなお、それでもさまざまな事情でこれだけの未収金が発生をしているわけであります。中には経済的に苦しいなどのケースがあることは十分承知をしておりますが、診療を受けたからには診療費を払うのは当然のことでありまして、公平性の観点からいっても回収はきちんと行っていかなければいけないと考えております。
そこで、都立病院では発生した未収金について、現在どのような回収対策をとっているのか、お伺いいたしたいと思います。
▼病院経営本部長
納付期限までに支払いがなかった場合、まず電話及び文書による催告を行い、さらに滞納が長期間にわたる場合には督促状を送付するとともに、個別訪問をして支払いの交渉を行っているという現状にございます。
なお、各病院が有する回収困難案件につきましては、都債権回収事業を展開しております主税局都債権特別回収班に依頼をし、回収を進めているところでございます。
▼山口委員
今の答弁の中で、特に回収困難な案件については主税局に依頼をしているということでありましたが、主税局の債権回収事業での実績はこれまでどのぐらいであったのか、お伺いしたいと思います。
▼病院経営本部長
主税局には、平成十六年度から十八年度までの三年間で約千二百人、約三億七千万円分の未収金回収を依頼しておりまして、その三年間に回収金額が約六千万円、二百五十四人の方が完納しているという実績にございます。また、裁判所への支払い督促の申し立てを百六十六人に対して行いまして、うち五人が給与差し押さえなどの強制執行の申し立てに至っております。
なお、主税局による債権回収事業は今年度で終了するため、今年度は新たな案件の依頼を行わずに、これまで依頼した案件、その回収業務に従事をしていただいているところでございます。
▼山口委員
今の答弁で、都立病院が抱えていた三億四千万もの困難案件を主税局が引き取って、約六千万円の回収実績があるということはわかりました。困難案件をこれだけ回収できるというのは、やはり都の徴収ノウハウは高いレベルに今あるのだろうと、これまで行われてきた都債権回収事業の効果があったことはよくわかりました。
しかしながら、主税局による債権回収事業は今年度で終了し、新規の依頼はしていないということでありますが、今年度新たに発生した困難案件にはどのように対処していくつもりなのか、また、今後病院経営本部は未収金回収問題に対してどのように対応していくおつもりか、お伺いをいたしたいと思います。
▼病院経営本部長
現在、主税局の出張徴収や裁判所内での和解交渉の立ち会いに病院経営本部の職員を同行させるなど、主税局が持つノウハウの承継に努めておりまして、今年度新たに発生いたしました困難案件の一部につきましては、本部職員が督促状発送や電話催告、現地での交渉などの業務を行うとともに、主税局のノウハウを反映させた未収金管理回収に関するマニュアルの作成を進めているところでございます。
次年度につきましては、本部内に債権回収班を設置いたしまして、各病院からの困難案件を一括管理できる体制の整備、これを進めたいというふうに考えております。
▼山口委員
これまでの答弁で、さまざまな発生予防対策や回収努力を行っていることはわかりました。さらに、次年度は管理回収マニュアルを作成されて本部の体制強化をされるということで、効果的、効率的な対応を期待しているところであります。
先ほどの答弁にもありましたが、支払いが困難な方には、各病院において福祉制度の紹介、利用といった支援を適切に行うなどの未収金発生防止策をしっかりと行うことがまず第一であろうかと思います。その上で、払うべき方にはきちっとお支払いをいただく、これは当然のことだと思いますので、今後もしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
最後に一つ申し上げます。
今回取り上げました九億二千七百万円の個人未収金については、決算書や決算説明資料を見ても記載はなく、医業未収金として百六十一億と記載をされているのみです。これは健康保険や社会保険に請求中の金額や、月をまたいで入院をしている方の医療費など、単に会計上のタイムラグから決算時点では未収金となっているものもありますが、後日ほぼ確実に回収できるものがほとんどです。
病院会計だけではなく、ほかの公営企業会計も同様ですが、発行済み債券、つまり借金が資産として計上されるなど、一般の会計書類とは異なる点が多々あることから、経営状態が把握しづらいのではないかと感じます。都の一般会計においては、今回、史上初の決算参考書を用いた決算審査が行われました。他の自治体を例に挙げれば、大阪市ではことし、公営企業会計の決算書をわかりやすく説明したアニュアルレポートを作成しております。都立病院の独立行政法人化の検討が進んでいるようですが、こうしたさまざまな動きがある中で都立病院改革を論じていく上で、経営、財務の観点は非常に重要なポイントであると思います。
関係局長がおそろいですので、都の公営企業会計においても経営状況をわかりやすく説明する取り組みをお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
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