平成19年11月16日(金) |
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 田中たけし(自民党) |
■病院事業 |
▼田中委員
先ほどの鈴木章浩委員に引き続きまして、都議会自由民主党を代表し、総括質疑をさせていただきます。
まず最初に、病院事業についてお伺いいたします。
近年、病院経営を取り巻く環境は厳しさを増し、経営の悪化や診療の休止などの報道に接する機会がふえております。中でも、全国的に、多くの公立病院がより厳しい経営環境にあると認識をしております。
去る十月二十六日の日本経済新聞に、厚生労働省の調査として、国公立病院の赤字額が二年前の二倍に拡大し、その要因として、国公立病院が産婦人科や小児科、救急など、黒字が出にくい医療を求められることが多く、費用の圧縮が難しいためと見られると報じられておりました。このような全国的な状況が都立病院においてもいえることなのか、平成十八年度の決算の収支状況を見ながら確認していきたいと思います。
平成十八年度の病院会計決算説明書を見ますと、前年度と比較して、全体収支では純損失が二十億円から六千万円に減少し、収支の改善が図られておりますが、病院経営本部が最も重要な指標としている、みずからの収入でどの程度費用を賄っているかを純粋に示す自己収支比率は、過去最高であった平成十七年度決算の七三・〇%から二・一ポイント悪化し、七〇・九%となっております。
そこで、自己収支比率が低下した原因をどのように分析しているのか、お伺いいたします。
▼病院経営本部長
平成十八年度決算におきまして自己収支比率が低下いたしましたのは、収入が低下したこと、これが大きな要因でございまして、その原因といたしましては、平成十八年度の診療報酬改定が三・一六%という制度発足以来最大のマイナス改定になったこと、それから、医師の欠員等によります患者数の減少で診療収益が減少したことによるものでございます。
また、費用面におきましても、定年退職者の増加に伴う退職手当などで若干の増嵩が見られたところでございます。
▼田中委員
今ご答弁いただきましたように、収支が低下した要因としては、診療報酬の大幅なマイナス改定や医師不足が大きく影響したということでありますが、二年に一度改定される診療報酬については、十四年度以降、三回連続してマイナス改定であったと伺っております。特に、十八年度改定は全体でマイナス三・一六%で、制度発足以来最大のマイナス改定であったということでございました。こうした影響を受け、都立病院を初めとする公立病院だけではなく、民間病院も経営が悪化していると聞いており、病院経営をめぐる環境は厳しいといえます。
診療報酬については、国が全国一律のものとして決めるもので、病院側は外的要因として受けざるを得ないという事情があります。そうとはいえ、マイナス改定という厳しい経営環境のもとにおいても、不断の経営努力が必要であります。
そこでお伺いいたしますが、都立病院における十八年度の診療報酬マイナス改定の影響はどの程度だったのでしょうか。また、マイナス改定という逆風の中で、どのような経営努力をされたのでしょうか、お伺いいたします。
▼病院経営本部長
都立病院におきます診療報酬改定の影響につきましては、入院基本料や紹介患者加算など、項目ごとに試算をいたしました結果、平成十八年度では、入院、外来収益を合わせまして約二十五億円の収入減になったものと推計をしております。
一方で、経営努力についてでございますけれども、これまでも経営努力を連綿と積み重ねてまいりましたけれども、収益面におきましては、各病院が急性期医療に積極的に対応いたしました結果、入院、外来とも患者一人当たりの診療単価が増加いたしまして、マイナス改定の影響を最小限にとどめることができました。
また、費用面では、都立病院のスケールメリットを生かしまして、新たに診療材料や検査試薬の共同購入を実施いたしますとともに、広尾病院に引き続きまして大塚病院にいわゆるESCО事業を導入するなど、費用の節減に努めたところでございます。
▼田中委員
診療報酬のマイナス改定の中でも経営努力を行い、厳しい経営状況を何とか打開しようとする姿勢、今ご答弁いただきましたが、理解をいたします。特に、高度医療の提供等による患者一人当たりの診療単価が増加していることに加え、診療材料等の共同購入による費用の縮減など、経営努力をしているということは高く評価できるものと思っております。
しかし、こうした不断の経営努力にもかかわらず、近年、自己収支比率は七〇%台の前半を推移しております。これは、都立病院が赤字にならざるを得ない何らかの構造的な問題があるのではないでしょうか。それについてのお考えをお聞かせ願います。
▼病院経営本部長
都立病院は、高水準で専門性の高い幅広い総合診療基盤に支えられました行政的医療を提供していく役割を担っておりますけれども、行政的医療でございます救急医療、周産期医療、小児医療などは、手厚い人員体制が求められることなど、現行の診療報酬制度におきましては不採算性の高い医療分野でございまして、みずからの経営努力だけでは対応しがたいものがございます。
また、病院収入の大宗を占めます診療報酬は、大都市部におけます高コスト構造が反映されておりません。全国一律に定められておりますために、大都市部における病院経営に不利な面があるということに加えまして、近年では、経営努力の積み重ねで改善した収支が、二年に一度のマイナス改定で吸収されてしまうといったことが繰り返されているという状況にございまして、これが、自己収支比率七〇%台でいわば伸び悩んでいるということの主な原因だというふうに考えております。
▼田中委員
自己収支比率が七〇%台前半を推移しているのは、今お話しいただいたように、全国一律の診療報酬制度や、都立病院が提供している行政的医療の性格といった、都立病院を運営する上での構造的な課題が原因であるということでございました。
現在、病院経営本部は都立病院の再編整備を進めております。荏原病院などの地域医療を担う病院は東京都保健医療公社へ移管し、行政的医療は都立病院が提供するとして、都立病院の役割のより一層の明確化を図っているところでございます。
確かに行政的医療は不採算の面がありますが、採算性を重視する余り、こうした不採算な医療をおろそかにすることはできません。この不採算な医療分野ではありますが、都民の皆様が安心して生活できる医療体制の構築こそ、都立病院が担う使命であると考えております。
しかし、一方、病院事業も独立採算を旨とする公営企業として運営している以上、こうした厳しい状況のもとでも、なお一層の収支改善への取り組みが必要であると考えております。
次に、もう一つの経営のマイナス面であります医師不足の問題についてお伺いいたします。
ことし八月、奈良県で救急搬送中の妊婦さんが死産したという痛ましい事件がございました。これは、深刻な医師不足や医師の過重労働を背景とした構造的な問題がこうした悲しい事態を引き起こしたということは、今年度の第三回定例会で我が党の代表質問でも指摘したとおりであります。
また、この十月三十一日には、北区の総合病院、東十条病院が全科休診いたしました。この背景の一因にも医師不足があると報道されております。
そこで、都立病院における医師不足の状況についてお伺いいたします。また、その原因は何だったのでしょうか。あわせて、医師の欠員による収支への影響はどの程度と試算できるのか、ご所見をお伺いいたします。
▼病院経営本部長
平成十八年度の医師定数と十月一日現在の現員を比較してみますと、医師全体の定数八百五十四人に対しまして四十七人、五・五%の欠員となっております。また、とりわけ産婦人科医師につきましては、定数四十七人に対しまして十二人、二五・五%と大幅な欠員となっております。
このため、一部病院において分娩の受け入れ休止、一部診療科における入院診療の縮小などを行わざるを得ない状況にございました。これは、長期間の連続勤務を余儀なくされるなど、勤務条件の厳しさを背景とする、いわゆる勤務医離れの傾向に加えまして、平成十六年度から導入されました臨床研修医制度の影響で、全国的に大学医局でもマンパワー不足が生じまして、いわゆる医師の引き揚げが行われたということが主な原因と考えております。
医師の欠員によります収支への影響でございますけれども、一つの試算でございますが、入院、外来収益を単純に医師の現員で割りますと、医師一人当たりで年間約一億円に相当する診療行為を行っていることになりまして、四十七人の欠員は、人件費や材料費の増加を考慮してもなお、自己収支比率で約二・六ポイント程度の影響があるというふうに推計をしております。
▼田中委員
ありがとうございます。
医師の不足は経営面に大きな影響を与えるということでございますが、病院は医師を中心として運営される業種であり、医師の欠員は、診療の休止や縮小など、都民に対する医療サービスの低下をもたらすだけではなく、患者数の減少を招き、病院の経営にも大きな影響を与えてまいります。
また、都立病院の医師の給与は、病院を経営する六十一都道府県、政令市中、最下位と伺っております。また、民間との給与の比較ではございますが、民間の医師は、本来の医療勤務に対し公立よりも多いと思われます収入を得ており、さらに、時間外における他病院での夜間当直等による副収入を得ていると伺っております。
一方、都立病院の医師は公務員であるため、他の副収入を得ることができません。また、都立病院の医師の給与は人事委員会の勧告に基づき決定されておりますが、人事委員会は、公務員である旧国立病院の給与を参考にし、行政職の給与の動向を踏まえて決定しているとのことであり、民間の医師の収入、また特に時間外の副収入は反映されておりません。まさに大きな官民格差があると私は考えております。
しかし、このような厳しい状況のもとでも、都立病院の医師は日々都民の生命と健康を守るため頑張っていただいております。医師の確保と処遇改善に全力を挙げる必要があると私は考えます。
そこでお伺いいたしますが、医師不足に対して病院経営本部としてどのような対応をとっているのでしょうか、お伺いいたします。
▼病院経営本部長
ただいま田中委員よりご指摘がございましたとおり、都立病院の医師の処遇は全国的に見ましても低い水準にございます。平成十八年度におきましては、この処遇を少しでも改善しようということで、採用確保の困難度を考慮いたしまして、医師等に支給されております初任給調整手当の引き上げを行いますとともに、非常勤医師の報酬の増額などを実施いたしました。
また、大学医局へ医師派遣の働きかけを継続的に行いますとともに、非常勤医師の活用を図ることで、診療への影響を最小限に食いとめるという努力をしたところでございます。
さらに、将来的にも大学医局の人員派遣機能が低下し続けるおそれが十分にありますことから、都立病院において次代を担う若手医師を育成、確保する体制の検討を行いまして、実はこのことが、来年度から開校いたします東京医師アカデミー構想に結びついたものでございます。
こうした取り組みによりまして、総合診療能力と高い専門性を備えた医師の確保に努めてまいりました。
▼田中委員
ぜひ医師の処遇改善に取り組んでいただきたいと思います。
自己収支の悪化の原因が、診療報酬のマイナス改定や医師不足による患者数の減少といった病院経営の構造的な要因による面が強く、都立病院の経営努力だけではなかなか解決が困難な状況であることは理解しております。
しかし、平成十八年度決算を見ますと、累積欠損金が五十八億円と引き続き増加傾向にあり、都立病院の経営を取り巻く環境は予断を許さない状況にあります。この厳しい状況の中でも経営努力を行うとともに、必要な一般会計繰入金を確保するなど、病院本来の事業収支である経常収支を改善し、早期に累積欠損金の解消を図り、安定した経営基盤のもとで、良質な医療サービスを継続的に提供していくことが必要であると思います。
最後に、今後の病院運営に当たっての病院経営本部長のご決意をお伺いいたします。
▼病院経営本部長
たび重なる診療報酬のマイナス改定や特定診療科を中心といたしました深刻な医師不足など、病院経営を取り巻く環境は、先生ご指摘のとおり、大変厳しい状況にございます。
こうした医療環境のもとで、病院経営本部と各都立病院が一体となりまして、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を都民の皆様に提供していくという都立病院の基本的役割、本来の使命を安定的に果たしていかなければならないというふうに改めて考えております。
そのため、不採算の分野に対する適切な一般会計からの支援のもとに、不断の経営努力を行い、経営基盤の一層の強化を図ってまいる所存でございます。
また、医師不足への対応が病院経営におけます喫緊の課題となっておりますことから、若手医師の育成とともに、医療の中核を担う中堅医師の確保と定着のために、勤務条件の改善、福利厚生の充実を図ることに加えまして、近年増加しております女性医師が働きやすい職場環境を整えていくという考えでございます。
先ほど、田中先生より、処遇が低い中で働く医師に対する応援の言葉をちょうだいいたしまして、心を強くしたところでございます。今述べましたような取り組みによりまして、今後とも、安全・安心を支える質の高い患者中心の医療を実践しまして、都立病院に寄せられております都民の皆様の期待にこたえていく所存でございます。
▼田中委員
ぜひ、本部長を中心に、本部の皆様のご健闘、ご活躍を期待しております。
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■水道事業 |
▼田中委員
次に、水道事業についてお伺いいたします。
先日、私は、東京都水道局三園浄水場の高度浄水施設の通水式に出席いたしました。完成した高度浄水施設を目の前にし、水道局が安全でおいしい水への取り組みを着実に進めていることを強く実感したところであります。
我が党は、五、六年前から、あらゆる機会をとらえて、安全でおいしい水の供給に関する多方面にわたる施策を提言してまいりました。まさにおいしい水への取り組みは、他会派に先駆け、我が会派が水道局とともに一歩一歩つくり上げてきたものであると自負しております。
例えば貯水槽水道の問題に対しては、水道事業者として積極的な関与に乗り出すべきだと提言いたしました。また、より多くの都民においしい水を味わっていただくためには、直結給水化を進めることが欠かせないとも申し上げました。
さらに、水道のおいしさを子どもたちへ伝えることの重要性を取り上げ、小学校の水飲み栓を直結給水化することや、キャラバン隊を結成して学校を回ってはどうかと提案もしてまいりました。
今回、我が党の提案に基づき行われたさまざまな施策の成果が随所に見られていると高く評価しておりますが、水道局では、こうした安全でおいしい水への取り組みを進めるため、これまで経営プランなどで具体化してきたと思いますが、その実施状況についてお伺いいたします。
▼水道局長
東京水道経営プラン二〇〇四におきましては、主要施策の一つとして、安全でおいしい水の安定的な供給を掲げ、高度浄水処理の導入を初め、管路の新設及び取りかえや水質向上のための施策などに取り組んできたところでございます。
貯水槽水道対策につきましては、平成十六年九月から、都内に約二十二万件あるすべての貯水槽水道の管理状況等につきまして個別に調査、点検するクリーンアップ貯水槽を開始いたしました。平成十八年度末までに約九万四千件の調査、点検が終了しましたが、全体の六%の貯水槽において早期に改善が必要な箇所が見つかっており、これらにつきましては、その後もフォローアップとして改善指導を実施しているところでございます。
さらに、既存の貯水槽水道につきましても、直結給水への切りかえを促進するため、貯水槽の点検、調査の際に直結給水方式のメリットを説明するなど、さまざまな施策を実施しております。
加えて、配水管の水圧測定結果を踏まえた上で、建物の高さ、階高にかかわらず、直結給水できるようにするなど、直結給水方式の適用範囲を拡大してきております。
また、直結給水化の普及促進に向けた社会的なムーブメントをつくり出していくために、小学校の水飲み栓を直結給水化するとともに、キャラバン隊を結成して学校を回ることとしております。
▼田中委員
今ご答弁いただきましたように、我が党の主張にこたえる形で水道局が取り組みを進めてきたことは、改めて高く評価するところであります。
また、最近、水道局の取り組みをテレビや新聞、雑誌などで目にすることが多くなりました。マスコミに取り上げられるということは、水道局の取り組みが注目されているあらわれだと思います。
一方、都民からの水道水に対する評価はどのように変化したのでしょうか。状況をお伺いいたします。
▼水道局長
水道局では、水道事業に対するお客様の評価や要望を的確に把握し、質の高いサービスを提供していくため、水道事業に対するお客様満足度調査を定期的に実施しております。
平成十八年五月に実施した調査において、飲み水としての水道水の水質に満足と回答した方の割合は三四・四%でありまして、前回の平成十五年五月の調査と比較いたしますと六・三ポイント上昇しております。
このほか、水道モニターアンケートでも、満足と回答した方の割合は上昇しており、お客様の水道水に対する評価は確実に高まってきております。
▼田中委員
ミネラルウオーターの一人当たりの消費量は、ここ十年間で約三倍といわれております。こうした現象を水道離れと見る向きもあります。しかし、ここ三年の間に満足度が上昇していることは、我が党の指摘を的確に取り組んだ水道局の取り組みが功を奏しているということではないでしょうか。
実際、私の周りにも水道水を飲むようになった人がふえてきております。今後さらに水道水のおいしさをより多くの都民に知っていただくためには、こうした取り組みを継続していくこととともに、関係する多様な主体、例えば各区、小中学校、自治会などへの働きかけがまだまだ必要であると考えます。
そこで、こうした多様な主体への働きかけをどのように進めていくのか、お伺いいたします。
▼水道局長
水道水のおいしさをより広く知っていただくため、今後も、区市町や自治会などが主催するイベント等へ積極的に参加するとともに、小学生に大変評判のよい水道キャラバンをさらに充実させてまいります。
また、直結給水化の普及促進に向け、貯水槽水道の設置者に対しまして、個別に直結給水のメリットをPRしてまいります。
さらに、営業所で発行しております地域水道ニュースの発行を拡充するなど、地域に密着したきめ細かい取り組みを進めてまいります。
こうした取り組みに加え、公立小学校の水飲み栓直結給水化モデル事業についても、各教育委員会など関係機関との連携を進めてまいります。
今後は、安全でおいしい水対策のために当局の取り組んでいるさまざまな施策を多くの都民の方々に知っていただくために、より戦略的な広報の展開に努めてまいります。
▼田中委員
ぜひとも積極的なる取り組みを推進していただくように、重ねてお願いを申し上げます。
続いて、水道局の環境への取り組みについてお伺いいたします。
都においては、「十年後の東京」の中で、最先端の省エネルギー技術などを駆使し、世界で最も環境負荷の少ない都市を実現するとしております。とりわけCO2排出削減については、最重要課題の一つとして取り組むこととなっております。
都は、都内最大規模の排出事業者として、みずから率先して削減行動に取り組み、民間企業等の取り組みを牽引していく必要があります。
そこで、水道局のCO2排出削減に向けた取り組みについてお伺いいたします。
▼水道局長
浄水場や給水所を初めとする各施設では大量の電力を使用しており、水道局は、都内の電力使用量の約一%に相当する大口の使用者となっております。
こうしたことから、平成十六年度から東京都水道局環境計画を策定し、自然エネルギー等の有効利用や夜間電力の有効活用、庁舎の電力使用量の抑制など、さまざまな取り組みを推進してきております。
しかしながら、高度浄水処理の導入等による電力使用量の増加に伴い、水道局のCO2総排出量は近年増加してきており、今後も、利根川水系の高度処理全量導入が計画されていることから、CO2総排出量の増加が見込まれます。
このため、ポンプ設備等への小エネルギー型機器の採用などの取り組みを進めていくとともに、平成二十八年度までに、太陽光発電や小水力発電による自然エネルギー等を用いた発電規模を一万キロワット以上とする長期目標を設定するなど、最大限の取り組みを行ってまいります。
▼田中委員
水道事業は、取水から給水までのさまざまな過程でポンプを使用するため、電力を必要としております。また、首都東京で一日に使う水の量は東京ドーム三・五杯分にもなり、これだけの水を供給していくためには、大量の電力を使用していかなければならないことは容易に想像できます。
しかしながら、CO2排出削減が都政の最重要課題の一つとなっている中では、水道局も、これ以上絞っても一滴もとれないくらいの努力を行う必要があります。引き続き積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
一方、水道水の消費者である都民と連携しながら、CO2総排出量を低減させていく取り組みも重要なのではないかと考えます。
そこで、都民と連携した今後の環境負荷低減に向けた取り組みについてお伺いいたします。
▼水道局長
都民と連携した環境負荷低減に向けた取り組みについてでございますが、例えば貯水槽水道方式は、水道管の圧力を一たん開放し、再度ポンプを用いて給水する方式でありますことから、多くの電力を必要といたします。これを直結給水へ切りかえることにより、これまでお客様がポンプで使用していた電力量が大幅に軽減されますことから、全体としてCO2排出量を削減することができます。
既存建物の貯水槽水道を直結給水方式へ切りかえることにより、お客様と連携したCO2排出削減の取り組みを推進してまいります。
▼田中委員
都民一人一人の取り組みが大きなうねりとなって地球温暖化の防止に貢献することとなります。ぜひとも、今後とも積極的な取り組みを推進するようお願いいたします。
水道局が安全、おいしさ、環境への配慮といった面で多大な努力をされてきたと、これまでの質疑を通じて高く評価をいたします。また、東京の水道は世界一だといわれておりますが、さらにそのレベルを一層高めていく必要があると考えます。
そこで、世界に冠たる東京水道として、おいしい水対策や、より高い次元でのエネルギー対策に取り組んでいくべきと考えますが、ご見解をお伺いします。
▼水道局長
ご指摘のとおり、今後は、おいしい水への取り組みとして、高度浄水処理の導入など、水をつくる段階での取り組みに加え、管路の取りかえや貯水槽水道の適正管理など、水を配る段階での取り組みを強めてまいります。
さらに、おいしい水対策として、残留塩素の低減化に向けて、送配水段階での追加塩素注入設備を整備していくとともに、より高い次元でのエネルギー対策として、水量、水圧をコントロールする水運用とエネルギー管理を融合した新たな水供給システムを構築してまいります。
▼田中委員
ぜひ、引き続き安全でおいしい水への取り組みを全力で推進していただきたいと強く要望し、水道局関係の質問を終わります。
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■下水道事業 |
▼田中委員
続いて、下水道事業についてお伺いいたします。
石原知事は、第三回定例会の所信表明の中で、ツバル、フィジー諸島の視察に触れ、地球温暖化により海面が上昇している現実は、国家中枢機能が海に面した東京に重大な警告を発しており、今、地球の異変による危機を先取りする必要があると言及していらっしゃいます。これは、地球温暖化防止に取り組むことが都政にとって重要課題であり、都が率先して行動をとることを意味していると考えております。
また、先日には、ことしのノーベル平和賞が、国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCと前アメリカ副大統領のアル・ゴア氏に授与されたと報道がありました。環境に関する行動に対しノーベル平和賞が贈られることは、地球温暖化が世界的な大問題であり、これを防止することが人類の安全と平和に欠かせない条件であることを端的に示しており、都が取り組むべき重要な課題であることを再認識させられたところであります。
温室効果ガスの削減が世界的に大きな課題である中で、下水道事業に目を向けてみますと、下水道事業は、汚水の処理による生活環境の改善や、雨水の排除による浸水の防除、公共用水域の水質保全など、安全で快適な生活環境の確保や良好な水環境の形成といった重要な役割を担っております。
その一方で、一日に五百七十万立方メートルという大量の下水を処理していることから、水処理施設や汚泥焼却炉など多くの施設を抱えており、都内の電力消費量の一%に相当する大量のエネルギーを消費しております。
また、都の事務事業の中でも、下水道事業は最も多くの温室効果ガスを排出しており、地球温暖化防止に対し大きな責任を負っているといえます。
こうした状況のもと、下水道局は、自主的かつ積極的に地球温暖化防止対策を図っていくために、下水道事業における地球温暖化防止計画アースプラン二〇〇四を他に先駆けて策定し、平成二十一年度までに温室効果ガスの排出量を京都議定書の目標値である六%以上削減する施策に先導的に取り組んでいると伺っております。
このアースプラン二〇〇四は、策定してから三年経過しておりますが、現在までの主な取り組みとその効果についてお伺いいたします。
▼下水道局長
アースプラン二〇〇四では、取り組みの柱といたしまして、下水処理により発生する温室効果ガスの削減と、温室効果ガスの排出が少ない資源・エネルギーへの転換の二つを掲げまして、平成二十一年度までの六年間で温室効果ガスを十八万八千トン削減することとしております。
温室効果ガス削減の取り組みといたしましては、具体的には、下水汚泥の焼却時に発生する温室効果ガスは、高温で焼却することにより大幅に削減できることから、南部スラッジプラントなど五カ所で焼却炉の改良や建設を実施いたしました。また、水処理機器などの更新時には、新技術を活用いたしました微細気泡散気装置など、省電力型機器の導入などを推進しております。
資源・エネルギーへの転換の取り組みといたしましては、汚泥の処理過程で発生いたします消化ガスを燃料にしたバイオマス発電を森ヶ崎水再生センターで行っているほか、三カ所で再生可能エネルギーの活用に努めてまいりました。
この結果、アースプラン二〇〇四の三年目の平成十八年度末で、計画削減量の約五五%に相当いたします約十万トンの温室効果ガスを削減したところでございます。
▼田中委員
下水道局が温室効果ガス削減に向けて積極的に取り組んでいることがよくわかりましたが、一昨年の第三回定例会で、我が党の当時の野村幹事長が汚泥炭化事業について代表質問し、国内で初めての取り組みとして当時話題になったことを記憶しております。
この汚泥炭化事業が今月末に稼働すると伺いましたが、汚泥炭化物を初めて火力発電所の燃料とする汚泥炭化事業に取り組むことになった背景について、改めてお伺いいたします。
▼下水道局長
下水道局では、下水を処理する過程で大量に発生する汚泥を焼却処理し資源化に努めてきましたが、その焼却過程で大量の温室効果ガスが発生することから、これを削減する必要がございます。また、資源化をより一層推進するためには、長期に安定した需要先の確保が課題でございます。
一方で、地球温暖化防止の観点からRPS法が施行され、発電事業者には一定量のバイオマスなど新エネルギーの活用が義務づけられております。こうした背景のもと、汚泥炭化事業を行うことで、当局は、大幅な温室効果ガスの削減と安定した資源化を図ることが可能となります。また、発電事業者は、バイオマス資源である汚泥炭化物を用いることで新エネルギーの活用を図ることができます。
このように、双方のニーズが合致したことから、当局と発電事業者との連携により汚泥炭化事業を実施することとなりました。
▼田中委員
下水道事業と発電事業、双方のニーズが合致したということですが、民間と連携したこの取り組みは、地球温暖化防止に関心が集まる今の時代に合ったすばらしい事業だと思います。
そこで、下水道局と発電事業者が連携したこの汚泥炭化事業の仕組みはどのようなものなのか、お伺いいたします。
▼下水道局長
下水道局ではこれまで、汚泥の減量化などを目的に、脱水された汚泥を全量焼却し、発生した焼却灰の一部をセメント原料などとして資源化してきました。
今回の汚泥炭化事業では、脱水汚泥を炭化炉内におきまして酸素の少ない条件下で約五百度の温度で蒸し焼きにすることで、炭化物を製造いたします。製造された炭化物には石炭の三分の一のカロリーがあり、全量を石炭火力発電所の代替燃料として発電事業者に売却いたします。発電事業者は、これを石炭と混ぜて燃やすことにより、化石燃料の使用量の低減を図るとともに、新エネルギーを活用することができます。
この事業により、当局は二十年間の長期にわたり安定した資源化が図れることとなっております。
▼田中委員
汚泥炭化事業が、今までにない新たな発想で、長期的視点を踏まえた安定的な事業であると理解をいたしました。
先ほどのご答弁にもありました、汚泥焼却施設からの温室効果ガス削減が課題だとありましたが、この汚泥炭化事業の効果はどのくらいなのか、お伺いいたします。
▼下水道局長
下水汚泥を焼却する過程では、二酸化炭素の三百十倍の温室効果を持つ大量の一酸化二窒素が発生いたしますが、汚泥を炭化することで、このガスを大幅に削減することが可能となります。
この削減量を二酸化炭素に換算いたしますと、年間で約三万七千トンとなり、これは、山手線の内側面積の約二倍に当たる一万ヘクタールの森林が一年間で吸収する量に相当いたします。
また、本事業で、年間約十万トンの脱水汚泥から炭化物を製造いたしますが、これは区部全体で発生する脱水汚泥量の一割に相当いたします。これによりまして資源化率が向上し、焼却灰の埋立処分量の約四分の一が削減されることから、処分場の延命化を図ることができます。
▼田中委員
汚泥炭化事業だけで、温室効果ガスの削減量が三万七千トンもあるということでありますが、先ほどの答弁にあったアースプランの削減実績が十万トンでありますので、汚泥炭化施設の稼働により削減量が約四割も向上することとなります。汚泥炭化事業は、温室効果ガスの大幅な削減や資源化率向上など、一石二鳥の効果が見出せます。今後も、下水道局が本事業のような先進的な取り組みを推進し、地球環境の保全に向け大いに努力されることをお願いいたします。
最後になりますが、「十年後の東京」で示された世界で最も環境負荷の少ない都市の実現に向けて、下水道局としてどのように取り組んでいくのか、改めてお伺いし、私の質問を終わります。
▼下水道局長
下水道局は、積極的な地球温暖化防止対策を図っていくため、下水道事業における地球温暖化防止計画アースプラン二〇〇四を他に先駆けて策定いたしまして、温室効果ガスの削減に先導して取り組んできたところでございます。
今後とも、日常の業務、運転管理における省資源、省エネルギーの取り組みを徹底するなどいたしまして、アースプラン二〇〇四の目標達成に努めるとともに、ご指摘のように、「十年後の東京」に示された世界で最も環境負荷の少ない都市の実現に向けて、民間と連携した新たな技術の導入を図るなど、温室効果ガスのさらなる削減に向けたさまざまな取り組みを局一丸となって積極的に推進してまいります。
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