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平成18年度各会計決算特別委員会 委員会質疑

環境政策
財務諸表
土地の信託
野上ゆきえ
野上ゆきえ(民主党)
■環境政策

 ▼野上委員
 まず初めに、環境政策について伺います。
 私の住む練馬区では、この三月に外かく環状道路について地下方式への変更が都市計画決定されました。練馬区の中でも特に大泉学園町地域には、地下部に大深度地下方式の外環本線、そして光が丘から大泉学園地域への地下鉄大江戸線の延伸、そして地上部には外環ノ2が計画検討されている、集中している地域であり、住民の皆さんから、複数の事業により地下水など環境への影響が出るのではないかという不安やお問い合わせを多くいただいております。
 そこで、環境影響評価制度を複合的な都市づくりの中で適切に活用する観点から何点か伺います。
 環境に配慮した都市づくりを進めるに当たり、環境影響評価の果たす役割は大きいと考えます。東京都環境影響評価条例では、事業者が予測や保全措置の検討を行うばかりではなく、みずから評価も行っております。例えば、都市計画道路などの場合には、意見を述べる立場にある知事が事業主体となるという問題点もあります。したがって、計画の中止や建設しないという選択肢は、現状のところ用意されておりません。事業者による自画自賛の環境影響評価書にならないよう、第三者のチェックが必要と考えますが、所見を伺います。

 ▼環境局長
 環境影響評価は、事業が環境に及ぼす影響をあらかじめ予測、評価し、その内容について住民や関係自治体等の意見を聞くとともに、専門的立場からその内容を審査することなどにより、事業実施による環境影響をできるだけ少なくすることを目的とするものでございます。
 事業者には、東京都環境影響評価技術指針に基づいた予測、評価や環境保全措置の検討を行うことが求められるとともに、その内容は適正なものであるかどうかについては、大気汚染、騒音・振動、生物・生態系等の分野における学識経験者二十二名から成る東京都環境影響評価審議会において慎重に審議されており、第三者によるチェックは厳密に行われていると考えております。



 ▼野上委員
 今の答弁にありましたけれども、現状、審議会メンバーというのはあくまでも問題設定された領域での専門家であり、生態系の専門委員がいるものの、より包括的な立場で環境影響への意見を述べる専門委員というのが一方で必要であると考えます。
 ところで、同じ地域で複数の事業が前後して進められることもたびたびあります。先に行われる事業の環境影響評価手続で得られた調査結果、予測値等は、後から行われる事業の環境影響評価手続においても共有されるのか、伺います。

 ▼環境局長
 環境影響評価技術指針では、予測、評価に必要な現況調査につきまして、既存の資料、文献の収集を基本とし、対象計画に基づき実施される対象事業の特性に応じて、住民からの情報の収集や専門家からの科学的知見の収集、現地調査の方法により行うと規定しております。
 したがいまして、同じ地域で環境影響評価が行われた事例があり、後から事業を行う事業者が先行した環境影響評価により得られたデータ等を使用することに合理性がある場合には、技術指針の規定等にのっとった上で活用が図られているところでございます。



 ▼野上委員
 複数の事業が行われる場合、複合的な影響も予測、評価の対象とするべきと考えます。複数の事業者に対して、あわせて環境影響評価の手続を進めるよう求めるのは容易ではないと思われますが、複数の事業の間で一体的に環境影響評価手続を進めた実績はあるのか、伺います。

 ▼環境局長
 環境影響評価条例におきましては、単独または複数の事業者が相互に関連する複数の事業を実施しようとするとき、知事は、これらの事業者に対しあわせて調査計画書を作成するよう求めることとしております。
 この規定の趣旨を踏まえまして、これまでに、再開発事業や区画整理事業におきまして、道路整備事業と一体的に環境影響評価手続が行われた事例や事業者の異なる複数の高層ビルの建設事業の環境影響評価が一体的に行われた事例がございます。



 ▼野上委員
 都の考えている評価の仕組みについては理解できました。
 こうして環境影響評価制度が東京の都市づくりに果たしてきた役割は何か、伺います。

 ▼環境局長
 都におきましては、昭和五十五年に環境影響評価条例を制定して以来、これまで二百六十以上の事業において、公害の防止や環境の保全、景観の保持等について適正な配慮がなされるよう制度の運用に努めており、環境に配慮した都市づくりに大きな貢献を果たしてきたと考えております。
 また、環境影響評価手続は、事業の環境影響の予測、調査結果を公表し、それに対する都民や関係区市町村の意見や、さらに事業者の見解を出し合うことにより、事業者と多くの人々のコミュニケーションの場となり、合意の形成に役立ってきたと考えております。



 ▼野上委員
 東京都の環境影響評価制度が一定の役割を担ってきたということはわかりました。しかし、東京都では、道路、鉄道、再開発と、複数の事業者が並行して事業を行うことも少なくありません。現状の都のアセスメントでは、特定の地域に複数の事業計画が立てられた場合、その複合的、累積的な影響を予測する評価にはなっていないともいえます。
 いわゆる戦略的な環境影響評価も必要です。個々の事業の根拠法、進行の状況、事業主体が異なる場合の環境影響評価書の作成ということや、手続の対応には労力や費用負担が過剰になる可能性も考えられます。
 しかし、環境負担の原因者がそのコストを負担するという自己責任の原則を貫いていくことが必要であると思います。環境負荷コントロール、環境に及ぼす複合的、広域的な影響低減に向けて、より一層のアセスの向上を図るよう要望して、次の質問に移ります。

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■財務諸表

 ▼野上委員
 ちょうど五日前、十一月九日、知事本局から、地方分権改革推進委員会に対する提言についてレポートが出されました。
 平成七年、地方分権推進法の公布から十二年を迎えました。その間には、地方分権一括法、そして自治体においては、地方分権の基本理念を実現すべくさまざまな取り組みがなされてきました。中央の大きな政府に対する改革、橋本政権によってなされた日本版ビックバンとして実施された改革にもありましたけれども、地方における自主権と裁量の領域の拡大を促し、地方への分権といった形となってあらわれてきたように思います。
 しかしながら、その一方で、自治体には責任ある行政運営を遂行していくという力量が同時に求められているといえます。
 そこで、私からは、この決算特別委員会に提出されております決算参考資料の中から、複式簿記・発生主義会計に基づく財務諸表に関して、今後の展開に視点を置きながら、何点かお伺いしていきたいと思います。
 都では、平成十八年度から複式簿記・発生主義会計による会計処理が導入され、これに基づく初めての決算が、今回この特別委員会で審議されることとなったわけです。
 しかしながら、財務諸表の作成という点に関しては、実は初めてのことではありません。都では平成十二年以降、機能するバランスシートという名称で、財務諸表を作成し、公表してきました。今回報告された財務諸表は、この機能するバランスシートとは別のもので、新たな公会計制度による本格的な財務諸表であるとのことです。
 そこで伺いますが、今回の財務諸表は、機能するバランスシートとはどこが異なるのでしょうか。

 ▼会計管理局長
 機能するバランスシートは、官庁会計の決算を作成いたしました後に、数カ月の時日を要します手作業でその数値を組みかえて作成していたものでございます。
 これに対しまして、今回の財務諸表は、日々の会計処理の段階で仕訳を行って作成したものでございます。したがいまして、複式簿記・発生主義会計による財務諸表として本格的なものとなっているわけでございます。
 その結果、機能するバラスンシートの取り組みでは物理的に作成することができなかった会計別、局別を初めとする多様な財務諸表を、官庁会計決算と同時と、極めて迅速に、かつ精度の極めて高いものとして作成することができるようになったものでございまして、こうした点に大きな違いがあるわけでございます。



 ▼野上委員
 より強力なツールを得たからには、今後とも都民福祉の向上のために一層役立てていただきたいと思います。
 さて、この六月には、地方財政健全化法が成立しました。この法律の目的の一つは、地方公共団体がその傘下の外郭団体も含めてどれほどの負担を将来負っているのかを把握することにあります。
 こうした点からしますと、都においても、外郭団体を含めた全体の財務諸表がどのようになっているのかということが非常に重要になってきます。ただ、一口に外郭団体といっても、社団法人や財団法人、株式会社など組織形態もさまざまで、会計基準も少しずつ異なっています。そうした会計基準の異なる団体を通じて、いわゆる連結財務諸表をつくり上げることは、民間のグループ会社が連結決算を出すのと違って、相当困難を伴うものではないかと思っています。
 都でも、先般、九月発表された東京都年次財務報告書の中に、連結財務諸表に相当する東京都全体財務諸表が掲載されておりますが、基本的には各団体の決算も併記したものになっております。
 そこで、都としては、監理団体を含めた全体財務諸表について、さまざまな課題があることを踏まえて、どのような考えを持っているのか、伺います。

 ▼財務局長
 都の財務状況につきまして、普通会計だけでなく、出資や補助などを通じて分かちがたい関係にございます地方公営企業や監理団体も含めた全体の姿をできるだけ一体として把握することが、都財政の運営を行っていく上で重要でございます。
 今回作成いたしました併記方式の全体財務諸表によりまして、監理団体などを含む東京都全体の負債が十七兆円以上あること、資産合計に対する負債の割合が約四割を占め、普通会計の約三割よりも高いことなどが明らかになりました。
 こうしたことを都民に明らかにするとともに、財政運営に生かしていくことが大切でございますので、今後、全体財務諸表については、重要なツールといたしまして、内容の一層の向上を図ってまいります。



 ▼野上委員
 都民が安心できる都財政を確立するため、ぜひアンテナを広く持って財政運営に当たっていただきたいと思います。
 こうした都の先駆的な取り組みを追うように、ようやく国やほかの地方公共団体も動き出しつつあります。しかしながら、去る十月、総務省が公会計整備について、各地方公共団体に当てた通知においても、基準モデルと改訂モデルの二つが示され、各自治体もどのような会計処理方法を採用すべきか、頭を悩ましている状況があるようです。
 その一方で、会計処理の方法論ばかり問題意識が集中してしまい、会計処理によりでき上がった財務諸表をどう活用していくべきかという最も肝心な部分への検討や議論が後回しになっているという印象を受けます。
 東京都では、財務諸表を作成して公表することにより、アカウンタビリティー、いわゆる説明責任を十分に果たすことにとどまることなく、財務諸表から得られる財務情報を使ってマネジメント向上と強化につなげていこうという方向性までも明確にしています。
 各自治体に先駆けて、財務諸表をアカウンタビリティーやマネジメントという両面から活用し、実績を上げつつある東京都として、活用のあり方についても積極的に発信していくべきだと考えます。
 財務諸表を作成するシステムや会計基準を全国に広めることとともに、そうした活用論も他団体に伝えていく努力は不可欠なはずです。財務諸表の作成の方法論だけにとどまることなく、新たな公会計制度にかかわる活用のあり方についても、全国に向けて積極的に発信を行っていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

 ▼財務局長
 都といたしまして、これまでのいわゆる機能するバランスシートの作成を通じて蓄積してきた経験、さらには、昨年度から開始いたしました新たな公会計制度による経験を踏まえまして、財務諸表の活用方法について全国に発信していきたいと考えております。
 先ごろ、総務省から二つの公会計モデルが示されたわけでございますが、これらは、我々から見ますと、財務諸表をどのように活用するのかという考え方について、十分整理して仕組みをつくっているとはいいがたいものでございます。そういう意味で、都の新たな公会計制度では、事業別の財務諸表や年次財務報告書の作成、公表など、財務諸表の活用をしっかりと意識した制度設計が行われておりまして、その活用方法につきまして他の自治体に広める努力を着実に積み重ね、地方の公会計制度改革全体に寄与していく考えでございます。

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■土地の信託

 ▼野上委員
 続きまして、土地の信託について伺います。
 昭和六十年、地方自治法の改正により、自治体においても土地信託制度を導入することとなり、都においても、都有地の有効活用を図るため、平成二年の新宿モノリスの供用開始を皮切りに、平成八年の勝どきサンスクエアまで、順次、計五件の土地信託ビルの供用を開始したわけであります。
 そこでまず、この制度を東京都が取り入れた理由について伺います。

 ▼財務局長
 土地信託制度が導入された当時の状況でございますが、都内の地価が急激に高騰しておりまして、都といたしましては、土地の売買を伴わないこの制度を利用して、地価の高騰を招くことなく、都有地の有効活用を図ろうとしたものでございます。
 土地信託制度には、初期投資をかけずに民間のノウハウを活用して土地利用が図れること、信託期間中、人的労力をかけずに継続的な利益の配当が期待できること、契約終了後には土地と建物が返還されるため、将来の行政需要にも対応できることなどのメリットを期待した点もございます。



 ▼野上委員
 やはり、土地信託事業というのは、都民の貴重な財産を手放さずに有効活用して収益を上げていくということですから、通常、オフィスや商業施設などの需要が高い土地、収益性という面から見てポテンシャルの高い土地で行われると思います。
 その中で、東京都が行った三番目の信託ビルである東京都健康プラザでいえば、旧都立大久保病院であり、これは病院のリニューアルを信託事業に取り込んだものでしょうが、四番目のコスモス青山では、新規施設である東京ウィメンズプラザが取り入れられました。
 このウィメンズプラザについてでありますが、通常であれば公共施設は行政が直接建設して管理していくのが普通だと思いますが、ウィメンズプラザは土地信託事業の中で建設され、東京都は、テナントとして信託銀行に賃料を払って運営してきたわけであります。コスモス青山も都心の一等地に建設されているビルだけに、ウィメンズプラザの賃料と共益費で平成十八年度決算で約六億八千四百万円となっており、運営費に占める賃料の割合は七六・三%にも及んでいます。
 そこで伺いますが、ウィメンズプラザがコスモス青山の信託事業に組み込まれて入居することになった理由はどのようなものだったのでしょうか。

 ▼生活文化スポーツ局長
 東京ウィメンズプラザがコスモス青山に入居した理由についてでありますが、東京ウィメンズプラザにつきましては、それまで使用していた飯田橋庁舎の東京都女性情報センターが手狭になったことから、昭和六十三年六月の東京ウィメンズプラザの基本構想に基づき移転を計画したものであります。
 基本構想では、男女平等社会を実現していくための情報交流の広場機能や、広域、専門的なセンターとしての機能が求められており、コスモス青山の複合ビルであれば、交通至便な立地であること、十分なスペースが確保できること、求められる機能にふさわしい施設が早期に建設できることから、入居することとしたものであります。



 ▼野上委員
 土地信託では、信託期間終了後は財産が東京都に戻ってくることになりますが、その際、入居していたテナントも、場合によっては出ていっていただくということもあろうかと思います。平成二十七年に信託期間が終了した後、テナントとして入居していたウィメンズプラザは、信託制度上、その存続に影響を受けることがあるか、伺います。

 ▼財務局長
 信託期間終了時の信託財産の取り扱いにつきましては、信託契約を終了して東京都に返還してもらうか、信託契約を更新するか、終了時の状況を総合的に勘案して判断することとなります。
 いずれの場合でございましても、ウィメンズプラザがそのこと自体によって存続できなくなるものではございません。



 ▼野上委員
 ウィメンズプラザ仕様のビルを建設したのだから、信託制度終了後も男女平等参画のための事業が行われることが当然であるような、漫然とした問題意識のない事業運営を続けていてはならないと考えます。事業の一層の充実と発展に向けて、今後、ウィメンズプラザの運営をどのように展開していくのか、最後に伺います。

 ▼生活文化スポーツ局長
 今後の東京ウィメンズプラザの運営についてでありますが、東京都配偶者暴力対策基本計画などに基づき、配偶者暴力を初め家族や職場に関するさまざまな相談事業を着実に実施するほか、区市町村の職員向けの研修や事業に対する支援を行っていきます。
 また、男女平等参画のための東京都行動計画に基づき、ワークライフバランスや女性の再チャレンジ支援に関する講座などを引き続き実施していきます。
 なお、信託期間終了後につきましては、行政の一般論としては、必要な事業を適宜適切に実施するということでありますが、東京ウィメンズプラザにつきましては、東京ウィメンズプラザ条例において、その設置場所が現在地に定められ、また、事業として相談、情報提供などが定められております。
 いずれにいたしましても、都議会で決定される条例に基づき事業を執行してまいります。

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