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 石川芳昭(公明党) |
■公会計制度による財務諸表 |
▼石川委員
公明党を代表して、総括質疑を行います。
都は、昨年度、従来の官庁会計に複式簿記・発生主義会計の考え方を加えた新たな公会計制度を導入しました。これは我が党公明党の提案を受け、石原知事の決断により導入が決まったものであります。
本年度は、この新制度による初めての財務諸表が作成され、さきの第三回定例会に提出されました。複式簿記・発生主義会計は、民間企業で一般的に使われている会計手法でありますので、財務諸表を通じて官民比較をこれまで以上に容易に行うことが可能になると思われます。
例えば、今、国や地方自治体で市場化テストを行っていますが、新公会計制度の財務諸表により、民間と行政とで同じような事業を実施するのに、同じ尺度でコストを分析、比較することが可能になると期待することができます。
ただ一方で、自治体の行政活動は民間の経済活動とは異なるので、同じ複式簿記・発生主義会計による財務諸表といっても、注意をして見なければなりません。
例えば、各分科会に提出された各局の行政コスト計算書や事業別情報を見ると、当期収支差額がマイナスになっている、これは民間企業であれば赤字を意味することになりますが、都において、この収支差額は税などの一般財源が充当される前の差額を示しているにすぎません。その上で都の行政コスト計算書では、当期収支差額に一般財源の充当調整を行って、調整後の差額を最終的に示しています。
そこで、都の財政コスト計算書では、なぜこのような一般財源の充当調整を行う仕組みを取り入れたのか伺います。
▼会計管理局長
民間企業の経済活動と異なりまして、行政では、主たる収入である税と、個々の行政サービスとの間に直接的な対価性が成立しておりません。
したがいまして、都では、都民からの貴重な財源である税を収入するのは主税局のみでありますが、個々の行政サービスは各局から都民に対して提供される、こうした仕組みとなっております。
そうしたことから、財務諸表におきましては、主税局で収入した税を一般財源として一たん留保いたしまして、各局における現金収支の差額分に充当することとしたものでございます。
▼石川委員
今後、都におけるそれぞれの事業のあり方を考える上では、税金などの一般財源を充当した後でどのような事業収支となっているのか、また、事業費全体に占める一般財源がどの程度に上っているのかを、正確に把握、分析することが大切であります。
当期収支差額のマイナス部分だけを取り上げて、すぐに事業の見直しや廃止の議論になるわけはなく、むしろ当期収支差額や一般財源の充当の状況を切り口にして、事業運営のより効果的で効率的なあり方を多面的に考えていく姿勢こそが重要であります。行政コスト計算書の特定の部分だけ着目して批判的な指摘をするのではなく、都民サービスの充実を含めた事業運営の向上につながらなければなりません。
そもそも、民間の損益計算書は、収益を上げるためどの程度の経費がかかっているかを把握し、コストの見直しや仕事の効率化に結びつけていく情報を提供するものとして使われています。
一方の行政コスト計算書は、民間の損益計算書に当たるものですが、利潤の追求を目的としない行政としてその内容をどう分析し、活用していくべきかは、おのずと民間と異なるはずであります。
複式簿記と発生主義により明らかとなる減価償却費や、金利を含めたコストを指標にして公開することが、事業の縮減や廃止を意図したものであると見る向きもありますが、そうした発想では、行政コスト計算書の分析や活用のあり方を的確に論じることはできないはずであります。
そこで、行政コスト計算書の数値をどのように分析して事業運営に反映していくことが適切であると考えているのか伺います。
▼財務局長
利潤を追求する民間会社の場合におきましては、経費は、いわば収益獲得の手段でございますので、少ないにこしたことはないわけでございます。
しかしながら、行政における支出の場合には、それ自体行政目的達成のためのものでございますので、コストが高いからといって、それを理由に直ちに事業を見直すということにはならないものでございます。支出に対してどれだけの行政効果を上げたのか、都民サービスの向上につながったのか、そこが施策の是非の判断のポイントでございます。
とはいえ、貴重な税金を投入する以上、その費用対効果の効率性が厳しく問われるのは当然でございまして、その点においてコスト分析は重要であり、ないがしろにすべきものではないと考えております。
今回、財務諸表を作成して明らかになった行政サービスの提供に供された減価償却費や金利などの時間にかかるコストも含めたフルコストは、そうした点からも、分析の基本となる情報でございまして、それなしに事業の改善を論ずることはできないと考えております。
こうした財務情報も積極的に活用いたしまして、事業の結果を十分に検証することにより、今後とも従来にも増して効果的な事業展開を図ってまいります。
▼石川委員
財務諸表は、民間企業のものと異なる読み解き方が必要になるとはいえ、やはりこれまでの官庁会計で示すことの難しかった発生主義に基づくコスト情報や、資産や負債にかかわるストック情報を明らかにする有力なツールであります。こうした財務情報を積極的に活用した事業運営の向上を実現していく努力こそが大切であります。
今回の決算審議の資料として提出された主要事業の成果の中では、三十七事業を対象に行政コスト計算書を掲載するとともに、ストック情報による分析が有効なものは貸借対照表を掲げ、財務情報の提供を行っています。財務諸表による数値の意味するところをより正確に理解し、個別事業としての課題を把握して、その解決を図ることは重要であります。
財務諸表をどのように分析するべきかは、行政と民間との違いなども踏まえ、今後とも十分に検討していくべきものと考えていますが、少しでも多くの分析例をふやして、事業運営のマネジメントを高める面から活用を進めていってほしいと思います。
そこで、事業別の財務諸表の活用をどのように進めていく考えであるのか伺います。
▼財務局長
都財政の充実強化を図るためには、全体をマクロ的にとらえる視点が大切である一方、個々の事業がどれだけ効果を上げているのかを検証し、常に改善を図っていくことが大切でございます。
そうした意味で、全体分析とともに個別事業の評価、検証は重要でございまして、これを実施していくためには、新たな公会計制度で作成された事業別財務諸表の活用を欠かすことはできません。
もとより、この分野はまだ端緒についたばかりでございまして、しっかりした分析を行っていく上での課題も少なくないわけでございますが、今後、データを積み重ねて経年変化などを分析し、他の自治体や民間企業との比較を行うことにあわせまして、分析手法そのものも高め、期待いただいておりますようなツールとしてのレベルを発展させていくというふうに考えております。
▼石川委員
平成十八年度の決算公表に当たりましては、財務局からも年次財務報告書が作成されて、東京都の財務状況をつぶさに分析して、資産の更新のあり方を含めて、さまざまな問題の提起が行われました。
また、主要施策の成果に財務諸表による財務情報も掲載されて、数多くの個別事業にかかわるコストやストックの状況も明らかにされました。ともにすぐれた取り組みであることは確かであります。やはり専門的な知識がなければ理解が進まない面があるし、企業会計の考え方だけではわからないような部分も多いと思います。
ともすると専門的な内容が多い財務諸表をどのように理解すべきか、問題点や課題はないかについて、これからも都民が速やかに読み取れるような工夫はますます重要になるものと考えています。今後とも、財務諸表の分析内容など、都民にわかりやすく示していくための工夫が必要であると考えますが、いかがでしょうか。
▼財務局長
十八年度決算は新たな公会計制度を導入して初めての決算でございまして、率直に申し上げて、全庁各部署、財務諸表の作成や年次報告書の発行に相当多大な努力を要したというのが実情でございます。
そういう点におきましては、個別の分析を解説するに当たりまして、図表やグラフなどを十分用いるというところまでには至っておりませんで、わかりやすさという点での工夫は、必ずしもまだ十分とはいえないというふうに考えております。
しかしながら、今回導入された公会計制度は、日々の、それぞれ現場の中での仕事の中で複式簿記が組み込まれているわけでございまして、そういう仕組みが、時を重ねて徐々に都庁全体に定着して、なじんでいくというふうに思われます。
そうした中で、資料の作成などに当たりましても、よりわかりやすい表現ができるよう、私どもとして一層の努力をしてまいりたいと考えております。
また、財務諸表と同様、事業の展開あるいは成果につきましても、都民の実感に沿った形で公表し、理解を深めていただくことが大切でございますので、今後とも、この点についても一層の工夫を重ねてまいりたいと思っております。
▼石川委員
より一層の創意工夫をお願いをいたします。
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■公共サービスの利用者負担のあり方 |
▼石川委員
次に、公共サービスの利用者負担のあり方についてであります。
平成十八年度に実施した東京都福祉保健基礎調査「都民の生活実態と意識」について、結果が先月末に発表されました。まず、そこでの高齢者世帯の収入分布はどのようなものなのか、また、その収入の種類はどのようなものか伺います。
▼福祉保健局長
高齢者世帯の収入分布は、少し詳しく述べますと、年間収入百万円未満が七・八%、百万以上二百万未満が二一・四%、二百万以上三百万未満が二六・二%、三百万以上四百万未満が一九・三%、四百万以上五百万未満が七・二%、そして五百万円以上が一三・七%となっております。
収入の種類を世帯主の収入で見ますと、年金・恩給が七三・五%、賃金・給料が八・六%、事業所得が六・二%、家賃・地代が五・三%、そして生活保護が四%などとなっております。
▼石川委員
高齢者世帯と一口にいいましても、収入が少ない人から多い人までさまざまでありますが、他に財産収入などの収入のある人を除けば、高齢世帯の多くは年金のみで生活をしています。こうした中で、都はどのような考え方で高齢者に対する福祉保健サービスの利用者負担を決めているのか伺います。
▼福祉保健局長
高齢者に対します福祉保健サービスの利用者負担についてでございますが、これは個々の福祉保健施策ごとにその目的や内容に応じまして、負担と給付のバランスや住民間の公平性を確保いたしますとともに、世代間の公平性にも配慮しながら定めているところでございます。
▼石川委員
年金のみで生活をしている高齢者の場合、みずからの年金収入の中から税金や公共サービスの利用者負担を支払い続けています。世代間の公平性ということを否定するものではありませんが、こうした公的な支払いの増加が、年金生活における可処分所得を減らす結果になっています。それでも余裕のある世帯はよいが、余裕の乏しい世帯はますます生活を切り詰めざるを得なくなり、ひいては、若者の年金離れにもつながりかねないことを第三回定例会代表質問で我が党は指摘をいたしました。
こうした年金のみで生活している高齢者世帯の実態を把握し、負担を軽減できるような利用者負担のあり方を検討していくべきと考えますが、見解を伺います。
▼福祉保健局長
負担の問題でございますが、今お話のございました公的年金のみを収入とする高齢者について見ますと、この方々を仮に現役世代と比較いたしますと、課税対象となる所得水準は高く設定されておりますので、住民税の課税、非課税を基準として賦課が決定される各種制度におきましても、結果として、現役世代より高齢者の負担が軽減されることもございます。
いずれにいたしましても、今後とも各種制度の利用者負担の設定に当たりましては、その目的にふさわしい適切な負担となるよう、お話の高齢者の生活実態の把握も含め、検討してまいります。
▼石川委員
利用者負担のあり方を検討していただくに当たって参考にしていただきたい先例として、福祉保健局が実施した軽費老人ホームA型の利用者負担の経過措置を挙げたいと思います。これは、税制改正による老齢者控除の廃止や公的年金等控除の縮小に伴い、収入はふえていないのに税額を利用者負担の基準としていたために、平成十八年度から負担がふえることになった軽費老人ホームA型の利用料について、福祉保健局は、我が党の要望を受け、税制改正の影響を受けにくい、収入額を基準とする利用者負担へと方式を変更するとともに、利用料が増加するものについては、経過措置を実施して激変緩和を図りました。このことについては、高齢者が一定の年金で安定した生活を継続する上で必要な、きめ細かな配慮であったと評価しています。
そこで、今後、税制改正に際し、年金で生活している高齢者の利用者負担が大きくふえるような事態が生じた場合にも、同様の激変緩和措置を実施して、利用者負担の急変を回避すべきと考えますが、見解を伺います。
▼福祉保健局長
お話の軽費老人ホームA型利用料につきましては、それまで都が独自に実施をしてきました所得税額を基準とした算定方式から、国が決めました算定方式であります収入を基準とした方式に変更した上で、激変緩和のための措置を実施したものでございます。
高齢者の方々に対します福祉保健サービスの利用者負担につきましては、個々の福祉保健施策ごとにその目的や内容に応じて、負担と給付のバランスなどにも配慮しながら検討する必要がございますので、同様の措置が他の制度に直ちに適用できるかどうかは慎重に考えていく必要があるというふうに考えてございます。
今後とも国の社会保障制度や税制の動向も見定めつつ、激変緩和の必要性等を適切に判断してまいりたいと考えております。
▼石川委員
公的サービスの費用が単に安ければよい、無料ならばよいなどと主張するつもりはありません。そのサービスの性質によって応分の負担をするということは、公平性の観点からも必要なことであります。要は、その負担を求めた結果、年金だけで暮らしている高齢者の生活が安定的に維持できていけるのかどうか、きめ細かく検討して制度設計していくことが重要であります。
都財政は現在、ある程度余裕があると思われます。利用者の負担がふえて都の財政が潤えばよいというものでもありません。公会計制度の導入によって、都の財政状況もより正確にとらえられるようになりました。これらを契機として、福祉保健サービスなど公的サービスが本来救済すべき人はどういう人々なのか、よく検証し、望ましい利用者負担のあり方を検討していただけるよう要望いたします。
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■耐震対策 |
▼石川委員
次に、十八年度の決算に関連して、木造密集地域の耐震対策について伺います。
まず、十八年度の耐震診断と補強工事の助成の実績を伺います。
▼都市整備局長
都の耐震対策の助成制度でございますが、木造住宅密集地域のうち、防災都市づくり推進計画に定められました整備地域を対象にしまして、区と連携いたしまして耐震診断及び耐震改修への助成を行うものでございます。
平成十八年度の助成実績でございますが、耐震診断が五百五十一件、耐震改修が二十二件でございます。
▼石川委員
制度開始の初年度なので、実績もこれからというところですが、いつ発生してもおかしくない首都直下型地震を想定すれば、手綱を緩めるわけにはまいりません。
そこで、私どもがよく住民の皆様から相談を受けるのは、アパートなど木造集合住宅の耐震補強です。居住者としては耐震補強が必要と感じながらも、所有者である大家さんが判断しなければ補強工事が行われませんし、そもそも、区市に集合住宅への耐震助成制度がなければ都としても助成できません。
そこで伺います。木造賃貸集合住宅の耐震診断、補強に対する助成制度がある区市はどれくらいあるのか伺います。
▼都市整備局長
本年九月末現在でございますが、木造賃貸集合住宅の耐震診断助成制度のある区市の数は十九、耐震改修助成制度については十四でございます。
▼石川委員
制度を実施している区市もふえてきているようですが、まだ制度のない区市も多くあります。今後、都として、集合住宅の耐震助成を持っていない区市に制度を広げるよう取り組みを要望しておきます。
そこで、耐震助成制度の活用を広げるためには、制度の内容を周知徹底することが必要です。耐震補強が必要とは感じながらも、どれだけのコストがかかって、どれだけの効果があるのかわからないという声をよく聞きます。集合住宅の大家の場合も同様です。アパート経営者らに対し、制度の活用を進めるよう周知徹底を図るべきです。都の取り組みを伺います。
▼都市整備局長
東京都は、賃貸住宅経営者等の団体でございます社団法人東京共同住宅協会及びNPO法人であります日本地主家主協会が主催するセミナーや、都がみずから実施する説明会などで、賃貸住宅経営に必要な知識の普及や情報の提供などを行っております。
今後は、こうした場を活用して助成制度の周知徹底を図るなど、木造賃貸住宅の耐震化を促進してまいります。
▼石川委員
次に、マンションの耐震診断への助成制度について伺います。
平成十八年度決算書類によると、執行率は余りよくありません。これは、ある程度の古いマンションになると、入居世帯の家族構成や収入状況にばらつきが出て、管理組合としての合意形成が難しくなることが大きな要因の一つとして考えられます。しかし、住民の生命を守るという視点からは、やはり耐震補強は進めていかなければなりません。
マンションの耐震診断の助成制度の仕組みについても、改めて周知徹底を図り、制度の活用を促していくべきです。都の取り組みを伺います。
▼都市整備局長
都はこれまで、区市やマンション管理業等の関係団体と連携し、セミナー等の機会を活用して、管理組合に対しまして耐震診断助成制度の周知を図ってまいりました。
今後、区市の取り組み強化を促すとともに、耐震化についてのわかりやすいパンフレットを作成し、診断が必要なマンションの管理組合に配布するなど、本制度の十分な活用を促してまいります。
▼石川委員
次に、大規模空間のある建物の耐震対策について伺います。
平成十七年八月に発生した宮城県沖地震では、仙台市内のスポーツ施設の天井が崩落し、多数の負傷者が出ました。こうした事態を受け、公明党は、つり天井など大規模空間を持つ建物の耐震対策を推進してまいりましたが、大規模空間施設の天井崩落防止へ向けた都の取り組み状況を伺います。
▼都市整備局長
東京都は、宮城県沖地震の発生後の平成十七年九月、特定行政庁であります区市と連携して、都内の五百平方メートル以上の大規模空間を持つ建築物、約五千五百棟ございますが、これを対象にしまして、つり天井についての安全性を調査いたしました。その結果、国が策定した技術指針に適合せず、かつ崩落防止対策を予定していないものが約二百七十棟ございました。その後、これらに対しまして改善指導を行い、本年九月末時点では約百五十棟が対策済みまたは対策予定となってございます。
今後とも改善状況の把握に努めるとともに、技術指針に沿って対策がなされるよう適切に指導してまいります。
▼石川委員
次に、窓ガラスの耐震化について伺います。
阪神大震災の発生直後、部屋じゅうに飛び散っていた窓ガラスなどの破片に気づかずに、慌てて走って逃げようとした被災者が、足の裏に無数の破片が刺さり、大けがをした事例が多数報告されています。また、避難所となる学校なども、建物は倒壊しなくても窓ガラスが割れてしまっては避難所としては危険ですし、冷暖房の効果も弱くなります。
そこで、公明党は、当決算委員会の分科会で避難所となる学校の窓ガラスの耐震化について質問しましたが、本日は、学校以外で避難所となる公共施設の窓ガラスの耐震化について、取り組みを要望しておきます。
次に、平成十七年に発生した福岡県西方沖地震では、福岡市の中心部のビルのガラスが割れ、道路に大量に落下しました。都内の中心部で同様のことが起きることを考えると、ぞっとします。特に、はめ殺しといわれるあかない窓ガラスは、建物本体の揺れやゆがみを直接受け、割れやすいと聞いています。
そこで伺いますが、都内で、しかも駅周辺など人通りの多い道路周辺のビルにおけるはめ殺しの窓ガラス落下対策はどうなっているのでしょうか。
▼都市整備局長
東京都は、福岡県西方沖地震の発生後、過去に実施いたしましたビルの窓ガラスに関する調査におきまして、改修済みの報告がなかった建築物など七十九棟を対象にいたしまして、特定行政庁である区市と連携して、平成十七年四月に改めて調査を実施いたしました。その結果、国の基準に適合せず、かつ改修予定のないものが三十五棟ございましたが、その後、改善指導を行い、本年九月末時点では二十二棟が改修済みとなっております。
今後とも改善状況の把握に努めるとともに、基準に沿って改修がなされるよう適切に指導してまいります。
▼石川委員
今後も着実に対策を進めていただくよう要望して、次の質問に移ります。
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■都営住宅の使用継承 |
▼石川委員
都営住宅の使用継承資格の新しい制度運用がこの八月からスタートいたしました。この制度改正は、都営住宅の名義人が死亡した場合に、その同居者に継承できる範囲を、高齢者、障害者、病弱者に配慮しつつ、原則として、従来の一親等から配偶者に限ることとしたものであり、入居者と非入居者の公平性を確保する上で重要なものであると考えています。
これについて、都は、昨年八月の規則改正のときから、居住者向け広報紙「すまいのひろば」などを通じて事前の周知に努めてきたと思いますが、実際に制度運用が開始されてみないと実感がわかない居住者もいるようで、戸惑いを感じておられる方が多数見受けられます。
そこでまず、この使用継承制度の見直しについて、これまでどのように居住者へ周知してきたのか伺うとともに、あわせて、現時点で居住者からどのような問い合わせがあるのか伺います。
▼都市整備局長
都営住宅の使用承継につきましては、規則改正を行いました平成十八年八月から本年十月まで五回にわたり、今お話ございましたように、居住者全世帯に配布しております広報紙に掲載したほか、公社の窓口や団地内でのポスター掲示、また、局のホームページ等で見直しの内容を居住者に周知してまいりました。
次に、居住者からの問い合わせでございますが、承継が認められる範囲あるいは承継が認められない場合の退去猶予期限などに関するものが多く寄せられてございます。
▼石川委員
ただいま答弁がありましたように、これまで五回、「すまいのひろば」で周知徹底を図られたと。しかし、私もすべてのひろばを見ましたけれども、これが親切丁寧な周知徹底かなと疑問に思わざるを得ない、実は表現もあります。
そこで、低所得者向けの住宅政策は、単なるセーフティーネットという位置づけからだけではなく、最近ではトランポリンと称する向きもあるようであります。経済的に困窮状態に陥った都民が、望ましい自助努力を展開する上で有力な手助けとなる重要な手段であります。こうした住宅におけるトランポリン施策が適切に措置されているかどうか、これもまた、オリンピックの開催を目指す東京都が、成熟した都市の姿を世界に提示できるかどうかの重要な分岐点にもなるものと考えています。
そうした観点で、さきに開始された見直し後の使用継承制度の運用に当たっては、都の住宅政策への信頼をより一層高めるためにも、きめ細かな対応が必要であります。これまで、我が党の要望を受けて、継承できない居住者に福祉の窓口を紹介するなどの対策をとってきたことは評価しますが、名義人の死亡等があった段階で戸惑わないように、そうした状況が発生する前に丁寧な相談ができる窓口を設置するとともに、自立に向けた支援を関係局と連携をして行うことが必要ではないかと考えますが、所見を伺います。
▼都市整備局長
使用承継の対象とならない居住者に対しましては、窓口におきまして、住宅供給公社あるいは都市再生機構などの賃貸住宅の募集情報の提供、あるいはお話のような区市町村の福祉窓口の紹介などを行っております。
引き続き関係局とも協力して、必要とされる情報の提供に努めてまいります。
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■都有地の未利用地の活用 |
▼石川委員
次に、都有地の未利用地の活用について伺います。
東京都は今般、新しい会計システムに基づく初の決算をまとめました。その平成十八年度普通会計貸借対照表によると、資産は約三十兆円あり、負債額が約九兆円で、都債は有形固定資産約二十二兆四千億円の三分の一に相当する七兆七千億ということであります。財務局がまとめたアニュアルレポートによると、現在都が保有する財産の三分の一は将来世代の負担になることもわかりました。資産に対する負債の比率は、債務超過ではなく、健全な水準を維持していると書かれた新聞を私も読んで安心をいたしました。この点は、今ごろになって宿舎の売却など資産圧縮の取り組みを展開している国とは大いに状況が異なることもわかりました。
一方、私の地元練馬で、町を歩いていても、閉鎖管理された未利用の都有地を見かけます。公会計システムが整備され、ストックも含めて、都民への説明責任が生じている中にあって、こうした未利用地を放置しておくことはできないと思います。そこで、都は未利用地をどのように活用していくのか伺います。
▼財務局長
未利用になっている都有地には、事業用地として買収しても事業開始がおくれている場合、あるいは行政用途が終わった土地で売却が困難になっている土地などがございます。これらにつきましては法的制約があったわけでございますが、まず本年三月に改正自治法が施行されまして、従来、区市町村などの利用に限られていた行政財産につきまして貸付範囲が拡大され、未利用の事業予定地であっても民間事業者への貸し付けが可能となり、利活用の幅が広がっております。
また、東京都は、本年六月に今後の財産利活用の指針を策定いたしまして、行政用途が終わった土地につきまして、これまで売却を中心に考えていたわけでございますが、その考え方を転換して、民間に長期貸し付けするなどの新たな取り組みを始めたところでございます。
今後は、事業が始まるまでの間、事業予定のある土地を民間に積極的に貸し付けたり、行政用途の終わった土地で、将来的に利用の可能性がある土地については、新たに環境負荷低減やグループホームなどの福祉事業など、都の施策の推進を条件とした貸し付けの実施などによりまして、都民にわかりやすい、役に立つ財産の利活用を図ってまいります。
▼石川委員
ご答弁のように、財政再建を果たした今、将来、行政の事業に使う可能性のある土地を単純に売却することには賛成できません。これからは個々の財産の立地条件などの特徴を見きわめながら、売却するかどうかを判断すべきだと思います。売却しない場合は、未利用地の利活用については、今伺ったような収益を上げつつ、東京都の施策を絡めた利活用を工夫しながら進めていってほしいと思います。
しかし、先ほど申し上げたバランスシートの資産三十兆円の中には、公共事業で買収したけれども残ってしまった狭小、不整形な事業残地も含まれています。私の地元では事業残地が多く発生しています。こうした土地は放置されたままになっている場合が少なくありません。小規模な都有地であっても、税金を使って購入した土地であり、大規模な土地だけではなく、こうした土地の活用も重要であります。もっと知恵を絞って積極的に有効活用ができないのか、見解を伺います。
▼財務局長
小規模な都有地が利活用できずにそのままになっている理由といたしましては、各局の事業残地等についていえば、従来は事業が終了した後に売却や利活用に着手したわけでございまして、そのことが一つ、原因としてございます。それから、先ほどのお話にもありましたように、利活用の手法が区市町村などの使用許可に限定されていたこと、また、財務局が管理している土地やあるいは事業残地等の中にあっても、小規模で利活用が事実上困難なものが相当数あることなども挙げられます。
そこで、平成十八年度から、全庁的会議として都有財産利活用推進会議を活用いたしまして、具体的には環状八号線などの事業残地につきまして、事業中から売却等に積極的に取り組んでまいりました。その結果、この一年数カ月の間の売却実績は六千四百万円ほどとなっております。
また、関係局と連携いたしまして、事業残地等を緑化したり、あるいは民間へ貸し付けてコインパーキング化した実例もございます。財務局所管用地につきましても、環境局事業であるすき間緑化事業の場所として活用するなど、積極的に利活用を図っております。
今後とも、小規模な都有地につきまして、ご指摘の点を踏まえまして、可能なものについて速やかに売却等を進める一方、民間事業者への貸し付けなど、幅広い都民の参加によりまして収益性を発揮させたり、都が抱える行政課題に役立てるように取り組んでまいります。
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■都道補助第一三三号線の整備 |
▼石川委員
最後に、都道整備について、地元の補助第一三三号線について、現在事業中であります千川通りから目白通りまでの区間の整備の位置づけについて伺います。
▼建設局長
練馬区内の都市計画道路補助第一三三線については、千川通りから目白通りまでの延長四百十五メートルを幅員十六メートルで整備中であります。
本事業は、西武池袋線の連続立体交差事業とあわせて行い、周辺地域の道路ネットワークを形成し、交通の円滑化を図るものであります。これにより、現在細街路に流入している通過車両を誘導するなど、安全で快適な生活空間を確保するとともに、災害時の避難など地域の防災性の向上を図ることを目的としております。
▼石川委員
本区間は平成二年度より事業に着手したとのことでありますが、これまでどのように整備してきたのか伺います。
▼建設局長
本区間の整備につきましては、平成二年度に事業着手し、十一年度までに七割の用地を取得いたしました。その後、残る大規模な土地の境界確定や大型店舗の移転先確保などについて粘り強い折衝を重ね、昨年までに用地取得を完了したところであります。
本年七月には、千川通りから西武池袋線北側までの約八十メートルを、全線開通に先立ち交通開放いたしました。
残る区間については、現在、歩道の植栽工事などを実施しており、引き続き目白通りとの交差点整備を行い、来年夏の全線区間の供用開始を目指してまいります。
▼石川委員
平成二年度の事業着手から、答弁にありました事情もあり、長い年月を経てようやく完成に近づいている道路であります。しかし、この計画事業期間中の取り組みを見ますと、建設事務所の皆さんのご努力は評価をいたしますが、解決すべき課題を同時に執行できる体制が整っていれば、供用開始を早めることは可能だったのではないかと、このように私も、また地元の期待をしている方々も述べておられます。
本区間は来年の夏に開通するとのことでありますが、一日も早く地元の期待にこたえることをお願いするとともに、今後の道路整備に当たりましては、費用対効果を高めるためにも、事業の早期完了に必要な執行体制を整備し、取り組まれるよう要望いたしまして、質問を終わります。
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