▼松下委員
初めに、豪雨対策についてお伺いいたします。
近年、平均気温の上昇や熱帯夜の増加など、ヒートアイランド現象が都民の関心を高めており、都は、ヒートアイランド対策を環境局が中心となり平成十四年から推進していますが、年々暑くなる東京の気温を下げ、ヒートアイランド対策に取り組むことは、待ったなしといえます。
ヒートアイランド現象の影響との関係も指摘されている近年の気象変化による集中豪雨の増加によって、一昨年の九月四日のように、都全域で六千棟にも上る浸水被害が発生しました。
私の地元の武蔵野市でも、過去に例のない時間雨量九五・五ミリを記録する豪雨により、床上、床下、地下浸水、道路冠水、マンホールからの逆流、車両浸水などの被害が発生しました。
武蔵野市では、当時、警戒態勢をしき、消防団や防災関係機関と連携をとりながら、水防活動を実施しましたが、この集中豪雨以後、雨が降るたび浸水の心配をしなければ安心して暮らせないという声が、被害のあった地域を中心にたくさん聞かれるようになりました。都民が安心して暮らすことができるように、集中豪雨による浸水被害を早く解消できるように、豪雨対策を総合的に展開していくことは重要な課題であります。
都は、これまで昭和六十一年の答申に基づいて、河川整備や下水道整備、雨水の流出を抑制する流域対策の実施等に取り組んでいます。本年八月には、東京都豪雨対策基本方針が策定され、重点対策エリアや対策目標降雨量をいつまでに達成するのかといった、期間を定めた目標も設定しています。
公助としての河川整備や下水道整備に加え、自助、共助を促進する視点に立った流域対策や、まちづくり、家づくり対策を一層推進し、ハードとソフト両面の方向性を示し、中間のまとめ発表後の都民意見も反映させた豪雨対策の基本方針ができ上がっています。
この基本方針をいかに実践していくか、方針が実現していくためにも、平成十八年度の決算に当たり、豪雨対策として河川整備と流域対策について、何点かお伺いしたいと思います。
決算説明資料によりますと、平成十八年度の中小河川整備費は総額で二百三十八億円余りの支出となっていますが、まず、平成十八年度末までの整備率と、その前年比及び平成十八年度の主な整備内容についてお伺いいたします。
▼建設局長
平成十八年度末までの中小河川の整備状況を示す一時間五〇ミリの降雨に対する治水安全度は都全体で七四%となり、前年度より一ポイント向上いたしました。
十八年度には二十七の河川で事業を行い、このうち、護岸の整備については、石神井川の蛍橋下流や野川の吉沢橋上下流などで約二キロメートルを整備いたしました。
また、調節池についても、環七地下調節池の善福寺川取水施設及び霞川調節池を完成させるとともに、善福寺川の和田堀第六号調節池を掘り下げ、貯留能力を二万二千立方メートル増大させたところでございます。
▼松下委員
厳しい財政状況の中、中小河川整備を進めていることはわかりますが、整備率前年比一ポイント向上という結果により都全体で七四%という数字は、必ずしも十分な整備率であるとはいえません。
今後も、平成十八年度と同様の整備率前年比で推移するとなると、一〇〇%の達成には二十年以上も要することとなり、かなりの時間を要することになってしまいます。
限られた予算の中で着実に中小河川整備を実施するためには、中小河川整備の目標を定め、危険な箇所から早期に整備を促進していく必要があると考えます。
そこで、中小河川整備における基本的な考え方と今後の整備の進め方について、お伺いいたします。
▼建設局長
水害から都民の命と暮らしを守るためには、河川整備の明確な目標を設定し、それに向かって事業を推進していくことが重要であります。
中小河川では、平成二十七年度までに、過去に水害をもたらしたものと同規模の降雨による溢水の九割を解消し、残る一割についても、被害の程度を大幅に減少させることを目標に事業を進めております。
実施に当たっては、神田川、空堀川など、過去に水害が発生した箇所や、鶴見川など浸水被害が発生するおそれのある箇所について、護岸や調節池の整備を重点的に進めているところでございます。
具体的には、十七年九月の豪雨により大きな被害が発生した神田川水系の妙正寺川や善福寺川では、再度災害を防止するため激特事業を実施しており、二十一年度に完成させてまいります。
また、地下鉄施設が浸水するなど、被害が発生している古川では、二十年度に新たに地下調節池の整備に着手する予定であり、二十七年度の完成を目指しております。
今後とも財源確保を図り、中小河川整備を積極的に推進し、水害の早期解消に努めてまいります。
▼松下委員
ぜひ明確な目標を設定し、期限を決めて重点的に整備を行っていただきたいと思います。
被害に遭った都民は、雨が降るたびに被害の記憶がよみがえり、不安な気持ちになるということをおわかりいただき、今後とも、今まで以上の財源確保を図り、豪雨対策のために中小河川整備を積極的に推進していただきたいと要望します。
豪雨対策を効果的に進めるには、河川整備のほか下水道整備、流域対策も大変重要であります。各会計決算のため、ここで下水道整備に関してご質問することはできませんが、都市における集中豪雨への対応には、下水道による内水対策が重要であり、国交省の試算によると、内水による被害額の割合が東京都では全国平均四八%を大幅に上回る九三%となっており、都は内水はんらんを防ぐ下水道整備の推進を早急に積極的に取り組んでいただきたいと要望のみいたします。
都は、流域対策として、雨水の流出を抑制するため雨水浸透ますを設置するなど、積極的に取り組んでいかなければならないと思います。都が進めている流域対策に用いる施設としては、貯留施設と浸透施設に大きく分けることができますが、流域対策のみならず、地下水の涵養という観点からも、浸透施設の設置は重要だと思いますので、雨水浸透施設の設置に関してお伺いいたします。
現在までに都内に設置している雨水浸透ますの設置数と貯留量はどのくらいになるか、お伺いいたします。
▼都市整備局長
都内におきまして、これまで設置されました雨水浸透ますの個数でございますが、平成十七年度末現在、約四十二万個でございます。また、雨水浸透ますなどの浸透施設や貯留施設を合わせた貯留量でございますが、約五百万立方メートルでございます。
▼松下委員
雨水浸透ますは、豪雨時の初期の部分を取り込み、地下に浸透させ、雨水流出を抑制するため、下水道や河川に負担をかけないということで、結果として非常に効果的な豪雨対策の施策であると思います。
都は、これまで雨水浸透ますの設置に関してさまざまな目的で、担当局も、目的に応じて都市整備局や環境局と分かれてきていました。雨水浸透ますの設置という一つの同じ行為に対して、その目的がさまざまだったようであります。都内すべての地域で雨水浸透ます設置が有効というわけではなく、地盤の雨水浸透能力が低く、浸透効果を期待できない地域や、雨水を地下へ浸透させることにより防災上の支障が生じるおそれのある地域では、雨水浸透施設ではなく雨水貯留施設を設置するなど、対応が異なるようでもあります。
今後、雨水浸透ます設置促進のためには、雨水の地下への浸透を推進する地域をより明らかにした上で、浸透施設設置による貯留量や貯留効果がどのようなものか、数字でわかりやすく明らかにした上で、丁寧な説明を行う努力をしていただきたいと思います。
流域対策については、都の関係局と区市町村で東京都総合治水対策協議会が設置されており、協議会の専用ホームページには、区市町村における貯留浸透施設に関する指導内容の一覧が掲載されています。要綱や条例の設置の有無が一目瞭然でありますので、雨水流出抑制の指導を行っていない区市町村に対しては、要綱や条例等の制定や、貯留浸透施設の設置を促進する方策に取り組むように、引き続き要請をしていただきたいと思います。
私の地元の武蔵野市では、雨水浸透ます設置への取り組みは古く、要綱もありますが、さらに平成十七年九月の集中豪雨の被害が特に大きかった地域の小学校に、平成十八年度には豪雨対策の一環として、市の費用で雨水浸透施設を整備しています。
このような市の取り組みに対して、今後、都も支援を考えていると聞いておりますが、具体的にはどのような支援か、お伺いいたします。
▼都市整備局長
武蔵野市におきましては、国の補助制度でございます、下水道総合浸水緊急対策事業を活用いたしまして、平成十九年度から五カ年で、市内の小中学校十一カ所に雨水浸透施設の整備を予定してございます。
今後、この事業に対しまして、都としても財政支援を行うとともに、必要な技術支援を行ってまいります。
▼松下委員
国は、平成十八年四月に、今お答えのありました新規制度、下水道総合浸水対策緊急事業を創設し、地方公共団体が実施する下水道による都市浸水対策を一層積極的に支援することにしておりますので、この制度を利用したというお答えだと思います。
この新たな制度創設の前提には、今後の浸水対策の目指すべき方向が、時間と財政的制約の中で、緊急かつ効率的に浸水被害の軽減を図るために、施策の転換が必要であるとしています。
こうした国の施策転換も踏まえ、今後、都としては豪雨対策にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
▼都市整備局長
東京都といたしましては、近年増加しております集中豪雨に対処するため、お話にもございましたが、東京都豪雨対策基本方針を本年八月に策定いたしました。
この方針に基づきまして、神田川、石神井川などの浸水被害が頻発している流域を対象にしまして、雨水浸透ます設置費用の助成を区市と連携して行うなど、流域対策の強化を図ってまいります。
また、地下室などへの浸水被害を防止する方法などを示したガイドラインを作成し、都民みずからの浸水対策を促すなど、都民生活の安全確保に努めてまいります。
▼松下委員
都民が安心して暮らせるまちづくりを進める上でも、河川、下水道整備や、流域対策などの豪雨対策を、都庁内の組織だけではなく、区市町村や都民の連携のもとに着実に進めていただきたいと要望します。
特に、河川整備などに当たっては、景観や水生生物の保全などの周辺環境に配慮した整備を進めていただきたいと要望します。
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