トップ >都議会ネットリポート>平成19年 >平成18年度各会計決算特別委員会 委員会質疑 >宇田川聡史(自民党)

平成18年度各会計決算特別委員会 委員会質疑

公会計制度
アジア大都市ネットワーク21
宇田川聡史
宇田川聡史(自民党)
■公会計制度

 ▼宇田川委員
 将来の東京のあり方を考える上で、都市の経営を担う東京都の状況を財務面から的確に把握していくことは、非常に重要だと考えております。
 そのためには、会計制度の充実強化も欠かせません。都は、昨年度新たな公会計制度を導入し、初めての本格的な財務諸表を提出しました。これは、平成十四年五月に石原知事が複式簿記・発生主義を導入することを表明したことにより、東京都会計基準を策定するとともに、財務会計システムを再構築し、我が国の行政として初めて導入に至ったものであります。
 この間、国の動きは鈍かったわけですが、ようやく昨年四月に総務省が新地方公会計制度研究会を設置して、地方自治体の公会計制度改革についての検討を始めました。
 研究会では、基準モデルと総務省方式改訂モデルという二つの公会計モデルについての検討を行っていましたが、去る十月十七日にその二つのモデルによる財務諸表の作成要領を公表したところであります。
 これを受けて、全国の自治体もいよいよ公会計の整備に取り組むことが求められるようになりました。国に先駆け、新たな公会計制度の導入を進めてまいりましたが、都として現在の状況をどう認識し、今後どのように取り組んでいくのかを、まずお伺いいたします。

 ▼会計管理局長
 我が国の現状を見ますと、地方行財政全般にわたる改革を進める上で、複式簿記・発生主義会計を導入することは避けて通れないものとなっております。
 しかしながら、総務省の改訂モデル、これは官庁会計の決算組み替えに過ぎず、複式簿記の導入といえるものではございません。また基準モデルは、独特な考え方に基づくもので、わかりづらいだけではなく、実務的な対応も難しいものとなっており、二つのモデルとも、今後、全国標準的な会計基準にはなり得ないというふうに考えております。
 これに対しまして、都の新公会計制度でございますが、これは民間の企業会計基準に準拠しつつも、行政の特質を十分考慮したものとなっており、そのことによって、財政の透明化や効率的、効果的な行財政運営を展開するための基本的なツールとなるものでございます。
 今後は、全国初の本格的な財務諸表を作成した実績を踏まえまして、各自治体の要望に応じ、都の新公会計制度のノウハウを積極的に提供し、公会計改革を支援していくとともに、国に対しましては、全国標準となり得る会計基準を、地方の意見を反映して策定するよう、強く求めてまいります。



 ▼宇田川委員
 これまでの先駆的取り組みによって、平成十八年度決算において精度の高い財務諸表が公表されましたが、これらの財務諸表をどう分析し、それをどう都政のかじ取りに反映させていくのかが最も重要なことだと考えております。全国の自治体も、この点に大きく注目をしていることだと思います。
 新たな公会計制度による財務諸表の分析を含めた活用の方法については、まだその取り組みはようやくスタート地点に立ったばかりであります。これまでにない質と量の決算情報が得られた今、その内容を十分に分析して、都の財政状況を正確にとらえて、中長期的な財政戦略を確立していくことこそが、将来の東京を支え得る行財政運営を取り決める上で不可欠であり、この公会計制度をしっかりと育てていき、その活用のあり方についても検討を深めていかなければならないと考えております。
 そこで、財務諸表の活用を図る上でどのような部分に力を入れていくことが重要であるとお考えなのかを伺います。

 ▼財務局長
 今後の都財政運営に当たりましては、「十年後の東京」の実現に必要な財政需要を確実に把握し、実効性のある施策を着実に展開するとともに、フローのみならず、資産、負債などのストックを含めた財務状況の総合的な分析が不可欠であると考えております。
 そうした点から、都の新たな公会計制度による財務諸表は、中長期的に対応すべき財政需要を明らかにし、個別の事業の実効性を検証するとともに、過去に貸し付けを行った債権などのストック情報を示すものとして、極めて有効に活用し得るものであると考えております。
 都財政全体というマクロの視点と、個別事業に係るミクロの視点の両方から、財務諸表による分析を深め、どの分野にどう重点的な対応を図ることが効果的、効率的な施策展開につながるのかという点に力を入れまして、そのための有効な手だてとなるよう、今後一層財務諸表の活用に努めてまいります。



 ▼宇田川委員
 ぜひしっかりと研究、分析をしていただいて、十年後、二十年後の都民が安心して暮らすことのできる都財政運営を実現していただきたいと思います。
 そうした将来の東京というものを考えるときに、都市活動を支えるインフラ整備について検討することも、また不可欠であります。今回の財務諸表においても、都の抱えるインフラ資産の隠れた更新需要などの実態が、数字という形で端的に示されることとなりました。その詳細についてはここでは省略をしますが、それらの資産の維持更新に今後どうやって対応をしていくかが大きな課題でございます。
 更新需要に見合う財源をどう確保するかということにとどまらず、良質な社会インフラを最少の経費でどのように効率的につくり上げるべきかという視点に立った財政運営も重要だと考えます。
 都の保有する大規模施設などの社会インフラについて、財務諸表からわかる情報を踏まえて、どのような更新や維持を行って将来の良質な資産の維持や形成に努めていくのか、ご所見を伺います。

 ▼財務局長
 今回作成いたしました財務諸表により、都が有する資産は、整備した当初に比べ、建物や橋梁などで二兆円以上も減価償却が進み、資産の価値が減少していることが明らかとなりました。
 老朽化した施設の維持更新に当たりましては、まずは更新等の必要性を十分に精査し、その上で、将来にわたってその施設の有効性や、資産としての価値を維持できるよう、管理などを含む施設の生涯にわたるライフサイクルコストの縮減など、多面的な対応を行う必要があると考えております。
 同時に、改築、改修等が必要となる施設全体規模を明らかにいたしまして、そのために必要な財源の確保について、納税者である都民の理解に配慮しながら、中長期的視点から適切に対応していく必要があります。
 こうした観点に立ちまして、さらに検討を進めまして、大規模施設等の改築、改修に関する実施方針を策定し、限られた財源を最大限有効に活用しながら、十分都民サービスを提供できるような適切な改修、改築を進めてまいります。



 ▼宇田川委員
 財務諸表を活用し、今後の膨大な更新需要を踏まえて財源を十分に確保するなど、中長期的に先を見通して的確な財政運営を行っていかなければならないと思います。
 今後の財政需要が見込まれる中で、国において都の財源を奪う動きがにわかに激しくなってまいりました。財務省は、財政制度等審議会で、都は裕福である、特別区は手厚過ぎる福祉施策を行っているなどと主張をしまして、総務省も、政府の税制調査会などで、みずからの主張を行っております。
 都も、先日、反論書の第二弾というべきものを発表しまして、総務省や財務省を向こうに回して、声高に主張を始めました。一方、総務省も、先週の経済財政諮問会議において、地方と都市の共生プログラムという案を出し、地方交付税に特別枠を設けるなどの地方に対する配慮を行い、地方においても受け入れが好意的だとも聞いております。
 この総務省案について都はどう受けとめているのか、お尋ねをいたします。

 ▼財務局長
 お話の案でございますが、国が大都市の財源を奪おうとする動きに対して、都を初めとする広範な地方自治体から、都市の財源を奪っても、結局はその多くが国のものになるだけだという批判が高まる中にあって、出されたものでございます。
 プログラムの具体的内容は、国税である消費税の一部と、地方税である法人二税の同額分を交換し、都など都市部の自治体の減収分を新たに設ける地方交付税の特別枠に充当いたしまして、地方に配ろうというものでございます。
 この案は、幾つかの点で大きな問題を持っております。
 まず第一に、結局は、大都市の税収を用いて自治体間で水平的に調整を行おうというものでございますので、国の責任を棚上げにするものであるというのが一つでございます。
 また、法人二税と消費税の交換は、地方税収の安定化には資するわけでございますが、その一方、交付税原資の相当部分を法人税に頼るものでございまして、長期的には交付税総額の不安定化をもたらすというデメリットがございます。
 さらに、この案には、自治体にさらなる歳出削減努力を求めるという項目が明確に定められておりまして、交付税本体の総額を抑制することによって、結局は地方交付税がふえるどころか、減少しかねないものでございます。
 いずれにいたしましても、国の責任で生じた地方財政の困窮のツケを地方に押しつけようとする意図が透けて見える案であることには変わりはございません。
 このような案に対して、地方が安易に支持を表明すれば、三位一体改革の名のもとに、結局、地方交付税が五兆円も削減されたのと同じ轍を踏むことにもなりかねず、地方財政の一層の困窮を招くことを危惧いたしております。
 都といたしましては、このような案に対して反対という立場をとるものでございます。



 ▼宇田川委員
 これから年末にかけて、政府や与党の税制調査会や財務省、総務省との折衝へと舞台が移ってまいります。我が党の東京選出の国会議員の間でも、東京の財源を守るプロジェクトチームを結成して、さまざまな場面で必要な主張を行ってきているところです。
 我々も、今回出された反論の第二弾の書を武器に国と戦っていくことになりまして、確かに理屈ではこのとおりだと私も思うのですが、うがった見方をされると、いいわけではないかと、こんなとられ方もされかねないこともありますので、このような理屈による反論だけではなく、政治的にも対抗していく必要があると考えます。
 強い政治力を発揮できる石原知事ですから、その力を最大限発揮できるよう、事務方の皆さんもしっかりサポートしていただきたいなと思っております。
 これまで、過去から現在、そして将来を見越して早くから行動することが大事だと、そうした話をしてまいりました。危険なところを回避し、将来の東京を見通し、必要な部分に先手を打っていく、こうした財政運営が必要と考えているところであります。
 財務局長の今後の財政運営に対する基本的な考え方をお聞かせください。

 ▼財務局長
 今後の都政の大きな課題でございます「十年後の東京」を実現するために大事なことは、まず第一に、都民にとって必要な需要にこたえる有効性の高い事業を構築し、着実かつ効果的な事業を展開していくことでございます。
 第二には、先ほど申し上げたように、施設の更新経費などが増加する中にあって、どれだけの新たな需要があるのかをしっかり把握し、そのために必要な事業を実施するに足りる、さらに強固で弾力的な財政基盤を構築していくことでございます。
 一方、都財政をめぐる環境は、最近の経済状況の変化を見ても、安閑とできる状況にはなく、また、都の財源を奪おうという国の動きは、これまでの財政再建の努力、成果を無にするほどのダメージを与えかねないものでございます。
 これらの外部要因を含めまして、今後生じるであろうさまざまな困難に対し、先手を打って適切に対処すべく最大限の努力を払い、都政の諸課題に真正面から取り組み、都民サービスを向上させていくことを基本に、これからの財政運営に当たってまいります。
 そのため、ご指摘いただきました新たな公会計制度も活用して、新規需要や更新需要の的確な把握、事業の効果とコストの検証により、よりすぐれた施策の構築などに取り組み、歳入歳出両面から、しっかりと先を見た着実な財務運営の徹底に努めてまいります。

▲ページのトップへ
■アジア大都市ネットワーク21

 ▼宇田川委員
 次に、アジア大都市ネットワーク21について、お伺いいたします。
 昨年十一月、総務委員会にて質疑を行いましたが、その際には、総会のほか十八の共同事業の具体的取り組みを通じ活発な活動が行われ、都市間のネットワークが一層強固になってきたとのお答えでありました。
 マニラ総会を今月末に控え、共同事業を一層発展させることについて、事務局としてどのようにお考えなのかを、まず伺います。

 ▼知事本局長
 アジア大都市ネットワーク21の共同事業でございますが、これについては、今までも着実な成果を上げてまいりましたけれども、前回の台北総会におきまして、事業を一層発展させるための検討を行うことが採択されました。
 これを受けまして、すべての共同事業について各都市と協議し、見直しを行ってまいりました。今回の総会では、この見直しの結果を踏まえまして、二つの提案を行うこととしております。
 第一に、文化関係の事業を統合し、新たにITに関する事業を立ち上げるなど、内容を充実させるため共同事業の再構築を行うこと。
 第二に、事業を着実に実施するために中期計画を策定し、期間終了後に評価を行い、次の計画に反映をさせることでございます。
 これらの取り組みが承認をされ、実施されることによりまして、共同事業が参加都市のニーズにより的確にこたえて発展していくものと考えております。



 ▼宇田川委員
 次に、共同事業の中でも石原知事が最も力を入れている中小型ジェット旅客機開発促進プロジェクトについて伺います。
 十月三十日に第二回目のアジア旅客機フォーラムが東京で開催されたと聞いておりますが、これまでの東京都の取り組みにより、中小型ジェット旅客機の開発に向けた機運は確実に高まっております。
 来年、日本の航空会社に納入される予定のアメリカ、ボーイング社の最新鋭機である787は、主翼に炭素複合材が使用されるなど、最先端の技術を駆使して製造されていると聞いております。このように航空機の開発においては常に技術革新が求められております。
 アジア大都市ネットワーク21の連携と協力関係を生かした上で、中小型ジェット旅客機の開発促進に向けた具体的取り組みを行っていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 ▼知事本局長
 第二回アジア旅客機フォーラムでは、これまでの東京都の取り組み及び日本の国産旅客機開発の現状を、国内外の航空関係者に紹介をいたしました。
 日本の技術力を示すことによりまして、特にアジアの航空関係者から、アジア製中小型ジェット旅客機開発における日本のリーダーシップへの期待が高まったところでございます。
 東京都は、国産ジェット旅客機の開発をてこといたしました中小型ジェット旅客機の開発促進に向けまして、アジアとの連携を強化していくとともに、首都大学東京の博士課程にアジアからの留学生を受け入れ、航空機に活用する新技術についての共同研究を行うこととしております。



 ▼宇田川委員
 次に、共同事業のもう一つである危機管理ネットワークについて伺います。
 自然災害やテロなど、アジアの大都市は依然としてさまざまな危機にさらされており、今後三十年間に高い確率で大地震が起こると予測されている東京も、もちろん例外ではありません。
 危機管理ネットワークでは、毎年アジア危機管理会議を開催し、最新の危機管理対策について議論していると聞いております。
 このようにアジアの大都市が互いの経験や取り組みを情報交換し、連携して危機管理能力向上に努めていくことは大変意義深い取り組みだと私も思っております。
 さらに、本年九月の総合防災訓練には、昨年のソウルに続いて台北から救助隊と救助犬が参加して合同訓練を行うなど、情報交換をするにとどまらず、災害対策における都市間の連携強化にも役立っていると聞きます。
 そこで、アジア危機管理会議の成果と今後の取り組みについてお伺いをいたします。

 ▼知事本局長
 アジア危機管理会議でございますが、これは平成十五年度から毎年開催をされておりまして、この間、会議での議論を機に、参加各都市において危機管理センターの機能が強化されるなど、アジアの危機管理能力の向上に貢献をしてまいりました。
 先月、ジャカルタで行われた会議では、災害発生時の都市間の連携を確実なものとするために、都市間で直接救助隊を派遣したり救援物資を送付するなどといった、相互支援を行うための仕組みづくりについて、具体的な検討を開始することとなりました。
 今後とも、危機管理能力の一層の向上のために、アジアの連携強化に向けた取り組みを推進してまいります。



 ▼宇田川委員
 最後に、アジア大都市ネットワーク21について一言申し上げます。
 ジャカルタ総会後の平成十七年八月に脱退した北京についてであります。
 先月の分科会でも、ともとし理事が発言をしておられましたが、アジアの中から北京の欠けた大都市ネットワークというのはあり得ません。二〇一六年のオリンピックを目指す上からも、北京が再び参加できるような努力をしてほしい、道筋づくりにぜひ尽力をしてもらいたい、このことを強く申し上げて、私からの質問を終わります。

▲ページのトップへ

戻る
HP評価アンケート