質問1
地球温暖化など、環境汚染は深刻です。石原知事も、地球温暖化の影響を深刻に受けている南太平洋、ツバル、フィジーを訪れるなど、環境問題に積極的に取り組んでいられます。
そこで、今回、行革一一〇番が調査をした伊豆大島のし尿処理池を検証しながら、環境問題に取り組む職員の意識、正面から立ち向かう難しさ、そして、島の実態を点検してみたいと思います。
伊豆大島は、ジェット機が着陸する大島空港、そして整備された元町、岡田の港が二つ、大きなホテル、そして美しい海、大島は一大リゾート地です。しかし、現在もし尿処理施設、汚泥処理施設がないというのには驚かされました。神津島、青ヶ島、小笠原は既に完備をされています。
平成十七年度に書かれた環境局職員の出張復命書には、大島町にはし尿処理施設がなく、素掘り穴にし尿を投棄し、地下に浸透させている。早い時期に結論を出し、平成十九年度完成をめどに取りかかる考えはあると書かれ、南部し尿処理池の写真がついていました。
南部し尿処理池は海岸から百五十メートルほど陸地に入ったところにありますが、北部の海岸のがけの上にもう一つ、北部し尿処理池があります。し尿は、し尿処理施設で処理をし、脱水または焼却し処分をすることと決められています。しかし、し尿処理施設ができるまでは、周辺の環境に配慮した上なら、し尿処理池に投棄をしても罰せられないのです。海岸の上にある北部し尿処理池は底なしといわれ、過去三十年以上も使われており、し尿ががけ下の海水に漏れ出しているのではと指摘をする声もあります。
そこで、環境局に北部し尿処理池について尋ねると、わからないのです。平成十一年度以降、現地調査もしていない、資料もないというのです。なぜ資料もなく、平成十一年度から今まで現地調査をしなかったのか伺います。
答弁1
▼環境局長
大島北部のし尿投入場所の調査についてでありますが、現在、大島町では北部、南部の二カ所で、し尿を素掘りの穴に直接投入するという同じ方法で処分しております。
都は、近年、南部のし尿投入場所を任意で立入調査しておりますが、平成十年度には北部も調査しており、大島町のし尿処理の全体的な状況は以前から把握しております。
質問2
行革一一〇番は、環境局と大島町が何か隠しているのと考え、八月七日、ヘリコプターでし尿処理池を空から視察をしました。これが写真です。砂浜の切れたところの海岸線のがけの上の林の中にぽっかりと真っ黒な五十メートルプールのようなものがあります。これが北部し尿処理池です。
八月十七日、大島町を訪れ、北部し尿処理池を視察させてほしいとお願いをしたところ、副町長から許可をいただき現場に入りました。こちらが写真です。北部し尿処理池、黒い池はヘリコプターで見たとおり、高い竹やぶにすっぽりと囲まれていました。池の表面は真っ黒、周りには水がたまっていましたが、し尿のにおいは全くしませんが、強烈な油のにおいが鼻をつきます。
大島町は、黒い池の正体について、し尿処理池の上はコールタールで覆い、におい、害虫の発生を抑えていると説明をしていましたが、その後、コールタールではなく、自動車のエンジンオイルの廃油です。そして、十年前まではエンジンオイルを投棄をしていたが、現在は洗浄のためにだけ使っている。そして、現在は、エンジンオイルは一切使っていないと説明を変えるのです。
しかし、行革一一〇番が八月十七日に視察をしたとき、し尿を投入するホース付近でも強い油のにおいが残っていました。たとえ洗浄に使ったエンジンオイルでも、し尿処理池に投棄をするのは好ましくない。まして継続的に行われていれば廃棄物処理法に違反することも考えられ、調査をすべきです。見解を伺います。
答弁2
▼環境局長
し尿投入場所における油の使用についてでありますが、大島町は十年ほど前まで、し尿の臭気対策としてエンジンオイルを投入していましたが、その後は投入した事実はないと町から報告を受けております。
また、今回、町が業者に事情聴取したところ、し尿の投入機材からこぼれたものの臭気対策として、最近までエンジンオイルを使用したこともありましたが、現在はそれも使用していないとのことでございました。
なお、本件は、みだりに廃油を捨てたものではなく、臭気対策として用いられたものであり、不法投棄には当たりません。
質問3
これが北部し尿処理池のがけ下の写真です。至るところでがけが崩れ、また、がけには大きなひび割れが無数にあり、このままがけ崩れが続けば、し尿処理池の中身がこぼれ出る危険性すら考えられます。また、岩の割れ目からは黄色みがかったしずくが垂れているところもありました。
そこで、行革一一〇番は、北部し尿処理池のがけ下の海水から二カ所、そして、しずくの三検体をとり、大阪にある環境監視研究所に分析を依頼をしました。届いた検査結果で注目をしたのがCODの値です。がけ下の海水から一リットル当たり一〇〇ミリグラムと一一〇ミリグラム、がけの割れ目のしずくからは九〇ミリグラムの値です。
CODとは化学的酸素要求量の略で、快適な水質は三ミリグラム以下が望ましいとされています。大島にある海水浴場のCODの値は〇・八ミリグラムから一・九ミリグラムの値が出ています。つまり、大島の海水浴場と比べても五十倍から百倍の値なのです。
水質汚濁防止法では、工場排水などの特定施設からの排出基準は百六〇ミリグラム以下にしなければなりません。このがけ下の海水が一〇〇ミリグラムという値は、原因物質が太平洋の海水によって希釈された値です。
がけ下の海水の値、COD一リットル当たり一〇〇ミリグラムと、がけの上のし尿処理池との因果関係を究明するために調査をする必要があると思いますが、見解を伺います。
答弁3
▼環境局長
し尿処理と水質調査結果との関係についてでありますが、し尿の処理が周辺環境に与える影響を調査する責務は大島町にございます。
そのため、都は大島町を指導し、これに応じて町は、本年七月、し尿投入場所から至近の海域において環境調査を実施しましたが、その結果では、CODは一リットル当たり一・八ミリグラムと環境基準より低い値でありました。したがって、現状では環境保全上の問題はございません。
なお、議員が測定した岩の間の海水は、環境基準を適用する場所には該当せず、環境基準と比較することは適当でありません。
また、ご指摘のし尿投入場所は、水質汚濁防止法の規制対象ではありませんが、同法に該当する施設に適用される排出基準は一六〇ミリグラム以下であり、議員が測定したがけのしずくの値、九〇から一一〇という数値はこの基準を下回っております。
質問4
環境局に大島町の今後の対応を聞くと、平成十九年度、し尿処理、汚泥処理施設を汚泥再生処理センターと計画し、清掃工場を併設して、国の循環型社会形成推進交付金制度を活用し整備しようとしているといいます。町の計画では、環境影響調査から工事の完成までおおむね五年かかるというのです。そして、完成までの間、この北部し尿処理池を使い続ける予定といいます。
きれいな海を守るために、し尿処理施設ができるまで北部し尿処理池を海岸から離れた場所に移し、一日も早く使用をやめるよう大島町に働きかけるべきと考えますが、いかがでしょう。海を愛する石原知事のお考えもあわせてお聞かせください。
答弁4
▼知事
大島のし尿投入場所の移転についてでありますが、都民の貴重な財産である島しょ地域の美しい海を後世に伝えていくことは我々の責務だと思います。
しかしながら、議員からの、海を守るためにし尿投入場所を移転すべきという提案については、島民の安全な飲料水を供給している、これは地下水をとっているわけでありまして、その水源に影響を与えるおそれがあって、望ましいとは思えません。
都は、現在、町が計画しているし尿処理施設の整備が早急に実現されるよう、最大限の支援をしてまいります。
▼環境局長
し尿投入場所の移転についてでありますが、地下水や湧水を水源としている大島では、飲料水への影響などを考慮すると、山間部などの別な場所へ移すことは適当でないと大島町は判断しております。
先ほど、知事の答弁にもございましたが、都といたしましても、この町の判断は妥当だと考えております。
なお、大島町では、処理施設の整備計画を今年度中に策定する予定であり、都は、今後とも処理施設ができるだけ早期に整備されるよう、技術的、財政的支援に努めてまいります。
質問5
次は、大島の海水浴場の水質検査です。
環境省は六月、全国の海水浴場の水質検査を各都道府県に依頼をし、ホームページで公表をしています。東京都では、福祉保健局健康安全室が行い、伊豆大島から小笠原母島までの八つの島の四十二カ所の海水浴場を検査し、水質はすべてマルと判定をしました。
大島はというと、調査をした海水浴場は七カ所、一つの海水浴場で三カ所からの海水をとって分析しましたが、ふん便性大腸菌は一つも検出されていない。しかし、新島、八丈島、小笠原などでは一個から十個まで検出をされています。ふん便性の大腸菌群ですが、一〇〇ミリリットルに百個以下ならば海水浴場として問題はありません。しかし、大島の海水浴場で一個も検出されていないのはおかしいと思いました。
そこで、福祉保健局に海水のとり方を聞くと、ほかの島では職員が海に入って海水をとったが、大島は広いので効率性を考え、船を使いバケツでくみ上げ、三時間で作業を終了した。船は遊漁船、七・三トン、キールの下から喫水線まで一・三メートルというのです。
環境省からの通知には、調査地点は水深一メートルから一・五メートル、そして、海面から〇・五メートルの海水をとることと書かれています。同じ伊豆諸島で漁船を所有している漁師さんに聞くと、波打ち際では隠れた岩もあり、船を水深四メートルより浅いところには近づけないといいます。つまり、水深一・五メートルよりも相当深い地点の海水を分析結果として環境省に報告しているのです。船を利用した理由を答えてください。
答弁5
▼福祉保健局長
船による水質調査についてでございますが、都では、環境省が例示をしている採水方法や調査地点を参考として、個々の海水浴場の状況等を踏まえ、調査を実施をしております。
大島につきましては、神津島、新島、式根島で採水した海水とあわせて一括して検査をするため、船を利用して効率的に採水を行っております。
質問6
海水をとった場所を聞いて、さらに驚きました。こちらの写真は行革一一〇番がヘリコプターから撮影をした弘法浜海水浴場の写真です。海水浴場の地図を示し、海水をとった地点を示してほしいと福祉保健局に頼みますと、すると、弘法浜海水浴場はプールの前の岩場付近の海水浴客が多いので、岩場付近の海水をとったといい、地図に印をつけてくれました。写真には赤いマークで書いてあります。
しかし、この写真にも岩場付近には海水浴客はいません。地元に聞いても、岩場では泳がないといいます。なぜ岩場の海水をとったのでしょう。考えられるのは、こちらの砂浜の端にある小川です。
これが小川の写真です。ビーチボールが転がっています。そして、小川の水は海水浴場の砂浜にしみ込んで消えているのがわかります。この川の水を分析をすると、CODは一リットル当たり七六ミリグラム。生活雑排水なのです。生活雑排水が流れ込む砂浜を避け、岩場の海水をとったのではないでしょうか。これでも海水浴場の水質検査ですか。見解を伺います。
答弁6
▼福祉保健局長
弘法浜の採水地点についてでございますが、弘法浜では、海水浴場として利用されている岩場も含めた水域内で、船による採水が可能な地点を選定し、水質調査を実施をしております。
質問7
さらに驚いたのは日の出浜の海水浴場です。消波ブロックで囲まれた家族向けの浅いプールのような海水浴場。ここでは、消波ブロックの外側、つまり海水浴場の外側の海水までとっているんです。これが福祉保健局の仕事ですか。今後の対応も含め、お答えください。
これが現状です。知事の感想もあわせて聞かせてください。
答弁7
▼福祉保健局長
日の出浜の採水地点についてでございますが、日の出浜は規模が小さいため、環境省の例示によれば、採水地点は一地点となりますが、波消しブロックが設置されていることから、ブロックの内外三地点について調査を行っております。
水質調査は、都民の衛生的かつ安全な海水浴場の利用に資するために行っているものであり、今後とも、周辺環境の変化を踏まえ、採水地点を適宜見直すなど、適切に調査を実施してまいります。
質問8
おまけがあります。
この北部し尿処理池のがけの地層から、縄文時代の住居跡の遺跡が出土し、東京都教育委員会が下高洞遺跡と指定しています。遺跡に指定をされると、新たに土木工事のために穴を掘るときには、事前に通知をしなければならないと明確に規定をされています。しかし、遺跡に指定をされてから、通知もなく、し尿処理池が掘られていたのです。行革一一〇番の調査で判明をしました。大島町の行為が違法行為に当たるのか。また、大島町への今後の対応について伺います。
答弁8
▼教育長
下高洞遺跡にかかわります本件につきましては、現在、大島町教育委員会に調査を依頼しておりますが、ご指摘のような状況が事実であった場合、都教育委員会は、文化財保護法第九十四条第一項に定める周知の埋蔵文化財包蔵地、いわゆる遺跡内における土木工事等のための発掘に関する事前の通知を受けていないことになります。その場合には、かかる事態が今後繰り返されることのないよう、大島町教育委員会に対して適切に指導を行ってまいります。
質問9
最後に、し尿処理は大島町の責任です。しかし、東京都には専門の部局があり、指導、助言をしているはずです。そして、さまざまな補助金制度があるにもかかわらず、このありさまです。この結果から、東京都にも責任があると思うのです。
そして、環境問題を解決するためには現場を重視し、従来の行政の枠を踏み越えて積極的に取り組むことが必要であると考えますが、知事の見解を聞かせてください。
以上です。
答弁9
▼環境局長
従来の行政の枠を超えた取り組みについてでありますが、一般廃棄物の処理のように、住民に身近な環境行政につきましては区市町村が責任を担っております。
一方、都は、広域自治体として、みずから産業廃棄物対策や大気汚染防止などの広域的な課題に取り組むとともに、区市町村を支援していく責任がございます。
今後とも、都は区市町村と緊密に連携し、環境の確保に向けた取り組みを積極的に推進してまいります。
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