代替教員の年齢制限を緩和せよ
土砂災害警戒区域指定を進めよ |
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 大松 成(公明党) |
■年金問題 |
質問1
まず、知事の所見を伺います。
フランスの文化大臣であったアンドレ・マルロー氏は、文明の中心は、かつてエーゲ海から地中海に移った、さらに地中海から大西洋に移ってきた、次はきっと大西洋から太平洋に移っていくだろうと語っています。
環太平洋地域は、世界の人口の約六〇%が集中する地域であり、自然、文化、民族において豊かな多様性に富み、新しい文明の揺籃ともいわれています。こうした未来を展望したときに、環太平洋、特にアジアの中核大都市として、国を越えて世界じゅうの人々が往来する東京の果たす役割が大きいことはいうまでもありません。
そこでまず、石原知事のアジアに対する認識と東京の果たす役割について所見を伺います。
答弁1
▼知事
アジアに対する認識と東京が果たすべき役割についてでありますが、アジアは世界人口の約六割を占めて、経済規模においても米国やEU連合にほぼ匹敵するなど、世界の一つの大きな極を形成しつつあります。発展途上圏においては最もポテンシャルの高い地域だと認識しております。
今後、アジアが一層発展し、国際社会の中で重要な役割を担うためには、アジアの頭脳部、心臓部である大都市が、その持てる高度の情報を交流させて、産業の振興や都市問題の解決を図っていくことが必要であると思っております。
これまでも、東京が主唱してでき上がりましたアジア大都市ネットワークにおいて、産業・文化振興、人材の育成、あるいは災害対策など、幅の広い分野でアジアの都市が協力して実績を重ね、成果を上げてまいりました。
中でも、中小型の旅客機の開発促進は、アジアの持てる力の協力の象徴でありまして、経済発展に及ぼす効果ははかり知れないと思います。我が国においても、国産旅客機開発のプロジェクトがようやく事業化を目前としておりまして、これなども媒体にして、日本とアジアが協力、共同開発を目指す、アジア旅客機の実現に向けた大きな一歩となることが期待されます。
かつて日本がつくりました国産機でありますYS11が結局挫折しましたのは、アメリカが日本の航空産業の台頭を嫌いまして、アジアにおける販路を、主にロッキードの要するに幹部が出向いてつぶして、同時に、同じ試みを持っておりましたインドネシアの航空産業もつぶされたわけでありますけれども、そういった苦い歴史というものを振り返ってみますと、やはりアジアが技術協力して一つのプロジェクトを達成することが販路の確保にもなるわけでありまして、私は、これからもこういうケースは多々出てくると思います。
今後も、アジア大都市ネットワークの活動などを通じ、東京がアジアの発展の中で重要な役割を果たしていきたいと思っております。
質問2
アジア・環太平洋地域でともに軒を並べ、日本に最も近い国が韓国です。先月、私も日韓友好議員連盟でソウル特別市議会を訪問しました。今回の訪問で、日本にとって韓国は、長い歴史の中で多大な文化的恩恵を受けた文化大恩の国であると、改めて実感してまいりました。韓国には、行く言葉が美しくして、来る言葉が美しいという格言があります。友情が響き合うような、日韓友好のさらなる拡大を望むものであります。
この日韓のかけ橋として、自国のアイデンティティーを堅持しながら、三代、四代にわたって日本で生き抜かれ、国境を越えた世界市民の模範として努力されているのが、在日韓国人の人たちです。私は、こうした在日外国人の人たちとより成熟した共生社会を目指していくべきと考えます。
そこで、課題の一つが在日外国人の無年金問題です。一九八二年と八六年の年金改正で国籍条項も撤廃され、在日外国人の年金加入は進みましたが、八十六年当時、六十歳以上の高齢者、また八二年当時、二十歳以上で障害を持っておられた方々が、改正の際の経過措置が不十分だったため、制度のはざまで、今なお無年金のままになっています。一昨年、無年金の学生や主婦らが救済されたときも、在日外国人は対象になりませんでした。
そもそも年金は国の問題です。都議会は、昨年三月、国に救済策を求める意見書を議決しましたが、国の動きは緩慢です。
そこでまず、無年金問題の早期解決を目指し、都としても国に救済策を求めていくべきです。所見を伺います。
救済されるべき人たちの多くは、既に八十歳を超え、時間的に余裕はありません。神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫など主要都市部では、多くの自治体が国にかわって救済措置を行い、都内では四区五市が実施しています。都としても、救済策を講じるべきです。速やかな対応を求めます。
答弁2
▼福祉保健局長
在日外国人の年金についてでございます。
公的年金制度は国全体の制度でありまして、お話のとおり、救済措置を受けられない方への対応については、一義的に国が対応すべきものでございます。
したがって、このような年金制度の発展過程で生じた無年金者への対応は、今後の発生防止も含め、年金制度を初めとする社会保障制度全体の中で国が責任を持って対処すべきと考えております。
これまでも都は、大都市民生主管局長会議などを通じて、国に対し、在日外国人の制度的無年金障害者や老齢無年金者について早急な救済措置を講じるよう要望しており、今後とも機会をとらえて国へ働きかけてまいります。
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■教育問題 |
質問1
次に、教育問題について伺います。
都教委では、ベテラン教員の大量退職、新人教員の大量採用時代を迎え、学校全体の教育力をどう向上させるのかが目下の最重要課題です。都教委は、教職経験者の再任用の拡大、他県の中堅教員の一時採用など懸命な努力を行っていますが、さらなる施策の展開が必要です。
そこで、これまでの取り組みに加え、産休、育休代替教員の年齢制限を緩和し、教育力向上に資するよう提案します。
現在、産休、育休代替教員は、年齢制限が六十歳のため、臨時的任用教員の名簿に登載されず、再任用もありません。このため、もう少し働いてほしいと期待されながら、その道が閉ざされることが多々あります。
今後、新人教員がふえれば、産休、育休をとる教員がふえることも予想され、代替教員はますます重要になります。産休、育休代替教員が六十歳を超えても活躍できるよう、名簿登載の年齢制限を引き上げるべきです。所見を伺います。
答弁1
▼教育長
産休、育休代替教員についてであります。
団塊の世代の大量退職時期を迎えまして、若手教員の採用が増加していることに伴いまして、産休、育休代替教員の任用も増加傾向にありまして、今後ともその確保は重要な課題と認識しております。
これまでも、産休、育休代替教員採用候補者選考のほか、各区市町村教育委員会等の申請に基づきまして、適任と認められる者につきましては、名簿登載者でなくても任用を認めます特別認定制度の活用などに努めてきたところでございます。
お話の年齢制限の緩和につきましては、候補者の確保及びベテラン教員の経験の活用という点で有効な策と考えられ、勤務条件等に関して正規教員の再任用制度との均衡にも留意しながら、今後検討をしてまいります。
質問2
次に、教職大学院について伺います。
現場での実践と理論の往復作業の中で、より力のある教員の養成を目指す教職大学院が来年度からスタートします。
都教委は、都内五大学院と連携し、教育実習生を受け入れる連携協力校を提供し、都採用を希望する学生を特例選考するという、全国に先駆けた取り組みを進めています。
大学は、本来、普遍的な立場に立ち、広く社会に有為な人材を送り出すことが使命です。一方、都教委は、都民の期待にこたえる教員の採用、研修が責務であり、この両者の調和が教職大学院の成否を決するかぎとなります。
教職大学院には、他府県での教職を希望する学生や、志望先を決めていない学生も学びます。そうした学生も、都内の連携協力校で教育実習が受けられるようにすべきであります。所見を求めます。
答弁2
▼教育長
教職大学院の連携協力校への受け入れについてでございます。
都教育委員会は、すぐれた新人教員の養成、確保とスクールリーダーとして活躍できる現職教員を育成するため、五つの大学と連携いたしまして、教職大学院を活用する準備を進めております。教職大学院におきます新人教員の育成では、より実践的指導力を育成するために、学校における実習が極めて重視されております。都教育委員会では、連携する教職大学院で学ぶすべての学生が実習を行えるよう、連携協力校を確保し、提供してまいります。
質問3
また、最終的に都採用を希望すれば、都の特例選考も受けられるようにするべきです。強く要望しておきます。都教委がこうした開放性を持てば、他府県にも同様の対応を促し、全国の教職大学院から都採用希望者をより多く糾合できるようになります。
また、何よりも大切なことは、各大学院にその教育力を存分に発揮していただくことであります。教員の養成は、大学が、それぞれの歴史や伝統に裏づけられた教育方針に基づいて行うもので、教職大学院においても、学生の評価基準の作成、評価、単位認定は各大学院の権限であり、各大学院が実施する教育実習や共通カリキュラムについても同様です。都内の教職大学院が、学問の自由のもと、新しい時代を開く優秀な人材を養成できる連携協力のモデルを全国に示していけるよう、都教委の取り組みを強く求めます。
また、教職大学院では、教育実習に重点が置かれます。この取り組みが、今後、学部における教育実習にも生かされるべきであります。所見を伺います。
答弁3
▼教育長
教職大学院の教育実習の成果の活用についてでありますが、学部の教育実習につきましては、大学の関与が弱く、指導の大部分を実習校にゆだねている場合が多いなどの課題が従前から指摘されております。教職大学院では、小中学校での教職経験を有する大学教員等が実習校を訪問し、当該の学校と連携して組織的、計画的に指導する仕組みづくりがつくられることとなっております。学部段階の学習の課題解決に資することも期待されております。
都教育委員会では、教員養成等に関する大学と都教育委員会との連携推進協議会を設置しておりまして、教職大学院での成果を他の大学にも伝えるなどして、学部段階の教育実習の改善充実が図れるよう努めてまいります。
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■土砂災害対策 |
質問1
次に、災害対策について伺います。
死者、行方不明者が最も多く発生する自然災害が土砂災害であり、国の統計では、災害全体の四五%を占めます。しかも、近年の気象変化による集中豪雨の増加や、山間地にまで及ぶ宅地開発によって、土砂災害の危険箇所がふえています。
先月、北区の京浜東北線沿線、八王子市、日の出町などで、危険が指摘される箇所を視察しました。高いがけの上や下に家屋が建ち並ぶ実態を見て、早急な対策の必要性を実感しました。しかし、危険な地域は都内に約八千カ所あるといわれ、土木工事によるハード対策には膨大な時間と費用がかかります。このため、まず、危険な地域を住民に明らかにし、警戒避難体制の整備や、新規の住宅建設を抑制するソフト対策を並行して進めなければなりません。
その対策の第一歩になるのが、土砂災害防止法による警戒区域の指定です。警戒区域の指定について、現在の状況と今後の取り組みを伺います。
答弁1
▼建設局長
土砂災害警戒区域の指定についてでありますが、都内には土砂災害のおそれのある箇所が、お話のとおり、約八千カ所あると推定しております。こうした箇所については、人的被害を防止するために、避難体制の確立に向けた警戒区域の指定が必要であります。
都はこれまで、順次警戒区域の指定を進めており、平成十八年度末までに、青梅市や奥多摩町において約三百六十カ所を指定してまいりました。十九年度は、区域をあきる野市まで拡大し、地元自治体とともに住民説明会を開催し、地元の理解と協力を得て、約三百カ所を指定してまいります。
今後、区域指定のスピードアップを図り、残る約七千三百カ所について、二十六年度末までの指定完了を目指し、全力を挙げて取り組んでまいります。
質問2
ソフト対策では、避難勧告や避難指示を出す区市町村が、的確かつ迅速な判断ができなければなりません。都は、区市町村に十分な情報を速やかに提供し、確実に情報が住民に伝わる体制を整えるべきです。取り組み状況を伺います。
答弁2
▼建設局長
土砂災害に関する情報の提供などについてでありますが、都は、台風や集中豪雨の際に、気象庁と連携し、累積降雨量と二時間先の予測雨量により、都内全域で五キロメートル四方のブロックごとに、土砂災害発生の危険性を予測しております。これらの予測結果については、今後、土砂災害警戒情報として、危険性の高まった区市町村に情報提供するとともに、報道機関に発表し、広く周知してまいります。区市町村は、この土砂災害警戒情報等をもとに、土砂災害警戒区域などに居住する住民の方々に、避難勧告や避難指示を発令することとなります。
都では、こうした情報提供のシステムについて、平成十八年度から関係区市町村とともに訓練を繰り返し実施しており、その実績を踏まえて、十九年度末から本格的に運用してまいります。
質問3
また、住民が避難する安全な避難所の確保が不可欠です。避難所が危険箇所にあれば移転させる。移転が困難であれば、周辺の土砂災害防止工事を行わなければなりません。都の方針を伺います。
今回の中越沖地震では、がけ崩れが多数発生しました。私も柏崎市内を訪問し、がけ上の家のぎりぎりまで地盤が崩れた現場を見て、土砂災害の恐ろしさを実感しました。ところが、現在の土砂災害防止対策は集中豪雨対策であり、必ずしも地震対策としての取り組みではありません。地震で亀裂ができたところに集中豪雨が重なればどうなるのか。豪雨で地下水位が上がったところに地震が来ればどうなるのか。
今後、地震による被害を想定した警報発令、土砂災害防止工事のあり方を検討していくべきと考えます。このことを強く要望をしておきます。
答弁3
▼建設局長
避難所周辺のがけ崩れ防止対策についてでありますが、土砂災害から都民の生命を守るためには、地元自治体と連携を図りながら、住民が安心して避難できる避難所の安全対策を推進していく必要があります。このうち急傾斜地などの土砂災害危険箇所にありながら、移転が困難な避難所については、地元自治体との調整を図り、現地の地形や地質などの調査を行い、緊急度の高い箇所から、順次周辺の防災工事を実施してまいります。
今後とも、警戒区域の指定などの対策を進めるとともに、避難所の安全対策を推進し、都民の安全確保に努めてまいります。
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■消費者問題 |
質問1
最後に、消費者問題について伺います。
現在、深刻さを増しているのが多重債務問題です。二〇〇三年度以降、都内の消費者生活相談件数は年々ふえ、フリーローンやサラ金に関する相談が九割近くを占めています。昨今、ヤミ金撲滅への取り締まり強化など、貸す側に対する対策は進んでいますが、今後求められるのは、相談や救済など、借りる側への対策の充実です。
都議会公明党の主張を受けて、都は、多重債務者へのセーフティー資金貸し付けなどの救済策を打ち出しましたが、残念ながら、まだ実施されていません。多重債務を抱える人たちから、いつ始まるのかという声が相次いでおります。都は一刻も早く実施すべきです。所見を伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
多重債務対策のうち、多重債務者に対する資金の貸付事業についてお答えを申し上げます。
この事業は、債務状況の把握、債務整理方法の提案などとともに、必要に応じて債務整理資金等の貸し付けを行うことによりまして、多重債務者の生活再生を目指すものでございます。現在、実施主体となる東京都社会福祉協議会を初めとする関係機関と連携しながら、円滑な実施に向けた準備を進めております。
事業の実施に当たりましては、多重債務相談や貸し付けに関してノウハウのある民間事業者を活用することとしておりまして、十月初旬に事業者の公募を行い、十一月に決定した上で、年内には事業を開始する予定でございます。
質問2
多重債務の問題の場合、多くの方が一人で悩まれ、どこに相談していいかわからないまま事態を悪化させ、自殺という最悪の事態を招くこともあります さまざまな行政窓口で救済すべき住民の把握に努め、消費生活総合センターの相談窓口に多重債務問題の専用窓口をつくるなど、サービスを拡充すべきです。所見を伺います。
答弁2
▼生活文化スポーツ局長
多重債務に関する相談窓口についてでございますが、相談に当たりましては、多重債務に陥った事情を丁寧に聞き取り、考えられる解決方法を検討、助言し、必要に応じて弁護士会や司法書士会など専門機関に確実に紹介、誘導していくことが大切でございます。
そのためには、都の消費生活総合センターの相談体制を強化するとともに、住民にとって最も身近な区市町村における相談が充実されるよう、区市町村に対する情報提供や相談員の研修を積極的に行っていくことも重要でございます。
今後、行政と民間団体が連携して多重債務問題に取り組むため、本年八月に設置した東京都多重債務問題対策協議会において議論を重ね、適切な相談体制づくりを進めてまいります。
質問3
また、相談を受けたい消費者からは、同センターの相談業務を平日十六時以降も実施し、また、土日、休日も行ってほしいという強い要望があります。実施に向けて取り組むよう要望いたします。
このほど、消費者被害の拡大を食いとめるため、政府認定の消費者団体が、被害者にかわって事業者の不当行為に対する差しとめ請求など法的措置をとれる消費者団体訴訟制度が始まりました。こうした団体の活動は、行政を補完するもので、大変重要です。都は、団体への積極的な支援を行うべきであります。所見を伺い、質問を終わります。
答弁3
▼生活文化スポーツ局長
消費者契約法に基づき内閣総理大臣から認定された適格消費者団体への支援についてでありますが、都は、本年八月に、消費者団体訴訟制度連絡会を設置し、消費者団体訴訟制度が効果的に機能するための環境整備に向けて、適格消費者団体や区市町村の代表等と意見交換や協議を行っております。
さらに、適格消費者団体が差しとめ請求権を行使するに当たって必要となる消費生活相談情報については、都のみならず区市町村の相談情報も含めて提供できるよう、現在、規程の整備や、適格消費者団体との覚書の締結を進めているところでございます。
今後とも、適格消費者団体が期待される役割を十分に果たすことができるよう、積極的に支援してまいります。
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