出産にかかわる条件整備対策を
ものづくり産業と都市の共生 |
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 小竹ひろ子(日本共産党) |
■福祉・医療 |
質問1
初めに、出産にかかわる条件整備について伺います。
昨年末、荒川区の女性が、妊娠中期で破水し、救急搬送で入院、数日後死産になる悲しい出来事が起きました。かかりつけ医が、総合周産期医療センターを初め都内のNICUがある病院に軒並み連絡をしましたが、受け入れてもらえず、川崎市内の大学病院に決まるまで三、四時間かかって、ようやく救急車で搬送できるという状況でした。
都内の産婦人科や産科の診療所は、この六年間に七十四カ所も減っています。中核病院の産科の休診も相次いでいます。月に何度か、満床などの理由で妊婦の受け入れ病院がないことがあるとの声が医療の現場から上がっています。
東京においても、こういう深刻な実態があることをどう考えますか。都として緊急の対策が必要だと思いますが、答弁を求めます。
答弁1
▼福祉保健局長
周産期の救急医療体制についてでございますけれども、都は、出産前後の母体、胎児や新生児の救急患者の迅速な受け入れ、搬送を行うために、高度専門的な医療に対応できる周産期母子医療センター二十二施設を既に整備しまして、救急の場合には、総合周産期母子医療センターが患者の受け入れ先を選定する仕組みを構築してございます。
一方で、地域の産科医の減少が進み、周産期母子医療センターに一般医療機関で対応可能な分娩が集中し、負担が大きくなっていると考えております。
こうした状況を受けて、都では今年度、分娩リスクに応じた医療機関の役割分担や連携を進め、安全な周産期医療を提供できるよう検討を進めております。
検討結果については、平成十九年度末に向けて改定作業を進めている東京都保健医療計画に反映をさせていく予定でございます。
ご発言の中で具体的な事例に触れられましたが、都といたしましても調査をいたしました。それによりますと、まず、お話の事例は、既に入院中の妊婦の方を他の病院に転院させる事例であったこと、そして、入院をしていた診療所のかかりつけ医同乗のもとで、東京消防庁の救急隊が医療機関に搬送し、転院するなど、一貫して医療ケアを受けていたことなどがわかりつつあります。また、ごく未熟な胎児であったため、医学的にも困難な事例であったこと、転院から数日たった後、死産に至ったことについて、間接的にではありますが、聞いておるところでございます。
いずれにいたしましても、都としてはさらに、本事例における病院選定などの事実を、プライバシーに十分に配慮しながら精査し、検証をしてまいります。
質問2
背景にあるのは、深刻な医師不足です。文京区内だけで、産婦人科の医師はこの四年間に二十六人、約二割も減っています。都は、今年度から新たな医師確保対策をスタートさせますが、事態の深刻さから見れば、さらに総合的な取り組みが必要です。
医学部卒業後、都内で働くことを条件にした奨学金制度、離職中の医師の再就職を促進するドクターバンク、女性医師バンク、女性医師の仕事と家庭の両立支援などの実施を提案しますが、どうですか。
答弁2
▼福祉保健局長
産科医師確保についてでありますが、産科の病院勤務医師の不足に対して、実効性のある取り組みが急務であると考えております。このため、産科医師の代表を含め、都内の医療関係者から成る東京都地域医療対策協議会を設置し、既に都における医師確保対策について協議を行っております。本協議会での検討も踏まえ、女性医師のみならず、病院勤務医師の負担軽減等、医師確保に向けたさまざまな取り組みを進めてまいります。
質問3
病院と診療所の連携促進や助産師の活用も大事です。妊婦健診は診療所、分娩は病院が行うオープンシステムへの支援の拡充、また、病院内で正常分娩は助産師が担当する助産師外来や、院内助産を実施する病院への支援も急がれます。見解を伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
オープンシステムへの支援についてでありますが、地域の診療所等と分娩を取り扱う病院との連携を強化するための周産期医療施設のオープン病院化については、平成十七年度からモデル事業として取り組んでおります。今後、この成果を踏まえ、よりよい連携システムを検討してまいります。
次に、助産師外来や院内助産についてでございますが、産科医療は、産科医師、助産師、看護師等の連携が重要でございます。院内助産や助産師外来は、産科医師が減少する中で、医師の業務の軽減や専門職種の活用によるきめ細かいサービスの提供という面で有効であり、助産師の果たす役割は大きいと考えております。
このため、都としては、これまでも助産師の養成に関する支援を行ってきているところでございます。
質問4
首都圏の八都県市が連携した広域的な搬送情報システムの確立を提案しますが、どうですか。
答弁4
▼福祉保健局長
広域的な搬送情報システムについてでございますが、医師不足を背景にして、地域を問わず産科医療が厳しい現状にある中、東京都周産期母子医療センターの状況を見ますと、約四分の一が都外からの受け入れ患者となっております。
こうした状況を踏まえますと、広域的な搬送情報システムの構築につきましては、受け皿となる近県の医療機関の整備の進展、治療に携わる医師の確保など、多くの課題があると受けとめております。
質問5
都立病院の役割はとりわけ重要ですが、石原知事は、母子保健院を廃止し、周産期医療の中核施設である清瀬、八王子の小児病院廃止計画などを進めてきました。そのもとで、豊島病院は産科も未熟児医療のNICUも休診、墨東病院は産科の新規受け付けを停止、公社移管された荏原病院も産科休診という事態です。
豊島病院は公社化が検討されていますが、産科やNICUの再開を初め、都立病院としての医療体制を立て直すことこそ急務です。見解を伺います。
答弁5
▼病院経営本部長
豊島病院の公社化などについてのお尋ねでございますが、都立豊島病院は、同一医療圏の近傍地に二つの大学病院が存在する中で、地元区の患者比率が半数を超え、また、他の医療機関からの紹介率も六割に達するなど、地域に密着した医療を展開している実情にございます。
そこで、都立病院改革の一環といたしまして、地域病院の運営を担っております財団法人東京都保健医療公社への移管をしようとしているものでございます。
今後、同病院が担うべき医療機能等につきましては、公社化検討委員会等において引き続き検討を進めるなど、公社化に向け着実に取り組んでまいります。また、必要な医療体制につきましては、当然その確保に努めてまいります。
質問6
都立病院の医師は激務にもかかわらず、給与は全国の自治体病院で最低レベルです。深刻な医師不足の打開に向け、給与などの待遇改善や、女性医師が働き続けやすい条件整備などに取り組むべきと考えますが、どうですか。
政府の診療報酬削減政策のもとで、都の財政支援を強化することなしに、都立病院がその役割を果たすことはできません。独立行政法人化を含め、都立病院の役割を縮小、後退させることはやめて、拡充することを強く求めておくものです。
答弁6
▼病院経営本部長
都立病院における医師の確保についてでございますが、医師の採用環境を踏まえながら、必要とされる勤務条件等の改善には取り組んでいく考えであります。
さらに、平成二十年度に東京医師アカデミーを開講し、医師の計画的な育成、確保を図っていくこととしております。
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■中小企業対策 |
質問1
次に、製造業支援について伺います。
世界に誇る東京の製造業は、国の大企業優先の産業構造改革に加え、石原知事が進める都市再生路線が拍車をかける形で衰退を重ね、この七年間だけでも、工場数が三分の二に後退するという事態を迎えています。
にもかかわらず、石原都政は、中小企業対策予算を八年間で三割も削減し、商工指導所や経済事務所の廃止、存続が望まれていた工業集積地域活性化事業の打ち切りや職業訓練の縮小を進めました。しかも、知事選に向けて策定した「十年後の東京」では、多摩シリコンバレーや特定の都市型産業のみが強調され、東京の特色である工業集積地域の支援や業種別対策、地場伝統産業対策などは見当たりません。
私ども日本共産党は、改めて城南や城東、多摩地域の企業や自治体、研究者を訪ね、意見や要望を聞いてきましたが、困難なもとで頑張っている企業や、厳しい財政のもとで活性化に向けた支援に奮闘している自治体の共通した取り組みは、ものづくりを地域振興の柱に位置づけていることです。
知事、ものづくり産業と都市の共生を、東京における都市づくりの柱の一つに位置づけるべきと考えるものですが、見解を伺います。
答弁1
▼知事
都市づくりにおけるものづくり産業の位置づけについてでありますが、高度な技術を持つ企業の集積は東京の強みでありまして、ものづくり産業の基盤を維持することは極めて重要であります。
このため、都はこれまでも、国に働きかけ、工場立地にかかわる規制を撤廃させるとともに、集積の形成に対する都独自の助成を行うなど、ものづくり基盤の強化を図ってまいりました。
近未来の都市像を示した「十年後の東京」においても、東京のポテンシャルを生かした都市型産業の振興を重要な柱として位置づけております。
質問2
また、共通して出された意見は、都が「十年後の東京」や産業振興基本戦略の策定などに当たって、業者や自治体の意見、要望を聞いてほしかったということです。
そこで伺いますが、現場で頑張っている人たちの要望や意見に耳を傾けてこそ、生きた政策が実現できるのではありませんか。都内製造業の活性化のために、ボトムアップ方式で振興計画を策定することが求められていると思いますが、違いますか。答弁を求めます。
答弁2
▼産業労働局長
現場の声を反映させた計画策定についてでありますが、「十年後の東京」を踏まえ、本年三月に発表いたしました産業振興基本戦略は、日常的に把握しております企業現場の実態を踏まえるとともに、専門家による懇談会や、中小企業、関係団体へのヒアリング等によりまして、幅広く意見を伺って策定したものであります。
今後、これを具体化する産業振興指針の策定におきましても、これまで同様、関係者等の意見を把握してまいります。
質問3
東京都が三年前までやっていた工業集積地域活性化事業の復活は強い要望です。この事業は、区市町村が責任を負い、自由な発想で支援が行えることから歓迎され、都の事業終了後も、独自に予算を組んで事業を継続しています。大田や品川には都市型産業の基盤となる金型などの技術が集積し、文京、新宿の印刷、製本など、その活性化が緊急課題となっているからです。大田区産業振興協会の事務局長さんは、ものづくりのすそ野は、広ければ広いほど山が高くなるが、今、そのすそ野が崩れているといい、すそ野を支えるために事業の復活を強く要望されています。
ものづくりの国内回帰が見られ、世界を市場としたものづくりの展望が見えてきたもとで、既存の集積地域にとどまらず、今後、ものづくりの集積が期待される地域や、地域横断的な産業クラスターなども視野に入れた、新たな工業集積支援事業の立ち上げが必要であると考えるものですが、見解を伺います。
答弁3
▼産業労働局長
工業集積についてでありますが、都内には先端的技術やオンリーワン技術を有する中小企業が数多く存在し、多種多様な産業集積を形成しており、地域の産業活力の源泉となっております。
このため、都では、ものづくり新集積形成事業により、地域や業種等の枠を超えた新たなネットワークを構築し、新事業に挑戦する中小企業グループを支援しております。加えて、現在、今年度の重点事業として、ものづくり産業の集積を図る区市町村に対する支援策の検討を進めているところであります。
質問4
また、知事は、圏央道とリンクした多摩のシリコンバレーを目玉にしていますが、シリコンバレーのような産業クラスターの成功の秘訣について、国の報告書は、核地域は三十分以内のアクセス、思い立って昼食をともにできる距離、いつでも会える距離を挙げています。三環状道路で広域で結ぶ発想は、かつての国の国土総合計画を思い起こさせるものです。多摩地域の工業の活性化にとって、むしろTAMA産業活性化協会など、地域での産業クラスターに向けた取り組みを支援することが大切なのではありませんか。
多摩地域では、地元自治体のほか、当該地域を中心として活動するTAMA産業活性化協会などの商工関係団体が産業振興に向けた取り組みを進めています。最近では、JR青梅線、五日市線、八高線沿線に位置する自治体などが中心となり、産業支援のための協議会を立ち上げる動きも見られます。
こうした動きを踏まえつつ、多摩地域の産業振興は、関係自治体やブロックごとの協議会、TAMA産業活性化協会などの商工関係団体、企業、大学、研究機関などを結集して計画を策定し、実行に移していくことが必要ではありませんか。所見を伺います。
答弁4
▼産業労働局長
多摩地域の産業振興についてでありますが、多摩地域の振興については、現在、多摩中小企業振興センターが中心となりまして、技術支援、経営支援、産学公連携の推進など、地域の中小企業のニーズに応じたさまざまな支援策を講じております。
今後とも、TAMA産業活性化協会などの商工関係団体や地元関係自治体とも連携しながら、多摩地域の産業振興を図ってまいります。
質問5
都内企業が直面している問題の一つが、事業の継承です。小規模工場の場合、後継者不在などによって工場が閉鎖に追い込まれ、貴重な技術が失われ、製品製造のネットワークが崩れてしまいます。このため、港区では、事業継承のため、低利の融資を来月からスタートさせることになりました。
事業継承を進めるため、相続税などの軽減を国に働きかけ実現すること、都として、相談窓口の開設や、長期、超低利の全額保証の融資を創設することを提案するものです。
また、閉鎖となる工場と、新たに創業を考えている人や事業の拡張を検討している企業と結びつけるマーケットを、都として研究することが必要と考えますが、どうですか。
また、存続、継承すべき技能を指定し、都として特別の手だてを講じることや、ものづくりに関心や意欲を持つ若者を募り、育成し、人材不足に悩む企業に結びつけることなど、積極的な取り組みを求めるものです。
それぞれ見解を伺い、質問を終わります。
答弁5
▼産業労働局長
中小企業の事業承継についてでありますが、都は、平成十七年度、中小企業振興公社に、事業承継や再生支援等についての相談窓口を設置いたしまして、これまでもさまざまな相談に応じております。
また、制度融資では、今年度から事業承継を産業力強化融資の対象といたしまして、融資期間が最長十年で、かつ低利な金利での利用を可能といたしました。
さらに、本年五月に、外部有識者を含めた研究会を設置いたしまして、事業承継について既に検討を開始しております。
ものづくり人材の確保、育成についてでありますが、都はこれまでも、産業を支える基盤技能について多様な職業訓練を実施し、ものづくり企業への就職を促進してまいりました。
また、高度技能者の育成を目的とした名工塾なども実施しており、技能承継の支援を引き続き行ってまいります。
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