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第3回定例会 一般質問

多摩産材の利用拡大の取組を
ものづくり人材の育成を

木を使った東京大改造
ものづくり人材の育成
岡崎幸夫
岡崎幸夫(民主党)
■木を使った東京大改造

質問1
 私は、都議会民主党、すなわち、田中良幹事長、山下太郎政調会長、土屋たかゆき総務会長を先頭にして活動している会派の一員として、質問させていただきます。知事を初め、理事者の皆さんの夢のあふれる答弁を期待しております。
 我が国は、古来、木とともに生きてまいりました。古くは「古事記」や「日本書紀」の中にも五十三種類の樹木の記述があって、「日本書紀」の中には、日本は島国だから船がなくては困るだろう、そこで杉とヒノキとマキとクスノキを生んで、ヒノキは宮殿に、杉とクスノキは船に、マキはひつぎに使えという説話が載っているそうであります。また、古来より植林をしていた記述もあるそうです。
 さらには、こうした記述が考古学的な調査と一致しております。例えば、ヒノキは伊勢神宮に典型的ですが、建築用材に最も使われております。古墳時代の遺跡から発掘される船の用材はほとんどクスノキで、登呂の遺跡から発掘された田舟、田げたは、杉材とのことであります。また、近畿地方の前方後円墳から出土する木棺は、ほとんど例外なく日本にしか産していなかったコウヤマキという木でつくられているとともに、韓国の歴代の百済王の古墳のひつぎの材料がコウヤマキで、当然、日本から運ばれていたと考えなければならないというものであります。
 日本には、築千三百年の法隆寺を初め、築千年以上も経過した多くの歴史的木造建築物が残っておりますし、知事の暮らす大田区の池上本門寺の五重の塔は、建築直後の地震で少し壊れた以外はほとんど手を加えず、四世紀たって初めて、このたび大改修工事が行われました。
 世界で最古の木材の取引の記録は、紀元前十一世紀、ソロモンとフェニキアとの間で、エルサレムに建立された寺院や宮殿の用材に関してなされたということです。しかし、その後、ギリシャのパルテノン神殿を初め、世界の多くの歴史的建造物は石でつくられており、木の文化は我が国の最も本質的な文化の特徴であります。
 明治以来百五十年近くたつ今日、特に高度経済成長以降の数十年間で、東京を初め、我が国の町並みは乱雑なコンクリートの建物で埋め尽くされてしまいました。その結果、町の中にいやしの空間は少なくなり、各都市がヒートアイランド現象に見舞われ、局地的豪雨にさいなまれるようになってしまいました。
 一方、我が国の古い町並みの面影を残す木曽の馬籠や妻籠のような町には、観光客も多く出かけているとのことです。
 このように、都内に木造建築をふやすことは、東京の都市環境と自然環境の両面からの効果が期待できます。特に東京には多摩産材という地域材があり、それを活用すべきと考えます。そこで、多摩産材の利用の意義をどのように考えているのか、知事の所見をお伺いします。

答弁1
 ▼知事
 多摩産材の利用の意義についてでありますが、森林は、木材供給のみならず、水源の涵養や大気の浄化など、多面的な機能を持った、かけがえのない国民の財産であります。
 日本は世界有数の森林国でもありまして、我々は、森林の持つ豊かな恩恵に、歴史を通じて浴してまいりました。
 今日、改めて森の恵みを顧みて、かつての豊かな多摩の森林を取り戻し、次の世代に継承していかなくてはならないと思っております。
 食の世界では地産地消といいますが、その土地でつくられた作物には愛着もあり、地域ではぐくまれた産物が体に一番よいということでありまして、これは食のみならず、住にも通じるものであります。
 ちなみに、法隆寺の大工の棟梁、西岡常一氏の言葉に、奈良で育った木は奈良で使ったときが一番丈夫である、木曽のヒノキは奈良には向かないという言葉があるそうでありますが、東京の風土に恵まれた多摩の材木を用いた住まいに暮らすことが、体にも、また環境にも好ましいとは確信しております。
 ですが、材木の流通の視点から眺め直しますと、世界の流通の形が変わりまして、時間的、空間的に世界も狭くなった今日、外材のコストとの比較というものが決定的な問題になりかねません。これはやっぱり踏まえてこの問題を考えませんと、よりよい結果は得られないんじゃないかと思います。



質問2
 私は、平成十七年の第三回定例会において、東京都が率先して多摩産材を利用することを求めました。その後の東京都における多摩産材の利用拡大の取り組みについてお伺いします。

答弁2
 ▼産業労働局長
 都における多摩産材の利用拡大の取り組みについてでございますが、都では、みずから積極的に多摩産材の活用を図るため、平成十八年十二月に、全庁的な取り組みといたしまして、東京都多摩産材利用推進方針を策定いたしました。さらに、多摩産材使用のための特記仕様書や単価表を作成いたしまして、公共建築や土木施設などでの利用拡大を図っております。
 具体的には、公共建築物では、都立学校の教室や都営住宅での内装パネルに活用しております。また、河川の侵食を防止する木工沈床を初め、道路、公園などのさまざまな施設におきまして多摩産材の利用を進めております。



質問3
 次に、木造建築の積極的な採用は莫大な雇用を生み出します。
 今から三百年前、我が国の最大の木造建築物といわれる東大寺が再々建されたときの屋根に使われた一本の大木は、九州の霧島山の赤松です。幹の直径一・五メートル、長さ約二十四メートル、これを六十キロメートル先の海岸まで運ぶのに要した人数は十万人、牛四千頭とされています。さらに、専用の船をつくって大阪湾に運び、水路、陸路を使って奈良に着くまでには、伐採から実に一年もの月日がかかっております。これほどではなくても、奥多摩の木々は伐採まで数十年から数百年、運搬にも林道工事を行うなど、困難な事業を行わなければなりません。こうしたすべての過程において、多摩産材の利用拡大は多くの雇用を生み出し、莫大な失業者を吸収することができます。
 格差社会といわれて数年たちますけれども、私の暮らす大田区でも、平成七年度からの十年間で、生活保護を受ける世帯の数は一・九倍に増加しております。実に六十人に一人が生活保護を受けているということになります。
 このような格差社会の深刻さに対して、主に現金給付という形で行われている社会保障のみではなく、何とかして雇用の拡大による社会保障の底上げこそ大切であると考えます。しかるに、都内で働く林業労働者はわずか二百人くらいであるし、年とともに高齢化しております。しかし、先ほど申し上げたように、森林資源の活用には労働力の確保が必要であります。そこで、林業労働力の確保についてどのように考えているのか、お伺いします。

答弁3
 ▼産業労働局長
 林業労働力の確保についてでございますが、林業労働者が減少、高齢化する中、多摩産材を安定的に供給するとともに、森林整備を適切に行っていくためには、森林作業を担う労働力の確保が必要でございます。また、伐採や植樹、枝打ち、間伐などの森林作業には専門的な技術が必要でありまして、技術の継承も大切であると考えております。
 このため、東京都農林水産振興財団に設置をいたしました林業労働力確保支援センターにおきまして、林業作業に就労しようとする方に対しまして、宿舎借り上げ経費の助成等の支援や、林業技術の早期習得に向けました研修を実施しております。
 今後とも、これらの制度を活用いたしまして、林業労働力の確保、育成に努めてまいります。



質問4
 我が国は、国土の約七割を森林が占めているにもかかわらず、国内の木材消費量の実に八割を外国からの輸入材に頼り、丸太の輸入量は世界第一位を誇っているというより、やりたい放題といいますか、さらに、都内でも約三分の一が森林に囲まれているにもかかわらず、ほとんど多摩産材は利用されておりません。こんなことが許されるのでしょうか。
 知事も国土が水没の危機にある南太平洋のツバル等を視察してこられましたが、地球温暖化への対応は、多摩産材を活用することで貢献できます。多摩の森林が成長していく過程で吸収する二酸化炭素の減少や、伐採した後にその材を利用することで、二酸化炭素を貯留することができるからであります。そして、伐採した後には花粉の少ない樹種を植えて、花粉症にも対応が促進されます。
 フードマイルという考え方も広がりつつあるようですが、木についてもウッドマイルという考え方が必要です。遠方から木材を移動するために、どれほどの二酸化炭素を排出しているかということも考慮しなくてはなりません。そのためにも、公共施設に利用するだけでなくて、多摩産材の民間への普及を促進することにも力を入れなければならないと考えますが、所見をお伺いします。

答弁4
 ▼産業労働局長
 多摩産材の民間への普及促進についてでございますが、民間での利用拡大を図るためには、多摩産材を利用する意義につきまして、都民の理解を深める取り組みを進めることが重要であると考えております。
 そこでまず、多摩産材を他の木材と区別をし、地産地消を進めるため、平成十八年四月に多摩産材認証制度を創設いたしました。また、民間団体が行います、都民を対象とした家づくりセミナーや多摩産材住宅の現地見学会等の開催に対しまして支援を行ってきております。
 今後、ホームページでの多摩産材に関する情報を充実していくとともに、「木と暮しのふれあい展」など、イベントを通じまして、多摩産材の民間への普及促進に努めてまいります。

コメント
 我が国にはもちろん、都内にも数多くの河川が存在しています。ついほんの数十年前までは、例えば日本最後の清流といわれる四万十川のような川が全国各地に存在していましたが、このような川でさえも、圧倒的な漁獲量の減少と水質の悪化が進んでおります。
 この四万十川でも、三十年くらい前まではアユを手づかみする漁さえありましたが、今は幻。この激減の裏には、農薬の影響もありますが、人の手が入らないため、森林がどんどん荒廃し、豊富なプランクトンを含んだ水が山からしみ出すのではなく、大雨が降ると一挙に泥まじりの土砂が河川に流れ込むということも一因であります。宮城県の漁師さんたちが、遠く離れた山に木を植えることによってカキの養殖をよみがえらせたのは、有名な話であります。
 今や、世界の水産魚類もあと四十年から五十年で絶滅するという説まであらわれてきております。
 ですから、東京の山に手を加えて、さきに申し上げたように、都内産材を使いながら川や海を豊かにする努力を続けていけば、東京発のブランド水産資源が多く生まれる可能性があります。隅田川のシジミ、荒川のウナギ、神田川のアユ、多摩川のエビ、新木場のハゼ、浜松町沖のイワシ、羽田のスズキ等々、荒唐無稽な話が夢ではなくなるかもしれないのです。ぜひとも、そういう観点からも、できるところから木を使い、森を豊かにする事業に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 石原知事、木を使った東京大改造に一緒に取り組みましょう。

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■ものづくり人材の育成

質問1
 次に、ものづくり人材の育成についてお伺いします。
 私たち都議会民主党の代表質問でも触れさせていただきましたが、我が国において科学技術の発展と技術者の育成は喫緊の課題であります。
 我が国は、科学技術創造立国を模索し、科学技術のさらなる進展を図り、国民が豊かで安全な生活を送る社会を目指しております。そのための人材育成には、中央省庁はもとより、民間企業や各種団体も積極的に取り組んでおります。私の選挙区でもある大田区でも、熟年技能者の高齢化と若年労働者の確保は死活問題になっております。
 そこで、ものづくりを担う人材を育成している工業高校の今後のあり方についてどのように考えているのか、お伺いします。

答弁1
 ▼教育長
 工業高校の今後のあり方についてでございますが、これまで都教育委員会は、生徒の興味、適性及び進路希望に柔軟に対応できる、特色ある工業高校づくり等を推進してまいりました。今後は、ご指摘のとおり、熟練技術者の不足等に適切に対応できるよう、六郷工科高校で実施しておりますデュアルシステムの評価・検証を行いまして、他校への導入について検討するとともに、熟練技能者を工業高校の技術指導において積極的に活用するなど、産業界の協力を得ながら、ものづくり人材の供給に向けたさまざまな取り組みを推進してまいります。



質問2
 この工業教育では、ものづくりを通じて工夫する力や考える力を養い、ものづくりには忍耐が必要であるため、我慢する力、頑張る力などが培われます。また、複数の人員で作品を製作する段階で、他者を思いやる力や、ともに頑張る力などが育成されると考えます。このような背景があるからこそ、油や土にまみれることもいとわない人材が輩出されてくるのであります。
 また、工業高校を卒業して就職する生徒たちの方が、普通高校などを卒業する生徒に比して離職率が極端に少なく、ニートやフリーターになる割合も少ないといわれております。
 また、卒業後の就職先は、大半がその自治体の周辺であり、地域の中小企業を支えてきたのは工業高校の卒業生であり、そのことは、過去も今も将来もそう変わることはないと思います。
 一方、国公立大学への入学者も、ある調査では、全国に約一千人の入学者があり、今や進学は普通高校という考えは捨てなければなりません。
 工業高校で物の基礎を学び、大学に進学して理論構成を行い、その後に社会に巣立つ技術者を育成する必要があります。また、技能の伴わない技術はあり得ないことから、その両者を満足できる、工業高校から大学進学するルートを積極的に開発すべきであります。東京都も問題意識はあるようでありますが、どのように取り組むつもりか、お伺いします。

答弁2
 ▼教育長
 工業高校から大学進学するルートについてでございます。
 工業高校では、ものづくりの基礎、基本を習得させ、ものづくり企業の技術者となる人材を育成することに加え、さらに、高度な専門知識の習得を目指す生徒の大学等への進学を支援することも重要でございます。
 近年、工業高校の生徒の大学進学率が上昇傾向にあることから、各学校では、きめ細かな進路指導や、英語や数学などの補習や補講等を行っているところでございます。
 都教育委員会は、今後、こうした取り組みの一層の充実を図るとともに、大学の講座に参加し一定の評価を得た生徒には進学の道が開かれる高大接続プログラムの開発に向け、大学との連携を図ってまいります。



質問3
 また、知事もご存じのように、私の暮らす大田区の北嶋絞製作所などは、スペースシャトルの部品や国産ロケットの先端部品を製作したり、有限会社でもF1レース用エンジンの部品を製造するなど、超高度な技術、技能を持った会社が多くあります。このようなトップレベルの技術者を育成することも極めて重要であります。
 また、毎年、国内では、技能五輪全国大会や全国障害者技能大会が開催されています。また、ことしは、沼津市をメーン会場として、技能五輪国際大会と障害者の技能競技大会国際アビリンピックが同時開催されますが、このような大会に参加できるようなすぐれた技能を持ったものづくり人材の育成を図るべきだと考えますが、どのように取り組んでいくのか、お考えをお伺いして、質問を終わります。

答弁3
 ▼産業労働局長
 ものづくり人材の育成についてでございますが、都は職業能力開発センターにおきまして、企業の従業員を対象に、高度な技能習得を目指します、ものづくり名工塾やスーパー名工塾を実施するとともに、技能五輪全国大会などへ出場を目指す生徒につきましては、その水準に達するよう、特別の技能指導等を行っているところであります。
 また、企業における高度な技能習得を目的とした教育訓練の実施を支援するために、運営経費の一部を助成しております。
 引き続き、こうした取り組みを通しまして、高度な技能者の育成に努めてまいります。

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