水道事業への気候変動の影響は
視覚障害者へ音声の情報提供を |
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 小磯善彦(公明党) |
■地球温暖化対策 |
質問1
初めに、地球温暖化対策について伺います。
石原都知事は、地球温暖化の実情視察のため、ツバルに行かれました。知事自身が温暖化の影響を肌で感じて、発信し、今後の対策に反映していくことは重要なことであります。
東京都は、環境先進モデル都市として、アジアを初めとする世界の各都市の環境分野における技術交流や教育交流など大いに拡大すべきであります。
ところで、新潟県中越沖地震によって柏崎刈羽原発が稼働停止になり、そのバックアップに火力発電が再稼働され、CO2の排出量が増加しました。今後は、発電に伴うCO2の増加を招かないためにも、環境負荷の小さい再生可能エネルギーを普及させなければなりません。
再生可能エネルギーは、短期的にも、中長期的にも、温暖化対策の柱となるべき政策であり、欧州や米国、中国でも大胆な普及目標と具体的な政策を導入しています。欧州では、再生可能エネルギーの目標を全エネルギー量の二〇%にしていますが、それに対して、我が国では一・六三%と、一けた小さい目標値にとどまっています。また、国に特段の施策がないために、太陽熱利用やバイオマスエネルギーの普及も進んでおりません。
このように国の動きが緩慢な中で、都は本年、五百億円の温暖化対策推進基金を設置し、環境CBOを始動させるなど、数多くの具体策を検討しています。
都は、再生可能エネルギーの導入目標を全エネルギー量の二〇%としていますが、達成するのは容易ではなく、さまざまな角度からのアプローチが不可欠であります。
そこでまず、ツバルの差し迫った危機的状況を視察してきた知事より、その成果も踏まえて、再生可能エネルギー普及に対する決意を伺いたいと思います。
答弁1
▼知事
再生可能エネルギーの普及についてでありますが、先般、視察いたしましたツバルや地球のあちこちで起こっております未曾有の現象を眺めましても、地球温暖化の深刻な影響を肌身で感ずるようになってまいりました。
こうした気候変動の危機回避のためには、省エネの徹底とともに、CO2を排出しない再生可能エネルギーの一層の活用が重要であると思っております。
しかし、再生可能エネルギーの利用拡大に向けた国の動きはなかなか遅く、差し迫った地球規模の危機的状況に対して、責任を果たし切れてはいないと思います。
大都市東京は、バイオマス燃料の利用促進や、百万キロワット相当の太陽エネルギーの導入など、再生可能エネルギーの普及に本格的に取り組み、世界の気候変動対策をリードする都市モデルを構築し、世界に発信していきたいと思っております。
いずれにしろ、この問題は、一気呵成に解決できる問題ではございませんで、まさにちりも積もれば山となるという心得で、一歩一歩着実に事を進めていかなきゃならないと思っております。
質問2
都は、太陽光と太陽熱利用拡大検討会で、今後の再生可能エネルギーの普及促進策を検討していることは高く評価いたします。これまで対策がおくれていた太陽光や太陽熱に関しても、家計において採算がとれるような仕組みづくりが一番のポイントであります。例えば太陽光、太陽熱の個人住宅での活用を促すため、住宅新築時に太陽光発電、太陽熱の装置を設置した場合には住宅ローンの金利を優遇するなど、金融機関と連携した仕組みを検討すべきであります。都の見解を伺います。
答弁2
▼環境局長
太陽光発電の普及についてでありますが、気候変動対策を進める上では、金融面での取り組みが重要であり、都は、金融機関の自主的な取り組みによる環境投融資の拡大など、金融面から企業や個人等の環境配慮行動を促進する環境金融プロジェクトを、平成十七年度から進めております。
ご指摘のような太陽光発電の普及に金融機関の協力を得る仕組みについては、都民がより利用しやすい金融商品の提供を、今後さらに働きかけてまいります。
質問3
次に、今後、家庭部門の省エネ対策も本格的に取り組んでいかねばなりません。本年五月、環境審議会の環境基本計画のあり方についての中間まとめでは、さまざまな場面や一定の期間内でみずからのCO2排出量を家庭や個人が確認することも省エネ推進に大きな効果があると指摘しています。
そこで、一つの提案は、電気、ガス、ガソリンなどの領収書に購入した燃料のCO2排出量を明記することであります。自分が使ったエネルギーでどれだけのCO2が排出されるかを日常的に意識することで、都民一人一人の省エネ努力を促すべきであります。都の見解を伺います。
答弁3
▼環境局長
家庭部門における地球温暖化対策についてでありますが、都はこれまで、家電製品の省エネラベリング制度の普及などにより、家庭における地球温暖化対策を推進してまいりました。今後、さらに家庭での対策を進めるためには、節電や省エネの取り組みがCO2削減に直結することをわかりやすく示していくことが大切でございます。このため、電気、ガスなどのエネルギー事業者に対しましても、領収書の活用などの方法により、積極的に情報の提供を行うよう呼びかけてまいります。
質問4
先日、白熱球一掃作戦が発表されました。白熱球を電球形蛍光灯にかえると、電力源から排出されるCO2が一時間当たり約八〇%減ります。この作戦の展開においては、スーパー、コンビニ、電器店の協力により、身近なところで電球形蛍光灯が購入できるようになりました。都内の六百万世帯で仮に一個ずつ電球を交換したとすると、試算では、約二十万トンのCO2が削減され、都内のCO2排出量は約〇・三%削減されることになります。家庭部門の省エネを推進していく上では、こうした情報を都民にきちんと伝えていくことが重要です。そこでは、今回の作戦でも協力をいただいた電器店の皆さんにさらに重要な役割を担っていただきたいと思います。つまり電器店の皆さんに省エネアドバイザーとして、地域の自治会や商店街の集まりで省エネ講習会を開催したり、電力使用量の高い個人住宅に対する省エネの個別具体的なアドバイスを行っていただければ、大きな効果が期待できます。都の見解を伺います。
答弁4
▼環境局長
省エネにおける電気店の役割についてでありますが、ご指摘のとおり、都内の全世帯で白熱球を電球形蛍光灯に一個交換するだけで、年間約二十万トンのCO2が削減されますが、これは新宿都庁舎から一年間に排出されるCO2の六倍以上に相当する量でございます。
白熱球一掃作戦の展開に当たって、このたび、東京都電機商業組合に加盟している電気店において、電球形蛍光灯の省エネ性能や効果などを店頭で消費者に説明するなど、省エネ推進に協力いただくことになりました。
今後、省エネ家電ラベリング制度の対象外となっている小規模な電気店に対しましても、省エネラベルの活用を促していくとともに、電機商業組合等が開催する省エネ研修会に温暖化対策を担当してきた都職員を講師として派遣するなど、電気店が地域での省エネ活動に一層積極的な役割を果たしていただけるよう取り組んでまいります。
質問5
次に、気候変動が水道事業に与える影響とその対策について伺います。
私が平成十六年第一回定例会で、都県域を越えた非常時における水道水の相互融通について質問したところ、本年二月に、町田市内と川崎市において、水道水を相互融通できる体制が整備されました。水道局のこうした取り組みを高く評価するものであります。
しかし、現状のシステムでは、震災時や事故時などに運用が限られていると聞いております。さまざまな制約はあると思いますが、例えば渇水時においても相互融通できるよう、活用方法の拡大を検討すべきです。所見を伺います。
答弁5
▼水道局長
渇水時における水の相互融通についてでありますが、現在、渇水時には、河川管理者及び利水者等から成る渇水対策連絡協議会において、渇水状況に応じて、水系ごとに利水者間の話し合いで、その都度、取水制限率が決められている状況であります。
当局では、震災時や事故時等の非常時対応として、現在、埼玉県や川崎市との間で水の相互融通体制を整備しておりますが、渇水時の相互融通は、各事業者の水資源確保への取り組みなどの違いから、合意形成が難しいなどの課題もございます。
こうしたことから、現在、水の相互融通は震災時や事故時等に限定されておりますが、他の異なる水系との流域間連携は渇水時にも有効であると認識しておりまして、今後、関係者と情報交換を行うとともに、連携について働きかけてまいります。
質問6
一方、国土交通省によると、近年の降雨状況の変化により、利根川水系の安定供給能力が二割程度低下しており、現実的に影響が出始めています。地球温暖化の影響による気候変動は世界的に大きな関心事であります。気候変動に関する政府間パネル、IPCCの四次にわたる評価報告書によると、地球の自然環境は温暖化の影響が徐々に拡大し、その結果、水不足による被害人口はいずれ数億人規模に上ることが予測されています。
水資源の確保は水道事業の基本であり、今後、気候変動が水道事業に与える影響が懸念されます。水道局の気候変動に対する認識と対策について、見解を伺います。
答弁6
▼水道局長
気候変動が水道事業に与える影響についてでございますが、ご指摘の気候変動に関する政府間パネルでは、これまで四次にわたる報告がなされておりまして、これらを踏まえ、東京大学や国立環境研究所などの研究機関が、百年後の日本の気候変動について予測を行っております。
国土交通省は、こうした気候変動が水資源に与える影響について報告をまとめ、百年後の利根川上流八ダムの貯水状況は、ダムが枯渇する頻度が現在に比べると多くなることも懸念されるとしております。
こうしたことから、水道事業に関しては、渇水の危険性が高まるとともに、貯水池などの水温が上昇することにより、水源水質が悪化することなどが考えられます。このため、東京水道として、気候変動が水道事業に与える影響について、今後、大学などの研究者や水道技術者と研究を行うとともに、世界各国の研究者などとも情報や意見交換を行ってまいります。
質問7
また、首都東京の安定給水を維持していくためには、世界の大都市に比べて低い水準である利水安全度を高める必要があります。その観点から、引き続き八ッ場ダムの水源開発を進めていくとともに、ダム開発以外のさまざまな事業を展開していく必要があります。水道局の所見を伺います。
答弁7
▼水道局長
利水安全度を高めるための取り組みについてございますが、国土交通省によりますと、世界の大都市は、ロンドンでは五十年に一回の割合で発生する規模の渇水、ニューヨーク、サンフランシスコでは、これまで発生した中で最大規模の渇水に対応できるよう、利水安全度を設定しております。
一方、都の水源の八割を占める利根川・荒川水系は、五年に一回程度の割合で発生する規模の渇水への対応を目標に水源開発が計画されており、世界の大都市と比べて利水安全度が低い状況にあります。
さらに、近年の降雨状況により、利根川の実際の供給能力が当初計画に比べて二割程度低下していることなどを踏まえると、将来にわたり都民生活や首都東京の都市活動を支えるためにも、八ッ場ダム等の水源開発を引き続き進めていくことが不可欠であります。
また、厳しい渇水時におきましても安定給水を確保するため、水源開発を進めると同時に、漏水防止対策や節水施策の推進、水の有効利用など、総合的な取り組みを進めてまいります。
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■学校の防災機能 |
質問1
次に、地震対策としての学校の防災機能向上について伺います。
国の避難所となる学校施設の防災機能に関する調査研究によると、全国で八六%の学校で自家発電設備が整備されていません。東京都地域防災計画によると、都立学校は外出者対策の帰宅支援ステーションに位置づけられ、災害時には、水、トイレ、情報などの提供が求められています。中でも各種の情報提供は、避難者、帰宅者にとっては極めて重要であり、停電時にあっても途絶えさせてはなりません。したがって、自家発電装置の設置は不可欠であります。都内では、特別支援学校は一〇〇%整備されていますが、都立高校ではわずか一一・三%の整備率で、とても期待されている役割を担うことはできません。そこで、帰宅支援ステーションに指定されている都立学校には、早急に自家発電施設を整備すべきであります。所見を伺います。
答弁1
▼教育長
都立学校の震災時の電力の確保についてでございます。
これまで都教育委員会は、すべての特別支援学校におきまして、自家発電設備を整備済みでございます。
現在、都立学校は、災害時におきます児童生徒の安全確保や避難所としての機能に加えまして、帰宅支援ステーションとしての機能も有しておりまして、情報伝達手段の向上や滞在時の不安解消等のニーズに的確に対応しながら、停電時にも安定的に運営を行うため、さらなる整備が必要でございます。
ご指摘のとおり、自家発電設備が未整備の都立学校もあることから、今後、計画的な整備を図ってまいります。
質問2
また、都立学校では、全校に浄化装置が整備されており、貯水槽やプールから水の供給が可能です。しかし、それだけでは不十分であり、汎用性のあるペットボトルの備蓄が必要です。さらに、断水時におけるトイレの利用を可能とする工夫が必要です。都の積極的な取り組みを伺います。
答弁2
▼教育長
都立学校の震災時の水の確保についてでございます。
これまで都教育委員会は、全都立学校におけるろ水器の設置や飲料水の備蓄等、都立学校における震災時の水の確保対策に努めてきたところでございます。しかしながら、断水時におけるトイレ洗浄水や帰宅支援ステーションにおける飲料水確保のため、今後、関係機関と調整いたしまして、一層取り組む必要があると考えております。
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■視覚障害者への情報提供 |
質問1
次に、視覚障害者への情報提供について伺います。
視覚障害者が文字情報を得るためには、点字化するという方法が一般的であります。しかし、中途失明者の増加などにより、点字利用者は視覚障害者の約一割にとどまっています。このため、現在、音声コードを用いた文字情報の提供が普及しつつあります。これは専用ソフトを用いて文字情報をコード化し、そのコード、SPコードを印刷物に添付するというもので、視覚障害者は専用の読み上げ装置から音声で情報を得ることができます。音声コードは視覚障害者が活字情報にアクセスする手段として有効であると、国などでも推奨されております。
視覚障害者の皆さんは、東京都のさまざまな施設で情報を得ております。その中でも、とりわけ命と健康にかかわる重要な情報を扱う病院では、患者本人にとって有益な情報の多くが文字情報であることから、例えば薬の説明書に音声コードを添付することは、患者サービスの向上に有意義なものと考えます。
そこで、都立病院、公社病院において、できるだけ早期に視覚障害を持つ方に渡す薬の説明書に音声コードを添付すること、及び薬剤科の窓口に音声コードを、確認のための活字文書読み上げ装置を設置すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁1
▼病院経営本部長
都立病院などにおける音声コードの活用についてでございますが、都立病院及び公社病院におきましては、これまでも、視覚障害を持つ方々に対しまして薬剤情報を的確にお伝えするため、各病院の薬剤科の窓口におきまして、口頭によって十分に説明を行いますとともに、個別の事情に応じてきめ細かく対応してきたところでございます。
今回ご提案のございました、薬の説明書への音声コードの添付及び活字文書読み上げ装置の設置につきましては、視覚障害を持つ方々が服用する薬の情報を音声によって容易に確認できるため、利便性が高く、また服薬の安全性向上にもつながる方式であると認識をしております。
このため、従来からの対応に加えまして、音声コードの添付などについて、今年度中の導入を目途に検討を進めてまいります。
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■都市型農業 |
質問1
最後に、都市型農業について伺います。
町田市には、町田市北部に、市街化調整区域を中心とする約三百八十ヘクタールの広範な地域があります。当該地は、鶴見川源流域や山林、谷戸などの自然豊かな土地で、これまで営農によって長く自然環境が守られてきたところであります。近年、農業従事者の高齢化や後継者不足などから休耕が相次ぎ、荒廃が目立つようになっております。また、都市再生機構が土地区画整理事業のために先行取得した百ヘクタールの土地が、利用されないまま放置されております。
町田市は既に、都市再生機構からこの土地を取得し、土地の荒廃を防ぐため、都市農業を展開して、首都圏共有の緑の財産として未来に引き継ぐことを目的とした、北部丘陵まちづくり基本構想を策定しています。
市街化調整区域の土地利用や農業の現状を確認するために、参議院宿舎予定地を一緒に視察されたように、石原都知事並びに猪瀬副知事にもぜひとも町田市の北部丘陵の現地視察を行っていただきたいと思います。
さて、こうした市街化調整区域内の農業は、遊休農地の増加や傾斜地などのために生産性が上がらないことなど、さまざまな課題を抱えております。とりわけ、農業振興地域以外の市街化調整区域内の農業については、国の施策も限られていることから、都の支援策が強く求められています。これらの地域における農業振興の具体策について所見を伺い、質問を終わります。
答弁1
▼産業労働局長
農業振興地域以外の市街化調整区域の農業の振興についてでございますが、こうした地域は、農業用施設などの整備が国の補助事業の対象となっていないということもありまして、農地の遊休化が進み、農業の活力の低下が懸念されております。このため、都は独自に、栽培施設の設置や農道などの農業基盤整備に対する経費補助等の支援を行ってまいりました。
今後、さらに遊休農地と農業に関心を持つ都民とのマッチングを進めるとともに、都市に近いメリットを生かした農業経営の展開を推進する観点から、農業体験農園や観光農園の整備を支援してまいります。
このような施策を通じまして、農業振興地域以外の市街化調整区域の農業の一層の振興に努めてまいります。
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