都と国、地方との関係は
オリンピック招致の署名活動を |
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 秋田一郎(自民党) |
■地方分権 |
質問1
東京が富裕だから、その税収を国が吸い上げ、国が地方に配分するという考え方は、根本的に間違っているという指摘から、私の質問を始めたいと思います。
まず、お金の配分だけで問題が解決するという考えが的外れです。イギリスのサッチャー元首相はいいました。お金持ちを貧乏にしたからといって、貧乏な人がお金持ちになるわけではない。まさにそのとおりです。
都市と地方の格差を殊さらにいい立て、都市からお金を吸い上げたからといって、現在地方が直面する問題が構造的、本質的に解決されるわけではありません。東京が仮にお金持ちであるとしても、サッチャーの言をかりるならば、東京を貧乏にしたからといって、地方がお金持ちになるわけではないのです。
第二に、これまでいい尽くされてきたことですが、東京には独自の巨大な財政需要があり、これに対応していかなければ、都は住民サービスを全うし得ず、東京が東京たり得なくなってしまうということもあります。
東京都と国、地方との関係について、私はこのように考えていますが、こうした現状認識をどう考えるか伺います。
答弁1
▼財務局長
地方が直面する問題の解決に向けた現状認識についてのご質問にお答えいたします。
今日の地方財政の疲弊の大きな原因には、国が景気対策として地方に押しつけた公共事業のために行った借金返済の膨張、それに三位一体改革の名のもとに強行された、三年間で五・一兆円もの地方交付税の削減、この二つがございます。
その背景には、長らく続いてきた地方の国への依存体質がございます。
したがいまして、そこを脱して、みずからの責任と権限で地域を運営し、自立できる力とすべを身につけることが必要であり、それなしには地方はいつまでたっても国のいいなりであり続けることとなります。その意味で、お金の配分だけで問題が解決するわけではないとのご指摘は、そのとおりだと考えます。
国は、地方の自立や権限といった本質的な問題をお金の問題にすりかえ、さらに都市対地方の対立にすりかえようとしております。
しかしながら、真の地方の自立を実現するためには、現在国が行っている仕事や権限を大幅に地方に移し、さらにそれに見合った地方の税財源の充実によって、仕事と権限を裏づけることを先延ばしせずに早急に実施することが必要であります。
なお、地方財政の厳しい状況への当面の対処ということであれば、まずは国が削減した地方交付税を、みずからの責任で国の財源をもってもとに復するべきものと考えております。
質問2
こうした現状認識を前提として、都市と地方の格差といったときに念頭に浮かぶのは、まず自治体の財政力の差であり、次に地域ごとの経済力の差の二点です。
まず、都市と地方の財政力の格差について質問しますが、ここでは、国を親、都を長男、他の道府県を弟と例えて話を進めます。
かつて仲のよい親子がおり、子どもが小さいころには、親が衣食住のほとんどを面倒見てくれました。そして、時を経るうちに、子どもは成長し、自分で仕事をするようになり、収入も得られるようになってきました。特に、長男は才覚もあったので、他の兄弟の何倍もの収入を得られるようになりました。
しかし、親は自分の仕事を譲らず、抱え込む一方、借金をしても子どもに金を配りたがり、口出しもやめようとしない。子どもは子どもで、親のいうとおり兄弟そろって行動する方が楽だし、お小遣いももらえるので、みずから道を切り開くことを学びませんでした。
一方、長男は、経済変動の影響で破産しそうになったときもありましたが、親からの仕送りも受けず、仕事に創意工夫を凝らし、血のにじむような努力を積み重ね、自立してきました。それを見ている弟たちからは、兄さん一人がお金持ちでずるいと文句が絶えない。
国は中央集権に固執して、国債を発行しながら地方に補助金を配分し、都市から吸い上げた国税の一部に加え、借金さえして地方交付税を交付してきました。地方は地方で、国に交付税などの増額を求めるだけで、時代の変化におくれ続けました。国と地方は、今や無理に無理を重ねた家族で、ぎくしゃくしているのです。
例えていえばこうした状況であり、都市と地方の財政面の格差については、国に頼った解決の道は既に行き詰まっています。かといって、地方を放任しておいて自然に活力が回復することを期待するのも非現実的です。
こうした現実に直面して、日本の活力の源でもあり、地方自治体の雄であり長男でもある東京は、地方全体の立ち直りと発展のために、そして東京が日本を救うために、どのような立場でいかなる貢献ができるのか、真剣に考えるべきときが来たと私は思います。
まず、東京が行財政改革のノウハウと自立のヒントを供与し、都が進めてきた構造改革について、みずからやってみせる働きかけを行い、地方の改革をこれまで以上に支援することを提案します。
具体的には、都が、不正軽油撲滅作戦、インターネット公売、対面式公売オークションなどの徴税、納税のノウハウや、我が国の行政にとって革命的といっても過言ではない公会計改革について、貴重な知見とノウハウを地方に提供すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁2
▼主税局長
徴税、納税等のノウハウの提供についてお答え申し上げます。
都はこれまで不正軽油撲滅作戦やインターネット公売などの先駆的な取り組みを行い、全国自治体に範を示してまいりました。
また、都内区市町村や八都県市との人材交流、他団体からの研修生の受け入れを行うとともに、徴収部門の交流のために徴収サミットを開催するなど、積極的に全国自治体の支援、交流に取り組んでおります。
十月からは、より多くの自治体が参加でき、日常的に意見交換ができるよう、インターネットを活用した交流の場を新たに設ける予定であり、今後とも税務行政のリーダーとして全国の自治体を支援し、期待にこたえられるよう努力してまいります。
▼会計管理局長
公会計制度改革のノウハウの提供についてでございます。
現在、公会計制度改革に関する総務省の取り組みが進んでおらず、ほとんどの自治体が改革に着手していない、そういった状況にございます。
そうした中で、都の取り組みには高い関心が寄せられておりまして、これまで都は、自治体を対象にした説明会の開催や解説書の配布など、新公会計制度のノウハウの提供に努めてまいりました。
今後は、初の本格的な財務諸表を作成した実績を踏まえまして、各自治体のご要望に応じ、ソフトの提供を初めとして、人材の交流や育成など、それぞれのニーズに沿ったきめ細かな支援、協力を行ってまいります。
質問3
根本的には、親のやるべきことを限定すること、そして子どもは子どもで自分の収入で暮らすことをまずきちんと組み立てることが重要です。つまり、国と地方の役割分担、事務分担をより明確に区分し、財政調整を介さずに、行政サービスに応じて国税と地方税を負担する原則を貫徹していくことが第一です。こうすれば、行政機関も国と地方で重複がなくなり、地方の自立と小さな政府の実現につながります。
さらにいえば、東京が中心となって地方間の財政調整制度を構想することがあってもよいのではないのでしょうか。いっときの利害対立から、すぐには一般の理解を得られない場合もあると思いますが、真に地方自立を考えるとき、避けてはならないことです。
分権の視点に立った地方税財政制度改革について制度設計を明らかにし、国や地方に向けて、次世代を見通した改革の提言を早急に発信していくことが東京都のまさに責務です。知事は、本定例会の所信表明で、都の見解を発表すると述べられましたが、今こそ、東京は地方全体の長男として何ができるのか、真剣に考えなければなりません。
都市と地方、国と地方といった対立の構造のみに目を奪われることなく、日本の将来を見通した明確な哲学に基づいて、地方税財政制度改革のあり方について正々堂々の論陣を張るべきだと考えますが、知事の所見を伺います。
答弁3
▼知事
地方税財政制度の改革のあり方についてでありますが、ただいまのお話、大変示唆に富んだものでありまして、共感を持って受けとめました。
国は依然として、実質、中央集権の行政原理を構え、地方を国の道具として従属させている仕組みに本質的に手をつけることなく、地方の不満を都市の犠牲によってかわそうと画策しておりますが、それは都市をも道連れにした、日本全体を沈没させる愚策にほかならないと思います。
今日、問われているのは、単なる財源配分の問題ではなく、地方みずからがおのれの才覚と責任でいかに自立して、地域の活性化に挑み得る仕組みをつくるかであります。
また、税源の拡充を本気で考えるならば、なぜ消費税率の引き上げ、あるいはその地方への配分率の引き上げという根本課題を正面から論議することをしないんでしょうか。これこそ一番肝要な問題だと私は思います。
地方間の税収の差を補完する財政調整の仕組みが必要でありますが、現在の地方交付税制度を、より地方の自立に寄与する新しい仕組みへと発展させるべきだと思います。
もとより、東京もまた地方の一員でありまして、志と意欲を持って努力している自治体に対して、東京が役に立てることがあれば、何なりと手助けをしたいと思っております。
これまでも行ってまいりましたが、求められれば、さらに職員の派遣や受け入れにも応じたいと思っております。
お話のように、都市対地方、国対地方という枠組みを超えて、日本の将来をどうすべきかという視点に立って今後見解をまとめ、広く発信していきたいと思っております。
質問4
次に、今の地方にとって真に必要なのは、地域の経済を回復し、自立していける基盤は何か、そしてそれをどう確立していくかという地方活性化の問題です。
三百年ほど前、江戸時代の諸藩は、それぞれが自立し、独立採算でうまく地域を経営していました。例えば、貧しい赤穂藩が赤穂の塩を特産品として最大限に活用したように、各藩は自主自立の道を守るために知恵を絞り、工夫を凝らしました。江戸時代の人々にできたこうした努力が現代人にできないはずはありません。
東京には、世界有数の巨大な消費都市であること、大量の情報の受信・発信ポイントであること、年間四百万人を超える観光客が訪れる観光都市であることといった特性がありますが、私はこれが地方経済の立ち直りに十分貢献すると考えます。東京の産業と地方の産業とが手を携えて、お互いの強みを持ち寄り、お互いに活性化していくことが必要なのではないのでしょうか。
例えば、各地域の農林水産物や特産品などを販売する物産展や、広く他県の企業をも参加対象とした見本市の開催、他県の企業が東京で取引相手を見つける際の支援など、都が東京のみならず地方経済の活性化にも資する取り組みを行うことにより、東京と地方のウイン・ウインの関係が構築されると思います。
こうした認識のもと、都がリーダーシップを発揮し、一大消費地、情報集積地といった強みを生かした、より広い視野からの産業施策を展開すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁4
▼産業労働局長
東京の産業と地方の産業の連携についてお答え申し上げます。
他県の企業を含めた広域的なネットワークを構築していくことは、他県の企業のみならず、都内企業のビジネスチャンスの拡大を図る上でも有効な手段であります。
お話のように、東京が我が国の産業経済の牽引役として重要な役割を担っているという認識のもと、都主催の見本市であります産業交流展について、国の関連団体主催の中小企業総合展と連携して開催し、都内企業と他県の企業とのネットワークを構築していくなど、広域的な取り組みを検討してまいります。
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■オリンピック招致 |
質問1
次に、オリンピック招致について伺います。
オリンピック招致は総力戦であり、国を挙げ戦うためには、何よりも都民、国民の支持が必要です。例えば、来年の北京や二○一二年の招致競争時のパリやロンドンも、国民から高い支持を得ています。
しかし、残念ながら、我が東京では、オリンピック招致への関心がまだまだ低いといわざるを得ず、私は危機感さえ抱いています。
十一月に実施予定の世論調査で高い支持を得るために、確固たる戦略を持って臨むべきです。ムーブメントはすべからく若い女性から始まります。若い女性の支持が鼻の下を伸ばした男性へと広がり、マスコミが取り上げます。それを見た中高年の女性がさらに興味を示して、一つの社会現象となっていくのです。
実際にオリンピックに参加するのは若い人たちです。若い人たちにもっと共感を呼ぶようなPR策を考えるべきです。例えば、国内的にはSMAP、海外向けには北野武、中田英寿など、若者の共感を呼ぶ人を招致大使に選んではいかがでしょうか。また、国内外を問わず人気があるポケモンなどのアニメキャラクターを起用するのもおもしろいと思います。
世論調査で高い支持率を獲得するためにも、若い人、特に女性にターゲットを絞った広報、PRを強力に展開すべきだと考えますが、見解を伺います。
答弁1
▼東京オリンピック招致本部長
世論調査に向けました広報・PR活動でございますが、世論調査でオリンピック、パラリンピック招致への高い支持を得るためには、お話のように、年齢層などに応じて賛同の輪を広げていくことが必要であるというふうに考えます。
特に、ご指摘の若い年齢層は、前回の東京オリンピックを経験していないことから、オリンピックの開催意義を身近に考えてもらえるような工夫をしてまいりたいというふうに考えております。
そこで、来月に入り、まず一日には、若い人も含め幅広い世代に人気があり、テレビにも多数出演しております、みのもんた氏に招致大使の就任をお願いするとともに、二日には、水泳の北島康介選手を初め八名の現役の選手にアスリートアンバサダーに就任していただきます。
さらに、十月中には、これまでオリンピックに出場したオリンピアンに四十七都道府県のふるさと特使に就任していただき、母校などで児童や生徒たちにオリンピックのすばらしさを伝えていただく予定でございます。
今後、世界的にも知名度のあるサポーターの起用や人気の出るグッズの充実を含め、効果の大きい広報・PR活動を展開してまいります。
質問2
先日、都議会オリンピック招致議員連盟では、世論を喚起すべく都民から広く署名を集めることとし、早速活動を始めました。北京では、招致に当たり数百万人の署名を集め、IOCに提出したと聞いています。戦いに勝つには、まず足元を固めることが肝要です。
約十七万人いる都の職員が十人ずつ署名を集めれば、百七十万人になります。署名活動を通じて一人一人の職員が直接参加していくことで、都庁全体がオリンピック招致に向けて足元から盛り上がっていくのではないのでしょうか。都を挙げてこうした署名活動に取り組むべきと考えますが、知事の見解を伺います。
答弁2
▼知事
オリンピック招致に関する署名運動についてでありますが、オリンピック、パラリンピック招致に対する都民、国民一人一人の熱い思いをIOCに訴えていく上で、署名は非常に有効な手段であり、決定的な判定要因にもなっていると聞きます。
今回、都議会オリンピック招致議員連盟のご提案によりまして、署名活動を開始されたことは大変心強いと思っております。
都としても、都議会、東京オリンピック招致委員会、JOCなどと連携しながら、多くの賛同が得られるよう署名活動に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
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■三宅島モーターサイクルフェスティバル |
質問1
モーターサイクルフェスティバルについて伺います。
今、三宅島では、温泉施設がオープンし、定置網漁の操業も始まりました。夏の観光シーズンに開かれるマリンスコーレや自転車のロードレース大会も復活しました。来年春には空港が再開するなど、明るい話題が続き、観光地としての魅力を再び発信できる基盤が整ってきたとの感を強くしています。
こうした中で、このたび開催されるバイクイベントは、直線コースで迫力あるマシンが競うドラッグレースと呼ばれる競技や、一般参加者も楽しめるツーリングラリー、往年のクラシックバイクが走る姿を間近で堪能する三宅島ツーリストプロなど、非常にバラエティーに富んでおり、私も開催を楽しみにしています。
離島におけるかつてないイベントであり、さまざまな課題があろうかと思いますが、島の力強い復興のためには、何としても成功させなければなりません。
そこで、このイベントを成功させる意義を都としてどのように考えているのか、お聞かせください。
答弁1
▼総務局長
三宅島でのバイクイベントの意義についてのご質問にお答えを申し上げます。
島民の帰島から二年半が経過した三宅島では、いまだに観光客の数が噴火前の半数程度と低迷をしておりまして、島の産業の活力アップに弾みがついておりません。このため、年間を通じて島を訪れる人をふやすための幅広い取り組みが重要でございます。
十一月に開催いたしますモーターサイクルフェスティバルは、島の復興ぶりと観光地としての魅力を広く全国にアピールし、バイク愛好者を含めた観光客の増加を通じて、島を活性化させる大きな足がかりになるものと考えております。
現在、島民が一丸となりまして、すべての人が楽しめるにぎやかなイベントとなるよう、開催の準備を着々と進めております。
都としては、こうした三宅島の取り組みを引き続き全力で支援をしてまいります。
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■マンホールの浮上抑制 |
質問1
さて、政府によれば、南関東で今後三十年の間にマグニチュード七クラスの地震が発生する確率は何と七○%とされ、東京でいつ地震が起きても不思議ではありません。
七月に発生した新潟県中越沖地震では、ライフラインが多くの被害を受け、住民生活に支障が生じました。さらに、下水道では、地盤の液状化により道路で多くのマンホールが浮上し、車両交通機能が阻害され、消防、救助活動や応急復旧活動に支障を来したそうです。区部にはおよそ五十万個のマンホールがあり、もしこれらのマンホールが浮上した場合、その影響ははかり知れません。
そこで、液状化により浮上のおそれがあるマンホールへの対策の現状について伺います。
答弁1
▼下水道局長
浮上のおそれがありますマンホールへの対策の現状についてでございますが、都の被害想定によりますと、液状化が発生する可能性が高い地域は、区部東部に広く分布しております。
昭和六十三年度以降に設置されましたマンホールは、改良土を埋め戻し材として使用し、地盤の液状化を抑制しておりますが、それ以前に設置されたマンホールは液状化によって浮上するおそれがございます。
このため下水道局では、道路を掘削することなく、既設マンホールの浮上を抑制する技術を民間と共同で開発したところでございます。今後、対策を進めていく予定でございます。
質問2
下水道局の経営計画を見てみると、まだ対策は十分ではないようです。
東京で地震が起こった場合、都民が生活するために必要な最小限の機能を一日でも早く確保するとともに、首都東京の都市機能の迅速な復旧を図らなければなりません。
そのためには、救急車両や復旧車両が円滑に通行できるよう車両交通機能を確保することが最優先であり、マンホールの浮上抑制対策を精力的に進めるべきと考えます。
今後の下水道局の取り組みについて伺い、質問を終わります。ありがとうございました。
答弁2
▼下水道局長
今後の既設マンホールの浮上抑制対策についてでございますが、震災時の迅速な救援、復旧活動を可能とするためには、緊急輸送道路などにおける車両の円滑な通行を確保する必要がございます。
このため、液状化の危険性の高い地域にあります緊急輸送道路や避難道路、約五百キロメートルにあるマンホールを対象に、新たに開発しました技術を用いた浮上抑制対策を実施し、今後四年間で完了させることといたしております。
今後とも下水道局として震災対策事業に積極的に取り組み、首都東京における都市機能の確保に努めてまいります。
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