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第3回定例会 代表質問

低所得者対策の充実を
オリンピック招致機運を高めよう

知事の基本姿勢
行財政運営
オリンピック・パラリンピックの招致
環境対策

まちづくり
産業振興
福祉・医療
教育
吉野利明
吉野 利明(自民党)
■知事の基本姿勢

質問1
 平成十九年第三回東京都議会定例会に当たり、都議会自由民主党を代表して質問いたします。
 去る七月十六日に発生した新潟県中越沖地震は、柏崎市や刈羽村などで、多くの死傷者や多数の家屋の全半壊など大きな被害をもたらしました。地震により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
 都は直ちに救助活動を展開しましたが、都議会自民党も、東京への重要な電力供給地でもある被災地に対して一刻も早く支援するように、知事に対して十分な対応を要請したところです。
 さて、知事は今般、東京を水と緑にあふれ、美しく安全な都市へと生まれ変わらせるために、年内に「十年後の東京」の実現に向けた実行プログラムを策定し、今後の都の事業展開を明らかにすると表明されました。オリンピック招致を目指し、東京をさらなる成熟を遂げた都市として二十一世紀の都市モデルを実現するには、都の具体的な取り組みをしっかりと構築するとともに、都民、企業、区市町村などとの協働を強力に推進し、東京全体で一丸となった取り組みをいかに進めていくかが大きなかぎとなります。
 今回の実行プログラムでは、広範なムーブメントの醸成に、共感を呼ぶキャッチフレーズを初め、緑化の推進に向けて都民、企業が受け入れやすい仕組みづくりや、区市町村の積極的な参加など、さまざまな主体の具体的な行動を促していく熱意と創意工夫にあふれた取り組みを提起すべきと考えます。
 とりわけ「十年後の東京」には、区市町村の取り組みが数多く掲げられていることから、区市町村との連携体制をどのように構築していくかが極めて重要であります。我が党としても、常にアンテナを張り、さまざまな地域の声を聞き、新たなニーズの掘り起こしも含め汗をかいていく所存です。
 実行プログラムの策定に当たって、区市町村を初めとする東京の総力をいかに結集し、目標実現に向けた政策を着実かつ迅速に実施していくか、知事の所見を伺います。

答弁1
 ▼知事
 「十年後の東京」実現に向けた実行プログラムについてでありますが、今回の実行プログラムは、「十年後の東京」の実現に向けた三カ年のアクションプランでありまして、今後の東京の事業展開と、都民、企業、行政との協働によります、東京の総力を挙げた取り組みを内外に明らかにするものであります。
 このため、例えば地球温暖化対策推進基金など新たな基金を活用した都みずからの先進的な取り組みを加速させることはもとより、緑の東京募金など、都民や企業の参加を促す仕組みを構築しまして、東京全体で広範なムーブメントを展開していきたいと思っております。
 その具体化に当たっては、街路樹の倍増や緑の保全、地域の魅力発信や産業振興など、多摩・島しょ地域も含めた都全域の区市町村の積極的な協力があくまでも欠かせないことでありまして、今回、すべての区市町村の意向調査を実行しまして、区市町村との連携に万全を期すことにいたしました。
 オリンピックの招致はもとより、東京国体の開催も視野に入れまして、都議会の皆様からのご意見を十分に踏まえながら、年内を目途に実行プログラムを策定し、「十年後の東京」で描いた東京の近未来図を実現していきたいと思っております。



質問2
 次に、東京大気汚染訴訟について伺います。
 先般、和解が成立し、これにより足かけ十一年にわたる訴訟が終結いたしました。この和解の最大の原動力は、知事が強い信念で解決をリードされたことにあります。
 思い起こせば、平成十四年に、健康被害者の救済と自動車排出ガス対策の強化を早急に実施することが行政の使命であるとして、知事は控訴しない決断をされました。我々は、これを強く支持したところであります。知事と都議会が手を携え、東京の大気汚染問題の抜本的な解決を目指して取り組んできたことが、今回、首相の決断を引き出し、メーカーに社会的責任を自覚させ、過去に例を見ない充実した内容の和解を成立させたのであります。
 一方で、和解の柱である医療費助成制度に対する首都高速道路株式会社の対応は、都の提案したスキームの一部しか負担を明確にせず、不十分といわざるを得ません。首都高は、和解の意義を重く受けとめ、社会的責任を果たすべきであります。都としても応分の負担をするよう強く求めていく必要があります。
 そこで、和解の意義と今後の首都高との協議について知事の所見を伺います。

答弁2
 ▼知事
 東京大気汚染訴訟についてでありますが、東京の大気汚染問題の解決に当たって私が目指してきたことは、環境庁時代の水俣の体験を踏まえまして、これまで長い間苦しんでこられた患者の方々の救済と、新たな患者発生の防止に向けた取り組みの二点でありました。
 患者救済の枠組みについては、過去の負の遺産を社会全体で解決すべき課題と考えまして、東京高裁にみずから出向きまして、正当な文明批判を踏まえて、医療費助成制度の創設を提案いたしました。
 また、安倍前首相とも直接会談しまして、これまで一切の費用負担を拒んできた国の姿勢を転換させることができたと思います。
 新たな患者発生の防止に向けた取り組みについては、和解に向けた協議を通じて、国と首都高を含めた東京都域における広範囲な環境対策を幅広く構築し、未来に向けた取り組みとして道筋をつけることができました。
 こうした意義の深い和解を一日も早く成立させることが肝要だと考えまして、和解の専決処分を行いました。
 首都高の医療費助成制度への拠出については、今後協議を行っていくことになりますが、都の提案したスキームに従って、応分の負担をするように強く求めていきたいと思っております。
 首都高もそれなりの実績を上げておりますし、和解の歴史的意義を踏まえて、社会的責任を果たしてくれるものと期待をしております。



質問3
 次に、低所得者対策について伺います。
 みずからの生活を向上させる意欲のある方々が、将来にわたって社会的、経済的な自立を確固たるものとできるよう、行政が積極的に支援を行っていくことは当然のことであります。我が党は、こうした方々への支援は、少子高齢化が進む中で東京の活力を維持していくためにも不可欠と考えます。
 さて、石原知事は、さきの施政方針で、低所得者の方々への支援策として検討してきた個人都民税の軽減について、きめ細かな施策を重点的に講じる方針への転換を明らかにされました。
 都政が都民の貴重な税金で賄われる以上、場合によっては、よりよい方法に変えていくことはもちろん必要であります。今回の方針の転換に当たって、今後、我が党と知事との関係をさらに建設的なものとしていくために、幾つか提言をさせていただきます。
 施策を構築していくに当たっては、まず、その効果や対象とすべき方策を精査すべきであり、庁内で広く活発な議論を行い、トップダウンとボトムアップを融合させた上で進めるべきです。また、都政運営のあり方という点から見れば、対等協力の関係である区市町村との関係も十分に考慮する必要があります。議会とも十分な意思疎通を図るべきであります。
 ところで、知事は、さきの定例記者会見で、今回の方針転換を公約の進化という言葉であらわされました。進化に当たっては、きめ細かく、的確に施策を講じることが重要であり、必要かつ十分な事業費を措置すべきです。
 そこでまず、今回の公約の進化に当たっての知事の決意を伺います。

答弁3
 ▼知事
 低所得者の方々に対する支援についてでありますが、近年、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せないまま、不安定な生活を余儀なくされている方々が増加しておりまして、こうした方々への支援は、安全・安心が確保された活力のある東京を実現する上で重要な課題だと思っております。
 三月に個人都民税の軽減策を公表して以降、低所得者の方々の状況について詳細に把握するために検討を行ってまいりました。
 その結果、低所得者の中でも、本人以外の家族に収入がある方や、資産を保有している方もいることがわかりまして、真に支援が必要な方は、今まで対象としてきました八十万人の方々のすべてではなくて、うちのある部分と推計するに至りました。
 低所得者の方々に対しては、税による一律の軽減よりも、きめの細かい施策として手当てする方が公平で効果的と判断いたしました。これは、当初の策を建言してきました都庁の中の部分からも再建言がありまして、それを踏まえて私が方針の転換を決断いたしました。
 意欲がありながら低所得の状況から抜け出せない方々に支援が必要であるという認識は一貫して変わりません。
 今後、都議会とも相談しながら、目的を達成するため、減税の規模を上回る事業費を措置し、区市町村とも十分に連携して、的確で効果的な支援策を積極的に講じてまいります。



質問4
 また、知事は、さきの所信表明で、額に汗して懸命に働いているにもかかわらず、低所得の状況から抜け出せないまま不安定な生活を余儀なくされている方々が、みずからの人生を切り開き、将来の展望を見出すことができるよう、多様な施策を講じていくことを明らかにされました。
 雇用施策についていえば、被雇用者と雇用主の両方に対して総合的な対策を講じていくことが必要と考えます。
 まず、被雇用者への施策としては、例えばフリーターの方が正規雇用を希望するときに、職業能力の向上を支援していくなど、一人一人の状況に合ったきめの細かい多様な支援策を充実させることが重要であります。また、受け入れ側となる雇用主に対しては、新たな雇用へのインセンティブとなる施策の充実が必要と考えます。今後、議会の意見を十分踏まえながら、施策の具体化に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、都が考えている新しい施策の方向性はどのようなものか伺います。

答弁4
 ▼知事本局長
 低所得の方々への新しい施策の方向性についてでございますが、新しい施策につきましては、次の二点を中心に検討を進めております。
 まず第一に、施策の対象という点で、意欲がありながら低所得の状況から抜け出せない方々の多様な生活の実態、幅広い年齢層を把握いたしまして、きめの細かい多様な支援策を用意いたしますとともに、雇用主に対しても的確な施策を講じていくことであります。
 次に、施策の効果という点でございますが、働く意欲のある方が努力し、将来に向かって明るい展望を持てるような施策を講じていくことでございます。
 そのためには、まず、生活の改善から、能力開発、就労までをカバーし、一人一人の実態を踏まえた適切な支援策を提供できますよう、相談体制を整備することが必要であると考えております。
 相談の結果を受けまして、現在の生活状態を改善していくための取り組みですとか、安定した就労に結びつくよう職業能力の向上を図るための経済的な支援などを行っていく考えでございます。
 また、雇用主の方に対しましては、企業が求める能力などニーズを把握いたしますとともに、インセンティブを付与するなど多様な支援を検討していく必要があると考えております。
 今後、都議会の意見も十分伺いながら、具体的な施策の内容を詰めてまいります。

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■行財政運営

質問1
 次に、今後の財政運営と新たに発表された都財政の年次財務報告書について伺います。
 今年度は、「十年後の東京」の実現に向けた基礎固めとなる大事な年であります。それを支える都財政は、財政再建に一つの区切りをつけ、新たな段階に入りました。今後は、財政再建の成果を、効果的な施策の展開によって都民にきちんと還元していくことが重要であります。
 一方で、現在の都財政の好調がいつまでも続くわけではないことは、歴史を振り返るまでもなく明らかです。これからの都財政は、いかなる状況にあっても、「十年後の東京」を支え得る持続的な財政体力を備えていなければなりません。都財政は、財政基盤のさらなる強化と、施策展開のバランスというきわめて難しいかじ取りを迫られているのであります。
 こうした中で、初めての試みとなる都財政の年次財務報告書が発表されました。この報告書は、新たな公会計制度に基づく初めての決算をまとめたものであり、財政運営の一つの新しい羅針盤としての役割が期待されています。都のここ数年の財政運営のかじ取りが、十年先の東京の姿を決定づけるともいうべき重大な岐路に立たされているわけですが、新たな公会計という羅針盤を手に入れた今、今後の財政運営について知事の所見を伺います。

答弁1
 ▼知事
 今後の財政運営についてでありますが、今日、東京は、さらなる成熟した都市へ発展する上で、超高齢社会の到来や地球温暖化への対策、あるいは更新期を迎える都市インフラの整備充実など、多額な財源を要する多くの課題に直面しております。
 しかも、都財政をめぐる環境は、景気動向の先行きが不透明な上、都の財源を奪おうとする国の動きがこれまでになく高まるなど、予断を許さない状況にあります。
 こうした中、いかに活路を切り開いていくか、ここ数年の取り組みが東京の将来を大きく左右することになると思います。
 都が独自に導入した新たな公会計制度は、ストックやコスト情報の明確化、あるいは事業分析の強化など、財政運営に強力な武器を与えたと思っております。
 今後とも、これらを活用しながら、いかなる荒波にも耐え得る、強固で弾力的な財政基盤を構築し、「十年後の東京」の実現に向け、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。



質問2
 今年度の年次財務報告書では、幾つかの興味深い事実が明らかになりました。東京都の貸借対照表によれば、平成十八年度末現在で、期限内に回収ができていない債権が千三百五十八億円存在し、それらは都の資産として計上されています。債権については、日々の適切な管理の積み重ねが何より重要であり、しっかり行っていただきたいわけですが、それをもってしてもなお、どうしても回収できない債権については、資産価値の適正把握という観点から速やかに損失処理に踏み切ることも必要であります。
 そこで、より適正な債権管理を行っていくために、今後、都としてどのような取り組みを進めていくのか伺います。

答弁2
 ▼財務局長
 債権管理への今後の取り組みについてでございますが、今回の年次財務報告書におきましては、未収債権の中に、このままでは最終的に回収が困難となるものが相当程度見込まれるなど、債権管理をめぐる課題が浮き彫りとなっております。
 これを受け、今後、この課題を正面に据えまして、まず、債権を所管する局が、より一層の回収努力に取り組むこと、それを都全体として支える体制を整備すること、そして、そのような適切な管理を行ってもなお、債務者の無資力などにより実質的に回収不能となったものについては、基準を設けて的確に放棄の手続を行うことなど、全庁を挙げた系統的取り組みを実施することといたします。
 また、こうした取り組みを制度的に裏打ちするため、新たに債権管理に関する条例を制定すべく、平成二十年第一回定例会をめどに条例提案を行うことを目指しまして、今後、準備を進めてまいります。



質問3
 貸借対照表の作成により、東京都の資産において建物の占める割合が非常に大きいことが明らかになりました。行政財産の有形固定資産全体のうち、建物は実に三五%の割合を占めています。
 さらに、新たな公会計制度では減価償却の概念が導入され、都が所有する建物の資産価値が年数の経過とともに減価し、今後の改築、改修などの需要につながっていることも示されました。これまでも、都の大規模施設に膨大な更新需要が控えていることは指摘されていましたが、今回の財務諸表によって、そのことが数字の上でも明らかになったわけです。
 耐震化などの観点から、古くなった施設を改築、改修するのは当然ですが、多額の費用を投じる以上、それらは都民の納得が得られるものでなければなりません。そのためには、必要性が低下した施設については統廃合を含めた抜本的な再編整理に踏み切る一方、真に必要な施設についてはしっかりとした整備を行うなど、めり張りのきいた取り組みが求められます。
 そこで、大規模施設等の改築、改修についてどのような考え方に基づいて進めていくのか伺います。

答弁3
 ▼財務局長
 大規模施設等の改築、改修についてでございますが、今回の財務報告書でもう一つ明らかになったことは、都民が利用する施設等について、多額の減価償却累計額が存在していることでございます。このことは、将来にわたって継続的に都民サービスの水準を確保していくためには、これらの施設について、今後、的確に改築、改修を行っていくことが必要不可欠であることを示したものでございます。
 同時に、改築、改修を行うに当たりましては、限られた財源を最大限有効に活用する視点に立ちまして、施設そのものの必要性や効率的利用の検証、耐震化やCO2排出量の削減など、都市施設として備えるべき新たな機能や価値の付加、建設のみでなく管理なども含む、施設の生涯にわたるコストの縮減、世代間のバランスと財政負担の平準化に配慮した安定的な財源の確保策など、多面的な対応を行っていくことが必要であると考えております。
 今後、こうした観点に立ちまして、大規模施設等の改築、改修に関する実施方針を策定し、これに基づき、この課題に積極的に取り組んでまいります。

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■オリンピック・パラリンピックの招致

質問1
 次に、オリンピック及びパラリンピックの招致について伺います。
 九月十一日、二〇一六年オリンピック、パラリンピック競技大会の東京招致について閣議了解が得られました。ここに晴れて、東京へのオリンピック招致が国の事業として正式に位置づけられ、いよいよ本格的な招致活動が開始します。
 また、これに先立って、九月七日には地方六団体による招致決議がなされ、全国からオリンピック招致への取り組みに対する支持がありました。
 我が党はこれまでも、知事とともに先頭に立ってオリンピックの東京招致に向けて邁進してきました。特に、招致実現のためには、まずは都民、国民から幅広い支持を得ることが重要であるという観点から、招致機運の盛り上げについてさまざまな提案をしてきました。こうした提案を踏まえ、都では招致委員会を中心に、招致大使の選定、東京タワーのディスプレー、プロ野球の始球式、ロゴ入りのバナー、横断幕の掲出などさまざまな広報活動を展開してきましたが、まだまだ十分とはいえません。
 今後、都は、申請ファイルの提出に向けて世論調査を行い、IOCは来年一月の申請ファイル提出後に独自に世論調査を行うと聞いています。都における世論調査の予定と、その中で高い支持率を得るために、今後、どのような取り組みを進めていくのか所見を伺います。

答弁1
 ▼東京オリンピック招致本部長
 世論調査の支持率についてでございますが、都議会にもご協力をいただいているPR活動によりまして、オリンピック、パラリンピックを東京に招致すること自体についてはそれなりに周知が進んでいるものと認識しております。
 世論調査は十一月末までに実施する予定でありまして、そのことを念頭に置いた場合、今後は、周知だけではなく、賛同の輪を広げていくことが重要であり、このため、開催意義やコンセプトのわかりやすい説明、東京に勝機が十分にあることの理解促進などに重点的に取り組んでまいります。
 具体的には、招致大使やふるさと特使、著名人によるテレビ、ラジオ、新聞、雑誌等での開催意義等の訴え、また、スポーツ界や環境分野など各界の有識者が参加したオリンピック招致を支援するシンポジウムや決起集会の開催、また、人気のトップアスリートがオリンピックのすばらしさを全国各地で伝えていきます「みんなのオリンピック」などを、今月から十一月にかけて集中的に実施してまいります。
 加えて、従来から行っておりますPR活動につきましても、ラッピングバスや繁華街でのパレードなど、なお一層目立つPRを行ってまいります。
 こうした取り組みによりまして、これまでオリンピック、パラリンピックに関心の薄かった層の共感を広げてまいりますとともに、支持をいただいている層にも一層強い賛同を得られるようにして、支持率全体の向上を図ってまいります。
 先般、国からの閣議了解、地方六団体からの招致支援決議をいただきました。これらを弾みに、全力で都民、国民の支持拡大に努めてまいります。



質問2
 国や地方六団体の力強い支持表明はありましたが、都民の盛り上がりを図っていくためには、都と区市町村の緊密な連携、そして区市町村の積極的な参加が必要です。都内の区市町村では、直近の定例会でも二区市が決議し、都内六十二の自治体のうち五十一団体となり、さらに数団体で協議中です。
 一方で、競技会場などのある区市町村と、そうでないところとでは、参加意識の高さに差があるのが現状です。こうした状況も踏まえ、すべての区市町村の参加意識をどのように高めていくのか、具体的な方策について伺います。

答弁2
 ▼東京オリンピック招致本部長
 区市町村の参加意識を高める方策についてでございます。
 これまで、区長会、市長会、町村会、そして大部分の区市町村議会から招致決議をいただくなど、多くの賛同を得てまいりましたが、競技会場等の配置が予定されていない地域では、オリンピック、パラリンピックの参加意識が醸成されにくいなどの意見もございました。
 しかし、招致活動を勝ち抜くためには、IOCから高く評価される開催計画を策定していく必要があり、これまでの開催都市の例を見ましても、競技会場等につきましては、選手村から近いといったコンパクトな配置が必須条件でございます。
 このため、競技会場等が配置されない地域が生じることについてのご理解をお願いするとともに、こうした地域におきましても、練習会場等の配置や競技運営面での参加、海外からの選手、観客との交流、文化プログラムの実施、そして、これらを通じました子どもや青少年の情操の育成などを行うことによりまして、オリンピック、パラリンピックの開催が大きな意義を持つことをご理解いただきたいと考えております。
 来月一日には、都と区市町村及び東京オリンピック招致委員会の部課長級の職員をメンバーとする都・区市町村連絡協議会を設置しまして、実務レベルにおいて、共同してオリンピック、パラリンピックへの具体的な参加方法を検討してまいります。



質問3
 去る九月十四日に、二〇一六年オリンピック申請都市が発表されました。シカゴ、リオデジャネイロ、マドリード、ドーハ、バクー、プラハといったそれぞれの国を代表する強豪都市を相手に、まずは来年六月に立候補都市として勝ち残らなければなりません。これらの都市に勝ち抜くためには、世論の盛り上がりもさることながら、IOCに高く評価される申請ファイルの提案が必要であります。
 ファイル策定に当たっては、判定者であるIOCが何を重視しているのか正しく認識しておく必要があります。都はどのような分析を行い、ファイルの策定を進めているのか伺います。

答弁3
 ▼東京オリンピック招致本部長
 申請ファイルの作成についてでございますが、来年一月提出の申請ファイルは、施設面、運営面にわたって二十五の基本的な項目について記載が求められております。
 IOCが立候補都市を選定するに際しまして、これらの項目ごとにウエートをつけて評価を行います。二〇一四年の冬季大会の例を見ますと、評価ウエートが高いのは、道路や交通機関等の輸送インフラ、宿泊施設の部屋数や質的内容、コンパクトな競技会場の配置、セキュリティー対策などでございます。
 今回の申請ファイルの作成に当たりましては、二十五項目いずれも十分な検討が必要でございますが、評価ウエートの高い項目につきましては特に重点を置いて検討を進め、IOCから高い評価が得られるようにしてまいります。



質問4
 オリンピック招致は、国際都市間の熾烈な競争であり、勝者の方程式など存在しません。質の高い計画をつくり、国を挙げての綿密な戦略のもと、正々堂々と戦っていくことが必要であります。戦いの相手が決まった今、熾烈な招致競争に勝ち抜いていく知事の決意を伺います。

答弁4
 ▼知事
 オリンピック招致についてでありますが、今月十四日に立候補申請都市の顔が出そろい、戦いの火ぶたが切って落とされました。いずれの都市も各国を代表する強豪都市でありまして、勝ち抜いていくのはなかなか大変なことだと思います。
 それにしても、ちょっと国の反応は鈍くて、とりあえず閣議了解を得ましたが、ほかの外国の都市に勝つためには、国にもっと世論喚起、財政支援、外交戦略など、あらゆる面で本腰を入れてもらうことが絶対に必要だと思っております。
 これから展開されますIOCの中での競争は、仄聞しますと、新しいロゲ会長が、その競争についていろいろ規制をし、大分合理化されたと聞いておりますが、しかしなお、仄聞しますと、不透明な部分が多うございまして、なかなか厄介な戦ではあるという気がいたします。
 新しい首相にも全面的な協力を求めて、国と一体となって招致活動を展開し、オリンピック、パラリンピックの実現に向けて全力を尽くしていきたいと思っております。



質問5
 こうしたオリンピック招致機運の盛り上げを絶好の機会ととらえ、都民がスポーツに親しむ機会を拡大し、スポーツ実践層のすそ野を広げることが、健康の増進や地域の活性化の視点から必要であります。また、子どもたちに夢を与え、スポーツへのあこがれを醸成する意味からも、トップアスリートの育成を通じて競技力の向上を目指すことも重要です。
 この夏、アジア十二都市の選手が東京に集って行われた二〇〇七ジュニアスポーツアジア交流大会では、連日の猛暑の中、将来、オリンピックでの活躍を夢に抱くジュニア選手たちが、バドミントンの交流試合に取り組みました。その結果、競技力の向上のみならず、国を超えた相互理解を深め、精神的にも大きな成長をもたらしたと聞いています。スポーツを通じたアジアの次世代育成に大いに貢献するものであります。
 このように、すばらしいスポーツイベントを通じてスポーツの意義や楽しさを広く都民に伝えることは、スポーツムーブメントの醸成に大きな意義があります。都は、テレビ番組などさまざまなメディアを活用して、積極的にスポーツ情報を発信していくべきであります。
 我が党は、第二回定例会で、まさにオリンピック招致都市にふさわしいスポーツ都市東京の実現に向け、スポーツ振興戦略の早急な策定を提案したところであります。都は、新たなスポーツ振興の戦略の策定に当たって、スポーツ人口の拡大を目指し、率先してその役割を果たすべきと考えます。
 この点も含め、今後、どのように施策の展開を図っていくのか伺います。

答弁5
 ▼生活文化スポーツ局長
 スポーツ振興策の展開についてでありますが、これまで都では、競技レベルに応じたさまざまなスポーツ大会やスポーツイベントを開催することにより、都民のだれもが身近でスポーツを楽しむことができる機会の拡大に努めてまいりました。
 今後は、地域におけるスポーツ活動への支援や国際交流事業の一層の充実を初め、ご提案のスポーツ情報の発信についても積極的に取り組むとともに、さらに、都民がスポーツに親しむことができる環境づくりを通じてスポーツ人口の拡大を図ってまいります。
 こうした取り組みを含め、オリンピック招致都市にふさわしい新たなスポーツ振興戦略の策定に向けて幅広くご意見を伺うため、十月にスポーツ振興審議会を立ち上げることといたしました。
 審議会での検討を踏まえ、「十年後の東京」の実現につながる総合的なスポーツ振興策の展開について道筋を示していきたいと存じます。

コメント
 ところで、東京オリンピックの三年前の平成二十五年には、五十四年ぶりに東京国体が開催されます。東京国体は、多摩・島しょ地域にとって、地域の魅力を全国に発信するとともに、産業や経済の活性化を呼び起こす起爆剤として大きな期待が寄せられています。また、三年後の東京オリンピックを成功させるためには、東京国体をぜひとも成功させなくてはなりません。
 去る七月九日には東京国体の準備委員会が発足しましたが、東京オリンピックやパラリンピックの招致機運を盛り上げていくためにも、また、多摩・島しょ地域の熱い期待にこたえるためにも、今まで以上に東京国体の準備活動に全力を尽くしていただくよう知事に強く要望し、次の質問に移ります。

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■環境対策

質問1
 環境対策について伺います。
 まず、地球温暖化がもたらす気候変動の問題について伺います。
 このたび、都は、六月に策定した東京都気候変動対策方針に基づく具体的な取り組みの第一弾として、中小企業を対象とした環境CBOの創設を明らかにしました。中小企業のCO2排出量は都内の排出量の約二割を占めており、この削減策、すなわち中小企業の省エネの推進は極めて重要な課題です。省エネは、光熱水費の節減につながるメリットがありますが、中小企業はそもそも省エネ促進に関するノウハウや設備投資の資金が不足していることから、全体として取り組みがおくれております。
 こうした状況の中で、都が環境CBOを創設することは大いに意義あることであり、今後とも積極的に中小企業の気候変動対策を進めていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。

答弁1
 ▼知事
 中小企業の気候変動対策についてでありますが、地球温暖化がもたらす気候変動の危機は、今やもう現実のものでありまして、これを回避するためには、CO2の劇的な排出削減、これは主に節電その他の方法でございますけれども、それを進めることが重要であります。中でも、中小企業の省エネ促進について、企業の自主努力のみならず、積極的な行政の誘導が必要であると思っております。
 今回の環境CBOは、CO2の削減に向けた事業者の取り組みを引き出すために、環境対策に積極的な中小企業を金融面から支援するものであります。
 こうした新しい資金援助のスキームを先導的に実施していくことなどによりまして、地球温暖化対策推進に向けた広範なムーブメントを醸成し、日本の気候変動対策をリードしていきたいと思っております。



質問2
 さらに、同方針では、自動車交通における取り組みも不可欠であると述べられております。自動車からのCO2排出量は都内の排出量の約二割を占めており、その削減は極めて重要かつ急務となっています。自動車交通に起因するCO2の削減を進めていくためには、自動車の環境性能の向上などさまざまな対応が求められています。
 中でも、急な加減速やアイドリングなどを行わない運転方法であるエコドライブは、だれもが手軽に実践でき、速やかにCO2を削減できる効果的な取り組みです。しかしながら、エコドライブは、都内車両の大部分を占める小規模事業者やマイカー保有者では取り組みがおくれている状況にあります。
 そこで、事業者や都民に幅広く普及啓発を行うとともに、エコドライブを社会に定着させるような仕組みの構築を急ぐべきだと考えますが、所見を伺います。

答弁2
 ▼環境局長
 エコドライブを定着させる仕組みについてでありますが、エコドライブは、自動車から排出されるCO2の削減などで環境面に寄与するだけでなく、燃費節約や事故防止の面でも大きな効果が期待できる取り組みでございます。
 しかし、マイカー利用者には、エコドライブをするための具体的な運転方法やその効果が十分に浸透しておりません。また、小規模な事業者では、エコドライブを組織的に推進するための仕組みの整備や、CO2の削減にも有効なドライブレコーダー等の機器の導入が進んでいない状況にございます。
 こうした点を踏まえ、都は、今後、エコドライブの具体的な手法や効果について、講習会などさまざまな機会を活用し、都民に幅広く普及啓発を行ってまいります。
 また、事業者が継続的かつ確実にエコドライブを推進することができるよう、指導体制等の構築や機器の導入に向けた支援など新たな取り組みを展開し、エコドライブが社会に広く定着するよう努めてまいります。



質問3
 次に、太陽光発電の普及について伺います。
 家庭のCO2排出量は都内の排出量の約四分の一を占めており、「十年後の東京」でも、太陽エネルギー利用を百万キロワット相当に拡大すると数値目標を設け、住宅などへの太陽光発電の普及促進が示されています。ところが、国は、市場が自立したという判断で補助を打ち切り、そのため、我が国の太陽光発電の普及は減速するに至りました。
 一方、ドイツは、国家的な電力の買い取り制度の実施により、日本を追い抜いて世界一の太陽光発電国になっております。太陽光発電を自宅に設置する都民の経済的負担は大きく、このまま都民の志に任せていても、飛躍的な普及は期待できません。
 家庭からのCO2削減を本格化するためには、都は、国を待つことなく、太陽エネルギーの導入促進策の構築を急ぐべきと考えますが、見解を伺います。

答弁3
 ▼環境局長
 太陽エネルギーの導入促進策についてでありますが、太陽エネルギーの利用は、住宅の省エネルギー化と相まって、家庭におけるCO2排出を大幅に削減する重要な手段であり、都は、「十年後の東京」で掲げた目標の実現に向け、気候変動対策方針においても太陽エネルギーの飛躍的な普及拡大を位置づけております。
 このため、現在、住宅・設備機器メーカー、電気・ガス事業者、学識経験者などから成る検討会を設置し、普及策を検討しておりますが、この検討会では、都民の費用負担低減の取り組みを含め、太陽光発電利用を進める仕組みづくりの必要性が指摘されております。
 ご指摘のとおり、国が太陽光発電補助を打ち切った以降、普及が減速しているにもかかわらず、何ら抜本的な対策に着手していない中で、今後、都は、検討会の結果も踏まえ、太陽エネルギーの導入を促進する具体的な方策を早急に取りまとめてまいります。



質問4
 次に、新たな緑施策について伺います。
 六月に策定された緑の東京十年プロジェクト基本方針においては、緑の再生を目指す取り組みの一つとして、新たな緑の募金制度の創設が示されています。この具体化として、このたび、七月にスタートした海の森募金を拡大した緑の東京募金の設置が打ち出されました。我が党は、この募金を、都が都民、企業と協働する有効な取り組みとして期待を持っております。緑の東京募金を創設するに当たり、改めて知事にこの募金の意義を伺います。

答弁4
 ▼知事
 緑の東京募金の意義についてでありますが、緑あふれる東京の再生は、「十年後の東京」の具体化に向けた極めて重要な課題であります。
 都民、国民の幅広い参加を得て、緑を植え、育て、守る運動につなげていくために、七月に海の森募金を先行して開始いたしました。さらに、東京の緑化をより一層広範かつ強力に進めるため、海の森の整備にとどまらず、街路樹の倍増や校庭の芝生化、スギ花粉発生源対策に募金の対象を拡大して、緑の東京募金を創設することといたしました。
 こうした募金の活用などによりまして、従来の行政の枠を超えた新しい発想で、広く緑のムーブメントを巻き起こしていきたいと思っております。
 この募金の趣旨に都民を初め多くの方々からのご賛同をいただきたいと念願しておりますが、既に幾つかの公園で設置しました、都民からの寄附金によります思い出ベンチは非常に成功をおさめまして、他の都民の方々にも非常に感謝されておりますが、そういったぐあいにこれが展開すればと願っております。



質問5
 また、新たな緑の東京募金については、その意義に加え、募金活動の具体的な進め方においても幅広い都民の賛同を得ることが何より大事だと考えます。そのために、具体的にどのような取り組みを進めようとしているのか伺います。
 我が党は、都が石原知事を先頭に、これまで以上に先駆的な環境対策に取り組み、日本の気候変動対策をリードしていくとともに、東京オリンピックを環境オリンピックとして世界にアピールしていくことを期待しています。

答弁5
 ▼環境局長
 緑の東京募金の具体的な進め方についてでありますが、ご指摘のとおり、募金を進めるに当たりましては、幅広い都民の皆様の賛同を得ることが重要でございます。
 このため、海の森の整備、街路樹の倍増、スギ花粉発生源対策及び校庭芝生化という、募金を活用して推進する緑化事業の内容を明示するとともに、これらの中から募金の対象事業を選択できるようにするなど、寄附される方の理解が得られるような仕組みを工夫してまいります。
 また、寄附を全額損金算入できるという法人税法上の優遇制度を活用し、企業からも賛同を得やすくしてまいります。
 さらに、できるだけ広範な都民や企業に協力していただけるよう、募金による事業成果を幅広くお知らせするなど、わかりやすい仕組みづくりに努めてまいります。

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■まちづくり

質問1
 次に、羽田空港の国際化について伺います。
 知事は、首都圏の喫緊の課題として羽田空港の再拡張、国際化の推進を、これまでも国に対して強く働きかけてきました。その結果、多くの困難な課題もありましたが、知事を初め関係者の並々ならぬご努力が実を結び、本年三月に、四本目となるD滑走路の工事がようやく着工の運びとなりました。今後は、我が国の国際競争力をより強化するためにも、三年後の平成二十二年十月の供用開始を目指し、着実にD滑走路の整備を進めていただきたいと願っております。
 国において、民間を含めた幅広く活発な議論が行われ、本年五月には、アジア・ゲートウェイ戦略会議においてアジア・ゲートウェイ構想を示し、羽田空港のさらなる国際化、大都市圏国際空港の二十四時間化など、航空自由化に向けた航空政策の転換を図る具体的な施策を提案しました。
 また、六月には、経済財政改革の基本方針二〇〇七が閣議決定され、その中でも、オープンな国づくりに向けてアジア・ゲートウェイ構想を推進するため、羽田空港のさらなる国際化が盛り込まれています。
 知事は、第一回定例会の我が党の一般質問において、再拡張後の羽田空港の国際化に向けた強い決意を述べられました。この間、今述べたように、国などで航空自由化に向けた新たな動きが展開されておりますが、羽田空港の再拡張、国際化について事あるごとに国に働きかけてきた知事の所見を伺います。

答弁1
 ▼知事
 羽田空港の再拡張、国際化についてでありますが、首都圏全体の空港機能を飛躍的に高める羽田空港の再拡張、国際化は、我が国の経済を活性化し、国際競争力を強化する極めて重要な国家的プロジェクトであります。
 今回、国が取りまとめたアジア・ゲートウェイ構想は、航空自由化に向けた航空政策の転換を目指すものと評価はできますが、再拡張後の羽田に就航させる国際線については、いまだ上海程度の近距離路線にこだわっておりまして、これはもう論外で、全く不十分であると私は思っております。
 羽田の国際線が、都心に近接する利便性を生かして、とにかく羽田から、深夜ならばダウンタウンまで車で二十分足らずで行くわけでありますから、こういう近接の利便性を生かしまして、需要の多い東南アジアの主要都市にまで足を伸ばすのは当然のことであると思います。
 国際都市東京が真にアジアのゲートウェイとなるためにも、再拡張後の空港機能を十分に生かして、活用して羽田の国際化を進めるように、引き続き国に積極的に働きかけてまいります。
 アメリカを初めいろいろな外国から、日本の空を開いてくれと、オープンスカイという要望が非常に強くございますが、これは日本の空全体をあけることじゃなしに、これだけいろんな機能が集中し、集積した、世界の経済の大きな拠点でもあります首都圏の空をあけることこそが肝要だと私は認識しております。



質問2
 次に、道路の整備や高速道路の利活用に向けた財源確保について伺います。
 都内の自動車の混雑時の速度は、区部では時速約十八キロと、全国平均の約三十五キロより著しく遅く、慢性的な交通渋滞が生じております。このことが都市機能の停滞や都市環境の悪化を招くなど、東京の最大の弱点となっています。
 加えて、首都圏の高速道路では、事業主体や料金圏が異なることで生じる割高感が顕在化しており、現在の料金体系のままでは高速道路ネットワークが十全に機能せず、非効率な利用形態となってしまうことは明らかです。
 人、物及び情報が高度に集積している東京が、これからも日本の首都として日本経済の全体の牽引役を果たしていくためにも、首都圏の道路ネットワークの整備は不可欠です。一方、現在、国は、昨年十二月に閣議決定された道路特定財源見直しに関する具体策を受け、今後の具体的な道路整備の姿や既存高速道路ネットワークの効率的な活用などを示した中期計画を作成しているところです。
 このような状況の中で、道路特定財源は、三環状道路などの幹線道路ネットワークの整備のみならず、高速道路の有効利用のためにも積極的に活用されるべきと考えますが、知事の所見を伺います。

答弁2
 ▼知事
 道路特定財源についてでありますが、首都東京が持っている力を十全に発揮するには、三環状道路を初め幹線道路ネットワークや連続立体交差などの早期整備が必要でありまして、そのためには道路特定財源の確保が不可欠であります。
 加えて、首都圏の高速道路において、環状道路の利用促進や長距離利用車の負担軽減、会社間の乗り継ぎ割引など、高速道路網が最大限に利活用される料金政策を導入することが必要でありまして、道路特定財源を活用し、これを国策として実施していくことが必要であると思います。
 これらを、現在、国が策定中の中期計画に明確に位置づけるとともに、道路特定財源を本来の目的であります道路整備や関係施策に集中的に投入するよう、国に強く求めてまいります。
 たまたま昨日、国交省の幹部たちと懇談しましたが、東京のオファーについてはすべて彼らも同意でありまして、これからそれを積極的に進めたいと思っております。



質問3
 次に、首都高速道路中央環状線の機能強化について伺います。
 三環状道路の一番内側の中央環状線には、都心部に集中する交通を分散し、渋滞が大きく減少する効果が期待されています。
 しかし、中央環状線には、堀切、小菅ジャンクション付近など、放射方向の路線と分合流する区間があり、そこを中心に渋滞が発生しやすい構造となっています。こうしたことから、中央環状線が全線整備されても、道路ネットワークとしての機能が十分に発揮されないことが懸念されます。
 このため、中央環状線の既に完成している区間についても、今のうちから渋滞の解消に向けた機能強化策を講じていく必要があると考えますが、今後の都の取り組みについて伺います。

答弁3
 ▼都市整備局長
 首都高速中央環状線についてでございますが、現在、平成二十五年度の全線完成を目指し、整備を進めております。
 中央環状線の道路ネットワークとしての機能を十分に発揮させるためには、既に供用している区間においてもボトルネックとなる箇所の拡幅など、局所的な対策について、全線完成を見据えて取り組んでいくことが必要でございます。
 このため、都は、六号線と分合流する堀切・小菅ジャンクション付近及び五号線と分合流する板橋・熊野町ジャンクション付近の拡幅について、近く地元説明会を実施し、本年度内の都市計画決定を目指してまいります。
 また、交通の迂回、分散を図るため、小松川付近において、七号線の郊外方向と中央環状線の北方向とを結ぶ連絡路の新設について、早期具体化に向けて関係機関との協議を進めてまいります。



質問4
 次に、外環道について伺います。
 外環については、本年四月に大深度地下方式に都市計画が変更され、いよいよ事業実施段階を迎えることとなりました。外環の早期事業着手を国に働きかける一方で、インターチェンジ周辺のまちづくりなど、外環整備に伴う地域の課題に都は今後どのように対応していくのか、伺います。

答弁4
 ▼都市整備局長
 外環整備に伴う地域の課題への対応についてでございます。
 外環につきましては、都市計画変更が完了し、事業実施段階に移行することを踏まえ、今後、まちづくりなど沿線地域の諸課題に取り組んでいくことが重要でございます。
 これまでも、都は、中央道ジャンクション付近や上石神井地区などにおきまして、地元区市の行うまちづくりの検討に参画してまいりました。
 今後は、代替農地の確保策や地域分断対策等、まちづくりにおける具体的な課題について、国や沿線区市と連携し、地域ごとに住民と話し合う場を設けるなどして、解決に向けて積極的に取り組んでまいります。



質問5
 また、地下方式に都市計画変更された外環の地上部には、従前より地上部街路の外環ノ2が計画されています。この地上部街路についてはさまざまな意見があると聞いていますが、今後の取り扱いについて都の所見を伺います。

答弁5
 ▼都市整備局長
 外環の地上部街路の今後の取り扱いについてでございます。
 本道路は、目白通りから東八道路までの外環ルート上の地上部に計画決定されている幅員四十メートルの道路であり、東京の都市計画道路ネットワークの一部を担うものでございます。
 この道路につきましては、都はこれまで、現計画の幅員を維持する案、幅員を縮小する案、計画を廃止する案の三つの考え方を示してまいりました。
 今後は、さらに、環境、防災、地域の交通ネットワーク等の観点を踏まえまして、この道路の必要性や整備のあり方等を早期に地元に示し、広く意見を聞いた上で都としての方針を取りまとめてまいります。



質問6
 次に、都内の鉄道計画について伺います。
 「十年後の東京」における成熟した都市東京の実現には、先ほど述べた三環状を初めとする道路整備に加え、鉄道の利便性をさらに向上させていくことも重要であります。
 東京圏の鉄道計画は、平成十二年の運輸政策審議会答申第十八号に基づき整備を進めることとされています。この答申から既に七年が過ぎ、目標年次とする平成二十七年に向け、折り返し地点に差しかかっています。
 これまでに、目標年次までに開業することが適当とされた路線は、つくばエクスプレスなど、その整備が着実に進められています。
 しかし、目標年次までに整備着手することが適当とされた路線はすべて未着手であり、今後はこれらの路線について具体化を図っていくことが必要であります。
 鉄道の整備は、鉄道事業者が主体的に実施することが基本ですが、都としても、実現に向けて関係機関に働きかけるとともに、みずから実現の可能性を検討することも必要と考えます。
 そこで、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた未整備の鉄道路線に対する今後の都の取り組みについて伺います。

答弁6
 ▼都市整備局長
 未整備の鉄道路線に対する取り組みについてでございます。
 都は、鉄道事業者とともに、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられた路線の実現に順次取り組み、平成二十七年までに開業することが適当とされた十六路線のうち十五路線は、既に開業もしくは事業中でありまして、残り一路線も事業着手に向け手続中でございます。
 また、平成二十七年までに整備着手することが適当とされた路線については、すべて未着手でございまして、事業主体や採算性などの課題解決に向けた取り組みが必要であると認識しております。
 都といたしましては、公共交通ネットワークのさらなる強化に向け、将来の輸送需要の動向などを見据えながら、これらの未着手路線などの整備について、国や関係自治体、鉄道事業者とともに検討してまいります。



質問7
 次に、連続立体交差事業について伺います。
 知事は、鉄道の連続立体交差事業について、第一回定例会の施政方針で、今後十年間に事業中の八路線十カ所の立体化を完了させると表明されました。
 この中で、JR中央線連続立体交差事業については、本年七月一日に三鷹駅から国分寺駅間における下り線高架切りかえが行われました。これは長年、踏切の存在によって不便を強いられてきた都民にとって大きな喜びであります。
 そこで、このJR中央線の高架切りかえによる効果と、今後の事業スケジュールについて伺います。

答弁7
 ▼建設局長
 JR中央線の高架切りかえによる効果と今後の事業スケジュールについてでありますが、連続立体交差事業は、交通渋滞や地域分断を解消し、地域の活性化にも資する極めて重要な事業であり、現在、八路線十カ所で事業を進めております。
 JR中央線では、本年七月、三鷹駅から国分寺駅間の下り線を高架化したことにより、十三カ所の踏切の遮断時間が平均で約四割減少し、また、このうち六カ所で、ピーク時一時間当たり四十分以上遮断されている、いわゆるあかずの踏切状態が解消されました。さらに、小金井街道では、踏切遮断による最大渋滞長が約四割減少するなど、高い効果が得られております。
 また、今後の事業スケジュールですが、西国分寺駅から立川駅間の下り線を平成二十年度末に高架化する予定であります。また、上り線については、三鷹駅から国分寺駅間を平成二十一年度末に、西国分寺駅から立川駅間を平成二十二年度末に高架化し、十八カ所すべての踏切を除却する予定でございます。



質問8
 また、都は、新規事業化に向け、踏切対策基本方針における鉄道立体化の検討対象区間となっている二十区間について、道路ネットワークの形成やまちづくりへの寄与などの事業効果を調査していると聞いています。
 連続立体交差事業は、交通渋滞の解消に加えて、道路と鉄道双方の安全性の向上や、まちづくりにも資するものであります。
 都民が安心して暮らせる快適な東京を早期に実現するために、新たな区間を積極的に事業化していくべきであると考えます。
 そこで、今後の連続立体交差事業の新規事業化に向けた取り組みについて伺います。

答弁8
 ▼建設局長
 連続立体交差事業の新規事業化に向けた取り組みについてでありますが、このたび、踏切対策基本方針における鉄道立体化の検討対象区間二十区間のうち、骨格幹線道路と交差し、まちづくりへの取り組みの熟度も高い、京王京王線の代田橋駅から八幡山駅間と西武新宿線の中井駅から野方駅間について、新規着工準備採択を国に要望いたしました。
 都は、この二区間の事業化に向けて、今年度、構造形式の検討などに着手いたします。
 また、二区間以外についても、引き続き事業効果等の調査を進め、事業中箇所の進捗状況などを踏まえながら、事業化へ向けて積極的に取り組んでまいります。
 今後とも、必要な財源の確保に努めるとともに、沿線区市、鉄道事業者など関係者間の連携を強化し、連続立体交差事業を一層推進してまいります。



質問9
 次に、多摩都市モノレールへの経営支援について伺います。
 多摩都市モノレールは、多摩の南北交通の軸であり、平成十年の開業以来、地域間の人的交流や沿線地域の発展など、多摩の自立的都市圏の形成に重要な役割を果たしてきました。
 乗客数の増加やモノレール会社の経費削減により、平成十六年度以降は継続して営業黒字を達成しているにもかかわらず、他の三セクとの整備スキームの違いにより、初期投資が重くなったことなどから、会社が苦しい経営状況に陥っていることに対し、我が党は、これまで支援の必要性を訴えてきました。
 そんな矢先、先日、一部のマスコミにより、多摩都市モノレール支援の内容が伝えられました。報道としてはやや時期尚早な感も否めませんが、市や金融機関とともに、会社に対する抜本的な支援を都が行うべきという我が党の主張について、改めて強く実現を求めます。
 多摩都市モノレールは、今では東京モノレールに次ぐ全国二位の乗客数を誇っています。こうした会社について、安全な運行を確保するためにも、経営の安定化が不可欠です。
 そこで、多摩都市モノレールに関する今後の支援について、知事の所見を伺います。

答弁9
 ▼知事
 多摩都市モノレールへの支援でありますが、多摩都市モノレールは、一日十一万人が利用する、多摩の南北を結ぶ広域的な公共交通機関として大きな大きな役割を担っております。
 会社は既に営業黒字となっておりますが、他の軌道系三セクと異なりまして、車両基地用地の取得にお金がかかりまして、会社の負担となったことなどから、結果として厳しい経営状況にあります。
 このため、都は、会社のさらなる経営努力を前提に、新たな出資などによる抜本的な支援を実施してまいります。
 今後とも、沿線市及び金融機関と連携しながら、将来に向けて経営基盤を確固たるものとして、多摩都市モノレールの安定的な運行を確保していきたいと思っております。



質問10
 次に、都営地下鉄駅におけるホームからの転落防止対策について伺います。
 鉄道駅では、ホームさくの設置を初めとするホームからの転落防止対策をより一層講じるなど、すべての駅の安全対策を向上することにより、だれもが不自由なくまち歩きを楽しめる東京を目指していくことが必要です。しかしながら、ホームさくの設置については、新設の路線以外には大きな進展が見られないのが現状です。
 東京のすべての鉄道駅でのホームからの転落防止対策を加速化するには、都内でいち早く三田線に導入した都交通局の果たす先導的役割は大きいものと考えます。
 そこで、他の都営地下鉄路線においてもホームからの転落防止対策を積極的に推進すべきと考えますが、所見を伺います。

答弁10
 ▼交通局長
 都営地下鉄駅におけるホームからの転落防止対策についてであります。
 交通事業者にとりまして、お客様の安全・安心の確保は最大の使命であり、ホームからの転落防止対策を強化していくことは極めて重要であると認識しております。
 このため、「十年後の東京」も踏まえ、現在、総合的な検討を進めておりますが、転落防止対策としては、ホームさくの設置が最も有効な方策であると考えております。
 都交通局は、平成十二年に、営業中の路線として全国で初めて三田線にホームさくを設置いたしましたが、引き続き大江戸線への導入に向けまして、早急にホームさくの整備計画を策定してまいります。



質問11
 次に、東京港のあり方について伺います。
 我が国は、国際貿易によって大きく経済発展してきました。四方を海に囲まれた我が国にとって、その主役は港湾であり、今後もその役割は変わらないでありましょう。しかしながら、中国を初めとするアジア諸国の急速な経済拡大を背景として、シンガポール、上海、釜山といったアジア諸港は大規模な整備を進め、巨大コンテナ船による国際航路を次々と開設する一方、低廉な価格設定等で貨物取扱量を大きく伸ばしてきています。
 その結果、我が国港湾の相対的地位は大きく低下し、我が国経済への打撃も大変危惧されている状況にあります。国においても、スーパー中枢港湾等の取り組みも進めていますが、なかなか目に見えた効果というものがあらわれてきません。
 このような中、東京港においても、港湾計画に基づき、国際競争力強化に向けて取り組んでいることは承知していますが、企業活動のグローバル化に伴う物流構造の変化など、東京港を取り巻く急速な環境変化を踏まえ、新たな経営戦略を策定することが必要と考えます。知事の見解を伺います。

答弁11
 ▼知事
 港湾経営戦略の策定についてでありますが、世界最大規模の経済圏を背景に持ちます東京港は、北米、欧州、アジアの三地域を機軸とする国際海上物流の大動脈において、貨物集積の重要な拠点であるとともに、日本経済を牽引する原動力としての役割を果たしております。
 ただ、一方、躍進するアジアの主要港湾と比べますと、港湾の水深が浅かったり、今以上の大きなコンテナ船の発着が非常に不可能に近くなりまして、こういった大型化するコンテナ船への対応のおくれや、割高のコスト、長いリードタイムなど、日本の港湾は大きく立ちおくれておりまして、このままでは国際基幹航路の日本への寄港がますます減少し、将来に禍根を残すことになると思います。
 ちなみに、世界の主要港湾になりましたシンガポールなどは、あそこで運用されているソフトもハードも全部日本製でありますが、日本は日本なりの独特の事情がありまして、なかなかこういった合理的な施設を運用することができないといううらみがあるのが現実であります。
 東京港の国際競争力強化は喫緊の課題でありまして、その実現に向けては、港湾施設の充実を図るとともに、内陸部も包括した物流体系を視野に入れまして、横浜港などと連携した、東京湾全体の総合力を高めるような、戦略的な港湾経営を進めていくことが肝要であると思っております。
 このため、これまでの計画や施策の有効性を検証しつつ、今後十年程度を想定した経営戦略を早急に検討したいと思っております。



質問12
 また、戦略的に港湾経営を進めるには、厳しい国際競争にさらされている東京港の現実を直視した上で、荷主など利用者の多様なニーズに十分耳を傾けるとともに、港の特性を踏まえた施策の展開が必要と考えます。
 今後、東京港の課題として具体的にどのようなものがあるのか、また、その取り組みの方向性についてどのように考えているのか伺います。

答弁12
 ▼港湾局長
 今後の東京港の課題と取り組みの方向性についてでございます。
 東京港の貨物取扱量は、アジア貨物の急増によりまして引き続き増加しているものの、その増加率は平成十五年をピークに鈍化しております。これは、ヤード不足や背後道路の渋滞など、施設の対応能力が限界に近づきつつあることが要因でございます。
 また、ソフト面の課題としては、物流構造の変化が急速に進む中、一層のコスト低減と物流効率化が求められておりますが、世界の主要港湾に比べると、まだその対応が不十分であることが挙げられます。
 このため、東京湾全体を視野に置きながら、ハード面では、今後、中央防波堤外側地区に新たなふ頭を整備するとともに、背後用地等の充実、道路ネットワークの構築などに努めまして、大井、青海とあわせて大型コンテナ船にも対応可能な外貿コンテナふ頭の三極体制の構築を図ってまいります。ソフト面では、今後五年を目標に一層の物流効率化のための取り組みを目指し、官民一体となって新アクションプランの改定作業に今年度より着手いたします。
 また、東京港埠頭公社の民営化を機に、貸付料の弾力化や、公共ふ頭を含めた外貿コンテナふ頭の管理一元化に取り組んでまいります。
 こうした取り組みに当たりましては、国、関係各港及び港湾事業者等に対して幅広く必要な働きかけを行ってまいります。



質問13
 ところで、東京港を中心とする臨海部は、物流機能を担う一大拠点であるだけでなく、憩いと安らぎを与える水辺と緑や、人々を魅了するすばらしい都市景観という豊かな観光資源を有しています。
 特に、臨海副都心は、都心からのアクセスも充実し、身近な水辺空間である海上公園、イベントやショッピングが楽しめる商業施設が立地するなど、まさに国内外の観光客を呼び寄せるのにふさわしいまちへと成長してきており、昨年は過去最高の四千二百八十万人の来訪者があったと聞いています。
 現在以上に、一年を通じて若い世代からシニア世代までさまざまな人々を引きつけ、常に新鮮な驚きと満足感を得られる魅力を備えたにぎわいあふれるまちにしていくために、臨海副都心の観光振興にどのように取り組んでいくのか伺います。

答弁13
 ▼港湾局長
 臨海副都心の観光振興の取り組みについてでございます。
 臨海副都心は、テレビ局や大型ショールーム、テーマパーク型施設など、魅力ある多くの施設が進出するとともに、水辺やプロムナードを活用したスポーツ大会や文化的イベントが数多く開催され、国内有数の観光スポットとして大きなにぎわいを見せております。
 こうした臨海副都心のにぎわいをより一層高め、さらなる観光振興を進めるには、海辺と潮風にあふれたリゾート性、最先端技術と情報の発信基地を持つ先進性、美しい夜景やエンターテインメントなどの文化性など多様なポテンシャルを生かし、若者から高齢者まで幅広い来訪者が躍動感と非日常性を体感できるような観光まちづくりを目指してまいります。
 このため、今後、開発の中心となる青海地区北側において、事業者の創造性や企画力あふれる、他の地域にはないオンリーワン施設を誘致するとともに、地域の観光の担い手でございますまちづくり協議会の体制強化を支援してまいります。
 また、観光振興とにぎわい創出を経営の柱の一つに位置づけた臨海ホールディングスグループと連携し、地域の観光振興に積極的に取り組んでまいります。

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■産業振興

質問1
 次に、産業振興について伺います。
 先般、産業技術センターの独立行政法人化後初めての業務実績評価結果が公表されました。同センターにおいては、独立行政法人のメリットである柔軟性や機動性を生かし、中小企業の要望に応じた製品試験やセミナーの開催、国などの外部の資金を活用した研究の拡充など、中小企業に対する技術支援を着実に実施しています。
 こうした中小企業の視点に立ったきめ細かな支援は、産業技術の高度化に伴いますます重要となることから、今後もセンターの技術支援機能を高め、さらなるサービスの充実が必要であります。加えて、環境、健康など広く社会が抱える課題を産業技術の力で克服することも重要な視点です。
 東京の中小企業の中には、独自の技術、高度な技術を有する企業も多数存在しており、センターには、こうした中小企業への技術支援を積極的に行うことにより社会的課題の解決に寄与することも求められています。
 産業技術研究センターが果たすべき役割は極めて大きいと考えますが、今後、中小企業に対する支援策をどのように充実させていくのか、所見を伺います。

答弁1
 ▼産業労働局長
 産業技術研究センターについてでございますが、同センターは、機器利用サービスや技術相談におきまして中期計画の目標を上回る実績を上げるなど、中小企業の技術力の向上に向け着実な成果を上げております。
 こうした技術支援に加えまして、環境、健康、安全など社会的課題の解決はビジネスチャンスの拡大にもつながることから、現在、大気汚染の発生源の一つであります揮発性有機化合物、いわゆるVOCの処理技術の開発に中小企業と共同で取り組んでいるところでございます。
 今後は、社会的課題への対応などを考慮した幅広い視点から、これまで以上に技術支援の充実を図ってまいります。



質問2
 また、都は、産業支援体制を整備し、平成二十一年度には多摩に、平成二十三年度には区部に、新たな産業支援拠点をそれぞれ開設する予定とのことです。
 「十年後の東京」では、圏央道などのインフラ整備により、広域的な産業交流が加速され、多摩シリコンバレーが形成されるとの認識が示されています。
 こうした認識に符合するように、最近では、八王子、町田、神奈川県相模原市の商工団体が共同でロボット産業振興に乗り出すなど、都域を超えた交流、連携の動きが見られるようになってきています。
 今後、こうした動きをにらみながら、新たに整備される多摩産業支援拠点の機能を十分に発揮し、多摩シリコンバレーの形成を一層加速させるべきと考えますが、所見を伺います。

答弁2
 ▼産業労働局長
 多摩産業支援拠点についてでありますが、近年、多摩地域の企業や大学が都外の企業や研究機関と共同して環境分野の新技術を開発するなど、東京都域を超えた連携が大きく動き出しております。
 都は、広域連携の活発化の動きを見据え、研究開発、新事業創出の中核拠点として、平成二十一年度開設予定の多摩産業支援拠点の整備を着実に進めてまいります。
 この多摩産業支援拠点では、多摩シリコンバレーの形成を目指し、技術支援、経営支援に加えまして、産学公連携のコーディネート機能を強化するとともに、インキュベーション施設を整備するなど中小企業を強力に支援してまいります。



質問3
 都市農地の保全について伺います。
 都市農地は農産物の生産基盤であるとともに、都民生活への潤いの提供や災害時の避難場所などさまざまな機能を持つ貴重な緑地空間であり、「十年後の東京」の水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させるという目標達成のためにも、農地を保全することは極めて重要であります。
 我が都議会自民党は、都市農政を考える議員連盟を中心に現在まで、都市農地保全について、農業者との意見交換や国会議員への要請を繰り返し行ってきました。
 去る九月十九日にも、都内の農業団体と若い農業者、そして東京都選出の衆議院議員との意見交換を行ったところであります。この中では、農地を保全するためには、農業者が安心して農業を継続できる仕組みが必要だという意見が多く出されました。
 農地制度や税制度の改善は国の役割であり、我が党としても、引き続き国へ働きかけてまいりますが、都としても、独自に取り組める農地保全策について積極的に取り組んでいくべきと思います。
 第二回定例会で、我が党の質問に対し、農業者が病気や高齢で耕作ができない場合でも農業が継続できるよう、農作業受委託の仕組みを構築していく趣旨の答弁がありました。
 そこで、農作業受委託について、現在どのような取り組みを行っているのか伺います。

答弁3
 ▼産業労働局長
 農作業の受委託についてでございますが、都は、高齢等により労働力が不足する農家を支援するため、今年度から農作業受委託推進事業に取り組んでおります。
 本年七月には、農作業の受委託を円滑に進めるため、東京都及び農業団体などで構成する推進会議を設置するとともに、農作業受委託に関する実態調査を実施いたしました。
 また、九月には、東京都農林水産振興財団に相談窓口を開設いたしまして、農作業を受託する農業者や団体への情報提供などを始めたところでございます。
 今後は、受託者の登録を行い、年内には農家から農作業の委託申し込みの受け付けを開始できるよう努めてまいります。

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■福祉・医療

質問1
 次に、都におけるがん対策の推進について伺います。
 国は、本年四月に、がん対策基本法を施行し、六月には、がん対策推進基本計画を策定、公表しました。
 第一回定例会において、我が党の代表質問に対し、都における総合的ながん対策を明らかにする東京都がん対策推進計画を今年度内に策定し、がん対策の充実に取り組むとの答弁がありました。この計画では、がんの予防、早期対策の推進や情報収集、提供体制の整備、医療水準の向上などが主要な項目になると聞いています。
 そこで、この計画のねらいと、これを踏まえた政策展開の基本的な考え方について伺います。

答弁1
 ▼福祉保健局長
 東京都がん対策推進計画についてでございます。
 本計画は、がんの予防から治療及び療養生活の向上に至るまでの都の総合的な計画といたしまして、がん検診の受診率の向上、地域医療機関の連携や緩和ケアの推進、また、相談体制の充実による患者、家族等への支援などについて明らかにするものでございます。
 この計画の策定に向けまして、本年五月に、医療関係者や学識経験者、患者団体代表などから成ります東京都がん対策推進協議会を設置いたしまして、現在、活発な議論を重ねていただいております。
 協議会での検討結果を踏まえ、平成二十年度を初年度とする五カ年計画を策定し、今年度新たに設置をしました福祉・健康安心基金などを活用しながら、積極的な施策の展開を図ってまいります。



質問2
 安心して納得できるがん医療を受けることは都民の切なる願いであります。国の推進基本計画においても、医療水準の向上の中心としてがん診療連携拠点病院の役割が盛り込まれております。この拠点病院は、専門的な診療や緩和医療の提供、相談、情報提供など地域のがん医療の中核を担うものであり、都においても、拠点病院が今後のがん対策成功のかぎを握っているといっても過言ではありません。
 都内には、高度のがん診療を担える病院が数多く存在します。千二百万人の人口を抱える首都東京のがん医療を充実させるためにも、これらの病院の有する機能を活用し、都民に必要な医療水準を確保すべきと考えますが、所見を伺います。

答弁2
 ▼福祉保健局長
 がん診療を担う病院の活用についてでございますが、国は、都道府県がん診療連携拠点病院のほか、地域がん診療連携拠点病院を二次医療圏に一カ所程度、都道府県の推薦を受けて指定することとしており、都は、平成二十年四月からの指定に向けまして、候補となる病院を公募し、現在、選考を行っております。
 応募されました病院の中には、国の指定要件を満たし、専門的ながん医療の提供体制が十分に整っている病院が多数ございますが、そのすべてが地域のがん拠点病院に指定されるものではございません。
 都民に必要な診療体制を整えるためには、国指定のがん拠点病院だけではなく、ご提言のように、専門的ながん医療を担える病院の活用についても検討を行い、都内のがん医療水準の向上に努めてまいります。



質問3
 次に、医師の確保対策について伺います。
 先日、奈良県で、救急搬送中の妊婦さんが死産するという大変痛ましい事件がありました。このことで、単純に受け入れを要請された病院や医師だけを責めることはできません。我が国の現状である深刻な医師不足や医師の過重労働を背景とした構造的な問題がこうした悲しい事態を引き起こしたのであります。
 医師確保対策については、制度設計者である国がまずその責任を果たすべきものでありますが、本年六月、都は、国に対して、産科、小児科等の病院勤務医師の養成や医師の過重労働軽減のための事務補助者の設置など、具体的な緊急提案を行いました。
 しかし、国の対策を待つのみでは、この医師不足問題は解決しません。国は、医師が不足する地域や診療科を中心とした緊急医師確保対策を二十年度に向けて打ち出しましたが、その中には、研修医の都市への集中の是正など、都市、地方間の問題であるという観点からの対策も含まれており、決して座視するわけにはまいりません。
 都においても、分娩制限をする医療機関や小児の二次救急の取り扱いができない地域が存在するなど、特定の診療科の偏在と不足が顕著になってきております。
 こうした状況を踏まえ、都としても、医師確保を喫緊の課題として早急に対策を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。

答弁3
 ▼福祉保健局長
 都としての医師確保対策についてでございます。
 小児科や産科など、特定の診療科における病院勤務医師の不足に対して実効性のある取り組みが急務となってございます。
 このため、本年六月に、産科、小児科医師の代表、臨床研修病院等の院長、大学医学部長などから成ります東京都地域医療対策協議会を設置いたしまして、都における医師確保対策について精力的に協議をしてございます。
 今後、本協議会での検討も踏まえ、病院勤務医師の負担軽減に向けて、勤務環境の改善、助産師や医療補助者の活用などの取り組みを進めるとともに、さらに長期的視点に立ち、医師の養成、専門医の育成等についても積極的に取り組んでまいります。



質問4
 特に、行政的医療を担う都立病院や地域医療を担う公社病院においては、医師を安定的に確保し、都民の期待にこたえていかなければならないと考えますが、所見を伺います。

答弁4
 ▼病院経営本部長
 都立病院並びに公社病院におきます医師の確保についてでございますが、ご指摘のとおり、医師の採用環境は極めて厳しさを増しておりまして、両病院におきましても医師の確保は喫緊の課題であると認識をしております。
 このため、都は、来年度、東京医師アカデミーを開講いたしまして、総合診療能力と高い専門性を兼ね備えた若手医師の計画的な育成と確保に取り組んでまいります。
 また、医療の中核を担う優秀な中堅医師の確保と定着を図るために、勤務条件の改善や福利厚生の充実などの医師確保対策も積極的に進めていく考えでございます。
 こうした取り組みによりまして、都立病院、公社病院がそれぞれ担っている役割を確実に果たすことで、引き続き東京における総体としての医療サービスの向上を図ってまいります。



質問5
 さらに、外国人の看護師、介護福祉士候補者の受け入れについてであります。
 今回の受け入れは、我が国とフィリピン、インドネシア両国との経済連携協定に基づき、両国から看護師、介護福祉士候補者おおむね二千名程度を日本の病院、福祉施設に受け入れ、我が国の看護師資格、介護福祉士資格の取得と取得後の就労を目的に実施されるものであります。
 同協定は、既に両国の首脳間での署名を終え、今後、批准手続を経て、早ければこの秋にも発効することとなっております。
 そこで、この受け入れ制度について、都はどのように取り組んでいくのか、基本的な考えを伺います。

答弁5
 ▼福祉保健局長
 外国人の看護師、介護福祉士候補者の受け入れについてでございます。
 今般の受け入れは、フィリピン、インドネシアとの経済連携協定に基づくものであり、三年ないし四年の間、日本の医療機関や福祉施設に就労しながら、我が国の国家資格の取得とその後の就労を目指すものでございます。
 都としても、国際協力の観点に立ち、来日する候補者が在留期間内に国家試験に合格し、引き続き就労できるよう支援することが重要と考えてございます。
 今後、両国の医療、介護の実情等の把握に努めるとともに、都立の病院や施設への受け入れ、看護専門学校での学習指導、民間施設が受け入れる場合の支援など、効果的な受け入れ体制のあり方について検討してまいります。



質問6
 次に、医療制度改革について伺います。
 全国に比べて高齢者人口に対する療養病床の割合が低いという東京の現状を踏まえ、我が党は、一連の医療制度改革の中でも、療養病床再編については重要課題の一つに位置づけ、これまで都議会で質疑を重ねてまいりました。
 この秋策定する東京都地域ケア体制整備構想では、地域におけるケア体制とあわせて、療養病床転換推進計画が盛り込まれることとなりますが、都独自の課題を踏まえ、東京方式ともいうべき構想にすべきと考えます。
 そこで、都としてどのような構想とするつもりなのか、所見を伺います。 

答弁6
 ▼福祉保健局長
 東京都地域ケア体制整備構想についてであります。
 この構想は、高齢者が住みなれた地域で安心して生活するための基盤となる地域ケア体制整備の基本的考え方を示すものであります。
 今後、都におきましては、大都市特有の課題として、高齢化が急速に進行し、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯の急増が予測されます。
 このため、構想では、豊富な社会資源が集積をしている東京の強みを生かし、多様な主体による介護、医療、見守りなど、地域におけるケア体制を明らかにしてまいります。
 また、構想に盛り込む療養病床転換推進計画につきましては、他県と比較をして高齢者人口当たりの療養病床が少ないことに留意をし、医療機関の動向を的確に把握しながら検討してまいります。
 本構想の策定に当たりましては、ご指摘の点を踏まえ、都独自の課題の克服に向け、東京の介護、医療の状況にふさわしい取り組みの方向を示してまいります。



質問7
 特に、療養病床転換の推進については、国が介護療養病床の廃止とともに、医療療養病床についても大幅な削減を目指す再編整備案を打ち出したことにより、患者やその家族を初め、多くの都民に不安が広がっています。
 国は、全国一律の割合で療養病床の削減を求めておりますが、医療難民、介護難民の発生という事態を招くことのないよう、都民が安心して療養に専念できる環境を整備していくことが肝要であります。
 都は、一律削減という国の方針にとらわれることなく、現在、一万四千床しかない医療保険適用の療養病床をふやすことを含め、今後検討を進めるべきと考えますが、所見を伺います。

答弁7
 ▼福祉保健局長
 医療療養病床についてでございます。
 ご指摘のとおり、国は、現在全国に二十五万床ある医療療養病床を十五万床程度に削減する方針であります。
 急速な高齢化が見込まれる都におきましては、急性期の医療を終えたものの、引き続き医学的管理が必要な患者を受け入れる医療療養病床は今後とも重要であると考えております。
 このため、今年度末の改定を予定しております東京都保健医療計画におきまして、東京都地域ケア体制整備構想も踏まえながら、適正な病床数について定めてまいります。



質問8
 平成二十年四月から、七十五歳以上の高齢者を対象とする新たな後期高齢者医療制度が開始されることとなりました。これに伴い、本年三月には、都内すべての区市町村が加入する東京都後期高齢者医療広域連合が設置されたところです。
 この新制度では、個人ごとに保険料を徴収する仕組みとなっているため、これまでは保険料負担のなかった被扶養者である高齢者など、新たに負担が発生する場合や、国民健康保険料と比べての負担増が予想されています。
 我が党としては、高齢者が負担する保険料の設定などに当たり、できるだけ負担を軽減する方策を講じるべきと考えます。
 そこで、今後、都はどのような対応をしていくのか、広域連合の現在の取り組み状況とあわせて所見を伺います。

答弁8
 ▼福祉保健局長
 後期高齢者医療制度についてでございます。
 現在、広域連合では、保険料の設定や健康診査を初めとする保健事業について検討を行うなど、制度の円滑なスタートに向けて準備を進めております。
 保険料につきましては、医療費及び保健事業費などの推計や、被保険者数の見込み、さらには国におきます後期高齢者医療の診療報酬体系に係る審議状況など、さまざまな要素を勘案し、広域連合が本年十一月の議会において決定される料率をもとに算定する予定でございます。
 都としては、今後も引き続き広域連合の検討状況を把握するとともに、国の動向を十分見きわめながら、適切に対応してまいります。



質問9
 次に、犯罪被害者等への支援について伺います。
 都内の刑法犯認知件数は、近年、改善されていますが、それでも、平成十八年は約二十四万五千件と全国最多であり、まさに都民のだれもが被害者になる可能性があるといえます。
 こうした中、都は先月、犯罪被害者等支援推進計画中間のまとめを公表しました。被害者本人はもとより、ご家族の精神的、経済的な厳しい状況を考えると、被害者の置かれたさまざまな状況に応じて的確に対応できる施策を体系的に展開していくことが求められていると考えます。今後、さらに都民の幅広い意見を聞き、被害者の回復に真に役立つ施策を構築してほしいと思います。
 その際留意すべきことは、行政主体の取り組みだけでなく、さまざまな民間団体の力を十分に活用するなど、東京ならではの総合力を発揮させていくことだと思いますが、基本的な考え方について伺います。

答弁9
 ▼総務局長
 犯罪被害者等支援推進計画の策定に当たっての基本的考え方について、お答えを申し上げます。
 被害者やそのご家族は、犯罪による直接的な被害はもとより、犯罪の対象とされたことによります精神的な苦痛や高額な医療費の負担、経済的な困窮など、さまざまな問題を抱え、極めて過酷な状況に置かれております。このため、被害を受けた方々が再び平穏な生活を営めるようになるまで、都は途切れることなく十分な支援を提供していくことが求められております。
 ご指摘の点を踏まえまして、民間団体の力も活用し、今後、被害者の方々の多様なニーズにこたえるための総合的な窓口の設置や、一時的な居住場所の確保、精神的ケアの実施などの施策を検討いたしまして、来年一月を目途に計画を策定してまいります。

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■教育

質問1
 次に、教育について伺います。
 我が党は、戦後六十年を経て、長年懸案であった教育基本法を全面的に改正しました。新しい教育基本法では、公共の精神や伝統と文化の尊重などが盛り込まれ、当たり前の取り組みがようやく展開できることとなりました。また、改正した教育三法によって、指導力が不足する教員への対応や、公立学校への副校長や主幹の導入などもようやく実現できることとなりました。
 都教育委員会でも、例えば、全都立高校における教科「奉仕」の必修化、指導力不足教員への対応、副校長や主幹導入による学校経営の支援など、国に先駆けた取り組みを積極的に推進しております。
 しかし、現在、教員の大量退職時代を迎え、質の高い教員をいかに養成、確保し、生徒の学力低下を防いでいくかという問題や、一部の保護者からの過大な要求への対応、地域の協力を得た教育のあり方など新たな課題も生じております。
 現在、国では、中央教育審議会において、教育振興基本計画の策定など教育改革の取り組みについて検討が行われている中で、都は新たな教育ビジョン策定に着手したとのことです。「十年後の東京」を支える新たな教育ビジョンを策定し、さらなる教育改革を進めていくことは、まことに時宜を得たものであると考えますが、策定に当たっての基本的考え方を伺います。

答弁1
 ▼教育長
 新・教育ビジョンの策定についてでありますが、二十一世紀の東京の創造的発展を担う人間の育成を目指して策定いたしました東京都教育ビジョンにつきましては、家庭、学校、地域等の課題解決に向けた多くの取り組みを施策化しまして、それを推進するなど、着実な成果を上げてまいりました。
 しかし、「十年後の東京」が目指す方向性や、時代状況の変化を見据えまして、ご指摘のような問題を含めたさらに困難な課題に対応していくためには、これまでの取り組みの成果を踏まえた新・教育ビジョンの策定が必要でございます。
 本年七月に設置しました検討会におきまして、有識者等からも幅広く意見を集め、平成二十年六月を目途に新・教育ビジョンを策定して、日本の教育をリードする東京の姿勢をアピールし、東京の教育改革をさらに進めてまいります。



質問2
 次代を担う子どもたちの現状を考えると、戦後教育は、自由や権利を重視する余り、子どもたちの育成にとって大切なマナーや公共心、責任や義務を果たす心など、精神的な価値を軽視してきたように思います。また、他人との関係が結べなかったり、仕事を見つけようとしない若者も多いのが現実です。
 本来、このようなことは学校に期待するのでなく、家庭や地域で身につけなければならないことですが、核家族化が進む中で、おざなりにされてきた感があります。子どもたちをめぐってさまざまな課題がありますが、新しいビジョンの中ではどのような視点を重視していくのか伺います。

答弁2
 ▼教育長
 新・教育ビジョンの視点についてであります。
 次代を担う子どもたちにみずからの生き方や社会とのかかわりを考えさせるきっかけを与えるためには、学校教育だけの取り組みでは限界がありまして、家庭や地域、社会が連携して取り組みを行うとともに、それぞれの教育力を総合的に高めていく必要がございます。
 引き続き児童生徒の学力を向上させ、みずからの生き方を考えさせるなど、学校教育の質を充実させるとともに、これまで十分とはいえなかった家庭教育への支援や、学校、家庭、地域社会の相互の連携協力を図る仕組みづくりや、人材を育成していく視点などが重要と考えております。
 新・教育ビジョンは、これらの視点に基づきまして、具体的な施策も含めて提示してまいります。



質問3
 次に、公立学校における食育の推進について伺います。
 都が本年度から各学校に食育推進チーム及びその中心となる食育リーダーを設置し、校内指導体制を整備するなど、独自の取り組みにより食育の推進を図っていこうとしていることについては、その取り組みに期待するものであります。
 ところで、平成十七年度から制度化された栄養教諭についてですが、平成十九年四月現在、全国で九百七十四名が配置されていると聞いています。
 今後、これまでの取り組みに加え、この栄養教諭を早急に全区市に導入し、公立学校における食育を推進していくべきであると考えますが、都の考えを伺います。
 以上をもちまして私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

答弁3
 ▼教育長
 栄養教諭の導入についてでありますが、都教育委員会では、学校教育全体としての取り組みの中で、食育をさらに推進するため、食育リーダーなどの東京都独自の仕組みを前提とした栄養教諭導入のあり方について、庁内での検討を進めてきたところでございます。
 今後は、この検討結果を踏まえ、具体的な任用方法等を決定し、関係教育委員会との協議を行った上で、早急にモデル地区を設置し、栄養教諭を配置するとともに、計画的に全区市への導入を図り、食育を推進してまいります。

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