質問1 制度開始から六年目を迎えた介護保険制度について、制度の理念を踏まえながら、利用者支援の立場から質問いたします。 まず、介護保険制度の理念が揺らいでいる危惧を感じている点についてですが、国は制度当初、介護が必要な人に必要なサービスの享受を保障し、あくまでも自己決定、自己負担の明確性をPRし、家族の介護負担の軽減を解消できる方策として制度を進めてきたように思います。このことは、公が決定するのではなく民が決定できる、まさに官から民への仕組みと多くの国民は理解し、多少の混乱はあったにしても、比較的スムーズな流れで制度が進んでいくものと確信していたように思います。 平成十二年度以降から現在までの間、さまざまな改正が行われ、制度が大きく変化して、制度の理念、利用者本位のうたい文句の効力はなくなり、利用を必要とする人を除外していくようになるのではないかと危惧しております。 厚生労働省が五月二十六日に発表した社会保障費の給付と負担の見込みによると、二〇二五年の給付費は、二〇〇六年度の一・五七倍で百四十一兆円、一方、負担は一・七三倍の百四十三兆円で、特に公費負担が大きくなる見込みであります。 さらに、介護保険では、本年四月から目玉に介護予防を掲げ、給付財源の縮減を図ろうとしています。 ここで懸念されるのは、さらに給付抑制、負担増の構図がまかり通ることにならないのかと危惧しているところであります。 介護が必要な人にサービスが届かないことがあってはならないと思いますが、いかがお考えでしょうか。 答弁1 ▼福祉保健局長 介護保険制度改正によるサービス提供についてでございますが、今回の制度改正におきましては、高齢者の自立を支援する観点から予防重視の仕組みへの転換が図られるとともに、制度を将来にわたり健全かつ安定的に運営していく観点から、給付の効率化と重点化が図られました。 改正後の介護保険制度でも、要介護認定における公正な審査判定や専門的見地からのケアマネジメントの実施によりまして、利用者の心身の状態に応じて必要なサービスが適切に提供される仕組みとなっておりまして、お話のような問題はないものと考えております。
質問2 本年四月の制度見直しから数カ月が経過し、利用実態がどのように変わっているのか、このままでよいのかの検証についてです。 このほど、都内在宅サービス事業者三百五十カ所で構成する東京都社会福祉協議会介護保険居宅事業者協議会が、四月一日以前からのサービスを利用している要支援一から要介護二までの高齢者三千三人を対象にアンケートを実施し、六百五十九人の回答結果から、最近あった不都合、不便を尋ねたところ、今まで利用していた時間や回数を減らさざるを得なかったとする人が約半数の四九%、訪問介護の利用者に限った場合、約六〇%の人が同様の不都合、不便があると答えています。 中には、今まで二時間でやってもらっていたことが一時間半に変更になり、調理の途中で帰るヘルパーもいると答えています。 また、認知症で定期的にヘルパーが来ることで生活が維持できていたのが、週一回になり、ごみ屋敷の中で寝ている等の実態も明らかになりました。 さらに、通所介護の利用者から、今まで二カ所に通っていたのが一カ所しか通えなくなった、具合が悪いときは休むのに、月額定額制の仕組みが納得いかず、利用をやめた等の回答もありました。 また、介護予防の利用者からは、筋肉強化は八十五歳の私には無理、うつ病予防のためにも通所介護を制限しないでほしい、今までも努力しているのに、もっと自分でやらなくてはならないといわれた、無理して体の具合が悪くなったらどうするのかなど、さまざまな批判的な訴えが目立っています。 さらに、地域からの生の声を聞いたところ、二世帯住宅が理由でヘルパーに断られたため、介護放棄している家族の中で入浴や食事もままならないなど、さまざまな問題も浮き彫りになっています。 都は、利用者の立場を踏まえた観点から、広域自治体として区市町村を支援していくのか、確認したいと思います。 答弁2 ▼福祉保健局長 介護保険制度改正に伴う区市町村への支援についてでございますが、今回の制度改正では、利用者の心身の状態に応じて真に必要なサービスが提供されるよう、軽度者への給付について、生活機能の維持向上を図り、でき得る限り自立した生活を送れるように支援する観点から、サービスの内容や提供方法を見直したものでございます。 都は、本年三月に策定いたしました東京都高齢者保健福祉計画に基づきまして、介護保険制度が利用者本位の仕組みとして円滑に運営されるよう、保険者である区市町村を支援してまいります。
質問3 介護療養型病床についてお聞きします。 療養型病床に入院する利用者の実態ですが、もともとは国が社会的入院数を減らそうという見かけの数の減員をねらった社会的入院解消策であると考えられますが、社会的入院患者のほとんどが医療が必要な状況にあって、単なる入院医療は必要がないだけであり、決して、医療の必要がないのに入院しているという誤った理解であってはならないと思うのです。 社会的入院解消は、医療保険の矛盾を介護保険の矛盾にかえるだけで、真の解決につながらないと思います。問題の解決を透明化するには、医療と介護を別のものとして、必要な高齢者にそれぞれの保険から給付する当たり前の方式へ転化していく必要があると考えます。 過去、老人病院の薬漬け医療が定額制の診療システムによって解決されたことが、介護医療型施設での定額制診療システムの導入につながらないと思います。 介護老人保健施設において酸素吸入程度のことさえ簡単にできないという制度的欠陥など、定額医療では解決できない長期の要介護者の医療問題が現存し、在宅医療に過度の負担が生じていることに対し、どのようにお考えであるか、ご所見をお聞かせいただきます。 答弁3 ▼福祉保健局長 介護療養病床の見直しについてでございますが、本日午前、国会において可決成立したとのことでございます。医療制度改革関連法における療養病床の見直しに関しましては、その目的である、いわゆる社会的入院の解消は必要なことと考えております。 しかしながら、その実現のためには、福祉施設などにおける医療提供体制の確保や在宅医療基盤の整備など多くの課題がございまして、今後十分な検討が必要と考えているところでもございます。
質問4 新予防給付についてですが、先ほど述べたような現場の実態からも明らかなように、疫病や外傷により心身の状態が安定していない状態、認知症や思考、感情等の障害により十分な説明を行ってもなお新予防給付の利用にかかわる適切な理解が困難である状態、認知症高齢者の日常生活自立度がおおむねⅡ以上で、一定の介護が必要な程度の認知症がある、精神神経疾患の病状の程度や病態により、新予防給付の利用に係る適切な理解が困難である、このような利用者に対する予防給付は不可能となる制度に対して、どのような解決策をお持ちでしょうか。 また、要介護高齢者やその家族が地域生活を送る上での生活課題と社会資源とを結びつける介護予防支援を行う地域包括支援センターですが、もともと国が示す人口二、三万人に一カ所設置で三人配置、この壮大な構想が実施できるのか、疑問に思うところでもあるのですが、国は、予防給付ケアマネジメントは市町村が行うべきものとして位置づけていますが、利用者実態を把握した上で居宅介護支援事業所への業務委託可能な制度でもあります。 地域包括支援センターは、予防プランの収入だけではなく、地域包括支援センター職員は区市町村職員であるため、交付金として人件費が充当されていますが、再受託された居宅介護支援事業は、報酬が九割にしかならないため、現在、居宅介護支援事業所において予防プラン受託拒否が広がっていると聞いていますが、その実態をどのようにお考えでしょうか。このようなねじれ現象に対し、対策をお持ちかどうか伺います。 地域包括支援センターは、決して多くない人材で過大な課題を果たし得るのか。地域包括支援センターでやり切れず、居宅介護支援事業所も拒否、ケアマネ難民は出ないか、疑問を生じざるを得ないと思いますが、東京都は、広域自治体の取り組みとして独自の政策を構築し、本来の地域包括ケアの創設を目指すことを強く願うものです。 答弁4 ▼福祉保健局長 新たな予防給付の対象者についてでございますが、予防給付は、状態が軽度であって改善可能性のある方が対象でございまして、中重度の方や、軽度であっても状態の改善が見込まれない方は、従来の介護給付の対象とされております。 お話の、心身の状態が安定していない方や、認知症等により理解が困難な方などにつきましては、予防給付ではなく、介護給付により必要なサービスが提供される仕組みとなっております。
質問5 第一線の現場から、支援の必要な方々に密接に向かい合っている立場から申し上げますと、介護が必要な人や家族が、制度が定着する間もなく、揺れが強いために不安を抱えながら進んでいる状況であることを認識いただきながら、今回の改正が改悪にならないことを希望し、利用者本位の原理原則を踏まえた包括支援を切望して、質問といたします。 答弁5 ▼福祉保健局長 介護予防ケアマネジメントについてでございますが、予防給付のケアマネジメントは、区市町村が設置する地域包括支援センターにおいて実施することが原則であり、契約により、適切と認められる居宅介護支援事業所に業務の一部を委託できることとされております。 また、都は、制度発足に先立ちまして、国に対して必要な提案要求を行うとともに、地域包括支援センターにおける実施体制を整備するため、センターの保健師等を対象とする研修を実施するなど、予防給付のかなめとなる介護予防ケアマネジメントの円滑な実施に努めてきたところでございます。 |