緑の確保誘導に民設公園拡大を 世界の若者に夢と感動の五輪を |
鈴木隆道(自民党) |
■都区のあり方の検討 |
質問1 最初に、都区のあり方についてお伺いをいたします。 昨今の国の動きでは、地方制度調査会が道州制の導入を答申し、その議論の中で、都心部の国による直轄統治といった、地方自治を否定しかねない主張も出されております。こうした国の動きを踏まえ、都と特別区は、都区制度の抜本的な見直しに向けた議論を行っていくことが必要であります。 平成十二年の都区制度改革以降、各区においては、地域に密着した施策を展開してきておりますが、東京が抱える各区の区域を超えた広域的な行政課題には必ずしも十分に対応できていない現状を指摘せざるを得ません。 大幅な市町村合併が進展し、都道府県から市町村への権限移譲が行われるなど、地方分権が進められている現在、特別区もその権限を拡張することが必要であります。例えば市の事務である水道事業、下水道事業など公営企業についても、特別区に対する権限移譲の対象になると考えるべきであります。 権限移譲に伴って財源も確保することが必要であり、その場合には、現在の区割りを前提にすることなく、再編を進め、特別区の規模の拡大と能力の強化を図り、責任ある自治の担い手になっていくことが必要であります。 また、都区財政調整制度を見直すことは当然であり、各区の独自性が反映されやすいような新たな都区財政調整制度も含め、税財政制度についても根本的に議論をしていただきたいと考えております。 先般、都の三副知事と区長会の正副会長を中心とした検討組織が設置され、今申し述べました重要な論点を含んだ検討が開始されたと聞いております。一朝一夕では結論を出せないと思いますが、今後、都区共同の検討を具体的にどのように進めていくのかをお伺いいたします。 答弁1 ▼総務局長 今後の都区のあり方の検討についてでございますが、現行の都区制度の枠にとらわれることなく、東京の将来を見据えて、都と特別区が主体的に国を支える自治の原点から議論をしていくことが重要でございます。 こうした観点から、新たな検討の場を都区共同で設置し、去る五月三十日に第一回の会議を開催いたしました。 今後、国の動きを踏まえた地方自治制度改革と東京の自治、都区の事務配分、再編を含めた特別区の区域のあり方、都区財政調整制度を含む税財政制度などにつきまして、根本的かつ発展的に議論をしてまいります。 この議論を進めるに当たりまして、まず、月一回程度のペースで精力的に議論を重ね、十月を目途に、それぞれの項目につきまして検討のための基本的な方向をまとめてまいります。 |
■都市再生 |
質問1 踏切対策について伺います。 都内にはいまだ千二百カ所の踏切が残されており、交通渋滞や踏切事故など、都民生活に多大な迷惑を与えています。踏切は、東京におけるまさに社会問題であり、この問題の解決には、都内に残る踏切約千二百カ所の全廃を目指すべきと私は考えます。 こうした中で、国は、本年一月より、全国約三万六千カ所すべての踏切を総点検し、対策に本格的に取り組むと聞いております。 知事は二〇一六年のオリンピック招致を表明していますが、私は、オリンピック及びパラリンピックの開催に向け、首都東京の再生を踏切対策から進めていくことがぜひ必要であると考えます。 これまでも、都は、道路と鉄道の立体化や踏切の拡幅など、対策を着実に行ってきましたが、安全で安心なまちづくりを強力に推進し、首都東京の魅力向上や国際競争力の強化を図るためには、踏切対策を一層加速させていくことが重要であると考えます。 そこで、踏切対策の推進に向けた今後の都の取り組みについて伺います。 答弁1 ▼都市整備局長 踏切対策の推進についてでございますが、交通渋滞や地域分断を解消し、都民生活の安全性、利便性の向上を図るためには、踏切対策の推進が必要でございます。 このため、都は平成十六年に踏切対策基本方針を策定し、効率的、効果的に踏切対策を推進していくことといたしました。 この方針では、連続立体交差事業などによる対策について、踏切遮断時間、自動車交通量などの状況やまちづくりの熟度、財政状況を勘案して事業化を図ることとしております。 また、早期対策といたしましても、踏切道の拡幅、歩道橋の設置、踏切システムの改善などをあわせて実施してまいります。 今後とも、区市町、鉄道事業者など関係者間の連携を一層強化し、計画的な踏切対策に積極的に取り組んでまいります。
質問2 踏切対策の推進を図るためには、数多くの踏切を同時に除去し、踏切の遮断による交通渋滞や踏切事故の解消を一気に実現する連続立体交差事業を一層促進していくべきと認識していますが、その実施に当たっては多額の事業費が必要であります。安定的な財源の確保が何より不可欠であります。 しかし、現在、政府・与党内では、道路特定財源の一般財源化に向けてさまざまな議論があり、予断を許さない状況が続いております。道路特定財源は、受益者負担原則に基づく合理的かつ安定的な財源として、道路関係の施策に重点的に投入されるべきものであり、一般財源化は国民との約束違反、暴論以外の何物でもなく、到底容認できません。 首都東京において、道路整備はもちろん、連続立体交差事業の推進を図るためには、道路特定財源を一般財源化せず、これらの事業に重点的に投入することが必要不可欠であると考えますが、財源確保に向けた都の断固たる姿勢と今後の取り組みについて伺います。
答弁2 ▼建設局長 連続立体交差事業の財源確保に向けた都の姿勢についてでありますが、連立事業は、交通渋滞や地域分断を解消するなど、極めて効果の高い事業であります。 現在、都は、JR中央線や東急目黒線など七路線九カ所で重点的に整備を進めております。 連立事業は完成までに長い年月と膨大な事業費を要することから、今後とも安定した財源の確保が不可欠でありまして、道路や連立事業に必要な道路特定財源を一般財源化し、他へ流用する余裕はないと考えております。 都は、引き続き道路特定財源の必要性、重要性を訴え、東京への配分の拡大が図られるよう、国に対し積極的に働きかけてまいります。
質問3 民設公園について伺います。 東京都は先ごろ、みどりの新戦略の一環として、東京都独自の工夫を伴う新しい公園整備の仕組みである民設公園制度を導入することを公表し、要綱を策定いたしました。 オリンピック誘致に向け、成熟都市として国際的なアピールをするためにも、緑豊かな都市東京を形成し、引き継いでいくことは重要であると考えています。 しかし、東京は未整備の都市計画公園を二千六百ヘクタールも抱え、近年の整備ペースからいくと、今後五百年以上も整備に要すると試算される一方、未整備区域内のグラウンド等企業所有地が、用地買収を待たず、戸建て開発等により次々と細分化し、公共による公園整備はますます困難な状況となっていると考えられます。 このような状況において、昨日の我が党の一般質問に対し、知事から、民設公園の整備を促進していくために税の減免措置を講じていくとの力強い答弁をいただきました。私も、民設公園制度を早急に実施していくことが必要であると考えます。 そこで、東京都独自の制度である民設公園の実現に向けた取り組みについてお伺いいたします。 答弁3 ▼都市整備局長 緑豊かなまちづくりを進めるためには、都市計画公園、緑地の公共による整備に加え、民間の活力を活用した整備が必要であり、民設公園制度を創設いたしました。 民設公園の実現のためには、民間の積極的な参入を促すことが必要でございまして、税制面からの支援のほか、都市計画公園の区域内においてマンションなどの建築を可能とするよう、建築制限の緩和を講じてまいります。 さらに、こうした制度について土地所有者や民間事業者へ十分周知するとともに、地元区市町と連携し、民設公園の実現を図ってまいります。
民設公園制度については、十八年度重点事業にも位置づけられておりますが、私は、成熟都市東京にふさわしい緑の民間による創出を促すためには、都市計画公園のみならず、例えば代官山のような沿道開発における連続した緑の確保を誘導するよう、対象を広げることも重要と考えます。 今後、民設公園の仕組みの拡大についての検討も要望いたしておきます。 |
■教育行政 |
質問1 義務教育について伺います。 幼いころから世界の舞台に立ちたいという夢を持ち、今、ドイツのピッチに立っているワールドカップ日本代表の若者たちには感動を覚えます。それは、代表に選ばれるまでの努力はもとより、自分の夢や希望は必ずかなえられるということを教えてくれているからであります。 一方、将来やりたいこと、自分の生き方が見つからず、何もしようとしない若者が急増しております。平成十七年三月に内閣府が行った調査によりますと、ニートは、平成十四年に八十五万人という数字をはじき出しています。 このような中で、高校への進学率が九〇%を超えている現在、高校を義務教育化し、そこで個々の生徒に応じたキャリア教育を行い、将来に向けた生き方を教えることが望ましいと考えられます。 しかし、現状からいって、高校義務化は難しい面もあります。そこで、高校に進学する前の義務教育におけるキャリア教育のあり方を根本的に見直す必要があるのではないでしょうか。 今、小中学校では、学力向上へ向けての対応が積極的に行われていますが、それも大事なことですが、将来の夢や希望を持たせる指導があってこそ、基礎、基本を学ぶ意義が児童生徒にわかるわけであります。まずしっかりと個性をはぐくみ、自分の生き方や職業観を育てることこそ義務教育の役割ではないかと考えています。 そこで、義務教育の段階で子どもたちの将来の生き方や職業観を育てる教育を推進すべきと考えますが、見解を伺います。 答弁1 ▼教育長 児童生徒が将来、社会で自立して生きていくために、義務教育の段階から自己の個性や適性を理解し、主体的に進路を選択する能力や態度を育て、キャリア教育を推進していくことは極めて重要でございます。 現在、小中学校では、道徳の時間で自分のよさや可能性に気づかせるとともに、特別活動や総合的な学習の時間で、ボランティア活動や職場体験などを通して児童生徒に豊かな社会性や望ましい勤労観、職業観を育成しております。 今後、都教育委員会は、キャリア教育を組織的、計画的に展開している学校の実践事例の紹介や中学生の五日間の職場体験の拡充などを通しまして、子どもたちが夢や希望を持ってみずからの人生を切り開いていく意欲や態度をはぐくむ教育が行われるよう、区市町村教育委員会と連携して各学校を支援してまいります。
質問2 国際化の進展の中で、国家戦略であるともいわれる義務教育のあり方を見直す時期にあります。国際社会の中で自分の考えを正確に相手に伝え、相手の思いを正しく理解するコミュニケーション能力を育てることは重要であり、人間関係の基礎となるのです。日本語は、我が国の長い伝統や文化を背景として、日本人としての心をあらわした表現の結晶だからであります。真に誇れる国際人としての日本人を育てるためには、まず第一に、自国を愛し、自国の歴史、文化や伝統を正しく理解し、その心を学ばせることこそ重要ではないかと考えます。 そこで、日本の伝統・文化を学ぶ教育についてどのように推進していくのか、所見を伺います。 答弁2 ▼教育長 世界の人々から信頼され、尊敬される人間を育成するためには、児童生徒に日本の伝統・文化を理解させ、郷土や国に対する愛着や誇りを持たせる教育を推進することが大切であります。 そのため、都教育委員会では、平成十七年度から、小中学校や都立学校など六十校を日本の伝統・文化理解教育推進校として指定するとともに、実践発表会を開催したり、リーフレットを全公立学校に配布するなどして、日本の伝統・文化理解教育の振興を図っているところでございます。 今後、平成十九年度から都立学校で実施します学校設定科目・教科「日本の伝統・文化」に関する教材の開発や、生徒が使用するテキストの作成を行うとともに、小中学校を対象とした指導事例集を発行するなどして、日本の伝統・文化理解教育を推進してまいります。
質問3 人事権の移譲について伺います。 現在、区市町村立小中学校の教職員の給与負担と人事権は、市町村立学校職員給与負担法等により都道府県にあります。これは、地方の主体性により義務教育の質の向上を図るためには、その基盤となる財源保障が安定的で確実であることが重要であるとの理由に基づくものであります。 一方で、地方や学校の創意工夫の発揮を妨げ、特色ある教育活動の実施などを阻害しているなどの問題もあります。 こうした現状を踏まえ、昨年十月に出された中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」によると、県費負担教職員は、市区町村教職員でありながら、給与負担と人事権が都道府県にあり、地域に根差す意識を持ちにくくなっているという指摘とともに、教職員の人事権については区市町村に移譲する方向で見直すことが必要であるとされています。 例えば、現場にいますと、いじめや不登校などの問題で地域やPTAの話し合いの場、地域と学校での連携の場に参加するのは校長、副校長という管理職だけで、教員の参加がないという現状があります。 こうした教員の意識を改革し、個性豊かな子どもたちを育成する教育を行うためにも、地域に根差す意識の高い教員を区市町村ごとに採用、配置できるようにすることが有効であり、今後、全面的に教職員の人事権を区市町村に移譲すべきと考えますが、人事権の移譲について都教育委員会の検討状況を伺います。 答弁3 ▼教育長 区市町村立学校教職員の人事権移譲に関する検討状況についてでございます。 現在、国では、都道府県から中核市を初めとする一定の自治体への人事権移譲について検討を進めておりまして、各都道府県に対してその課題と方策などについて見解を求めてきております。 都道府県が教職員の人事権を持つ現行の制度では、広域的に採用や異動を行うことによりまして優秀な人材を確保するとともに、東京都全体の教育水準の維持向上を図っている一方で、お話しのように、教職員が地域に根差す意識を持ちにくくなっており、地方や学校の創意工夫が妨げられているといった指摘もございます。こうしたことから、区市町村におきましても、人事権移譲についての考えは分かれております。 都教育委員会は、区市町村においてより自主的、自立的な教育活動が可能となり、ひいては義務教育全体の充実発展が図られる人事権のあり方について、現在、鋭意検討しているところでございます。 ご指摘いただいた点は、貴重なご意見として受けとめてまいります。 |
■オリンピック及びパラリンピック |
質問1 オリンピック及びパラリンピックは、全世界の人類に感動を与える偉大な祭典であります。とりわけ若者たちに与える影響には、はかり知れないものがあります。 一九六四年の東京オリンピックのとき、私はまだ中学生でありました。国の威信をかけて戦うアスリートたちのひたむきな姿に感動しない人はいないと思います。試合後に生まれる国境を越えた友情など、私の人生観に大きな足跡を残す一大イベントでもありました。 翻って、現在の日本の若者たちはどうでありましょう。フリーターやニートなど将来展望が描けない若者が存在する一方で、拝金主義が横行し、お金がすべてと考える若者も多いように思えます。 私は、このような若者たちに、オリンピック及びパラリンピックを通して、人生の本当の価値とは何か、生きる喜びとは何かを伝えてあげたいと思います。人間は、アスリート同様努力し、いろいろな人たちと交流し、時にはぶつかり合い、そしてともに生きていく、そのような夢と希望の持てる、また、思いやりの心を持ち、生きがいの見出せる人生こそが本当の人生というものではないでしょうか。 そこで、今こそ、石原知事が提案した二〇一六年の東京オリンピック及びパラリンピックにおいて、知事から世界の若者たちに夢と感動を、心に残るメッセージを発信すべきと考えますが、いかがでありましょうか。 知事の考えをお伺いして、私の質問を終わります。 答弁1 ▼知事 オリンピックと若者たちについてでありますが、東京五輪の開催を目指す二〇一六年には、今世紀の初めに生まれた子どもたちが十代の前半の青少年に成長しているわけでありまして、ちょうど感性が芽生え、情念が馥郁としてはぐくまれていく、まさに青春の入り口にあるわけでありますが、こういった年代も、やがてはこの二十一世紀の主役となっていく子どもたちの中で、発展途上にあるアジアの多くの子どもたちにもスポーツの感動と喜びを広めていくことは、日本で主催されるオリンピックに課せられた大きな使命であると思っております。 オリンピックを契機としてスポーツに接するさまざまな機会を提供するなど、次代を担う青少年が全身全霊を込めてスポーツに打ち込む喜びを体験できるようにしていきたい、そういう形で、オリンピックに関係する施設も、その前後、世界に向かって、アジアに向かって開いて、受け入れていきたいと思っております。 いずれにしろ、肉体を鍛えることで培った精神、健全な精神が、人間の肉体というのはやがて衰えていくわけでありますけれども、その時期になって、逆に今度は精神が肉体を支えるわけでありまして、それがやっぱり人生の一つの原理、公理だと思います。 それにしても、ご指摘のように、このごろの若い世代の無気力さといいましょうか、フリーターとかニートもそうでありますけれども、もっとひどい例は、名乗りもしないし、見知らぬ同士がネットで交流し合って、名乗り合うこともなく集団で炭酸ガスをかいで、密室の中で死んでいくという、ああいう青春の無残な姿というものは、何とかやっぱり克服をしなくちゃいけないと思います。オリンピックこそがやっぱりそれを取り戻し、また青年たち、少年たちに、人生というのは本当に生きがいのあるものだ、そしてまた、すばらしいアスリートたちの活躍を目にすることで多くの刺激を受けて、何も競技に限らず、自分の個性を生かした、特性を生かした生き方の中で生きがいを感じ、期待を持って自分の人生を迎えていく、そういうよすがになればと願っております。 いずれにしろ、その前にオリンピックを招致しなくちゃなりませんが、とにかく実現できれば、特に日本の荒廃した青春のためには、それを蘇生させる大きなよすがになると思っております。 |