交通事故のない社会を目指して 防災力向上のため消防団に期待 |
伊藤まさき(民主党) |
■交通安全対策 |
質問1 まず、交通安全対策について伺います。 交通事故は、いうまでもなく、加害者、被害者双方にとって大変深刻な被害をもたらします。一瞬の失敗で一生を棒に振ることさえある不幸な交通事故を一件でも少なくしていくことは、都民の生命と財産を守るために大変重要なことであります。 都の対策としては、東京都交通安全対策会議で、国や他の機関とともに五年ごとに東京都交通安全計画を作成し、交通安全施策を進めております。 昨年まで、第七次交通安全計画のもとで、年間の道路交通事故死者数を三百五十人以下とするという目標を立て、平成十五年に三百二十名、十六年に三百三名、十七年には昭和五十四年以来の二百人台である二百八十九人となり、目標を達成しているなど、一定の成果は上げております。 しかし、昨年の交通事故数は全国で約九十三万件、死者数は六千八百七十一人、負傷者数は約百十五万人であります。内閣府の総合科学技術会議の試算によりますと、医療費、休業損失、慰謝料などの人身損失は一兆七千二百六十九億円、車両や構造物などの修理修繕費などの物的損失は一兆八千四十一億円、被害者の休業による付加価値額の低下による事業主体の損失は七百七十二億円、救急搬送費や警察の事故処理費用など公的機関等の損失は六千七百六十九億円、以上、経済的損失は計四兆二千八百五十億円に上るとされております。 毎年毎年、これだけ多額の損失と、何より大切な人命が数多く失われております。一九七〇年代、事故死者数が一万人をはるかに超えていた交通戦争といわれた時代に比べ、格段に改善はされているとはいえ、これからも不断の努力と対策をしていかなければなりません。 ことし四月に作成された平成二十二年度までの第八次計画で、人命尊重の理念に基づき、また交通事故がもたらす大きな社会的、経済的損失をも勘案して、究極的には交通事故のない社会を目指すべきであるとの高い理念を掲げ、年間の事故死者数を二百五十人以下とすることと、高齢者の事故死者数を約一割削減するという目標が設定されております。このような目標が設定された基本的な考え方をお示しください。 さらに、この目標を達成するために、どのような具体策を展開しようとしているのか、所見を伺います。 答弁1 ▼青少年・治安対策本部長 第八次東京都交通安全計画についてでありますが、この計画は、東京が世界一安全な都市となることを目指し、それを大前提とした上で平成二十二年までに達成すべき目標を設定したものであります。年間の交通事故死者数につきましては、一層の減少を図るため、第七次計画と比べ、マイナス百人の二百五十人以下を目指すこととしました。 また、今後、高齢化が急速に進むことを踏まえ、今回初めて、高齢者の交通事故死者数について、平成十七年と比較して約一割の削減を目指すとしたものであります。 次に、目標達成のための具体策についてでありますが、高齢者の交通安全の確保を最重点施策とし、シミュレーターを活用した体験・実践型講習会や、反射材を活用した夜間・薄暮時対策の実施などを進めてまいります。 また、二輪車事故の防止を重点施策としまして、交差点やカーブ地点の改良、事故多発路線の取り締まり強化、地域、職域などでの実技講習会や高校生向け交通安全教育などを実施してまいります。 また、自転車の安全利用の促進についても重点施策としまして、歩道上の暴走運転等に対する交通ルール、マナーの向上対策や、幼児用ヘルメットの着用促進などに取り組んでまいります。
質問2 事故死者数は確実に減少している一方で、負傷者数は依然として高い水準にあります。平成十二年以来減少傾向にあるものの、昨年は約九万一千人と、交通戦争時とほぼ同水準にあり、対策の強化が必要と考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼青少年・治安対策本部長 交通事故の負傷者対策についてであります。 都内の負傷者数につきましては、この五年間で約一万二千人減少はしたものの、ご指摘のように、平成十七年においても依然として九万一千人に上っており、重大な課題であります。 このため、歩道の整備など安全な道路環境の確保や標識類の整備などのハード面の対策をさらに進めていきます。 また、交通違反への取り締まりを強化するとともに、学校や地域における交通安全教育の推進などのソフト面からの対策強化を進めてまいります。
質問3 交通渋滞の緩和は、交通安全対策上欠かすことができません。そのハード面の対策の一環として、都では、スムーズ東京21拡大作戦等を実施しております。既に実施を行った路線では具体的にどのような成果が上がっているのか、所見を伺います。 答弁3 ▼青少年・治安対策本部長 スムーズ東京21拡大作戦の事業効果についてであります。 平成十六年度に交差点改良などの対策を実施しました新大橋通りなど八路線十七交差点につきましての効果の検証を本年二月に行いました。その結果、最大渋滞距離は、各箇所平均で、対策前百三十三メートルから対策後五十九メートルと、五六%縮小しました。また渋滞発生時間は、各箇所平均で、対策前三・七時間から対策後一・七時間と、五四%縮小しております。
質問4 また、究極的に事故をゼロにするには、今までの施策の延長だけでなく、新たな視点が必要だと思います。例えば航空事故であれば、国土交通省内に一九七四年以来設置されております航空事故調査委員会が、たとえどんな小さな事故でも即座に現場に急行し、原因究明と再発防止のために調査を行いますし、鉄道事故の場合にも重大事故が発生したときは、その都度調査委員会が設置をされることになっており、調査体制が整ってございます。交通事故の方が、被害の大きさからいっても、社会的な影響からいっても圧倒的に大きいにもかかわらず、その原因の究明と再発防止策が余りに貧弱といわざるを得ません。 海外では、交通事故に関しても強力な調査権限を有する常設の独立機関があり、再発防止のために、客観的な立場から法的拘束力を持つ勧告を行う仕組みになっております。 このように、事故捜査から事故調査へと大きくシフトチェンジしていく必要があると考えます。 交通事故の調査のあり方、安全対策の基本としては、万一不幸にして起こってしまった事故を教訓として、再び同様の事故を発生させないための調査、分析に重点が置かれるべきであります。関係者の努力にもかかわらず、各種事故が相変わらず発生しており、再発防止のための事故調査の重要性が社会的にも認識をされていると思います。 しかしながら、我が国においては、ほとんどの場合、警察による捜査が主体となっており、捜査結果は、裁判の証拠として用いられる場合を除き公開されることは一般にはないため、捜査結果を事故対策に利用することは困難となっているのではないかと考えます。 警視庁が保有する交通事故の豊富な情報について、広く一般に公開すべきと考えますが、警視総監の所見を伺います。 答弁4 ▼警視総監 警視庁が保有する交通事故に関する情報の一般への公開についてでありますけれども、交通事故を抑止するため、当庁においては、交通事故が発生した場合は交通事故捜査を行い、その原因や態様など、さまざまな角度から調査、分析を行っているところであります。 こうして得られた情報につきましては、道路管理者を初め、関係機関、団体と共有しながら、交差点改良、交通安全施設の整備、車両の安全性の向上等の交通事故防止対策に活用しているところであります。 また、警視庁ホームページ上の交通事故発生マップにおいては、地域別、時間帯別の発生状況や死亡事故の具体的な状況等について幅広く公開しております。 さらに、新聞折り込みによる「広報けいしちょう」、地域住民に対する「交番だより」等、各種広報誌におきましても広く情報を発信しております。 加えて、東京都や区市町村などに対しましても、交通事故の発生状況等について情報提供を行うなど、連携を図りつつ交通事故防止に努めております。 今後とも引き続き、時宜に応じた適切な内容の情報を提供してまいりたいと考えております。
質問5 さらに、調査体制の強化のために、現在、各機関が個別に実施している事故防止に関する調査研究を統合し、安全対策をより科学的に推進すべきと考えるが、所見を伺います。 答弁5 ▼青少年・治安対策本部長 交通事故に関する調査研究についてでありますが、これまでも、東京都、関東地方整備局、首都高速道路株式会社などは、東京都交通安全対策会議のメンバーとして科学的に調査研究を実施してきております。 今後、交通事故防止対策の強化に向け、東京都交通安全対策会議のもとで調査研究がさらに一体的に推進されるよう、各機関の一層の連携強化に意を用いてまいります。 |
■特別区消防団 |
質問1 次に、消防団についてお伺いします。 消防団員は、消防、防災に関する知識や技術を習得し、火災発生時における消火活動、地震や風水害といった大規模災害発災時における救助、救出活動などに従事し、地域住民の生命や財産を守るために活躍しております。地域における消防力、防災力の向上において重要な役割を担っておりますし、今後も大いに活躍することが期待をされております。 私も、消防団員の一員として誇りを持って活動しておりますけれども、消防団が今以上、都民のために活動できるよう、環境をさらに整備すべく、何点か質問させていただきます。 現在、各区の消防団運営委員会で、武力攻撃事態等において地域に密着した消防団が行う活動はいかにあるべきかが審議をされております。区市町村において、平成十八年度中を目途に国民保護計画を作成することとなっており、武力攻撃事態等における国民保護に関し、関係機関との連携体制の整備、自主防災組織等の支援、避難所の運営等について定め、国民保護法上重要な位置づけとなる消防団の役割についても定めるとされております。 しかし、着上陸侵攻やゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイルによる攻撃など、武力攻撃事態に対応しろといわれても、普通に日常生活を送っている我々にしてみれば、想像の範囲をはるかに超えることであります。武力攻撃事態が起きたからといって、いきなり消防団として活動しろといわれても、戸惑ってしまうのが現状でしょうし、現に多くの団員からも心配の声が上がっております。 武力攻撃事態における消防団の任務はどのようなものになるのか、その安全の確保はどのようになるのか、所見を伺います。 答弁1 ▼消防総監 国民保護法の制定に伴う消防団の任務についてですが、同法第九十七条に「消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護するとともに、武力攻撃災害を防除し、及び軽減しなければならない。」とされておりますことから、特別区消防団員は、安全が確保された上で消火活動等を行いますとともに、同法第三十四条に基づき作成されました東京都国民保護計画によりまして、現有装備を有効活用し、区長に協力いたしまして、住民等への警報の伝達、避難住民の誘導を行うこととされております。
質問2 現在、団員の減少が危惧されておりますけれども、このことにより、現役団員だけでなく、これから入団しようと考えている人たちにも不安が広がり、今以上に団員の確保が難しくなるおそれもあります。団員の確保策と、消防団としての任務を徹底するための教育体制はどうなっているのか、所見を伺います。 答弁2 ▼消防総監 消防団員の確保対策につきましては、大学生等や女性を重点に、広く地域住民や企業に対しましても働きかけを行いますとともに、各種メディアの活用や区等の関係機関の協力を得ながら、積極的に消防団員の確保に努めております。 また、教育体制につきましては、各消防署及び各消防団におきまして、実務教育及び実科訓練を行いますとともに、消防学校における幹部及び専科教育、さらに資格取得講習を実施しております。
先ほど、多くの団員から心配の声が上がっていることに触れましたが、さらに深刻なのは、この件について全く知らない方が関係者の間にすらいることであります。消防団運営会議にも、都がさきに作成した保護計画すら見たことのない人もいますし、十分な情報が提供されておりません。このままでは、十分な議論すらなく保護計画が作成されてしまいます。来年四月まで、まだ時間はあります。十分に情報提供し、しっかり議論できるよう都がきちんと対応し、都民の不安の声にこたえることを強く求めて、次の質問に移ります。
質問3 一昨年に起きました新潟県中越地震の直後、私は現地に行って、避難所の手伝いをしながら数日間活動してまいりました。そのときに感じたのは、大変な状況にもかかわらず、弱音を吐かない新潟の人々の我慢強さと、救援物資とボランティアの多さでした。日本もまだまだ捨てたものではないなと思いました。 しかし、せっかくの物資が山積みとなっていたり、多くのボランティアが役割もなく避難所で時間をもてあましていたりと、いかに物資を配り、いかにボランティアの方々に役割を割り振るかといったマネジメントに問題があったように感じました。 大震災の発生時に訓練された消防団員がもっといれば、より多くの方々に救いの手を差し伸べることができると思います。消防団員の意識と資質の向上、訓練にもなりますし、全国規模での消防団の連携強化にもつながると思います。大規模災害発生時に消防団員の派遣を検討すべきと考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼消防総監 消防団員の国内派遣についてですが、消防団は、消防組織法第十八条第三項により「消防長又は消防署長の命令があるときは、その区域外においても行動することができる。」とされておりますが、消防団は、生業の傍ら、みずからの地域はみずからで守るという精神に基づき組織されており、主として自己消防団区域で活動することとしております。
質問4 消防団の士気を高めるためには、現場の意見を団の運営に生かさなければなりません。現在、団幹部会議を初め、分団会議等を開催しておりますけれども、そこで意見を出しても、なかなかその意見が反映されないとの現場の声があります。現場の団員の意見を受け消防庁が取り組んだものが、実際どのようなものがあるのか、所見を伺います。 答弁4 ▼消防総監 消防団員の意見を受けての東京消防庁の取り組みについてですが、消防団と消防署がより緊密なコミュニケーションを図るため、消防団幹部会議や分団会議等に各消防署の職員が出席いたしまして意見交換を行い、分団施設の充実、可搬ポンプ積載車の導入、個人装備品の改善などにその意見を反映させております。
質問5 現在、各分団施設には、さまざまな災害に対応すべく、可搬ポンプを初め数々の装備資器材が配置されております。しかし、緊急時の電源の不足、防火水利の不足、水害時の装備不足、震災時の本部との連絡用として配備された無線機器も、電波が弱い関係で使いにくく、実際には個人の持っている携帯電話を使わなくてはならないなど、大震災などに十分に対応するには、今後もさらなる装備の充実が必要と考えますが、所見を伺います。 以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。 答弁5 ▼消防総監 装備の充実についてですが、震災時等における消防団活動が発災初期の段階から迅速かつ効率的に行われますことは、被害を最小限にとどめる上で極めて重要でありますことから、今後とも必要な資器材の整備を図ってまいります。 |