質問1 自立支援法は、国会審議のときから、障害者と家族に重い負担を強いるなど、厳しい批判が寄せられていました。施行から二カ月ですが、我が党は、実施後の影響調査を都内四百十カ所の通所施設に対し行い、百を超える施設から回答がありました。利用者総数三千五百人を超えています。その結果、利用者負担では、これほどの負担になるとは思っていなかった、施設運営では、減収によって施設の存廃にかかわる大変な事態など、想像を超える深刻な実態が浮き彫りとなりました。 そもそも障害者は収入を得ることが困難で、障害二級年金の場合月六万六千円、それに加えて一万五千円の都の福祉手当と一万円前後の作業所の工賃に頼らざるを得ないのが実態であります。 政府は、負担上限額を設けるなど低所得者に配慮したといいますが、現実はどうでしょうか。我が党のアンケート調査では、施設利用者の九七%が負担増となっており、これまで無料だったのが月額二万円以上の負担となった人が約四割に及んでいます。その結果、十五人が通所を断念し、退所を検討中の人が六十七人もおります。 私自身、本当にひどいと痛感したのは、障害者が作業所で得る工賃よりも施設の利用者負担が上回る事態が起きているということです。作業所で働いていた工賃が月一万円ぐらいなのに、二万円を超える定率負担が生じています。自立どころか就労への意欲を失わせる、何のために働いているのかわからないなど、怒りの声が寄せられています。これでどうして自立支援といえるのでしょうか。 施設の運営も深刻です。これまでも多くの施設は、収入が少ない中でも、職員の献身的な努力によって支えられてきました。ところが、自立支援法によって運営費の単価は下がり、その上、利用者が休んだ日は運営費から減額される、そういう日払い方式に変えられました。その結果、どうなったでしょうか。我が党のアンケートでは、施設の七二%が減収となり、それも約半数の施設が一割から二割も減収となりました。年間三千万円以上も減収する施設もあるのです。 政府や都は、定員の拡大や開所日をふやすことで減収は補てんできるといいますけれども、定員をふやし、土曜、日曜も開所するなど対策を講じても減額が生じる、抜本的な見直しを図ってほしい、人員削減や賃金カットはもうできない、既にぎりぎりです、これが施設からの訴えなんです。 知事、自立支援法施行後の現状をどのように認識していますか。障害者の皆さんの切実な声に耳を傾けて、負担増の状況や施設運営への影響について、都として実態把握に努める必要があると考えますが、どうでしょうか。 また、政府に対し、制度の改善と再検討を行うよう強く要請していただきたいと考えます。答弁を求めます。 答弁1 ▼知事 障害者自立支援法は、自己決定と自己選択及び利用者本位の理念のもとに、障害者施策の一元化や制度運営の安定化を目指し、新たな障害福祉体系を構築するものであります。 この自立支援法の改革の理念は、これまでも都が全国に先駆けて実施してきた、利用者本位の新しい福祉を目指す福祉改革の考え方や取り組みと合致するものであると思います。 今後、この理念の定着を図るとともに、都の先導的取り組みをさらに前進させ、区市町村とともに連携しながら、障害者が地域の中で自立し、安心して暮らせる社会を実現していきたいと思っております。 ▼福祉保健局長 障害者の負担や施設運営についてでございますが、都は、さまざまな機会をとらえて、障害者関係団体や施設運営者等から意見を伺っておりまして、既に実態把握は行っているところでございます。 次に、国に対する要請についてでございますが、都では、障害者自立支援法が真に障害者の自立を支援するものとなるよう、法の成立以前から、ホームヘルプサービスにつきまして低所得者への配慮など、制度の円滑な運営に資するため、必要な国への提案要求を繰り返し行ってまいりました。 なお、法の附則第三条では、法施行後三年または五年後に、施行の状況等について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずることと定められているところでございます。
質問2 十月の自立支援法全面施行に向け、都として緊急の対策が必要です。 第一に、利用者負担の軽減です。 都のホームヘルプサービスに限定して一〇%の定率負担を三%に軽減する措置では不十分です。多くの障害者は、グループホームに住んで、昼間は作業所に通うとか、在宅で作業所、ホームヘルパー、ショートステイを利用するなど、多くのサービスを組み合わせて使うことで何とか生活を支えています。その一つ一つに定率負担がかかります。お金のない人はサービスを使えない、そんな事態は許されません。 だからこそ横浜市では、すべての在宅サービスを対象に、住民税非課税世帯は自己負担なしの無料を継続しているのです。予算的には、人口三百六十万人の横浜市で七億円です。東京ができないはずはありません。 都が実施している三%軽減の対象サービスを、通所施設やグループホーム等にも広げるなど、都の利用者負担軽減策の拡大を提案するものですが、見解を伺います。 答弁2 ▼福祉保健局長 障害者自立支援法では、低所得者に対するさまざまな配慮がなされておりますが、これらに加え、既に都としてはホームヘルプサービス利用者に対する定率負担導入の激変緩和、障害児施設等入所者への医療費助成制度の対象拡大、精神障害者の通院医療費自己負担分の無料化など独自の負担軽減措置を実施しており、これ以上の拡大は考えておりません。 また、横浜市はすべての在宅サービスを対象に無料を継続している、都の軽減措置では不十分とのお話でございますが、障害者自立支援法における定率負担の導入は、サービスの利用者も応分の費用を負担し、みんなで支える仕組みを構築するものでございます。その上で、月額負担上限額の設定や個別減免の実施など、低所得者の方に配慮した軽減策が講じられているものでございます。 都としましては、ホームヘルプサービスが最も基幹的な在宅サービスであることから、法を円滑に施行するため、定率負担導入に係る激変緩和措置を講ずるものでございます。
質問3 第二に、施設運営及び区市町村への支援です。 東京都は、福祉水準を引き上げるため、障害者施設に対し、都加算やサービス推進費などの都独自補助を行ってきました。施設運営は既に大幅減収となっていますが、十月からの全面施行により、一層の減収が見込まれています。それだけに、我が党のアンケートでも、都独自補助は命綱、仮に削減されれば施設を休止せざるを得ないとの切実な声がたくさん寄せられています。 グループホームなど施設は、十月から自立支援法に基づく新体系に移行します。移行後も都加算補助やサービス推進費を維持し、今までの運営水準が低下することのないよう手だてを講じていただきたい。 また、小規模作業所、ガイドヘルパー、手話通訳派遣などは、区市町村の地域生活支援事業に移行しますが、国の補助金はわずかで、現行の都加算補助と同様の都独自補助なしにサービス水準を維持できません。利用者、施設関係者、区市町村からも不安の声が上がっています。都はこの問題をどのように認識し対応するのか、答弁を求めます。 答弁3 ▼福祉保健局長 障害福祉サービスの運営水準についてでございますが、現行の居宅サービスは本年十月から、また施設サービスは五年間の経過措置期間を設けた上で、障害者自立支援法に規定する新体系のサービスに移行しまして、移行後は、提供するサービス内容や利用者の障害程度区分に応じまして報酬額の設定がされていることとなっております。 お尋ねのグループホームに対する都加算補助や民間社会福祉施設に対するサービス推進費助成につきましては、今後、障害者自立支援法の施行状況や報酬体系など国の動向を踏まえ、予算の範囲内で適切に実施してまいります。 次に、区市町村で実施する地域生活支援事業についてでございますが、地域生活支援事業に係る経費は、国の統合補助金により充当されることとなっております。この補助金は、個別事業の所要額に基づく配分は行われず、事業実績割合、人口割合で配分されることとなっておりまして、都としては、これまでも国に対し必要な財源措置を講ずるよう要求してきたところでございます。 地域生活支援事業につきましては、現在、各区市町村において地域の実情に応じた実施方法を検討しておりまして、都としては、区市町村の主体的な取り組みを促進してまいります。
質問4 第三に、精神障害者福祉の拡充です。 精神障害者施策は、知的障害や身体障害者の分野に比べ十分ではないことは、東京都自身も認めてきました。三障害一元化という自立支援法の理念に基づき、おくれている精神障害者福祉サービスの格差是正は急務だと思いますが、認識と対応を伺います。 中でも、心身障害者福祉手当やサービス推進費補助について、身体、知的障害のみ対象という枠を広げ、精神障害者も対象に入れることを求めておきます。 精神障害者が除外されている民営バスの半額乗車制度も、実現に向けて努力を求めるものです。所見を伺います。 答弁4 ▼福祉保健局長 精神障害者福祉サービスについてでございますが、都では、いわゆる社会的入院患者の退院促進や低所得者に対する通院医療費についての独自の助成など精神障害者の特性を踏まえた継続的な支援を行ってまいりました。これらに加えて、障害者自立支援法による新たなサービス体系のもとで、精神障害者に対する福祉サービスの基盤整備を初めとした多様な施策を強力に進めていく必要がございます。 このため、本年一月に策定した障害者地域生活・就労促進三か年プランにおいては、精神障害者のグループホームや通所施設などの基盤整備について計画化し、今年度既に実施しているところでございます。 精神障害者への民営バス割引制度の適用についてでございますが、障害者の運賃割引制度につきましては、鉄道、バス等のそれぞれの事業者の判断と負担により行われているものでございます。 都としては、民営の交通事業者に対し、運賃割引制度の精神障害者への適用を毎年要望しているほか、従前から国に対しましても、精神障害者の運賃割引について関係機関に働きかけを行うよう提言しているところでございます。 |