質問1 観光振興についてお伺いいたします。 石原知事は、就任以来、観光を新たな産業ととらえ、国に先駆けてさまざまな施策を展開してこられました。世界最大の東京国際アニメフェアの開催など、都が打ち出す斬新な取り組みは、目をみはるものがあります。 私は四年前、日中国交正常化三十周年記念訪中事業、東京の翼での中国訪問を含め、今まで世界九十カ国を回ってまいりました。個々の国にはすばらしいところがたくさんありました。また、習慣や考え方、価値観の違いもありました。 私の印象に残っている一つに、ケニアのマサイ族があります。彼らの生活は、大自然の中でのんびり生活し、一夫多妻でした。男性が女性を口説くときの文句は、君は牛のうんちのようだというそうです。なぜ、すてきな女性が牛のふんに例えられるか。聞けば、牛のふんは家の壁にもなり、燃料にもなる、なくてはならないものということです。また、マサイの男性が女性と結婚する条件として、生活力のあかしとして、生きたライオンを一頭、やりでしとめるという習慣があるそうで、最近はライオンも少なくなって、東京のように少子化になるのではないかと心配しているところであります。 このように、考え方や価値観の違いを体験することも、国際観光の大きな目的の一つでしょう。 さて、東京を訪れる外国人観光客が平成十二年には二百七十七万人でしたが、四年後の平成十六年には五〇%を超える伸びを示し、今後さらに増加を期待するところであります。外国人観光客を一過性のものに終わらせず、リピーターとして何度も訪れてもらうようにするには、旅行者が日常生活の一端に触れることのできる都市にしていく必要があると考えます。 そこで、提案ですが、テーマごとにスタンプラリーをやってみてはいかがでしょうか。例えば自然のテーマでは高尾山、伊豆七島、エンターテインメントでは後楽園、豊島園、アニメでは秋葉原、三鷹の森ジブリ美術館などが挙げられます。芸術では浮世絵、歌舞伎など、スポーツでは大相撲や剣道、柔道、弓道などが挙げられるでしょう。 伝統・歴史のテーマでは、例えば佃島に観光スポットを当ててみましょう。葛飾北斎の「富嶽三十六景」の一つに、この佃島の絵があります。一六四五年、徳川家康が摂津の国の佃村の人々を連れてきたことから、佃島と呼ばれるようになりました。ここはつくだ煮の発祥の地であり、現在でも老舗が三軒あります。歴史がある住吉神社は有名ですし、また、隅田川沿いには、三百二十年間地元の人々の大切な交通手段であった佃島渡し船の碑があります。 少し足を伸ばせば、もんじゃ焼きで有名な月島もあります。対岸には東京水辺ラインの船着き場、明石町・聖路加ガーデン前があります。浅草から乗船して、ここで下船し、佃大橋を渡ると、古い歴史と並んで、映画やテレビのロケで使われている美しい水辺があらわれます。都の政策に東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想がありますが、こんなコースも観光の視点を含めて期待するところであります。 生活というテーマでは、例えば銭湯に観光スポットを当ててみてはいかがでしょうか。今月一日に三十円値上げし、四百三十円になりましたが、何といってもまだこの料金で体験できるのが魅力的です。 それは、式亭三馬の「浮世風呂」に見られるように、銭湯は江戸庶民の生活の一部でありました。現在でも、日本人の素顔に触れることのできる格好の場といえるのではないでしょうか。しかし、銭湯は入り方やマナーがあります。こうした情報も、観光客が利用しやすいように、事前に知ってもらうことも肝要でしょう。 さて、グルメのテーマでは、てんぷらやすしはもとより、日本古来の発酵食品や、日本酒の蔵元や地ビールの工場などを訪ねるコースもよいのではないでしょうか。平成十七年第三回定例会の一般質問でも、我が会派の岡崎議員が食文化に触れる質問をしているほか、ことし三月の予算委員会では、メニューの国際化にも言及があり、大変参考になったところであります。 このようにテーマごとにスタンプを集めていくと、東京の素顔が少しは見えてくるのではないでしょうか。また、新たな観光スポットとなった地域では、その取り組みを通して地元の価値を再認識したり、誇りを持ったりいたしますし、一方、観光客に対して、商店街、地域、学校などにもてなしの精神が広がるのではないでしょうか。 最初は限定された狭いエリアでも、年を重ねるごとにそれは面になり、いつしかは東京全体に広がり、知事が憂えている現代人のマナーやモラルといった精神面、教育面にもよい影響が期待されます。 また、毎年テーマと場所を変えることによって、東京にいつ来ても違った楽しみに出会えます。そして、集まったスタンプを近くの役所に持っていくと、例えば、地元の物産や都知事の似顔絵入りの携帯ストラップとか、世界に誇る都の水道局の「東京水」をもらえるなど、そういった楽しみがあってもよいのではないでしょうか。 観光と名のつくセクションが置かれていない自治体は存在します。区市町村によって、観光振興の推進体制に差が見られるのも現状であります。地域ならではの観光資源を掘り起こすとともに、区市町村の枠にとらわれず、有機的に結びつける取り組みを都としても積極的に支援すべきと考えますが、ご所見を伺います。 答弁1 ▼産業労働局長 広域的な観光資源の活用への支援についてでございます。 観光振興に当たっては、点在する観光資源を掘り起こし、それらを有機的に結びつける観光まちづくりが重要でございます。 このため、都は、浅草・両国や青梅・奥多摩の地区におきまして、近接する観光地の連携を図り、観光メニューの充実や回遊性の向上を目指す広域的な観光まちづくりの支援を行っております。今後とも、区市町村の枠を超えた地域の主体的な取り組みを支援してまいります。 なお、お話しのテーマ別スタンプラリーにつきましては、観光資源を有機的に結びつける手法の一つとして研究してまいります。 質問2 外国人は東京の物価が高いとの印象を抱いているといわれております。交通費、宿泊費などの一部を除けばそれほどではなさそうです。 交通費については、一例ですが、東京メトロ、JR、都営交通など、一日乗り放題になるチケットなどをそれぞれ利用することによって、交通費を抑えられます。 宿泊では、今、労働者のまち山谷が世界に注目されつつあります。それは、労働者がいっときの三分の一に減り、ホテルにも影響が出て、その活路を外国人に向けたホテルがあらわれたことです。私も、先日、そのホテルに一泊二千五百円で泊まってまいりました。必ずしも快適とはいえません。それでも安く宿泊しようと思ったら十分でしょう。このような情報もわかりやすい案内をしてはいかがでしょうか。 そのほか、どうすれば落語を聞けるのか、どこに行けば茶の湯を体験できるのかといった情報を得るのも難しそうです。 そこで、外国人観光客が東京の観光を入手するために最も有効な手段の一つがインターネットです。都では、観光情報を提供する専門のウエブサイトを立ち上げ、現在七言語による観光情報の提供を行うなど、利便性の向上に努めてきています。今後も引き続き、旅行者のニーズに応じた観光情報の提供を一層推進するなど、ウエブサイトのさらなる充実を図るべきと考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。 答弁2 ▼産業労働局長 多くの外国人旅行者に東京を訪問してもらうためには、海外に東京の魅力を積極的に伝えることが必要でございます。 このため、ウエブサイト「東京の観光」におきまして、東京の暮らしや気候、交通等に関する基本情報などを、英語やドイツ語など七言語で提供しておりまして、外国語版へのアクセス数も、現在年間八百万件を超えております。 今後は、このウエブサイトについて、言語の追加を図るとともに、他の観光関連サイトとの効果的なリンクや情報内容の充実などに努めてまいります。 質問3 我が国の観光行政において、徳川幕府が初めて海外渡航を許可した年が慶応元年でした。明治四十五年、それはジャパン・トラベル・ビューローが鉄道院の外局として設置された年であります。また平成十四年、この年は、都において観光を目的とした宿泊税が導入され、翌年の国会で観光立国宣言を小泉総理大臣が施政方針で述べるに至った年であります。その後の韓国、台湾からの旅行者に対する観光ビザの免除などは、国をも動かす原動力となった年であります。つまり、これらの年は観光立国を導いた年といえましょう。 さて、都は、二〇一六年の東京オリンピック実現に向け、本格的な誘致活動を開始しました。また、来年二月には、世界レベルの大会である東京マラソンが開催されます。 先日発表された二〇一六年東京オリンピック基本指針には、大会の基本コンセプトの一つに、もてなしの精神にあふれ、日本文化を堪能する大会が掲げられています。都民一人一人がおもてなしの心を持つことが重要です。もてなししたいと思っても、言葉が通じないということがあります。しかし、仏教では和顔愛語という言葉があります。仮に言葉が通じなくとも、笑顔が何よりももてなしになるでしょう。 前回のワールドカップサッカー大会で、カメルーン国の選手を受け入れた旧中津江村の坂本休元村長と最近お話しする機会がございました。人口わずか千三百六十二人、言葉の問題もありましたが、カメルーン選手が一日でも長く快く過ごせるよう、村民が一丸となって頑張りましたとの言葉が印象的でした。 さて、都知事は今、政治家と執筆家としての二刀流の達人でありますが、やはり二刀流で有名なのが宮本武蔵、宮本武蔵といえば「五輪書」があります。その真髄は真心であり、思いやりともいわれております。 スポーツ全体にいえることですが、メダルの色や数がとかく話題になりがちです。もちろんそれは大切です。しかし、大会が終わって、選手や関係者、観光客が自宅に戻ったとき、本当によかった、また東京に行ってみたいといわしめたとき、成功をおさめたといえるのではないでしょうか。 知事はこのたび、ロンドンとマン島を視察してこられました。都としても参考とすべき点が多かったのではないでしょうか。東京オリンピックを見据えたプレイベントとしての東京マラソンの開催に当たって、東京ならではのおもてなしの精神が随所で遺憾なく発揮され、東京の魅力の一つとして、世界に広く発信されることを期待します。 そこで、改めて、もてなしの精神を理論から応用、実践へと、都民に対してどのように具現化されるのか、お聞かせください。 観光という字は「光」を「観」ると書きます。光輝く東京を世界に見せられるのか、一千二百万人の頂点に立つコンダクター、それは石原都知事であります。 ご所見をお伺いしまして、私の一般質問を終わりにさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。 答弁3 ▼知事 石毛しげる議員のなかなかユニークな一般質問にお答えいたします。 東京オリンピックや東京大マラソンにおけるホスピタリティーについてでありますが、先般、マン島の公道を利用したオートバイレースを視察して、いろいろ得るところがございました。感心しましたのは、マーシャルと呼ばれるボランティアの方々が、実にたくさん綿密に会場整理から大会全体の運営までを支えていたことでございまして、これは、日本でも元気な、既にリタイアされた高齢者がたくさんいるわけですから、人材の供給という点では十分に可能だと思っております。 特に、モータースポーツを心から愛する島の年齢者の方々が非常にたくさん参加しておられまして、いかにもその姿勢が、我が島、我がまちを愛するという心遣いが如実にあらわれておりまして、オリンピックやマラソンなどの国際的なビッグイベントを東京で開催する場合にも、アスリートたちが実力を遺憾なく発揮して、観客も含めてそのスポーツを楽しむためには、これを単に見守るだけではなくて、都民一人一人が催し物に参加しようという意識で、ホスピタリティーの精神を発揮しながら、自発的かつ積極的に参加することが不可欠であるということを痛感いたしました。 例えば、東京マラソンの応援についても、コースの沿路の方々にお願いしまして、それぞれのまちの情緒などを、特性を反映した心の温まる応援を地域ごとに展開していくことが必要であると思います。 そういう点では、商店街の方々あるいは青年会議所の方々、特に日本の神社は、宮司さんがいなくても非常に氏子さんたちがきれいに整備しておりますが、こういう心遣いを人間対人間ではもっと如実に発揮できるわけでありまして、そういう方々にご協力を願いながら、東京大マラソンはもとより、オリンピックについても、東京ならではのホスピタリティーを存分に発揮して、これを盛り上げ、成功に導いていきたいと思っております。
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