平成18年第2回定例会 一般質問

膨大な給食残菜の発生抑制を
到達目標で学力低下に歯止めを

近藤やよい(自民党)
■学校での食育
 
質問1
 アジアやアフリカの途上国といわれる国々では、毎日約一万五千人の子どもたちが、食べ物がないために死んでいることが知られています。
 一方、現在の東京都では、公立小学校と中学校の給食の食べ残しが年間合計して約七千トンを超え、その大部分はごみとして処理されています。単純に、七千トンの食べ物があれば、約一万九千人もの子どもたちの命が救えるという計算もできます。つまり、世界じゅうの飢えに苦しむ子どもたちの命が救えるというこの七千トンの給食の食べ残しが、都ではごみとして年間処理されているという事実に、強い憤りを感じます。
 そこで、現在都は、給食から生じる残菜の発生抑制のために何らかの対策を講じているのかどうか、また、教育現場で、食べ物は好き嫌いなく、バランスよく食べるというごくごく基本的な指導がきちんと行われているのかどうかという二点の観点から質問を行います。
 子どもたちの食事に、好きなものだけしか食べない傾向が目立ち始め、バランスのよくない食事により、運動能力が低下し、子どもの糖尿病患者が二十年で二・七倍、脳梗塞や心筋梗塞にかかりやすい高脂血症の小学生は十人に一人、その数は、十五年で一・五倍に増加していることが明らかになっています。好きなものばかり食べることを許す環境のもとで、このままでは、ごみとして処理される食べ物の量がますますふえることが懸念されます。
 都は、平成九年度に、事業系生ごみに係る使用量、廃棄量及び内容物その他の調査を行い、最も生ごみの発生量が多いのは、ホテルでもなくレストランでもなく、公立中学校の給食の残菜であることを明らかにしました。また、十二年度には、ああ、もったいないというタイトルで生活を振り返り、物を大切にしてごみを少なくするための冊子を作成し、学校や家庭に配布されました。
 ノーベル賞受賞者のマータイさんや我が国の大臣がふろしきを振りかざし、もったいない運動を展開するずっと以前から、学校給食の残菜の多さに着目し、ごみの発生抑制に対して、もったいないという視点から啓発活動を展開されたことは、当を得ていたと評価します。しかしながら、せっかくの先見性ある取り組みが途中で立ち消えた感があり、残念でなりません。
 一般廃棄物の処理が二十三区に移管された今も、廃棄物の減量に関する都民への意識啓発は、あくまでも知事の基本的な責務であることは、条例上でも明らかです。現在教育庁では、くらしと環境学習の小学生向けウエブページの中で、皆さんの学校やクラスで給食の残菜調査をしてみましょう、調べた結果をグラフにまとめ、わかったことや考えたことを発表してみましょうと、子どもたちには問題意識を強く植えつけていますが、自分たちは、給食の食べ残しの発生抑制を促す積極的な対策を講じてはいません。子どもたちに対する啓発活動を強化することはもちろんですが、都自身も、もっと積極的な施策を展開していただきたいものです。
 給食の残菜の量は、自治体や学校の取り組み次第で大きく左右されるとの報告もあります。環境局においても、当初の先駆的な視点を大切に、いま一度実態を正確に把握し、その上で発生抑制に係る啓発活動に努めるべきと考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁1
 ▼環境局長
 学校給食などでの食べ残しをなくすことは、ごみの発生抑制の観点からも大変重要であると認識しており、さらなる取り組みを進める必要があると思います。
 このため都は、広域的自治体として区市町村を支援する立場から、今後、ホームページに小中学生向けのページを新たに設け、食べ物を大切にすることなどを含め、ごみの発生抑制の重要性を訴えてまいります。
 また、教育現場でのごみの発生抑制の指導に活用できるよう、各区市町村の学校のごみ排出状況を調査し、そのデータを関係局などを通じて積極的に提供してまいります。
 

 
質問2
 教育の現場に目を向けてみますと、無理に給食を全部食べろというと登校拒否になる危険があり、その方が怖い、家庭でも好き嫌いを容認している風潮があり、学校で食べ残さないよう教えると、その親から抗議の電話が入ったりして指導しづらいという先生方のお話を伺いました。正直、腰が引けているな、弱腰だなという印象を受けましたが、うちの何々ちゃんの嫌いなピーマンを無理に食べるようにいうなんて、なんてひどい先生なのと(笑声)、文句をいってくるような保護者を相手にしなければならないのが現場の先生方です。
 そこで、いま一度、都の基本的な食に対する方針を明らかにして、子どもばかりでなく保護者も再教育するとともに、ケースに応じた具体的な指導方法を示すことで、子どもの個性に応じたきめ細かい対応を可能とし、好き嫌いをせず、バランスよく、残さず食べるというごくごく基本的な指導を現場できちんと行える環境づくりが必要と考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 基本的な食に対する方針についてでありますが、近年、偏食や朝食欠食など、子どもの食生活に乱れが目立つようになっており、生涯にわたる健康づくりの基礎を培うためにも、学齢期におけます望ましい食習慣の確立が大変重要になっております。
 食育の基本はもちろん家庭でございます。学校給食におきましても、食べ残しを単に注意するような画一的な指導ではなく、個々の児童生徒の実態に即した、きめ細かい給食指導が必要となっております。
 そのため、都教育委員会では、区市教育委員会や校長などによります公立学校における食育に関する検討委員会を設置し、食育の目標や食育推進の基本方針などについて、本年七月を目途に検討を進めており、その中で、給食指導の内容につきましても議論を深めてまいります。
 今後、この検討結果を指針としてまとめ、各学校に周知し、学校、家庭が連携した取り組みを推進してまいります。
 

 
質問3
 現在、食に関する指導研修は、学校栄養職員など一部の関係者だけを対象として行われていますが、管理職はもとより、子どもと実際に食をともにする教員全体にまでその対象を広げ、意識の向上を図る必要があると考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 食に関する指導の研修についてでありますが、食育を推進するためには、各学校において、すべての教職員がその重要性を認識し、給食指導や教科などで食に関する指導に取り組むことが必要であります。現在、食育に関する検討委員会におきまして、食に関する教員研修の実施方法を検討しているところであります。
 今後、検討結果を踏まえ、都教育委員会では、区市町村教育委員会と連携し、教員研修の充実を図ってまいります。
 また、野菜を栽培するなど、生産体験を通しまして偏食を克服した取り組みなど、食に関する指導の実践事例の情報を、新たにホームページなどを通じて広く提供していくことなどによりまして、教職員の資質の向上に努めてまいります。
 

 
質問4
 今回、質問を通じて、食に対する自治体の取り組みにかなりの温度差があることを知りました。区によっては、学校ごとに給食の残菜の量を明らかにして順位づけ、食に対する取り組みの指標としているところもあるそうです。
 都も、今回初めて、そのような取り組みをしている自治体があることを認識したとのことですが、食の問題を教育の立場から広域的に取りまとめるべき都教委としては、少々取り組みが甘いのではないでしょうか。自治体や学校別の取り組み方法などを把握し、それが食べ残しの量にどのような影響を与えるかなどを分析し、その内容を明らかにすれば、対応に消極的な自治体や学校への一つの警鐘となるはずです。
 また、一方で、モデル地区やモデル校を選定し、あらゆる場面で食に対するさまざまな試みを行うなど、都の積極的な方向性を明らかにすべきと考えます。ご所見を伺います。
 
答弁4
 ▼教育長
 残菜量の実態把握やモデル校などについてであります。
 現在、学校給食における残菜量につきましては、文部科学省の委託により調査しているところでありますが、今後その結果を料理別、校種別等で比較できるよう集計いたしまして、区市町村教育委員会へ情報提供してまいります。
 また、小中学校や区市町村教育委員会においては、残菜量を調査し、献立作成の工夫や給食指導に生かす取り組みで成果を上げている事例もあることから、都教育委員会として、こうした取り組み事例を教職員を対象とした研修会において紹介するなど、すべての学校で食育の推進が図られるよう、普及啓発に取り組んでまいります。
 なお、食育を推進するに当たりましては、ご提案の食育推進モデル校の指定は大変有効な手法だと認識しております。食育に関する検討委員会において議論してまいります。
 

 
質問5
 あふれ返る物に囲まれ、ダイエットと称して給食を残したり、好き嫌いが激しく、嫌いなものには一切手もつけないなどの子どもたちの食生活の実態を、知事はどのように感じていらっしゃるのでしょうか。
 また、今後都は、家庭と学校が等しい認識のもと、密接に連携しながら、子どもたちの心と体の健康を守るため、または取り戻すために、食に対する教育に取り組んでいかなければならないと考えますが、知事のご所見を伺います。
 
答弁5
 ▼知事
 子どもたちの食をめぐる状況についてでありますが、子どもたちの偏食や朝ご飯を食べられない、食べさせてもらえない、あるいは家族全員が食卓を囲んでの団らんがほとんど経験されていないなどのゆがんだ食に関する習慣は、生活規範そのものの乱れであると思います。世の中随分ぜいたくに豊かになってきましたが、一方では、こういう肝心の食に関してゆがんだ現象があらわれているわけでありまして、食育の基本は家庭でありますが、現在は、核家族化などによりまして、子どもたちに必要な食に関する伝統・文化が家庭においても継承されにくくなっております。
 昔は、お母さんのつくったお弁当をみんな持ってきて学校で食べたものですけれども、給食の時代になりましたが、あるとき、ある学校で、たまにはお母さんの愛情をお弁当で感じさせるために、日を決めて、お母さんにつくってもらった弁当を持ち寄るようにと先生が子どもたちに命じましたら、ある家庭では、お母さんが弁当をつくるのが面倒くさくて、カロリーメイトを二本、要するに箱に入れて持たせたそうでありまして、こうなってくると、一体、親子の食を通じての関係はどうなったかという暗たんたる気持ちになります。
 今後は、たくましく生きていく子どもたちをはぐくむためにも、学校においても、ご指摘のように先生たちが腰を引かずに、食育を充実させていくことが大切であると思います。
 学校と家庭が共通の認識を持ちまして、食育の推進を図っていく必要があると思っております。
 
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■学力の低下
 
質問1
 以前に、ある定時制高校の授業の様子を伺う機会がありました。入学したばかりの生徒の数学の授業では、長方形の面積の求め方、分数の計算から指導するとのことでしたし、中学においても、小学校で当然身につけているはずの掛け算九九ができない生徒が相当入学し、困難な指導を余儀なくされているというお話もありました。
 また、ある都立高校の校長先生は、入学試験では自分の名前を漢字で書かせるからいいものの、もしローマ字で書かせるとするならば、自分の名前すら書けない高校生が大勢いるとおっしゃっていました。
 こうした現場の深刻なお声を聞くと、都教委による小中学校の学力調査の結果はおおむね良好であるとの分析に、素直にうなずくことはできません。中学生、高校生になっても、小学校で身につけるべき学習が身についていない子どもたちが相当数いるという現実を、都はどのように認識していらっしゃるのでしょうか、まず伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 学力の定着が不十分な児童生徒の受けとめについてでございます。
 国際的な学力調査の結果では、日本の子どもの場合、読解力を問う問題や数学の得点分布から、中位層が減り下位層がふえているという指摘がございます。また、東京都の学力向上を図るための調査の結果から、全体的にはおおむね良好ではございますが、個々の学習状況では、基礎的な漢字や計算につまずいている児童生徒がいることが明らかになっております。
 都教育委員会は、こうした状況は、児童生徒がその後の学校生活や社会生活を送る上で見過ごすことができない問題であると認識しております。
 

 
質問2
 勉強すればだれでも自分の将来に一定の希望を持てることを信じられた時代は終わり、自分の努力が報われることを見出して努力できる子と、そうでない子との二極化、いわゆる希望格差の問題が指摘されていますが、私は、いわゆる読み書きそろばんは、凡人が生きていく上で、自分を守る最低限必要な力であると考えておりますので、ごく基本である掛け算九九を確実に身につけさせないまま、見て見ぬふりで中学校への進学を許す現場教師や都教委の姿勢は、将来の希望が持てる持てない以前に、子どもの可能性を奪ってしまうという意味において、見逃すことはできません。
 そこで、都教委は、中学生になっても小学校で学習すべき内容を理解できないような成績低位層の子どもたちの実態と課題をどのように把握していらっしゃるのでしょうか。また、もし把握していないとするならば、その原因も含めて、早急に調査すべきと考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 学力の定着が不十分な児童生徒の実態把握についてであります。
 都教育委員会は、これまでの調査におきまして、各教科の全体的な傾向や問題ごとのつまずきなどを明らかにすることによりまして、児童生徒の学力の現状と課題を把握してきたところでございます。
 学力の定着が不十分な児童生徒の学力向上を図るためには、ご指摘のとおり、一人一人に焦点を当て、理解や習熟の程度を把握することが必要であるというふうに認識しております。
 今後、都教育委員会は、こうした児童生徒の実態をより具体的に把握するために、新たな調査の実施に向けて、その内容や方法を早急に検討してまいります。
 

 
質問3
 学習指導要領には、教師が当然指導するべき内容が明らかにされてはおりますが、それは決して、すべての子どもたちが必ず到達しなければならない目標として教員を縛れるものではありません。だからこそ、中には、教員の義務は指導要領に書かれていることをとりあえず教えることであり、子どもがその内容をどの程度理解して身につけているかどうかは責任外と考える教員もおり、現場で報告されているような、小学校で当然身につけていかなければならない内容が欠落している中学生や高校生が生まれてしまうのです。
 そこで、このような無責任な教員の態度を今後一切許さないために、都は独自に、小学生が生きていく上で最低限これだけは確実に身につけて卒業しなければならないという到達目標を取りまとめ、すべての子どもたちが確実に身につけられるまで徹底して指導しなければならない内容として教員に示し、教員の責任範囲を明確にするべきです。ご所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 学力を着実に身につけさせる方策についてでございます。
 学力の定着が不十分な児童生徒に確かな学力を定着させるためには、確実に身につけさせる内容について、教師が指導の到達目標を明確にして指導に当たることが重要でございます。
 今後、都教育委員会は、こうした児童生徒の実態を踏まえ、ご指摘のとおり、漢字や掛け算九九など、小中学校の各段階で最低限だれでもが確実に身につけるべき学習内容を学校に明らかにして、教師が指導の到達目標を設定する際に活用できるよう、区市町村教育委員会と連携して、児童生徒の学力向上に努めてまいります。
 
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■動物愛護管理法の一部改正
 
質問1
 動物保護のボランティアの方々から話を伺ってあ然としました。あるペットショップから、皮膚はぼろぼろで毛が半分抜け落ちている犬、手の先の毛がはげて骨が見えているウサギなどを店主の了解を得て保護し、獣医師の診断を仰いだところ、極端にやせていて、きちんとえさも与えられておらず、死ぬ一歩手前の状態と診断され、水もなかったり、あっても汚れていたりと、極端に不衛生な環境で数年間過ごしてきたことが明らかになりましたが、このペットショップが、都による一定の指導は受けてはいるものの、現在も都内で大手を振って営業を続けているというのですから、驚きです。
 動物をともに生きる人生のパートナーと扱う人がふえている今、ペットショップなどの動物販売業者が衛生的な環境のもとで病気のない健康な動物を取り扱うよう、都が指導や監視体制を強化し、悪質な業者をのさばらせない体制づくりをすべきと考えます。
 そこで、改正動物愛護管理法の施行の今を好機として、繰り返し指導を受けているような悪質なペットショップに対しては、目先の一時的な改善でよしとせず、抜本的な解決がなされぬうちは安易に登録に応じないよう、慎重の上にも慎重を期した対応をすべきと考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 動物販売業の登録時の指導についてでございますが、改正動物愛護管理法の施行によりまして、これまでの登録業者も、一年以内に新たな登録が必要となりました。この登録に当たりましては、申請書類の審査のみでなく、動物監視員が店舗に赴きまして、施設の構造設備や動物の管理方法等についても審査することとしております。
 現在、改善指導中の事業者につきましては、法の基準に照らして、勧告等も視野に入れた厳格な対応を行いまして、改善が見られない場合は、登録を拒否することとなります。
 今後とも、動物の愛護及び都民の健康確保の観点から、動物取扱業者の指導を徹底してまいります。
 

 
質問2
 二十三区内の千百三十九軒のペットショップに対して、指導などに当たる都の職員はわずか七人です。それでも厳正を期する努力をされている姿勢は認めますが、決して十分とはいえません。
 そこで、地元から直接ペットショップのにおいや鳴き声などの苦情を受けることの多い区市町村の職員との連携を密にして、よりきめの細かい指導監視体制を構築するべきと考えますが、ご所見を伺い、質問を終わります。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 監視指導体制の充実についてでございますが、ペットショップのにおいや鳴き声などにつきましては、身近な区市町村にも多くの苦情が寄せられており、こうした動物販売業に関する問題を解決するためには、都の監視指導とあわせまして、地域の実情を把握している区市町村が生活環境にかかわる日常的な指導を行うことが非常に有効であると考えております。
 都は、新たに苦情対応事例集の作成や実務研修の実施など、区市町村の取り組みを積極的に支援するとともに、動物販売業に関する苦情やその改善の状況について、区市町村との情報交換を密にいたしまして、監視指導を強化してまいります。
 
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