二〇一六年の東京の都市像は 臨海三セク破綻の原因と責任は
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初鹿明博(民主党) |
■二〇一六年の東京の都市像 |
質問1 都政運営、中でもオリンピックについて伺います。 先月十二日、都は、二〇一六年東京オリンピックの基本方針を発表しました。その中で、二〇一六年の東京の都市像を明らかにし、これを都市戦略と位置づけるとしています。 都議会民主党は、かねてから、今後の都政における長期構想を策定することを求めてきました。前定例会においても、二〇一二年オリンピックを開催するロンドンにロンドンプランがあるように、二〇一六年オリンピックに向けて東京のまちづくりの長期構想を策定し、財政面も含めて、確かな都政の道筋を示していく必要があると述べたところです。 あたかも私たちの声に呼応するような形で、都は、二〇一六年の東京の都市像の策定をオリンピック基本方針に盛り込みました。さらには、石原知事みずからがロンドン市に飛び、リビングストン市長と会談するとともに、共通の都市問題の解決に向けた包括的な政策協定を締結したと聞いています。 まず、今回のロンドン市訪問の意義と政策協定を結んだねらいについて、知事に見解を伺います。 答弁1 ▼知事 ロンドン市との話し合いについてまずお答えしますけれども、総じて私が感じた強い印象は、彼らがオリンピックというイベントを、理念もさることながら、実に実務的、実利的に認識して、それを活用しようという、そういう基本的な姿勢でありました。 ロンドンは、東京同様、非常に機能の集中した、それに伴う環境、交通問題の顕在化など、極めて東京と類似した状況に置かれております。また、オリンピックの開催と、それを契機とした都市のリフォーム、つくり直しという共通の目標を有しておりますが、ただ、ロンドンの場合には、日本と違って、イーストロンドンという非常に広範囲の、しかも手つかずの、非常に粗雑なままに放置された地域がありまして、それを再生させるという非常に集約的な目的があるわけですけれども、日本の場合には、ロンドンに比べますと、こういう広域が手つかずにあいているという、活用されていないというところはございません。 ただ、やはり問題は、いわゆる木密地域という、災害に非常に弱い地域がかなりの部分、かなりの広範囲にあるということでありまして、そういう点では状況も違っていると思いますが、いずれにしろ、ロンドンの場合には、イギリスすべての土地が王様の土地であるという一種の黙約がありまして、収用も割と簡単に一方的にできる状況にありますが、日本の場合にはそうはいきません。その点、東京は、既に手つけている、完成間近な広大なスペースがお台場にもあるし、また、移転する築地にもあるということで恵まれていると思って、これを向こうも非常にうらやましがっておりました。 いずれにしろ、こうした課題に共同して取り組むべきという思いは両者の共通したものでありまして、今回の会談の結果は、都市の再生、交通政策、環境問題、治安対策、そしてスポーツ・観光振興、文化の交流という六つの政策分野で連携していくことに合意をいたしました。この提携によりまして、両都市に共通する政策課題の解決を図っていくために実務的な協力関係を構築することができたばかりでなく、東京自身も東京オリンピックの招致に弾みがついたものと考えております。
質問2 ロンドンプランでは、将来にわたるロンドン市の発展を構想し、郊外のグリーンベルトを維持し、中心市街地では都市開発を積極的に進める、開発度が低く移民などが住む貧困地域イーストロンドンを集中的に開発する、そこには商業施設や国際コンベンションセンターなどの観光施設を配置するとしています。そして、このプランで構想した都市像を具現化するためにリビングストン市長が導き出した答えが、イーストロンドンをメーン会場とした二〇一二年オリンピック招致だったのです。 ロンドンと同様に東京においても、目指すべき未来の都市像がまず先にあって、その中にオリンピック招致が位置づけられるべきです。今回の二〇一六年の東京の都市像は、オリンピック基本方針の中の一項目として打ち出されたものであり、現時点では、招致に向けた道具立ての一つでしかないという印象を受けます。 そこで、二〇一六年の東京の都市像の今後の都政における位置づけと、策定に向けた基本的な考え方を伺います。 答弁2 ▼知事本局長 オリンピックが都市に加速度的な変革をもたらすことから、これをてこに、これまでの東京の自己変革をさらに進めていくことが重要であります。 このため、二〇一六年の東京の都市像を明らかにし、これを都市戦略として位置づけ、策定に当たりましては、三環状道路の整備などによる高効率的な都市の実現や、世界をリードする環境対策の推進など、東京をさらに機能的で魅力的な都市につくり変えることを目指してまいります。
質問3 今までの石原都政は長期的視野に立った展望が欠けていたと、私たちに限らず、都政にかかわる多くの人が指摘してきました。今回の二〇一六年の東京の都市像が、今後十年間において、東京のまちが、そして都政が目指す姿を明示する日本版ロンドンプラン、東京プランとなることを大いに期待しています。 この都市像について、知事は、オリンピックを核とした東京のリフォームのグランドデザインを示す、もっと機能的な都市で、環状線もできれば、二〇一六年には随分変わっていると語っています。しかし、そうしたハード面ばかりでなく、ソフト面、社会政策の面からも、東京の目指すべき都市像を語ってほしいと思います。 ロンドンプランでも、社会的包容力を高め、貧困と差別に取り組むことを政策目標の一つとして掲げています。オリンピック招致においても、そうした理念を招致計画に盛り込み、それがロンドンに対する高い評価にもつながったといわれています。 スポーツに夢を描く子どもたち、江戸しぐさを身につけた江戸っ子の末裔たち、そして東京を訪れる世界じゅうの人々が生き生きと生活し、都市の活力につながる、そんな東京の目指す社会の姿を構想していただきたいものです。知事の見解を伺います。 答弁3 ▼知事 東京が目指す将来の姿についてでありますが、これは、大きなのや小さなのや、具体的な問題でありまして、いずれにしろ、東京はかなりの部分、充実、成熟していると思いますが、致命的な欠点は、再三申しておりますように交通事情です。このほったらかしにされていた圏央道、中央環状という環状線ができましたら、東京の非常に大きな欠点、唯一とはいいませんが、大きな欠点であります渋滞は、完成と同時に速やかに緩和されるわけでありまして、そういう点で、これをいかにきちっとした国のテーブルに高いプライオリティーでのせるかということが肝要だと思いますが、その努力もしてまいりましたけれども、いずれにしろオリンピックがその引き金になればと思っております。 昔から歌にも、ぼろは着てても心はにしきというような言葉がありますが、しかし、やはり都市はハードが整備されなければ、そこに住む人間たちのソフト面での充実もあり得ないと私は思います。
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■東京オリンピック |
質問1 さて、オリンピック基本方針についてです。 先日、メーンスタジアム、選手村、メディアセンターの主要三施設の予定地を視察し、施設がこれだけ近くに配置されるオリンピックは過去に例がないと感じました。都が新たに用地を購入する必要のない点も評価はできます。しかし、国際社会に訴えかける理念の面では、不十分という感が否めません。 理念をめぐっては、既に二月、有識者による基本構想懇談会の報告書が発表され、私たちは第一回定例会の代表質問で、国際社会に通じる理念としては不十分だと指摘し、知事も、あの報告書が十全のものだとは思っていないと答弁されています。しかし、私たちの見る限り、今回の基本方針も、懇談会の報告書を基本的にただ踏襲しただけのように思われます。 アジアで初めての二回目のオリンピックを前面に出し、さきの所信表明でも強調されていますが、果たして世界の人々にどれだけのアピールになるのか、甚だ疑問です。ロンドンの成功から、近年のオリンピック招致では理念の重要性が増してきたといわれています。どのような理念を打ち出すかは、国内選考を行う五十五名の投票行動にも大きく影響するはずです。 今月末には、開催概要計画書をJOCに提出することになります。基本理念は、都としての国際性や特徴を反映させねばなりません。締め切りを前に、東京はどのような理念を打ち出すのか、今の理念で十分と考えているのか、基本方針を書いたという知事自身に率直に伺います。 答弁1 ▼知事 東京オリンピックの基本理念についてでありますが、ロンドンと話しまして、お手元にもこの資料を配ったと思いますけれども、幾つかなるほどなと思ったことがありますが、ロンドン自身も、オリンピックの基本理念というのは、周囲の情勢が変わるたびに随分変えたと、くるくるくるくる。どういうふうに変えたかはつまびらかにしませんけれども、これは何もオリンピックの招致の決定の決して決定的な理由にはならない。それはそうでしょう、これから世界情勢がどう変わるか知りませんが、もちろんオリンピックというのは要するにスポーツの祭典でありまして、これは平和と友好、発展ということは論を待たないわけでありますけれども、それプラス、さらに具体的にそれをどういうふうに理念としてパラフレーズするかといえば、これはやはり状況の変化に応じて違ってくると思いますし、また、かなり抽象的ないい分に聞こえるかもしれませんが、今までなかった――ロンドンまでが恐らく二十世紀の形のオリンピックでありましょう。 私は、コー氏にも、ほかのもう一人の委員にもいいましたが、東京がやろうと思っているのは、世界にない先端技術を駆使した、今までに全くなかった形のオリンピックというものを必ず実現してみせる。具体的にそれは何かといわれれば、ちょっと手の内を明かすわけにはいかないので、今ここで申しませんし、どこかの国に盗まれたらえらいことになりますから。そういった点、幾つかさらに具体性のある理念といいましょうか、特性というものを、私たちはこの東京ならでは、必ず実現できると思っております。 それから、ついでに申しますと、三多摩の協力云々ということがありましたが、これはやはり三多摩の首長さんたちにもわかっていただきたいんですけれども、IOCが設けている原則があるわけですよ、コンパクトな、半径十キロ以内でほとんどの競技をやってくれという。これはロンドンもかなり無理してそれをやっていますが、東京の場合には非常に僥倖として、埋め立ても進んでおりますし、新規に、ロンドンのようにあるいは福岡のように、これから土地をかなり収用する、そういう労力を費やさずに、既存のものあるいはこれからでき上がっていくものを活用してできるわけでありまして、ただ、パリが部分的には非常にロンドンよりもすぐれたものをミッションしていました。しかし、結局パリがロンドンに敗れたのは、やはり二つに分けた、あれはクラッシュというんでしょうか、二つの地域にそれぞれ集約してオリンピックの施設があるんですけれども、それそのものが選手村からいかにも遠いということで、パリは失格したわけです。 そういった事情というものも三多摩の首長さんにも理解していただきたいのと、何も三多摩を疎外して、都心部だけでオリンピックをするわけじゃない。オリンピックが東京に決まれば、そのための予選の会場であるとか練習の会場とか、これは当然三多摩に協力をいただくわけでありまして、決して三多摩を疎外してオリンピックが成り立つわけでもありませんし、その他この他、その前にも国体が再び行われるわけでありますから、そういったことで私はオリンピックに対する三多摩の方々の意識も集中して、私は必ず東京のオリンピックに三多摩の方々も熱い声援を送っていただけると思っております。
質問2 開催概要計画書の中では、財政計画の提案を行う必要があります。招致経費や大会運営費、その調達方法がいよいよ明らかになります。都議会民主党は、都に対し、オリンピックの招致と開催に伴う財政的な見通しを可能な限り早急に明らかにすることを再三再四求めてまいりました。 都は、主要三施設や開催概要を定めているので、財政計画にも一定の見通しをつけているはずです。しかし、いまだに概要も示していません。本来ならば、都民が最も気にしている財政計画は今定例会前に発表し、議会で議論をすべきだったのではないかと思います。 福岡市は、既に開催計画と概算費用の試算を出しています。それにとどまらず、都は計画案も費用も出し切れていないと批判までしています。石原知事の発信力に専ら頼り、都から具体的な情報が発信されていないことが、都民の招致機運の低さにつながっていると思います。 開催概要計画書を提出する今月末を待たずとも、一つ一つ積極的に情報開示を進めていくべきだと考えますが、見解を伺います。 答弁2 ▼東京オリンピック招致本部長 オリンピックの情報開示についてでございますが、これまでも、競技施設の検討候補地図、主要三施設の配置図などをお示しするとともに、先月には二〇一六年東京オリンピック基本方針を発表するなど、検討の段階に応じて適宜情報提供に努めてまいりました。 お話しの財政計画は現在積算中でございますが、大会運営費については、二〇一二年開催予定のロンドンと同程度の三千億程度、また、施設整備につきましてはおおむね五千億程度、うち都の負担額は五百億円程度を見込んでございます。 今後とも、国内選考等のスケジュールにのっとって情報開示を進めてまいります。
質問3 都が基本方針を発表してから一カ月、多摩地域から苦言が寄せられています。調布、八王子、羽村、府中の市長が相次いで、多摩地域を含めた大会にすべきだとか、コンセンサスをとってから招致するのがルールではないかと、都に対して異論を唱えました。羽村市長からは、多摩地域四百万人の民意を無視している、失礼千万な話だとの厳しい批判も聞かれています。 都内の区市町村議会におけるオリンピック招致決議も、決議をしない瑞穂町を除き、いまだ三十一の自治体で採択されておらず、六月議会での採択が急がれています。第一回定例会でも触れましたが、そもそもオリンピックは、都道府県ではなく都市が招致するものです。招致に成功したロンドンでは、三十二のロンドン区の役割も大きかったとも聞きます。その意味で、区市町村全体の賛同と協力を得ることは、招致活動を進める上で死活的に重要なことと考えます。 例えば、聖火リレーに多摩地域を組み込む、一校一国運動を多摩や島しょ地域を含めて展開するなど、考えられる取り組みはたくさんあるはずです。オリンピックをめぐる多摩地域の厳しい声にどのようにこたえていくのか、所見を伺います。 答弁3 ▼東京オリンピック招致本部長 多摩地域への対応についてでございます。 オリンピックの基本方針等につきましては、市長会あるいは町村会におきましてご説明を申し上げ、既にそれぞれから招致決議をいただいているところでございます。 オリンピック招致を成功させるためには、都民、国民の幅広い支持を得ることが重要でございます。知事からも先ほど答弁さしあげましたように、来年以降毎年開催する東京大マラソン祭り、オリンピックの三年前に多摩・島しょ地区を中心に開催する東京国体、そのほか、多摩地域において練習会場として利用するなど、さまざまな取り組みを通じて段階的、継続的に招致機運を高め、東京都全体を盛り上げてまいります。
質問4 IOCは、九四年のオリンピック百周年会議において、環境をスポーツ、文化とともにオリンピック精神の第三の柱とすることを宣言しました。二〇〇〇年のシドニーオリンピックはグリーンオリンピックともいわれ、以降、環境はオリンピックの重要な要素となっています。 東京オリンピック基本方針では、基本コンセプトに、環境を最優先した大会を掲げています。しかし、環境への取り組みは、オリンピック招致の可否にかかわらず、より大胆に進めていく必要があります。 二〇一二年の開催都市であるロンドンは、二〇〇四年二月に策定したエネルギー戦略の中で、CO2排出量を二〇一〇年までに一九九〇年比で二〇%削減し、二〇五〇年までに二〇〇〇年比で六〇%削減するという目標を掲げています。一方で、東京の二〇〇三年度のCO2排出量は、一九九〇年度比で約二四%も増加しているのです。 オリンピック基本方針と相まって、都は、環境審議会に環境基本計画の改定を諮問し、世界一の低CO2型大都市を目指すことなどを掲げています。低CO2型の大都市とはどのような都市なのか、現段階でははっきりしませんが、今後の検討の中で、大胆なCO2の削減目標が掲げられることを期待します。 地球温暖化対策も含め、どのような考え方で環境基本計画を改定していくのか、石原知事の所見を伺います。 答弁4 ▼知事 環境基本計画の改定についてでありますけれども、都は、平成十四年に策定した環境基本計画に基づき、ディーゼル車排出ガス対策に積極的に取り組み、大気汚染の大幅な改善も達成するなど、成果を上げてきましたが、十年後のオリンピック開催も見据え、東京をさらに快適で安心して住み続けることのできる都市としていくために、環境基本計画を改定いたします。 改定に当たっては、中長期的な二酸化炭素削減数値目標の設定や、再生可能エネルギーの飛躍的な利用拡大など、新たな方策の検討を行い、さらなる環境施策の展開を図っていくつもりでございます。 いずれにしろ、かつて私、大学時代、もう数十年前ですけれども、東京で講演した、ホーキングという、ブラックホールの発見者の講演を聞きましたが、やはり文明が地球のように進みますと、非常に悪い循環が蔓延していって、そういう惑星というのは非常に不安定になって、宇宙全体の時間からすれば瞬間的に消滅するということをいっていましたが、ゴキブリやカラスが生き残っても、存在というものを認識できる、意識できる人間が死んでしまったら、そういう意味ではこの地球は存在しないわけですから、私たちはやはり、先ほども申しましたけれども、ちりも積もれば山となる、そういう心がけで、まさに地球が滅びるとも、やはり我々はリンゴの木を植えていかなくちゃならないと思っております。
質問5 一九六四年の東京オリンピックの結果、東京には環境と景観の面で大きな負の遺産が残りました。日本橋及びその左右の河川上にかかる高速道路です。先月、私は、都議会民主党の有志と韓国ソウル市を訪れ、ソウル市内を流れる川、清渓川の復元事業を視察してきました。清渓川を覆っていたコンクリートや高速道路は撤去され、今ではソウル市のにぎわいの中心となっていると感じました。心配された高速道路の撤去による渋滞悪化も、それほど大きな問題となってはいないようでした。 現在、日本橋周辺の高速道路の移設、撤去については、国の日本橋川に空を取り戻す会で検討中であり、昨日の会議では、地下案に内定したとも報じられています。しかし、地下案の事業費は四千億から五千億円ともいわれ、実現のためには、さらなる財政的な工夫が不可欠です。 知事は、日本橋そのものの移転といったアイデアなども出されていますが、高速道路の移設、撤去は、日本橋の景観だけでなく、魅力ある水辺空間を再生することで、にぎわいのあるまちを創出することにもつながるのです。 そこで、日本橋周辺の高速道路の移設、撤去について、都の見解を伺います。 答弁5 ▼都市整備局長 首都高速道路は、一日約百十五万台が利用しており、首都東京の大動脈として、社会経済活動を支える重要な役割を担っております。 現在、日本橋周辺の首都高速道路につきましては、都市景観などの観点から撤去、移設すべきとの議論があり、有識者の方々から成る日本橋川に空を取り戻す会が検討を行っているほか、国土交通省も懇談会を設置し、学識経験者、行政や地元関係者が参画して検討を行っております。 しかしながら、これを実現するには、交通機能の確保や膨大な事業費を要するなど大きな課題がございまして、都としても、その検討動向を見ながら、関係機関と連携して適切に対処してまいりたいと考えております。
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■臨海副都心開発 |
質問1 臨海副都心開発について伺います。 先月十二日、東京テレポートセンターを初めとする臨海三セク三社が、民事再生手続の開始を申し立て、事実上破綻しました。負債総額は約三千八百億円、三セク破綻としては全国最悪です。 私たち都議会民主党は、これまで再三にわたり、臨海三セクの法的整理や民間事業者への売却など抜本的な見直しを求めてきましたが、今回の申し立ては、経営破綻に至った原因や責任を棚上げにしたまま、都がこれまで以上に関与してビル事業を継続していくという、抜本見直しにはほど遠い内容となっています。 さらに驚くべきなのは、これだけの全国最悪の三セク破綻事例でありながら、三セクの経営者も都も、だれひとりとして責任をとる者がいないということです。民間企業のこのような大規模な経営破綻で、経営陣がだれひとり責任をとらなかったら、社会から、マーケットから、どのような評価を受けるでしょうか。ましてや、つぎ込まれたのは都民の税金、財産なのです。 臨海副都心開発には長い歴史的経過があり、現経営陣にすべての責任があるとはいいませんが、しかし、事実上の経営破綻という状況に立ち至った以上、少なくとも現経営陣は責任をとって、即刻退陣すべきなのではないでしょうか。まずそのことを申し上げておきます。 もちろん、都も責任を免れるものではありません。都は、臨海三セクの経営安定化策を平成十年に策定し、平成十四年に中間見直しを行っています。そして、今からつい半年前には、金融機関は引き続き臨海三セクを支援していくとか、経営改善に一定の成果を上げているなどと、極めて楽観的な答弁をしていました。 現実には、そのわずか半年後に、銀行側から借りかえ拒否という最後通牒を突きつけられ、民事再生法の適用申請という決断を余儀なくされたのですから、都の見通しは全く甘かったといわざるを得ません。こうした都の経営感覚のなさ、危機意識の欠如にこそ破綻の原因があったのではないでしょうか。加えて、破綻した三セク三社の歴代社長は、すべて都からの天下りで占められているのです。 今回の民事再生では、三セクの経営陣と同様、都の歴代の担当者もすべて責任が不問に付されていますが、そもそも都は、この三社が三セク史上最悪の破綻に立ち至った原因と責任をどのように認識しているのか、伺います。 答弁1 ▼港湾局長 これまで臨海三セクは、平成十年に策定した経営安定化策に沿って経営改善を着実に進めてまいりました。その結果、平成十七年度では六十億円の営業利益を上げ、七年連続の黒字となるとともに、初めて経常黒字を達成いたしました。また、この間、借入金残高を五百億円弱減らしてまいりました。 しかし、臨海三セクは完済までに長期間を要する借入金を抱えており、金融情勢の変化が今後の経営に与える影響を勘案し、早期に債務を圧縮して経営基盤を強化するため、十分な再建見通しのもとに、民事再生の申し立てを選択したものでございます。 都民への負担を伴う事態に至ったことについては、都としても厳粛に受けとめておりますが、今後とも臨海三セクを適切に活用していき、総仕上げの段階に入った臨海副都心を着実に推進することで都の責任を果たしてまいります。
質問2 民事再生を発表した記者会見で石原知事は、あのころは、日本全体がバブルに乗ってすってんてんになった、その一例でしかないと他人事のように話しました。しかし、石原知事には何の責任もないのでしょうか。今から一年前、東京ファッションタウンなど二社が経営破綻した際、石原知事は、臨海三セクは経営黒字で、破綻した二社とは違うと強弁しておりました。そういいながら、わずか一年後にこの結果です。トップとしての見通しはどうなっていたのでしょうか。 石原知事、あなたは、三セク史上最悪の経営破綻を招いた責任は自分には全くないと考えているのか、見解を伺います。 答弁2 ▼知事 就任時、臨海副都心開発は、バブル経済崩壊の影響を正面に受け、破綻寸前の状況にありました。しかし、この間、関係者の協力、努力とさまざまな創意工夫を凝らした結果、何とか綱渡りで、しかし、やはりいまだに際どい状況にありますが、とにかくここまで来ましたけれども、反面うれしいことに、今や臨海副都心は、仮の施設もございますけれども、年間四千万の人が訪れる一種の大きなリゾートになってまいりました。それを踏まえれば、東京の新しい魅力を発信する地域にこれからなり得ると思います。 臨海三セクの民事再生による経営再建は、都民への一定の負担を伴いますけれども、これにより長年の借金が解消され、開発へのさらなる貢献が期待できると思っております。 今後とも、経済金融情勢を的確にとらえ、臨機応変に対応しながら、臨海副都心開発を一層力強く進めていきたいと思っております。
質問3 さて、今回の民事再生スキームでは、三セク三社のビル事業について、都がこれまで以上に関与を強めて、継続していく内容となっています。私たちは既に昨年九月の都議会で、例えば臨海副都心建設が所有する三棟のフロンティアビルは民間に売却できないかなどと提案してきました。これに対して都は、地下に地域冷暖房などの熱供給施設があることなどを理由に難色を示しています。 しかし、コジェネレーションなどの技術革新が進む中、そもそも地域冷暖房という大がかりなシステムをいつまでも維持する必要があるのかといった掘り下げた検討がなされたのでしょうか。竹芝地域開発には、熱供給施設がないビルもあります。最低限、臨海副都心開発と関係のない竹芝地域開発のビル事業は、民間への売却が可能なはずです。 臨海三セク三社の処理に当たっては、改めてビル事業を民間へ売却するなど、抜本的な見直しをすべきと考えますが、見解を伺います。 答弁3 ▼港湾局長 臨海三セクビルは、開発を支援するという目的に沿って建設され、インフラ施設の管理や多様な企業集積の拠点となるなど、利益追求だけではなし得ない公共的役割を担っております。 都が責任を持って臨海副都心開発を進めるためには、三セクビルが投機の対象となって転売されることでテナントなどの進出事業者の信頼を失い、計画的なまちづくりに支障が出るような事態は極力避けなければならないと考えております。 そのため、引き続き臨海三セクを適切に活用していく必要があることから、民事再生手続による経営再建を図っていくもので、民間への売却は非現実的選択であって、全く考えておりません。
質問4 さて、都は、臨海三セクの破綻にあわせて、仮称臨海ホールディングスという持ち株会社構想を発表し、破綻した三セク三社などの子会社化を打ち出しています。これについて石原知事は、臨海地域のエリアマネジメントを強化し、オリンピックの運営にも大きな効果をもたらすと胸を張っています。臨海三セクの破綻さえオリンピックに結びつけて正当化する石原知事の所信表明には、正直、驚いてしまいました。 しかし、三セク処理のスキームづくりの段階で、臨海地域と関係ない住宅供給公社との統合が報道されたことなどから見ても、エリアマネジメントの強化というのは全くの後づけの理屈であって、現実には持ち株会社構想は、三セク破綻に対する批判をかわすための窮余の一策であるとしか考えられません。もし仮に、持ち株会社構想でいうところの臨海地域のエリアマネジメントを行いたいというのであれば、まず臨海地域の将来ビジョンがなくてはなりません。 既に第一回定例会でも述べましたが、オリンピック招致などの状況の変化にかんがみ、今こそ臨海地域の新たな将来ビジョンを策定すべきと考えますが、見解を伺います。 答弁4 ▼港湾局長 臨海地域の新たな将来ビジョンについてでございますが、持ち株会社のグループ戦略は、エリアマネジメントの充実によりまして、東京港の国際競争力の強化と臨海副都心のまちづくりの推進を目指すものでございます。 現在、都は、東京港につきましては、東京港第七次改訂港湾計画に基づき、港湾コストの低減とサービスの向上に取り組みますとともに、臨海副都心につきましては、臨海副都心まちづくり推進計画に基づき、まちづくり総仕上げの十年に向けて、さらなる開発に取り組んでいるところでございます。 今後とも、これらの計画に沿って、持ち株会社を効果的に活用することにより、臨海地域の機能強化を目指してまいります。 なお、これらの事業の推進に当たりましては、二〇一六年東京オリンピック招致計画との十分な整合性を図ってまいります。
質問5 持ち株会社と子会社の間では株式交換が行われ、ゆりかもめなどの子会社は臨海ホールディングスの一〇〇%出資になる一方、これまで子会社に出資していた民間株主は、株式交換によって臨海ホールディングスの株主となると思われます。その結果、臨海ホールディングスの出資比率は、都が五〇%以上になることが見込まれ、臨海地域の経営を都が直轄で進めていく色彩は、今まで以上に強くなります。 しかし、そもそも臨海三セクが破綻したのはなぜだったのでしょうか。官僚とそのOBたちのもたれ合い体質、失敗してもだれも責任をとらない無責任体質がその原因だったのではないでしょうか。そう考えると、都の出資比率がさらに高まるであろう持ち株会社をつくるという今回の構想は、全く何の解決策にもなっていないことがわかります。官主導の三セク破綻をきっかけに、さらに大きな官営の持ち株会社が生まれるというのであれば、これはもう悪い冗談のような話です。 そこで伺いますが、持ち株会社は、いつ、どのような形で設立されるのですか。また、持ち株会社は可能な限り都の出資比率を低め、民間の資金と経営ノウハウを導入して事業を進めていく必要があると考えますが、見解を伺います。 答弁5 ▼港湾局長 この設立の時期は、臨海地域の機能強化が喫緊の課題であることから、来年早期を予定しております。 また、事業の進め方についてでございますが、持ち株会社が民間の知恵や工夫を取り入れていくことは、これまでと同様に重要であると考えております。 しかし同時に、持ち株会社は、東京港の国際競争力の強化と臨海副都心のまちづくりの推進体制の充実を目的として設立するものであり、都の施策との整合性を確保していくという必要があることから、都としてその運営に適切に関与してまいります。 今後、持ち株会社の出資比率や運営形態についても、法的手続や会計などの面から専門的な検討を行い、設立目的の達成に適した内容を実現してまいります。
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■汚職の再発防止対策 |
質問1 汚職の再発防止対策について伺います。 去る四月十九日午後、都庁第二庁舎にある下水道局に、警視庁の捜査員が捜索に入りました。指名競争入札工事に関する収賄容疑で同局職員が逮捕されたのです。職員は、汚職防止の研修を受けていながら、親しい業者に入札情報を流すように持ちかけられ、外部に出していない工事の内訳表の写しを渡し、謝礼を受け取っていました。 一方、昨年十一月、下水道局に、工事で情報漏れがあるのではないかと匿名の電話が入り、局内で調査を行ったということですが、特定はできなかったようであります。都としては、五年ぶり、平成に入ってからは六件目の汚職事件です。都庁全体で汚職の再発防止対策に全力で取り組むため、知事の指示に基づき汚職等防止委員会を設置し、つい先日、報告書が公表されました。 都議会民主党も、これまで不正入札の防止などについてさまざまな指摘や提言をしてまいりましたので、大変注目をしていました。汚職等の再発防止に向け、例えば「汚職防止の手引」を改訂する、汚職等非行防止ビデオをつくるといった対応策が盛り込まれていますが、都民の信頼を回復するため、今後、どういった心構えでこれらの対応策に取り組んでいくのでしょうか、所見を伺います。 また、汚職等非行防止ビデオの作成が対応策に入っていますが、どのようなビデオになるのでしょうか、具体的な内容を伺います。 答弁1 ▼総務局長 汚職等の再発防止に向けた心構えについてでございますが、職員一人一人が全体の奉仕者としての原点に立ち返り、汚職等を決して再び起こさないことが都民に対する責務であり、また都民の信頼を取り戻す道であると考えております。 このため、職員の意識啓発を進める方策の一つとして、汚職等非行防止ビデオを作成することといたしました。 具体的には、事件の発生を未然に防止する視点を強化し、職場実態を踏まえた事例を取り上げることによりまして、職員に身近な問題として強く自覚させるとともに、管理監督者が果たすべき役割を明確にして、内容の充実を図ることとしております。 今後は、全職員が一丸となって、今回定めた再発防止策を着実に実施してまいります。
質問2 五年前の建設局主任による三宅島災害復旧工事をめぐる汚職事件では、都は、二十五億円以上としていた一般競争入札の実施範囲を九億円以上に広げるなど、入札及び契約関係における対応策を六項目発表し、取り組んできました。 防衛施設庁の事件などを受け、現在、国や各自治体でも入札契約制度の見直しが行われており、国は、二億円以上の工事を一般競争入札の対象とすることを決めました。埼玉県は、五千万円以上の工事は一般競争入札の対象にすることができると決めています。 しかし、都における一般競争入札の対象は、九億円以上の工事に限定されています。国が二億円以上の工事を対象とする中で、こうした対応は見直す必要があるのではないでしょうか。都においても一般競争入札の対象をより広げるべきだと考えますが、見解を伺います。 答弁2 ▼財務局長 都は現在、予定価格が九億円以上の工事案件について一般競争入札を行っております。予定価格が九億円未満のものであっても、四億円以上の土木工事、一億五千万円以上の道路舗装工事、一億二千万円以上の設備工事など、共同企業体への発注案件では、一般競争入札と同様に、希望した共同企業体すべてが入札に参加できる取り扱いを既に実施してきております。 このように業種、業態に対応した取り扱いを行っており、現時点では、一般競争入札の範囲を拡大することは考えておりません。 今後とも、より適切な入札・契約制度の実現に努めてまいります。
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■交通安全対策 |
質問1 次に、交通安全対策について伺います。 今月一日から放置車両確認事務の民間委託が開始され、駐車違反の取り締まりも強化されました。この取り締まり強化に向けて各警察署は、重点的に取り締まりを行う場所、時間帯等を定めた取り締まり活動ガイドラインを策定、公表しているほか、駐車規制の見直しも進めています。このような周到な準備を重ねてきたことは評価しますが、今なおドライバーに周知されたとはいえません。 報道によって、十分足らずの路上駐車でも違反のステッカーを張られるなどがクローズアップされ、不安が広がっているのも事実です。また、例えばそば屋の出前も駐車違反になるのか、急遽呼ばれた助産師がお産に立ち会っている間の車両も駐車違反になるのか、歩行が困難な高齢者や障害者を送迎、介護するボランティアなどの車両も駐車違反になるのかなど、さまざまな不安が広がっています。 配達を行う運送業者にとっても、大手は二人一組にして、配達中は運転席に一人残すなどの対応が可能ですが、中小業者はそうした対応は不可能です。取り締まり強化は結構ですが、適切な配慮がなければ、取り締まり強化そのものが中小企業いじめになってしまう可能性も否定できません。 取り締まりに当たっては、きめ細やかな運用、柔軟な対応を図るとしていますが、今述べた車両などについても柔軟に対処するよう求めるものですが、所見を伺います。 答弁1 ▼警視総監 駐車規制は、交通の安全と円滑を確保するために必要な規制でありますが、物流を初めとする社会活動に深くかかわりを持つものでもあります。 当庁におきましては、今回の新法制の施行に伴い、都民生活への影響を勘案し、駐車規制の見直しを行い、規制の解除、緩和を実施したところであり、とりわけ物流に関しては、貨物集配中の貨物車を、場所、時間を指定して駐車禁止規制から除く路線を設けたり、パーキングメーターの駐車スペースを大型化して貨物車を駐車可能とするなどの対策を推進しております。 また、一定の基準に従い、身体障害者手帳、愛の手帳等の交付を受けておられる方が使用する車両については、東京都公安委員会が駐車禁止等除外標章を、さらには、訪問して行う看護、介護、入浴サービス等のため使用する車両については、警察署長が駐車許可証を交付しており、事業者の方々にもこうした制度を活用していただいているところでありますが、引き続きこれらの制度についてさらなる周知を図ってまいりたいと考えております。
質問2 路上駐車をしている人たちは、別にとめたくてとめているわけではありません。付近に駐車場が見つからず、やむを得ず駐車をしたという人が大半です。先月十七日に発表された駐車施設対策の基本方針案では、駐車場整備台数の伸びに対して路上駐車台数は横ばい、そして駐車場の利用率が低迷していることが示されており、これでは、あたかも駐車場整備台数は既に充足しているとの印象を受けますが、本当にそうでしょうか。確かに駐車場はマクロで見ればふえていますが、宅配のトラックや荷さばき車両などがとめられる駐車場がどこにあるのでしょうか。これらを次から次へと取り締まられたら、業者はたまったものではありません。 そこで、トラックなどを対象とした駐車施設をふやすことなどが必要と考えますが、現在の駐車場の需給バランスについての認識と今後の取り組みについて、所見を伺います。 答弁2 ▼都市整備局長 交通渋滞や事故の原因ともなっている違法駐車の解消には、適切な駐車施設対策を行うことが必要でございます。 お尋ねの駐車施設の収容能力につきましては、地域や利用時間帯に偏りはあるものの、都内の瞬間路上駐車台数や利用率を勘案すると、全体では余力があるものと考えております。 しかし、繁華街や駅周辺では、宅配トラックの荷さばきなどに対応した駐車施設が不足しており、都はこれまでも、関係機関の協力を得て、高架下を利用した荷さばき施設の整備、一部駐車場での三十分無料化、また駐車場の情報提供などに努めてまいりました。 今後とも、区市町村等と連携し、駐車場の整備促進など駐車施設対策に積極的に取り組んでまいります。
質問3 駐車監視員に対する暴行による全国初の逮捕者は港区のミニバイクの運転者でしたが、都内では、自動二輪車用駐車場が圧倒的に不足しています。都内総合駐車場案内のs─parkに登録されている自動二輪車用駐車場は、平成十八年六月現在、七十七カ所、約千七百台にすぎません。これに対し、違法駐車の自動二輪車は一日約四千台で、半分も収容できないのが現状です。 自動二輪車用駐車場の不足の解消方策としては、先日オープンした六本木六丁目オートバイ専用駐車場のように、首都高の高架下など未利用の都有地の有効活用や既存の自動車駐車場への自動二輪車の受け入れ促進などが考えられますが、自動二輪車用駐車場の確保に向けた都の今後の取り組みについて、所見を伺います。 答弁3 ▼都市整備局長 自動二輪車用駐車場についてでございますが、近年、繁華街や駅周辺などにおいて、大型化傾向にある自動二輪車が違法に放置され、円滑な交通や歩行者の安全を阻害しており、その対策が求められております。 都はこれまで、六本木での自動二輪車専用駐車場の設置のほか、公共駐車場において自動二輪車の受け入れの試行を実施するなど、駐車場の確保に努めているところでございます。 本年五月には駐車場法が改正され、新たに自動二輪車が法に定める駐車場整備計画の対象車両として位置づけられました。 今後は、法改正の趣旨や現在行っている試行の結果も踏まえ、関係事業者や区市町村等の協力を得て、自動二輪車用駐車場の確保に取り組んでまいります。
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■小笠原諸島振興策 |
質問1 小笠原諸島振興策について伺います。 都議会民主党は、先月九日、四年前に続く二度目の小笠原視察団を派遣しました。今回の視察団は、インフラ整備がほぼ終了した小笠原諸島の今後の振興策、航空路の開設、世界自然遺産登録に向けた移入種対策を重点的に検証するため、派遣したものです。 我が視察団は、大変熱心で優秀なガイドの方にご案内いただき、小笠原の自然環境が置かれている状況をつぶさに学ぶことができました。 特に小笠原固有の貴重な動植物が外来種によって侵食されている状況は極めて深刻であり、世界遺産を目指すことからも、早急な対策が求められています。ガイドさんの話では、天然記念物であるアカガシラカラスバトが、ここ最近、野生化した猫などの影響で姿が見られなくなってしまったそうです。多くの侵略種の中でも、緊急度、駆除優先度の高いのは、植物ではアカギ、動物ではグリーンアノール、野生化した猫などで、これらの侵食によって、小笠原固有の動植物が急速に姿を消しつつあります。都として、これら外来種の早急な対策が求められていますが、今後の施策について伺います。 答弁1 ▼環境局長 小笠原諸島の世界自然遺産登録を目指す上で、外来種対策は重要な課題であると認識しております。 このため、都では、無人島のノヤギについて積極的に排除するとともに、外来種の新たな侵入や拡散を防ぐためのルールづくりなどに取り組んでいるところでございます。 野生化した猫については、村、NPOなどと対策に取り組むとともに、アカギやグリーンアノールについては、国が試験的な取り組みを開始しております。 今後とも都は、国、村との役割分担と連携のもと、侵略的な外来生物に対する対策を積極的に進めてまいります。
質問2 小笠原航空路の開設について伺います。 私は、四年前の第一次視察団に参加し、当時の候補地であった時雨山に登り、空港建設などは余りにもむちゃな事業と感じた者の一人です。そのときも、時雨山の帰路、洲崎地区に立ち寄り、ここを何とか活用できないものかと考えておりました。今回の視察団もこの洲崎地区並びにその周辺を視察し、さらに高台から全景を眺めるとともに、小笠原村が実施した小笠原航空路開設への調査の概要について、非常に熱心な説明を受けました。TSLが幻となってしまった今、小笠原航空路開設に対する村民の期待には非常に切実なものがあります。 東京都も本年度予算に調査費を計上し、自然環境への影響、運航採算性、気象状況等の調査を実施することとしていますが、小笠原村の意向や国の動向なども踏まえ、東京都としても早急に今後の方策をまとめていく必要があると考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼総務局長 航空路の開設に当たりましては、自然環境との調和を初め、運航の安全性や採算性の確保など多くの課題を解決する必要がございます。 特に、自然環境との調和にも配慮しながら航空路の実現を図るには、国の理解、協力が不可欠でございます。また、何よりも地元村民の合意が肝要でございます。 都は、国に対して積極的な働きかけを行うとともに、村民の意向を十分踏まえつつ、航空路開設の実現に向け、諸課題の調査検討を進めてまいります。
質問3 さて、小笠原諸島におけるエコツーリズムは、南島においては大きな成果を上げていることが実感できましたが、母島石門一帯については多くの課題があると考えます。このコースは、母島の原生林の中を歩く、想像をはるかに超える難関コースであったということであります。道なき道を進み、急斜面を上りおりするコースで、寸断された道、そして土砂崩れの危険のある場所も少なくなく、斜面に張られたロープがまさにその名のとおりの命綱となっている箇所もあります。今後、利用者の人数の制限、上限、利用経路等について、自然環境のモニタリングの結果や地元の方々の意見を踏まえ、柔軟に見直していく必要があると考えます。 また、エコツーリズムに際しては、自然ガイドの存在は極めて重要です。貴重な知識や経験を伴ったガイドさんがいるからこそ、エコツーリズムが成立することは明白です。しかし、現地を訪問してみると、ガイドさんの人数は入山定員を満たす状況には至らず、また、後継者のことも危惧されています。今後のガイド育成に関する東京都の所見を伺います。 答弁3 ▼環境局長 エコツーリズムを推進するためには、十分な人数の自然ガイドが確保されていることが不可欠でございます。 これまで、母島石門一帯のガイドとして、三十四名の東京都自然ガイドを養成し、認定してまいりました。 今後とも、小笠原村と連携し、協力し、小笠原村の自然環境に精通したガイドの養成に努め、自然環境の保全と適正な利用の両立に取り組んでまいります。
質問4 また、自然環境の宝庫であるすばらしい母島には、石門一帯のみならず、多くの自然観察に適したコースが考えられます。今回訪れた南崎のコースは、より多くの方々に母島のすばらしい自然環境を気軽に体感してもらうために適したコースですし、乳房山のコースもあります。また、北港周辺のかつての村落を一部復元してビジターセンターとしたり、これらと母島周辺のダイビングポイント、パッションフルーツの果樹園などを有機的に結合することなどによっても、母島の観光資源としての価値を高めることができます。こうした母島全島をエコミュージアムとし、その魅力を高めるとともに、入島に際してのマナーや島内観光のルールを徹底することによって、島の自然保護にもつなげていくことができます。 島民の生活を守り、自然保護と観光とのバランスに配慮した小笠原振興策を地元の皆様とともに検討していく必要があると考えるものですが、所見を伺います。 答弁4 ▼産業労働局長 小笠原の魅力を高め、一層の観光振興を図るためには、自然保護に配慮しつつ、観光と両立させていくことが重要であります。 都はこれまでも、東京都版エコツーリズムを推進している地域を初め、それ以外の地域をも対象として、自然の魅力を生かした旅行商品の企画を支援するとともに、自然ガイドの資質向上を図ってきたところであります。 引き続き、地元関係者の意向を踏まえながら、村の主体的な観光振興への取り組みを支援してまいります。
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■住宅政策 |
質問1 住宅政策について伺います。 去る六月三日、港区の運営する区民向け住宅のエレベーターで、高校生が挟まれ、亡くなるという痛ましい事故が発生しました。私たちの生活に不可欠なエレベーターの安全性に重大な疑問符が投げかけられる事態となり、住民には不安が広がっています。 そんな中で、都は、事故発生直後から、都営住宅などのエレベーターの緊急調査点検を開始し、シンドラー社製については今月二十六日まで、その他の会社のものについては七月上旬までに完了させる方針を明らかにしています。当初は対象が住宅のみでしたが、都が管理するすべての建物に対象を拡大したことも含め、迅速な対応として評価をしたいと思います。 しかし、自分たちが乗っているエレベーターは安心なのかという都民の不安を解消するには、速やかな調査点検はもとよりですが、その結果、安全性が確認されたエレベーターは、そのことがわかるように、住民や利用者への周知を徹底する必要があります。エレベーターの緊急調査、点検結果の周知の方法について所見を伺います。 答弁1 ▼都市整備局長 都が管理する建物のエレベーターの調査点検結果の周知についてでございますが、港区のエレベーター事故を踏まえまして、都においては現在、緊急点検を行っているところであり、その結果を周知し、利用者の不安を解消することは重要であると考えております。 都が管理するエレベーターは、都営住宅や広く一般の都民が利用する劇場などさまざまな施設に設置されていることから、点検結果につきましては、施設の内容や特性に合わせまして、掲示などにより適切に周知を図ってまいります。
質問2 最近、都営住宅と旧公団の賃貸住宅のひとり暮らし世帯における孤独死の多発が新聞で取り上げられています。玄関先で意識を失って、助けを呼べず衰弱して亡くなった人、皮膚病にかかり、かきむしってはがれた皮膚が粉雪のようにうっすらと部屋に積もっていた人など、胸が痛くなるような事例が新聞のルポで紹介されています。 これは都営住宅や旧公団住宅だけに生じている特異現象ではなく、東京全体が抱える非常に重大な問題であると私たちは受けとめています。団地における孤独死ゼロ作戦を支援している松戸市では、平成十五年に孤独死の実態調査を行ったところ、年間九十件もの孤独死の発生がわかったということです。都営住宅における孤独死は、昨年一年間だけでおよそ三百件も発生しています。悲しい孤独死がなぜ続いてしまうのか、都営住宅における高齢化や低所得化の状況、自治会活動の状況なども含めたコミュニティとしての都営住宅に関する実態調査が必要と考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼都市整備局長 孤独死にかかわるコミュニティの都営住宅に関する実態調査についてでございますが、だれにもみとられずに亡くなるいわゆる孤独死は、少子高齢化の進展、家族形態の変化など、文明社会全体に深くかかわるものでございます。 都営住宅においては、これまで、若年ファミリー世帯向け期限つき入居などにより、幅広い世代の入居を進めて団地の活性化に取り組むとともに、巡回管理人による高齢者世帯の支援を行ってまいりました。 お尋ねの孤独死にかかわる実態調査につきましては、地元自治体などが幅広い観点から実施していくことが望ましいと考えております。
質問3 都営住宅全体の名義人の年齢構成を見ると、現在六十五歳以上が約五二%に達しています。また、都営住宅の居住者に関するある調査では、過去八年間で、収入最低区分世帯が四九%から七七%、家賃減額適用世帯が四一%から六五%にはね上がっているという数字が出ています。このように、都営住宅では私たちの想像をはるかに超えた極端な高齢化と低所得化が進行しており、先日出された住宅政策審議会答申でも課題として挙げられています。 もともと都営住宅には入居資格として所得の上限があり、低所得者や高齢者が集住することになるのはやむを得ない側面があることも否定できません。しかし、都営住宅を含む地域全体が、高齢者だけの世帯や極端な低所得者だけの世帯、あるいは社会的な援助を必要とする世帯だけで構成されると、隣同士の日常的な交流や地域活動が停滞し、地域全体の活力が失われる、コミュニティバランスの崩壊といわれる現象が引き起こされます。先ほど申し上げた孤独死の問題も、都営住宅におけるコミュニティバランスが崩れてきていることを示す現象ではないでしょうか。 医療や福祉の面での対策もさることながら、このような地域におけるコミュニティバランスを回復させるという観点からの住宅政策が、孤独死への抜本的な対策の一翼を担うのではないかと考えます。住宅政策におけるコミュニティバランスの重要性に対する都の認識について所見を伺います。 答弁3 ▼都市整備局長 年齢や世帯構成、所得に偏りのないバランスのとれたコミュニティを形成することは、地域活力の維持向上、各種施設の効率的な利用等に寄与するものと認識をしております。 都営住宅などの住宅政策を推進するに当たりましては、政策目的との整合性に留意しながら、可能な限りコミュニティバランスにも配慮していくことが重要と考えております。
質問4 都が都営住宅に若年ファミリー向け期限つき入居制度、巡回管理人制度など、高齢化への対応を実施していることは承知しています。しかし、それだけではまだまだ不十分であり、都営住宅とその周辺地域のコミュニティバランスを保持、回復するための緊急対策が必要と考えます。 国土交通省も、昨年末の都道府県あて通達で、公営住宅団地等を含めたコミュニティバランスへの配慮を求めています。そのためには、例えば通達にも示されているようないわゆるみなし特定公共賃貸住宅制度の活用や、住政審答申でも提言されているような、民間賃貸住宅に対する家賃補助の検討、地域を支えるNPOに対する積極的な支援などが考えられますが、所見を伺います。 答弁4 ▼都市整備局長 都営住宅とその周辺地域におけるコミュニティバランスの回復についてでございますが、都は、少子化対策の視点に加え、バランスのとれたコミュニティの形成に配慮し、期限つき入居制度の活用等により、都営住宅への若年子育て世帯の入居促進に努めております。 また、地域の活性化にも寄与するものとして、老朽化した都営住宅の建てかえにあわせ、民間住宅や生活関連施設等の整備を一体的に行う事業にも取り組んでおります。 今後とも、こうした取り組みを継続するとともに、住宅政策審議会答申も踏まえ、多様な人々がともに暮らすバランスのとれた地域社会の形成に努めてまいります。
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■子ども |
質問1 子育てについて伺います。 厚生労働省が一日に発表した二〇〇五年の人口動態統計によりますと、合計特殊出生率は一・二五と、前年より〇・〇四ポイント低下し、過去最低を更新しました。東京都においても〇・九八と、改善の兆しが見えていません。子どもを何人産むかは個々人の価値観や人生観によるもので、行政が産めよふやせよといったところで、改善する見込みがないことは理解しますが、子育てしやすい環境を整えることによって、産むことをちゅうちょしている人たちが、子どもを産む選択をするように促していくことは必要だと考えます。 都はこれまで、認証保育所の整備など子育て環境の整備に取り組んできました。認証保育所の認知度も高まり、都内各地で三百二十七カ所、九千七百人の定員まで増加しましたが、施設型の保育で対応できないような都市型のニーズをカバーするための新たな取り組みを始める時期に来ていると考えます。 例えば認証保育所は十三時間開所を義務づけられていますが、東京には深夜や休日、祝日に働く父親や母親も多いはずです。スポット的にごく短時間だけ保育を必要とする父親や母親もいることでしょう。このようにさまざまな働き方がある大都市東京において、保育のすき間ともいえるところに十分に対応していくのは、施設型だけでは限界があると考えます。そこで、家庭福祉員やNPOなど、みずからの自宅で子どもを預かる家庭的な保育を今まで以上に活用することが必要だと思われますが、所見を伺います。 答弁1 ▼福祉保健局長 子どもを主人公とした質の高い保育サービスを実現するためには、保育の実施主体でございます区市町村が地域の保育ニーズを的確に把握いたしまして、認可保育所に限らず、認証保育所や家庭福祉員などの保育サービスを組み合わせることにより、当該地域の実情に応じた保育を実施することが大変重要でございます。 休日・夜間保育や一時保育などの多様なニーズに対し、お話しの家庭的保育も含めまして、区市町村がさまざまな保育資源を活用できますように、都としても働きかけてまいります。
質問2 さて、保育園に子どもを預けている親にとって、子どもがインフルエンザやプール熱、おたふく、水ぼうそうなど、病気になったときが大変です。一日、二日は仕事を休めても、それ以上となると。しかし、子どもが熱も下がり元気になったとしても、感染のおそれがなくなったと医師の証明がないと通園できません。さらに、兄弟がいる場合は、一人が治ったと思ったらもう一人が、と何日仕事を休めばよいかわかりません。保育園に子どもを預けている親にとって、病児・病後児保育の充実が、仕事と子育てを両立していく上で最も必要なのです。病児・病後児保育に取り組む施設はまだまだ足りません。施設をふやすことはもとより、病児・病後児保育に取り組んでいるNPOなどの力を活用していくことも必要だと考えます。所見を伺います。 答弁2 ▼福祉保健局長 病後児保育の実施に当たりましては、看護師などの専門職の確保が不可欠でございまして、急な発熱や呼吸困難による児童の容体の急変などに迅速かつ適切に対応できますように、協力医療機関との連携も重要でございます。 このため、都では、区市町村と事業者を対象とした病後児保育事業マニュアルを作成し、事業の拡充と適正な運営が図られるように努めているところでございます。 今後とも、実施主体としての区市町村が、地域の実情に合わせて質の高い病後児保育事業に取り組んでいくことができるよう支援してまいります。
質問3 東大和市で、たんの吸引が必要な女の子の入園を認可保育園が断り、訴訟になっている事件は記憶に新しいですが、この例を挙げるまでもなく、障害児や難病で特別なケアや配慮の必要な子どもたちの受け入れが十分に進んでいると、胸を張っていえる状況ではありません。認可保育園を断られた子供たちの受け皿として認証が、さらに認証を断られた子どもたちの受け皿としての役割を家庭的な保育が担っているのが現状です。また、難病などで特別なケアの必要な児童を預かるには一定の知識が必要となりますが、現在、認可保育園にも認証保育園にも、特別な知識を備えている人材が十分にいるかといえば、甚だ疑問です。都が先頭に立って、難病など特別なケアの必要な児童の保育の担い手を育成していく必要があると考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼福祉保健局長 難病などの子どもの保育には、かかりつけ医や保健機関などとの連携体制を構築した上で、保育従事職員が病気や障害に対する専門的知識に基づき適切なケアを行うことが重要でございます。 このため、都は、認証保育所を含む認可外保育施設の従事者研修におきまして、病気の子どもに関する知識を付与するとともに、区市町村と連携し、保育従事職員に対して、関係団体が実施する研修への参加を働きかけております。 さらに、都が実施する母子保健研修におきましては、難病や発達障害の子どもに対する支援を研修内容に取り入れ、この研修の対象者に保育士を加えるなど、その充実を図っているところでございます。
質問4 東京新聞の夕刊で連載をされている「歩くように 話すように 響くように」という、生まれながらに難病ミトコンドリア病を患っている娘さん、響ちゃんとの日々の生活をつづったコラムをご存じでしょうか。先日、このコラムの筆者の堀切和雅さんと会ってお話を伺いました。入園を受け入れてくれる幼稚園探しに大変苦労したというお話や、実際に入園した後、心配していた、いじめを受けるのではという不安は見事に外れ、子どもたちが響ちゃんの世話を競ってするようになっているということ、そして健常児と一緒にいることによって、障害のある響ちゃんが著しく発達していること、つまりは障害児にとっても健常児にとっても、成長していく上でプラスになっていることなど聞かせていただきました。 堀切さんもコラムで述べていますが、この社会は障害者がある割合で必ずいるのだから、偏見や差別心の育っていない幼児期から、同じ空間に当たり前のように障害児がいることが子どもたちの成長にとって必要だし、また、まだそんなに競争はしなくていい幼児期だからこそ、障害児と健常児が友人としてともに刺激をし合いながら成長していくことができるのだと考えます。そして、競争が始まる小学生になっても、それから後も、そのころの気持ちは心のどこかに残り続けるのだと思います。 小学生になると、障害児は公立小学校の身障学級や盲・ろう・養護学校へ入学しますが、就学前は公立幼稚園、私立幼稚園、保育園、療育機関など、さまざまな機関で受け入れられており、その受け入れ状況もさまざまです。現状では、就学前の障害児を保育所や幼稚園で受け入れることが当たり前という大前提もなく、受け入れに対する公的支援も不十分です。幼児期から障害児と健常児が一緒に過ごせるようにしていくことは、非常に重要な課題なのです。 また、これとは別に、ケアの継続という課題があります。それぞれの制度の中で個々の関係では真摯な取り組みが行われていて、そこには障害児一人一人とケアをする人との間で積み上げられてきた蓄積があります。しかし、年齢が上がれば、これまで通っていた機関から、小学校、中学校、あるいは養護学校へと進んでいくのであり、ずっと同じ人にだけケアを受けるわけではありません。特にこれまでは就学前にかかわる機関と学校との連携が十分ではなく、義務教育への就学を境に、それまで行われてきたケアが継続されないという問題がありました。地域において障害児と関係機関が蓄積してきた情報を生かして支援を行えるようにしっかりと連携し、就学を境にそれまでと断ち切られることがないようにしなければなりません。就学がスムーズに進むように、また、就学前の情報が学校生活においてもきちんと生かされるようにすることが必要だと考えます。教育長の所見を伺います。 答弁4 ▼教育長 障害のある幼児の就学に際しての支援についてのご質問にお答え申し上げます。 就学前の時期から学齢期へのより円滑な就学を推進するためには、関係機関の地域における連携体制づくりが重要であります。 そのため、東京都教育委員会では、就学支援に関するモデル事業におきまして、保育所、幼稚園、療育施設等と就学先となります小学校や養護学校等との相談支援のネットワークを構築するとともに、保護者と保育所、幼稚園等が協力して就学支援シートを作成し、その情報を学校の個別指導計画に反映させる新たな取り組みなどを試行しているところであります。 今後、モデル事業の成果を、本年度中に就学相談に関するガイドラインにまとめまして、区市町村教育委員会に対して示してまいります。
質問5 医学が進歩したことによって、これまででは救うことのできなかった多くの命が救われるようになりました。すべての命は等しくとうといものであるという社会の要請があるからこそ、多くの方々が努力を積み重ねて治療法を生み出してきたのでしょう。であるとすれば、この社会はその後もそのとうとい命の生活に責任を持つべきだと考えます。しかし、現実は、未就学の段階から、保育園に預けられない、幼稚園に通えないといった壁にぶつかってしまっています。障害者自立支援法が施行となり、この法律の理念どおりに進んでいくとするならば、今まで以上に多くの障害者が社会の表舞台に出てくることとなるはずです。その一方で、医学の進歩によって、最重度の心身障害者も増加していくでしょう。 これからは、ほっとするから、人生について考えさせられるから、といった健常者にとっての有用性から障害者とともに暮らすことが望まれるのではなく、ただ生きているだけでいいを是とする社会がつくられなくてはならないと考えます。ハード面の整備や施設の充実なども必要でしょう。しかし、それ以上に、障害者もその家族も、そして健常者も意識の変革が必要なのだと思います。 この代表質問でロンドンプランのことを再三取り上げました。その根底にあるのは、ソーシャルインクルージョン、社会的包容力という考え方です。弱者や援助の必要な人たちを社会から排除するのではなく、社会の一員として受け入れること、そのことこそが今必要とされているのではないでしょうか。 私は、首都東京が国際社会の中で都市間競争に打ち勝つ、父親のような強い都市であることも必要だと思います。しかし、それ以上に、弱者を疎外せず、すべてを肯定的に受け入れ、大きく胸を広げてすべてを抱える母親のような社会になってこそ、世界に誇れる成熟した都市、世界から尊敬を受ける都市といえるのだと考えます。 東京において、障害のあるなしにかかわらず、すべての方々が生きにくさを感じることなく過ごすことのできる真のノーマライゼーションを実現することが必要だと考えますが、知事の所見を伺います。 以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。 答弁5 ▼知事 ノーマライゼーション、何でこれ英語を使うんですかね。日本語で何というんですか。要するに平均化というんですか、みんな公平ということですか。いずれにしろ、要するに、どのようなハンディキャップを負っていようと、人間はそれぞれ異なる個性と能力を持ち、また、それなりにはかり知れない可能性を秘めたものであります。 五体不健全ですか、乙武さん、あの本を書かれた彼も……(「五体不満足」と呼ぶ者あり)「五体不満足」。彼とも話しましたが、彼を見ていると、人間の可能性というのはこういうところにあるんだな、さらにあるんだなという感じがします。 いずれにしろ、我が国には元来、人間の存在を慈しみ、とうとぶという独自の価値観がありまして、障害のある人もない人も、社会の一員として互いに尊重し支え合いながら、ともに生きる社会を実現するための土壌が、文化的にも伝統的にも、人間の、日本人の情念としてあります。 都は今後とも、だれもが地域で人間としての尊厳を持って暮らすことのできる社会の実現を目指し、一人一人が持つ可能性を引き出せるよう、障害者の自立を支援する取り組みを多角的に推進していきます。 初鹿さん、あなたはオリンピックにいろいろ疑義もあり、不満もあるようですが、注文をつけるなら具体的に出してください、あなたの代案を。出してくださいよ。それがよかったら、いつでも採択しますから。どうかお願いいたします。
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