▼吉田委員 次に、貧富の格差について入ります。 まず、基本認識についてです。 石原都政が、オリンピックをてこに、幹線道路の集中整備には野方図に都民の税金を投入する一方で、自治体として何よりも重要な課題である暮らしと福祉を守ることに力を尽くそうとしていないことを指摘せざるを得ません。 とりわけ、今、社会的な大問題となっている貧富の格差拡大について、知事は、我が党の代表質問に対し、渋々格差は認めたものの、危機的なものとは思っていない、社会にある程度の幅があるのは当然であり、そこから社会のダイナミズムも生まれてくる、こう答弁を行いました。 知事は、世界の状況についてどのように見ているんでしょうか。多くの国々で、市場原理、規制緩和万能の新自由主義経済路線のもと、格差の拡大が深刻な問題となっており、その是正のために真剣な努力が始まっています。 ヨーロッパでは、格差の解消をEU憲章に掲げ、真剣な取り組みが進んでいます。イギリスでは、サッチャーリズムによる医療費抑制政策により、入院待機者が百三十万人を超えるなどの事態が広がる中、是正の努力が始まっており、医療費を五年間で一・五倍に拡充することや、健康格差をなくすために住宅、医療、社会保障などの改善に取り組む国家戦略を推進しています。ロンドン市も、貧困と差別に取り組むことを政策目標に掲げています。 アジアでも、ご承知のとおり韓国政府は、社会が少数の富裕層と絶対多数の貧困層に両極化しているとして、格差解消を最大の課題として取り組んでいることは広く報道されているとおりです。 ラテンアメリカでは、アメリカ主導の新自由主義経済路線によってもたらされた貧困と格差是正を目指す新しい政治の流れが、ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、ウルグアイなど、政治体制をも動かす巨大な波となって広がっています。 知事、今、世界じゅうで貧困の格差の是正に取り組む流れが広がっています。こういう世界の取り組みについて、どう認識をしているのでしょうか。日本でも東京でも格差是正の努力が必要だと思わないんですか。それとも、東京は違うというふうにいい張るのでしょうか。知事、お答えください。知事、お答えください。世界の認識ですよ。 ▼知事 前に申しましたように、どの社会にも格差はあるんですよ。今、日本にある格差は決して危機的なものだと思いません。むしろ、非常に眺めていて危機的な、恐ろしいぐらいの格差は、あなた方の本家の共産党が牛耳っている中国じゃないですか。(「関係ないよ」と呼び、その他発言する者あり)関係ないことないだろう、だって。同じ--中南米に広がりつつあるんじゃないですか。あれをもって眺めれば、私は恐ろしい格差だと思いますよ。 ▼吉田委員 知事ね、日本と東京で格差に取り組む必要があるのではないかと問うているんですよ。中国などを例にして、その問題に正面から答えないというのは、それはおかしいですよ。しかも、率直にいって、そういうだろうと私は思っていましたよ。 あのね、我々別に中国を擁護するものではありませんけれども、中国についていえば、格差が確かにあるんですよ。しかし、中国政府はそれを認識し、底上げの努力はしているんですよ。その結果、一日一ドル以下で生活をする貧困者を、中国は十年間で四億人も減らしています。世界の貧困状態にある人のうち四分の三を中国が救い出したということを、世界銀行の報告書で高く評価しているんですよ。 最近の全人代でも、格差是正を最大の課題として取り上げ、社会保障や医療、教育など、弱者対策を充実し、ともに豊かになる社会の実現を目指しているじゃありませんか。格差を直視し、努力をしているんですよ。それに対して知事がどういう認識なのかということを私は問うたんですよ。 知事ね、都民生活に責任を負う立場から考えてほしいと思うんですよ。貧富の格差の拡大というのは、東京はとりわけ深刻なんですよ。 教育長及び福祉保健局長にそれぞれお伺いいたします。学用品や教育費などの就学援助を受けている児童生徒の比率及び全国の順位はどうか。また、東京都における国保料の収納率及び国民年金の納付率と全国の順位はどうか、それぞれお答えください。 ▼教育長 きょうお出しした資料の155号に詳細に載っておりますので、それをごらんいただければと思いますけれども、そこに載っかっている資料が文部科学省の資料でございまして、平成十六年度におきます要保護児童生徒の全児童生徒に対する割合は一・六八%で、全国八位でございます。準要保護児童生徒の割合は二三・一一%で、全国二位であります。合わせた割合は二四・七九%で、全国二位となっております。 なお、準要保護児童生徒への就学援助につきましては、ご案内のとおり、各区市町村ごとに政策的に認定基準を定めていることから、準要保護児童生徒の割合やその全国的な順位がどうだこうだということで、各地域の経済的な状況あるいは格差をあらわすというふうにはいえないと考えております。 ▼福祉保健局長 平成十六年度の都内の国民健康保険料の収納率は八五・九%、全国では、一部速報値も含めた比較になりますが、四十七位ということでございます。 国民年金につきましては、国全体の制度でございまして、都として所管している事務はございませんが、社会保険庁の発表資料によれば、平成十六年度の東京都の納付率は五八・三%、全国で四十五位と聞いております。 ▼吉田委員 知事ね、今、三つの指標を紹介してもらいました。就学援助は全国の二倍の数字なんですよ、これは。全国二位ですよ。国保料の収納率は全国四十七番目、最下位ですよ。 私が厚生労働省の資料から調べたところ、滞納世帯の割合も全国一位ですよ。国民年金の納入率も全国四十五位ですよ。所得格差の大きさを示すジニ係数を見ても、きょうの委員会資料第14号に出ていますけれども、東京は全国平均よりも高く、さらにこれが広がる傾向に進んでるんですよ。どの指標を見ても東京は全国で最悪の状況、しかも、それが最近とりわけひどくなっているというのが客観的な事実ですよ。 国保料の滞納世帯は五年間に十六万世帯もふえていますけれども、保険料を払えない人への制裁措置が強化されたために、正規の保険証をもらえずに、窓口で十割負担の資格証の世帯は、九九年の十五世帯から、今年度、一万七千世帯に膨れ上がり、お金がないために医者にかかれないという深刻な事態が、実際広がっているんですよ。 国保料の値上げについては、都の責任も実は大きいんです。二〇〇〇年度と来年度の予算を比較して、二十三区と市町村との国保事業に対する都の補助金を、百三十四億円削減することになります。国保料の相次ぐ値上げにつながり、滞納世帯を増加させる原因となっているんです。挙げれば切りがありません。 知事、これだけの事態が進行しているんですから、深刻だと思わないんですか。政治の責任、自治体のあり方が問われているんですよ。住民生活に責任を持つ自治体の長として、こういう都民の痛みに目を向けて手だてを尽くすということが、今、求められているじゃありませんか。知事、どうですか。これだけ事実を示したんだから、知事、ちょっといってくださいよ。 ▼知事本局長 私どもでは、政策を実現する知事本局と、それから財政、総務局、裏づけながら、各局でそれぞれすべての都民に対してできるだけの政策を展開していきます。これからも都民の幸せのために、東京都一丸となってやっていくことを確認いたします。 ▼吉田委員 知事、お答えできませんか、この問題。認識ですよ、東京の事態についての。 ▼吉田委員 教育長及び福祉保健局長が具体的に示した数字も含めて、いかに東京が全国の中でも深刻な事態にあるのか、そのことを示したにもかかわらず、知事は答えることができませんでした。 私は改めて具体の問題を伺いたいと思います。若者の問題です。 若者の中で非正規雇用が増大し、賃金格差が広がっていることが日本社会の格差拡大の新たな要因となっていることは、政府自身も、あるいは専門家も、共通した指摘となっています。 まず、産業労働局長に伺いますけれども、若者の中での所得格差の拡大について、どのように認識をされていますか。 ▼産業労働局長 統計によれば、若年者は他の年齢層に比べると、格差は小さいものの、同年代における所得格差は、徐々にではありますが拡大しつつあります。所得格差拡大の要因としては、就業形態の多様化などが指摘されているところでございます。 ただ、ここで一言申し上げたいんですが、私どもの「東京の産業と雇用就業」の記述の中から、あたかも現在危機的な状況にあると結論づけられておりますが、それはちょっと早計ではないかと。そのくだりをよく読んでいただければ、中高年層ほどではないにしても、若年者にも賃金格差が生じつつあるという指摘がございます。 また、格差の程度、これは先ほど委員もジニ係数という形でおっしゃいましたけれども、その係数が、若年者は〇・二八ということで、五十五歳から六十四歳の〇・四五に比べると小そうございます。まだまだ格差がそれくらいに広がっていないと。 それともう一つは、そういう若年者間の賃金格差は、年齢の上昇とともに、今後拡大の可能性が予想されるということで、現在、おっしゃるように格差が歴然としてあって、それが危機的状況であるというのを、たまたま本会議で私どもの出版物を引用されてご指摘されましたけれども、よく読んでいただきますと、そういう結論を出すのは早計ではないかと思います。 ▼吉田委員 我々は産業労働局の報告書をそのまま引用したものであります。しかも、局長が言ったように、現実に格差があり、しかもそれが将来にわたって広がる危険性があるということを直視しなきゃならないんですよ。それは政府だってそういうふうにいっているんだから。 そこでですね、ところが知事は、一月十八日ですか、記者会見で、正社員に比べてフリーターの方がよっぽど収入があるというふうに発言いたしました。これはやっぱり事実に反する発言であり、認識だと私は思います。一体どういう根拠でこういう発言をされたのか、お答えください。 ▼知事 いわゆる正社員にもいろいろなタイプがございますね。しかし、それに比べて、例えばいわゆる三Kといわれているような仕事に従事している正規の就労者もいますし、あるいは日本に滞在している外国人が、日本人はそういう仕事をしたがらないから、自分たちがかわってやるといって働いている人がいますが、そういう方々に比べて、フリーターの方がはるかに収入を持っている人はたくさんいますよ。 例えばNHKのこの間の特集見ましたけれども、まあ内外の通貨の格差もあるんでしょうが、フリーターとして適当な時間働いて、ためたお金を持ってタイ国のどこですかな、そこはいやしの村とかいうそうですけど、そこに多くのフリーターの日本人が集まって、そこで食べられるだけ食べ、遊ぶだけ遊んで、そしてお金がなくなったら日本に帰ってくる。こういう状況っていうのは、やっぱり社会が裕福にならなかったらあり得ないことじゃないんでしょうか。 それでですね、フリーターとかニートとか、何か気のきいた外国語使っているけどね、私にいわせりゃ穀つぶしだ、こんなものは。今、手不足で困っているのに、働く場所がいっぱいあるのに、なぜ働かないんですか。ニートなんか、親が甘やかしているからじゃないですか。私は、こういった人間たちの収入を数値にして、それだけあげつらって格差だ、格差だというのはナンセンスだと思います。 ▼吉田委員 一部にね、一部に、それはもうどんなに超過密であろうとしても、利益を得るために仕事をして、一定高額の収入を得ている非正規の若者もいるでしょう。しかし、知事がいったように、たくさんいる、これは私……(「たくさんいるよ」と呼ぶ者あり)たくさんいるというのは違いますよ、知事はよく、木を見て森を見ないみたいなことを何度もいわれましたけど、私は、知事の見方がまさにそれだと思うんですよ。 (パネルを示す)これは、東京都の就業構造基本調査報告書に基づいて我々がつくった資料です。赤が非正規の若者、二十代ですよ。青が正規の若者の所得分布ですよ。非正規の一番高い山は、ここにあるように、五十万から九十九万ですよ。百万未満ですよ、非正規の一番大きい山は。それ以降はこういうふうに急激に下がっていくんですよ。それに対して、正規の一番高い山、これが三百万から三百九十九万ですよ。何がたくさんですか。 より厳密に見れば、例えば三百万以上で、正規は五九%の方がいらっしゃいます。非正規で三百万以上の年収を受けている人は、わずかに四・五%なんですよ。これは調べてもらって結構ですけれども、東京都の調査のデータに基づいて私たちがまとめたものなんですよ。 しかも、仕事があるじゃないかというふうにいわれましたけれども、政府の月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料、一月十九日、内閣府、この中でも、非正規の雇用者は正規雇用者への流動性が少なく、雇用の二極化が進むおそれがあるというふうにして、わざわざ図表で非正規から正規にかわれないということを、政府自身の資料でも示しているんですよ。 ご承知のとおり、東京の賃貸住宅家賃は、全国の平均で約二倍ですよ。都市部で同じ大阪と比べてみても一・五倍ですよ。非正規の雇用で月収が十万前後、安くても五万、六万の家賃を払えば、本当に生活そのものが深刻な事態に陥らざるを得ない、こういう若者が大多数なんですよ。自分の意思にかかわらず、東京の若者がどれだけ大変な生活を強いられているのか、私はやはりそうしたことをしっかり知事に見ていただきたいと思うんです。 福祉事務所を回って、どういう方々からどういう相談があるかということを聞きました。その中では、非正規の若者同士が結婚し、子どもができ、奥さんが解雇され、途端に生活保護に頼らざるを得ない、こういう相談事例が目立っているというふうにいいました。 新聞でも報道されましたけれども、先日、都内の定時制高校に通う看護師見習いの女子生徒の実態が紹介されていました。休みなし、一日最長十四時間労働で、月給五万円、超過勤務で食事もろくにとれず、半年で十キロもやせた、こういうことが新聞で繰り返し報道されました。 また、請負契約で毎日違う職場を転々とする若者、法律で禁止されている多重派遣、偽装請負の横行、若者は物と同じような扱いをされている、そういう実態があるんです。 非正規だけではありません、正規の若者たちも、本当に大変な労働条件のもとに置かれているという現状があるんです。 それは今大変なだけではなく、先ほど局長もいいましたけれども、将来の問題として、これは大きな問題に進んでいくんです。政府自身、これは将来の所得格差拡大要因を内包しているというふうに述べているんです。 したがって、やはりこうした若者の格差是正、雇用、就労、生活支援など、日本と東京の未来にかかわる問題として、もっと抜本的な、けっ飛ばすんじゃなくて、対策をとることが求められていると思うんですが、知事、いかがですか。 ▼産業労働局長 都といたしましては、雇用就業施策の中で、若年者の就業を支援することに重点を置いておりまして、意欲ある若者に対しまして、技術専門校における職業訓練やしごとセンターにおけるカウンセリングなど、適切な就業支援を行っているところでございます。 ▼吉田委員 そういいますけれどもね、私はやっぱり深刻な事態にふさわしく、かつ日本と東京の将来に係る問題として、力を強めることが求められているということを指摘したいんですよ。 例えば、若者のワンストップサービスセンター、いわゆるジョブカフェといわれています。もっとこの機能を、私たちは多面的に強めなければならないというふうに思っております。 しかし、この広い東京でですよ、このワンストップのサービスセンター、ジョブカフェなるものは一カ所でしょう、一カ所。ところが、全国はどうですか。岐阜県は七カ所、岩手県は六カ所、福島、茨城は五カ所、二十の道府県は複数配置しているんですよ。それ一つを比べてみたって、東京の取り組みは、私は自慢できる水準じゃないと思うんです。 しかも、ヨーロッパなどでは、EUの雇用サミットでは、若年者雇用問題が重要テーマで、加盟国は若者を六カ月以上失業状態に置いてはならないということで、経済政策のトップとして青年の雇用問題を強調しているんですよ。そういう取り組みをやっぱりしなければ、少子化を初めとする、あるいは技術の継承、発展という点から見ても、深刻な事態になることは明らかだと思うんです。 続いて、高齢者の課題についても取り上げてみたいと思います。 この数年間、国と都による増税と社会保障、福祉の切り下げ、負担増などのために、とりわけ高齢者世帯は大変な痛みが広がっています。 先ほど高齢者のことを例に出されましたけれども、まず政府がどんなことをこの間してきたのか。二〇〇〇年からは介護保険制度による介護保険料、利用料が重い負担となりました。ことし四月からは大幅な値上げがされようとしています。二〇〇一年には七十歳以上の医療費が定額負担から一割負担に値上げをされ、一カ月の外来の上限額が三千二百円から一万二千円にはね上がりました。医療費もさらに二割負担、三割負担に引き上げるなどの大幅負担増の案が国会に出されています。 二〇〇二年にはマル優の廃止も行われました。二〇〇五年、昨年十月には、特別養護老人ホームなど介護施設利用者の食費、居住費、デイサービスの食費負担が導入をされました。その上、今年度から来年度にかけて、年金への課税を強化し、老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小、非課税措置の段階的な廃止に伴う所得税、住民税の増税とそれに連動した値上げが、まさにこれから直撃されようとしています。 問題は、こうした国の取り組みと同時に、東京都の取り組みなんです。このような相次ぐ増税、負担増、給付削減から都民を守るために頑張るのが本来の仕事だと思います。ところが逆に追い打ちをかける、そうしたことが行われたのが都政の現実です。 六十五歳から六十九歳が対象だった老人医療費助成、マル福は、来年度予算ではわずかに六十九歳の人だけに縮小され、六十代後半の方が医者にかかる受療率が大幅に減少いたしました。マル福は来年六月には廃止されようとしています。六十五歳を超えてから障害認定を受けた高齢者は、障害者医療費助成の適用除外とされ、マル福も障害者医療費助成も受けることができず、途方に暮れる事態も生まれています。 寝たきりの高齢者の老人福祉手当は完全に廃止されました。シルバーパスは全面有料化され、利用率は、何と七割台から五割台に落ち込んでいます。他の政令市と比べても、こんなに利用率が五割台に下がったところはないと思います。 この七年間、痛みばかりが押しつけられてきた、一体政治は何のためにあるのか、苦しませるためにあるのか、こういう高齢者の声が広がるのは当然な事態が進められてきたと思います。 知事に伺いますけれども、高齢者福祉について、これが石原都政の高齢者福祉事業だと全国に胸を張ることができるようなものがあるんでしょうか。知事自身のお言葉で答えてください。 ▼福祉保健局長 今般の税制改正は、世代間及び高齢者間の負担の公平の確保を目的といたしまして行われたものでございます。これにより、一部の高齢者の税負担がふえる可能性があることは承知しておりますが、それでもなお、現役世代に比べれば優遇されておりまして、現在の段階では許容の範囲と考えております。 次に、医療制度改革により、ことし十月から七十歳以上の高齢者の医療費負担が二割から三割、都として支援策を講じるべきというふうなことでございますが、人口減少社会がいよいよ現実のものとなった今、日本の社会保障制度は大きな転換期にございます。医療保険制度につきましても、その維持のためには、国民全体で制度を支えることが必要でございまして、年齢が高いから負担能力がないということじゃなくて、年齢が高くても負担能力のある方とない方がいらっしゃいますので、そこに適正な負担を求めることは当然のことと考えております。 ▼吉田委員 ちょっと私の答弁、違うんだけどな。そんなこと聞いてないでしょう。自慢できるものがあったらいってくださいといっているんですよ。 ▼福祉保健局長 それでは例示的に申し上げますが、まず認知症高齢者グループホームの整備促進についてでございます。 これは民間企業補助や重点地域の補助率アップなど、独自の支援策によりグループホームの整備を強化しているものでございます。定員数は、介護保険制度開始から五年間で約三十倍に増加、全国では約十五倍のところ、都内では三十倍に増加しております。 また、次に、全国トップクラスの在宅サービスの充実度でございます。 都は、在宅サービスの利用率は群を抜いており、全国トップクラスでございます。訪問介護につきましては、利用率は東京六三・二%、全国では四四・六%、訪問看護一人当たりの費用は、東京は五十万四千円、全国は二十九万円、これは十六年度実績でございますが、いずれも都は全国一の水準に達していると考えております。 ▼吉田委員 二つの事例を紹介されましたけれども、グループホームの何が全国一なんですか。資料でも明白ですよ。本予算特別委員会の資料101号、見てください。人口に対する定数は、全国最低水準じゃないですか。沖縄とともに〇・六%ですよ。何が全国一ですか。しかも実数で見ても、比率だけじゃありませんよ、我が党の調査では、この五年間に都がふやしたのは二千八百人、北海道は実数で見たら八千六百人、福岡県が五千三百人、佐賀県でも四千四百人、愛知県三千九百人、神奈川三千七百人、率だけではなく、実数でも全国一などといえる水準じゃないんですよ。 しかも、在宅サービスということを強調いたしました。しかし、都の努力で在宅サービスが伸びたわけじゃないんですよ。施設に入れない、ショートステイが利用できない、デイサービスも制限があったり、それでホームヘルプ、在宅で頑張らざるを得ないという状況が、この指標はある面、示しているんですよ。そういうことを全国一などというふうに、私は胸が張れる状況じゃないと思うんです。 しかも、高齢者、負担できない人もいれば、負担できる人もいるというふうにいいました。しかしね、負担できない人の方が大勢なんですよ。 (パネルを示す)これは国民生活基礎調査、国の最新の平成十六年度版に基づいてつくったものです。ピンクが高齢者世帯です。青が全世帯です。見てごらんなさい。高齢者世帯は、百万から二百万、ここのところに群を抜いて多くの高齢者がいるんですよ。平均が二百九十一万というふうになっていますが、実態としては、年収二百万以下のところに四三%の高齢者の方々がいらっしゃるんですよ。 もちろん、払える人もいますよ。しかし、多くは二百万以下、あるいはちょっとそれを超えた程度、住民税非課税世帯の高齢者が大多数なんです。こういう実態に合わせて、東京都が施策をどのように展開するのか、それが今、真剣に問われていると思うんです。 しかもね、しかも先ほど既に局長の話がありましたけれども、これまで大変だっただけじゃないんですよ。これから高齢者の方々、とりわけ深刻な事態が生まれてくるんですよ。それは、これまでも話がありましたけれども、国の税制改定によって、老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小、非課税限度額の廃止、そして来年には住民税を一〇%、一律フラット化する。多くの高齢者は、課税であったとしても、住民税は五%だと思います。それを二倍にするんですよ。そういうことが行われることによって、増税だけではなく、社会保障の負担が連動して雪だるま式に襲いかかる。 さらに、七十歳以上の医療費は、ご承知のとおり、政府は一割負担から二割負担に引き上げようとする法案を国会に提出しています。二割負担というのは、これまでの負担が二倍に上がるということですよ。 さまざまな形でこの影響が出ていますけれども、その一つとして、先ほども話がありましたが、軽費老人ホームの問題があります。資料82に、税制の関係で影響する事業の一覧を本委員会で出していただきました。そのトップに挙げられているのが、軽費老人ホームA型です。軽費老人ホームA型の方々は、住民税、そして所得税によって各種の利用料負担となります。この軽費老人ホームの問題は、入っている方から相談があり、我が党の議員が福祉保健局に二月十四日、実情を訴えに伺いました。さらに、代表質問でも、我が党はこの問題を取り上げました。 私は、質問するに当たって、直接ホームの施設長及び利用者の方とも会ってまいりました。年金が上がらないのに税金がふえるだけではなく、利用料まで大幅に引き上がる。約二割です。しかも、中には、八万円の利用料が十六万になるという方が、私に訴えました。年金が二十万ちょっとで、月々十六万の利用料負担ということになれば、税や各種の社会保障負担等含めて計算をすると、自由に使えるお金は月わずか九%ですよ。そういうことになるんですよ。 しかも、施設長は、施設を出なければならないという相談を受けているということまでいわれました。ぜひ福祉保健局長、利用料設定は都の権限でできるわけですから、調査し、負担増とならない、据え置きなどを含めた緊急措置をしていただきたいというふうに思いますが、お答えください。 ▼福祉保健局長 ご答弁申し上げる前に、高齢者の負担の問題でございますが、これは平成十五年の国民生活基礎調査によりますと、一人当たりの所得について見ると、高齢者世帯は百九十六万一千円、全世帯では二百四万七千円で、それほど大きな差はございません。 それと、貯蓄と負債について見ますと、世帯主の年齢階級別貯蓄現在高を見ますと、六十歳代以上までのすべての世帯で減少する一方、七十歳代以上の世帯のみ、増加しております。額は、平均では千五百五十六万円の貯蓄でございますが、七十歳以上では二千二百七十四万円。負債現在高を見ますと、全世帯で増加しているところ、七十歳代以上が最も低いという現実もございます。 そこで、ただいま質問を受けた件でございますが、先ほど公明党の中嶋理事にもお答えしたところでございます。税制改正に伴う軽費老人ホームA型の利用料の取り扱いにつきましては、入居者への影響も考慮し、利用料の据え置きなどを含め、そのあり方について検討してまいります。 ▼吉田委員 私の質問に対する答弁の前に、再び高齢者の所得問題について出されました。高齢者層ほど所得格差が大きくというふうに、これは先ほども紹介した一月十九日、閣僚会議に出された月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料、経済格差の動向という欄に明記をしているんですよ。政府でさえ、高齢者層ほど所得差が大きいと。 局長、そういう認識はないんですか。 ▼福祉保健局長 私は、平成十五年国民生活基礎調査の結果として、一人当たりの所得について見ると、高齢者世帯は百九十六万一千円、全世帯では二百四・七万円で、遜色はないものと。それと、貯蓄と負債につきましても、先ほど申し上げたとおり、六十歳代以上までのすべての世帯で貯蓄が減少する一方、七十歳代以上の世帯のみ増加していて、額も最も多い、高いというふうに申し上げたと……。 ▼吉田委員 局長、もう一度。所得格差があるということを認めないんですか、高齢者層ほど大きいと。 ▼福祉保健局長 元来、所得格差が先鋭的にあらわれるという意味では、高齢者世帯が増加しているということで、先ほどからの議論で、ジニ係数あるいは所得格差の問題では、若者のニート、ないしは単身世帯の増加、あるいは高齢者の所得の格差があるということはあり得ると思います。 ▼吉田委員 ですからね、高齢者の施策を考えるときには、平均値だけで他世代と比べてどうこうということだけではなく、その高齢者世帯ほど、他の世代と比べてみても、所得格差が激しいんだという認識に立って対応することが必要だということを、私は改めて強調したいんですよ。 時間がだんだん減ってまいりましたけれども、この問題でもう一つ取り上げさせていただきます。 私は、杉並の高齢者ご夫婦で、夫が厚生年金で月額二十万三千六百四十一円、妻は国民年金で月額五万九千余円の高齢者世帯、この方々が、先ほどからいっている各種の税控除の廃止や非課税限度額の段階的な廃止によって、増税と同時に、介護保険料や国保料がどのように上がるのかということについて、関係者の方々の協力を得て推計をしてみました。 (パネルを示す)それがこの表です。いいですか。この黄色が国保料、水色が介護保険料です。ことしは住民税、所得税はなかったんです。合わせて介護保険料、国保料で年間十一万七千円。それが来年度、四月以降どういうふうになるかといえば、この方は所得税、住民税が課税となります。問題は、住民税が課税となると、連動して介護保険料の段階が上がります。 今、このご夫婦、夫も介護保険料は第二段階です。これが一気に住民税課税ということになれば、二段飛んで介護保険料の負担が上がるんです。妻も、夫が非課税から課税になると、非課税世帯じゃなくなりますから、連動して、妻も介護保険料が上がります。ご承知のとおり、二十三区の国保料は住民税額で計算しますから、住民税が上がれば、それと連動して国保料は上がるんです。そうすると、十一万七千円の負担が二十万、ほぼ倍近いですよ。さらに、住民税のフラット化によって、二十六万四千三百六十六円、これだけ上がるんですよ。だから、何らかの対応策を--もちろん東京都だけでそれは無理でしょうよ。国にも働きかける、区市町村とも協力する、何らかの支援策をとる必要があるんじゃないですか。 ▼福祉保健局長 今般の税制改正は、世代間及び高齢者間の負担と公平の確保を目的としておりまして、これにより、一般の高齢者の税負担がふえる可能性があることは承知しております。それでもなお、現役世代に比べれば優遇されており、許容の範囲内と考えております。 ▼吉田委員 これがすべてじゃないんですよ。これに医療費が倍になり、介護保険の利用料もふえれば、さらに莫大な費用負担ということになります。私は、この深刻な東京の中で起きている貧困と格差是正のために、全力を尽くすことを改めて求めて、私の質問を終わらせていただきます。
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