人口減少社会の投資見直すべき オリンピックは一過性の高揚策
|
福士敬子(無(自治市民)) |
■首都高中央環状線 |
質問1 首都高中央環状線ですが、新宿線の事業費は、当初見込み五千二百億円から一兆二百億円と約二倍に膨らみ、昨年度の予算特別委員会でも問題となりました。不測の事態であったとしても、幅が大き過ぎ、当初計画の意味がなくなります。また、建設費だけではなく、維持運営に関しても際限なく増加することのないよう、計画内に取り込むべきです。 そこで、首都高速道路事業の進め方について伺います。 東京都は、首都高速道路公団に対して、二千億円を超える出資を行ってきました。出資金は昨年十月の公団民営化により、首都高速道路株式会社及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構の資本金となり、会社に株式が割り当てられました。今後、都は株主として、首都高の経営について積極的に関与し、サービス向上や新規路線建設の判断など、経営情報を都民に対してきちんと説明すべきと考えます。会社の株主となった都のお考えを伺います。
答弁1 ▼都市整備局長 首都高速道路株式会社への関与と都民に対する説明についてでございますが、新会社の経営情報につきましては、都の出資比率が二五%を超えていることから、これまでと同様に定期的に議会に報告を行ってまいります。 また、事業の運営は民間となった会社の責任において行われますが、その事業内容が都民生活にかかわるものであることから、利用者に対して適切なサービスが行われるよう、都としても機会をとらえ会社に申し入れをしてまいります。
質問2 工事費及び工期についても、当初見積もりから際限なく増加することは防がねばなりません。やむを得ず変更が生じた場合には、速やかに都民に対して説明を行う必要があると考えます。新宿線の開通予定は、当初予定から大幅におくれることが確実な情勢であったにもかかわらず、開通予定の変更が発表されたのは昨年十二月でした。今後は、都としても、工事費及び工期の変動については、可能な限り速やかに公表させるべきであると思いますが、お考えを伺います。
答弁2 ▼建設局長 首都高速道路の事業費と工期についてでありますが、首都高速道路株式会社の路線は、新宿線、品川線など、いずれも整備効果が高く、一日も早い整備が必要であります。昨年十月の公団民営化後、新会社として事業計画を策定する中で、新宿線の開通のおくれと事業費の増加などについて、首都高速道路株式会社から報告がありました。 これを受け、都では直ちに会社とともに設置した中央環状新宿線工程等管理委員会におきまして、開通時期と事業費を精査し、会社の合意のもと昨年の十二月に公にするなど、首都高速道路の事業に積極的にかかわってまいりました。 都が既に事業着手している品川線につきましても、今後、共同事業者となる会社と緊密に連携し、情報提供に努めるなど、都民の理解と協力を得ながら事業を推進してまいります。
|
■人口減少社会の公共事業、一般施策のあり方 |
質問1 人口減少社会における公共事業のあり方に沿って何点か伺います。 厚生労働省の人口動態統計速報によると、日本の人口ピーク予想はまたもや二年早まり、二〇〇五年から人口減少時代に入ったと推測されています。 東京都の人口減少の始まりは、地方に比べてややおくれるものの、高齢化率は二十年後に三〇%弱と、全国レベルより早いスピードで進むことが予測されています。人口減少時代の施策は、これまでとは異なった視点で考えなければなりません。公共事業が景気の下支えをする時代は既に終わっており、逆に施設維持費がかさむ事態を避けるべきです。都民にとって不可欠な施設や都市インフラは、資産ではなく、維持経費のかかるコスト要因です。このことは、人口減少による利用率が低下すれば一層顕著になります。 都は、財務諸表を活用した都政改革の推進において、ストックやコストに関する情報の不足を補うことを目的に、事業別に財務諸表を作成するとしています。私は、公会計に複式簿記・発生主義を導入し、財務諸表をつくることが無意味だとは思いませんが、例えばバランスシートの資産の部に、転売が不可能で、なおかつ維持更新費用が必要となる道路、橋梁が計上されることなどを考えると、公会計の財務諸表は必ずしも民間と同じ手法で解釈、分析ができるとは思えません。 冊子でも、行政施策の分析にふさわしい手法の整理、研究をより実践的な観点から行っていくと述べていますので、問題意識は共有していると思います。せっかく導入する財務諸表がつくっただけに終わらないよう、しっかり検討されることをこの機会に要望しておきます。 これらをもとに、まず外かく環状道路について伺います。 道路整備の是非は、人口減少、高齢社会や将来道路ネットワークを踏まえた交通需要予測を行い検討すべきです。現在、自動車通行量予測は当分増加傾向が続くといわれていますが、高齢社会の到来は、自家用車による交通から公共交通に移ることが考えられます。また、高齢社会における自家用車の使用状況は、東京と地方では大きく異なると思われます。 さきに述べたとおり、日本の人口減少時代の到来は、従来予測に比べて早まってきています。さらに、環八や首都高中央環状線など、外環を補完する道路の完成で、渋滞は大幅に解消できると思われます。また、現在の環八や首都高の工事が行われている地域の渋滞は、一時的なものとして無視できる状況ではありません。経済効果を算出する場合は、何年にもわたる周辺道路の工事渋滞等のデメリットを含めて考えるべきです。 外環に関連する長期的な交通需要及び費用対効果については、ただいま述べた状況を考慮し、より実情に合ったものとなるよう、必要に応じて算定根拠の見直しや最新データを用いた再計算を行う必要があると思います。
答弁1 ▼都市整備局長 外環の交通需要及び費用対効果についてでございますが、交通需要と費用対効果は、平成十四年に公表された国立社会保障・人口問題研究所の中位推計を用いて予測しておりまして、将来の人口減少や少子高齢化の傾向を見込んだものとなっております。したがいまして、現時点の算定根拠やデータは実情に適したものであり、算定結果は妥当なものであると考えております。 都といたしましては、首都圏の交通の円滑化や環境負荷の軽減を図るとともに、東京の都市再生のため、外環の早期事業化に向け、国とともに積極的に取り組んでまいります。
質問2 八ッ場ダムに移ります。 近年、水の需要に関して、実際には減少傾向が見られているにもかかわらず、都は増加傾向の予測を立て、それに基づいてダム建設を行おうとしています。 ダム建設は、単に建設費だけではなく、維持管理費についても後世にツケを回すことになります。国の事業であっても、建設の是非を決めた責任は都にもあるはずです。既存の一般的社会資本の維持更新の費用は、二〇二三年に公共事業の許容量を上回るという分析があります。維持管理に多額の費用がかかり、簡単に破棄できない施設の建設はもうやめるべきです。 ちなみに、一人当たり一日最大配水量は、九二年の五百二十二リットルから、二〇〇三年以降は四百十リットル前後に減少しています。東京都水道の一日最大配水量も、一九九〇年代前半をピークに減少傾向に転じています。今後、都の人口増加を加味しても、千三百万人掛ける四百二十リットルとして五百四十六万立方メートル、現在の保有水源量六百二十三万立方メートル以下です。滝沢ダムも完成すれば、さらに余裕ができます。将来の水需要が増加すると見積もる根拠を伺います。
答弁2 ▼水道局長 将来の水道需要予測についてでございますが、平成十五年に行いました予測では、東京構想二〇〇〇に示された人口想定や、経済成長率等の基礎指標を踏まえ、使用水量実績やさまざまな社会経済指標を用いて重回帰分析手法により予測した結果、経済動向や平均世帯人員の減少等によりまして、一人当たり使用水量が緩やかに増加し、平成二十五年度の一日最大配水量が六百万立方メートルになると予測いたしております。 なお、都の現在の保有水源量は日量六百二十三万立方メートルであるものの、その八割を占める利根川水系は、他の水系に比べまして利水安全度が低いことや、近年の少雨傾向などにより水量が減少してきていることから、渇水時にも対応できますよう、引き続き水源の確保が必要であると考えております。
質問3 都民に対する説明責任を果たすためには、ダム建設費の負担だけではなく、将来にわたっての維持運営費なども考慮した上で、負担と便益のバランスを示さねばなりません。国の事業とはいえ、都としても維持運営費について検討する必要があると考えます。八ッ場ダムの維持運営費は、年当たりどの程度と見積もられているのか、ダム維持運営費の総額及び東京都の負担分について伺います。 事業の必要性は、便益やコスト要因について総合的な検討を行って判断すべきです。事業費の増加を防ぐためにも、財務諸表活用も含め、徹底したコスト管理を行うことを要望いたします。
答弁3 ▼都市整備局長 八ッ場ダムの維持運営費についてでございますが、このダムは、利根川流域の治水安全性の向上や水資源確保を目的として国が建設しているダムでございます。現在、水没地区の地権者の理解を得て、移転予定地の整備や道路、鉄道のつけかえなどの準備工事を進めております。 お尋ねの維持運営費につきましては、ダムの完成までに国が運営システムや管理の体制などを明らかにし、算定することになっております。都といたしましては、維持運営費につきましても徹底したコスト縮減を求めるなど、適正な負担となるよう、国に対し強く申し入れてまいります。
質問4 オリンピックに関してですが、一九六四年の東京オリンピックは、戦後復興期と団塊の世代の成人を控えた時期に行われ、確かにインフラの整備が大きな経済発展をもたらしました。しかし、人口減少時代を迎えた現在、都市インフラへの過大な投資は必ずしも経済発展につながるとは限りません。特にオリンピックを口実とした過大な投資は、維持管理に費用のかかる施設を過剰に抱え込み、維持費の面からも後世にツケを回しかねません。 八〇年代のバブル期が一過性のものですぐにしぼんだように、オリンピックは何十年に一回の一過性の高揚策で、知事がおっしゃるように日本が元気になるのでしょうか。むしろ日々努力する文化、スポーツ振興など、継続的に行えるものを考えるべきです。 長野冬季オリンピックの招致状況をホームページで見ることができますが、経費のつけかえや接待など、招致活動はスポーツの祭典とは裏腹の醜いものでした。スポーツマンシップに沿った招致が可能であるのか、その点をどう考えておられるのか伺います。
答弁4 ▼知事本局長 オリンピックに関するご質問ですが、まずオリンピック招致活動についてでございますが、オリンピック招致を実現するためには、綿密な大会計画の策定、招致機運の盛り上げ、都市の魅力の向上、平和、人権、環境への取り組みなどさまざまな活動が必要でございます。 都は、フェアプレーの精神などを盛り込んだオリンピック憲章及び国際オリンピック委員会(IOC)倫理規程を遵守し、広く都民の支持を得られるよう効果的な招致活動を行ってまいります。
質問5 オリンピック終了後の考慮も必要です。人口減少で施設が過剰となりつつある今、オリンピックで使用される巨大施設などの維持管理といった面をどのように考えているのか伺います。 答弁5 ▼知事本局長 施設などの維持管理についてでございますが、オリンピック終了後における施設等の利用や維持管理は、開催概要計画書に盛り込む後利用計画の一つとして、開催都市選考の大きな要素にもなっており、重要であると認識しております。 計画の策定に当たりましては、大会終了後の施設の利用方法やコストを考慮した適正な維持管理を念頭に入れて検討してまいります。
|
■国民保護計画 |
質問1 国民保護計画です。 有事関連法の一つである武力攻撃事態対処法の制定に関連し、国民保護計画が都でも作成されようとしています。都の計画の目的には、都民等の生命、身体及び財産を保護しと書かれています。しかし、二〇〇四年十二月に、防衛大綱では、見通し得る将来において、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断しています。この状況下で、あえて武力攻撃事態を想定し、対処法をつくったこと自体にまず大きな疑問を持ちます。 現に、世界各地の紛争事例でも、侵略との戦いから隔離された国民保護ができるとは思えません。武力攻撃が起きれば、あちこちで衝突し、矛盾と混乱の中で都民を保護しなければならないことが想定されます。その際に、都民保護をどのように優先できるのか、この計画では明確にされていません。むしろ、国という漠然とした観念を優先し、そこに存在する人々に目を向けていないのではないかと、武力攻撃事態対処法に至る発想や都の対応で考えさせられています。 都の国民保護計画は、ほとんど事務的な形です。そのことを否定はいたしませんが、人々を保護するときに一番重要な人権意識が希薄です。この計画は災害対策を下敷きにされたようですが、自然災害と武力攻撃災害とは敵意識のあるなしという根本的な違いがあります。したがって、消防庁のモデル計画の基本指針に掲げられている国際人道法の確実な実施が重要であり、この精神が理解されなければ、その違反、逸脱行為が大きくなる危険性をはらんでいます。 国民保護計画の周知度ですが、素案に対する意見は二百二十八の人及び団体からで、中でも都民はわずか四十四人です。その他は協議会委員と区市町村及び公共事業者など関係者です。協議会委員の意見には、自主防災組織やボランティア等の役割分担まで記載要求がありました。素案づくりの会議はわずか三回、幹事会を入れても四回です。協議会の中でさえ、活動は自発的な意思によるものであることが理解されていないようです。 国民保護計画を見ると、有事における住民の避難や救援に当たって、実際にかかわるのは、大方地域の消防団や自主防災組織などの住民です。こういった地域の担い手に対し、誤解のないよう人権意識対策及び啓発が必要と考えます。 そこで、消防団や自主防災組織に対して啓発を行う区市町村の対応が重要になりますが、都は、基本的人権の尊重に対し、どのように指導するのか伺います。 答弁1 ▼総務局長 国民保護計画を作成する区市町村への指導についてでございますが、区市町村計画は、国民保護法及び都の計画に基づき作成することとされております。 基本的人権の尊重につきましては、国民保護法第五条に規定されており、都の計画案でも特に配慮すべき事項として位置づけをしております。 区市町村計画にも当然明記されるものと考えておりますが、これまでも区市町村に対し説明会や研修会を通じて法の趣旨等を伝えてきており、今後とも必要に応じて指導してまいります。
質問2 国際紛争時に適用される戦時国際人道法では、文民や民間施設は、敵対行動に参加しない限りにおいて保護される。また、この人道法上の文民保護規定は、軍との分離を基本として条項が定められています。したがって、人々が保護されるためには、侵害排除活動からの隔離を明確にしていなければなりません。 ところが、計画の中で、軍事基地に関する部分では、その施設が攻撃目標になる危険に何ら触れず、単に基地内通行その他連携しか検討されていません。米軍基地の作戦行動と周辺住民の安全性との整合性はどのように考えているのか伺います。 人々を守るためには、武力攻撃に至らないための努力をすることこそ重要と考えます。この意見に対する先般の文書質問のご答弁では、そのための対策は定められていないとのことでした。計画に書かれた平素からの備えや予防の観点でいえば、近隣諸国との平和策こそ最大の人々の保護策であると再度申し入れておきます。 平和への努力や外国人への配慮を示さず、計画どおりの行動を訓練することは、かえって住民間の監視を強め、人権軽視、弱者、外国人などへの差別を助長することになるのではないかと、そういう危険性をはらむことも指摘して、質問を終わります。 答弁2 ▼総務局長 武力攻撃発生時における米軍基地の作戦行動と周辺住民の安全性との整合性についてでございますが、武力攻撃発生時における周辺住民の安全を確保するには、米軍基地との情報連絡体制を強固にすることが重要でございます。 都の計画案では、都と基地との連携体制を構築するため、連絡調整窓口を確保するとともに、平素から避難、救援について意見交換を行うこととしております。 これらの内容につきましては、現在、在日米軍との交渉窓口である国が調整を進めておりまして、都としては、この調整結果を踏まえて計画を実施してまいります。
|