平成18年第1回定例会 一般質問

不登校対策新制度の周知徹底を
職員の特勤手当を大胆に見直せ

遠藤守(公明党)
■不登校対策
 
質問1
 不登校対策についてお伺いいたします。
 都内の公立小中学校における平成十六年度の不登校の児童生徒数は、小学生が千八百三人、中学生が六千八百九十三人で、平成十三年度以降、徐々に減少してきておりますが、不登校は依然として大きな教育課題であり、社会問題ですらあります。
 ちなみに、私の地元大田区における不登校の児童生徒は、同じく平成十六年度時点で、小学生が百二十五人、中学生が四百十一人と、残念ながら二十三区内でも上位を占めております。とりわけ小学生については、不登校児童の発生割合を示す出現率が最も高い数値を示しており、強い危機感を持っております。
 そこでまず、東京都におけるこれまでの不登校対策の現状と今後の都教育委員会の取り組みについて見解を求めます。
 
答弁1
 ▼教育長
 不登校対策についてでありますが、不登校の解消は、学校教育におきます重大な課題の一つでございまして、これまで学校におきましては、不登校児童生徒の早期発見、予防に努めますとともに、保護者の相談に応じたり、家庭訪問や学習支援を行ったりするなど、原因や状況に応じた対応をしてまいりました。
 また、都教育委員会におきましても、教育相談などに関する研修の実施や公立中学校全校へのスクールカウンセラーの配置など、区市町村教育委員会と連携しまして、学校における不登校への取り組みを支援してきたところでございます。
 こうした取り組みの結果、ご指摘のとおり、不登校児童生徒数は減少傾向にあるものの、依然として大きな教育課題でございます。このため都教育委員会は、今後、これまでの取り組みを一層充実させるとともに、区市町村における不登校児童生徒が通う適応指導教室や教育相談室、児童相談所等の関係機関によりますネットワークの構築の促進を支援するなど、児童生徒の実態に応じた不登校対策を推進してまいります。
 

 
質問2
 ところで、文部科学省は、昨年七月、全国の都道府県に対し、不登校の児童生徒が自宅においてITなどを活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取り扱い等についてと題する通知をいたしました。非常に長いタイトルではありますが、その内容は、あくまで学校への復帰に向けた取り組みが前提であるものの、不登校の子どもたちが自宅でインターネットや電子メール、テレビなどのITを活用した学習を行った場合、一定の条件を満たせば、校長の判断で出席扱いにするというものであります。
 この制度は、国の構造改革特区制度を利用し、昨年までに一県六市で実施されたもので、これらの先行事例を検証し、学校復帰や就職に効果があると判断したことから、全国展開されたものであります。
 児童生徒の学習効果に十分配慮した計画が立てられ、かつ保護者と学校の間に緊密な連携協力関係が保たれるなど、運用が適切に行われれば、不登校のさらなる減少につながり得る画期的な制度と考えるものでございます。
 制度に関して、先日、不登校児を抱える複数の保護者に直接ご意見を伺ったところ、登校はできないものの学習意欲はある我が子にとって、目の前がぱっと明るくなる朗報ですといった声が即座に返ってきました。また、わらをもすがる思いの我々にとって、こうした新しい制度について迅速的確に情報を伝えてほしいと、情報の周知徹底に関する要望も出されました。
 一方で、小中高校の校長ら管理職の方からは、実際の制度運用についてわかりにくい点があるため、ガイドラインがあるとありがたい、このような声も上がりました。
 そこで伺います。
 こうした現場の切実な声を踏まえ、この制度の趣旨について、いま一度、各学校に対し丁寧に周知を図っていくべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
出欠の取り扱いに関します制度の趣旨の徹底についてでございます。
 不登校の原因は多様でありまして、一人一人の児童生徒の状況に応じた対策を講ずる必要があります。ご指摘のITを活用した学習活動を出席扱いとする制度は、引きこもりがちな児童生徒が学校復帰や社会的自立に向けた進路選択を目指すための支援策の一つでございます。
 都教育委員会は、都立学校長及び区市町村教育委員会に本制度の趣旨を徹底し、適切に活用するよう指導助言してまいります。
 

 
質問3
 不登校に関する新しい制度や制度改定が行われた場合、その情報が迅速確実に児童や生徒、保護者に伝わるよう周知すべきであると考えます。所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 新制度や制度改定の周知についてであります。
 都教育委員会はこれまでも、不登校に関する新しい制度等につきまして、区市町村教育委員会や校長に周知してきたところであります。不登校児童生徒を支援するためには、その原因や状況に応じた対応が不可欠でありまして、さまざまな制度や方法について、保護者等になお周知する必要がございます。
 このため、今後は、区市町村教育委員会や校長を対象とした連絡会等を通じまして、不登校児童生徒の保護者等に各制度の趣旨の徹底を図るよう改めて指導するとともに、都教育相談センターが実施いたします不登校生徒と保護者等を対象としました相談会の場において、情報提供に努めてまいります。
 
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■特殊勤務手当
 
質問1
 都職員の特殊勤務手当について伺います。
 昨年末の給与改定で、都は、国や他団体に先駆けて年功的な給与体系を見直し、仕事ぶりに応じためり張りのある処遇を実現するなど、大胆な構造改革に着手いたしました。この点、高く評価するものであります。
 一方、特殊勤務手当についても、知事部局で平成九年度に四十一種類あったものを現在の十四種類にまで削減するなど、これまでも大胆に見直しを行ってきました。しかし、昨今の経済社会情勢をかんがみるに、中には、手当支給に妥当性があるのかどうか、都民の感情、納税者の視点からは納得しづらいものもあります。
 具体例を挙げます。土日や年末年始の勤務に対して、他に振りかえて休みをきちんと取得しているにもかかわらず手当が支給されている場合があり、その額は年間で約一億に上っています。さまざまな業種で年中無休の営業が拡大する中、今なお手当を支給するほどの特殊性があるか、疑問であります。現に、新宿、葛飾など多くの特別区では軒並み見直しが進んでおり、都も廃止すれば一定の財政効果を上げることができるわけであります。
 また、特殊勤務手当はそもそも特殊性の高い勤務についた場合ごとに日額や件数当たりで支給するのが趣旨でありますが、職業訓練指導員手当はいまだに月当たりで上限三万二千円が定額支給され、月のうちに勤務しない日があっても支給額は変わりません。
 こうした都の特殊勤務手当については、昨年度総務省が実施した調査においても指摘を受けております。そして何より、公務員の給与は都民の理解が得られることが第一であります。
 そこで提案いたします。
 職員にとって真に必要のある手当は残しつつも、必要性の薄れた手当は思い切って廃止するなど、大胆に見直すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、この際、公営企業局においても多くの種類の特殊勤務手当が支給されていますので、関係局長におかれましても同様に見直しが必要であることを指摘しておきます。
 
答弁1
 ▼総務局長
 職員の特殊勤務手当の見直しについてでございますが、都におきましては、これまでも手当の必要性や支給額等につきまして適宜見直しをしてきておりますが、平成十五年度には、知事部局で支給額を約三割削減する抜本的な見直しを行いました。
 しかし、特殊勤務手当の支給の対象となる業務の困難性や特殊性は、社会情勢の変化や設備の改良を通じた職場環境の改善などによりましてその評価が変わるもので、不断の検証が必要であると考えております。
 ご指摘のとおり、昨年度の総務省の調査結果や報道等を契機に、都民の目線はますます厳しくなっております。こうした状況を背景に、現在、四月中を目途に、すべての手当を対象とした現場調査を実施しております。
 今後、調査の結果等を踏まえまして、都民の理解が得られるよう、具体的に見直しを行ってまいります。
 
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■荏原病院の公社化
 
質問1
 都立荏原病院の公社化について伺います。
 荏原病院は、大田区や品川区など城南地域の住民にとって、古くから身近な病院として、多くの利用者の命と健康を支えてまいりました。私は大田区で生まれ育ちましたが、荏原病院がいかに地域の住民に親しまれ、安心の灯台として頼りにされてきたか、理屈抜きで実感をいたしております。
 本年四月の公社移管に関し、公明党は、これまでの都議会での審議において何度も質問を行ってきましたが、当局からはその都度、現在の荏原病院が提供している医療の継続にとどまらず、医療水準の一層の向上を図っていくという前向きな答弁をいただいております。
 しかし、これまでの都や地元関係者の懸命な努力にもかかわらず、移管を直前に控えた今なお、移管により医療サービスが低下するとか、経営優先で患者負担がふえるといった全く根拠のない誤った情報を流し、移管自体があたかも大きな問題を抱えているかのごとき主張を繰り返す動きが一部に残っているのは極めて遺憾であります。そもそも、病気やけがによってただでさえ心配の多い利用者や地域住民の不安をいたずらにあおるのは不謹慎であり、不誠実であります。こうした言動は直ちにやめるべきであります。
 私は、公社の評議員会のメンバーであり、昨年九月の評議員会で、患者サービスの向上のため、送迎バスの運行や院内コンビニの設置を要望してきたところであります。こうした患者サービスにも十分配慮の上、医療水準を一層向上させることにより、移管後の荏原病院は、これまで以上に地域で信頼される病院となっていくべきだと考えますが、見解を伺います。
 公明党はかねてより、女性医師が女性特有の疾病や健康問題にきめ細かく対応する女性専門外来の設置を要望し、その結果、都立病院及び公社病院に女性専門外来が設置されてきました。荏原病院についても、女性専門外来を初めとする住民ニーズを踏まえた専門外来の充実を図るべきと強く要望いたします。
 
答弁1
 ▼病院経営本部長
 荏原病院の公社移管に向けた取り組みについてお答えいたします。
 昨年十一月、総合脳卒中センターを開設し、脳血管疾患に対する取り組みを強化したほか、四月からは、内科、外科、放射線科の医師などが協力して診療を行う集学的がん医療を実施する予定でございます。
 公社移管後も、医療水準を一層向上させ、具体的な患者サービス向上策につきましても十分に検討するなど、地域における中核病院としての役割を果たしてまいります。

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■文士村
 
質問1
 文士村の支援について伺います。
 大正末期から昭和初期を中心に、大田区の馬込、山王かいわいには多くの作家、芸術家が住んでいて、石坂洋次郎、尾崎士郎・宇野千代夫妻、川端康成ら、そうそうたるメンバーが互いの家々を往来しながら交流を深めていました。そして、いつごろからか、この一帯は馬込文士村と呼ばれるようになりました。
 現在、この地域には文士村をめぐる散策コースが設定され、文士、芸術家の解説板や記念館なども点在しております。最近では、有志によるボランティアガイドも誕生し、全国から訪れる文学ファンを魅了しております。
 こうした文士村は、馬込以外にも、規模が大きいものだけで、新宿区の落合、杉並区の阿佐ヶ谷、北区の田端の三カ所あり、各区はそれぞれ散策路や拠点の整備に力を入れておりますが、区単独では財政的にも限界があります。
 こうした事情を踏まえ、公明党は一昨年十月に、一つ、都の整備支援計画の策定、二つ、各区が進める整備事業への助成制度の確立などを都に要請いたしました。
 また、昨年の予算特別委員会で、知事は、我が党の大木田議員の質問に対し、個々の文士村の保存は難しいものの、東京都がイニシアチブをとって東京全体の文学地図のようなものをつくることは観光のために有益との認識を示しました。これまで都が、江戸東京博物館での展示やホームページの掲載などで各区の取り組みを支援してきたことは、高く評価いたすものであります。
 一昨日の我が党の石井幹事長の代表質問に対し、文化に関する情報提供を充実させていくとの答弁がありました。新たに構築される文化に関する総合ホームページでの情報提供や、東京観光情報センターでの資料配布など、さらに文士村についてのPRを強化すべきであります。
 折しも二〇一六年のオリンピック招致に向け、都は、このほど公表したオリンピック基本構想懇談会の報告の中で、東京の文化力、また、文化と技術が融合する都市を前面に打ち出す戦略を描いています。
 文士たちの日本文学と社会に与えた強い影響をかんがみるに、これらの文士村は各区固有の遺産であるのみならず、オール東京、否、オールジャパンの文化・観光資源であり、そして何より東京の高い精神性を発信する絶好の媒体であります。
 活字文化は文明の根っこであり、人間のあかしの一つともいわれております。その復興に精力的に取り組んでこられた、高名な文士でもある石原知事の文士村支援に対するご所見をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
 
答弁1
 ▼知事
 文士村についてでありますが、私も文士の一人として、今の提案を聞きまして、涙が出るほどうれしゅうございますが、しかし残念なことに、歌は世につれ世は歌につれと申しますけれども、文学もそうでありまして、小説もそうでありまして、このごろは森鴎外なんて知らない人が出てきまして、この間学生と会話したら、永井荷風のことを「ナガイニフウ」といったり、本当にそういう点では、文学という活字の文化というのが本当に廃れてきたという気がいたします。
 文学の世界にも、昔は文壇というのがありましたが、このごろそういうものも淘汰されまして、本当にみんなばらばらに辛うじて生きているという感じですけれども、特に東京は何があってもおかしくないところですから、確かに東京には有名な文士がたくさんおられましたし、それは非常に遺産としてもとても大変なものだと、大事なものだと思いますが、これをどうやって残すかということも、日本の文化全体にとっても大事なことだと思います。
 ただ、都内には作家のゆかりの地や文学館が幾つかありますが、余り、どの文学館をのぞいてもお客は来てないんですね。そういう点で、文学そのもののあり方がかなえの軽重を問われ出していますが、ただ、ここのところ、ありがたいのは、文字離れしていた若い人たちが、携帯電話でメールを送るということ、インターネットの書き込みで、自分では書かなくても、キーボードを打つことで字を自分で操作する、そういう習慣を取り戻してきたので、文学にちょっと復活の兆しがございますが、そういう点で、これから出てくる若い作家のためにも、先人の業績というものを、まず目で見てわかりやすく残すということも大事なことだと思います。
 いずれにしろ、各区市町村が作家などのゆかりの場所を地域の文化資源、観光資源として発掘し、発信することは、大変意義のあることだと思います。
 文士村については、これはあくまでも地元の熱意と工夫、地域が一体となった取り組みが重要でありまして、それが東京の魅力向上につながると期待しております。
 東京都としてできることは、この間申し上げましたように、案内図とかそういう情報を東京全体の情報としてお伝えすることはできますけれども、個々の文士村に財政も含めて支援を入れるということはなかなかちょっと難しいと思いますし、地域地域で、地域の一つのある意味のシンボルとして頑張っていただきたいと思います。
 
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