平成18年第1回定例会 一般質問

補助金の適正執行の監督責任を
果たすため契約情報等の公開を

佐藤広典(民主党)
■情報公開

 都財政を持続可能なものにするためには、税金の使い方を効率的、効果的なものに改めていく必要があります。
 そのためには、契約方法を検証し、見直すことは極めて重要な課題ではないでしょうか。さらなる公正な競争を促し、契約方法自体の検証と見直しを行うことで、税金の使い方が節約できると考えております。
 契約の検証を行うに際して不可欠であるのが情報公開です。契約の一つ一つを検証することも大事ではありますが、契約の情報公開を行い、多くの都民のチェックを受け、契約する関係者に緊張感を持たせることで、契約のさらなる透明化を実現することができます。
 私は、半年余り、財政委員会におきまして契約案件の調査を行ってまいりました。都の契約案件を調査する過程で疑問を覚えたことは二つあります。
 一つは、調査を行う過程で、契約案件の過去の資料を探そうとした場合であっても、既に保存年限を過ぎて廃棄されているものもありました。契約の検証を行い、情報公開を進めるためには、契約資料の保存が不可欠ではないかと考えます。
 もう一つは、事業主体が民営化された途端、情報開示の対象から外れるということです。行っている業務は同じであっても、組織が民営化された途端に情報公開ができなくなるのはおかしいのではないでしょうか。運営主体が行政か、特殊法人か、民営かということではなく、使われているのが税金であり、お金の出どころが都民が納めたものである以上、どのように使われているかという視点で情報公開するべきではないでしょうか。
 その中でも、今回の質問では、補助金を使った契約についての情報公開についてお話させていただきます。


質問1
 まず、情報公開の理念についてお伺いいたします。
 現在、都からの情報公開は、都がみずから提供している情報と、情報開示請求を受け公表している情報の二通りがあります。情報公開条例では、都政に関する正確でわかりやすい情報を、都民が迅速かつ容易に得られるよう努めるものとしています。待ちの姿勢で情報開示請求が来たものに対して公開をすることにとどまるのではなく、できる限り都がみずから積極的に情報公開の枠を広げる必要があります。
 防衛庁の官製談合問題などで、契約に対して都民の厳しい目が向けられております。情報開示請求を受けているから十分に情報開示ができているとみなすのではなく、都民の納めた税金の使い方、特に契約情報や補助金の使い方に関しては、積極的な情報公開を行うことにより、都民の納得を得られるようにしていくべきではないでしょうか。
 そこで、伺いますが、情報公開条例制定後、一定の運用を積み重ねてきた今、改めて情報公開に対する知事の考え方を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 情報公開に関する考え方についてでありますが、基本的には、都政に関して都民に説明する責務を全うし、公正で透明な都政を推進するためには情報公開を進めることが必要であると認識しております。
 都は、情報公開条例に基づきまして、公文書の開示のほか、重要な基本計画や主要事業の進行状況などについて、情報の公表や提供を行っております。
 都政に関する正確でわかりやすい情報を都民が迅速かつ容易に得られるよう、今後とも引き続き情報公開を総合的に進めてまいります。
 ただ、宮城県でありましたように、前の知事と警察との対立、あれは情報開示についてでありますけれども、これは、詳しくは申しませんが、しかし、業務によっては、情報が一〇〇%開示されることで、例えば犯罪の捜査、摘発というものが非常に阻害されるケースもあるわけです。
 ですから、私は、そういったものを基本的に認識した上で、都民が納得する形の情報開示というものを進めていきたいと思っております。
 

 
質問2
 監理団体について質問いたします。
 都から監理団体に対しては、平成十七年度で千五百五十三億円と、実に多額の補助金が出ております。それは、監理団体は、都の事業を補完、代行する性格からこれほど多くの補助金が出ているわけであり、公的な意味合いの強い組織であるからこそ、その財政支出は東京都と同じ基準による説明責任が求められます。都は、納税者である都民に対して、税金の使い方を説明する責任があります。
 一方で、都は、監理団体に対して補助金を出しておりますから、監理団体は、都に対して補助金の使い方を説明する責任があります。つまり都は、都民に対して補助金の使われ方を説明する義務があるのです。
 監理団体の補助金の使い方、つまり、契約情報を都民に対して説明することが必要であると考えます。情報公開の理念から申し上げて、公開できない少しの情報があるからといって、その他の公開できる情報について情報公開しないことは間違っていると考えます。
 契約情報を公開し、多くの都民のチェックを受け、契約内容を公開しているという緊張感から、内部の経営改善努力を促すことが大事ではないでしょうか。
 現在、監理団体の契約情報は、情報開示請求をすれば公開されますが、情報が公開されたとしても、その情報は請求者にしか提供されません。これでは、都民の税金を使った事業を行っているにもかかわらず、情報公開の成果は限定的なものになってしまいます。
 情報開示請求を受けてから公開するという待ちの姿勢ではなく、契約情報、つまり税金の使い方についてみずからが積極的に情報公開をする仕組みをつくることが必要なのであり、その姿勢が都民の信頼を得るものと確信しております。
 また、監理団体の中でも、積極的に情報公開に取り組んでいる団体もあります。その中でも、ホームページ上で契約情報を公開している東京都住宅供給公社の取り組みは非常にすばらしいものです。
 都民から、税金の使い方に対する非常に厳しいご意見がふえております。だからこそ、補助金の使い方、税金の使い方について、情報公開の拡大を、ぜひすぐにでも取り組んでいただきたいと思います。各団体によって事情は異なるとは思いますが、東京都住宅供給公社と同じ情報開示の基準を求めて各監理団体に指導することが求められます。
 そこで、伺いますが、補助金の適正執行を監督する責任上、監理団体の契約情報を報告させ、情報公開することについてどう取り組むのか、お伺いいたします。
 
答弁2
 ▼総務局長
 監理団体の情報公開についてでございますが、監理団体は、都の継続的な財政支出などを受け、行政運営を支援、補完するために、自立的、弾力的な事業運営を行っている団体でございます。
 監理団体につきましては、これまで、経営状況、経営評価に関しまして、毎年度都議会への報告、公表などを行うとともに、都に準じた情報公開要綱を全団体で整備するなど、着実に情報公開の取り組みを推進してきております。
 契約に関する情報につきましては、取引条件など団体の経営と密接な関連があり、一律に情報開示の対象とするのは困難なため、その範囲、内容は各団体の自主的な判断により決定するものでありますが、今後とも、可能な限り情報公開が行われるよう各団体に働きかけてまいります。
 

 
質問3
 報告団体の情報公開について伺います。
 報告団体とは、都が出資等を行っていて監理団体として指定されていない団体のことですが、これら報告団体に関しても多額の補助金が出ており、補助金の適正執行について指導監督する必要があります。
 補助金を出している事業に関して、契約情報を都に報告すべきであると考えます。報告団体に関しては、都は報告を受ける立場でありますから、その報告に、都の補助金によってなされる契約情報を加えることは差し支えないわけです。監理団体と同じように、現行の制度のもとで十分に契約情報の報告及び公開ができると考えております。
 そこで、伺いますが、東京都は、報告団体の契約情報を情報公開することについてどう取り組むのか、お伺いいたします。
 監理団体、報告団体の契約情報公開について申し上げてまいりましたが、平成十七年には、監査の対象となる財政援助団体が二千八百十八、そのうち補助金等交付団体が二千七百六十三に上っておりました。このように、財政援助団体についても多額の補助金が出ております。財政援助団体に関しても、補助金が出ている事業に関して契約情報の公開を行うべきだと要望しておきます。
 
答弁3
 ▼総務局長
 報告団体の情報公開でございますが、報告団体は、都の財政支出等が少なく、特別な関与を行わず、運営状況の報告を受ける団体でございまして、基本的に各団体が自主的な経営を行っております。
 報告団体のうち、都の出資割合が一定以上の団体等につきましては、詳細な運営状況の都議会への報告、補助金等を交付している団体については、監査委員等による監査結果など、都として必要な情報の把握、公表を行っております。各団体の情報公開につきましては、原則としてそれぞれの経営責任のもとで判断するものと考えております。
 

 
質問4
 再開発事業に関する補助金の情報公開について伺います。
 民間による再開発事業が都内各地で実施されております。そこには、区市や国の補助金を受けているものもあり、多摩地域においては、都が補助金を出している事業もあります。私の地元、東村山市にも、市が組合と計画を進め、都から市に対して補助金が出ているものもあります。
 平成十五年の包括外部監査報告書では、都の農村総合整備補助事業で、都から補助金を受けて公共事業の契約を行った地元自治体の入札手続きが適切、適正に行われるよう指摘を行っています。
 なぜ、一地方自治体が発注している事業に対して、都の監査が入札のあり方にまで指摘をしているかといいますと、都民の税金を使っているからこそ、その補助金の適正な執行はもとより、より効率的にむだなく使われているかどうか監督する義務があるためです。また、出どころが都民の納めた税金であるからこそ、その指摘ができるわけです。
 都は、再開発事業に関しても補助金を出しているわけであり、都が補助金の適正執行を監督するとともに、補助金を出した後の執行状況や契約を情報公開し、都民の皆さんに納得いただくことが必要であると考えます。
 再開発組合の定款によれば、競争入札が原則になっております。しかしながら、組合施行の開発の場合、組合の定款には随意契約の規定があり、随意契約で契約される場合もあるわけです。地方自治法によれば、随意契約は例外的な契約規則と規定されております。補助金を使った事業を行う以上、一般競争入札の徹底と契約情報の積極的な情報公開が必要だと考えております。
 そこで、伺いますが、民間再開発事業については、公的な支援がある以上、その執行に当たっては、公平かつ透明性を確保していくことが求められます。そのため、計画内容、事業費、施工者の選定などが適切に行われているかどうか、都としてどのような関与をしているか伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 民間の再開発事業における都の関与についてでございますが、組合などが行う再開発は、地権者みずからが利害関係者の合意形成や資金調達などを行う民間主体の事業であります。
 都は、事業の認可に当たり、適正かつ円滑な事業の執行を確保する観点から、地権者の同意状況や設計、資金計画、定款などの内容について審査を行っております。また、認可後、事業計画に変更が生じた場合には改めて審査するとともに、完了時におきましても、適正に事業が執行されたことを確認しております。
 

 
質問5
 現在、都市再開発法及び都の市街地再開発事業補助金交付要綱及び補助金等交付規則に基づいて、都は、補助金を出している組織から状況報告及び実績報告を受けることができます。だからこそ、現在の制度の運用で十分に都への契約情報の報告と情報公開を行うことができると考えております。
 各地方自治体でも、都や国と共同で補助金を出している事業に関して、積極的に情報公開されることが望ましいといえます。各地方自治体が住民に対して契約の情報公開を進めると同時に、都は、税金を納めた都民に対して、補助金の効率的執行について説明責任を果たすべきであると考えます。そのためには、再開発の主体である民間各組合からの報告を受け、契約情報を公開する必要があると考えます。
 組合が入札を行っているわけでありますが、組合の中には、区市の職員が開札に立ち会うなどして、入札が適切になされるように取り組んでいる事例もあるようです。都の補助金事業のすべてについて都の職員が立ち会うことは物理的にも困難でしょうが、ぜひともこういった入札の適正化に向けた意気込みを見習っていただきたいと思います。
 現行の制度のもとで十分に契約情報の東京都への報告と公開が可能ではありますので、ぜひ実現していただきたいと考えます。
 そこで、伺いますが、組合施行の再開発を監督する立場から、積極的に契約情報の公開を進め、都民の理解を得るために契約情報を東京都が公開するのかどうか、見解を伺います。
 
答弁5
 ▼都市整備局長
 組合施行の再開発事業における契約情報の公開についてでございますが、再開発組合に対する補助金の直接の交付者は区及び市でありまして、都は市に対し補助を行っております。したがいまして、契約情報の公開につきましては、基本的には、直接の当事者である区及び市と組合の判断により行われるべきものと考えております。
 都といたしましては、今後とも、区市に対し、事業の適正な執行が図られるよう指導してまいります。
 

 
質問6
 情報公開期間の延長とそのための文書保存年限についてお伺いします。
 現在、都の公文書の多くが情報開示請求の対象になっておりますが、公文書の保存年限の限界があるために、過去の契約情報を検証できないことや、情報公開ができないわけです。文書が残っていないために、行政としての説明責任を果たせていないわけです。
 入札経過調書の公開延長とともに、契約文書の保存期限を延長し、契約内容の見直しを行うことができる環境を整えるべきだと考えております。そのためには、現在、文書管理規則によって一定年限で廃棄されている契約文書の長期保存を進める必要があると考えております。
 今まで、都の事務効率を考慮し、都の選定基準で文書の保管年限を決めてまいりました。しかし、情報公開の対象は都民であるわけですから、都民の視点から文書管理規則を見直し、都民ニーズに対応できるような保存のあり方を実現すべきです。ぜひ、情報公開に重きを置き、保存、保有期間の延長に取り組むべきと考えます。
 そこで、伺いますが、契約文書を長期保存するよう取り組むために、文書管理規則を見直すことについてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 また、現在、都のホームページで運営しております入札情報サービスでは入札経過調書が公開されておりますが、その公開期間は、入札が終わってから十五カ月と短いのが現状です。
 昨年、都では大規模談合事件が発生し、業者が逮捕されるという事件が起きました。事件の教訓を忘れることなく、このような事件が再発しないよう、契約内容が妥当であったのかどうか振り返って検証し、その内容を精査する必要があります。そのためには、入札情報サービスにおいて十五カ月間公開されている入札経過調書の公開期間延長を要望しておきます。
 情報公開制度の理念と各局の制度運用のあり方、そして資料そのものの保存について質問を行ってまいりましたが、補助金の効率的執行を進め、都の監督責任を果たすためには、都の基本的な条例、規則であります情報公開条例や補助金等交付規則を、都民ニーズの変化にあわせて見直していくことも今後の課題ではないかと考えています。
 今後の都政運営を行っていくに当たっては、積極的な情報提供、説明責任の徹底を図って都民から信頼されることが極めて重要であることを改めて主張いたしまして、私の質問を終わります。
 
答弁6
 ▼総務局長
 契約文書の保存についてでございますが、都における公文書の保存期間は、文書管理規則におきまして、文書の重要度、利用年数等に応じて、永久保存から一年未満まで六種類の基準を定めております。
 契約文書につきましては、公有財産の売り払い契約は永久保存とし、請負工事契約についても、予定価格の金額が大きいものにつきましては十年の長期にわたる保存としております。また、これらの文書も含めまして、保存文書はすべて情報公開の対象としております。
 今後とも、行政執行上の必要性、保存コストの縮減、情報公開や都民利用への対応等を総合的に勘案し、適切な文書管理に努めてまいります。
 
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