少子化対策と銘打つ事業が必要 子どもの安全は地域全体の課題
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山口拓(民主党) |
■少子化対策と子育て支援 |
質問1 少子化対策と子育て支援についてお伺いいたします。 先日、厚生労働省が人口動態統計の速報値を発表し、一八九九年の統計開始以来初めて人口の自然減が確定したことが明らかになりました。少子化は、今や日本の社会保障制度や経済成長を左右する深刻な課題としてだれもが認識をしているのは、紛れもない事実であります。 さて、東京の少子化対策の現状としては、国の方針に呼応した形で区市町村が独自で打ち出された対策が中心でありました。 昨年、次世代育成支援の行動計画が練られたものの、残念ながら都の明確なメッセージは伝わってきません。新年度の予算案を見ても、少子化対策と銘打った事業は一つとして見当たらないのがこのあらわれであります。 都は、少子高齢化が加速する日本の首都として、人口問題までを含めた少子化対策を、都民に、区市町村に、さらにいえば全国に示すべきではないでしょうか。 そこで、お伺いいたします。都は現在の少子化問題についてどのように向き合っていくおつもりか、改めて所見をお伺いいたします。 答弁1 ▼福祉保健局長 少子化問題についてでございますが、少子化の要因といたしましては、未婚率の上昇や晩婚化などが指摘されておりますが、結婚や出産は個人の価値観や人生観に深くかかわるものでございまして、行政の関与にもおのずと限界がございます。 しかしながら、子どもを産み育てたいと望む人たちが安心して子育てできる環境、次代を担う子どもたちが健やかに成長していく環境を整備することは、行政を初め社会全体の責務と考えております。 こうした認識のもとに、都は昨年四月、次世代育成支援東京都行動計画を策定したところでございます。今後、この計画に基づき、区市町村や民間企業などとも連携し、総合的な視点から、すべての子どもと家庭が安心して生活できる社会の実現に取り組んでまいります。
質問2 自治体にとって少子化対策にいかに取り組むかは、極めて難しい課題であります。都内でも、区市町村が、まるで競うかのように医療費助成の拡大や子育て手当の拡充など、新年度予算の目玉として盛り込んでいます。家庭支援としては大変な助けとなりますが、少子化対策や効果という点で考えると、確証には至りません。単に他の地域から子育て世帯を呼び込むだけに終わり、我が国全体としては、結局、少子化対策としては効果を生まないのではないかと危惧すらされています。 基本は、国を挙げての取り組みが必要なことはいうまでもありません。私も、産めやふやせやという強要まがいの施策の充実は絶対になされるべきではないと考えております。 少子化問題は、個人の価値観による部分が大きく、多くの議論を通じても、今の危機的状況を劇的に変えるような特効薬はなかなか見えてこないことも承知をいたしております。だからこそ、明確なビジョンを都が打ち出し、基づいて子どもを安心して産み育てやすい環境を着実に整備し、その地道な積み重ねの総和が結果として少子化の進行の歯どめにつながるのが理想なのではないでしょうか。 こういった点から、都が新年度予算に新たに盛り込んだ子育て推進交付金は、地域に根づいた子育て家庭への支援を推進するものにつながるよう期待をしているところです。 そこで、お伺いいたします。この交付金は、地域の創意工夫や主体的な発想を生かすために、市町村に対する財政支援の仕組みをどのように変えていくものなのか、お伺いいたします。 答弁2 ▼福祉保健局長 子育て推進交付金についてのお尋ねでございますが、現行の子育て支援に関する都の補助制度は、対象や補助金の使途などの補助要件を細かく規定いたしまして、また、市町村が一律に事業を実施する仕組みでございますため、地域のニーズに応じて必要な施策展開を行うなどの裁量の余地が少ないものとなっております。 今回創設いたしました子育て推進交付金は、市町村が自主的な判断で望ましいサービスを実現するための多様な事業実施が可能となる仕組みに転換していくものでございます。 今後、この新たな子育て推進交付金を活用いたしまして、区市町村の主体的な取り組みを促進し、都全体として子育て支援サービスの充実に努めてまいります。
質問3 地域において次世代育成支援策をより効果的に展開していくためには、区市町村が住民ニーズを的確にとらえて、従来の施策を根本から見直し、再構築することが必要であります。例えば高コスト体質の公立保育園を民間委託するなど、運営方針を見直すことにより、現行のサービス水準を維持しながら、より効率的な運営が可能となれば、その財源の一部を在宅で子育てをしている家庭に対するサービス等に振り分け、地域全体の子育てサービスや支援の拡充につながっていくと考えます。 そこで、お伺いいたします。今回、都が、対象や使途を細かく限定した既存の補助制度を再構築し、区市町村の主体性を重視した財政支援とした背景には、地域においてこれまでの事業のあり方を一から見直し、より効果的な事業展開を促すという側面もあったと考えますが、都の所見をお伺いいたします。 答弁3 ▼福祉保健局長 子育て支援に関する補助制度の再構築の効果についてでございますが、今回の再構築は、都が実施手法も含め、細かく限定しておりました従来の財政支援のあり方を改め、区市町村の創意工夫を生かした取り組みを可能とするために行ったものでございます。 区市町村におきましては、地域の多様なニーズに的確に対応し、限られた社会資源を有効に活用した施策展開により、効果的、効率的な事業実施に努めていただけるものと期待しているところでございます。
質問4 最後に、少子化対策を実行し、子育て支援の一層の充実のための提案をいたしたいと思います。 それは、子ども局の創設であります。子ども局とは、子どもにかかわるあらゆる問題、具体的政策を扱う部署であります。少子化も、子育てをしにくい職場環境や生活環境、住環境などさまざまな要因が絡み合っており、一つの要因を解決すれば改善が見込めるものではありません。都の少子化対策も例に漏れず、家庭や地域の養育力向上策の実行レベルにおいては、教育庁、福祉保健局、生活文化局などの複数の部局がかかわっているのが実態です。子どもに関するあらゆる施策を横断的に扱う部署を創設することで、現実に有効な政策の立案や、さらには政策の効果的な実行が望めると思われます。 さらに、こうした実利的な効果だけではなく、首都である東京が画期的な政策を打ち出すことで、さきに述べたように少子化対策への規範を国や各自治体に対して示すことができることでしょう。 どの先進国でも設置されている専門の組織を、都として全庁横断的に子ども局として設置することを提案いたしますが、都のご所見をお伺いいたしまして、次の質問に移ります。 答弁4 ▼福祉保健局長 最後に、子ども局設置のご提案についてでございますが、都はこれまで、独自の認証保育所の創設や小児緊急医療体制の整備を初めといたしまして、福祉・医療改革など、各分野において子どものための先駆的な施策を実施してまいりました。 こうした取り組みをさらに進めるため、昨年四月、福祉、保健、教育、労働など、さまざまな分野における子育て支援策を総合的に示しました次世代育成支援東京都行動計画を策定したところでございます。 今後とも、次世代の健全な育成を図り、すべての子育て家庭を支援していくために、関係各局と連携し、総合的な取り組みを進めてまいります。
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■子どもを犯罪から守る取組 |
質問1 子どもを犯罪から守る取り組みについてお伺いいたします。 昨年末から全国で子どもが犯罪に巻き込まれる事件が相次いでいます。凄惨な事件の被害者が何の罪もない子どもたちとなることは、どんなことがあっても防がなければなりません。子どもたちがねらわれやすい小学校では、学校施設整備指針における防犯対策関係規定も充実され、校門の閉鎖、低学年教室の一階からの配置がえ、オートロックつきドアの導入、防犯カメラや通報設備の設置などの積極的な防犯措置がとられるようになりました。 また、直接的に子どもたち自身の個人の見守りや安全策として、携帯用防犯ベルやGPS機能つき携帯電話の普及が急速に進み、学校の安全や防犯、子どもの安全に対する認識が改められ、確実に変わりつつあります。 しかしながら、学校における刑法犯罪数は、平成十六年度で四万三千五百十六件と、ここ十年で二倍近くに増加し、さらに小学生が犯罪被害者となるケースが二万六千六百九十九件と多発をしていることがわかります。 こういった現状から考えると、いわば道具に頼った措置だけで本当に児童の身を守ることはできないのは明らかであり、防犯教育の充実などのソフト面とハード面をあわせて総合的に取り組んでいくことがまさに重要になってまいります。これまでの防犯対策と並行して、小学生にみずからの身を守るためのカリキュラムなどを用いて、改めて教育に取り入れる必要があるのではないでしょうか。 そこで、お伺いいたします。子どもたちを犯罪から守るために、各小学校では具体的にどのような指導が行われているのか、まずお伺いいたします。 答弁1 ▼教育長 子どもたちを犯罪から守るための指導の現状についてでございます。 学校におきます犯罪被害防止教育は、家庭や地域の関係機関等と密接に連携いたしまして、組織的、計画的に行うことが重要でございます。 このため、各小学校においては、警察署等と連携いたしまして、保護者や地域の方々の協力のもとに、犯罪の被害に遭わないための指導を行うセーフティー教室や緊急事態を想定した防犯訓練を実施し、子どもたちが犯罪からみずからの身を守るための具体的な対処方法などについて、発達段階に応じた指導をしております。
質問2 子どもたちがさらされている危険は、目につきにくいところでの暴力、虐待、いじめを初め幅広く、より身近なところで続発する事件への対策も大いなる課題であり、一日も早い対策や実践的な解決が求められています。当然のことながら、都教育委員会は、学校、教職員を指導すべき立場にあり、教育現場における子どもたちを守る責任があります。いかように子どもたちを守っていくか、的確に、かつ総合的に対策を練り、その都度確実に実行していかなければなりません。 続けてお伺いいたします。今後は、子どもたちが犯罪に巻き込まれないよう、みずからの身を守れるよう、危険を予測し、回避する能力を身につける指導も一層推進していくべきと考えますが、都教育委員会の取り組みについてお伺いいたします。 答弁2 ▼教育長 都教育委員会の今後の取り組みについてでございますが、児童が学校や地域等で安全に生活する上で、犯罪等の危険を予測し、回避する能力や態度を身につけることは極めて重要でございます。 これまで都教育委員会は、すべての小中学校及び盲・ろう・養護学校を対象とした防犯教室指導者講習会を実施し、犯罪被害防止の先進的な指導事例を紹介するなどいたしまして各学校を支援してまいりました。 今後は、区市町村教育委員会とも連携し、児童が実際に地域を歩きながら犯罪が起こりやすい場所を確認する地域安全マップづくりなどの実践的な安全教育を推進し、子どもたちの危険を予測し、回避する能力や態度を育成してまいります。
質問3 しかし、最終的には、いかなる場面であっても、子どもたちを常に見守り、守り抜かなければいけないのが大人の責任と義務であります。 最近、諸外国や、国内でも自治体や民間において、CAPを初めとする先進的な教育プログラム等が取り入れられています。総合的に犯罪と子ども、大人、地域の関係性を考え、子どもを多方面から守っていくために必要なプログラムやカリキュラムなどを導入、習得、実践をしていくことによって、より具体的な対応策として飛躍的に安全性も高まっていくことが実証されています。 今後、学校では、ワークショップを行う資格を持った教師の育成、あるいはそれを専門とする民間人を積極的に登用するなど、実践を最優先したさまざまな取り組みが必要不可欠となるはずです。 また、あわせて地域全体で子どもを見守る環境をつくることができれば、犯罪を防ぐ抑止力につながります。 子どもがみずから身を守ることには限界があります。大人が子どもを守る観点から、教育現場における教職員の意識改革や指導力向上も不可欠でありますが、地域もあわせ、今後どのように取り組んでいくつもりか、お伺いいたします。 将来を担う子どもたちの安全確保は、自治体、保護者、教育者、地域、それぞれが共通の認識として確実に取り組むべき課題です。都の強い決意を込めた答弁を期待し、次の質問に移ります。 答弁3 ▼青少年・治安対策本部長 地域における子どもの安全対策についてでありますが、教職員や保護者だけで学校やすべての通学路の安全対策を実施することは困難であります。こうしたことから、町会、自治会、警察署、区市町村など、地域全体で子どもを守る仕組みを構築することが極めて重要であります。 都としましては、例えば、保護者とともに地域の人たちも参加して子ども安全ボランティアを結成し、これらのボランティアが通学路などのパトロールや見守り活動を行うといった地域を挙げてのさまざまな取り組みを強力に支援してまいります。
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■治安対策 |
質問1 治安対策についてお伺いいたします。 都では、東京の治安回復をさらに確かなものとするため、昨年八月、これまでの緊急治安対策本部を青少年・治安対策本部に改編し、取り組みが進められています。 知事も治安回復への意気込みは強く、かつて、治安維持対策を専門に、現職の警察官僚として初めて竹花副知事を起用したあたりは、犯罪都市で有名であったニューヨークを安全な都市に変貌させたジュリアーノ前市長と、そのもとでニューヨーク市警の総監となったウイリアム・ブラットン氏の関係と重なって見えました。その意思は舟本対策本部長に引き継がれ、さまざまな取り組みの効果もあって、都の犯罪発生数についても、先月の治安状況報告において、減少傾向にあることがわかりました。 しかし、青少年がかかわる犯罪が減少しないことも、緊急の課題として示されました。割れ窓理論を実践、すなわち小さな犯罪を見過ごすことなく対処することで大きな犯罪の誘発を防止するという考え方に基づき、都もこれまでさまざまな施策に取り組んでいるところであります。 そこで、都民の目に余る犯罪、落書き問題について数点お伺いいたします。 今やスプレー等を使った町中の景観を壊す落書きは、日本じゅうに限らず世界じゅうに広がる問題でもあります。 私はこれまで、NPO法人を設立し、地元でもある世田谷区を初め都内各地で美化活動を行うとともに、地域団体の落書き消去活動にも積極的に参加をすることで、地域の環境浄化に取り組んでまいりました。 これまでの活動を通じ、落書き消去を初めとした環境美化活動と安全で安心なまちづくりは、切っても切れない密接な相関関係があることを実感いたしております。 地域の人の目が行き届いた美しいまちをつくることで管理の行き届いたイメージをつくり、防犯や治安の基礎となるのです。つまり、安全・安心を提唱し、治安を守り、都民を守っていく姿勢を示す都には、ぜひとも落書きを都内から一掃し、維持していくくらいの意気込みで取り組んでいただきたいと切に願うところであります。 対処、処理に苦慮している、また、気づきながらも見て見ぬふりになりがちになっている身近な犯罪への取り組みこそが、地域における目に見える安全・安心への都の姿勢として都民に示すことができるのではないでしょうか。 そこで、まずお伺いいたします。 知事、私は、この落書き対策を初めとした割れ窓理論の実践に基づく治安回復の取り組みは有効であると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。 答弁1 ▼知事 割れ窓理論に基づく治安回復についてでありますが、軽微な犯罪を見逃すことなく取り締まることで凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとするこの理論の実践は、犯罪対策上当然のことでありまして、極めて効果的であると思いますが、しかし、そのためには、やっぱり手が要るわけですね。ということで、東京都も過去二年間、警察に百人、それから、手不足で困っておりました入管に十五人の職員を派遣しまして、手助けをしてまいりました。 その分、特に治安に関しては、警察官の諸君はデスクワークを離れてまちに出て、驥尾に付した対策をとっていただいたわけでありますが、ニューヨークでもコンピューターを積極的に入れることで執務時間を短縮し、その分余った時間を警察官を外へ出して小さな犯罪の摘発に努めたことで、ニューヨークも幾分、治安が好転したようでありますが、都においても、万引き、落書きなどの軽微な犯罪に対しても、抑止のための仕組みづくりを進めてきました。こうした取り組みも東京の治安回復に大いに寄与してきたものと考えております。
質問2 また、都においてはこれまで、治安対策の一環として落書き対策を実施しているようでありますが、平成十七年度の実績と今後の展開についてお伺いいたします。 答弁2 ▼青少年・治安対策本部長 落書き対策の実績と今後の展開についてでありますが、平成十七年度は町田地区、青山地区の二カ所で、子どもたちも参加してもらい、地域の人たちと一緒に落書き消去の実践活動を行いました。 また、昨年十一月には、塗装関係団体と連携をしまして落書き消去のキャンペーンを行いまして、治安面での落書き対策の重要性をアピールいたしました。 十八年度は、これまでの取り組みを踏まえ、落書き消去の実践活動をさらに拡大することなどにより、地域の防犯力の一層の向上を図ってまいりたいと思っております。
質問3 地域において苦労を重ねながら地道な落書き消去活動を行っている人が都内には大勢いらっしゃいます。また、この問題に悩み、今後、落書き消去に取り組みたいと考えていても、実際には専門的な技術や道具を必要とするところから、どのように取り組んだり、現場で消去したらよいかわからないという都民の皆様が多いことも、落書きが一向に減らない要因として考えられます。 そこで、最後にお伺いいたします。 こういった活動を支援することは、ひいては都民の身近なところでの防犯活動ともつながり、また、都も推奨する防犯マップにも挙げられている、いわばまちの陰となる場所をなくしていく活動としても推奨されるものとなるはずです。 こういった生きた情報収集にも直結するであろう活動は、都は積極的に支援をしていく必要があると考えますが、そのための対策としてどのようなことを行っていくのか、お伺いいたします。 世界に東京をアピールするおつもりならば、中身はもちろんのことでありますが、装い、いわば景観は最も気にしなければならないところであります。 犯罪に強い、そして美しいまち東京をいま一度取り戻すため、また、都民が安全・安心を目で確認できるようになることを願い、力強い答弁を心より期待申し上げまして、質問を終わります。 答弁3 ▼青少年・治安対策本部長 落書き消去活動に対する都の支援についてでありますが、落書き対策は、地域住民が区市町村と連携を図りながら粘り強く継続的に取り組んでいただくことが一番効果的な対策であり、都としてもこうした取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えています。 具体的には、落書き消去マニュアルの普及啓発でありますとか、あるいはインターネットも活用して、落書き消去活動の事例紹介を初め具体的な情報提供などを行ってまいりたいと思っています。 さらには、引き続き区市町村に対し、落書き消去活動の意義を訴え、その取り組み強化を促していきたいと考えております。
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