平成18年第1回定例会 一般質問

実践例活用し教員の資質向上を
避難所運営指針に暖房の配慮を

大松成(公明党)
■教員の資質向上
 
質問1
 まず、教育改革について伺います。
 犯罪の凶悪化など、昨今の世相を見ていると、法律や制度の問題以前に、社会に大きな心のやみが広がっていることを実感させられます。まさに、石原知事がいわれる心の東京革命が今求められているのではないでしょうか。そして、その心の東京革命を進める有効な施策の一つが教育であると訴えるものであります。
 教育が話題になるとき、よく聞かれる声が教員の資質向上であります。教員は最大の教育環境であり、いい先生を育てることは教育改革の骨格であります。
 教員は子どもの人格形成に携わることから、医師は人の生命を救うが、教員は子どもの生涯に深くかかわるといわれます。教員は、医師にも増して専門的な能力、人間への深い愛情が求められる職業であります。
 ところが、その養成期間は医師に比べて短いわけであります。医師は大学で六年間学び、さらに二年間、臨床研修医として患者と接しながら医学を勉強します。一方、教員の場合、大学で四年間学びますが、その間、子どもと触れ合う教育実習はわずか四週間です。
 多くの医師は、臨床研修医の時代に、患者の死という最も尊厳な場面に遭遇しますが、教育実習の四週間では、いじめなどへの対応も十分に経験できません。現場経験が乏しいまま教壇に立たされることが、指導力不足の大きな原因の一つであります。
 そこで伺います。東京都は、平成十六年、学生に教育現場を経験させる東京教師養成塾をスタートしました。現在の教員養成の急所を突く先駆的な取り組みは、全国の注目を集めています。その成果と今後の取り組みについて所見を伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 東京教師養成塾の成果と今後の取り組みについてであります。
 東京教師養成塾では、一年間の特別教育実習等を通しまして、児童理解を深め、実践的な指導力や柔軟な対応力を身につけさせるとともに、高い志を持った教員の養成に努めてまいりました。
 昨年の四月から教壇に立っております第一期生につきましては、児童の実態を踏まえて学習指導や生活指導に取り組むことができることなど、学校から肯定的な評価を得ているところでございます。
 今後とも、大学、区市町村教育委員会との連携を深めますとともに、塾生の指導育成をより計画的、継続的に行うために教師養成指定校を新たに設置し、実践的な指導力を備えた教員の育成に努めてまいります。
 あわせて教員志望の大学生等に対しましても、この養成塾の講座の一部を公開いたしまして、塾生とともに学ぶ場を設けるなど、資質向上の機会を提供してまいります。
 

 
質問2
 東京都は、来年度から、先輩教師が後輩に指導技術を伝授する東京教師道場を始めます。ある師範学校の出身者から、私たちは同僚同士で授業を見せ合い、互いに厳しく指摘し、切磋琢磨しましたとの話を伺ったことがあります。東京教師道場は、そうした気風を学校内にみなぎらせるものと期待いたします。
 そこで伺います。東京教師道場の取り組みで、現職教員の模範となる実践例をビデオなどで記録に残し、広く活用できるようにするべきです。教員を養成する大学の教材としても活用できます。都の所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 東京教師道場の実践例の活用についてでありますが、東京教師道場は、豊かな経験と高い指導力を持つ先輩教員が二カ年間にわたって中堅教員に指導技術を伝授し、学習指導のリーダーとなる教員を育成する場であることから、すぐれた実践例の蓄積が期待できます。このような実践例を東京教師道場だけで活用するのではなく、広く教員の資質向上に役立てることが重要でございます。
 都教育委員会は、東京教師道場で蓄積された実践例を教員養成や現職教員の研修に生かすため、お話の映像資料による情報提供も検討しつつ、有効活用に努めてまいります。
 

 
質問3
 教員養成大学との連携について伺います。
 昨年、中教審が発表した中間報告には、教職大学院の創設や、教員免許更新制の導入が盛り込まれました。その主眼は、教員の実践的指導力を育てる実習重視であり、都が既に実施している施策と一致するものであります。
 もとより、教員養成は大学の任務であり、東京都には、いい教員を採用する責任があります。そして、教員養成の実習が行われる学校現場を管理しているのは、東京都を初め地方自治体です。
 こうした関係の中で、今後、大学の教員養成強化を展望したときに、大学と東京都の連携をより緊密にすることが必要です。大学と東京都で教員の養成、研修のあり方について検討する組織をつくるべきです。都の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 大学との検討組織の設置についてでございます。
 質の高い教員の養成や教員の現職研修の充実を図る上で、大学と東京都教育委員会が連携を図ることは重要でございます。都教育委員会は、平成十三年度から教員養成課程を有する大学との懇談会を開催しまして、教員の養成、選考、研修の充実を図ってまいりました。
 都教育委員会は、中央教育審議会におきます今後の教員養成・免許制度の在り方についての中間報告等の動向を踏まえまして、新たな視点を加えた検討組織を設置してまいります。
 

 
質問4
 さて、二〇〇七年問題は教員にも訪れ、大量退職時代を迎えます。ベテランが減り新人がふえる、こうした世代交代の時代に教育力をどう向上させるのか、重大な課題です。
 そこで伺います。結婚などを機に退職した教職経験者を採用する選考方法を、現職時代の実績や人物をより重視するものに見直し、即戦力のある優秀な人材の確保に努めるべきです。また、四十歳未満という年齢制限も緩和するべきです。都の所見を伺います。
 
答弁4
 ▼教育長
 教職経験者の採用と年齢制限の緩和についてでございます。
 いわゆる団塊の世代の大量退職に伴いまして、採用する教員の質の確保や教員の年齢構成の不均衡の是正が重要な課題であると認識しております。
 そのため、都教育委員会では、学校関係者や区市町村教育委員会関係者を交えまして、教員の任用制度等のあり方に関する検討委員会を設置し、採用選考全般について一月下旬に中間のまとめを公表し、見直しの検討を進めているところであります。
 お話の教職経験のある者を対象としました特別選考の実施や年齢制限の緩和につきましては、優秀な人材の確保を図る上で有効な方策と考えておりまして、今後ご指摘の点を踏まえまして、来年度の実施に向けまして、早急に具体策を取りまとめてまいります。
 
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■災害対策
 
質問1
 災害対策について伺います。
 一昨年、政府の中央防災会議が直下型地震の切迫性を指摘して以来、東京都においても対策が急がれています。本日は、そのうち、避難所の環境整備について伺います。
 六千人以上の犠牲者を出した阪神大震災では、多くの被災者が学校などに避難しました。首都直下型地震でも未曾有の避難者が想定され、避難所生活の長期化も必至です。
 私は、阪神大震災当時、公明新聞の記者として被災地で取材をしていましたが、その中で、生活環境が整っていない体育館や教室で多くの被災者が集団生活をし、コンクリートの廊下にも高齢者が段ボールを敷いて寝ていました。その光景は今も目に焼きついて離れません。
 地震発生は一月十七日、外気の気温は氷点下近くまで下がり、避難所内も寒い。ところが、火災による二次災害の懸念から、ストーブなど暖房設備が不十分でした。厳しい寒さの中で、避難所肺炎という言葉が生まれたほど、多くの被災者が健康を害されたわけであります。
 そこで伺います。避難所の運営指針は東京都が定めていますが、そこには、暖房について明確な記述がありません。これでは、避難所を運営する区市町村が、暖房を入れるべきか火災予防を優先するべきか、判断に迷います。最近は、屋外から温風を送り込める暖房器具が普及しています。運営指針に暖房を入れるよう明記するべきであります。
 また、避難所は、乳幼児を抱える家族にとっては特に厳しい環境です。新潟市のNPOが実施した中越地震の被災者アンケート調査では、不便に感じたこととして、トイレやプライバシーに関すること、子どもの夜泣き、授乳する場所がないなどの声が寄せられました。授乳スペースの確保や乳幼児用トイレ、紙おむつの備蓄は必要不可欠です。乳幼児を抱える家族へのきめ細かい配慮も、避難所の運営指針に明記するべきです。暖房対策とあわせて、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 災害対策に関しまして、避難所の運営指針についてのお尋ねでございます。
 災害発生時に避難所を設置することは区市町村の役割となっておりまして、その運営は、被害状況や地域の実情に応じて弾力的かつ柔軟に行われるべきものでございます。
 都は、避難所の適切な運営に資するように、平成十二年に管理運営指針を策定いたしましたが、現在、さきの新潟県中越地震などの災害時における避難所運営で生じましたさまざまな課題を整理いたしまして、見直しを行っているところでございます。
 今後、ご指摘の暖房器具の取り扱いや、乳幼児など特に支援が必要な方々などに対するきめ細かい配慮につきましては、この指針に盛り込むよう検討してまいります。
 

 
質問2
 また、避難所の衛生管理や炊事には水が不可欠です。避難所に給水が十分に行われるよう、水道局として避難所対策をマニュアル化するべきです。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼水道局長
 避難所における給水の確保についてでございますが、水道局は、発災後一日も早い復旧に向けまして直ちに応急復旧に取り組んでまいりますが、それまでの間、必要に応じて区市町などの関係機関と連携しながら、給水拠点から地域の学校などの避難所まで水を輸送し、応急給水を実施することとしております。
 現在見直しを行っております震災応急対策の中で、関係機関との連携方法などに関し、マニュアル化を行い、避難所への応急給水をより実効性のあるものにしてまいります。
 
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■まちづくり
 
質問1
 東京オリンピックの招致へ向けて、都議会の議員連盟が発足し、大きな第一歩を踏み出しました。私も連盟に参加させていただきました。
 石原知事は、施政方針演説で、東京オリンピックを契機に世界の大都市問題の解決に大いに貢献し、二十一世紀の新しい都市モデルを提示できると訴えられました。また、関連施設の集中配置や既存施設の有効活用など、コンパクトな大会を目指す方針も示され、高く評価するものであります。
 ところで、私の地元である北区西が丘には国立スポーツ科学センターがあり、それに隣接してナショナルトレーニングセンターが整備されることになっています。ともに国家戦略としてオリンピックのメダル獲得を目指し、世界最先端のスポーツ科学の粋を結集して、日本のトップアスリートが強化訓練を行う場所です。
 こうした特色のあるスポーツ関係施設は、議員連盟設立総会で示された主要施設の検討図には示されておりませんが、オリンピックの招致や大会を成功に導くためには、こうした施設を積極的に活用していくべきであると考えます。石原知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 北区のこういうスポーツ施設について、私、不明にして存じませんで、質問を受けて資料を取り寄せてみましたが、非常に強い印象を受けました。オリンピックに向けた選手強化は、今回のトリノの結果を見ましても、十年後のオリンピックに備えて非常に大事な、大会を成功させる上でも極めて大きな要素だと思います。
 日本におけるトップアスリートの強化の拠点であるこういうナショナルトレーニングセンターなどは、選手の育成強化のための重要な施設であると思います。こうしたものの存在が、競争者の福岡もあるようでありますけれども、実は国内での選考にも非常に大きなプラスの要因になると思います。
 今後は、主要競技施設だけではなく、こうした特色のある施設をオリンピック関連施設として位置づけて、有効に活用できるよう関係機関の協力を得てまいります。
 

 
質問2
 私は、この施設を二度視察いたしましたが、テレビでしか見たことのなかったメダリスト、トップアスリートの姿を間近で見ることができ、その力強く、美しい姿に目を見張りました。しかし、残念なことに、西が丘の施設のことは、地元でも余り知られておりません。
 そこで伺います。オリンピックの東京招致の機運を盛り上げるために、西が丘の施設を活用できるよう、都としての取り組みを求めるものであります。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼知事本局長
 オリンピックに関する施設の活用についてのご質問でございますが、お話のように、トップアスリートがトレーニングを行う国立スポーツ科学センターと、今後整備されるナショナルトレーニングセンターは、既に国内外の専門家の注目を集めております。
 オリンピックの招致機運を醸成していくためには、一般の方々にも、これらの施設においてスポーツに親しみ、理解を深めていただくことが効果的であると考えております。
 今後、トップアスリートと子どもたちとの触れ合いの機会をつくるなど、活用策について関係機関と協議、検討してまいります。
 

 
質問3
 さて、この施設には国内外の多くのスポーツ関係者が訪れますが、最も便利な交通機関はJR新宿駅から約十分、埼京線赤羽駅と十条駅であります。特に、十条駅からは道一本で距離も近い。十条駅はナショナルトレーニングセンターの玄関口となります。
 ところが、十条駅周辺のまちづくりがおくれています。防災上危険な木造密集地域、まちを分断する六つの踏切、そして慢性的な交通渋滞、都市問題の宿題が山積しています。
 昨年、地元の住民の皆様方は、十条地区まちづくり全体協議会を立ち上げ、にぎわいと安らぎを奏でるまちづくりを進めておられます。その中で、ナショナルトレーニングセンターは貴重な地域資源として位置づけられています。いいまちをつくりたいと、地元では駅前の駐輪対策にも懸命に取り組んでおられます。
 こうした住民の皆様方の思いにこたえられるよう、ナショナルトレーニングセンターを貴重な地域資源として生かし、十条地区のまちづくり、そして十条駅の踏切解消、立体化へ向けた東京都の特段の取り組みを強く求めるものであります。所見を伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 十条地区の整備に向けた都の取り組みについてのお尋ねですが、十条地区は、老朽木造住宅が密集し、都市基盤が脆弱であるなど、防災上の課題が多いため、防災都市づくり推進計画におきまして、重点整備地域に位置づけられております。
 このため、都は、地元区とともに連絡会を設置し、木造住宅密集地域の改善、道路と鉄道の立体化など、十条地区のまちづくりの検討を進めております。
 こうした中、十条駅西口では、組合施行による再開発の事業化に向け、地権者主体の協議会が発足するなど、駅前整備の具体的な動きが出てきております。
 お話のナショナルトレーニングセンターも地域の貴重な資源の一つととらえ、区と連携し、その玄関口となる十条駅周辺のまちづくりを推進してまいります。
 
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■アスベスト対策
 
質問1
 アスベスト対策について伺います。
 昨年、アスベスト問題が再び大きな社会問題となりました。私も、北区内の小学校のアスベスト撤去現場を視察し、完全密封で行われる工事現場を見て、問題の深刻さを改めて実感いたしました。
 そこで、まず、昨年来東京都が取り組んできたアスベスト対策の概要を伺います。
 
答弁1
 ▼環境局長
 都のこれまでの取り組みについてでございます。
 昨年六月のアスベストに関する報道をきっかけとして、この問題に対する都民の不安が広がり、都の窓口にも多くの相談が寄せられました。このような状況を受け、都は、アスベスト対策推進会議を核として、全庁的なアスベスト対策を実施してまいりました。
 アスベスト問題は、都民の不安を解消するための正確な情報発信や、新たな被害を生じさせないための飛散防止対策を重要な課題ととらえております。
 そのため、都といたしましては、都民への的確な対応、建築物対策、区市町村との連携などを対策の柱として、都民向けQ&Aの策定や建築物解体時の対策強化など、時期を逸することなく実施してまいりました。今後とも、全庁一丸となり、必要な対策を進めてまいります。
 

 
質問2
 次に、建築物の解体時にアスベストが飛散する問題で、東京都は、国に先駆けて、より厳格な対策を講じてきましたが、その実効性を増すために都として国に対策強化を求めるべきであります。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 建築物解体時の飛散防止対策に関する国への要望についてでございます。
 都は、解体現場への立入検査や現場周辺大気中の濃度測定、並びに関係団体に対して飛散防止の徹底を要請するなど、アスベスト対策を進めてまいりました。
 国に対しては、すべての解体工事において確実に飛散防止対策が実施されるよう、法改正を要請してまいりましたが、ようやく対象を拡大する改正がなされました。
 今後とも、条例が既に規定している建築物解体時のアスベスト濃度測定義務を法に盛り込むことや、公共施設のアスベスト対策に必要な財源措置を講ずることなど、国に対して対策強化を強く要望してまいります。
 

 
質問3
 現在の大気汚染防止法や都の環境確保条例は、飛散性の高い建材だけを対象にしています。飛散性の低いアスベスト建材は対象に含まれず、その実態や解体時の飛散状況もよくわかっていないのが現状です。
 東京都は、飛散性の低い建材の実態を早急に把握し、住民の皆様方に安心していただけるよう、的確な対策を行うべきであります。都の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
 
答弁3
 ▼環境局長
 アスベストを含む飛散性の低い建材の対策についてでございます。
 これらの建材は、屋根のスレート、壁のボードなどさまざまな種類があり、これまで解体時の実態把握が不十分であったため、平成十八年度においてその実態調査を行ってまいります。調査の結果を踏まえ、専門家や関係業界と連携した検討会などを設け、建材の種類に応じた適切な解体方法のマニュアルを作成するなど、現場に即したきめの細かい対策を講じてまいります。
 
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