質問1 私は、これより、今後の羽田空港が抱える諸課題について何点か質問いたしますので、石原知事並びに関係理事者の誠意ある答弁をお願いいたします。 羽田空港再拡張事業については、平成十八年度、国の予算案において千六百二十四億円が計上されており、二〇〇九年十二月の供用開始に向けて、いよいよ本格的な取り組みが始められようとしております。国際ターミナルビルのPFI事業者もこの四月には決まり、その全容が明らかになると、その後には空港跡地の範囲や、その取り扱いについても早急な対応が迫られることになります。今こそ空港に対するしっかりとしたポリシーのもとに、長期的なビジョンを持ち合わせた効果的な対応が必要な時期といえます。 そこで、まず初めに、羽田空港の再拡張事業の意義と空港の跡地利用に関する基本的な考え方について、石原知事の見解をお聞かせください。 答弁1 ▼知事 羽田空港再拡張事業の意義と跡地利用に関する基本的な考え方についてでありますが、逼迫する首都圏の航空需要に対応し、日本経済の活性化や国際競争力の向上を図るため、羽田空港の再拡張・国際化は必要不可欠と思っております。 跡地は、国際線ターミナルなど、国際化の拠点施設に隣接する重要な空間でありまして、空港機能をサポートするとともに、空港の持つ可能性を活用した利用計画を立てることが重要だと思います。 都は、国や地方自治体とも調整し、跡地利用に主体的に取り組むつもりでおります。
質問2 羽田空港の再拡張事業が完了すると、離発着容量が現在の一・四倍にもふえ、国際定期便も行き交う、経済大国日本の首都東京にふさわしい空港が実現します。しかし、空港だけがいかに立派になっても、空港機能を十二分に支え、活用し得るように、空港運用の工夫と広域的な社会資本が整備されなければ、宝の持ちぐされになってしまいます。 再拡張後の離発着容量年間四十万七千回は、管制機能などの向上により段階的に増加されていくものと考えられます。ところが、国内線の需要は、人口の減少や少子高齢化などの要因があるため、余り高くは見込めず、その結果、近距離路線で年間約三万回と当面設定された国際定期便について、増便や新たな路線設定が検討されるものと推測できます。 特に、今後、中国を初めとする東アジア隣国の経済発展による旅客、貨物の日本との往来が飛躍的に増大することが予想されます。羽田空港の国際化による経済波及効果を一層大きなものとし、首都圏全体の国際線航空需要への対応からも、せめて台北や北京までも運航空港にするべきであります。シンガポールなどへの長距離は国際チャーター便として、近距離は韓国、中国、台湾までを含めた少し広い地域までの国際定期便として、羽田と成田空港の機能分担をするべきと考えられます。 また、昨今、急速に時代はグローバルにスピードを求めることとなり、国際航空貨物の需要は特段に増大することが必定であります。特に、羽田空港での二十三時から六時までの深夜・早朝時間帯に、市街地への騒音影響を考慮して、飛行ルートを海上ルートに限定し、C滑走路及び四本目のD滑走路を運用すれば、さらなる増便の可能性が出てまいります。その際、課題となるのが物流施設であり、神奈川県だけでなく、東京での立地を図ることが、空港の国際化による経済効果をより確実なものにするはずです。 それに伴って国際線旅客車両と国際貨物の物流車両が相当増加することが想定されるため、市街地に影響を与えないよう、いかに道路網を構築していくかが重要であり、空港施設や発着容量の拡大に合わせた一体的な交通基盤の整備を進めなければなりません。 例えば、現在、東京臨海部における東京湾岸道路、東京臨海道路の整備により、この地域の交通量が増大しております。しかしながら、その延長である多摩川を横断する国道三五七号の延伸に具体的な見通しが立っていないため、迂回する大型車などで、空港周辺地域に交通渋滞を引き起こしています。この国道三五七号は、東京湾岸地域を結ぶ首都圏の大動脈であり、一日も早い川崎方面への延伸を実現すべきです。 また、横浜から羽田空港、東京臨海部、千葉に至る東京ベイエリアを結ぶ水上交通網の整備も検討すべきです。 ところで、羽田空港の再拡張事業への資金協力として、東京都は一千億円、神奈川県、横浜市、川崎市がそれぞれ百億円を国に無利子貸付することになっています。神奈川県、横浜市、川崎市は、この無利子貸付とセットにして神奈川方の都市再生を進める神奈川口構想実現に向けて国の全面的な協力を求めており、国も一定の対応を進めている模様です。しかしながら、東京都では、現時点で具体的な要望を出しているとはお聞きしておりません。 東京都は、一千億円の無利子貸付という再拡張事業に対する資金協力をしているわけですから、それとセットで、以上述べたような事柄を国に要望しても決しておかしいものではありません。招致活動を活発化する二〇一六年東京オリンピックの視点も加えれば、社会資本整備の必要性はなおさらです。東京都のご所見を伺います。 答弁2 ▼都市整備局長 羽田空港の国際化及び社会資本整備に関する国への働きかけについてでございますが、都が無利子貸付による総額一千億円の資金協力を行いましたのは、緊急性の極めて高い再拡張事業の早期事業化が可能となること、協力の方法が貸付金方式であること、さらには再拡張や国際化による経済波及効果が相当見込まれることなどを総合的に勘案したためでございます。 羽田空港を世界に向けた我が国の玄関口として機能させていくためには、羽田空港の持つポテンシャルを十二分に活用した国際旅客定期便や国際貨物便の就航を図るとともに、道路ネットワークなどの広域的な社会資本整備が必要でございます。 今後ともこれらの実現について引き続き国に対し強く要求してまいります。
質問3 ところで、こうした社会資本整備の中でも、私は、特に、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅を接続するいわゆる蒲蒲線が、再拡張後の羽田空港へのアクセス改善の観点からも重要であると考えています。現在、両駅は、その間わずか八百メートルが欠落しているため、東京都西南部及び多摩地区や埼玉県西南部の環状方向から羽田空港へのアクセスが不備となっています。地元大田区では、蒲蒲線について既に調査を実施し、その必要性、線路幅などの課題解決手法、採算性に至るまでの整備計画素案を作成しております。 また、国においては、平成十五年度から十六年度にかけて都市鉄道整備等基礎調査を実施し、蒲蒲線を検討対象と位置づけ、平成十七年度には都市鉄道等利便増進法を公布して、既設線同士を結ぶ短路線の整備をより実現性の高いものにしています。 つきましては、東京都としても、空港の再拡張事業やオリンピック開催に合わせて、大田区や国と連携して、蒲蒲線の実現に向けた一日も早いスタートを切っていただきたいと存じますが、ご所見を伺います。 答弁3 ▼都市整備局長 蒲蒲線についてでございますが、本路線は、運輸政策審議会答申第十八号におきまして、鉄道整備にかかわる熟度、投資能力等の解決すべき基本的な課題があり、開業時期は特定できないが、平成二十七年までに整備着手することが適当である路線として位置づけられております。 しかしながら、本路線は、空港アクセス機能としての必要性のほか、整備主体や事業採算性、東急線と京急線の線路幅が異なるなど、解決すべき課題がございます。こうしたことから、都といたしましては、これらの課題について地元区と議論を重ねるなど、必要な対応を図ってまいります。
質問4 次に、羽田空港の跡地についてですが、隣接する国際旅客ターミナルや貨物ターミナルなどのPFI事業の内容が明らかになる今春以降、具体的に跡地に対する取り組みが動き出すものと考えられます。今日まで知事は、跡地について、空港機能をサポートし、空港の持つ可能性を活用した利用計画を立てる必要があり、東京都が地元自治体とも調整しながら主体的に取り組んでいくと答弁されております。そこで、これより、跡地に関する懸案となる諸課題を踏まえ、提案をさせていただきます。 東京の水辺の護岸はコンクリートで覆われていて、交通手段を初め人々の憩いの場や観光の観点からは、立ちおくれが目立っております。そこで、国土交通省が提示した五十三ヘクタールの跡地に加え、多摩川、海老取川水際線のさらなる充実を要請して、水と緑の豊かな空間を基軸に、レストランやショッピングなどの人のにぎわいを創出する施設や、水上交通拠点などを整備していくべきであります。 このような水際線を実現することによって、地元における長年の悲願である空港から発生する騒音や大気汚染が緩和されるだけでなく、空港に訪れる多くの方々がそこに集い、楽しみ、安らぎと潤いを感じられる貴重な空間を創出することができます。 さらに、まとまった緑地スペースの中には、地元住民の災害避難場所としての機能も忘れずに盛り込んでいただきたいと存じます。 また、空港周辺地域には、知事もよくご存じである、世界に冠たるものづくりの中小企業の集積があります。空港跡地に隣接する市街地には跡地開発の動向をまつ羽田旭町地域があり、昭和島、平和島、京浜島、城南島などには、中小運送業の物流基地や工場跡地、未利用地などが点在しています。したがって、跡地開発の策定に当たっては、跡地周辺地域との一体的な開発を図り、こうした地場産業の活用を視野に入れた幅広い検討が進められるべきであります。 このようなことを踏まえ、国と都、地元関係区で構成する三者協議会を再開し、東京都として迅速に利用計画を策定していただきたいと考えます。 羽田空港跡地については、国と東京都で交わされた昭和五十六年の確認書で、沖合展開により空港用地外となる土地、すなわち跡地は東京都が取得し、地元区の要望を十分配慮するものとするとされております。こうした提案をしっかりと計画に織り込みながら、跡地がよりポテンシャルの高い土地として開発され、空港と地元地域の共生が実現されるよう、ぜひとも、まず初めに東京都が一括して跡地を取得するべきであります。その上で、東京都がリーダーシップを持って、国土交通省や大田区とともに民間企業の資金力や英知も結集して開発に取り組むべきと考えますが、東京都のご所見を伺います。 答弁4 ▼都市整備局長 跡地利用に関する取り組みについてでございますが、羽田空港を取り巻く状況は、沖合展開事業開始時から今日の再拡張・国際化に至る間で、財源スキームや跡地の範囲などが大きく変化してきております。そうした中で重要なことは、空港に隣接しているという特性を踏まえた跡地利用計画を立てることでございます。地域の状況を踏まえたご指摘、ご提案も参考にしながら、今後、都がリーダーシップを持って、国や地元自治体とも調整し、跡地利用を検討してまいります。 現在国が所有しております跡地の今後の取り扱いにつきましては、その跡地利用の内容に応じて適切に対応していくべきものと考えております。
質問5 羽田空港には、現在の空港敷地内に居住していた鈴木町、穴守町、江戸見町の二千八百九十四名といわれる方々が、戦後のアメリカ軍による強制退去命令によって、四十八時間以内に住みなれた土地や家を強制的に追われ、空港周辺地域に移り住んだ悲しい歴史があります。 さらに、その後にも空港周辺住民は、耐えがたい航空機騒音などに長年にわたって悩み苦しんでまいりました。そして、市街地からの騒音除去を主目的とした羽田空港沖合展開事業がようやく進展したのもつかの間、今日においては、ハミングバードという、地元住民の気持ちを逆なでする呼称をつけて実施されている、A滑走路から北側離陸して低空で市街地上空を左旋回する飛行方式によって朝の静寂が破られています。平成十六年度実績でも、騒音に対する抜本的な改善が見られぬまま、年間千七十一回実施されています。 この左旋回飛行は、地元民家の真上わずか数百メートル上空を飛行するため、安全への恐怖と八〇デシベルを超える轟音には、人間の受忍限度をはるかに超えるものがあり、実施と同時に地元住民からは即時廃止を求める切実な訴えが、悲鳴のごとく立ち上がっています。 そして、昨年の六月には、羽田空港周辺地域の住民約十八万人で組織する東京国際空港移転騒音対策連合協議会が、A滑走路北側離陸左旋回の即時廃止を求める決議を満場一致で採択し、この決議を受け、翌七月に国土交通大臣あてに決議文を提出し、即時廃止の要望を国に強く求めてまいりました。 当然のこととして、飛躍的に航空機需要が増大する中で、どこかに飛行コースを求めていかなければならないことは理解しておりますし、千葉県などから、騒音解消のため飛行コースの変更や飛行回数の削減などを強く求められていることは、十分承知しています。 しかしながら、この左旋回飛行による航空機騒音の解消については、長い年月にわたって航空機騒音に苦しめられた歴史を持つ地元住民として、決して譲ることのできない事柄であります。また、今日まで地元住民は、空港との共生を図るため、沖合展開事業や、今進められている再拡張事業計画に全面的に協力してまいりました。 今後とも羽田空港を日本の表玄関としてより効率的に活用していくためには、地元地域の協力は不可欠であります。 東京都としても、円滑な再拡張事業の推進に向けて、ぜひとも、この都民でもある地元の方々の切なる願いを、思いやりの心を持ってお酌み取りいただきたいと存じます。 二〇〇九年十二月に四本目の滑走路が完成して、朝七時から九時までの二時間で八十便の出発枠が確保されれば、従前に比べて十六便の増加となり、それ以外に五便の左旋回飛行を設けなくても、将来の航空需要にも十分対処できると考えます。私は、一日も早い左旋回飛行の廃止を切望するものですが、少なくともこのD滑走路完成の際には、大田区と協力して、国土交通省に強力に申し入れて、左旋回飛行を廃止に持ち込んでいただくことを心よりお願いいたします。 見解を伺い、私の質問を終わります。 答弁5 ▼都市整備局長 左旋回飛行に関する国への対応についてでございますが、再拡張後の飛行ルートにつきましては、低騒音化や騒音の分担などのさまざまな議論を行い、都が主張してまいりました海上ルートの利用や新しい管制方式の導入などを取り入れた国の最終提案に対しまして、関係都県において一定の合意がなされたものであります。 もとより、騒音の低減化は、地域の人々にとって重要な課題であると認識しております。再拡張後の左旋回飛行につきましては、国はその対策として、需要動向を考慮するとともに、機材の低騒音化について検討することとしております。 都といたしましては、国に対し、こうした対策をしっかり進め、騒音の低減が図られるよう、今後とも強く働きかけてまいります。
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