平成18年第1回定例会 一般質問

区部東部での防災対策を急げ
隅田川の水辺空間で魅力向上を

小沢昌也(民主党)
■防災対策
 
質問1
 防災対策について伺います。
 さる二月十六日、東京都防災会議地震部会が首都圏直下地震の被害想定の中間報告を公表しました。この結果によれば、東京湾北部を震源とするマグニチュード六・九の地震では、私の地元である墨田を含む区部東部において建物やライフラインの受ける被害が最も大きくなっており、ハード面での対策が急務であると改めて強く認識しました。
 来年度より、都では、旧耐震基準の木造住宅の耐震診断、耐震改修、旧耐震基準のマンションの耐震診断に対する補助事業が新規に実施されることとなっております。その対象や金額など内容面においてやや不満の残る点もありますが、一定の評価をいたします。ハード、ソフトの両面において防災対策を充実させていくためにも、この被害想定の中間報告をどのように受けとめ、今後それをどのように施策へ反映させていくのかが重要と考えます。
 そこで、被害想定の中間報告の評価と今後の方針について、知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 首都直下地震の被害想定についてでありますが、国が公表した直下地震の被害想定は非常に粗削りでありまして、都や区市町村の震災対策には活用できないと評価しております。
 このため、今回の想定では、被害の大小がより明確になるマグニチュード六・九も加えまして、実態に即したデータを用い、区市町村別に被害を想定いたしました。これにより、優先順位をつけた震災対策の推進や、地域住民、企業と連携した地域防災力の向上に大いに活用できると思っております。
 来年度には、この想定をもとに地域防災計画を見直すなど、さらに震災対策を強化していくつもりでおります。
 

 
質問2
 地域の防災、救援活動のリーダーの担い手として、防災士という民間資格が注目を集めつつあります。平常時には地域や職場において救助訓練など防災意識の啓発を図るとともに、災害時には消防などをバックアップする役割が期待されるものであり、NPOが平成十五年十月から認証を開始しています。
 現在、全国で一万名を超え、都内では千三百余名の方が、この防災士の認証を受けています。愛知、三重、兵庫など八つの自治体では、みずから防災士養成研修を実施するなど、防災士の養成に向けた支援に先進的に取り組んでいます。
 知事は、本会議初日に、自助、共助、公助の精神を基本に、都民の皆さんと連携して災害対策に取り組むとの決意を表明しています。私は、地域の防災力向上のため、特に共助の部分を担う人材として防災士の積極的な活用を検討すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼総務局長
 防災士の活用についてでございますが、地域の防災力の向上には、防災に関する知識を持ち、災害時に行動できる人材の確保が重要でございます。このため、これまで都は、総合防災訓練に地域の住民の参加を求め、また、リーダー養成研修を開催し、地域の防災組織の育成に努めてまいりました。
 防災士は、NPOが付与する個人の資格でございますが、防災知識や応急手当などの講習を受けており、防災士が地域住民と活動することは、地域防災力の向上に寄与するものと考えております。
 今後、区市町村と連携し、防災士に対しまして防災訓練や研修会など地域の防災活動への参加を呼びかけ、技能の向上を図るとともに、住民との協力関係が強化されるよう努めてまいります。
 

 
質問3
 地元墨田区を歩いておりますと、木造住宅の密集地域が多く、しかも道路が狭く、公園など公共施設が不足しているなど、地震が起きた場合の危険性を改めて実感いたします。
 都では、平成十五年度に防災都市づくり推進計画を改定し、墨田区鐘ヶ淵周辺地区を十一の重点整備地域の一つに指定しました。この計画が改定されてから二年が経過したわけですが、特に鐘ヶ淵地区のまちづくりへの取り組みについて、四点伺いたいと思います。
 この地区は大地震に備えることがとりわけ必要な地区であり、それは切なる住民自身の願いでもあります。こうした観点から、今後のこの地区のまちづくりについて、都として基本的な考え方とその取り組み方針について伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 鐘ヶ淵地区のまちづくりの考え方についてでございますが、当地区は、老朽化した木造住宅が密集し、細街路も多いことなどから、地域危険度が高く、早期に整備すべき地区として、防災都市づくり推進計画におきまして重点整備地域に位置づけてございます。
 この地区の防災まちづくりの基本は、地区の中央部を走る都市計画道路を整備し、延焼を遮断する機能を持たせるとともに、老朽木造住宅の建てかえなどにより、地区全体の不燃化を図ることでございます。
 取り組みに当たりましては、都区連絡会を設置するなど区との連携を強め、防災上不可欠な道路や広場などを先導的に整備いたします。また、これを契機に、地区計画などの規制誘導策を活用して、木造住宅の建てかえを促進してまいります。
 

 
質問4
 この地区の状況ですが、築年数のたった住宅や店舗、作業所を併用した住宅、工場などが密集しており、防災上さまざまな問題を抱えた市街地となっています。一方で、高齢者が多く、人情豊かなコミュニティが存在する地域でもあり、私は、こうした地域では大規模な改造を伴うような事業はなじまず、むしろ残すべきよいものは残し、まちの個性を生かしながら整備を進めるべき地域だと考えております。
 そこで、本地区ではどのような整備を考えているのか、伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 鐘ヶ淵地区の整備の内容についてでございますが、地域の防災性を効果的に高めていくためには、そこに生活している人々の目線で整備を進めていくことが大切でございます。
 当地区におきましては、平成十八年度に修復型の事業である木密事業を導入し、既存の道路を生かした主要生活道路の整備や、防災上有効な広場の設置を優先的に進めてまいります。あわせて、建てかえ相談に応じるアドバイザーを派遣し、老朽木造住宅の不燃化、共同化を支援するなど、地域の実情に即した防災まちづくりを促進してまいります。
 

 
質問5
 ところで、整備を進めるためには地元住民の協力が必要不可欠です。幾らすばらしい計画を策定したとしても、住民の協力が得られなければ画餅に帰してしまいます。地域の人が住み続けながら整備を円滑に進めるためには、都、区、地元住民の連携と協力が重要と考えますが、都はどのような取り組みを考えているのか、伺います。
 
答弁5
 ▼都市整備局長
 地元住民との連携と協力についてでございますが、整備を円滑に進めていくためには、地元住民が災害に対する地域の実態を把握し、防災まちづくりへ向けた認識を共有化することが重要でございます。このため、都は、住民の防災意識を高めるよう、これまでも地域危険度調査を実施し、その結果を広報などにより情報提供を行ってまいりました。
 今後は、関係者が主体的に参加するワークショップの開催、道路拡幅や建物の不燃化などの整備効果をわかりやすく示すための延焼シミュレーションの活用などによりまして、まちづくりの機運を高めてまいります。こうした活動の積み重ねにより、都、区及び地元住民との信頼関係を構築し、防災まちづくりを進めてまいります。
 

 
質問6
 補助第一二〇号線の整備について伺います。
 本路線は、当地区の主要な延焼遮断帯となるものであり、白鬚地区、亀戸・大島・小松川地区を結ぶ避難路、緊急物資の輸送路という重要な役割を担っている道路と認識しております。この道路の整備に当たっては、沿道のまちづくりを一体的に進めていく新たな事業手法で展開していくとのことです。具体的には、単なる道路の整備だけでなく、沿道の建物の共同化や不燃化などを支援し、道路整備とあわせたまちづくりを積極的に後押ししていく事業と聞いております。
 昨年十一月には一部区間において道路の事業認可を取得し、この沿道まちづくりに本格的に着手したようですが、現在の進捗状況と今後の取り組みについて所見を伺います。
 
答弁6
 ▼都市整備局長
 補助第一二〇号線の道路整備と沿道まちづくりについてでございますが、この取り組みは、道路の整備と沿道まちづくりを一体的に進めることにより、延焼を遮断する機能の早期確保を図るものでございます。
 道路整備につきましては、昨年の十一月に事業認可を取得し、精力的に用地の買収を進めてきております。これにあわせ、道路の拡幅によって生じる狭小な残地とその周辺の土地を対象に、建物の不燃化、共同化を図るため、関係権利者と建てかえ計画についての話し合いを重ねております。
 今後、区と連携し、より具体的な整備手法の提案など技術的な支援を行い、鐘ヶ淵地区の防災まちづくりに取り組んでまいります。
 

 
質問7
 先日公表された、安価で信頼できる耐震改修工法・装置の募集結果について伺います。
 一昨年十月の新潟県中越地震や、昨年三月の福岡県西方沖地震など、大規模な地震が立て続けに起こり、昭和五十六年以前の木造住宅に大きな被害が発生いたしました。文部科学省に設置された地震調査研究推進本部において、今後三十年以内に南関東でマグニチュード七程度の地震が発生する確率が七〇%、今後五十年以内に発生する確率は九〇%と推定しており、古い木造住宅の耐震化は、まさに喫緊の課題となっています。
 都は、これまで木造住宅の耐震診断などについて都民への普及啓発を行ってきておりますが、耐震改修工事の費用が高いという意識や、適切な耐震改修方法がわからないという理由から、木造住宅の耐震化は進んでいないというのが現状です。
 都は、このような状態を受け、昨年十月に耐震改修工法実施事例などを公募し、先日、その選定結果を公表しました。選定に当たっては都民のニーズなどを考慮したと思いますが、どのような評価の視点で選定したのか、伺います。
 
答弁7
 ▼都市整備局長
 木造住宅の耐震改修工法を選定するに当たっての評価の視点についてでございますが、都民みずからが住宅の耐震化に取り組んでいくためには、多様なニーズに応じた工法等を選択できるよう、適切な情報を提供していくことが重要でございます。
 このため、選定に当たりましては、耐震改修工法及び地震時に命を守るための装置について、経済性や強度を初め施工の難易度といった視点から、学識経験者等により評価を行ってまいりました。
 今後は、こうしたすぐれた特色を持つ工法等の普及に努め、住宅の耐震化をより一層促してまいります。
 

 
質問8
 構造計算書偽装問題について伺います。
 我が会派の代表質問でも触れましたが、事件の発覚以来三カ月余りが過ぎたにもかかわらず、真相の完全な解明にはいまだ至っておりません。今回の事件で被害に遭われた方々は、賃貸マンションの住民、分譲マンションの住民、そしてホテル、マンションの建て主です。
 その中で最も深刻な問題を抱えているのは分譲マンションの住民で、建てかえのめどすら立たない状況です。私の地元でも、最も最初に偽装により取り壊さざるを得なくなった分譲マンションが判明しており、被害に遭われた方々の声を直接聞いております。一級建築士の方からも、自分が購入する立場でも見抜けなかっただろうとの意見も聞いております。
 私は、こうした分譲マンションの被害者の生活再建に向け、都としても区市と協力して全力でサポートすることを強く要望しておきます。
 また、現在、法令違反の当事者である元請設計事務所、建設会社、ディベロッパー等に対し、国では参考人招致や証人喚問、関係者への聴聞などが行われています。警察による捜査も行われています。都でも元請設計事務所への立ち入り調査などを行っており、建築士事務所登録取り消し処分なども行っていますが、事件の全容が一刻も早く明らかになるよう、都で可能なことはすべて実施することも、あわせて求めておきます。
 その上で、都としても事件再発の防止に向けた取り組みが求められます。わずか一件とはいえ、都が建築確認をおろした物件で偽装が明らかになっている以上、建築確認事務の業務内容についての見直しが必要です。
 建築確認審査の手続や体制のみならず、中間検査や完了検査の手続や体制などについて抜本的に見直し、チェック体制に万全を期すことが必要と考えますが、所見を伺います。
 
答弁8
 ▼都市整備局長
 建築確認事務におけるチェック体制についてでございますが、今回のような偽装問題の再発を防止するためには、確認検査制度全般にわたる徹底的な検証と見直しに取り組む必要がございます。
 都は、これまで国に対して建築行政の現場に携わる立場から、国、特定行政庁及び指定確認検査機関の役割と責任の明確化や、信頼性の高い構造計算プログラムの開発、建築士制度の見直しなど、具体的な提案を行ってまいりました。
 今後とも、都の提案の実現に向けて、国へ強く働きかけてまいります。あわせて、国の制度改正を待つことなく、都独自の取り組みとして、構造計算ソフトの活用や、構造計算審査マニュアルの作成などにより確認審査の充実を図り、建築物の安全性の向上に努めてまいります。
 
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■水辺空間の魅力向上
 
質問1
 水辺空間の魅力向上について伺います。
 江戸・東京は、隅田川や町中を網目のように走る水路など、水辺とともに都市が発展し、現在も墨堤の桜や向島百花園、安田庭園など、江戸以来の数々の名所が隅田川に沿って存在しています。
 錦糸町の名前の由来ともなった錦糸堀は、落語でも有名なおいてけ堀の伝説の発祥地として語り継がれるなど、水辺は多くの江戸市民の日常生活に溶け込んでいました。両国の江戸東京博物館では、現在、東京の水辺をテーマとした展覧会が開催されるなど、東京の水辺を再生しようとする動きが都民の間でも広がりを見せています。
 二月十四日に発表された東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想は、観光の視点に立って、関連施策の総合的な展開により東京の多様な水辺空間の再生を目指すものとして、時宜を得た取り組みと考えています。
 水辺は、都民のすぐれた共通財産である一方で、町と町を分ける境界としての役割も担っています。両国と浅草は、ともに江戸市民の娯楽の場として栄え、隅田川を介して両地域を行き来する人々の流れが絶えない一大広域観光拠点でありましたが、現在は観光客の流れもほとんどない状況になっています。
 新東京タワーの候補地として墨田区の押上・業平橋周辺地区が選定されていますが、新東京タワーという施設だけでなく、将来に向けて、観光施設に訪れた人たちが地域をめぐることができる人の流れの創出も重要な課題です。東京都は、構想において、浅草と両国が一体となった観光まちづくりを推進することとしていますが、墨田・台東両区の連携は、新東京タワーの誘致に向けて一つの大きな条件ともなっています。
 私は、区が異なる両地区の連携を促進し、隅田川や、その両岸に広がる観光資源を共通の財産として有効的に活用する取り組みは、水辺空間の魅力向上にとって重要であり、着実に推進を図るべきと考えます。
 かつては隅田川の長堤で散策を楽しみ、また、時には向島を初め隅田川の各地を船で往来することが江戸市民の娯楽でもありました。しかし、現在、隅田川沿いに観光資源があるものの、これらが有機的に結びついているわけではなく、例えば、隅田川の定期船も、下町情緒を楽しむための浅草―両国間といったルートはありません。
 今後、浅草・両国における観光まちづくりを推進し、水上バスの周遊なども視野に入れながら、隅田川沿いの主な観光資源を結ぶ魅力的な観光ルートの構築を推進すべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼産業労働局長
 浅草・両国における観光まちづくりと隅田川沿いの観光ルートについてでございます。
 浅草と両国が一体となった観光まちづくりの推進には、隅田川沿いの観光資源を有機的に結びつけ、新たな人の流れやまちのにぎわいを創出することが重要であります。
 都は、こうした広域的な観光まちづくりを推進するため、平成十八年度より新たに、江戸切り子や茶の湯など伝統産業や文化を体験できる観光交流拠点の整備や、観光ボランティアの育成など、地域の取り組みを支援してまいります。
 また、船による周遊の視点も加えた水辺の広域観光マップを作成するほか、イベントの開催に合わせて地域間を結ぶ舟運の取り組みを支援するなど、隅田川の観光資源を結ぶ魅力ある周遊の実現を目指してまいります。
 

 
質問2
 昨年十月、荒川ロックゲートが開通しました。私も同僚とともに、両国から扇橋閘門、荒川ロックゲートを経由し、葛西臨海公園に至るルートを船で視察しましたが、東京の重立った観光資源が水辺に集積しているとの印象を強く受けました。
 今後、運河や臨海部など都内各地に広がる観光資源を水辺により結びつけるとともに、さらには、東京湾を通じて横浜や東京ディズニーリゾートなど観光拠点ともつなぐことで、観光地としての東京の魅力が一層高まるものと考えます。
 所見をお伺いいたしまして、以上で私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 東京湾における観光資源を結ぶ取り組みについてでございます。
 東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想では、個々の地域の特性を生かした取り組みを推進するとともに、観光地をつなぎ、広域的な水辺空間の魅力向上を図ることとしております。
 運河・臨海地域では、観光まちづくりの推進や運河ルネッサンスの拡充等により、地域間を結ぶ魅力ある舟運ネットワークを形成するなど、観光拠点間の連携を促進してまいります。
 また、東京湾には横浜港や東京ディズニーリゾートなど魅力的な観光資源が立地しておりまして、相互の連携を進めることが必要でございます。今後、八都県市首脳会議などを通じまして近隣県とも連携を図りながら、都県域を越えた新たな舟運ルートの実現に向けた検討を進めてまいります。
 
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