都民の健康を守る医療改革を 品川線を環境に配慮ある道路に |
佐藤裕彦(自民党) |
■医療施策 |
質問1 まず最初に、医療の問題についてお伺いをいたします。 道路公団の分割民営化、昨年の郵政民営化と続きましたいわゆる小泉改革路線は、本年九月の小泉総裁の任期切れを前に、最後の目標を医療制度改革へ的を絞ってまいりました。 私が申し上げるまでもなく、現在、我が国の国民医療費は年間三十一兆円以上に達しており、増加の一途をたどっている現状であります。そして二十年後には、医療給付費が五十六兆円に達するといわれております。政府・与党も、昨年暮れに医療制度改革大綱を発表し、今国会では、医療改革関連法案も審議されようといたしております。 こうした論議が深まっていくこと自体は大変結構なことと思いますが、私は、医療費を抑制しろ、医療制度を改革しろという前に、決めておくことがあるのではないか。すなわち、日本に、東京に必要な医療とは何か、それを維持するための適正な医療費とは一体幾らなのかをしっかりと議論しておくべきと考えるのであります。にせメールで騒いでいる場合ではありません。 国は、とかく財政面からだけで医療費を減らそうとする姿勢が見え見えであります。どこまで医療費を削れば気が済むのか、全くわからない。あたかも今の日本で行われている医療が過剰であり、お金をかけ過ぎているという基本的な考えに基づいて現在の医療問題を考えているような印象を受けてしまうのは私だけでありましょうか。ただ単に財政が苦しいから医療費を削り続けるという発想は改めるべきであります。 我が国の医療費の対GDP比は約七・九%、先進二十九カ国中十七位であります。率でいえばハンガリーやチェコとほぼ同じレベルだそうです。そして、国民一人当たりの平均受診回数は年間十四回で、アメリカ、イギリスの五回前後に比べて格段に多い。また、受診一回当たりの医療費は、アメリカ、イギリスに比べても一けた安い、これが医療費の実態であります。 結果として、国民一人当たりの年間医療費は、日本三十万円、アメリカ六十六万円、イギリス二十五万円と、我が国は決して高い数字とはいえません。ちなみに、百ベッド当たりの医師の数は、日本十五・六人に対し、アメリカは七十七・八人、看護職員数は、日本四十二・八人に対し、アメリカは何と二百三十人であります。 私は、このような現実も踏まえた上で再度申し上げます。財政的な意味だけで目標もなく、ただやみくもに金額だけを抑えていけばよいという現在の国の医療に対する考え方には反対といわずにはおられません。 ただ、従前に比べて、医療システムの効率化や健康増進などによって医療提供の構造を変えていこうという姿勢は評価できるものとは思いますが、まだまだ金目の問題を隠す小細工のような感じがいたします。今こそ、東京に必要な医療と適正な医療費とは何かを具体的に検討を加えるべきであると考えますが、いかがでありましょうか。 そこで、国に先駆けて東京発医療改革を発信し、都民の健康と福祉をこの七年間守ってこられた知事に伺います。 今東京で行われている医療は過剰なのか、いいかえれば、現在国が打ち出しているように、医療費を減らし続ける必要があるのかどうか、二十一世紀に必要な東京のあるべき医療の姿とはどんなものとお考えなのか、ざっくりとしたお話をいただければ幸いであります。 答弁1 ▼知事 東京のあるべき医療の姿についてでありますが、基本的には、人口減少時代がいよいよ現実のものとなった今、右肩上がりを前提とした我が国の社会システムを新しい時代に見合ったものへと変革することは不可欠であろうと思います。国民皆保険を実現し、平均寿命世界一という成果を上げている我が国の医療制度についても、これもやはり同様であると思います。 現在、国で医療制度改革について議論されておりますが、お話のように財政的な側面ばかりが優先されて、医療はどうあるべきかという本質的な視点がいささか欠けている感は否めません。 しかしながら、医療もまた社会事業の一つでありまして、採算を無視はできないと思います。ゆえにも負担と給付のバランスや非効率な面の是正も重要でありまして、これらなくして医療保険を支える国民の理解は到底得られないと思います。 二十一世紀においても我々が東京で目指すべきは、透明性、信頼性、効率性を兼ね備えた、都民が安心できる患者中心の医療の実現と考えております。
質問2 またもや国がその責任を放棄して地方に押しつけようとしている新たな高齢者医療制度について伺います。 約三十一兆円の医療費のうち、高齢者に係る老人医療費は約十二兆円、医療費全体の四割を占めております。私は、人口構成が変化している、すなわち高齢化が日々進んでいることを考えれば、老人医療費がふえていくことは、ある意味では自然増であるのではないかと考えます。ですから、老人医療費がふえることはあたかも罪悪であるかのごとき論調には違和感を覚えます。 予防の重視、いわゆる生活習慣病の予防等を前面に打ち出していくことは賛成でありますが、ただ老人医療費を減らせ、負担を上げろ、後期高齢者は新しい保険に入れでは、余りにも年寄りいじめ、我が国の年配者を敬う美風はどこへ行ったのかと、まことに情けない限りであります。 そこで、国が平成二十年を目途に創設しようとしている新たな高齢者医療制度についてこの制度が実施された場合、東京都に生ずる新たな負担はどんなものがあるのか、都としてはどのように受けとめておられるのか、ご見解を伺います。 答弁2 ▼福祉保健局長 高齢者医療制度についてでございます。 国は、高齢化が進行する中で、高齢者の心身の特性や生活実態を踏まえた新たな医療制度を平成二十年度に創設することとしております。 都道府県は、現行の老人保健制度においても医療費の一定割合を負担しているところですが、新制度では、こうした負担に加え、後期高齢者医療制度における財政安定化基金の設置及び拠出、都道府県単位での医療費適正化計画の策定などの役割を担うこととされております。 今後、新制度が導入されるに当たりましては、制度の設計、維持に責任を負うべき国がその責任を果たし、地方への単なる負担転嫁を行わないよう、都としてもさまざまな機会をとらえて働きかけてまいります。
質問3 この制度では、保険料徴収は区市町村、財政運営は当初は区市町村ということでしたが、全国市長会等の反対により、都道府県単位で全区市町村が加入する広域連合が行うとあります。しかし、財政運営の主体がどこにあるのかよくわからない。後期高齢者医療費が増大したときに、その財政負担のリスクはどこが負うのか、不明瞭なことがあります。さらには、広域連合に対し、国や都道府県がどのような支援をするのかも不明確であります。 今般、国会に提出された医療制度改革法案には、都道府県内のすべての区市町村が広域連合に加入してこの制度を運営していくことが盛り込まれましたが、この新たな広域連合を設立することについて、都としてのご見解をお示しください。 答弁3 ▼福祉保健局長 広域連合についてでございますが、新たな後期高齢者医療制度を安定的かつ円滑に運営していくためには、これまで国民健康保険制度や老人保健制度の運営主体となってまいりました区市町村が中心となって保険料徴収などの事務を処理する一方、財政運営につきましては、より広域的な単位でリスクを分散させることが有効であると考えられます。 このことから、今般、国会に提出された医療制度改革関連法案では、都道府県の区域ごとにすべての区市町村が加入する広域連合を設置することとされたものと理解しております。 広域連合は、区市町村が主体的に結成するものでございますが、新制度の導入に当たりましては、高齢者医療が滞りなく提供されるよう、都としても必要な役割を果たしてまいります。
質問4 ところで、去る二月七日、与党は突然、長期入院の高齢者が入る療養病床を、たった六年で何と六割も削減することを了承しました。全国に約三十七万床ある療養ベッドを十五万床まで減らすというものであります。この方針により東京都が受ける影響はどのようなものが出てくるのか、それに対する都の対応を伺います。 私は、療養病床に入院している高齢者の方の実態を考えると、この方針はかなり乱暴であると思います。どういう手法で現在入院中の高齢者を他の施設や自宅に移すのか、受け皿になる施設の整備や住宅政策など、具体的な問題を先送りしてこの問題を論ずるべきではないと考えますが、いかがでありましょうか。 いずれにせよ、その内容はともかく、医療制度改革は走り始めております。東京都として、国の冷たい仕打ちに都民が将来に向け不安が生じることのないように、都民の生命と健康を守る医療とはいかにあるべきかを、確固たる信念のもとに一日も早く具体的に築き上げていただくことを期待いたします。 答弁4 ▼福祉保健局長 高齢者の療養病床についてでございます。 今回の国の療養病床削減方針は、高齢者の生活の質の向上や医療費適正化の観点から課題となってまいりました、いわゆる社会的入院の解消策の一つとして提案されたものと理解しております。 この社会的入院の解消のためには、ご指摘のとおり、高齢者が適切にケアを受けられる地域での介護体制が重要でございまして、都はこれまでも、高齢者が地域で暮らし続けられるよう、在宅サービスの充実に努めてきたところでございます。 国の方針が、今後、地域の実態にかかわらず一律に適用されるようなことがあれば、高齢者に必要な医療サービスが十分に提供されないことも危惧されますので、都といたしましては、このような事態が起こらないよう、サービス基盤整備の役割を担う都道府県との間で十分な議論の場を設けることを国に対して早急に働きかけてまいります。 |
■中央環状品川線 |
質問1 先日の知事施政方針演説にもありました、首都圏三環状道路の一つであります中央環状品川線について質問をいたします。 この問題は、かつて私も、我が党の代表質問の中で促進の発言をいたしたこともございました。今回は、品川区五反田付近の抱える具体的な幾つかの問題について伺いたいと存じます。 平成十五年の暮れに、まるで墓石のような形の巨大な換気所、高速道路の出入り口が、約十年後に完成予定で建設されることが五反田地区の住民に説明をされました。これに対し地区関係住民は、近隣三十町会九団体で構成する高速道路品川線問題近隣町会合同連絡会を設立し、品川線を世界に誇れる無公害道路にをスローガンに、三万名を超える署名が添えられ、計画の見直しを求める請願を、都議会の改選を経たために二度にわたって提出をしております。 誤解のないように申し添えますが、この団体は、どこかの政党のように高速道路建設反対ではありません。つくる以上は、将来に禍根を残さないように、環境や景観に配慮してほしいと主張する団体であります。 現在の計画では、知事も最初にごらんになったときに、思わずひどいと感想を漏らされたと伺っておりますが、当初は路外に計画されていたものが、山手通り、環状六号線の中央分離帯に、先ほども申し上げましたように、まるで墓石のような形の約四十五メートルの高さの換気所をつくり、そこから粉じんを取っただけの排ガスを百メートルの高さまで吹き上げ拡散処理することになっています。なぜ粉じんを取っただけの排ガスをまき散らすのか、すぐ近くには三十階、すなわち高さ百メートルを超える区民住宅が既に建っているにもかかわらずであります。 なぜこのような浄化装置もない異様な形の建造物を、環状六号線と国道一号の交差点のど真ん中に計画するのか、現地の様子を見れば絶対に許せないものであります。 石原知事が断行したディーゼル排ガス規制、その名も環境確保条例により、東京都の空、品川の空、もちろん五反田の空も、残念ながらきょうは雨が降っておりますけれども、青く澄み渡っております。そのせっかく取り戻した青い空へ、地下高速道路から出る排気ガスを、粉じんをフィルターで取っただけでまき散らす計画、これはいただけません。石原都政の環境政策や都市景観政策に沿った品川線の計画とすべきではないでしょうか。知事のご見解をお伺いいたします。 答弁1 ▼知事 中央環状品川線の計画についてでありますが、品川線は都の重要な施策でありまして、首都圏三環状道路の一つとして心血を注いできている路線であります。この路線を整備することにより、中央環状線のリングが完成しまして、首都高速道路全体のネットワークが効率よく機能するようになります。 整備に当たっては、沿道環境に配慮し、地下道路として建設するため、新宿線と同様に、換気所は物理的にも必要であります。 平成十六年六月に五反田の地元の方々が訪れられた際に換気所の絵を見ましたが、これはやはり問題であるなと痛感いたしました。地元にとって目ざわりとならないよう、デザインにも気を使い、もっとスマートにすべきだと感じました。 ただ、これからさらに新しい技術がどれぐらいのタイムスパンで改良、開発されるかどうかは未知でございますけれども、いずれにしろ魅力のある東京を実現するためには、公共事業においても良好な景観を形成していくのは当然のことであります。 今後、地域の景観と調和した建造物とするための技術的検討を行い、地元の皆さんや専門家などの意見を踏まえて結論を出すように指示しております。
質問2 私は、都民の将来にわたっての健康と環境を確実に担保するために、必要な経費はしっかり予算化し、住民の不安に対しては、排ガス浄化装置の設置などで具体的に一つ一つ対応していただくことを強く要望するものであります。 きょうび、火葬場でさえ煙突がありません。完全に浄化した空気を放出することは可能なのであります。都民の健康と環境を、お金がかかるからといって犠牲にするべきではないと考えます。五反田換気所については、ぜひとも健康と環境と景観を守るために、でき得る限り、浄化装置も含めて地下施設で処理をする方向で努力を続けていただきたいのであります。 新宿線で採用された低濃度脱硝装置以上の性能を持ったものが、ここ数年の技術の進歩で必ず設置可能になると考えます。一日も早く導入を決定していただきたいと存じます。見解を伺います。 答弁2 ▼建設局長 中央環状品川線の換気施設についてでありますが、トンネルの換気技術は、これまで官民一体となって開発に取り組み、ようやく二酸化窒素を除去する低濃度脱硝技術が実用化される状況でございます。 一方、トンネル内の火災など防災面を考慮しますと、換気機能は必要でありまして、換気塔自体をなくすことにつきましては困難であると考えております。 また、低濃度脱硝装置の設置につきましては、品川線の環境影響評価におきまして、供用直前の環境基準達成状況などを踏まえて検討することになっておりますが、換気所構造物の工事はそれ以前に着手するため、この装置を導入することになった場合でも対応が可能な設計を考えてまいります。 今後とも技術開発の動向を注視し、必要に応じ、実行可能な換気技術の適用について検討してまいります。
質問3 トンネルの掘削について伺います。 まず、品川線の掘削は、シールド工法で行うことが決定したのかどうか。決定したとするならば、海側からシールドを掘り始め、中目黒方向へ、五反田で立て坑などをつくらずに一気に掘り進むと考えてよいのか、そして、その際出る土は海側からのみ搬出されると理解してよいのか、お答えをいただきたいと存じます。 答弁3 ▼建設局長 トンネルの掘削方法についてでございますが、現在の計画では、延長約八キロのトンネル工事の区間を二つに分け、大井と五反田にシールド発進立て坑を建設する予定でございます。 しかし、最新の土木技術によりまして、大井から一気に八キロのトンネルを掘削できる可能性があり、都と首都高速道路株式会社で、現在その方策を検討しております。 この工法を採用した場合、シールド工事に必要な立て坑は、大井に建設する一カ所だけになりまして、トンネルの掘削土砂はそこからすべて搬出されます。 これにより、例えば五反田換気所建設地においては、トンネルの掘削に伴う工事車両がなくなるとともに、工事期間が短縮されるなど、地域の住民に対する工事の影響を大きく低減でき、都としても今月末には結論を出せるよう検討を急いでいるところでございます。
質問4 都並びに首都高の煮え切らない態度にしびれを切らした高速品川線問題近隣町会合同連絡会では、五月十日から三十一日まで、品川線を世界に誇れる無公害道路にするための技術アイデアを公募することになりました。その内容は、換気塔が全く不要になるアイデア、もしくは五反田換気所施設がすべて地下で処理され、一切地上工事は行わない工法のアイデアを広く募り、優秀賞には賞金総額五十万円というものであります。財政的基盤のない地元有志の会にとっては大変な事業であると思います。これほど地域の品川線に対する関心は深いものがあり、我がまち五反田の将来に今の世代が責任を持っていこうという、こういう決意をしているのであります。このような地域の取り組みを、都はどのように感じておられるのか伺います。 答弁4 ▼建設局長 品川線に対する地域の方々の取り組みについてでございますが、五反田を初めとする沿道住民の方々が品川線の計画に深い関心を寄せられ、真剣に取り組んでおられることにつきましては十分承知しておりまして、都としても真摯に受けとめております。 今後とも、地元の意見に対しましては十分に耳を傾けるとともに、話し合いを重ねることで、地元の理解と協力が得られるよう努力してまいります。
質問5 今後、この地域の熱意を受けとめていくために、どのような体制で臨んでいかれるのか、ご所見をお伺いいたします。 近々、環状八号が完成いたします。首都高中央環状線が実現し、環三、環四が開通すれば、東京は世界に例のない機能的な都市になります。品川線の開通予定は、時あたかも、去る二十二日に招致議連が発足した東京オリンピックの開催時期と相前後いたします。我が党の野村幹事長いわく、世界平和と地球環境をメーンテーマとするオリンピックであります。その開催時に開通するであろう品川線を、世界に発信できる環境に優しい高速道路、二十一世紀型の新しい都市モデルの一つとして完成させていただくことを切望いたします。 最後に、もしこの品川線が現行計画のまま推し進められるならば、私は地元住民の一人として、体を張って阻止する覚悟であります。工事を強行するときは、私のしかばねを越えて着工することになるということを申し添え、質問を終わります。 答弁5 ▼建設局長 品川線の事業に臨む都の体制についてでありますが、都は、道路整備を進めるに当たり、例えば環状第八号線では、現地にインフォメーションセンターを設置し、そこを拠点として住民との話し合いを行ったほか、換気塔のデザインについて完成予想図や模型を住民にお示しするなど、地元の意見も伺いながら事業を進めてまいりました。 品川線におきましては、新たに執行体制を整えるとともに、首都高速道路株式会社と共同でインフォメーションセンターを現地に設置し、五反田地域を初めとする沿道の住民の方々に対しましては、これまで以上の情報提供をするなど、会社と一体となってきめ細やかな対応に努めてまいります。
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