平成18年第4回定例会 一般質問

平成18年12月8日(金)

駅ナカ課税の税収の有効利用を
実効性のある木密事業の構築を

高木 けい(自民党)
■いわゆる駅ナカ課税等
 
質問1
 初めに、いわゆる駅ナカ課税など、税制上の諸問題についてお伺いいたします。
  戦後最長であったイザナギ景気を超えたといわれる現在でも、好調な大企業に比べ、東京の活力の源である中小企業を取り巻く環境はいまだ大変厳しいものであることに変わりありません。
  まず、いわゆる駅ナカ課税についてお伺いいたします。
  去る十一月十六日、都議会財政委員会ではJR品川駅を視察いたしました。近年、品川駅周辺は大きく変化していますが、改札口の内側、いわゆる駅ナカも、鉄道駅構内とは思えないほど変貌を遂げています。かつては小さな売店くらいしかなかった駅の中に、今では、規模も品ぞろえも、駅前商店街やデパートを凌駕する施設ができており、改札を出ずに買い物ができるため、視察当日も大変なにぎわいを見せておりました。
  私は、駅前が一等地なら、やはり駅ナカは特等地という印象を強く受けました。駅が便利になることは好ましいことですが、近隣商店街からは、駅でお客さんが囲い込まれてしまうという悲鳴が聞こえてきます。駅周辺の事業者と鉄道事業者が共存共栄し、地域全体が発展していけるような条件整備が必要であると考えます。
  そうした意味で、主税局が、鉄道用地については駅周辺よりも税負担が低く抑えられていたことに着目し、課税の見直しに取り組んでいることは高く評価してよいと思います。
  この見直しによって得られる税収を駅周辺の環境整備、特に、本来鉄道事業者が行うべき駅前放置自転車対策あるいは周辺商店街の活性化対策に役立てるなど、今後、都には、有効な使い道を考えた上で早急にこの施策を進めていただくことを要望しておきます。
  また、駅ナカ課税は、単に東京都だけの問題ではなく、直ちに全国各地に波及していくものと思われます。この間の都の動きは、この問題を広く社会に知らしめ、固定資産税評価の基準を定めている国をも動かし、石原知事が常々いわれている、東京から日本を変える新たなテーマにいたしました。社会的に大きな意味のあるこの駅ナカ課税を、私は、一部の反対や障害を乗り越えてぜひ実現していただきたいと考えます。
  そこで、いわゆる駅ナカ課税に対する現在までの取り組みの成果と、今後に向けての決意をお伺いいたします。


答弁1
 ▼主税局長
 鉄軌道用地に係る固定資産評価の見直しについてお答えを申し上げます。
 商業施設のある駅と近隣の宅地との間では、固定資産評価に著しい不均衡が生じておりまして、都といたしましては、その是正策を打ち出したところでございます。
 こうした都の動きを受けまして、国も現行の評価基準の見直しに着手いたしまして、今年度中にも、都の主張を踏まえた形で評価基準の改正を行う見込みとなっております。
 都といたしましては、税負担の公平の確保はもとより、近隣商店街を初め地域全体の均衡ある発展を期することにもなることから、早期に見直しを行ってまいります。
 

 
質問2
 次に、駅ナカビジネスからも影響を受けている中小企業支援について、特に税制面での支援策についてお伺いいたします。
 昨日の我が党の代表質問では、いまだ厳しい中小企業を支援するために、都独自の固定資産税等の軽減措置を来年度も継続すべきとただしました。知事の積極的に検討するという前向きな答弁を私は高く評価し、その継続を強く望むものであります。
 さらに、中小企業を支援するために忘れてはならないのが、事業承継の円滑化を目指した相続税の見直しであります。特に地価の高い東京では、固定資産税等の負担もさることながら、相続の発生により事業の円滑な承継が困難になる事例が後を絶ちません。事業資産に対する相続税課税の特例措置を拡充するなど、相続税の抜本的見直しについても、都から国に対し積極的な働きかけを行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。


答弁2
 ▼知事
 相続税の見直しについてでありますが、我が国の産業の基幹を支える中小企業の存続は、地域経済の活性化のためにも極めて重要であります。これは、業種は異なりますけれども、国家的に考えると、農業も同じような問題にさらされていると思います。
 しかしながら、地価の高い東京において、相続税の負担が、高い技術力を持った中小企業の円滑な事業承継や地域のまちづくりの妨げとなっている側面もありまして、こうした問題は一刻も早く解決しなければならないと思います。
 私もかつて何度か視察いたしました、東京の、非常に優秀な技術を持って発明もしている中小企業が、相続の問題でどうにも先行き見通しがつかないので、自分の代で廃業するという告白を聞きましてショックを受けましたが、そもそも私、国会議員時代、大蔵省の高官と話しましたときに、相続税の問題について彼らの意見を聞きましたら、日本は自由経済社会だから個人財産の形成は認めるが、これがだんだん雪だるまみたいになって、要するに代を経て肥大していくのは許せない、理想的には、三代たったら相続で初代のつくった資産がゼロになるのが望ましいというのを聞いて、私はたまげました。こんなばかな発想は共産主義の国でもしないと思います。
 それで、非常に強い問題意識を持ちましたが、特に優良な技術を持っている、先端的な開発もしている中小企業がこの問題にさらされているということは、本当に国家の安危にかかわる問題だと思っております。
 どういうふうに相続税を改正していくか、これは国会の問題でしょうが、やっぱり都からも、中小企業というものが多い都からも、事情を踏まえて建言、注文しまして、私案というか、思いつきではありますけれども、相続税の対象の識別というものも、やっぱり当然すべきではないかという気がいたしております。


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■災害に強いまちづくり
 
質問1
 続いて、災害に強いまちづくりについて質問いたします。
  まず、木造住宅密集地域整備事業、いわゆる木密事業についてであります。
  今定例会に、平成四年に策定された東京都住宅基本条例の改正案が提出されました。改正案には幾つかの柱がありますが、木密事業については、本来、防災都市づくりという観点から取り組むべきであるものを、都があえて住宅政策という切り口でもアプローチしようとする姿勢に、極めて積極的な、不退転の決意を感じます。
  実は、現基本条例にも、木密事業はその推進をうたわれておりました。しかし、平成四年の条例制定以来この十数年間、この事業は、残念ながら大きな成果を上げてはおりません。いつ来るとも知れない首都直下地震に対して、阪神大震災の教訓を踏まえて考え出されたのが木密事業であったにもかかわらず、遅々として進まなかったのには、それなりのわけがあるはずです。その理由を都はどのように考えているのでしょうか、お答え願います。


答弁1
 ▼都市整備局長
 木造住宅密集地域整備事業の進捗についてでございますが、木密地域は、狭小な敷地や道路に十分接していない建物が多いことに加え、土地や建物に関する権利関係がふくそうしていることなどから、建てかえが進みにくい状況にございます。
  また、この地域で実施している木密事業は、まちを全面的に改造するのではなく、部分的な改善を積み重ねていく事業でございます。これまで、広範な地域を対象に、住民の建てかえ意向に合わせて、建物の不燃化や道路の拡幅などを進めてきたことから、全体としては事業効果の発現に時間を要しているものでございます。




質問2
 つまり、今回の住宅基本条例の改正を受けて、近々住宅マスタープランが策定されることになると思われますので、私は、木密事業が明らかに進んでこなかった原因を究明し、その教訓の上に立って実効性のある施策を構築していただきたいと願っているものです。
 折しも国土交通省では、密集市街地の整備を来年度の重点施策に位置づける動きがありますし、東京都も、十条地区を初めとして、来年度、沿道一体整備を重点事業とし、木密事業にも力を入れていくことが昨日の代表質問で明らかにされました。
 十年後、東京のあるべき都市像の一つとして、防災性の向上、景観の整備、快適な居住空間の創造などを目指して、木密事業はさまざまなアイデアを持って進めていくべき課題だと考えますが、都の見解を伺います。


答弁2
 ▼都市整備局長
 木密地域における整備の促進についてでございますが、地域の防災性を早期に向上させるため、防災都市づくり推進計画で整備すべき地域を重点化し、延焼を防止する幹線道路や、避難、消防活動を円滑にする主要生活道路などの基盤整備を進めております。
 また、十条地区で取り組む予定の沿道一体整備事業など、整備効果の高い事業を活用して、事業のスピードアップを図ってまいります。
 それに加えまして、新たな防火規制や地区計画など、建ぺい率や容積率、斜線制限の緩和が可能な仕組みについても活用し、不燃建築物への建てかえを促進しております。
 今後とも、効果的に事業手法を組み合わせ、住民の協力を得ながら、地元区と連携し、木密地域の安全性の向上に積極的に取り組んでまいります。



 
質問3
 木材の利用ということでは、広く住宅に使われることが最も有効と考えます。都の都営住宅は、毎年三千戸も建てかえをしていると聞いています。まとまった規模の事業で多摩産材を活用することは、特に効果的です。むろん、都が率先して利用する姿勢を示すことは、他に波及効果があり重要であると思います。そこで、所見を伺います。


答弁3
 ▼都市整備局長
 多摩産材の都営住宅での利用についてでございますが、多摩産材の円滑な流通を実現するためには、安定的な需要を示し、生産者の供給意欲を高めることが重要でございます。これまでも、都における多摩産材の利用拡大に向けた取り組みの一環として、都営住宅の外構整備工事や集会室の内装の一部に使用してまいりました。  今年度からは、部材メーカーと連携し、花粉症対策の取り組みとして内装パネルなどに多摩産材を使用していくこととし、平成十八年度は約二百戸の住宅に試行的に導入します。
 今後とも、多摩産材の供給量や品質、価格の推移に留意しつつ、利用促進に努めてまいります。
 

 
質問4
 さて、災害に強いまちづくりには、災害を未然に防ぐ防災機能と、災害が起こった後に被害を拡大させない、あるいはできるだけ早い復旧体制を確立しておく事後の防災機能があります。木密事業が前者であるとするならば、これからご質問申し上げる地籍調査の推進は、事後の防災機能の強化につながるものと考えます。
  地籍調査は、国民の財産権の確定や土地取引、公共事業の実施、公共財産の管理、固定資産税の確定等、国民生活において社会資本整備の基盤となるものであります。しかしながら、我が国は、一九五一年の国土調査法の制定によって地籍調査事業が開始されて以来、既に五十五年を経ているにもかかわらず、その実績は全国で四六%、都市部で一八%、東京二十三区においては二・八%でしかありません。この進捗率でこのまま進むと、日本全体の地籍調査には二千四百年かかるといわれています。
  ご案内のように、土地は常時微妙に動いており、仮に首都直下地震が起こったとするならば、公共、民間の区別なく、地籍は大幅にずれることが予想されます。そうなると、災害の復旧には甚だしくおくれが生じてきます。
  そこで、土地の水平、垂直方向のずれを時々刻々と観測することができる方法として、電子基準点の設置が挙げられます。電子基準点とは、カーナビゲーションの原理を利用して、リアルタイムに正確な位置情報を得ることのできる仕組みの電子的中心点のことであります。
  平成十四年に出された社団法人東京都測量設計業協会の災害に強い首都東京を目指してという提言では、現在、都内の電子基準点は、島部を除いて七点あるとされています。電子基準点は、迅速な災害復旧のための測量に有効であるといえますが、その前提として、地籍調査が行われ、土地境界が確定されていることによって初めて効果を発揮するものといえます。しかしながら、先ほども述べたように、東京二十三区の地籍調査は二・八%の実績でしかありません。
  そこでお伺いいたしますが、特に災害後の迅速な復旧に寄与する地籍調査について、今後、都としてどのように取り組む用意があるのか、お答え願います。


答弁4
 ▼都市整備局長
 地籍調査の今後の取り組みについてでございますが、本調査は、土地の境界や権利関係を明確にし、道路整備など公共事業の円滑な推進や災害復旧を迅速に進めるために重要なものであり、区市町村が主体となって実施しております。
 都内では、現在、三十三団体が調査を行っており、来年度は新たに四団体が着手する予定でございます。
 また、国においても、地籍調査を推進するため、二百メートル間隔の測量基準点の増設を進めております。
 都としては、このような機会をとらえ、区市町村への働きかけを強化するなど、調査のスピードアップに努めてまいります。



 
質問5
 首都の防災を考える上では、震災だけでなく、風水害にも目を向けなければなりません。昨年九月四日の集中豪雨による水害は、都内各地で猛威を振るい、私の地元北区を流れる都の管理河川、石神井川もその例外ではありませんでした。北区滝野川五丁目地域では、約二十世帯の床上床下浸水、堀船地域では約四百世帯が同じように浸水被害に見舞われました。
  堀船地域の浸水は、首都高速道路株式会社が都の指導を無視し、通常考えられないずさんな工事で設置した仮設護岸の崩落によって引き起こされた人為的な事故ですが、こうしたことが起こらなくても、当日の集中豪雨は時間当たり一〇〇ミリを超えていたわけですから、五〇ミリ対応で整備されている石神井川の許容量は明らかにオーバーしていたわけです。
  東京都の河川、下水道が五〇ミリ対応を掲げて以来四十年が経過していますが、いまだその進捗率は六〇%程度であると聞いています。昨年来、一〇〇ミリ対応にという都民からの要望は切実であり、五〇ミリ対応が一〇〇%できてから一〇〇ミリ対応を考えるというのでは、これからも確実に水害は発生し、多くの都民がその被害に遭うと考えられます。
  そこでお伺いしますが、このような水害実例のある河川は、重点的にその防止策を考えてみる必要があるのではないでしょうか。例えば石神井川は、河川全体を一〇〇ミリ対応につくりかえるのではなく、当面、全体の流量を適切に管理していくという考え方で、調節池を適切に配置していくなどの方策があるのではないでしょうか。
  石神井川は、小平市の小金井ゴルフ場付近に源を発し、北区堀船で隅田川に合流する全長約二十五・二キロメートルの河川ですが、水量調節のための調節池は上流部に四カ所あるのみで、最も下流の富士見池調節池でも、水源から約五キロメートルと高い位置にあります。したがって、それ以降隅田川に合流するまでの約二十キロメートル、つまりこの河川の五分の四には、調節池などの水量調節の機能がありません。このような課題を抱えた河川の水害対策にもぜひ知恵を絞っていただきたいと思います。都の見解を伺います。
  以上で私の質問を終わります。
  ご清聴ありがとうございました。


答弁5
 ▼建設局長
 石神井川の水害対策についてでございますが、石神井川では、昭和三十年代後半から護岸整備を段階的に進めるとともに、飛鳥山にトンネルを築造して新たに分水路を整備するなど、水害対策に積極的に取り組んでまいりました。
  これまでに、北区の隅田川合流点から練馬区の山下橋までの区間につきましては、一時間五〇ミリの降雨に対応する整備が完了しております。現在、山下橋上流部において護岸の整備を推進するとともに、既に整備済みの調節池を活用するなど、水害の軽減に努めております。
  また、近年の局所的集中豪雨に対応するため、流域や地域特性に応じた東京都豪雨対策基本方針を、関係局と連携し、今年度中に策定する予定でございます。
  今後は、石神井川についても、調節池などさまざまな具体的方策の検討を進めるとともに、引き続き護岸の整備を推進するなど、水害対策に万全を期してまいります。



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