先ほど、自民党鈴木議員から、我が党の知事選や政策課題に関してのご指摘がございました。都議会民主党としては、都知事選に向けて、一丸となって着々と準備を進めているところでございます。
質問1 障害者、とりわけ知的障害者行政についてお伺いをいたします。 先週の水曜日のことですが、私も委員を務めている青少年・治安対策本部所管の東京都青少年健全育成審議会での試写会がありました。ほぼ月に一回行われているもので、東京都知事推奨映画諮問作品を鑑賞して、後日開催される審議会でそれにふさわしいかどうか決定するものであります。 今回のタイトルは「筆子その愛―天使のピアノ―」という二時間の映画でした。障害児教育の母と呼ばれた石井筆子さんの生涯を映画化したもので、監督である山田火砂子さんは、四十三歳になる重度知的障害の娘を持つ母でもあります。とても感動的な作品でしたが、当日配布されたチラシには次のように紹介されています。 幕末、長崎県大村藩士の娘として生まれた筆子は、その美貌と知性で鹿鳴館の華といわれ、津田梅子とともに女性の教育と地位向上に力を注ぐ一方、三人の娘の長女は知的障害者、次女は生まれてすぐ亡くなり、三女は結核性脳膜炎になり、最初の夫も若くして亡くすなど、苦渋の道を歩みました。その後、日本で最初の知的障害児施設滝乃川学園創始者石井亮一との出会い、再婚を通じて、残された生涯を滝乃川学園にささげ、我が娘と大勢の園児とともに愛と忍耐の日々を送った人間ドラマです。以上であります。 滝乃川学園は、現在、国立市に移転していますが、明治時代、障害者福祉どころか、社会福祉という言葉すらない時代、このような日本人がいたことは、我が国の誇りではないでしょうか。暗くてよく見えませんでしたけれども、小さな試写室では多くの皆さんが涙を流されているようでありました。 この会場を出て、阿佐ヶ谷駅までの中央線の中で、車窓から夜のとばりがおりた東京のまちを見ながら、ちょうど会派内で一般質問を行うことが決まった時期でもあったので、議員の一人として、障害児を持つ父親として、改めて知事に、障害者に対する思い、障害者施策の取り組みについて聞いてみたいと思いました。 知事にお伺いいたします。 今から一年少し前、東部療育センター開所式で式辞を述べられています。詳細は省略いたしますけれども、ここまで物事の完備した施設は世界にないと思います、日本人の感性というもの、独特の生命に対する価値観をつくり、象徴的な存在としてこの施設が誕生したと思います、やはり人類の将来にとっても誇るべきモニュメントになり得ると思います、などといわれております。 会派でも視察に行きましたけれども、私は、この重症心身障害児施設である療育センターの内部はいわば神の世界と強く感じたことを忘れることができません。 平成十一年に知事が同様の施設である府中療育センターを視察した際、発言の一部が曲解され、報道されたことは極めて残念なことでもありました。 そこで、先ほど申しましたように、首都東京のトップリーダーとしての障害者に対する思い、そして施策についてお伺いをいたします。
答弁1
▼知事 質問の中で、数年前の私の府中療育センター視察について触れられましたが、あの経験は非常に私にとっても、行政者として重要な、それ以上に人間として非常に強いショックを受けました。 ただ、出かけます前に、あの病院のお医者さんが実は私の同じスポーツの仲間でして、後輩ですけれども、相当覚悟していらっしゃい、かなりショックですよといわれたんですが、幸い、私、環境庁のときに閣僚として初めて水俣に参りまして、胎児性患者の実態を眺めました。ただ、あれはやはり汚染の固定発生源という、チッソの工場というはっきりした原因がございましたが、あの府中のセンターにおられる方々は、まさに今おっしゃったように、わずかな染色体の違い、光学の違い、そういったことによって非常に過酷な運命を強いられた、私たちの同胞であると思います。 そういう点で、問題の質はもっと重いのじゃないかという気さえしますが、いずれにしろ、どんなに障害が重くても、障害者がみずからの生活や人生のあり方を選択し、決定し、人間としての尊厳を持って生活できるようにすることが、障害者施策の目指すところであります。 こうした理念のもとに、都はこれまで、グループホームの整備促進など、国に先駆けてさまざまな独自の施策を実施するとともに、重症心身障害児のための東部療育センターを開設するなど、利用者本位の障害者施策の充実に取り組んできました。 今後とも、都の先導的な取り組みをさらに前進させ、区市町村とともに連携しながら、障害者が地域の中で自立し、安心して暮らせる社会を実現していきたいものだと思っております。 しかし、何よりも何よりも大事なことは心の問題だと思います。障害者の周りの人間たちが、肝心なこととして、周りの人たちが障害者を温かく見守る。そして折節に、たとえそれは言葉が言葉として通じない相手でも、とにかく励ます。あの府中のセンターで、私、お医者さんにいわれて、なるほどと思ったことは、どうやってコミュニケートするんですかといったら、体を軽くたたくことではっきり意思が通じる、向こうもこたえてくれる、それが本当にうれしいんだということをいっておられましたが、それが問題の一番本質をとらえた、こういった問題に関する基本的な一つの要素じゃないかと思っております。
質問2 どのような分野での企画、協議、実施でも同様と思いますが、障害者施策、とりわけ雇用・就業にかかわる庁内の連携は重要ですし、このことは以前からいわれていることであります。これについて、産業労働局では障害者の職業能力の開発、向上を通じた就業促進、福祉保健局では福祉施設利用者の一般就労の促進、教育庁では盲・ろう・養護学校卒業生の就業促進の観点から、後ほど個別には申し上げますが、施策を進めてきました。
私は、この業務の部分での統一的セクションをつくるべきという考えではありませんし、よい意味でのセクショナリズムという概念も決して否定するものではありません。これからはいわば相互乗り入れ的効果が期待できる施策も少なくないでしょう。
しかし、同時に、今後、障害者自立支援法の趣旨にのっとって、障害者の一般就労に向けた取り組みを効果的に進め、東京における障害者の雇用・就業を伸ばしていくためには、行政の各セクションが連携を図り、全庁的、効率的な取り組みを進めることが必要ではないかと思います。その点についてのご見解をお示しください。
答弁2
▼産業労働局長 障害者の就業施策における庁内連携についてでございます。 障害者の一般就労を促進するためには、雇用、福祉、教育の各分野の取り組みを充実するとともに、効果的な連携を図ることが重要であると認識しております。 そのため、都においては、関係機関による就業促進のための意見交換会の実施や、意識啓発のためのシンポジウムの共同開催などの連携を行ってまいりました。 今後は、障害者自立支援法の趣旨を踏まえ、さらに多面的に都庁内の関係部局などとの連携を強化してまいります。
質問3 障害者雇用に関する認証制度の創設についての質問です。
どうしたら、どのようにしたら、障害者の就労を進めていくか、雇用率を上げるかということは決して簡単なことではありません。特に東京は全体の労働人口が非常に多く、同時に中小企業がとても多い都市ですから、なおさら大変です。このような厳しい状況の中で、企業、会社の積極的な取り組みを促すような仕組みづくりが重要だと考えます。もちろん、ペナルティーを科すなどネガティブな施策のことではありません。
例えば現在、行政機関も含めた多くの企業、団体が、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO一四〇〇一の認証取得に取り組んでいます。最近は、受付などにその表示をする企業もふえましたし、認証マークを印刷した名刺をいただくことも多くなりました。これらは確かに、入札など、ISO取得が営業上の取引条件となる場合が一般的となりつつあることが主な理由ですが、環境対策への積極的な取り組みをアピールし、企業ステータスを高めて、社会的イメージ向上にも役立っていることも間違いありません。とてもよいことでしょう。
そこで、障害者雇用に関しても、企業のすぐれた取り組みを公的に認証することにより、インセンティブを高めるような制度を都独自に創設すべきと思います。お考えをお聞かせください。
答弁3
▼産業労働局長 障害者雇用を促進するためには、企業の取り組みに向けた意欲を喚起することが重要であります。このため、国では、模範となります事業所に対して助成金等の支給や厚生労働大臣による表彰を行うなど、企業の積極的な取り組みを促しております。
都におきましても、本年度から障害者職域開拓支援事業を開始し、障害者の職域拡大につながるすぐれた取り組みを選定し、助成を行うとともに、優良事例として広く周知してまいります。
今後とも、本事業の充実に努めるなど、障害者雇用の促進に取り組んでまいります。
質問4 ことし十月から本格実施がスタートいたしました自立支援法のことです。
このことについては、私たち民主党も国会で改正案を提出していますが、ここ数日、国レベルでも、利用者負担軽減に向けて具体的な動きがあります。これらの状況、また利用者やその家族の負担の重さ、苦しさなどは、連日のようにテレビ、新聞で報道、放映されていますので、詳しくは申し上げませんが、都として通所施設等の利用者負担の軽減策を実施すべきと考えますが、いかがでしょうか。簡潔にお尋ねいたします。
答弁4
▼福祉保健局長 通所施設利用者の負担軽減策についてでございますが、障害者自立支援法における定率負担は、障害者自身も、サービスを利用する対価として一定の費用を負担し、みんなで安定的、継続的な制度運営を支えていく趣旨で導入したものでございます。低所得者に対しては、所得に応じた負担上限額の設定や個別減免など、さまざまな負担軽減措置が講じられております。
しかしながら、先般、都が調査した結果、通所施設を利用する方の負担は、非常に低かった旧制度の利用料と比較して、新たに負担することとなった食費等の実費相当分も含めて、平均で約九倍となることが明らかとなりました。
このような通所施設利用者への急激な負担増を緩和する経過措置を実施するよう、都は国に対して緊急要望を行ったところであり、国においても具体的な対応を検討していると聞いているところでございます。
質問5 また、このことと表裏一体になるのですが、授産施設、作業所を利用する障害者の地域生活を支えるためには、工賃の水準アップが必要であることもいうまでもありません。現在の都内の工賃は、月平均一万五千円程度でしょう。その水準を引き上げるために支援策に取り組むことが必要ですが、そのお考えを伺います。
答弁5
▼福祉保健局長 障害者自立支援法では、授産施設の利用者の平均工賃が施設の目標水準を超えた場合に、その施設に支払われる報酬が加算されるなど、工賃の引き上げを目指す施設への支援が強化されたところでございます。 また、都内の授産施設の中には、複数の施設が協力し、付加価値の高い自主製品の開発や企業からの大量受注などにより高い実績を上げている例がございます。 このような取り組みを全区市町村に広げるため、都は、東京都障害者施策推進協議会の最終提言を踏まえまして、今後、区市町村が取り組む複数施設によるネットワークの構築を支援するとともに、福祉施設の経営努力や環境整備を促す施策を具体的に検討してまいります。
質問6 もちろん、障害者を支える家族などの意識改革も大切でしょう。いつまでも政治が悪い、社会が悪いといっているだけでは、真の障害者自立は確立できません。厳しい環境の中でも明るく物事をとらえていく努力も必要でしょう。
医学的なことはわかりませんが、考えてみれば、知的障害で申し上げれば、何億もある脳の回線の一つが、一つだけが異なっていたり、染色体が少しだけ違っているだけのことではないでしょうか。また、法律や制度にかかわらず、周辺の温かいまなざしも大切です。
多くの議員の皆さんも地元団体の旅行会などでご経験がおありになると思いますが、特にここ数年、旅館などで障害者団体の皆さんと出会うことが多くなりました。おふろに入っていると、介助者やボランティアの方が、屋内ぶろから露天ぶろに重度の心身障害者を抱え、移す姿を見ていると、行政の役割以上に重要なことがあるということを感じます。
なお、これは問題の提起として申し上げますが、将来への取り組みとして、一つには、障害者やその家族がみずから個人経営で、パン屋さん、お菓子屋さんなどの小規模経営を始める際の何らかの制度融資の創出です。このような制度は現行ではありませんが、授産施設での作業、企業の一般就労とは異なる、第三の支援策になると思います。
もう一つは、これは東京において簡単にできることではありませんけれども、農業への取り組みです。もちろんトライバージョンではなく、授産施設を経営する団体が、農家から土地を借り上げ、通所者の皆さんが、無農薬野菜など付加価値の高い農作物を生産、販売することにより、結果的に工賃アップにつなげると同時に、作業意欲を高めることになるのではないでしょうか。数多くの作業所を訪問する中で、雑誌付録の袋詰めや贈答品箱の組み立てだけでは限界があると思います。
最後の質問として、教育関係の施策についてお伺いいたします。
知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校として、来年四月に永福学園養護学校が杉並区に開校いたします。この学校は、平成十六年十一月に都教委が策定した東京都特別支援教育推進計画第一次実施計画で三校計画している、職業的自立を目指した養護学校高等部の設置第一号となる学校です。
永福学園養護学校では、職業訓練や就業支援を充実し、生徒全員が企業就労を目指していくなどの特色を持たせており、父母や関係者の高い関心を集めています。応募状況もそれを裏づけているようです。
今後は、こうした職業的自立を目指した養護学校高等部だけではなく、広く知的障害養護学校高等部においても、将来の職業的自立を目指した教育を推進し、知的障害のある生徒の自己実現と社会参画等を促進し、社会に貢献できる人材を育成していくことが求められていると思います。民間企業との連携についてお伺いをいたします。
答弁6
▼教育長 昨年度から、障害者雇用の理解を深めるため、企業向けセミナーを開催いたしまして、多くの企業の参画を得て、生徒の実習先の確保など成果を得ているところでございます。
また、本年度から、障害者雇用に携わった経験のある民間企業の関係者を養護学校等就労サポーターとして委嘱いたしまして、生徒の企業における実習先や就労先の開拓などを行っております。
さらに、平成十九年四月に開校いたします永福学園養護学校の職業実習に必要な施設設備につきましても、企業等から意見を伺いながら整備を進めております。
今後も、民間企業と十分連携し、職業教育のさらなる充実を図り、養護学校の生徒の企業就労に向けた取り組みを推進してまいります。
質問7 一方、生徒の中には、こうした将来の職業的自立を目指す生徒とともに、重度重複した障害のある生徒も多く在籍をいたしております。養護学校高等部のスクールバス乗車については、義務教育ではないということもあり、現在は一人通学が基本とされていますが、障害の程度によっては公共交通機関を利用することが困難であり、このような場合、保護者の負担も増大しています。
こうした状況を考えれば、都教委は、スクールバスを真に必要としている高等部の生徒のために、スクールバスの弾力的な運用をすべきと思いますが、お考えをお伺いいたしま
答弁7
▼教育長 高等部の生徒のためのスクールバスの弾力的な運用についてであります。
スクールバスは、知的障害養護学校の場合、一人通学の困難な小学部、中学部の児童生徒を対象としております。高等部の生徒につきましては、卒業後の自立と社会参加の観点から一人通学を原則としておりますが、重度重複学級に在籍する生徒等で一人通学が困難な場合につきましては、個別の事例ごとに、障害の状態や学校のスクールバスの配車状況等を踏まえて対応しているところでありまして、今後とも個々の事例に即して対応してまいります。
以上で質問を終わりますが、今、具体的根拠のない東京ひとり勝ち論が風評されております。もちろん財務局を中心として理のある反論をしておりますけれども、百歩譲って、東京ひとり勝ちということであれば、それは財政状況や税収入ではなく、障害者施策、とりわけ雇用・就労での東京ひとり勝ちという状況を実現していきたいと思います。
ありがとうございました。
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